疲れたよ、隠居するね皆   作:回忌

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セーフハウス

百鬼夜行、ワカモのセーフハウス

 

破壊の化身たる彼女がそんなのを持っているとは思わなかった

そう呟いていたら私をなんだと思っているのかとお叱りを受けてしまった

俺が来る前まで使っていたそうだ、だからか埃が少し積もっていた

 

彼女は何度か掃除には来たはずなのだけれど、とはにかみながら言っていた

最後に来てからだいぶ期間が空いたのだろうな

どちみちにしろ思考を整理するのには丁度いい

 

そう思いながら仮住まいを綺麗にしていく

 

今後やることが決まるまでここにいることにしている

食料等はワカモ頼りではあるが、すぐにそうではなくなるだろう

 

 

 

 

 

 

さて、この先どうしていくべきか

 

まず真っ先にどうにかしなければいけないのは収入問題である

それに関してはエンジニア部からタダで貰ったオクトカムが役に立つ

擬似的なヘイローを映し出すことが出来るコイツならば簡単な変装が可能だ

また、チョーカー型の変声機もタダで貰っている

こちらはインパクトを起こす途中で頭が吹き飛んだ方が付けた物ソックリだ

 

因みに生徒同士じゃヘイローはよく分からないらしい

俺達一般人からすりゃくっきりとソレが見えるのだが…彼女達同士じゃぼんやりとしか見えないのだと

 

どういう原理か知らないが利用しない手は無い

 

「明日からでも働けるかもな」

「知り合いが居らず、尚且つそれなりに人がいる場所…」

 

ワカモは雑巾を絞りながら唸る

ここで彼女の暴力性が問題を──

 

「心当たりがありますわ」

 

───出すことなく終わった

思いの外そこらの店などに寄るようで……

厄災と呼ばれる割には…いや、もうそれは昔の話か

シャーレの守護者となっている今では昔のようなイメージは少ないのか

母校である百鬼夜行じゃどうなのかしらないが、少なくともシャーレ周辺はそうだった

 

「どういう店だ」

「老舗、しかし今はもう客足が少ない店です」

「何故だ?」

 

老舗だと言うのに客が少ないのか

なんともまぁおかしな話だ…新しい客が来ないのか?

営業なんてやったことないから知らないが…

 

「百夜堂はご存知ですよね?あちらにお客様が吸われたようで…

ㅤ閑古鳥が鳴いているそうですよ」

 

百夜堂…お祭り運営委員会の奴らか

まぁあそこの看板娘は可愛いし仕方ないっちゃ仕方ないのか…

にしても百夜堂のせいで閑古鳥が鳴いているのか

 

「ということは喫茶店か?」

「でしょう、どちらも老舗ですが…まぁ、看板娘のおかげというか…」

「丁度いい、店を引き継ぎたいと言ってみてくれ

ㅤ誇りがあるなら断るだろうし自暴自棄になっているならば店が貰える」

 

ダメならダメで日銭をセコセコ稼ぐ日々

行けたら少しは来る客を相手に働く日々

 

…まぁ、どちらもいい事だろうて

 

「わかりました、今日中にコンタクトを試みます…それまで如何しますか?」

「そうだな…」

 

 

 

俺はテーブルに置いてあるテレビのリモコンを取った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アイツらが俺をどう扱ってるか、調べてみるよ」

 

 

 

 

 

 

 

『フレッド先生、突然の失踪!?』

 

『我々クロノスは情報の開示を連邦生徒会に要求しており…』

 

『連邦生徒会長に続いてフレッド先生も失踪とは、これからのキヴォトスはどうなってしまうのでしょうか…!?』

 

 

 

 

「失踪扱いねぇ」

 

俺はテレビを見ながら呟いた

クロノススクールの直ぐに自主規制される少しイラつくテレビだ

とはいえ一応代表的なところなので最初に見てみたのだ

 

俺の扱いは失踪、連邦生徒会長と同じ扱いにされている

 

…まぁ死亡扱いは出来ないだろうな、このキヴォトスじゃ

少なくとも面倒事が起きるのは間違いないし俺達が来る前のキヴォトスみたいになるのは目に見えている

 

犯罪率2000%だったか?バカかな?

