閑話ともとれますがよかったら
ひつまぶしにどぞう
ぽつりと一人。
どこまで歩いても一人。どこを歩いてものどかなばかり。
さわさわとそよぐ柔らかな風だけが自分を触った。
歩くのはやめた。 カイオウシンカイというのはよくわからないが、それでも此処が好き放題やっていいところでは無い事らしいのは子供ながらにもわかった。
…だが大人しく座っているのはゆるせない。そんなことをしていては…自分が自分の世界に戻った時に遅れをとる。
要は壊さなければいい。
そう考えて一人イメージトレーニングとして技を試したりと空中高くで拳を振るって数刻。
突然生き物の気配がぽんとそこに増えた。
カッと目を開き気配の方へ顔をやる。
自分を此処へ寄越した人物の気配。そしてシンという人物の気配。 …この小さく弱い気配は…悟飯?
この数時間のうちに何をすればそうなるのかと言うほどの弱さに素早くそちらへ移動し、トンと地に足をつけるとシンがこちらを見た。
「ベージさん、…そうか。長く1人にさせて申し訳ありません」
「は、 ……あれっ、えっ?空の色が…ここは?!」
何事かと口を開こうとしたベージよりも先、つい先程まで消えそうであった気配はグンと大きくなって悟飯は直ぐに立ち上がってカイオウシンカイを見回し始めた。
「…あのおかしな服はどうした、孫悟飯」
「え?…ベージくん!??」
一先ず状況説明を求めるよりこちらを処理するべきかと悟飯に声をかけると、予想以上の驚き具合で駆け寄って肩を掴んだ悟飯。眉間にシワがよる。
「よかった、どこに行ったのかと…!」
「カイオウシンカイとかいう所に、随分と前から飛ばされていた。 何がどうだか知らんがお前こそ何でここにいる」
「カイオウシンカイ…界王神……界王神界!?
…………僕は死んだのか…?それにしては、ベージくんが居るのは変だな」
「死んではいません。あぶないところではありましたが
ベージさんが居るのも、わたしが此処へ通すよう言ったからです」
「…本来、この界王神界は人間はおろか神や界王すらも来られぬ聖域なのだぞ。」
「あ!」
…カイオウシンカイの外であったであろう事柄を話し合うのを腕を組んで見やる。
なにやら大騒動が起きているらしい。
だが詳しく説明されることも無い。 さっぱりわからない。
「…界王神さま、なぜ人間などをこの界王神界へ…?
…子供は了解済みです、しかしこの人間はそれとは関係の無いものです」
「………?(俺が了解済み?)」
「申し訳ありませんベージさん。その事についてはお話出来ないのです。」
「!」
思考しただけの事をさらりと言葉で答えを寄越されて固まる。その間もソードが何とかと悶着をし悟飯を連れて移動をしていく。
それについて行こうとすると、最初は何も言わなかったがシンがぴくりと反応を示したかと思えばこちらを向いた。
「…ベージさん、ここからは着いてきてはいけません」
申し訳なさそうな顔で、しかしハッキリと線を引かれピタリと止まる。
「…………………………………
……………そうか」
「え?何でですか?」
「行きましょう悟飯さん」
「え…でも、」
こちらを見ながら、それでも有無を言わせぬ雰囲気に「ごめん、待っててね」とだけ言い残して悟飯を含めた3人は飛びさっていった。
言い知れぬ苛立ちに拳を握る。
何がどうなっているのかくらい言え。
なぜ背を向ける。
なんで俺がダメなんだ。
なんでだ。
*
『よーし、いいわよ〜…
大変な時に悪いわね』
「(いえ、仕方がありません。
しかし申し訳ありません、時の界王神。
界王神界に彼を匿っておけば大丈夫だと思っていましたが…まさかこうなってしまうなんて)」
『あ〜ん…いーのよそんなこと!
今も大人しくしてくれているし、あの子には悪いけどこのまま魔人ブウ関係からは遠ざけておきましょう。
無事を祈ってるわ』
「…(ありがとうございます。 必ずや魔人ブウを倒します。)」
「しかし…その。 どうしてベージくんは界王神界にいるんですか?
トランクスくんも悟天もすごく心配していたし…
……ベジータさんも、他のみんなだってとても心配して探していたのに……」
「それは話せん。事情というものがある。」
「事情って… …ベージくんだけ此処に送る理由なんて、気になりますよそんなの」
キビトはそれに反応しない事で会話の流れを断った。
絶対に明かしてはならない事だ。それはならない。
「…お前の服装はここに相応しくないな。」
そろそろゼットソードの近くというところで界王神界として相応しい服に変えてやり、話を掘り返させぬ様にこちらのペースに持ち込んだ。
*
長い孤独。
なぜこんな仕打ちを受けるのかわからない。
遠くでは気配が増えたり数が増えたりと騒がしい。
なのに何故、自分はそこへ行ってはいけないのか。
…ソードがどうたらとやった後ほど、背の大きい人物が此処に来たかと思えば「しばらくは合流するな」とだけ言い残して消えた。 ふざけている。
「…………舐めやがって、クソ野郎…!」
ギ、と握りこんだ手が軋む。
超サイヤ人と化して苛立ちに任せて目の前の空間に拳を打ち込む。 ボ、と凹む遠くの岩肌。 それに向けて強く何度も打ち込んで苛立ちをその度体外に打ち出した。
なぜ何もいわない。
説明は後だと言い捨てられ、何も知らずただただこんな惨めな目に遭うのか。
知らぬ間に、ベージは超サイヤ人2へとかけ登っていた。
かわいそう(小並感)