疲れたよ、隠居するね皆   作:回忌

42 / 42
逃げ道は

 

 

 

 

ささいなきっかけだった

 

水溜まりに、……いや、透明な大池にたった一粒の石をヒョイと投げ込んだ程度のきっかけだった

 

しかしそれは他人にとっては地球に隕石が降ってくるような衝撃であった

まさに震撼、大地が割れ裂ける程の衝撃が走ったのである

 

 

 

 

 

 

当の本人は、全く気にしていなかった

 

 

少なくとも、今日までは

 

 

 

 

 

「またのご来店お待ちしております」

「ああまた来るよ」

 

いつも通りの常連に対する対応、食事の作成に運搬

俺が作ってソレをワカモが運んでいく

レジでお金を受け取ってお釣りを渡してお礼を言う

 

何も変わらない、不変であって欲しかった事

 

「今日も終わりか」

「そうですね…それでは片付けましょうか」

 

最後の客が去っていく、彼はいつも最後に出ていく常連さんだ

終わりの目印として毎日記憶している…彼が食べ終われば職務は終わったようなもんだ

 

今日もまたそうして1日が終わる筈であった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…あら?」

「…なんだ」

 

 

 

まず最初に異常を発したのはテレビであった

先程までキヴォトスのどうでもいいニュースを流していたテレビが急に砂嵐のような音を立て始めたのだ

見てみれば画面は砂嵐状態になっており、ザーザーとうるさい音がずっと鳴っている

 

「壊れたのか?」

「アンテナが曲がったのかもしれません」

「だとすれば後で直さなきゃな…」

 

もとより最新式では無い、店の備品は譲り受けた時のままになっている

あのテレビもそろそろ替え時だったのだろう

 

 

 

 

俺がそう思いながらテレビに近寄った、その時だった

 

 

 

 

 

 

 

 

パッ、と画面が切り替わった

 

 

 

 

「…これ、は」

 

 

 

切り替わった画面にあるのは、文字

まるで橋の下にあるスプレーで落書きされたような…

 

 

俺はそれに見覚えがある

 

 

 

何せ「先生」として働いていた時に……何度も「解体しろやこのクソ部活がッッッ!!!」と叫んだものである

何回奴らにハッキングされ、何度盗聴器具を廃棄したものか

あのメガネ何でもかんでも盗聴器ぶち込みやがって…!

 

 

その部活の名前は……

 

 

「ヴェリタス…」

「……何故?」

 

 

ヴェリタス

個人的に好きじゃない奴ら、…個人情報がそんなに知りたいか畜生

 

いや、そんなことよりも……

 

「どうしてヴェリタスの文字がこれに映る?」

 

何故このテレビにヴェリタスの文字が映るのか

壊れた訳でもなかった、電波がイカれた訳でもなかった

 

であれば……

 

「……まさか」

『そのまさかですよ、フレッド先生』

 

テレビからヒマリの声が響く

ヴェリタスのものでは無く……ヒマリのものであった

一瞬疑問に思うが、直ぐにそれも霧散してしまう

 

「どうして分かった」

『動画です、そのお店の前で戦闘が起こりかけたでしょう?』

「…通りすがりの奴らか……」

 

確かあれは喧嘩が起こる直前だった

キヴォトスではああいう喧嘩はもはや日常茶飯事だ

だからこそ面白おかしい題名で投稿する輩が居るのだろう

 

…偶々、俺はそれに映ってしまった訳だ

 

しかし……だからといって……

 

「……それだけじゃあ俺を特定は出来ない、それだけならただ腕の良い店主だ」

『えぇ、そうでしょう……特徴が無ければ、ですが』

 

無ければ、か

であればその動画には何か俺を特定する情報があったのだろう

少なくとも…関係者が見ればピンと来るような、そんなものが……

 

 

……

 

 

…………そうか

 

俺はそれに気付き、心当たりのある物を持ってくる

大人のカードから呼び出した訳では無いとある生徒から奪った銃

 

「FOX小隊のアサルトライフル……そうか、愛銃が無くなって気付かないバカは居ない」

『貴方の居た世界とこの世界は違うのです……殺し合いの武器ではなく、あくまでただの遊び道具

ㅤ価値観の違いという奴でしょう、貴方と、私達のね』

「少なくとも銃は遊び道具じゃない、ヘイローの加護があるから能天気に引き金を引けるんだ

ㅤ一度だって引き金が軽かったことなんてない」

 

