「ゲマトリアの円卓に来たのは初めてだ」
「そうでしょう、席はありましたが…如何せんこちらのあなたは来なかったもので」
「プレナパテスの話はどうでもいい、言いたいことを言え」
紫色の壁、悪趣味な空間
ゲマトリアの本部らしき場所に俺は立っている、黒服と共に
今やゲマトリアは解体されたらしいのだが…どうせ様子を見て復活することだろう
「クククッ、正体に察しがついているようで…」
「………」
カチリ、とサイドアームを向けた
「…いいでしょう、方法ならあります
ㅤあれであれば彼処まで到達できる可能性がある」
「なんだ」
「その方法は…アビドスに在ります」
アビドス
俺が初めて行った学園であり、また既に終わりかけていた場所
そこに最終手段があるというのか?…ハハッ、なんとも都合の良い話だ
「あの要塞の名はアトラ・ハシースの方舟…あれも名も無き神の遺産の1つ」
「まーた名も無き神の遺産かよ…処分しとけよなんで残してんだよ…」
「ククク…私にとっては研究対象になりますがね」
軽く笑う黒服を睨む
冗談で言った訳では無いんだぞ、こっちは
「さて、あれが名も無き神の遺産ならば現時点でアレを相手にできる技術はキヴォトスに存在しません」
「………あるんだろ?この話をするということは」
「ククク…察しが良くて助かります、そしてそれがどこにあるかもお察しの通りでしょう?」
「だな」
というかじゃないと最初にアビドスに在る、なんて言わないだろう
こんなの誰でも察せられるぞ…?…いや、お人好しの副担任はどうだろうか…
「アレに対抗出来る古代兵器…私はアレをカイザーに探させていたのです
ㅤ…まぁ、あの時の私は"特に欲しい対象"が居たので見つかればラッキー程度でしたがね…
ㅤカイザーのプレジデントからすればそうでは無かったのでしょう、キヴォトスを支配できると考えたのですから」
「…企業は企業だな」
ポツリと呟いたそれを黒服は聞いていないふりをして続ける
「あのまま上手く事が運べばキヴォトスはプレジデントの手に渡って…居たのでしょうか?
ㅤ先生以外に"副担任"というイレギュラーがいる以上、そして彼らもまた特筆した能力がある以上結局ダメだったかもしれませんが」
「どの道、虚妄のサンクトゥムで全て壊れただろう」
「ええ、その通り」
プレジデントの目的が達成される目前に現れたその脅威達
それを見た瞬間に彼は一瞬で手を引いたそうだ…サンクトゥムタワー無しでは超古代兵器を使えないから、らしい
…って
「サンクトゥムタワーねぇぞ?どうするんだよ」
「…確かに使えません、"サンクトゥムタワーに匹敵するオーパーツ"の所持者以外には」
「…シッテムの箱か」
エンジニア部にも、誰にも分からなかったこのタブレット
確かにこいつの謎はサンクトゥムタワーにも匹敵するレベルだろう
ならば…俺が、"俺たち"だけがその超古代兵器を使えるのか
「それで、なんなんだ…その兵器は」
「…私は最初、アビドスに箱舟が埋まっているかもしれないと考えました」
「しかし、あれは箱舟などではなく…限りなく近い別の存在」
「そう、あれは───「船」なのです
ㅤ…その船の名は」
────ウトナピシュティムの本船
「貴方の副担任が好きそうな…そう、ヤマト、アルカディア号…ラー・カイラム
ㅤ他にも色々居ますが…そいつらを統括するとなんと言うか知っているでしょう?」
「…最近見たアニメで、よく聞いたな」
そう、少しは休めと2人から誘われてポップコーンを食べながら見たアニメや映画
少しの休憩にはなった…その時に何回か聞いた
「宇宙戦艦、てな」
「"宇宙戦艦!?乗れるの!?"」
「おお!俺にも乗らせろ!あれ乗りたいんだよ俺も!」
「お前らはすっこんでろ!!!」
空間割いて現れるなそんなことにカードの力を使うんじゃない
その時、不思議な事が起こった!状態だよ!
