新エリー都で………振り切るぜ!   作:気まぐれな富士山

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新章開幕です。


一章:Nの落とし物
Iを止めないで/六分街連続凍死事件


 

 

俺が治安局ルミナスクエア署の署員に配属されて早二ヶ月。季節は初夏が迫り、徐々に暑さを感じるようになってきた。

治安局はかなりの人手不足らしく、実技試験と簡単な筆記試験のみですぐに治安官を名乗れた。

治安局は実力主義。治安官の昇格の有無はその事件解決数や安全の貢献度で決まる。

 

「照井くんが捜査班班長に就任だ!」

「照井さん、とんでもないスピードで昇格してくわね……………」

「あの朱鳶治安官の記録に追いつくぐらいの事件解決数だもの。とんでもないわ。」

「どこからともなく現れて、被疑者確保もホロウの迷子も救っちゃうんだもの。」

「それで書類仕事もそれなりに出来るとか、超エリートね!」

 

この二ヶ月間、俺は毎日必死で治安維持に取り組んだ。

アクセルにはあまり変身する機会が無いので、愛車のディアブロッサを乗り回し、速度重視で解決していく。

全ては『照井竜ならそうするから』という理念の元。

そう考えると謎の力が湧いてくるのだ。

 

「照井治安官〜!この後、ランチでもどうですか〜?」

「通りに新しいレストランが出来たんですよ〜。一緒に行きませんか〜?」

「あぁ………すまない。この後、目下捜査中の事件についての会議があるんだ。また誘ってくれ。」

「はぁ〜い。会議頑張ってくださいね〜!」

 

女性事務員の誘いを断り、会議室に向かう。

 

「あんな可愛い子たちからのお誘いを断るなんて、本当に仕事バカだねぇお前さんは。」

(やいば)さん…………俺たちの仕事は市民を守ることですよ。休んでなんていられません。」

「へいへい。手厳しいこって……………」

 

話しかけてきたツボ押しを持ち歩いている刃野刑事のような男の名は(やいば)治安官。このルミナスクエア支署の先輩で、優秀な治安官の一人だ。

元々は上司だったが、俺の異常な出世スピードで今や対等な存在になってしまった。

今では同じルミナスクエア支署捜査班のバディである。

会議室に着くと、ルミナスクエア支署の捜査班が既に大半集まっていた。

しかし今日はそれだけでなく、見知らぬ顔も座っている。

 

「刃さん、あれって……………」

「おう。俺も最初はビックリしたぜ。まさかあの朱鳶(シュエン)治安官率いる特務捜査班が出向いてくれるとはな。」

 

朱鳶(シュエン)。完全無欠のエリート治安官。

治安局の広告塔にもなっていた彼女の事件解決率は、なんと驚異の100%。今まで携わった全ての事件を解決に導いている。

 

「初めまして。ルミナスクエア支署捜査課、捜査班班長の照井です。」

「同じく副班長の刃です。よろしく。」

「治安局本部捜査課、特務捜査班班長の朱鳶です。よろしくお願いします。」

「朱鳶のバディ、捜査用玉偶の青衣(チンイー)じゃ。よろしく頼むぞ。」

 

今回本部から派遣されたのはこの二人のみらしく、本来なら心許ないが、エリート揃いの特務捜査班で事件解決数No.1のコンビともなれば、過剰すぎるくらいだろう。

それ程までに、異常な事件なのだ。

 

「では、会議を始めます。まずは事件の概要から。お手元の資料をご確認ください。」

 

ホワイトボードに貼られた写真とマーカーで事件の概要を固めていく。

 

「発生場所は六分街七番通りの1-8-7にあるアパート《星雲荘》の2階203号室です。住民からの通報により事件発覚。えー、信じ難いことですが………男性が部屋の中で凍死したと見られています。」

 

部屋の中での凍死。本来ならあり得ないことだ。

しかし、これを聞いた捜査班の面々は、またかと言うような表情を浮かべる。

 

「鑑識の結果、遺体は家主であり六分街で古物商を営む星宇(シンユー)氏27歳独身のものだとわかりました。通報時刻と死亡推定時刻から算出して、星宇氏の殺害は帰宅後に起こったものと考えられております。遺体に外傷は見られなかったものの、鑑識が訪れた際には既に芯まで凍りついており、零下190℃に近い液体窒素などに一定時間触れた、または照射された可能性が高いです。鈍器のようなものや、残留エーテル物質も確認できず、違法ホロウレイダーによる犯行の可能性も低いと思われます。アパートの防犯カメラを確認しましたが、この時間帯に星宇氏の部屋の中に入った人物は3名います。」

