ノノミASMRで思いついた流れ
「先生〜、当番に来ましたよ〜♪」
シャーレに元気な声が響く
彼女は十六夜ノノミ、元はネフェティスグループの令嬢様である
今や借金……無かったわ、綺麗なアビドスの二年生として存在している
先生と会うのはこれで三回目である
最初はもちろん借金返済のお話であるが……
その後の先生の働きぶりがあまりにやりすぎな為、癒す目的で来たとか、なんとか
彼自身は人に癒されるのを得意としていないので嫌がっているのだがノノミが強行している様子である
今日もまた、そうしてシャーレを訪れたのだが……
「……あら?いらっしゃらないのかしら」
いつもなら書類の山を音速で減らしている筈の彼の姿は無かった
副担任達も今日はシャーレにいない様子であった
むー、と不満気な声を上げていた彼女の耳はふいにある音を聞きつけた
風の、スースーと通るような音
「……寝息?」
僅かな音だったが、それは確かに寝息だった
優しげな、鈴のような音色の寝息
クスリとノノミは笑って音の方に歩いていく
そこはシャーレのソファだった
白い純白のレザーに青い線が入ったデザイン
そこに、彼は居た
「……スースー」
「あらあら〜」
手を腰あたりに置き、左腕をだらしなく垂らした状態で寝ていた
元はベレー帽を目隠しのように使っていたのだろうが今やベレー帽はずれてしまっている
そのおかげで彼の優しい寝顔が顕になっていた
「……うふふ、お疲れ様です、先生♪」
そう言いながら、カシャリと彼女は写真を撮ったのだった
……この後、モモッター上に写真が流出しかなりの騒ぎになったのは別のお話である
頭が痛い
ズキズキとした痛みや殴られた痛みが伸びていくような痛みを感じる
くぐもった唸り声のようなものが自分の口から出ていく
獣が死に際に残すような、汚い声
視界は歪み何がなんだ分からない状態だった
……しかし、それでも見えるものと聞こえるものがある
「…が……ぞ!……攻撃……!アリウス……!」
オレンジ色のマズルフラッシュ
僅かに見える緑の軍服と迷彩柄が施されたFALアサルトライフル
全てが瓦礫になり、崩れ落ちたそれを盾として攻撃をしている者がいる
アリウス……アリウス?
その言葉で僕は思い出す、そうだエデン条約の為にここに来たんだった
会議の途中で彼が「ミサイルが来る!」と叫んだ瞬間全てが爆発して…
そこまで考えることが出来るほど意識が戻った時、全てが鮮明になった
「来るぞ!銃を構えろ!」
絶えず響く銃声と瓦礫を照らすマズルフラッシュ
幽霊のように現れるシスターのような化け物とそれを貫く弾丸
そしてその奥に見えた、スクワッド達
……間違いない、エデン条約編の、アリウスによる襲撃を受けている
逃げなきゃ、生きる為に
僕はそう思って体を動かそうとする
「……ううっ……!?」
しかし動けない
よく見てみれば足が瓦礫の下敷きになっている
感覚があるのを見るにまだ"ちぎれていない"のだろうか
何とかもがいていた僕の声を聞いたのか、彼が"カードを使い"こちらに走ってくる
「大丈夫か!?」
彼は一通り僕の体を見た後に出血箇所を止血し始めた
パッドのようなものを当ててその上からガーゼを巻き始める
僕は呻くような声を上げながら言う
「足、が……」
「ッ足が瓦礫に……ワカモ!」
「承知しました」
いつの間にか現れたワカモが瓦礫をすぐさま退ける
はるか遠くにぶん投げられた瓦礫が誰かにぶつかったらしい、「うわぁぁーん!」と情けない悲鳴が聞こえる
いや、それどころじゃない
「足はまだ折れてない、挟まっただけだ……」
「なら良かっ……ううっ!」
「安静にしてろ!……ワカモ!そいつの救護!俺は奴らを抑える!」
「承知しました、貴方様」
彼が簡易的に足の損傷を確認する
