疲れたよ、隠居するね皆   作:回忌

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裏切り者

コツコツと硬い床を歩く音が響く

辺りにはもはや誰も使っていない建物が立っており、そのどれもが崩れているか、ボロボロのままだった

 

石畳と彼を、雨が濡らす

 

白い、純白のシャーレの衣装は少し前の戦闘などにより汚れている

綺麗にする暇も、意味も彼には無いからである

 

「座標は、この位置だったな?」

『はい……護衛を付けなくて大丈夫だったんですか?先生』

「勝手に付いてくる、気にする必要は無い」

 

彼はタブレットから響く声にそう返して送信された地点へ向かった

 

 

 

 

座標を送信してきた主に覚えはある

因縁とは言えないが、無関係と捨て置く程のものでは無い

本来ならば無視する案件だが……アリウス自治区に近づけるならば利用する手は無い

 

 

コツコツと足を踏みしめる音とザーザーと雨の降り注ぐ音が響く

 

 

 

 

 

 

 

そして、そこに新たなる影が現れた

 

 

 

 

 

 

 

「……」

「お前か……」

 

 

現れた影に対して俺はそう言った

衣服の所々が裂け、もはや見ていられない程傷付いた体

何がどうして、そうなったのか俺には分かる

 

マダムは約立たずを消そうとしたのだろう、そういう奴だと黒服から聞いている

 

「"敵"に対して態々座標を送信してきたってことは……」

「……あぁ」

 

カチリ、とサオリに向けて銃口が向けられた

それは他の誰でもない俺自身が向けたものだった

 

「裏切り者が今度はこっちに媚びに来た、ってところか?」

「先生は、そう思うのかもしれない……でも、もう頼れるのは先生しか……!」

「……!」

 

サオリは、ガチャリと俺の目の前に銃を置いて土下座した

隙のない一瞬の出来事により俺はそれに対して反応できなかった

 

 

幼い子供が、誰にも頼ることが出来ずに……俺に対して土下座して頼み込んでいる

 

 

もう、頼れるのは俺だけだと……

 

 

 

「…俺は、お前らが嫌いだ…昔の俺を見ている気がして」

「………」

 

俺はホルスターに銃をしまい、膝立ちになって彼女のアサルトライフルを持ち上げた

少し錆びているが、持ち主によって小綺麗に整備されている

 

「だからこそ、その連鎖を終わらせなければな」

「……!協力、してくれるのか!?」

「勘違いするなよ、お前の為にやる訳じゃない……

ㅤそもそもこれは副担任からの依頼だからな」

 

彼は笑っていた、サオリという名前と座標を見てグッと親指を突き立てたのだ

俺は彼に対して「ピースウォーカー作戦」を提案し、実行することにしている

あちらにはあちらのやることがある……俺は俺のやることを片付けよう

 

 

 

 

 

 

「それで、お前は何をして欲しい」

「救出を……姫が攫われた、アツコが」

「あのガスマスクのようなものを被ってたやつか……分かった、他の隊員はどうした?」

「分からない、襲撃で散り散りに……」

 

そこから、俺たちは情報交換をした

彼女の望みは「秤アツコ」の救出だ

サオリが言うには彼女は「ロイヤルブラッド」という特別な血を引いているらしい

 

その血を用いてベアトリーチェは儀式を行い、とある存在をキヴォトスに呼び寄せるんだとか

どんな存在なのか興味無いが、子供を搾取する上捨て駒にする奴が呼び寄せようとする奴が呼ぼうとするやつなんて……

 

多分、というか普通にロクでもない存在だ

 

「……まずは部隊員との合流が先だが、敵存在も居るはずだな」

「だろう、な……」

「戦闘は免れない……もう既に準備しておこう」

 

俺はそう言うとシャーレの制服をシッテムの箱に仕舞い、戦闘服へと着替えた

「アウトフィット」……俺はこの戦闘服はそう呼んでいる

着心地も良いし体の稼動がスムーズに行えるので好みの戦闘服だ

そのにギリー迷彩などのカスタムを施したFALを足し、構える

 

「シッテムの箱による指示等もあるから、俺の射撃支援に期待はするなよ。サオリ」

「了解した……これより戦闘行動に移る」

 

各々アサルトライフルのチャージングハンドルを引き初弾を装填する

そのまま2人はまず、スクワッドの集合のために行動するのだった

 

 

