Nが来る/レッツ、パーリィータイム!
パールマンの事件からしばらくしたころ。
特務捜査班に一人の来客があった。
「照井さん。お客さんですよ。」
「俺に?…………わかった。」
本人は応接室で待っているらしいので向かうと、かなり個性的な格好の者たちが二人見えた。
一人は執事の格好をした狼のシリオン。そしてもう一人は、デッドエンドホロウで出会った緑髪メイド服の少女だった。
「お待たせした。君は…………あの時の。」
「あっ、は、はい!お久しぶりです!治安官様。カリンです!」
「初めまして、照井竜様。私、こちらのカリンの上司に当たります。ヴィクトリア家政のフォン・ライカンと申します。以後お見知り置きを。」
「あぁ…………それで、話とはなんだ。」
「本日お訪ねした理由が三つほどございます。一つ目は、先日のお礼です。我が社の従業員、カリンを救っていただき、ありがとうございました。」
「ご丁寧にどうも。」
「二つ目に、照井様宛のご招待状を預かっております。」
蝋封をされた招待状を渡される照井。
「すまない、市民からの贈り物は、現場で中を改める必要がある。ここで開けても構わないか?」
「ええ、構いません。」
封を開け、中身を確かめると、手紙以外は何も入っていないことがわかる。
手紙の内容を確認すると、六分街出身の市議会議員からの就任パーティーの招待状だった。
「開催日は一週間後、か。」
「ご拝読いただきありがとうございます。参加の可否につきましては特にこの場で言及は致しません。」
「ああ。それで、三つ目は?」
「三つ目は、照井様にお伝えしたい事案があってのことでございます。こちらをどうぞ。」
今度は封をされていない紙を受け取る。
折りたたんである紙を開くと。
『貴殿のパーティーに恐怖の爆弾を仕込んだ
解除は不可能! 逃げられない悪夢に怯えるがいい』
「これは………脅迫文か。」
それは新聞のフォントを切り抜いて作られた脅迫文だった。
「そちらの脅迫文は、昨日ご主人様宛に送られたものでございます。」
「それで、俺に極秘で警備を頼みたいと?」
「お話が早くて助かります。今回の就任パーティーには、多くのブルジョアジーの方々が賓客として招待されております。事を荒立て、その後の市政に影響を与えたくないという、ご主人様たってのご依頼でございます。」
「なるほど……………わかった。要人警護任務として請け負おう。しかし、俺1人での警護となると些か心配だ。特務捜査班で情報を共有させてもらうが、構わないか?」
「問題ございません。ご主人様からは、大事にだけしないようにとだけ指示をいただいております。我々ヴィクトリア家政も多少の警備、警護を行わせていただきます故、計画の共有もお願いしたい次第でございます。」
「了承した。話を通しておこう。」
話を済ませると、深々と礼をして執事とメイドは去っていった。
そして、一週間後。舗装された森の中を走る治安車両の中。
「今回の任務、少し人数が少なくありませんか?」
「そもそも犯行が起こるかどうかわからないんだ。最低限の人員しか割けない。」
「何じゃセス坊。我らでは役不足と申すのか?」
「いえそんなこと!ただ、複数犯だった場合心配だな、と。」
「まあ心配いらんだろう。俺たち特務捜査班と議員が個人的に雇った警備係がいるらしい。万が一のために機動隊も待機してくれている。何も起きないように立ち回るだけだ。………それで、班長。」
「なんです?」
「君、人前で着れるドレスの一着や二着くらい、持ってきたんだろうな?」
ギクッとわかりやすく図星な朱鳶。
「………持ってないんだな。」
「こ、こういうパーティーは初めてで…………表彰式には呼ばれたことはあるのですが……………」
「心配するでない、朱鳶よ。今回の会場は、定期的に舞踏会を開いておるらしい。衣装のレンタルもしておるそうじゃ。適当なものを見繕ってもらうと良い。」
「そうなんですか?よかった……………」
