ヒトヒトの実 幻獣種 モデル“両面宿儺”   作:笛吹き男

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圧倒的強者

 

 

 

 

 魚人島を出てから数日後。

ナナシは自らの手配書を見ながら、ある男と通信をしていた。

 

『ウォロロロ!!ナナシ!!久しぶりだな!!』

「何の用だカイドウ」

『ウォロロロ、お前等の手配書を見たぜ。まさか、ヤマトより懸賞金が低いとはな。海軍共はお前の実力を分かってねェな!!』

「目立っていたのはヤマトだ。俺は雑魚共と大将にトドメを刺しただけ。懸賞金に差が出るのは仕方あるまい」

『怒りはねェのか?』

「海軍など所詮は烏合の衆だ。そのうち俺の方が強いと分かり、懸賞金も自ずと上がるだろう」

 

 ヤマトより懸賞金が低いというのはナナシ自身、あまり気にするほどでもないと思っている。

 ナナシとヤマトは賞金首となったのだ。ということは海軍に狙われる。そして、ナナシはいとも簡単に反撃するだろう。その時、海軍はナナシの方が強いと思い知る。

それを分かっているからこそナナシはそこまで怒る事はない。

 

『ウォロロロ!!つまりは暴れ回るって事だよな』

「そうなるかもしれんな。……正直言って、あの大将は俺が態々戦うまでもないような弱い奴だった。故に、訓練としてヤマトに戦わせただけだ」

『分かるぜ。弱ェ奴と戦うのはつまらねェからな。………強ェって事は退屈だ』

「………そうだな」

 

 ナナシはカイドウと戦ってからの自分が最強に近づいていることを察していた。

しかし、それはカイドウにも言えること。

二人は互いに刺激し合ってしまった。そのせいで本来成長する流れというのが急激に加速したのだ。元々最強になれる素質を持った二人が最強の座を前にしている。

戦いがつまらなくなっているのも無理はない。

 

『…………ヤマトの奴はどれぐらい強くなった?』

「武装色と見聞色はまずまず。覇王色はまだ無意識に扱っている。お前のガキだけはあるぞ。無意識に覇王色を纏っていたからな」

『才能があるのは良いが、問題はおでんに憧れていることだ』

「クハッ!!親の苦労だな!!」

『他人事だと思いやがって。……まぁ、いずれは諦めさせる』

 

 カイドウとナナシ。二人はある程度近況を報告して話し終えた。

 

「ナナシー!!お父さんとの会話は終わったの?」

「終わったぞ。お前も話せば良かっただろう」

「嫌だ!!絶対にお父さんはうるさく文句を言ってくる!!僕が聞く義理はないよ!!」

「あっそ。………親子関係とは複雑怪奇だな。…………そろそろ次の島に行くぞ」

「うん!!どんな冒険が出来るのか楽しみだよ!!」

 

 

 今いる島は誰もいない無人島だったので、二人は休息だけして終わった。

島での休息を終えた二人は新たな島へと向かう。 

 

 船での航海は今までと変化していた。

今までは海軍に見られても素通りされていたが、今では顔を見られただけで砲撃されてしまう。

 

「“鬼姫”の船だ!!逃がすな!!」

「“鬼姫”だ!!応援を呼べ!!白龍大将の仇だ!!」

「“鬼姫”を逃がすな!!」

 

 やはり注目されているのはナナシではなくヤマトだ。目立ってしまったヤマトは海軍の標的にされていた。

 

「ナナシーー!!僕、めちゃくちゃ注目されてるんだけど!!」

「知らん。大将と戦って目立ったからだろう。自業自得だな」

「ナナシが戦わせたんだよ!!」

「そうだったな。それにしても、奴らは力量を測れないものか。俺の方が明らかに強いと言うのが分からんとはな」

 

 ナナシは改めて海兵の質が低いことを思い知る。カイドウの部下たちでさえもう少しマシだと思うのであった。

 

「もしかして、ナナシ。少し僕に嫉妬してる?」

「そんな理由あるか。いずれは奴らも俺の方が強いと理解する」

「ふぅーん」

「何だその反応は」

「別に〜〜」

 

 何だが小馬鹿にされている感じだったが、ヤマトなのでナナシは許す。

もしこれが他の奴らだったらナナシは細切れにしていた事だろう。

 

 

「撃てーーッ!!」

 

