デッドエンドホロウ前で準備体操をする猫又と照井。
「作戦のおさらいは必要か?」
「ニコたちのとこまで走って、電車を乗っ取りそこに住人たちを乗せる!そんだけ!」
「よし。アキラ、リン。いつでも行けるぞ。」
『今回は一刻を争う事態だ。竜さんのバイクモードで移動しよう。』
「ナビゲートは任せたぞ。猫又。合図をしたら俺に乗れ。」
「わかった!……………は!?」
《ACCEL!》
「変…………身!!」
仮面ライダーに変身し、照井がベルトを外してバク宙する。
足と背中のパーツが動き、バイクに変形した。
「さあ乗れ。時間が無い。」
「も、もう何が起こってもツッコまないぞ……………」
猫又が照井の背中に跨り、エンジンを蒸して走って行った。
しばらく走ると、トンネルを抜けてカンバス通りに到着する。
そこには、思いもよらぬ光景が広がっていた。
「な…………!!なんでこんなに病人が!」
『これは一体…………!?』
「あっ!店長!猫又!それにリュウさんも!」
「邪兎屋、これはどういう状況だ。」
「時間が無い。歩きながら説明する。」
ニコの元へ向かう途中にアンビーから説明を受ける。
重篤な患者は隔離され、軽症の者は治療にあたるその様子は、さながらバイオテロのようだった。
「2時間ほど前から急に起き始めた。今のところわかっているのは、年齢によって症状が異なるってこと。症状は三つ。15歳未満の子供は吐血、嘔吐などの症状が出る。60歳未満の大人は喘息、血痰、頭痛と吐き気。それ以上の老人は高熱に目眩、錯乱とどれも一貫してない。」
「原因はなんだ。水源か?」
「わからない。唐突に、しかし爆発的に感染が広がっている。」
「アンビーにニコは大丈夫なのか!?」
「私たちはまだ発症してないけど、保菌者ではあると思う。発症も恐らく時間の問題ね。」
歩きながら話していると、住人たちの看病に追われるニコの元に着く。
「ニコ。プロキシ先生たちが来た。」
「っ!おっそいじゃないの!でもナイスタイミングよ!」
『ニコ!大丈夫!?』
「ここで治療に当たってるだけでかなり時間を食っちゃったわ!でも、委任状は全部あるから大丈夫よ。ねぇ、パエトーン!作戦はあるんでしょ?早く実行しないと、死人が出るわよ!」
『それなんだが……………』
アキラが通信経由でニコに作戦を説明する。
「列車を奪って住民全員を乗せる、ね…………少し不安かもしれないわ。患者には、動かすのが難しい人もいるから。特に老人。」
「しかし、他に手立てがない。無理にでも引っ張っていかねば、全員瓦礫の下敷きだ。俺たちの努力も水の泡になってしまう。」
「やるしかない、か…………わかったわ。動ける者たちで全力で駅に向かわせる。私が住人たちに指示をするから、あんたたちは列車を!」
「よっしゃ!任せろ親分!」
現場はニコに任せ、列車を目指す。
「あった!突入するぞ!」
「な、なんだお前たちは!」
「敵襲!敵襲だー!!」
ヴィジョンの傭兵たちを蹴散らしていくと、列車の中にヴィジョンコーポレーションの社長、パールマンの姿を確認する。
「捕まえた!ダルマのおっさん!人の命をなんとも思わない大悪党め!大人しく降参しろ!」
「なぁっ!?は、離せこのっ!」
「列車は抑えた!プロキシ!ホームのニコに伝えろ!」
「き、貴様ら!まさか、カンバス通りの連中を外に連れ出すつもりか!?さ、させん!させんぞ!連中が外に出て何か言おうものなら、私とヴィジョンは終わりだ!」
「残念ながら、もう既に記録済みだ。こっちのボンプが全てを持ってる。お縄につけ、パールマン!お前のゴールは、刑務所だ!」
「だ、誰でもいい!どんな手を使ってでも、こいつらを始末しろ!」
