見切り発車。続くかわかりません。
転移者A/見知らぬ異世界
「ありがとうございました〜。」
時刻は深夜2時。
大学の夏休みも中盤に差し掛かり、今日の俺はかなり堕落した生活をしていた。
明後日までバイトも入ってないし、友達との予定も入ってない。
となれば、気になっていた番組を一気見するのに丁度いいというわけだ。
ゲームにも飽きてきたところなので、近くのコンビニで長期戦に備えた食料品を買ってきた。
「何見ようかな……………そういや、セイバーって見てねぇな。いやでも、カブトも気になるしな……………」
歩き慣れた靴で、歩き慣れた道を歩く。
深夜の住宅街は閑静で音が少ないので、モノを考えながら歩くには丁度いい。
不意に前を向くと、車が近づいてくるのがわかる。
白線の内側に入ると、ハイビームが目に入り、若干の眩しさを感じる。
「っ…………」
一瞬目が眩み、瞳を擦りながら歩を進める。
再び瞳を開けると、そこには昼の世界が広がっていた。
「ん……………ん?え?」
周囲を見渡すと、崩れかかった廃ビルや廃材などが散乱し、先程までいた閑静な夜の住宅街の面影は何一つ残っていなかった。
これには思わず、困惑の声しか出ない。
「えぇ…………?どうなってんだ……………」
装備は、部屋着のジャージと、スマホにワイヤレスイヤホン、先程購入した酒とおつまみのみだった。
「どうしよ……………いや、どーしようもないような………………」
ここで座して救援を待つ?それとも近くの人が居そうな場所を目指す?
状況に困惑していると、周囲から複数の物音が近づいてくる。
謎の人型の化け物が複数体、こちらを警戒していた。
「なっ、何だあれ!?」
思わず大きい声が出る。
すると化け物は、それを威嚇と判断したのか、こっちに向かって形容し難い叫び声をあげて襲いかかってくる。
「うわ、うわわわ!!」
分け目も振らず、持っていた酒とツマミも投げ捨てて走って逃げた。
ヤツらは何か武器のようなものを持ち、こっちを追いかけてくる。
「ヤバいヤバいヤバい!アレに追いつかれたら絶対…………絶対殺される!」
本能が語りかけていた。
スマホやイヤホンが落ちるのも気にせず、走り続ける。
廃ビルの中を走り回ると、突如目の前の空間に穴が開く。
「はぁっ!?うわぁっ!!」
いきなりすぎて止まることも出来ず、その空間の穴に突っ込む。
若干躓きつつ前を向くと、先程とはとは違い、何やら駅のホームのような場所にでる。
化け物が追ってくる気配は、もうしなかった。
「ぜぇ、ぜぇ、なんなんだここ……………」
息を切らして俯いていると、今度は化け物の音ではなく、靴で歩くような音がする。
誰かいるのかと思い、バッと振り向くとそこには、何か重々しい機械歩兵のような装備をした、アタッシュケースを持つ男がいた。
「今度は何…………?」
「君は……………ホロウに迷い込んだのか?」
男性の声。どうやら言葉は通じるようだ。
安堵のため息をつくと、男性はこちらに近づく。
「この辺りは危険だ。君も疲れているようだし、この先で休憩するとしよう。ついてきなさい。」
「あ………はい………………」
選択肢は、無かった。
「フム…………なぜこんなところにいたかもわからず、自分がどこから来たかも覚えていない、と………………」
「はい…………すみません。」
「謝るようなことじゃないさ。恐らくエーテル侵食による一時的な記憶障害だろう。ホロウの中じゃありえない話じゃない。」
ホロウ、エーテル、侵食。
こういう単語をスラスラと、何の抵抗もなく言うあたり、本当に前の世界とは違う世界に迷い込んでしまったのだろう。
「あの、あなたは……………」
「私かい?私は、そうだな……………シュラウとでも呼んでくれ。私は、とある用があってこのホロウに入ったんだ。コイツをある場所に隠さなければならない。」
ポン、と手を置いたアタッシュケースには、黒く大きな文字でXのロゴが入っていた。
どこかで見たことがあると感じたのは、気のせいだろうか。
「ところで君、ここで目覚めて何分ほどたつ?」
「え?あいや、そんなに数えてなかったな……………20分ほどですかね。」
「20…………なら、多く見積もって40分は経過しているか。一般人で装備もないのなら…………考えたくはない、か。」
何やらブツブツと呟くシュラウ。
依然として疑問符が俺の頭の中を駆け巡っている。
「そういえば、君はなぜさっき息を切らしていたのかね。」
「さっき俺、人型の化け物に追いかけられてて、必死に逃げ回ってたら、ブラックホールみたいなのに落ちちゃって…………ホールを抜けたら、ここにいました。」
「ホロウの裂け目だな。幸運なことだ。」
「あの…………その、ホロウってなんですか?」
「うむ、歩きながら説明しよう。あまり長居もしていられないのでな。」
シュラウが歩き始めたので、それについていく。
その途中で、ホロウについて説明を受けた。
曰く、世界を破壊した超自然現象。内部には高密度のエーテルが充満し、エーテルに侵食されれた生命体は、先程の怪物《エーテリアス》に変異してしまうとのこと。
エーテル耐性がある人間もいるらしいが、一般人の体質ではホロウには2時間ほどしか滞在できない。
