「なんとかなったな…」
「殆ど奇跡だよ、先生が"あいつはそんなことを望まない"だとか……
ㅤそういうので彼女の気を逸らしてくれて助かった」
俺たちは地下道を辿り、訓練場の跡地に出た
遺跡だったそこは銃弾の痕が無数に刻まれておりその時の情勢を強く教えてくれる
彼女達が、アズサに会ったのもここだったそうだ
「サオリが倒れるとは思っていなかった」
「4日近く休んでないんだよ、その上負傷や寝不足に疲労……
ㅤ逆に今まで戦えたのがおかしかったんだ」
先程、サオリが倒れた
凄まじい熱を持っていた為、これ以上の進行は不可能とし休むことにしたのである
シッテムの箱にて作成した解熱剤等を用いているが少し時間がかかる
皆疲れている、休むタイミングとしては丁度良かった
「……で、お前はいつまで俺の横に居るつもりだ」
「次の不寝番は私だっていったじゃん」
「ガキは寝て休んどけ……あと、こういうことには慣れている」
「…フレッド先生の昔?」
少し、静寂が辺りを包んだ
虫の鳴く声が嫌な程響く、煩いくらいにだ
「……昔は……」
疲れていたのかも、しれなかった
「……お前達みたいな年頃だったか、覚えていない
ㅤ生きるのに必死だったからな…不寝番を交替交代でやって……
ㅤいつも銃声のせいで飛び起きている、本当に休めたことなんて1度もない」
「私達と同じだね、いつも貴方は疲弊してる」
「お前達と同じ?ハッ、そんな訳ないだろ
ㅤ異常な耐久力を持つお前も違って……俺達ちゃ一発でも食らったら致命傷だ
ㅤあの頃は……末期過ぎて、薬もろくに無かった……
ㅤ配給の缶パン1個で一日を食い繋いでた…」
俺は笑った、こいつらの幸福さに
非道に身を犯されてきれてない、こいつらの幸福さに
「私達も似た者だよ……知ってる?ヘイローの耐久力は本人の精神力も関係しているんだ
ㅤ決意が……心が固いほど、それを体現するかのように加護は強くなる
ㅤ私たちが住んでいた場所は……言うまでもないよね」
「……悪いがな、年下のガキに同族と言われて同情する気も無い」
「同族嫌悪?」
「なんと言っても結構だ、自殺志願者が」
俺はそう言って遺跡の頂上から下に降り、サオリの体調を確認した
着地音に反応したヒヨリがびくりと起きたが辺りを確認してまた寝始めた
図太いやつだと思いながら熱などを確認する
手首などに手を当てて心拍等を確認する
……安定した体温と心拍だ、解熱剤等はちゃんと効いたらしい
酷い症状じゃなくてよかったところだ、ここで戦力が減るのは宜しくない
体調を確認した後、俺は飛び上がり頂上へと戻る
カードの力による身体能力増強だ、一時的ではあるがホシノやヒナの如く身体能力を得ることが出来る
戻ってきても、彼女は起きていた
「さっさと寝ろよ」
「フレッド先生もね、一番疲れてるのはサオリと先生でしょ」
「……」
「もしかして子供だから、不寝番を任せるのが嫌だとかそういう"つまらない"理由じゃないよね?」
「…分かった」
俺ははぁ、とため息をついて背を遺跡に預けた
視界の端でミサキが双眼鏡を用いて警戒しているのが分かる
ここに敵が来る可能性は低いと言えど、心が休まらない
いつ頭に弾丸が迫ってきてもおかしくない恐怖があるからだ
それを子供に任せて寝るなど……俺には、酷な話である
しかしそんな心構えとは裏腹に、視界はどんどん狭まっていく
ここ最近心の休めることの出来る出来事が少なすぎるあまり、疲労が溜まっていたのだ
勿論それを排出する暇も無かった為……今こうしてそのツケが来ているわけである
そのまま呑まれるように、俺は暗闇に意識を離したのだった
〇
「これが……カタコンベの地図です」
「ユスティナ聖徒会の地図…」
大きな机に広げられた、古ぼけた地図
先程までボロ紙だったというのにいつの間にかここまで綺麗にされているのだ
流石ハニワ顔、やることは伊達じゃない
「先行している"Alpha1"によれば既にアリウス自治区に潜入したとの事
ㅤそのままスクワッド最後の一人の救出、そして儀式とやらの阻止に向かうそうです」
ハナコは彼らを模した駒を動かし説明する
それらが乗っているのはシッテムの箱より送られる地形情報だ
今現在は休憩をしているのか彼らの駒は動いていない
「じゃあ、スクワッドはほぼ見つかっていると」
「はい…後、"Alpha1"より『なんで聖園ミカ着いてきてんじゃマヌケェ』とのメッセージがあります」
「…後で彼には謝礼を送りましょう、抑えきれなかった我々の落ち度でもあります…」
聖園ミカが突然居なくなったことは数時間前に通達された
そこから後を追おうにもどこに行ったのか分からない
探索をしたにはしたのだが…結果がこれである
「それで、どうやって入るっスか?