その声が響いたその時、イアスからリンの焦る声が聞こえてくる。
『大変だよ!線路が壊されちゃった!』
「何!?」
「パールマン長官………!ご安心ください、こいつらの最後の生命線は、たった今木っ端微塵に粉砕しました!これでコイツらはホロウから出られません!」
「バッ、バカ者ーー!線路を破壊するのは、我々が脱出した後だ!これでは、我々まで閉じ込められてしまったではないかー!」
「も、申し訳ございません!」
「照井竜。四方から増援が来てる。どうする?」
「チィッ、一先ずこいつを人質に立て篭もるぞ!」
パールマンを引き摺り、電車内に立て篭もる。
『パールマン長官!前方付近から何者かの襲撃を受けました!負傷者も出ていますが、物質と人数の面から、こちらが優勢かと思われます。襲撃者は現在、列車内部の運転室に立て籠り中。火力を束ねて突入いたしますか?ご指示を願います!』
「パールマン。今時点で刑務所行きが決まっている貴様だが、これ以上余計な罪を被せられたくなければ、こいつらをどうにかしろ。」
「ぐっぬぬぬ…………!!」
『パールマン長官!ご指示を!』
「とっ、突入はするな!私は今その運転室だ!邪兎屋の侵にゅ……………紳士淑女に捕まっている!よく聞け、絶対に動くんじゃないぞ!この私が少しでも怪我を負ったら、会社はお前たちに責任を問う!」
「よし、それでいい。」
パールマンの活躍により、突入を控えていた傭兵たちが下がっていく。
「あのオッサン、意外と役に立つな!」
「所詮は雇用関係か…………しかしどうしたものか。周囲には兵隊、住人たちは謎のウイルスで倒れ、移動も難しい。列車も動かせない…………」
「まさかこれが、絶体絶命のピンチってやつか!?」
各々必死に頭を働かせる。
すると、猫又の乾いた笑い声が響く。
「猫又…………何がおかしい?」
「そんなカリカリしないでよ。ただ少し…………伝えなきゃいけないことがあるんだ。特にビリーとアンビー。ニコにも伝えといてね。」
2人に何かを伝える猫又。
プライベートな話らしく、邪兎屋が請け負った仕事の関係上、少し場を離れる照井。
「……………もういいぞ、竜さん。」
「それで、どうするつもりだ。何か策があるような話し方だったが。」
「あたしが、このオッサンを連れてヴィジョンと交渉してくる。安心して。パールマンっていう切札もあるし、きっと交渉に応じてくれる…………」
まっすぐな目をした猫又からは、確かな覚悟が感じられた。
こちらの言い分も聞くことなく、猫又は交渉に向かおうとする。
「猫又!おい、戻ってこい!」
「ビリー。ここは、猫又の覚悟を尊重してやれ。」
「竜さん…………ありがとう。」
「だが、死なば諸共とは思うなよ。危険だと思ったらすぐに離脱しろ。ヤツらも何をしてくるかわからん。」
「任せてよ!逃げ足には自信があるんだから!」
わざとらしく笑ってみせる猫又。
その場にいる誰も、なんて声をかければいいかわからなかった。
「さて、俺たちもこうしてる場合じゃない。猫又が敵の注意を惹きつけている隙に、ニコたちにこのことを伝えなければ。急いで戻るぞ。」
「せ、線路が爆破されたですって!?それじゃ、列車での脱出は無理じゃない!」
「今、猫又がパールマンを人質に交渉に行ってる。しばらくは追われることは無いけど、時間の問題。」
「どうするよニコの親分…………このままじゃ、マジで俺たち月まで吹っ飛んじまうぞ………!!」
全員が全員で頭を抱えていると、1人の少女がこちらに寄ってくる。
「どうした嬢ちゃん。今こっちは大人の話をだな……………」
「ねぇこれ!治安官さんにわたしてくれって!」