瓦礫の重みのせいでジンジンと鈍い痛みが響く足だが、動かせない訳じゃない
しかし、それを動かそうとすればまた別の場所が痛むのである
呻く僕を彼はワカモに託し、戦場に戻って行った
そのワカモは、注射器を懐から取り出す
顔があまりに良くない顔をしている、使いたくないのだろうか
「……副担任様、今から尋常ならざる痛みを感じるかもしれませんが…」
……なるほど、嫌な顔をしていた意味が分かった
しかしそれで動けるようになるというのならば問題では無い
「頼む」
「!……分かりました、歯を食いしばって下さいな」
「あぁ──────────ッッッ!?」
注射と共に流れ込む液体
まるで沸騰したお湯をそのまま血管に流し込まれたかのような激痛
あまりの痛みに僕は声を抑えきれなかった
「ううっうううう、ぁぁあ"ぁ"ぁ"ぁ"……!!!」
瓦礫の山に、獣のような声が響き渡った
〇
「オタクゥ!お前もどうにかしろよォ!!!」
「やってる!こっちも相手の兵装をハックしようと忙しいんだよ!!!」
銃声、怒号、様々なものが入り交じった戦場
かつてトリニティの施設だったそこは一発のミサイルによって地獄と化していた
事前情報としてアズサから奇襲の策は聞いていたがここまでとは思わなかった
まさか勝手にいがみ合っているゲヘナとトリニティの会議中に聞き覚えのある音がするとは…
……で、今は…………
「その……ETOだったか?それをさっさとハックしろ!
ㅤじゃないとカードによる反撃が間に合わなくなる!」
「やってるつってんだろ!硬いんだよエデン条約機構がさぁ!」
途中、助けたオタクにETOの解除をやらせていたのである
あまりに銃弾の量が多すぎてアイツが何やってるか分からんが……
ちなみにETOとは「エデン条約機構」のことである
ゲヘナ学園とトリニティ総合学園から構成員を出し合い両自治区の紛争解決を行う機構、だったはずである
んで誰か知らんが勝手にそれを結んだ奴が居るそうだ
現れた幽霊のような「ユスティナ聖徒会」が現れたのである
……よく分からんが、あれが構成員ということだろうか?
だとすれば紛争解決には効果的だろうな、あんな化け物とは戦いたくない……
……いや、なんなんだよアレホンマ
俺はカードの力で召喚した生徒に命令する
「FOX1!アリウス生を徹底攻撃!」
「了解」
冷静に返事をし、相手に的確な射撃を始める
見ていて惚れ惚れする精度だ、流石SRTと言ったところか
「FOX2!味方全員に対して作戦を伝達!
ㅤ作戦名は「スネークイーター作戦」だ!」
「了解です、ルートは……この方がいいですね」
俺が内容を言っていないにも関わらず、彼女には伝わったらしい
カードで呼び出した特権という奴だろうか
「FOX3!ポイントマンとして前線を維持!崩されるなよ!」
「分かってる!簡単にやられちゃSRTの恥よ!」
元気があっていいな、最近の若者は
ユスティナとアリウスをなぎ倒しながら前線を維持するクルミを見ながら思う
「FOX4!これより前進する、死角の敵を頼む!」
『コピー、ここからじゃ先生と敵がよく見えるよ』
俺が言った瞬間敵が頭に.50BMGの弾丸を受けて倒れた
オトギが使用するのはかのバレット82だ、直撃は痛かろうて
そして、俺はカードを使用し運動能力を底上げする
後の代償が怖いが、今なら彼女達の動きに合わせることが出来る
アロナのバリアもある、撤退戦としゃれこもう
「行くぞ!」
……あ、因みにオタクくんはハック防御がクソすぎる余り口調が戻っちゃってるぞ
〇
どうして……
思わず、そんな言葉漏れる
その人は、目の前で銃撃を受けていた
何発も、何発も、何発も何発も何発も……銃弾を受けていた
盾になっているその人の血が、私に降りかかる
真っ白だった髪が煤と血で汚れていく