 海軍は容赦なく砲撃してくる。

だが、ナナシは斬撃を飛ばして砲弾を斬る。

船に届くまでに砲弾は斬られるので船に当たることはなかった。

 

「『(カイ)』」

 

 ナナシは軍艦を真っ二つにして沈める。

そこに対して情など持ち合わせない。

白ひげなどの温厚な海賊なら相手をせず逃げに徹していたかもしれないだろう。だが、ナナシは逃げる方が面倒なので潰しに行く。

 

「つまらん奴らだ」

 

 ナナシとヤマトに挑んだ海兵たちは軍艦を沈められて終わる。

 

 そんな事が数ヶ月続いた。

 海軍は天竜人に手を出された事と大将を殺されている事を踏まえて、ある行動に出る。

放置は危険。このまま放っておけば何をしでかすか分からない。何よりも海軍の面子がかかっている。故に海軍はナナシとヤマトに“バスターコール”を発令した。

 

 バスターコール。それは海軍における命令の一つだ。海軍本部中将5人と軍艦10隻という国家戦争クラスの大戦力で無差別攻撃を行うもの。

何があろうとも殲滅。そのために海軍は無慈悲に攻撃を続けていく。攻撃は終始徹底され、行われた後は更地にされてしまうほどだ。

 

 今回派遣された中将は5名。

つる、サカズキ、オニグモ、ドーベルマン、ジョン・ジャイアント。

以上の中将5名が軍艦を率いてナナシとヤマトを打倒しに行く。

 

 そんな事を知らないナナシとヤマト。

二人は街で食事をしていた。何でもここでしか食べられない現地の食材をふんだんに使った有名料理を食している。

尚、この場所は海賊たちが根城にしている島だ。

 

「美味い。有名になるのも頷ける美味さだ」

「最近は海軍に追いかけられてばかりだねー」

「全く迷惑な連中だ」

 

 ナナシとヤマトは悪いことをしたとは思っていない。なので毎度追いかけられているのは迷惑でしかないと思っている。

 そんな二人は食事を楽しんでいる。

すると、店内に一人の男が慌ただしく入って来た。そして、次のような一言を言う。

 

「た、大変だ!!海軍の奴らが艦隊を引き連れてやって来たぞ!!」

「はぁ!?何で海軍の奴らが!!?確かにここは海賊島だが、そこまで海軍に狙われるようなことはしてないぞ!!」

「と、とにかく逃げた方が良い!!………今回のこれはバスターコールなんだよ!!」

「「「「何だとーーーーッ!!?」」」」

 

 バスターコールという単語を聞いて、店にいた者たちは店主含め全員島を出るために船の方へと向かった。

この店だけではない。この海賊島にいる全海賊が島から逃げ出そうとしている。

 

 海賊たちが慌ただしく島を出ようとしている中、ナナシとヤマトは食事を続けていた。

彼らはバスターコールという単語を聞いても、そこまで慌てていない。むしろ、店主が店を出てくれたおかげで飯代を払わなくてラッキーと思っているくらいだ。

 

「絶品料理はとても美味かった。…さて、次の島にでも行くか。…………あの艦隊を潰してな」

「すごい数だね!!」

「バスターコールだからな。クハッ!俺たちにバスターコールを仕掛けるか。余程面子を保ちたいらしいな」

 

 この島は囲まれており、海軍を避けて逃げることは出来ない。 

海軍による軍艦10隻の無差別攻撃。

それによって、島は火の海になる…はずだった。

 

「クハッ!!その程度では意味がないぞ!!」 

 

 ナナシの斬撃により、軍艦10隻のうち軍艦5隻が沈んだ。

海軍にとって幸いだったのは中将が乗っている軍艦を沈められなかった事だ。

これにより、まだ戦う事が出来る。

 だが、海軍はこうもあっさり軍艦を沈められているので戦闘を続行するのか悩んでいた。

 

 海軍本部中将つるはこれ以上の被害を出さないためにもバスターコールの中止をするべきだと主張したが、サカズキは悪を逃がすのは反対だとしている。

 

「サカズキ。これ以上の被害を出すわけにはいかないんだよ」

「じゃからと言って、このまま逃がすわけにはいかんでしょうが!!」

「なら、どうするんだい?このまま沈められるのを待つのかい?向こうは全然本気を出してないよ」

「わしが直に叩き潰しますわい!!」

 