治安車両でしばらくの間森の中を走ると、美しい洋館が見えてくる。
駐車場に車を停め、玄関に向かうと、銀髪のメイドと狼の執事ライカンが礼をして待っていた。
「いらっしゃいませ。朱鳶様、照井様、そして治安局特務捜査室の皆様、本日はようこそお越しくださいました。本日ご主人様より警備とその他雑務の責任者を仰せつかっております。執事のライカンと申します。」
「メイド長のアレクサンドリナ・セバスチャンですわ。お気軽にリナとお呼びください。本日のメイド業務は、私を含めた三人で行いますわ。」
「治安局特務捜査班、班長の朱鳶です。本日はよろしくお願いします。早速ですが、まずは会場のチェックをさせてもらいます。」
「かしこまりました。では、ご案内いたします。」
ライカンに案内され、会場に入る。
「館内はくまなく確認しましたが、予告の爆弾らしき物は確認できませんでした。」
「となると、犯人は関係者か招待客に絞られるな。」
「本日の関係者はなるべく少数で、身柄のわかる者を厳選いたしました。私とメイド三名、そしてコックが三名でございます。」
「治安官は、俺、班長、青衣が来客として潜入。残りの者四名はウェイターとして来客を見張る。」
「かしこまりました。あちらの部屋に、お召し物をご用意しております。ご活用くださいませ。」
「先輩、どうですか?」
「うむ。特段強い電磁気も感じぬ。少なくともこの会場には遠隔の爆弾は設置されていないようであるな。念の為、一度屋敷を散策してみるとしよう。」
「なら、俺と青衣で確認してこよう。他の者たちは、なるべくパーティーに溶け込めるよう準備を。ライカンさん。ウェイターとして恥ずかしくない程度には教育してやってくれ。」
「お任せください。」
「では朱鳶様。活動しやすいお召し物を着合わせますので、こちらの部屋へどうぞ。」
各自行動を開始し、数時間後。
会場に続々とVIPの客が入場してくる。
「こういうスーツは着慣れないな……………」
「カッチリとしてて、少し動きづらいです。尻尾も多少しまわなきゃいけないし。」
「ウェイターの制服、似合ってるじゃないか。誰がどう見てもその道の者だ。」
「やめてくださいよ……………あ、班長たち来ましたよ。」
ドレスに着替えた朱鳶と青衣がやってくる。
「少し動きづらいですね…………武器も最低限しか持てませんし。」
「様になっておるぞ、朱鳶よ。」
「よし、全員配置についたな。無線は常にオンにしておけ。」
耳元に小型の無線機を付け、全員配置につく。
すると、朱鳶、照井、青衣の元に1人の男と執事のライカンが訪れる。
「これはこれは!ようこそお越しくださった。今日はようこそ、私の就任パーティーへ。」
「ご無沙汰しております、ルーディーンさん。この度は市議会議員へのご就任、誠におめでとうございます。」
「君が照井竜君か!話は聞いているよ。六分街の英雄だってね。いづれ新エリー都の市長になる私の友人として相応しい!」
「身に余る光栄です。」
「おや、隣の君は治安局の朱鳶さんだな?テレビで見たよ!去年の最優秀治安官だってね。」
「ルーディーンさん。本日の私たちは、あくまで潜入捜査中です。あまり目立つわけには……………」
「いいじゃないか!むしろ、君たちの近くにいた方が安全そうだ。ハッハッハ!」
豪快に笑うガタイのいい男、ルーディーン・ストラウス。
六分街、七分街の民衆から高い支持を得て市議会議員へと成り上がった今話題の大物議員だ。
「ご主人様。もう間も無くかと。」
「おお、そろそろか。まあ、ただの悪戯かもしれんからな。まずはこのパーティー、楽しんで行ってくれたまえ!」
壇上に上がり、挨拶を始めたルーディーン。
「…………本当にあれが、爆破予告をされた要人なんですか?」
「ああいう人だ。その胆力と豪快さでルミナスクエアを一気に盛り上げた張本人だからな。彼の思想についていく学生も多い。」
「炎のように熱い男であるな。しかし、そういう者を妬む者も多い。警戒は絶やせぬな。」
