「……」
瓦礫の散らばったエデン条約の会場
今現在は自警団や正義実現委員会が瓦礫の除去を行っている
あれほどあった瓦礫の山が片付いていくのは壮観だが……
「やれやれ、面倒事だったな……」
攻めてきたアリウス分校のヤツらを思い出すと頭痛がしてきた
ETOもなんとかシャーレの元に制定し制御を奪い返すことが出来た
補習授業部達にナギサを任せってきりにしたのだが何故かナギサが「あはは」に過剰反応するようになってたし……
…いつの間にかミカが犯人に仕立てあげられてるし……
ミカの件はオタクが対応したそうなのだが、よく正実を動かせたものだ
そこからどうやってミカが幽閉されるに至ったか分からんがもう気にする必要も無い
何はともあれ、面倒事は一旦区切りがついた
アリウスの追跡も仕事にはあるが、ウイ達のところにある古の本が復元出来れば道を辿れるはず
まだ題名しか分からないが、あの迷路のような洞窟の地図もあるらしいのだ
……時間はまだある、エデン条約は制定されている
仕事もかなり周りに回ったものだが…やれやれ、この先も面倒そうだ
因みに、補習授業部は結局存在している
主な原因はバカとバカとバカのせいであるが……
何とも面倒なお話だ、クソが
……ふいに、合宿先でアズサを締め付けた時の会話が過ぎる
『俺はお前の地獄より地獄を体験しているんだ』
『赤子の赤子、ずっと先の赤子まで……』
『分からないとでも思ったか?お前のトラップはお嬢様学校の物じゃない
ㅤ明らかに……訓練を受けている仕組みだ』
『ガキはガキらしく遊んどけよ……』
「……全く」
その後浦和に見られるとは思ってなかったし、自分の過去を言うことになるとも思っていなかった
何が好きで自分の過去を言わなければならないのだか…
しみったれた、糞のような過去に
「ん?」
その時、携帯が震えた
誰からか通知が来ている様子だ、私は携帯を取り出す
非通知のメールだ、主は「"黒服"」…んだコイツ
要件のところには座標と、会って話をしたい旨があった
座標を貼られても困る話だが……シッテムの箱を取り出す
「アロナ、この座標は分かるか」
『はい!キヴォトス有数の高級店です!お寿司が美味しいと有名ですよ!』
「……なるほどな」
深いため息をついてシッテムの箱を仕舞う
明らかな面倒事の匂いに俺は顔を顰めた
ロクなことでは無いだろう、恐らく、確実に
「……今夜は仕事せずに寝るかね」
そう呟きながら、私はその場をケツピン達に任せて移動するのだった
因みにケツピンは語録が元に戻っていた、生命の危機にならねぇと普通に喋れねぇのかテメーは
まるで制約があるみたいだな、強大な力の
……いや無いか、HAHAHA
〇
キヴォトス、中心区
基本的に有名企業がうるさく宣伝してたりクロノスが面白おかしくニュースを流していたり……
ともかくやかましいそこなのだが、夜になると全てが静かになっていく
日々の銃声も、抑えられた物になっている
そして、ある男が大きなビルの前に立った
「……ここか」
そこはカイザーという企業が運営する高級店
一般ピーポーなら手足どころか舌すら出せないすっげぇ高い店である
普段ならこういう場所には行かないものだが、彼はため息を着きながら中に入った
「お客様……あぁ、シャーレの指揮官様ですね」
「先生だ、ここに来るように言われたのだが」
「お聞きしております……こちらへどうぞ」
店員に促され、エレベーターに乗る
既に階層のボタンは押されているため変にいじる必要も無い
こうして上に上がる重力を感じるのもなかなか新鮮なものだな
サンクトゥムタワーのエレベーターがこんなのだったか?
それはそれとしてさっさと書類を電子の物に変えてもろて
なんで電子なら5秒もせず終わるものをクソ程順序を踏んで行かなきゃならんのだ
子供が統制するのになんでここだけ大人形式なんだよ!