やがて、銃撃が止んだ
止んだというより、弾切れだった
「……どうして?」
また、そんな言葉が漏れた
私は貴方の……貴方の"左腕"を壊してしまった
些細なミスで、日常のような感覚で私は貴方の腕を破壊してしまったのだ
私の質問に、彼は答えた、答えてくれた
「"それが、先生……大人ってものだから"」
優しい、暖かな声
今にも死にそうな大人から出るとは思えない声
そして、初めて……私は彼から"当たり前の"会話を聞いた
「"……うぐ"」
「お前、本当に人間か……?まだ立ってられるなんて」
ボタボタと大量の血を流しながら彼は立っている
相手の反応もまた、当たり前のものだった
それに対して彼は笑う
「"生徒の為なら……命さえ投げ出せるさ"」
「……なら、死ね。シャーレの副担任」
タァン、と鮮血が散った
「……バァアカ野郎ォオオオオ!!!!」
「ぐうっ!?」
視界外から誰かが彼女に襲いかかる
人間とは思えないスピードと攻撃速度で相手を翻弄、そのまままスモークグレネードを投げる
「命を粗末にしやがって!このクソ副担任が!」
彼はそう叫ぶと彼を抱えて上げる
そして敵が居るであろうスモーク内を指さした
「FOX小隊!ワカモ!撤退の援護だ!近づけさせるなよ!」
「了解、カバーに入る」「「『ラジャー』」」
「承知しました、貴方様の手は煩わせません」
横から5人ほどの生徒が現れたかと思えばスモーク内に突撃する
視界はゼロだというのにスモークの向こう側から敵の悲鳴が聞こえてくる
その時、ちょうど1台の救急車が現れた
横にはゲヘナの校章が貼られている
「こっちだ!」
「回収します!」
担架を持ってきて、それに副担任を乗せる
そのまま素早いスピードで彼女は荷台に彼を乗せた
俺は後部の扉を閉めてガラスをガンガンと叩く
すると救急車は猛スピードで走り出した
「…空崎ヒナ!アイツを死なせたくないならボーっとするんじゃない!」
「……!わ、分かった……!」
放心していた彼女は俺の言葉で心を取り戻したようである
Mg42を持ち上げアリウスとの戦闘に戻って行った
俺はFALをリロードし、シッテムの箱を取り出す
ワカモが凄まじい動きで相手をボコボコにしている
これなら制圧もあと少しで出来るはずだ
「…"アイツら"を頼るまでもなかったな、待機させたツケを考えておくか……」
最悪を考えて取っておいた手は使わないようだ
もしそうなら悪いことをしたものである……まぁ、いいか
俺はシッテムの箱を懐に戻して戦線に戻るのだった
「"そうだねぇ……マエストロ、君の作品には正直いって感嘆したよ
ㅤ画面で見るよりも精巧で……恐怖的だ"」
僕はふっと笑いながらそれを見る
誰の憎しみか分からないそれが、一つの作品が僕たちに襲いかかってくる
でも、あれは脅威じゃ無い
何せ僕には……僕たちには力がある
「原作」を超えるほどの、圧倒的な力が
「俺は悪趣味にしか思えん、何をどうしてあれを傑作と言うんだ……?」
「ランボー殿、マエストロ閣下の作品は凡人には理解出来ぬぞよ」
「理解したくねぇよあんなもん」
彼は溜息をつきながら1枚の「カード」を取り出した
それを見てオタクは下卑た笑いをして、「カード」を取り出す
愉快な仲間たちが居る、しかしその仲間たちは愉快なだけでなく……強い
僕はそう確信して「カード」を取り出した
「"使いたくなかったんだけどね……反則と行かせてもらうよ"」
「アビドス高等学校、行くよ」
「りょ〜かーい」
「FOX小隊、戦闘準備」
「コピー、weaponfree。」
「解けぬ暗号は無いね」
結果は、語るまでもない
読み返して見れば最後の場面、オタク先生だけソロという悲しい絵面なの笑える
……え?ケツピン語録?次話には戻ってるんじゃないかな