「ハァァッ!!」
「あははハハ!こっちだよ!」
「くっ、ちょこまかと………!!」
中距離から触手を使って攻撃してくるバイラス・ドーパント。
対する照井は、連射できないジェットでの攻撃や、触手を切り落としながら接近戦に持ち込み、なんとかダメージを与えようとする。
「そぉれっ!」
「っく!近づけない…………!」
「僕のメモリのことはよく知ってるみたいだね。私が出すウイルスは感染力が強くなればなるほど毒性は弱くなる。裏を返せば、感染力が弱まるほどに強力な毒素を発揮する………………俺の腕に少しでも触れれば、流石の仮面ライダーといえど無事では済まないよ?」
かつての風都では、メモリを所持していた人物の精神と同化するという極めて稀な現象で現れた。
精神エネルギーと同化したドーパントは大幅に弱体化してしまう。しかし、それだけの弱体化を受けておきながらも、風都の探偵たちを苦戦させるほどに強力なドーパントなのだ。
そんなドーパントが、メモリの力を完全にコントロールできる宿主の元に行けばどうなるか。
「ほら!ほらほらほらほらほら!早く逃げないと死んじゃうよ!君の真価を見せてくれ!」
考えうる限り最悪のコンビネーションを発揮していた。
再生する触手を鞭のようにしならせ攻撃してくる。
もちろんその触手が触れた瓦礫はシュワァッと溶けるような音を出して崩れる。
「ならっ………!フンッ!」
瓦礫を投げつけ、触手の注意を向かせる。
(奴から生える触手は約5本…………さっきの不意打ちで本体はそれなりに脆いことが分かった。ここでさらに一太刀浴びせる!)
『エレクトリック!』
地面を蹴って跳躍する。
ダメージを防ごうと2本の触手が襲いくる。
「ハァァ!!」
「っぐぅ…………!やるね、2本同時に切るなんて!」
「貴様の体は脆いからな…………おおかた、研究職なんで戦闘なんて滅多にやってなかったんだろう。戦術が単調でわかりやすい。」
「流石に現職の治安官は違うなぁ。でも、これならどうだい?」
先程まで5本の触手が見えていたが、触手の数が8本に増える。
「これでさっきのようにはいかない。さあ、もっと頑張っておくれ!もっと君の真価を僕に見せてくれ!!」
その攻撃は、もはやただの触手による殴打ではなかった。
ただ数が増えただけ。ただそれだけの変化なのに。たった3本増えただけなのに。
「っぐ!っがぁ!?」
8方向からの攻撃は、先程よりも照井を捉える。
5本の時には当たらなかった攻撃が、徐々に当たるようになる。
一撃一撃は軽い方だが、それでも当たる数が増えてくる。
そしてその攻撃一つ一つが、徐々に仮面ライダーの装甲を溶かしていく。
「クソッ………が!!」
ガチッ『マキシマムドライブ!』
「一気に…………振り切るぜ!」
「そうだ!それで決めてみせてくれ!」
危機を感じた照井は、奥の手であるマキシマムドライブを使用する。
必殺キック、アクセルグランツァーがバイラス・ドーパントに降りかかる。
しかし、その攻撃は届かなかった。
「触手を撥ね飛ばしながら必殺キック……………確かに、悪くない攻撃だね。しかし、だからこそ弱点がある。仮面ライダーと言えど1人の人間。股間節や大腿骨を抑えられしまえば、キック力は半減する。そして、少しでも威力が下がれば、私の触手で君を止めることなど容易い。」
「なっ…………!?ッグアァァァ!!!」ギリギリギリギリ!
触手でキックを止められ、締め上げられる照井。
「子供の時、誰しも虫を捕まえたことがあるだろう?大事に握っていたら、いつの間にか手の中で弱って死んでしまう。それほどに握り潰すという行為は中の生命体にダメージを与える。君の強化された外骨格全体は潰さなくとも、中身の骨くらいなら潰せるさ。」
触手によって壁に投げつけられ、壁に大きなクレーターができる。
「しかし…………君の使うアクセルメモリは俺のバイラスより強力な筈だが…………少し期待外れだったかな。」
「ぐ………が…………」
足を掴まれ、ブランと宙吊りになる。
「でも、貴重なサンプルだ。折角だし色々打ち込んでみるか。」
ドスッ「うぐっ!?」
触手が腹部を刺す。バラバラと腹部の強化外骨格が剥がれ、中の肉体が見える。
「さあて、『加速』の記憶を持つ君が、どれだけ耐えられるか……………期待しておこう。」
触手が腹を貫こうと照井に迫る。
(くそッ……!!ここまでか………!)