キヴォトスの住民と俺とでは決定的な価値観の違いがある

喧嘩の道具、もしくは遊び道具としての側面が強いキヴォトスだが俺達はそうじゃない

 

俺達にとって銃とは、引き金1つで人を簡単に殺せるもの

そしていつだってその死は指先にのしかかり判断を鈍くさせる

復讐に燃えて、ようやく仇を打てるという場面であろうと平等にその引き金は重い

 

 

 

何度だって言う、俺に引き金が軽い時は無かった

 

 

 

「……それで、なんの用なんだ」

『手短に言いますが、キヴォトスはあなたを連れ戻す派とそうでは無い派に別れています

ㅤ最も、それは片方が"貴方の秘密"を知らないからですが』

「副担任から聞いたのか?まぁ、秘密にする気も無かったが」

『……ごめんなさい』

 

「謝ることじゃない……となると、シャーレと連邦生徒会……いや、リンか?」

 

キヴォトスにおける現状が顕になる

俺を連れ戻して業務につかせたいアホ共が連邦生徒会側

そして、俺の寿命を知っている奴らがシャーレ側という所だろうか

 

「何処が敵で何処が仲間か、それだけ────」

 

俺が敵味方の区別をつけようとヒマリに聞こうとした時、外から派手な爆発音が聞こえた

その後に聞こえる激しい銃撃戦の音

 

…ボゴンボゴンと地面がえぐれるような音がしている気がする

 

「…クソ、来たか」

『……先生、私達ミレニアムは貴方の味方です、いざと言う時はエリドゥへ───』

 

懐から取り出したハンドガンでテレビを破壊

そこから素早く脱出の準備に移る

 

「最低限のクレジットと装備品、それらを持って逃げるぞ」

「わかりました、裏手のバイクは準備しております」

「良し、いいぞ」

 

ヒマリとの会話中に既にバイクのエンジンをかけていたようだ

彼女は既に脱出の準備が整っているらしい

 

「この店も…良いもんだったが……」

 

必要な物をバッグに入れて、店に対してオイルを撒き散らす

それなりに思い入れの出来た店であるが、余計な物で後々面倒になっても困る

 

だからこそ、全部燃やし尽くす

 

 

ブービートラップによる不意打ちによって焼くのでは無く、初めから焼却してやる

 

 

 

 

 

「じゃあな」

 

 

 

 

マッチに火をつけて、投擲

空中で一回転したマッチの棒はそのまま重力に従って床に転がっていく

 

地面に落ちるその瞬間、火がボワリと燃え広がっていく

 

 

 

 

 

正しく、火の海である

 

 

 

 

 

 

それを少し見た後、フレッドはその場をゆっくりと後にしたのであった

 

 

 

 

 

逃げる、逃げる、逃げる

 

 

現実から目を背けるように、逃げる

 

高速道路をバイクが凄まじいスピードで走り抜けていく

車線上にある車を右へ左へと避けながら前へ前へ進んでいく

 

「キヒヒ……!」

「チクショウ…!」

 

後ろにアサルトライフルを向ける

後ろから車を吹き飛ばしながらこちらにダッシュしてくる戦略兵器が居る

 

トリニティの戦略兵器こと、ツルギだ

 

あのお嬢様学校は俺の事情を知らないようだ

ナギサが先走ったか、連邦生徒会からの連絡か知らないが……

どちみちにしろ追いかけてきているのはヤバい奴だ

 

「抜けてくるとはな…!」

「更に飛ばします…!」

『"直ぐにこっちも追いつくよ!"』

 

あの老舗から脱出して、逃げていた時

いつの間にか追い込まれて捕まる危機だった

その時にシャーレが助けてくれて……援護を受けながら高速道路に渡った

市街地等では妨害を受ける可能性がある為、広い高速道路で俺たちを拾うらしいのだ

 

…その方法がなんであれ、それ以前に追いつかれそうであるが………

 

 

 

「お前の相手はアタシだよッッ!!!」

「きゃひっ!」

 

横からサブマシンガンを放ちながら突っ込んでいく影

それはツルギを蹴り上げて近くのトラックの上に着地する

蹴られたツルギもまた、近くの乗用車の上に着地する

 

「先に行けフレッド!先生がもう少しで着く!」

「キャヒ、きゃひひひ……ひゃはははははは!!!」

「うるっせぇぞこのイカレ野郎ォーっ!!!」

 