ㅤ斥候を行かせましたけど敵兵士もうじゃうじゃいるッスよ」
「…拙者の憶測でござるが、カタコンベにあるアリウスへの入口は無数に変わるのだと思うで候。
ㅤイチカ殿から頂いた敵兵士の位置はアリウスの入口としか思えないものが多いのでござる」
オタク先生はメガネをクイッと上げながら地図を示す
見てみれば入口の位置は大量にある、敵兵士の位置もそれと重なるのである
「…むっきゅん」
唸るようにケツピンは言った
知っていることと現実が違いすぎて、面倒なことになっている
そもそも彼がAlphaのポジションに居るはずなんだが…
「良く探せば時間帯等があるのでは?」
「多分、アリウス側で時間等を逸らしているでしょう。流石に地図通りとは…」
「面倒ですし、敵アリウス生徒さんと"お話"してみませんか?」
「時間も押していることですし、それがいいっすね…」
本部では、アリウス侵攻の為の会議が終わろうとしていた
「……」
深い夢に、囚われている
先程までおどろおどろしい会議の場所だった光景は地獄へと変貌している
この世界の「向こう側」の存在と回答したセイアの心はボロボロになっていた
しかし、その存在は…彼女を離してくれなかった
「はっはっはっ…!」
病弱な体に鞭を打って走る
自分の居た過去の場所に弾丸が叩き込まれる
どちらかと言うと、見えだから撃ったという考えが正しいのだろうか
次の塹壕へと身を隠す
「ふうふう…!」
息を整える
地獄のような戦争の場所へと、己は居る
息の休まるところなど、何処にも無かった
彼女は体に着いた泥を払いながら言う
「これは、これは誰の夢なんだ…!」
そう、これは彼女自身の夢では無い
先程も言った通りセイアはベアトリーチェにより向こう側の存在と接触させられている
そのおかげで覚めぬ夢に囚われて居たのだが…
しかし、それを…向こう側の存在を超える程の"想い"が詰まった夢をぶつけられている
頭が割れそうな程痛い、今にも砕け散りそうだ
「…っ!くるな!」
塹壕の影から現れた兵士に対してハンドガンを撃つ
撃たれた彼らは人とは思えない金切り声を残してばたりと倒れていく
近づいて見てみれば…それらは骸骨であった
それを見たセイアは吐きそうになるのを堪える
そして、聡明な彼女は気付く
「っ…うそだろぅ…?まさか…」
塹壕からひょこりと顔を出し、辺りを見る
撃ち合っている敵兵士達は全員既に骸骨と化しており、死んでいる
それが当たり前のように動き銃を撃っているのだ
骸骨が、当たり前のように動き倒れていく
「なんなん……つぅっ…!」
また、頭痛がした
頭が割れるような酷い痛みが彼女に襲いかかる
あまりの痛みに膝から崩れ落ち、醜い獣のような声を上げる
その脳裏に、とある光景が浮かんでいく
それは、この戦場の…遠くない何処かの映像
他の骸骨達より、"一回り小さい"骸骨兵士達が警戒するように銃を構え前身して行く
スムーズにクリアリングをしていきそのまま所定の位置へと移動していく
彼らは緑色のブラクラバを装備していた
装備他の骸骨と比べても遜色ない装備ををしている
遜色ないとあるが最新の武器であるが、練度は民兵のそれだ
辺りを警戒していた彼らは、急に糸が切れたかのように項垂れる
何かが燃える、嫌な匂いが映像のはずなのに備考をくすぐる
カタカタと、何が震え…
────────瞳が、開いた
グチュリ、と嫌な音がした
塹壕の壁が黒くなったかと思えば、そこから一人の少年が現れた
ギリーでカスタムされたFN FALを気だるげに持っている
彼は死んだような瞳をしながら、何も思っていないような瞳をしていた
彼は、何も言うことなくハンドサインを指示した
瞬間糸の切れたようだった兵士達に火がつき、行動を開始する
先行する彼らを援護するように、彼もまた歩き始めた
───────私は直感的に、奴らの狙いは私だと分かった