〇
時飛ばして最終決戦手前
今から宇宙へ飛び立とうとする箱舟がそこにある
そして…その前にて体操座りする男とそれの前に立つ戦闘服姿の男が1人何かを言っていた
「あの船で行けるのはな、技術者っていうかそういう人たちなんだよ」
「うん」
「でな、メンバー表は見たな」
「うん」
「つまるところ…」
びしり、と彼は言った
「お前の席、ねぇから!!!」
「いやじゃぁぁあああ!!!拙者も宇宙戦艦乗りたいでござるぅぅううう!!!」
「…ねぇ、今から私達世界を救うんだよね?」
「そうかな?……そうかも」
じたばたと駄々をこねる成人男性を目にして呆れる生徒達
彼の正体を知ってからあれもまさか…?と怪訝になる生徒達
そしてその駄々をこねる成人男性を叱りつける先生
状況はどう見ても世界を救う場面では無いのである
因みに、オタク副担任の担当は地上にて通信援護等をすること
「識別コード等を素で突破するんだったら箱舟とかいう撃墜される可能性がある場所より地上の方が安心じゃね?」という理論で彼は地上でお留守番である
尚、キヴォトスでエンジニア部を通り越すレベルで乗りたがっていたので…
「オォォアッ!アナタニハワカラナイデショウネェエエエ!!!イィィィン、ハァ、イイイイン…
ㅤオレモッ、イスカンダルニイキタカッタノニッッッ!!!」
「ハイハイ副担任さんはこちらで本来の任務につきましょうねー」
「イヤァァァァアア!!俺も乗りた……イッタイメガァァァ!!!!」
…ありゃ痛そうだ、僕はそう思った
キヴォトス人による目潰しとか普通に失明するのではなかろうて……
「何まごついてる、ほら手を取れ」
「"ごめん、アレが面白くて"」
彼の伸ばしていた手を掴む
そのまま登りきり、ブリッジへと彼と共に向かう
全員がオペレーター専用の服装をしている中、彼だけが自分の戦闘服を身につけている
エンジニア部の方々が作った多機能衣装は彼の分もあったのだが、着慣れている戦闘服の方がいいと言ったのだ
何より本人が「そういう服は好きじゃない」というのがトドメである、エンジニア部は膝から崩れ落ちた
戦闘班のうちの一人、として彼は数えられている
先生としても居る…僕は副担任として一緒にアトラ・ハシースの方舟に乗り込むつもりだ
オタク副担任には悪いが、シロコの泣き顔と託される思いはこちらで受け取ってやろう
ブリッジまでの通路を進んでいる時、彼がこちらを顔を向けずに言った
「激しい抵抗が予想される、…特にシロコとかだな」
「"そうだね…今までで一番気を引き締めなきゃね"」
「…俺がこの仕事の後、引退でもしたいって言ったら笑うか?」
「"…その時は死んでも止めるよ"」
「なんでだ、そこまでかよ」
「"君は今の発言が地雷原でタップダンスするより危険なことをしているって自覚あるかい?"」
「無い」
「"…だろうね"」
〇
「そこを動くな!」
「ん…ここは」
「"…ここまで長かったな"」
ウトナピシュティムの本船をハッキングしている場所、ナムラ・シンの王座
それを止めるべくそこに入り込んだ2人の大人と1人の生徒
そして…そこの中心に居るのは………
「これで終わりだ!プレナパテス…!」
それを確認する間もなく引き金を引くフレッド
しかし…その直前に置物かのように思われていたそれが懐から何を取り出し、言った
「"…あれは!"」
"…我々は望む、ジェリコの嘆きを"
"…我々は覚えている、七つの古即を"
煙が吹き上げる
フレッドとシロコが放った弾丸が奴に命中したのだ
吹き上げる煙の中、2人は同時に…呟く
「銃弾が、全部…外れた…?」
「その力…お前…!」
それを見ていケツピン副担任はやはりそうだと確信する
己が歩んだ物語通りに、事が進み…そして出会うことが出来た
出来れば来なければいいのにと思っていたが…やはり我々は敷かれたレールを走る電車に過ぎないらしい
「…先生?」
「下がれ、シロコ」
「"ここからは僕達の仕事だ"」
唖然とした顔のシロコを下がらせ前に出る
ケツピン副担任を庇うような立ち位置でフレッドが煙の中に対して銃を向ける
「プレイヤ先生の生体認証、完了」
その時、煙の中より聞き覚えのある声がした
それは何回も聞いた…何度も聞いて感動して怒鳴り散らした、…しかし聞いたものより低い声
「このシッテムの箱に常駐しているシステム管理者であり、メインOS───
ㅤ……A.R.O.N.A、命令待機中」
アロナに似た…というより色変えをして衣装を変えただけのような存在がそこに居た
こちらのOSと違い実態をもってそこに立っていたのである
「ここまで来たんだね、君は思いのほか誠実みたいだ
ㅤ私達の知っている"フレッド"とは大違いだよ」
「ようやく出会えたな、今度こそ決着をつけてやる…!」
決着の勝敗は単純、負けてキヴォトス諸共死ぬか、勝って帰るかである
ここまで無駄に生きてきた命であるのだ、世界ひとつ救う為に無駄になるのならば安いものであるのだ
しかも、奴とは違いこちらにはもう2人の先生がいる
『こっちで最終自爆シーケンスを抑えてみる!
ㅤ少なくとも最初の自爆は阻止できたから何とかできるはずだ!』
「"彼をあるべき終わりにたどり着かせて、休ませてあげよう"」
「終わりにしよう、副担任さんよ」
4人が、カードを引いた
こㅤこㅤまㅤでㅤ過ㅤ去ㅤ編