そう愚痴っていると、エレベーターが開く
その先にいるロボットに案内してもらい一つの客室の中へと入った
「はじめまして、"フレッド"さん」
「……落ち着いてほしい、私は…私達はあなたと敵対する気は無いのだから」
「サプレッサーを付けたやつを持ってきて正解だったな」
引き金を引いた指をトリガーに掛けたまま、銃口をそいつに押し当てた
今すぐにでも殺してやりたい、しかしその"情報源"がどこかのか知る必要がある
すぐに殺せないのはクソだ、しかし聞く必要がある
「お前、一体なんなんだ?」
「私はゲマトリアの黒服、黒服とお呼びください」
「……話は聞いてやろう」
またゲマトリア、か
アリウスの兵士達が言っていた組織だったな
それを思い出して一応話だけを聞いてやることにした
「貴方のことは知っています、連邦生徒会長が外の世界より連れてきた先生の中の1人
ㅤ……本来目立たない筈の存在が主役へとなった存在
ㅤ私達は貴方とは敵対する気がありません……全く
ㅤなんなら貴方とは友好関係を結びたいと思っているのです」
「……ゲマトリアについて教えろ」
彼はハンドガンをホルスターに仕舞うと、続きを促した
黒服はくぐもった笑い声を出しながら話し出した
「ゲマトリアはキヴォトスの神秘を探求、研究する組織です
ㅤ所属する者たちは各々の崇高に至るために日々研究しております」
「……ロクな組織じゃあるまい、研究者はそういうものだ」
彼の言葉にふむ、と言いながら黒服は言葉を続ける
「確かに、我々はそういった犠牲に対して情を寄せません
ㅤ……そもそもマダムの"ソレ"で勘づいてるのでは?」
「…幼い子供を調教して、兵士として育てている」
「そうですね、確かに彼女は……そういったやり方をしています
ㅤ……"色彩"にたどり着く……いや、……言うべきではありませんか」
ギリ、と無意識に歯の軋む音が響く
それに気付いた黒服はニタリと顔の口が歪んだ
彼は付け入る隙を見つけた
「あぁ…そうでしたね
ㅤ幼い頃からご飯にガンパウダーを混入させられ、繰り返し"ランボー"を見せられ心を破壊され……
ㅤ命令とあれば人を殺していた貴方にはよく響くマダムの"教鞭"です」
「……お前、今なんて言った?」
声が変わった
黒服は彼の声を聞いて最初に勘づいた
明らかに投げやりな、どうでもいいと思っていたそれが変わっている
明らかな、怒りを持っている
「あぁ失礼、貴方の肌を逆撫でするようで申し訳ありません
ㅤ……しかし仕方の無いことでしょう?彼女のやっていることは貴方の幼少期に体験したことと同じなのですから」
しかし黒服は怯む事無く言葉を繋げる
明らかに人を怒らす、彼の逆鱗を逆撫でする行為
「マダムの情報を教えろ、今すぐに」
無論、タダで済まされる訳が無い
「……聞いて、どうするおつもりですか?」
「殺す、肉の一片も残してなるものか」
「…仲間には、なっていただけ無いと」
「ゲマトリアなんかよりそのマダムの方が重要だ、さっさと吐け」
黒服の目の前には銃口があった
いやそれだけでは無い、視界の動かせる限り八つもの銃口がある
それを見て思わず黒服は息を飲む
彼はいつの間にか「カード」を使用していた
そして、いつの間にかシャーレの狐も現れていたのだ
「……いいでしょう、お教えします」
この量の銃弾を受ければ黒服とて無事では済まない
ここで死ぬ気は無いので、彼は大人しく吐くことにした
どうせ、彼女は舞台装置なのだ
消える時はバシリシカ、アリウスの儀式の所で倒れる事になる
運命はどうせ変わらない
…ここで、彼を引き込みたかったが……"今回"は、ダメだったか
〇
「ベアトリーチェ……アリウス兵達からはマダムと言われてる女性です
ㅤ見た目はそうですね……白と赤の貴婦人と言った所でしょうか」
「彼女の性格は傲慢、用済みの存在や邪魔者を始末することに一切の躊躇はありません
ㅤまた、彼女にとって子ども達とは搾取すべきもの……私とは少し違う理由があるようで」
「アリウスにて、紛争のどさくさに紛れて生徒会長になり……そこから生徒達に憎悪の洗脳教育を施していました
ㅤVanitas vanitatum et omnia vanitas……そう、全ては虚しいものという教訓を刻み込んだのです」
「そこでの洗脳は……貴方と似たようなものですかね?
ㅤ賢く従えば餌が貰え、反抗すれば痛めつけられる
ㅤまぁ、貴方の過去に受けたことをアリウスの生徒たちがやられていると考えれば良いです」
「彼女は、貴方と協力したいと言っていたのですね?
ㅤ恐らく建前上ですよ、貴方の過去の怒りを燃やし、そのまま彼を……「プレイヤー」先生を殺そうとしているとしているに過ぎない」
「彼女は、貴方を利用しようとしているのですよ」
「……そうか」
俺は大体の話を聞いた
カードで召喚したヒナや臨戦ホシノ達を帰し、ワカモを外に立たせたまま席に着いた
「筋金入りのクズって訳だ……何故俺を利用しようとしてケツピンを殺す必要がある……?」
百歩譲って中立、もしくは危害を加えないとかなら分かる
しかしベアトリーチェは聞くところによると彼を殺したくて堪らないらしい
何をどうして彼にゾッコンなのか……よく分からない
「……ゲマトリアに入るのは遠慮しておく
ㅤ入る気はあったが……気が合わないやつといるのは気に食わん」
「ふふふ、そうですか……では交渉決裂ということで……」
「だな、俺には利益のある話だったが……お前には無かったようだ」
「……そうですか?貴方が思っているよりも私にとっては有意義な話でしたよ」
黒服はククッと笑った
俺はため息をついて個室の扉を開こうとする
もう用はない、そう言おうとした時だった
「……あぁ、そのカードの使い方には気をつけた方がいいですよ、"フレッド・リー"さん
ㅤ私達のような「成れ果て」になりたくないのであれば」
彼は続ける
「もう既に、貴方の体は蝕まれている
ㅤ……今なら間に合います、使わなければ…有意義な時間を暮らせますよ」
「……有意義な時間?
ㅤハッ……面白い冗談を研究者が言うもんだな」
俺は、吐き捨てるように言って出ていった
何が、有意義な時間を過ごせ、だ
そんな時間、嫌いだ
ピロリ、と携帯から通知がした
それを見て俺は思わずため息をつく
「……今日は、非通知と座標が多いな」