ヒトヒトの実 幻獣種 モデル“両面宿儺” 作:笛吹き男
カイドウとナナシが戦ってから1週間が経つ。荒れ狂う戦闘をした二人。
その二人は痛々しい戦闘があったのを物語るように身体中包帯だらけだった。
カイドウとナナシ。
両者の戦闘は引き分け。
回復したら殺し合うのかと思いきや、現在二人は仲良く酒を飲んでいた。
「ウォロロロ!!!」
「クハッ!!!!」
「「もっと、酒を持って来い!!!!!」」
二人は島中の酒を飲み干すのでは思うほど、飲み続けている。
カイドウの部下たちはナナシとカイドウがまた殺し合わないか心配でたまらなかった。
殺し合うのは自由だが、この鬼ヶ島を潰すような戦いはやめて欲しいというのが彼等の願いである。
「ナナシ!!大看板の席をお前にやるよ!!…俺の右腕はいるから…よし、左腕になれ!!」
「はぁ!?断る!!大体左腕とか言わんだろうが!!」
「ウォロロロ!!!生意気な!!!」
「クハッ!!!お前が図太いんだけだ!!!」
両者に戦う意思はない。
二人はただただ酒を飲み続ける。
「ナナシ。俺に挑んだのは覇王色の覇気を学ぶためだったな。目的を果たしたんだ。これからどうする気だ?」
「霜月牛マルにお前のガキを頼まれたんでな。大変不本意だが、しばらくは外でそいつとの旅だ」
「あ?ヤマトとか!?」
「あぁ。故に船を貸せ」
「良いだろう」
「は!?」
てっきり反対されると思っていたナナシはあっさり了承されて唖然とする。
「ウォロロロ…てめェでもそんな顔をするんだな。…お前にヤマトを預けるのも悪くねェと思っている」
「本気か?」
「いずれは俺の下に戻ってもらう。ナナシ、当然てめェもな」
「俺はお前の部下ではない」
「お前の手当をした。借りは必ず返してもらう」
「………部下はお断りだ」
頑なに断るナナシ。
だが、借りがあるのも事実。ナナシはこの借りを返そうとは少し思っている。
「なら、これから先一度だけ俺のために戦え」
「…………分かった。それで良い」
「決まりだ。ヤマトの奴を強くしておけ。いずれ、あいつを将軍にするからな」
「あっそ。……ヤマトの手錠の鍵は何処にある?今もあいつは島中を探している」
「鍵はここだ」
カイドウは懐から鍵を取り出す。
この島で一番の隠し場所に鍵はあった。ヤマトが見つけられないのも無理はない。
「鍵は渡す。それとこれもな」
「電伝虫?」
「盗聴されない優れモノだ」
「まぁ、受け取っておく」
「出航は明日以降にしろ。今日はてめェの話を聞かせてもらうぞ」
「………お前の話もしろ」
「…………良いだろう」
二人は好敵手として酒を飲み続ける。
己の過去、現在、未来を包み隠さず話していく。
本来なら他者には絶対に自らの事を話さない二人。だが、好敵手となった相手だ。
二人共かなり饒舌になっていた。
「いずれはおれの望む世界を作ってやる」
「クハッ!!お前ならやれそうだ!!楽しみにしておこう」
二人の話は花咲く。
◆
現在ヤマトは船出の準備をしている。
実親であるカイドウからあっさりとワノ国を出る許可を得られたからだ。
手錠の鍵もあれだけ島中を探していたのだが、ナナシにあっさりと渡された。
物事は強者たちによって簡単に進むことを改めて知る。
その強者たちはというと、
「「オエエェェェーーーーー!!」」
二日酔いでグロッキーの状態と化していた。
二人の吐く音が島中に響いている。
「ナナシー!大丈夫ー?」
「………問題ない。少し目眩と吐き気と気怠さがあるだけ。全く問題ない」
「いや、大丈夫じゃないでしょ!!?」
項垂れているナナシ。
口では大丈夫と言いつつも、その姿はずっと吐き続けている。
「おい!!ヤマト!!ナナシの心配はして、俺の心配をしないとはどういう事だ!!」
中々面倒くさい男カイドウ。
ナナシと同じ状況にも関わらず、実の子ヤマトは親の心配はせず、ナナシの心配をしている。
カイドウはナナシにジェラシーを感じていた。
「爆弾付きの手錠を付けた親を心配するわけないだろう!!ナナシーー!!早く海に出ようーー!!」
「やめろ。揺らすな。本気で…うぷっ!!………気持ち悪い」
最早、二日酔いは最高潮に達していた。
ナナシとヤマトがこの国を出るのはまだ時間がかかりそうだ。
ナナシの二日酔いがマシになった。