死を覚悟したその時。
ホロウ全体を揺らすような爆発音が響く。
「なんだ………?デッドエンドブッチャーが暴れてるのか…………それとも、解体工事をもう始めちゃったかな?」
ほんの一瞬。少し爆発に気を取られたバイラス・ドーパントが再び照井を見ると、そこに照井はおらず、何者かが照井を救出していた。
「ッ!?」
「っぐう………?!」
照井が目を開けるとそこには、剣を携えた何者かが立っていた。
どうやら助けてくれたらしいが、その人物の顔はフードに隠れて見えず、その背格好にも見覚えはない。
「あ、あんたは……………」
「…………………」スッ
するとその人物は、外套の胸元からメモリを取り出す。
『NASCA…………』
「何ッ!!?」
照井は、その光景を信じられなかった。
青色の外皮に、剣を携えたドーパント。
目の前にいるのは間違いなく、ナスカ・ドーパントその人だった。
「ナスカ・ドーパントだと!?」
「へぇ…………まさか君が、ねぇ。一体全体どういうこと?まさか、僕の実験を邪魔しに来たわけじゃないよね?」
「…………………」
ナスカ・ドーパントは、何も言わずに照井の方を向く。
満身創痍の照井に、何かを差し出した。
「こ、これは………………」
「使うも使わないも、お前次第だ。仮面ライダーアクセル。」
それだけ言い残し、ナスカ・ドーパントは去っていった。
「何しに来たんだろ……………あれ?何かいいものでも貰ったの?」
「あぁ…………お前を倒す、鍵をもらった。」
あのナスカ・ドーパントが何を考えているのか。
奴が残した『これ』を上手く扱えるのか。
「やってやる………!!このメモリで、お前を倒す!」
『HEAT!』
「何ッ!?ヒートメモリだと!?」
ベルトにヒートメモリを装填し、マキシマムドライブのエネルギーが臨界点に到達する。
その瞬間、アクセルの体が燃え上がり、炎に包まれた。
『HEAT!マキシマムドライブ!』
「これでウイルスは効かない!あとは!」
『ACCEL!マキシマムドライブ!』
「これで…………決める!!」
追加でアクセルメモリも装填し、マキシマムドライブのエネルギーが二重で体にのしかかる。
「ツインマキシマム…………!!あぁ、やはり私の目に狂いはなかった!君は、最高のモルモットだ!!」
「心火を燃やして………ぶっ潰す!」
その場で足のタイヤを駆動して高速回転すると、炎の竜巻となる照井。
その状態で跳躍し、回転の勢いのまま必殺キックを放つ。
「アクセルッ!トルネードヒートグランツァー!」
回転の勢いを抑えられず、触手が焼け爛れる。
ウイルスによる相討ちもならず、バイラス・ドーパントの身体に照井の脚がめり込む。
「っぐぅあぁぁっ!!」
バイラス・ドーパントが吹き飛ばされ、大爆発を起こす。
「絶望が、お前のゴールだ………!!」
決め台詞を吐き、相手を見つめる。
「これで流石にメモリブレイクしたはず…………っ!?」
吹き飛ばされた先にドーパントはおらず、周囲にも気配を感知できない。
「逃げられたか……………」
メモリを抜き、返信を解除する照井。
「一体、何者だったんだ……………いや、こうしてる場合じゃない!爆発があったということは、ニコたちの元へ向かわなければっ…………うぐ!?」
追いかけようとしたその時、足元がガクンと崩れる。
ツインマキシマムの反動、そして身体に蓄積したダメージが予想以上に大きかったようだ。
「ックソ…………ここで、倒れるわけには………!!」
意識が朦朧としてくる。視界が揺れ、足元がおぼつかない。
それでも歯を食いしばり、立ち上がろうとする照井。
しかし、その精神に肉体は着いていけなかった。
「グハッ………………」
膝から崩れ落ち、地面にうつ伏せになる。
もはや腕一本、指一本すら動かすことなどできない状態だった。
腕や足、腹から血の温もりを感じる。
彼の肉体は、既に限界を超えていた
「ハァ……………ハァ………………」
(こんなところで…………倒れるな…………!前を向け!立ち上がれ!お前がここにいる意味をっ………!!)