 なんとサカズキは直接戦いに行くという。

それを聞いて、つるは駄目だと静止した。

 

「バカ言うんじゃないよ。あんたは海軍にとって重要な戦力。ここで失うわけにはいかないよ」

「そう言ってもらえるのはありがたいですが、わしは引きあせん!!」

「…………………………はぁー。好きにしな。その代わりあんた一人で行きな。他の者達を巻き込むじゃないよ」

「はなからそのつもりですわい!!」

 

 サカズキは一人で島に向かう。

海兵たちはサカズキの実力を知っているので負けるとは思っていない。

むしろ、つるが慎重過ぎるのではないかと思っているぐらいだ。

しかし、彼らは数十分後に思い知る事となる。

敵対している者の強さを。

 

          ◆

 

 海軍からの砲撃が止んだので、ナナシとヤマトは出港の準備を進めていた。

もうそろそろ出港出来るというところで、島に大量の大きな火山弾が降ってくる。

それは拳のような形状で島中に降り注いだ。

 

 ナナシは斬撃を飛ばし火山弾が船に当たらないように斬り刻む。

 

「鬱陶しい。さっさっと撤退すれば良いものを」

「ナナシー!小舟がこっちに向かってくるよー」

「さっきのくだらん攻撃をして来た奴だな」

 

 小舟で島に乗り込んで来たサカズキ。 

彼はナナシとヤマトを一瞥する。そして、海軍の認識が間違っていることに気づいた。

 ヤマトという子どもが子どもにしては大人顔負けの強さがあるというのは分かる。

だが、そんなヤマトの横にいるナナシは比べようのない程の力を持っている。

サカズキはナナシを前にして、圧倒的実力差を知り、戦慄していた。

 

「どうした?かかってこないのか?」

「………ッ!!」

 

 ナナシは一歩二歩とサカズキに近づく。

恐怖という感情が更にサカズキに襲いかかる。

 

(このわしが怯えておるじゃとッ!!?あり得ん!!………じゃが、どうしても足が動かん!!)

 

「実力差が分かるのは良いことだ。だが、同時にそれはがっかりする事でもある。お前はあのバカな大将よりはマシだと思ったのだがな。俺の期待外れか?」

 

(………期待外れじゃと!!わしは何も出来ずに終わるわけにはいかん!!)

 

 サカズキはナナシに一歩近づく。

先程まで恐怖で動けなかった足が動いたのだ。

ナナシは少し意外だったが、サカズキの行動に少し感心した。

 

「わしは悪を根絶やしにする!!こんなところで引くわけにはいかん!!」

「ほう?少しはマシだな。ヤマト、出港の準備だけしておけ。この海兵の相手をする」

 

 ナナシは能力を使い変質した。

爪が黒くなって尖り、顔を含めた全身に紋様が浮かび上がる。そした、両眼の下にもう一対の眼が開眼。

 

「せっかくお前が勇気を見せたのだ。特別に少しだけ遊んでやろう」

「遊ぶじゃと!!巫山戯るな!!今から貴様はわしに殺されるんじゃ!!」

「活きが良いのは結構なことだ。さぁ、遊んでやろう。戯れだ」

 

 

 

 

 

          ◆

 

 

 

(分かっておった。内心は分かっておった。圧倒的実力差がある事を。じゃが、ここまで差があるのか!!)

 

「クハッ!!クハッハッハッハッ!!クハッハッハッハッハッハッ!!」

 

 ナナシの笑い声が街に響く。

バスターコールによって住民は皆逃げた。

そんな街にナナシの笑い声が響いている。

 

 ドォンーーーーーーーッ!!

 

 街の一角にサカズキは吹き飛ばされる。

覇気を使うナナシにとって、ロギアのサカズキを吹き飛ばすなど造作もない。

 

「どうした?その程度か!」

「舐めるな!!!」

 

 サカズキは自らの能力であるマグマの力を振るう。体をマグマに変化させて、ナナシにマグマを放つ。

しかし、放たれたマグマはナナシに届くことなく斬り刻まれる。

 

「『(カイ)』」

 

 数発の斬撃がサカズキを襲う。

サカズキの体はバラバラに斬り刻まれるが、死んではいない。

なぜなら、ナナシは覇気を纏っていないからだ。

ナナシは先の宣言通り遊んでいた。

 

「『(ハチ)』」

 