ヤマトとナナシはカイドウからもらった船でワノ国を出る。
「好敵手たるナナシ!!バカ息子を頼むぞ!!」
「好敵手。最強たる生物カイドウ。また、殺し合おう」
互いを認めた了承は別れを告げる。
ナナシとカイドウ。二人がまた出会う時は殺し合いをする時。
その時を楽しみにしつつ、ナナシは舵を取る。
「やったー!!!やっと海に出たぞー!!!」
念願の海に出るということを達成したヤマト。
感情溢れるままに喜んでいた。
「まさか、お前と旅をすることになるとはな」
「お侍さんたちに感謝だね」
「……カイドウとの約束もある。いずれお前はワノ国に帰すぞ」
「うん!!おでんと同じくらいの強さになる。そして20年後、お父さんをぶっ飛ばすよ!!」
実の父親を倒すために強くなると宣言するヤマト。ヤマトの憧れはどこまでもおでんであった。
「お前、覇気はどこまで使える?」
「覇気?」
「カイドウのガキなら覇王色は持っているはず」
「……覇気を教えてくれるの?」
「そうだな。…………覇王色はまだ先で良い。だが、武装色と見聞色は最低ラインまで身につけさせる」
「ナナシが鍛えてくれるんだね!!」
「先に言っておく。浮かれていると死ぬぞ」
ナナシは本気でヤマトを鍛える気でいる。
しかし、それはかなりハードだと修行の時に思い知るヤマトであった。
ナナシとヤマトが最初に上陸した島は猛獣だらけの島だった。
ナナシは修行にはちょうど良いと思い利用する。
「あの猛獣を倒してこい」
「僕…一人で?」
「当たり前だ」
ナナシはヤマトを猛獣の前に投げ飛ばす。
そして、その場に座り込んだ。
懐に忍ばせていた酒を取り出して観戦モードへと入る。
「先に言っておく。本気で殺らねば死ぬぞ」
「………本当に僕一人で?」
「さっきも言ったはずだ。………殺れ」
ナナシが本気だと分かり、ヤマトは武器を構え猛獣と向き合う。
ナナシの圧を受けて猛獣は動けなかった。だが、ヤマトが戦う意志を見せるとナナシは圧を解く。
猛獣は動けるようになった瞬間に目の前の獲物であるヤマトに襲いかかる。
「ぐわあぁーー!!!!」
一撃で吹き飛ばされるヤマト。
猛獣は倒れたヤマトを蹴り飛ばす。
「この…猛獣…強すぎ…るよ」
「だろうな。今のお前よりも確実に格上の存在だ。ほら 頑張れ 頑張れ」
「鬼!!」
「お前の親父よりマシだ。どの覇気でも良いから使えこなせるようになれ」
「ナナシの鬼ーーーーーッ!!!!!!」
それから5分間、ヤマトは猛獣と戦い続けた。
だが、当然勝つことなど出来ない。
猛獣の攻撃によって吹き飛ばされたヤマトは気絶した。それを見た瞬間にナナシは猛獣を斬り刻んだ。
「親に似て体は丈夫なガキだ。……明日はもう少し弱めの奴にするか」
ナナシはヤマトに見合う猛獣を捕らえに行く。
10分も経たぬうちに憐れな猛獣はナナシに捕られるのであった。
(俺がこのガキのために動いている。霜月牛マルたちの最期の生き様。あれを見せられれば断れん。それに暇つぶしにはちょうど良いのかもしれんな。…カイドウとの約束もあることだ)
「知っているかヤマト。世界は面白いがとても下らない。お前が思うほど綺麗でもない」
「むにゃ…むにゃ………ナ…ナシの…むにゃ…鬼……」
「クハッ!!このガキが………。………こんな街もない島に1週間もいる気はない。1週間以内に基礎を習得させてやる」
眠っているヤマトを見下ろしながら、ナナシは酒を飲むのであった。
翌日、目が覚めたヤマト。彼女の目の前には猛獣が座り込んでいた。
まだ、昨日の戦闘が続いているのだと勘違いしたヤマトは武器を持ち倒そうとする。
しかし、それはナナシに止められた。
「良く見ろ。この猛獣は死んでいる」
「…ほ、ホントだ。この猛獣って…」
「俺たちの朝飯だ。調理しているから少し待て」
そう言って、ナナシは猛獣を斬り刻む。
『解』と『捌』によって斬られた猛獣は『竈』『開』によって丸焼けにされた。
最後に味付けをして朝飯は完成。
「出来たぞ」
「美味しそうー!!」
ヤマトはガブガブと料理を食べる。
余程空腹だったのだろう。皿に乗っていた料理はすぐに無くなった。
「飯も食ったことだ。今日はあいつを倒せ」
ナナシが指差す先には猛獣がいる。