 

 

今ニュースを見てもそのような報告は無いので前よりはマシなようだ

まぁ副担任達がそういう芽を摘んでいるのもあるだろうがねぇ

 

 

「………はぁ」

 

 

ため息をつきながら立ち上がる

何もしないというのは非常に癪だ

その上自分は何も無いというのは実に落ち着かない性格なのだ

戦場に居たせいか、静かな生活というのはどうも恐ろしい

 

ここ百鬼夜行はシャーレ付近に比べればだいぶ銃声が少ない

ふと聞こえる銃声にビクリとすることはあるがシャーレよりマシだった

 

 

 

いつものキヴォトスより、静かだ

 

 

 

そう思いながら俺は冷蔵庫から卵等を取り出し、飯を作ることにしたのだった

 

 

 

 

「………」

 

 

屋上に座る

先輩の盾を背中に背負ったまま、愛銃であるeyes of Horusを横に置く

 

持ってきた、彼のFALを眺めた

 

ところどころ汚れているものの、動作は全く問題ない代物

ストックの位置やグリップの位置が彼の体格に合わせられているから握りにくいがあまり問題では無い

 

 

カチャカチャと音を立てながら全体を見て、チャンバーチェック

黄金の薬莢がチラリと覗く

太陽の光に照らされてキラリと光り、眩しさに目を瞑った

 

 

 

そのまま流れるようにストックを肩に当て、照準

 

 

 

「……すぅ────」

 

 

 

 

引き金を引いて、正門の前を通り過ぎようとしたヘルメット団の頭に一発ぶち込んだ

突然撃たれた彼女達は何事かと叫ぶものの私の姿を見た瞬間蜘蛛の子を散らすように逃げて行った

 

 

楽しみが減った、今度ヘルメット団の基地でも襲うか

 

 

逃げていくアイツらを見てため息をつきながら手のひらを見る

 

 

 

 

 

血みどろだった

 

 

 

 

「ヒュッ────」

 

 

息を詰まらせて後ろにひく

突然のソレに彼のFALを取り落としてしまう

直ぐに拾い上げて汚れた所をサッサと綺麗にする

 

「………ふぅ」

 

もう一度手のひらを見てみるがそこに血の跡は無い

幻覚、そう幻覚なのだ…今の手は血塗れじゃない

 

そう自分に言い聞かせて私は2錠ほど薬を取り出して飲み込んだ

 

こうでもしないと、フレッドの亡霊が出やがる

怨嗟の声が頭の中に響いて私を引きずり込もうと腕を伸ばしてくる

湧いてきていた微弱な声が遠のいていくのを感じて安堵のため息をついた

 

「こうなるなんて…」

 

薬のケースを眺めながら私は呟く

少し前までこんな薬物に頼る必要なんてどこにも無かった筈だ

無縁だと、薬物なんかとは関わりすらしないと思っていたのに……

 

「…止めないと」

 

ポツリと呟き、投げ捨てようとする

 

しかし、捨ててしまえばまた亡霊に付きまとわれる日々だ

寝ようとする度に私を深淵に引摺りこもうと腕を伸ばし絡みついてくる

 

 

 

 

フレッドは死んだ、間違いなく

 

 

死体も確認した、私が持って帰った

 

 

 

葬式は無かった、私は関わらないように、その場から逃げるようにアビドスに帰った

皆を連れて、何かを言おうとしている奴らを黙らせて…帰った

 

 

 

 

私は、またしても殺したか

 

 

 

 

 

 

 

…私は、一切彼に信頼も信用すらもされていなかった

皆は信じてるって…貴方を信頼しているって言っていたよ

 

でも貴方には無理だったんだろうね…何せ殺されかけたんだから

 

私達が早まって、子供ながらに感情的に動いて…殺しかけた

 

 

あそこからもう彼は誰も信用出来なくなっていたのだろう

最初に仕事で会った生徒達が私達で、尻拭いみたいな仕事で…殺されかけた

 

信じたくなかったのだろう、間違いなく。

 

銃を持って遊び感覚で引き金を引くキヴォトスの人達が信用ならなかったに違いない

 

 

 

 

 

 

 

────ともすれば、あの狐はなんなのだろうか

 

 

『ワカモ』

『はい、貴方様』

 

名前を呼ぶだけで、相手の思考がまるで分かっているかのようだった

彼が望むものは彼女にとってよく分かっているのか?

 

 

私たちと違って、信頼されていた───?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ッ?」

 

そう考えている時、モモトークに通知が入った

舌打ちをして通知を切ろうとしたがソレがシャーレのものであることに気付き手を止める

 

「………」

 

私は震える手で来たメッセージを確認する

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『"フレッドのことで伝えることがある、今日の夜、1人で来て"』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………」

 

 

 

私はそれを確認した後携帯を仕舞う

置いていたショットガンを手に取って私は下に降り、そのまま校庭を抜けて駅に向かったのだった

 

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