 

 

「この先にスクワッドの1人を確認、移動するぞ」

「戦闘音が聞こえる……まだ激しいが……」

「死なせたくなかったらさっさと行くぞ」

 

シッテムの箱を確認しながら移動しているとこの先に反応がある

スナイパーが単独でなんとか戦っているようだ、さっさといかないと不味いことになる

銃撃音も聞こえてきた……スナイパーらしい銃撃音は聞こえない

 

サオリは俺の言葉にこくりと頷き、スっとスピードを上げて戦闘に入り込んだ

 

 

「スモークグレネード、行くぞ」

『了解』

 

スモークグレネードを三個程投擲し、戦場を煙だらけにする

その間に俺はサーマルゴーグルを装備し一方的な射撃を可能にする

 

と、色々準備している間にもサオリは敵を次々に処理している

惚れ惚れする手際だ……さっさと終わらせてしまおう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「リ、リーダー!生きていたんですね……」

「当たり前だ、死ぬ訳ないだろ……覚悟はしたが」

 

スクワッドのスナイパーと合流、戦力が増えた

 

「こちらAlpha1、"荷物"のひとつを回収した」

『了解です、こちらはもう少しで"料理"が完了しそうです』

「コピー、完了出来次第"修理"しろ」

 

無線を送り、状況を報告する

どうやらあちらも"料理"が完成しそうなようだ

ならばこちらも早く"荷物"の回収と"溶接"をしなければならない

 

彼女達の前に歩き行く

 

「あっ!?フ、フレッド……!」

「気安く名前を呼ぶな、見捨てるぞ」

「えっ、あ……うわぁぁぁぁん!私達殺されに来たんです!

ㅤ条約を邪魔して人を撃ったツケが来たんです!」

「いや撃ったのは私だが……」

 

なんか面倒な奴が出たな

遠目、というより直接戦闘したことがあるから少し感づいていたが……

まぁ知ったことでは無い、さっさとスクワッドの回収を急ごう

 

「そんなことより、他のメンバー……いや、最後の一人か

ㅤあのミサイル黒マスクは何処にいる?」

「ミサキは……覚えがある、私に任せて欲しい」

 

 

 

 

 

 

 

「こちらAlpha1、"ダイヤモンド"以外の回収に成功した」

『了解です、こちらも"料理"が完成しました……これより"修理"を行います』

「コピー、こちらもこれより"ネズミの巣"へ侵入する」

 

スクワッドの回収が終わった

後は儀式の贄となっているもう1人を回収するのみ

やることはそれと……"クズ"の排除のみだ

 

「で、こちらで合っているんだろうな」

「変えられて無ければ、だが……」

 

敵地に侵入する、やることは変わらない

辺りのクリアニングを行いながら敵地に、アリウスに素早く侵入する

 

カタコンベは暗い、しかし迷っていられない

今から行く場所も今日の日付変更線までしか使えない……

使えるのならば"beta"達にも伝えたかったが……仕方ない

 

「さっきの兵士を見る限り、行き場所は割れている筈だ

ㅤいつ敵が来てもおかしくない」

「選りすぐりのエリート共が待っているはずだろう

ㅤ強行突破してアリウス自治区に入り込む」

「その後は?奴なら……俺ならルートを限定する

ㅤ後々回り込まれたりして追い詰められるぞ」

「旧校舎を使う、あそこならなんとかなる」

 

どうだろうな……相手は「大人」だ

子供騙しのやり口なんぞあいつらに通用するのか

相手はその大人の中でも子供を搾取することに長けた大人だ

もしかしたら今の行動さえ泳がされたそれかも……

 

 

 

 

 

 

瞬間、壁が吹き飛んだ

爆発としか思えないソレに対して思わず遮蔽に隠れ銃を向ける

 

 

「……お前は…!何故ここに……!」

 

 

思わず、俺はそんな声が出た

どうしてここにいるのか分からない、そんな感情だった

何故"裏切り者"である筈のお前がここに……

 

その名前を、サオリが言った

 

 

 

「……聖園ミカ」

「悪役登場☆ってところかな!……まだ覚えていてくれたんだね?」

 

 

 

彼女は笑う

 

 

 

 

「会えて嬉しい……って顔じゃないね、どうしたのさ?」

 

 

 

 

 

彼女は、嗤う

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そんな、魔女でも見ちゃったみたいな顔して」

 

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