 

第一の容疑者、松野カエデ氏。

大型ショッピングモールに勤務する27歳女性。

星宇氏とは恋人関係であり、付き合い始めて4ヶ月だそう。

その日の17:07に星宇氏の部屋に入り、18:25に部屋を出ている。

 

第二の容疑者、アリア・セスウェル氏。

大手建設会社、ヴィジョンコーポレーションに務める31歳女性。

星宇氏の営む古物商店の常連であり、面識も深かった模様。

その日は18:34に星宇氏の部屋に入り、18:58に部屋を出ている。

 

第三の容疑者、明玉(ミンユー)氏。

地元の高校に通う18歳女性で、今回の第一発見者でもある。

星宇氏の姪であり、かなり仲が良かった様子。現在は叔父である星宇氏の家で2人で暮らしていた。

19:24に帰宅し、一度コンビニまで向かい、帰宅した際に変わり果てた叔父の姿を発見し通報した。

 

「以上3名が被疑者として上がっています。犯行は明玉氏の外出から帰宅までの間に行われており、その時間帯に監視カメラに映った人物はいません。」

 

捜査の範囲でわかったことだけでは、犯人を絞ることはできない。

 

「事件の概要は以上です。何か質問のある方はいらっしゃいますか?」

 

司会の問いかけに皆答えない。

それも当然である。

この事件は、連続して起こっているのだから。

 

「照井班長、お願いします。」

「…………皆察している通り、室内で起こった凍死事件はこれが4件目、いずれも未解決だ。皆が萎縮する気持ちもわかる。しかし、ここで犯人を特定せねば、六分街全体に不穏が走る。市民の安心と安全を守る治安官として、なんとしてもこの事件を解決せねばならない。各々捜査と聞き込みを徹底し、我々の威信に欠けて、必ずホシを挙げる!」

『はい!!』

「以上で会議を終了とする。捜査班、出動!」

 

全体の指揮を取る班長として、ここで捜査員全体の士気を上げる。

 

「かっこいいじゃねぇか、班長。」

「格式ばった会議は必要ありませんから。俺たちも行きましょう。少し気になることがある。」

「照井治安官!」

 

刃と会議室を出ようとすると、朱鳶に声をかけられる。

 

「素晴らしい演説でした。班の雰囲気が一気に良くなっています。」

「なんの。治安官としてすべきことを提示したまでですよ。」

「それが出来る治安官はなかなかおらぬからのぅ。照井殿。もし苦でなければ、我々も現場へ同行しても良いか?」

「構いませんよ。治安車両を出しますので、そちらに乗ってください。」

 

刃が回してきた車に乗り込み、現場へ向かう。

 

「朱鳶さん。最優秀治安官の意見として聞いておきたいのだが、今回と前例の事件についてどう思われる?」

「そうですね…………関連性が無い、とは言い切れません。同一犯による猟奇的殺人なのか、挙げられた被疑者によるものなのか。そもそも、人間による犯行なのかすらも怪しいです。」

「それは我も気掛かりじゃった。仮に液体窒素を使ったとて、人間1人を凍らせるとなると相当な量と時間が必要になるじゃろう。」

「となりゃあ、やっぱりあの線がアツいか……………」

「あの線、とは?」

「…………朱鳶さん。これに見覚えはあるか?」

 

ポケットから一枚の写真を取り出し、後部座席の朱鳶に見せる。

 

「これは…………壊れた、おもちゃでしょうか?」

「これは、我々も現在捜査中の、未確認アイテムだ。ここのところ六分街と七分街で起こる事件の所々で発見されたアイテムで、被疑者はこれに強い反応を示していた。曰く…………これがあれば、超能力を得れるそうだ。」

「超………能力?」

「まるで映画のストーリーのようじゃな。」

「薬物でもやってるのかと思ったが、残念ながら全員陰性だった。あんたらの管轄では聞いたことないのかい?」

「私は知りませんね……………」

「我のデータベースにも似たようなものはないな。全く新しい系統の犯罪じゃ。」

「ウチの署では、この物体をメモリと呼んでいます。このメモリが関与してる…………と考えるのが、俺の見解です。」

「全ては、現場と被疑者の証言に隠されてるかもしれんのぅ。」

 

不穏な気配を残しつつ、現場に到着した面々だった。

 

 

 





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