「俺に………?っ、これは……………!!」
少女が頑張って持って来たらしい箱を受け取り、蓋を開けてみると、中には薬品が入ったビーカーが幾つか入っていた。
中には一枚の手紙が入っていて、読んでみる照井。
「このおくすりすっごいんだよ!私だけじゃなくて、パパとおばあちゃんの病気をすっかりなおしちゃったの!」
「"街を守る者同士、これは借しにしておこう、仮面ライダー"……………送り主は『S.K.』のイニシャルか。洒落てるな。」
「これ、薬なの?」
「毒の可能性もある。迂闊に信じられない。」
「でも、これが特効薬なら現状を打開できるわ!」
『そんな薬、本当にあるの?』
「今は信じるしかないだろう。薬は有限だ。症状の酷い者から順に…………」
「あ、そうだ治安官さん!これくれたおにいさんから!」
少女はもう一枚の手紙を照井に渡す。
「薬は商店街裏路地の第二倉庫…………ビリー、見てきてくれるか?」
「わかったぜ!」
「さっきの子の話が本当なら、この薬には即効性がある。現状を打開するに充分な時間が稼げるぞ!」
「待って!電車を止めて、その後どうするのよ!」
『それなら、私たちに作戦があるよ!』
「ちょっと!もっとスピード出ないの!?」
「俺は本来1人乗りだ!っおい、頭に足をかけるな!重い!」
「誰が重いですってーー!?乗り物が文句言うんじゃないわよ!」
ホロウの中を駆ける一台のバイクと3人の人型と一匹のボンプ。
「しかし、ボスエーテリアスをブッ倒してホロウを縮めるなんて、店長はさすがだぜ!」
『ホロウを縮めるには、内部のエーテル活動を鎮静化させる必要があるからね!エーテリアスを大量に倒すよりも、ボスエーテリアスを倒して一気に縮めれば、徒歩でみんなを逃がせる!』
「それで移動に俺を使うのはいいがっ………三人は流石に重い!」
しばらくは照井に乗って進み、ボスエーテリアスの反応が近づくと降りて歩いて進む。
「っ!危ない!」
突如イアスに襲いかかって来た触手を斬り落とす照井。
「何者だ!」
「ふぅむ、やはり機動力が抜きん出て高いな。『加速の記憶』、やはり欲しい!」
切先が捉えたのは、タコのような触手と謎のガスを排出するドーパントだった。
「初めまして、仮面ライダー。俺はそうだな…………財団Xの者さ。この姿は僕に適応したメモリ『VIRAS』のものだよ。いかにも怪物って感じがいいよね。」
聞いてもいないことを語り始めたバイラス・ドーパント。
照井は前を向きながらに邪兎屋とプロキシに指示を出す。
「俺がこいつを相手する。お前たちは早くボスエーテリアスの元へ行け。」
『気をつけてね、竜さん!』
「あーダメダメ。君、私の実験場潰す気なんでしょ?行かすわけないじゃん。」
「させるか!」
『エレクトリック!』
アンビーと照井で迫る触手を弾く。
「おぉ、流石に使いこなしてるね!」
「行け!早く!」
が戦線を離脱したのを確認すると、先ほどより一層警戒を強める。
「その剣、使いやすいでしょ?なんてたって俺が作ったんだから。」
「っ…………貴様、財団Xの科学者か。」
「そうだよ。ねぇ、ライダー君。君ほどの力を持つ者だから聞くんだけどさ……………」
バイラス・ドーパントは間合いを維持したまま、ゆっくりと歩き出し、語り始めた。
「今の新エリー都って、醜いと思わないかい?」
「……………………」
「都市秩序機能である治安局はほぼ後出し状態。郊外からの無法者への対処もままならず、犯罪率は増加の一途を辿る。だというのに、トップスの連中はエーテル産業での金儲けしか考えない。その影響で、ホロウへの対応が全く追いついてないじゃないか。全く悩ましいよ!このままでは、人類最後の都市であるこの新エリー都はあと十数年もしない内に消え去ってしまう。」