特殊なスーツを着るか、何度もホロウに入ってエーテル耐性を獲得するしか、時間を延ばす方法は無いとのこと。
さらに、ホロウ内は時空間がおかしくなっているので、治安当局が発行する《キャロット》なる地図が無ければ、脱出は難しいのだとか。
「それじゃあ、ここにずっといたら、俺らもあんな怪物になるってことですか?」
「そうだな。だが安心したまえ。もうすぐホロウの外に出られる。外に出たら、治安局に保護してもらうといい。」
シュラウの足取りに迷いはなく、手元の端末をチラチラと見ていることから、若干の安心感に包まれる。
「ッ………!止まってくれ。」
「?どうされたんです?」
「マズいな…………エーテリアスだ。」
先程遭遇したヤツの1.5倍ほどのサイズをした、剣と盾を携えたエーテリアス。
先程のが小型エーテリアスなら、こっちは大型だ。
とてもじゃないが、勝てる気がしない。
「気づかれないように行こう。刺激しなければ、攻撃もしてこないはずだ。」
シュラウと二人で物陰に隠れながら、忍足で進む。
丁度エーテリアスを抜けそうになったその時。
「っ!走れ!」
別の小型エーテリアスに見つかってしまい、ヤツに気づかれてしまった。
「くそッ!」
「うわぁぁっ!!」
襲い来る小型エーテリアス。
咄嗟に落ちてた鉄パイプを振り回し応戦するも、必死になりすぎて周りが見えない。
「離れろっ!離れろ化け物めっ!」
「君っ!早く逃げるんだ!」
銃声がホロウ内に響く。
思ったより簡素なその音が合図になり、大型エーテリアスはシュラウに引き寄せられる。
「来い…………来てみろ化け物!」
「シュラウさん!このっ!」
小型エーテリアスたちの頭に浮かぶ玉に、振り回した鉄パイプが当たり、玉が砕けると、小形エーテリアスは苦しみ倒れ、データのように塵一つ残らず消え去る。
「なかなかやるじゃないか!兎も角逃げるぞ!」
そう言われ、はい!と大きく返事をしようと思ったその時。
シュラウの体が宙に浮いた。
大型エーテリアスが盾で突進してきたことに気づくのに、時間はかからなかった。
「シュラウさん!」
「ぐっ…………ガハッ……………」
恐らく内臓をやられた。
血反吐を吐きながら、割れたヘルメットから今まで見えなかった顔が半面覗く。
「ハァ…………これは………もう、ダメだな……………」
「そんなことありません!早く、早く逃げましょう!」
「君では、私を担いでヤツから逃げられないだろう…………幸い、私の希望は墜えていないようだ。」
シュラウが持っていたスーツケースを俺に押し当てる。
「これを、君に託す。もう、捨てることも出来まい。」
「これ………を、俺に…………?」
「君…………震えながら戦っていただろう。少しだが、感動したよ。君になら…………この力に適応できるかもしれない。君ならば…………」
息も絶え絶えの中、シュラウはこちらをしっかりと見つめ、俺に言葉を送る。
「これは、大いなる力だ。正義が振るえば、人々を守る守護神となり、悪が振るえば、世界を覆う闇になる……………」
「シュラウさん………………」
「財団Xに…………これを、渡すわけにはいかない。だから君が、人々を守るために、この力を使ってくれ………………正義のヒーロー、仮面ライダーとしてッ!」
財団X。仮面ライダー。
それを最後の言葉に、シュラウの瞳は虚になり、ズシリと死体の重さが伝わってきた。
「シュラウさん…………?シュラウさんッ!!」
自分の胸の内で死んだ彼の瞳を閉じさせ、アタッシュケースを開く。
やけに頭は冷静で、その心に先程までの恐怖はなく、怒りの炎が、身も心も包んでいた。
「この化け物……………よくも、よくも俺の恩人を!」
それは、このベルトのせいなのか。
なぜこれがここにあり、俺がこいつに巡り合ったのかはわからない。
だが俺は託された。命の恩人に、願いと共に。
使い方は、知っている。
腰にベルトを押し当てると、自動でバックルが巻かれる。
USBメモリのようなもの《ガイアメモリ》のスイッチを、力強く押す。
《ACCEL!》
「変……………身ッ!!」
ハンドルを力強く回すと、周囲に浮かんだガイアメモリのエネルギーが形状化し、全身に鎧として装着される。
紅く輝く俊足の戦士、仮面ライダーアクセルだ。
「さあ……………振り切るぜ!」
ヒロインは誰にする?
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リン
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エレン
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朱鳶
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青衣
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ジェーン
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その他