異世界でTS幼女はおいしみを食べたい   作:あさねこ

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矮小なる者よ、跪け、命の為に5

 

 

 気配はあった。

 

 沢山の餌の匂い。

 

 食べれば私はまた強くなれるだろう。

 

 強い強いモンスター狩り達の匂い。

 

 その中で特別強そうな匂いもした。

 

 殺して捕えて取り込めば私は更に強くなれる、皆もそう言っている。

 

 でも、私は、私が飛ばした思念はそれだった。

 

 村の皆は驚いたように私を見て、

 

 取り込んだモンスター狩りの人達は少しだけ嬉しそうな顔をして私を見ていた。

 

 強くなるために進んでいる。だからここにいるだろう人間達を取り込めばもっと強くなれると思う、私の中の私自身もそう思っている。

 

 でも、私が・・・私が私足りえている、本来の私がそれを良しとしなかった。村の人達は騎士を、貴族を、王族を殺しつくすためには殺して手に入れるしかないと叫んでいる。

 

 少しずつ、私が強くなるほどに少しずつ、皆が乱暴になり、殺す事を許容し、我がままに、傲慢になっている気がする。

 

 それはどこか、私達を見ていた騎士と似ている様な気がした。それに、ここに瀕している中にオイシミが居たらどうしようなんて思ってもいた。

 

 今も村の皆は殺して喰らえと叫んでいる。優しいおばさんも、優しいおじさんも、まとめ役の村長も、怖い顔で私を見ている。

 

 だから・・・

 

【わたしのやることに、もんくが、あるのなら・・・みんなからたべるよ?】

 

 出来うる限りの殺気と威圧を村の皆に込めて言葉を放った。

 

 途端に怯えたように蹲り始め謝りだす皆。何度も何度もしきりに謝ってくる。そんな姿は見たくないけどきっとここでちゃんと私が言わないと、私は、皆の言葉のままに全てを殺してしまうかもしれない。

 

 そんな風になってしまったら、私は・・・きっとオイシミに嫌われてしまう。私と言う存在がこうして今を保てているのは、村の皆の中でも私を応援してくれる、友達たちや二人のお姉さんが居てくれるから。

 

 そして、オイシミとの思い出が、少しだけなのに心にとても強く残っているあの子との楽しかった思い出だけが、私をこうしてとどめている。

 

 だから私はこの町を壊さない。進む途中で壊してしまうのは許してほしい、オイシミが言っていた【こらてなんたらだめーじ】って。よくわからない言葉だけど、オイシミが言っていたから、多分何かが間違っていると思う。

 

 普段は、私よりもぼーっとしてて、なんというか神秘的な感じがするのに、たまにしゃべると、とても意味不明な事を言うあの子が、みんな大好きだった。

 

 そして言っている言葉の大半をみんなが理解してなかった。

 

 勿論私も理解してない。

 

 多分理解しちゃいけないんだと思う。

 

 何はともあれ・・・私は、私を攻撃しに来ないのなら、出てこないのなら、何もするつもりはない。

 

 別にここの人間達を取り込まなくても、十分強いモンスターや窶れ達を倒して取り込んでいけている。直ぐにこの町を出て行けばそれで終わり、その後は知らない。勝手に頑張ってくれればいい。

 

 ここが貴族や騎士みたいな嫌な奴が支配してる場所なら話は違ったけど、取り込んでいるモンスター狩りの人の記憶では、【ポリョンヌ】の産地で、それだけで頑張っている町らしい。

 

 私もあれは結構好き。

 

 でも毎日はいらない。濃いし、量が多いし、あまいものたべたい。

 

 そう、別に人間を取り込む必要はない。出来れば私が殺して取り込むのは、私の足代わりになっているような最低な存在だけでいい。そうすれば殺して取り込む事に心は痛まない。

 

 最近は少しずつ意識が覚醒しているのを感じる。

 

 まだまだ私は子供な筈なのに、大人・・・まではいかないけどそれなりの思考力が高くなっている気がする。それは私が窶れとして完成してきているからなのか、色々な存在を取り込んでいるかなのか。

 

 嬉しいのは、私は、それでも私だという事。

 

 最低な人間を取り込んでも

 

 まともな人間を取り込んでも

 

 私が変わる事はない。

 

 村の皆の方が少しずつ変わっている気がするけど、私はそのままだ。何故か分からないけれど、これならきっとオイシミは悲しまない気がする。

 

 そうだ、ここの人間を悪戯に殺して取り込んでしまえば、きっとあの子は悲しんでしまうと思う。

 

 だから・・・

 

 

【もういちど いう でてこなければ わたしはなにもしない】

 

 

 そう告げて私は町を通っていく。

 

 所々家や店が削れるけど、そこは我慢してもらおう。ここをまっすぐ進む方が早いのだから。どんどんすすんで、先に行ってしまえばそれで終わり。

 

 どんどん進んで町の中心街についた、とてもきれいな場所。壊すのはもったいない気がするけど、他を壊すよりはまし。そう思って進んでいくと、小さな、小さな像が見えた。

 

 多分石で作った像。

 

 そして、どこまでも見覚えがある像。

 

 何故か両手にポリョンヌをもって天高く空に掲げている姿だけど。背中に巨大な大剣を背負い、隣に小さな少女と細身の商人の様な姿に見える。

 

 私は歩く騎士達に巻かれている鎖を全力で引き動きを止めさせた。苦しんで倒れ込んでいるけどどうでもいい。それよりも、それよりも・・・私は中心にいる私自身を魔力の腕で運んで、その像に近づける。

 

 なんというか、そこまで似ていない。

 

 半分位違う気がするけど。それは・・・騎士のおじさんと商人のおじさんと・・・

 

 

【あぁぁぁ・・・】

 

 

 

 私にはこれは壊せない。少し移動して、他の場所を壊したとしてもこれは壊せない。だって・・・そこには。

 

 あまり似ていないのに、あの子と・・・オイシミと分かる少女がとても笑顔でポリョンヌを抱いている像があったから。

 

 あぁ、殺さなくてよかった。

 

 取り込まなくてよかった。

 

 殺していたらきっと私は・・・

 

 少しだけ、心が温かくなった。

 

 だから私はここを見逃そう。

 

 その後は、頑張ってくれればいい。

 

 

 

 

 




【くすんだ石像の欠片】
元は何かの像だったと思われる小さな欠片。
そこには遥か昔存在していた食べ物と思われるものが小さな手で
抱えられているような彫りが伺える。
それは持っているだけで一部の死者が近寄らなくなる効果がある。

遠い遠い昔の楽しかった思い出であるそれは
最後までだれかの想い出になった。
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