どれだけ頭の中で叫んでも、体は答えてくれなかった。
次第に瞼が重くなり、景色が虚になっていく。
「ク…………ソ………………が………………………」
景色が端から黒く染まっていく。
意識が途切れようとした最後の最後。
「照井さん!しっかり!しっかりしてください!」
「班長!俺が運びます!班長は通報のあった場所へ!」
薄れゆく視界の端に映った、優秀な治安官の顔。
それが照井が見た最後の景色だった。
あれから二日後。照井はルミナスクエアの病院の個室でニュースをつける。
彼が寝ている間に、事件は大きく進展した。
今回の事件の最重要人物にして、ヴィジョンコーポレーション代表であるパールマンは逮捕。裁判にかけられることとなった。
カンバス通りの住人たちは無事に全員避難。奇跡的に死傷者は0だったとのこと。
「竜さん!お見舞いに来たよ〜!」
「怪我の調子はどうだい?とんでもなく傷ついてたって聞いたのだけど。」
「回復は順調だ。明日にでも退院して復職する。」
「さっすが、不死身の男だね!」
邪兎屋の連中はというと、今回のヴィジョンコーポレーションの悪事を暴いたとして、一躍ヒーロー扱いされていた。
ニコはこういう時に口が上手く、住民への慰謝料と損害補償として大企業から大量にぶん取るつもりらしい。
「ニコは………ニュースを見る限りは大丈夫そうだな。」
「アンビーも猫又もビリーも無事だよ。病気もあのワクチンを打ったら発症しなかったし!」
「結局、あれは何だったんだろうね。即効性のワクチンで、大量に置いてあった。」
「わからん…………財団Xが何を企んでいるのか、さっぱりだ。」
あの日、窮地を救ったワクチンと青いナスカ・ドーパント。
あの二つの関連性が無いとは、とてもじゃないが言い切れない。
2人と軽く雑談していると、扉がノックされる。
「お疲れ様です、照井さん。お見舞いに…………おや、お邪魔だったでしょうか?」
「うむ、知人との団欒に水をさしてしまったようだな。」
「わわ!?治安官さん、だよね?竜さんのお友達?」
「あぁ。同じ治安官だ。紹介する。俺の友人の、アキラとリンだ。こっちは同僚の朱鳶と青衣。」
「初めまして!竜さんがお世話になってます!」
「あぁどうも……………あの、お二人とはどういったご関係で?」
「竜さんは治安官になる前、僕らのビデオ屋で働いてたんですよ。そんな竜さんが倒れたって聞いたから、急いで六分街から飛んできたんです。」
「なるほど…………ご歓談中に割って入ってしまってすみません。」
「いえいえ!私たちも、ちょっと立ち寄っただけですから。」
アキラとリンは治安官の2人が来ると、そそくさと出ていってしまった。
「よいお友達ですね。」
「ああ、いい奴らだ。リンゴも置いて行ってくれたしな。」
「割って入ってすまなかったな。しかして照井殿。先の戦闘ではかなりの重傷を負ったと聞いたぞ。一体何があったのだ?」
「…………お前たちには、話しておくべきだな。」
そうして照井は2人に事の顛末を話した。
邪兎屋や猫又のことは上手い具合に煙に巻き、要所要所を話していく。
「なるほど……………報告であった感染症は、財団Xが関わっている可能性が高いと。」
「俺が対峙したドーパントが、ご丁寧に全部話していった。録音はできなかったがな。」
「充分な情報じゃな。奴らの目的がわかれば、幾らか対策のしようもあるというもの。今までの霞を掴むような状況が変わったのだからな。」
「そう言ってくれると助かる……………あのワクチンの解析は済んだか?」
「はい。化学処理班からの報告だと、今まで発見されたどのウイルスにも適合しないものだそうです。空気中に出ると死滅してしまうらしいので、感染の心配は無いそうですが。液体の中から、人体の免疫を活性化させる役割を持った成分も発見されたらしく、今本部が全力で解析中です。」
「どんな年齢層にも適応可能で、尚且つ免疫を活性化させる薬か。確かに、そりゃあ革命的だな。上層部やトップスが注目するわけだ。しかし、そんなものまで作れるとは…………財団Xは、良くも悪くも本気で『楽園』を創るつもりみたいだ。」
窓から外の景色を眺める。
人々が平和に暮らすこの街にも、見えない場所に悪は潜んでいる。
しかし、その全てを殺すことも消すこともできない。
「この世から悪は無くならない…………それでも、正義と平和を守る者がいなければ、この街の秩序は崩壊してしまう。だから俺は、奴らの目論見を阻止しなければ。」
「……………照井さん。お話があります。」
姿勢を直し、真剣な眼差しを向ける朱鳶。
思わずこちらも背筋が伸び、朱鳶の目をしっかり見る。
「是非、特務捜査班に入りませんか?これは私個人だけでなく、特務捜査班班長の朱鳶としてのお願いです。」
「…………前にも一度、誘われたことがあったな。あの時は青衣からだったが。」
「これは正式なスカウトです。あなたが立ち向かおうとしている相手は、あまりにも大きい。特務捜査班なら、もっと戦いやすくなります。それに、我々特務捜査班としても、財団Xを危険組織として追わなければなりません。どうか…………あなたの力を貸してください。お願いします。」
深々と頭を下げる朱鳶。
「…………顔を上げてくれ、朱鳶。」
「照井さん……………」
「俺から切り出すべきだったな………君のような人に頭を下げさせることになるとは。」
「っ、じゃあ!」
「俺からも、よろしく頼む。朱鳶班長。」
照井の差し伸べた手を朱鳶が握り返す。
朱鳶と照井。二人の治安官の出会いが、新エリー都に大きな風を吹かす事を、まだ誰も知らない。
一章終幕です。助けてくれたのは一体何彦さんなんですかねぇ。
今回のタイトル解説です。
Nの落とし物→猫、NASCA
Vの野望→VIRAS、ヴィジョンコーポレーション
結構簡単でしたね。次回、幕間に入ります。
ヒロインは誰にする?
-
リン
-
エレン
-
朱鳶
-
青衣
-
ジェーン
-
その他