ヒトヒトの実 幻獣種 モデル“両面宿儺”   作:笛吹き男

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第一章 出会いと成長
プロローグ


 

 

 

 

 ここワノ国では明けない夜が広がっている。

誰もが頼りにしていた光月おでん。彼が死んだことにより、最早この国を救える者などいない。

それを分かっている人々は悲しみに明け暮れていた。

 

「おでん様を信じなかった罰だ」

「トキ様は20年とおっしゃった」

「20年後など我らに戦う力はない」

「そうだ!!ここは今すぐにでもカイドウを討つべきだ」

「おでん様すら勝てなかったんだ。我らに勝ち目はない」

「ですが、このまま何もせぬという理由にはいきませぬ!!」

 

 ワノ国でまだ戦える者たちは二つの選択肢に迫られている。

 一つ目は20年間ひたすら待ち続ける。光月トキの言葉をただただ信じて待つ。

 二つ目は20年を待たずしてカイドウをすぐにでも討つこと。20年という途方のない時を耐え続けるよりもカイドウを討ちに行く。

 どちらの選択肢も今の彼らにとっては地獄でしかなかった。

ひたすら無駄に待つのか討ち死にするのか。

 

 

 

 彼等が選んだのは討ち死に。

 

   

 

 多くの者たちがカイドウに挑んだ。しかし、その圧倒的な力の前に彼等は成すすべなく敗北した。

 負けた者は殺されるかと思っていたが、彼等は殺されることはなかった。

殺されるよりも酷い目に彼等は合う。ひたすら敗者として、労働力となる。

カイドウは強い者たちの心を砕く。

 

 

 

 カイドウの本拠地・鬼ヶ島内の「天の岩戸」と呼ばれる岩屋には負けた大名たち霜月牛マル、雨月天ぷら、風月おむすびが絶食状態で幽閉されていた。

彼等は大名。決してカイドウには屈しない。

 そんな彼等が幽閉されている場所にカイドウの子供であるヤマトが閉じ込められる。

 

「岩屋の中で頭を冷やせ!!一ヶ月の猶予をやる!!」

「い、一ヶ月!!?さすがに死んでしまいます!!それに中には侍たちが収監されています!!お父さん!!」

 

 我が子であろうとも、カイドウは容赦しない。

ヤマトの言葉を聞いて尚、彼は実行した。

 

「ワノ国の大剣豪共!!おれの戦力になるなら出してやる!!気が変わったら天井の空気穴に叫べ」

 

 そう言って、カイドウは部下に一人分の食事と数本の刀を侍たちに差し出した。

 

「お父さん!!ぼくはカイドウの子だよ!!恨まれてるに決まってる!!殺されちゃうよ!!」

「お前は“おでん”だろう?」

「おでんだけど、おでんを殺したカイドウの息子だよ!!」

「おでんを名乗るなら覚悟することだな。………それと“ナナシ”!!!お前は必ずおれの部下にする。次こそは必ずその心を折ってやる!!」

 

 岩屋の出口は閉じられた。

ヤマトは殺されるのではないかとビクビクしているが、侍たちたちは殺すことなどしない。

一人分の食事をヤマトに差し出す。

 

「食べなさい。侍は腹など空かぬものだ」

「えっ!?ホント?……ぼくはおなかすいてまず……!!」

「早く食え。あいつが目覚める前にな」

「……えれェ家に生まれたな」

「ありがどうおざむらざんだぢ。…ぼくはこのごはん一生忘れません!!」

 

 涙を流しながらヤマトは飯を食う。

侍たちの優しさを噛み締めながらただただ感謝して食べる。

それからヤマトは侍たちと仲良くなる。

彼等に読み書きを教わりながらおでんの日誌を読む。それがヤマトと侍たちの日課となった。

 

 ヤマトが岩屋に収監されてから五日後。

物書きにだいぶ慣れて来た頃に岩屋の奥からものすごい音が響いてくる。

 

『ぐわああああぁぁぁぁぁーーーーー!!!!!!よく寝たーーーーー!!!!!』

 

「な、何!!?」

「あやつが目覚めだけだ」

「ほ、他に、…だ、だれかいるの!!?」

 

 事情を知っている侍たちは全く動じていないが、事情を知らないヤマトは明らかに動じていた。

 奥からカツっカツっと誰かの歩く音がヤマトたちへ近づいてくる。

ヤマトは何者かとめちゃくちゃ警戒しているが、侍たちは特に動かない。

 

「俺はあれからどのくらい寝ていた?霜月牛マルよ」

 

 彼の最初の一言はそれだった。

黒髪に赤色と青色のオッドアイが特徴的な少年。

年齢は見た目から10歳から18歳の間くらい。

身長は他の侍たちよりも低い。

 

「六日だ」

「ほう?六日か。お前たちはしぶとく生きているな。いつ限界が来るのか楽しみだ」

 

 傲慢不遜に言う男。

彼はヤマトを一瞥した。

 

「そのガキは何だ?………おい、名乗れガキ」

「……ぼ、ぼくの名はこ、光月おでん…ま、またの名をヤマトだ」

「おでん?ヤマト?……おい霜月牛マルこいつは何を言っている?」

「フッ…おでん様にこの子は憧れている」

「ほう?あのバカ殿にか?」

 

 他の侍たちと違い彼はおでんを特段敬うことはしていない。

おでんをバカ殿呼ばわりされて、ヤマトは頬を膨らませて怒る。普通の侍たちならヤマト同様に怒るが霜月牛マルたちは彼のことを知っているからなのか怒らない。

彼はこういう奴だと理解しているのだ。

 

「あなたこそ何者だ!!侍には見えないけど」

「侍?そんなくだらぬものになる奴の気がしれん。俺の名はナナシ。自由人だ」

 

 これがナナシとヤマトの最初の出会い。

後にこの二人が世界に多大なる影響を与える。

それはまだまだ先の話。

 

 

 

 

 

 

 

 

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