昨日、ナナシが捕らえた特訓相手。昨日の猛獣よりは弱いとヤマトにも分かる。だが、それイコール勝てるかと言われれば疑問でもあった。
「僕が勝てるの?」
「確実に勝てる相手と戦っても意味はない。何より面白みもない」
「アドバイスとか無いの?」
「死ぬ気で殺れ」
何のアドバイスにもならないナナシの言葉。
ヤマトは殺るしかないと分かっているので猛獣と戦う。
結果はヤマトの負け。
「昨日よりはマシだったな」
ナナシはヤマトを回収して手当をする。
と言っても、ヤマトの怪我は昨日よりもだいぶマシだ。戦闘に慣れて行ったのだろう。
この島に来てから4日間。ヤマトは猛獣と戦わされた。
負けては気絶する。その繰り返し。
ヤマトは勝てないのではないかと思っている。だが、それを言ってもナナシは継続するように言う。
「武装色の覇気は見えない鎧を纏うイメージだ。お前なら出来るはずだ」
「見えない…鎧…」
「見聞色の覇気は後で良い。まずは武装色の覇気だ」
島に来て5日目。
とうとう、ヤマトは猛獣を倒すことに成功した。
「ナナシー!!やったよ!!!!勝てたーー!!!!」
「……及第点の覇気だったな。あんな武装色の覇気ではすぐに押し負ける」
「ぐぬぬぬぬ」
ヤマトはとても悔しがっていた。猛獣を倒したのに褒められるどころか、ナナシに文句を言われているのだから無理もない。
「だが、武装色の覇気を使うことが出来、猛獣を倒した事も事実。…………良くやった」
「……………うん!!!!!!」
ナナシが優しく微笑んで褒めてくれた。
それはヤマトにとって何よりも嬉しいものであった。
「さて、明日は丸一日俺が訓練してやろう。見聞色の覇気を一日で会得させてやる」
ナナシは笑みを浮かべていた。
それを見たヤマトは地獄が待っていると察してしまう。
「……僕、死なないよね?」
「それはお前次第だ」
次の日、ヤマトの不安は見事に的中する。
ナナシが提示した修行内容は地獄だった。
ヤマトに目隠しをして、ひたすら避けられるまでナナシが攻撃するというもの。
「こ、殺される!!」
「人聞きの悪い事を言うな。ちゃんと加減はしている。ほら、さっさっと避けろ」
ナナシは容赦なく攻撃を仕掛ける。
初めてやる修行内容。ヤマトは全く避けることが出来ない。
しかも、猛獣たちと違い、ナナシは加減するのがとても上手い。
ヤマトは気絶することが出来ないでいた。
「もっと気配を感じろ」
ナナシは攻撃の手を緩めない。
ヤマトは3時間ボコボコにされた。
「もう…駄目……」
「最後の方は避けられる様になったな。5分間休憩をやる」
「5分だけ!!?」
「嫌なら休憩は無しだ」
「むーーーーーーーーーッ!!」
短い時間だが無いよりはマシ。貴重な5分間の休憩をじっくり味合うヤマトであった。
「次は斬撃を避けてもらう」
「それって……」
「安心しろ。お前の武装色の覇気でも防げる程度の斬撃しか飛ばさない」
「っということは、武装色の覇気を纏わないと怪我するってこと!!!?」
「そうだな。武装色と見聞色。両方の修行になる。まさに一石二鳥だ。……さぁ、やるぞ」
ナナシは斬撃をいつでも飛ばせるように構えた。
ヤマトはとりあえず武装色の覇気を纏う。だが、取得したばかりの覇気だ。纏っているだけでもかなり疲労が襲ってくる。
「『
弱い威力で遅いスピードの斬撃。
この修行においては最適な斬撃であった。
ヤマトは避けることに成功する。それを見たナナシは連射した。
ヤマトは斬撃を2、3発受けてしまう。
「ナナシ…いつまでこれを続けるの?」
「俺が納得するまでだ」
その後も斬撃がヤマト目掛けて飛んでくる。
その段階を避けれるようになっても、ナナシはさらに個数を増やしていく。
どれだけやっても修行が終わる気配はない。斬撃が止む頃には真夜中となっていた。
「合格だ。これなら死ぬこともあるまい」
「ほ、ホント?修行は終わりなんだね?」
「ああ。今日は寝ろ。明日には別の島に行く。無論、村や街がある島にだ」
「やったー!!修行を終えたぞー!!」
バタンッ!!
ずっと修行をしていたヤマトの限界が来たようだ。ヤマトはその場に倒れて眠ってしまった。
「才能とは恐ろしい。カイドウのガキだから出来るとは思っていた。だが、ここまで成長速度が速いとはな」