異世界でTS幼女はおいしみを食べたい   作:あさねこ

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その日、世界に毒が生まれた

 

 

 

 燃えている

 

 燃えている

 

 村が燃えている。

 

 村長さんが兵士さんに殺された。

 

 おじいさんやおばあさんが殺されていく。

 

 聞こえてくるのは兵士さん達の、嫌な笑い声。

 

 声が聞こえてくる。

 

 声が聞こえてくる。

 

 

【漸くいなくなってくれたか、お陰でやりやすかったな】

 

【それにある程度は真面目にやってたから、ある程度信用されてただろ】

 

【見たかよあの女ども、「信じてたのに」って顔で死んでたわ】

 

【もったいねぇなぁ、食えばよかっただろうがよ】

 

【何言ってんだよ、あんな乳臭い田舎のガキじゃあだめだっての、都市にはいい女が沢山居るだろ】

 

【それに魔術使いは危険だしな、殺しておく方が楽でいい】

 

【男はまだ見つからないのかよ?】

 

【致命傷だからな、どうせその辺でくたばってるだろ】

 

 

 村を護りに来た兵士さんが

 

 ここを守っていたおじさんたちが居なくなったその日の夜に私達に牙をむいた。お金をほとんどタダでもらえて帰れる、こんなに楽な仕事なんてない、と。

 

 門番のおじさんが殺されて、ニーニャも、コニーもヨーンもミュールも殺された。死体は投げ捨てられていた。昨日まで元気だったのに、みんな元気で・・・約束したのに。私も殺されかけた。足を刺されて血が止まらなくて・・・

 

 でも、剣士のお兄さんが大怪我をしてるなか私を見つけてくれて、今は息を潜めて隠れている。

 

 燃えていく・・・何もかもが燃えていく。

 

 みんなで過ごしていた村が、村の皆が・・・全員、兵士さん、ううん、化け物たちに殺されて。お兄さんも、お姉さんの二人を殺されて・・・こんなに辛い筈なのに。

 

 今にも飛び出したいだろうに、歯を食いしばって隠れている。

 

 燃えていく

 

 燃えていく

 

 燃えていく

 

 6人で遊んだ小さな公園が

 

 6人で乳しぼりをした家畜小屋が

 

 オイシミ・・・オイシミ。

 

 約束、約束守れなくなっちゃった

 

 私より年下に見えるのに、妙に大人ぶってたあの子・・・

 

 みんなで仲良くなった友達。

 

 私の名前とこうかんこしようって言ったら、名前が無かったあの子・・・きっとあの子はまだ生きてる。生きてるよね。

 

 あいつらに殺されてないよね。

 

 だって、強いおじさんたちがいたから。

 

 私達はだめだったよ・・・悪い奴に騙されて・・・皆、皆死んじゃった。私も刺されて・・・何か眠いよ・・・

 

 ごめんね、オイシミ

 

 また帰ってきても・・・多分もう、皆いない。

 

 私ももしかしたらいないのかな。

 

 死んだら、おとうさんやおかあさんにあえるかな・・・

 

 どうしてガイザックなんて付けたのって怒れるかな?

 

 イーザってあだ名貰ったんだよって自慢できるかな。

 

 ミュール、ヨーン、コニー、ニーニャ達が待ってくれてるかな。

 

 寒いよ・・・

 

 周りはごうごうと燃えてるのに、

 

 周りは赤く壊れていくのに

 

 私は、とても眠くて、

 

 涙を流して私を揺さぶる、お兄さんが何かを言っているのもわからなくて

 

 オイシミ・・・楽しかったなぁ

 

 私に妹が出来たみたいで

 

 一緒に遊んだり

 

 オイタをしたあの子をみんなでころころさせてあげたり

 

 抱きしめたり、抱きしめられたり

 

 美味しいものを一緒に食べて・・・

 

 しあわせ・・・だったな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 苦しい

 

 苦しい

 

 重い

 

 息が苦しい

 

 体が動かない、何がおきたのかな

 

 少し力を入れると、ぼこって音がして・・・眩しい光が漏れてきた。

 

 新鮮な空気が口から入ってくる

 

 匂いは肉が焼けたような嫌な臭いと、何かが焼けこげた臭い

 

 必死にもがいて、私は出てきた・・・

 

 そこは燃え尽きて何も残っていない、私の村だった。

 

 よく見たら・・・私、土の中に埋められてたみたい

 

 今は何処も痛くない

 

 なんだろう、少しだけ周りがよく見える気がする

 

 そして、ふと思い出した・・・皆の死体はどこだろうって・・・

 

 村には、皆を殺した兵士たちは居なくなってた。あちこち壊されて、燃えた家屋ばかりの中。中心の花畑があった所・・・私が出てきた所の近くに、花が添えられて土がかぶさってる場所があった。

 

 あぁ・・・何故か分かる。

 

 だれかが・・・多分、お兄さんが生きてて・・・埋めてくれたのかな。皆を。

 

 お姉さん達の遺体もここに入ってるみたい、そんな匂いがする。

 

 お兄さんの匂いは感じない・・・血の匂いと共に何処かに消えてた。

 

 あぁ、ひとりぼっちになっちゃった・・・

 

 私も死んでたのかな・・・だから埋められてたのかも。

 

 でもそれじゃあなんで私は生きてるんだろう??

 

 そして・・・腕にまとわりついているこの黒いのはなんだろう。

 

 気持ち悪くはない・・・少しだけ、ほんの少しだけオイシミと同じ匂いがした。だから多分これは・・・悪くないのだと思う。

 

 みんな・・・もういない。

 

 だけど、ここにはみんなの無念が渦巻いてる。

 

 復讐してほしいって

 

 あいつらを皆殺しにしてほしいって

 

 なんでもするからって

 

 一人復讐の旅にでた弟・・・お兄さんを助けてほしいって・・・オイシミ達に伝えてほしいって聞こえる。

 

 その為ならば・・・私達を取り込んでもいいって聞こえる。

 

 ん・・・そうか、そうだね。そうだよね・・・皆悔しいよね。

 

 私も悔しい

 

 私も悔しいよ

 

 だってもう、ここで帰ってきたオイシミと6人で探検出来ないもんね・・・だから、一緒について行きたいんだよね?

 

 うん、連れて行くよ。

 

 全員連れて行くよ。

 

 だからちょっとごめんね。

 

 墓を・・・暴くね。

 

 お兄さんごめんね?

 

 皆を連れて行くから・・・

 

 私が食べて、全員食べて、連れて行くから

 

 お兄さんを助けに、オイシミを護りに

 

 だから私は・・・・生き返ったんだと思う

 

 村の皆と一緒に、復讐しよう

 

 そしてお兄さんとオイシミを助けに行こう

 

 それを邪魔する奴は

 

 全部・・・イーザの敵だ

 

 全て・・・イーザの敵だ

 

 私はイーザ

 

 ガイザックの名前は大事に取っておく。

 

 オイシミが付けてくれたイーザの名前を持って

 

 私は、新生しよう。

 

 【窶れ姫イーザ】・・・良い名前かな??

 

 ね。オイシミ。

 

 

 

 

 

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