扇情的に、嫌に大袈裟に演説をするバイラス・ドーパント。
「財団Xの目的はね、『楽園』を作ることなんだ。人々がホロウの恐怖から脱却し、エーテル技術を使って恒久的に発展していく『楽園』。それが財団Xの行動理念であり、僕が彼らに味方する理由さ。言ってしまえばそれは、君たち治安官の行動理念と同じことなんだ。私らはただ、この繊細で病弱な都市を救いたいだけなんだよ。だからさ、仮面ライダー。」
ようやくこちらに向き合ったと思えば、バイラス・ドーパントは両手を広げて照井に問いかける。
「君も、財団Xに入らないかい?君ほどの実力者と組めるなら、俺の実験工程も大幅に短縮できそうだ。」
「………………何?」
「言ったろう?楽園を作ると。今日のウイルスは私の能力を使ってばら撒いたものだ。初期症状は年齢によって異なるが、ステージ2からは体内からの激しい熱が発せられる。ここで死んでしまう者もいるだろうね。しかし、ステージ3に到達すればエーテルに超強力な耐性を得る!つまり、今回の実験は人類が二度とホロウに怯えることのない世界を作る実験だったんだ!…………何の冗談か、僕のウイルスの特効薬をモルモットたちが飲んでいるのには驚いた。君の仕業だろう?仮面ライダー。」
「……………さあな。」
「おかげで、今回の実験成果がパーだ。残念無念、私はまた悲しみに暮れながら今日も家に帰る…………はずだった。でも君に会えた!君という、財団が作り出せなかった最高のサンプルに!だから仮面ライダー!私と楽園を創ろう!」
嬉々としてこちらに触手を伸ばすバイラス・ドーパント。
すると照井はエンジンブレードを下げ、歩み寄る。
「確かに、この街は常にギリギリだ。お前の言うとおり、治安局の対応は後手に回ってるし、犯罪率は一向に低迷しない。ホロウへの不安は取り除かれないし、今という今も市民はホロウの脅威に怯えている。そのくせトップスの連中は自分の利益しか考えない。正直言って………腐ってる。」
「だったら………!」
嬉しそうに目を輝かせるバイラス・ドーパント。
しかし、途中で歩みを止める照井。
「だが。それでも。俺は、お前を許せない。」
「ッ!」
『エレクトリック!』
瞬時に斬撃を躱し、二撃三撃目が命中し、よろよろとよろめく。
「お前らは、そのご大層な理想を掲げ、簡単に人を殺す。だから俺はお前たちに協力しないし、容赦もしない。」
「っ、ぐ………正義マン気取りかなぁ?君のような醜い正義が、この街を腐敗させる………!人類を破滅に追い込む!」
「違う!俺は正義の味方じゃない…………俺は市民の味方だ!市民の平和を脅かす敵を、俺は許さない!」
襲い来る触手を切り裂き、臨戦態勢を取る。
「そうか…………悲しいなぁ。でも、そんな君を俺は許すよ。君ほど優秀なサンプルは中々手に入らないからね。だから…………」
触手を大きく広げ、先程とは違った明確な殺意を強く感じる照井。
「死体にして解剖しよう!いや、蘇らせて奴隷にしてもいいね!兎も角、君を殺してそのサンプルを手に入れるよ!」
「やれるものなら…………やってみろ!!」
最凶のドーパントメモリと、最速のガイアメモリの対決が今、始まる。
バイラス・ドーパントの一人称がコロコロ変わるのは仕様です。
感想、誤字報告お待ちしてます。
ヒロインは誰にする?
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リン
-
エレン
-
朱鳶
-
青衣
-
ジェーン
-
その他