空中で衝撃、質量のぶつかり合い

哀れにもこの高速道路に居た乗用車やトラックが凹み、ゴロゴロと転がったり急停止する

 

可哀想に、頑張れよ

 

哀れみの念を送りながら無線を起動

 

「おい副担……先生!まだ来ないのかよ!?」

『"ごめん!ちょっと曲芸飛行になっちゃったから!"』

「……おうふ」

 

叫びながら先生に言っていると、高速道路の下からグリンと回りながらヘリコプターが現れた

SRTの…モエが扱っているヘリコプターだ、操縦手も彼女のようである

 

並走するようにヘリは飛行している

ヘリの下に行き回収されようにも、妨害の小銃攻撃がある

下手したらRPGでヘリ自体が吹き飛びかねない

 

安全に、そして素早く…

 

「ハシゴを垂らせ!後はどうにかする…止まるなよ!」

『"ハシゴだしてハシゴ!"』

 

ロープでも良いのだが、簡単に登れる装置を持っていない為ハシゴの方が安心出来る

それとバイクからジャンプしても掴みやすいのである

 

 

バラバラっとヘリからハシゴが垂らされる

 

 

 

 

 

「行かせるかァッ!」

「あっクソ待てゴラァ!!!」

 

 

後ろからツルギの狂気的な声とネルの叫び声が聞こえた

反射的に後ろを振り返ってみれば、俺に対して手を伸ばそうとするツルギの姿

ワカモはハンドルを握っていて攻撃できない、俺もまた力を使う訳にはいかない

 

 

どうする、どうする………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「任せて、フレッド」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目の前の問題は、いつもは気だるげな声を出す桃色の少女によって払われて

 

 

 

────俺はハシゴを掴む事に成功していた

 




すっげぇ安直な終わり方になる気がする


ツルギ…というよりトリニティが敵側なのは紅茶卿の意向です
先生が死亡…しているかと思っていたら生きてるのが分かったので正常な判断が出来てません
他のティーパーティーについてはミカは地下牢or草抜きで情報が伝わらない(意図的)のとセイアもあの手この手で邪魔されてます

またテメーは結果を急ぐのかよ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

大人の責任(ガチ)(notエロ)(作者:教頭)(原作:ブルーアーカイブ)

▼ キヴォトス転生ライフ詰んだ。▼ ヒロイン、どこ?


総合評価:24336/評価:8.91/連載:21話/更新日時:2025年01月31日(金) 12:57 小説情報

頂点キヴォトスお嬢様(作者:ちゅーに菌)(原作:ブルーアーカイブ)

▼『オーッホッホッホッホッホ!! キヴォトスでは、真面目で責任感のある奴ほどお馬鹿を見ますわ!』▼※尚、問題児かつ馬鹿を見ている奴筆頭である


総合評価:5532/評価:8.5/連載:10話/更新日時:2024年07月18日(木) 21:56 小説情報

クソガキが征くブルーアーカイブ(作者:POTROT)(原作:ブルーアーカイブ)

 ブルアカプレイヤー(16歳)が先生として着任してしまい、なんとかメインストーリーを走り切ろうと頑張る話。▼ ※この小説は拙作『待て、それ以上近付くな! 俺の性癖が歪む!』の前日譚に当たる作品ですが、そちらは未読でも問題ありません。と言うかむしろそちらの方が後日談的な扱いです。▼ 拙作→https://syosetu.org/novel/338615/


総合評価:9215/評価:8.92/連載:15話/更新日時:2024年11月04日(月) 19:56 小説情報

大人になりたい少年の話(作者:かゆ、うま2世)(原作:ブルーアーカイブ)

大人になりたい一般男子生徒のお話です


総合評価:5860/評価:8.22/完結:53話/更新日時:2024年08月11日(日) 01:17 小説情報

ホシノに殺された俺。どうやら先生の弟だったようなので、とりあえず黒服とお茶会してみた(作者:ラトソル)(原作:ブルーアーカイブ)

ブルアカにわかの転生者がキヴォトスに召喚され、ホシノに殺されて、自分が先生の弟であることに気が付いて、黒服とお茶会したはなし。▼なお、オリ主の身体能力はキヴォトス人の中でも上澄みだが肉体強度はクソザコナメクジ。


総合評価:12529/評価:7.92/連載:36話/更新日時:2026年05月06日(水) 00:00 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>