パーティーは進み、しばらく経った頃。
軽く食事を済ませ、怪しい者がいないか警戒を続けるも、それらしき人物は一向に見つからずじまいだった。
「どうやら、杞憂だったようだな。」
「だといいですけど……………あ、フォークダンスが始まりましたね。」
「…………!照井殿。すこぉし耳を貸すがよいぞ。」
「?なんだ青衣…………」
ごにょごにょと何かを耳打ちされ、少し抜けた表情の後に額を抑える照井。
「青衣先輩、照井さんに何を吹き込んだんですか。」
「なぁに、ダンスの中に実行犯が紛れ込み、相手の女性を人質にとったりなどするやもしれんからな。少し中に入って来た方がいいのではと助言したまでよ。」
「…………まあ、可能性は捨てきれん。しかし、中央に視線が集まるのも確かだ。周囲を警戒しておいてくれ。」
「あいわかった。ではこの朱鳶と共に踊るがよいぞ。」
「え、私が踊るんですか!?」
「お主以外に誰がおるのだ?ステップは単純。この程度朝飯前であろう?」
「嫌じゃなければ手伝ってくれ。嫌なら適当な相手を探す。」
「いえ、嫌なんてそんな!あの、失敗したら笑ってくださいね…………?」
朱鳶の手を取り、フォークダンスに飛び入りで参加する。
手取り足取りは、事前にライカンから軽く指導を受けていたので、それらしい形にはなる。
「…………怪しい者はいないな。皆ダンスに興じてる。」
「あっ、ああの照井さん!?ちょ、ちょっと近くないですか!?」
「こういうものだ、気にするな。俺だって初めてなんだ。ゆっくりやろう。」
「そ、それはそうですが…………!」
照井はいつものポーカーフェイスを保っているものの、朱鳶は突然の状況に戸惑っているようだ。
「落ち着け。これも仕事だ。頭の中で仕事中と5回唱えろ。」
「は、はい……………」
(これは仕事、これは仕事、今は仕事中、今は仕事中、今は仕事中……………)
何回か唱えると緊張もおさまり、周りも見えるようになった。
「すみません、落ち着きました。」
「気にするな。警戒を怠るなよ。」
落ち着いた様子の朱鳶と共にフォークダンスをやりきる照井。
「なんとか乗り切ったか…………各員、異変はあったか?」
『こちらステージ付近。特に異常はありませんでした。』
『フロア西側も異常なしです。』
「よし、このダンスが終われば、もうすぐパーティーもお開きだ。各員、気を抜くなよ。」
「よき"だんす"であったぞ、朱鳶に照井殿。」
「先輩………あんなところにいきなり入れるだなんて、ひどいです。」
「よいではないか。初心者とは思えなんだ。」
「照井さんがリードしてくれていたからですよ。ところで、どこであんなテクニックを?」
「…………ライカンさんに、軽く教えてもらっただけだ。大それた動きはしてない。さて、何はともあれラストスパートだ。パーティーはもうすぐ終わる。各員、最後まで気を抜くなよ。」
それからしばらく経っても異常は無く、お開きムードが漂い始める。
「何もなくてよかったですね。班長!」
「まだ気は抜けないわ。全員の帰宅を確認するまでが任務よ。」
ほんの少し警備も気が緩む。
そして、そのお開きムードは、一つの悲鳴に掻き消された。
「キャァァァーーー!!」
「ッ!朱鳶!青衣!」
「現場に向かいます!」
「他の者は客を守れ!ライカンさん、出席者が足りているか確認してくれ!」
『かしこまりました。ご武運を。』
照井も朱鳶と青衣と一緒に悲鳴が聞こえた場所へ向かう。
二階から聞こえた悲鳴の在処は、階段を上がってすぐにあったラウンジで発見される。
「これは…………!」
涙を流して震える女性と、男性の死体があった。
「照井さん、これは…………!」
「あぁ…………殺人事件だ。そして………犯人はまだ、この館の中にいる。」
感想、批評、誤字報告お願いします。
最後のセリフは一度書いてみたかったんですね。作者の欲が出ました。
ヒロインは誰にする?
-
リン
-
エレン
-
朱鳶
-
青衣
-
ジェーン
-
その他