 武装色の覇気を手に纏いサカズキに触れる。

そして、覇気を纏っていない斬撃を放った。

 

「おどれ!!」

「もっと楽しませろ!!」

 

 ナナシはサカズキの頭を鷲掴みにする。

サカズキは抵抗するが、ナナシの手を振りほどく事は出来ない。

上空に高く飛んだナナシはサカズキを勢いよく地面に投げ飛ばした。

 

「ガハッ!!」

 

 サカズキは口から血を吐き出す。

そんな彼をナナシは後ろから見下ろしていた。

 

「日中で良かったな。お前の痴態がよく見える」

 

(わしがここまで圧倒されておるじゃと…。しかも、この男は遊んでおる……)

 

「ほら 頑張れ 頑張れ。まだ少ししか遊んでいないぞ。お前の実力はその程度か?」

「お…おどれ……」

「お前の正義とやらはそんなものか?」

「こんなものではないわい!!」

 

 サカズキは街全体にマグマを広げた。

だが、ナナシにはその程度通じない。ナナシは絶えず斬撃を放ち自らの周りにマグマを近づけないようにしていた。

 

「『大噴火(だいふんか)』!!」

 

 マグマに変化させた腕を巨大化させ、灼熱の正拳突きをナナシに放った。

その熱量は自らの何十倍もあり、氷塊すらも一瞬で溶かし尽くしてしまうほどだ。

 

「これが当たればあの男でも無傷ではいかんじゃろう」

「当たればな」

 

 サカズキの攻撃を避けたナナシは何事もなかったように立っている。

渾身の一撃も意味を成さなかった。

サカズキの心は折れる寸前だ。

 

「お前はまだまだ能力を使い熟せていない。もう少し楽しめると思っていたが、この辺りで限界だな」

「わしはまだ負けておりゃあせん!!」

「なら、折ってやる。そのくだらん心を………『(カミノ)』 『(フーガ)』」

 

 ナナシの手に炎が顕現する。

炎を矢のように放に扱いサカズキに向ける。

 

「炎じゃと!!?」

「さぁ、どうする?お前は炎を焼き尽くすマグマ。俺の炎を燃やせるか?」

「…………ええじゃろ。…………『冥狗(めいごう)』!!」

-

 

 サカズキは腕をマグマに変化させて、ナナシにマグマをぶつけようとする。

それと同時にナナシはサカズキ目掛けて炎を勢いよく放った。

 

  

 

 

          ◆

 

 

 船の出港準備を終えたヤマトは海軍が来ないように辺りを警戒していた。

ナナシはまだ戻ってこない。早く戻って来てほしい。そう思っていた。

 

「落ち着きがないな」

「ッ!!?ナナシ!!!?」

「何をそんなに驚いている?出港の準備は終わったのか?」

「う、うん。…勝ったの?」

「無論だ。クハッ!!奴は見どころは多々あった。運が良ければ生き延びているかもしれん。威力は絞ったからな」

 

 そう言って、ナナシは船に乗り込む。

島を囲っている海軍はナナシたちに手を出さない。否、出せない。 

軍艦はところどころ斬られ、ナナシたちを追撃する余裕は無かった。

 

 

 

 海軍は船が沈みかけているので、とりあえず島へと上陸する。

そして、救助隊が来るのを待つ。

 

 それと同時に単独で向かったサカズキを総動員で探す。

はっきり言って、つるは遠くからでもナナシの強さを悟っていたのでサカズキが無事とは思っていない。せめて、生きていてくれさえいればと思っている。

 

「サカズキはまだ見つからないのかい?」

「サカズキ中将が戦っていたと思われるところは分かっているのですが、なにぶん炎があちこちに散らばっていて、近づけないのです」

「今、部下が消火をしつつ通れそうな道を通って探しています」

 

 サカズキの捜索は困難を極めていた。

今でも燃えている街を捜索するのはかなり大変である。

 

「つる中将!!サカズキ中将を見つけました!!かなりの重症です!!」

「すぐに治療をしな!!」

 

 つるは治療をされながら運び込まれるサカズキを一瞥した。

右腕は完全に焼かれており、顔半分も右腕ほどでは無いが焼かれている。

 

(重症か。サカズキは見逃されたようだね)

 

 本来なら殺されていたサカズキ。

つる達海兵からすれば何故、サカズキが見逃されたのか理由は不明だ。

疑問は残るが、つるはしなければならないことをする。

 

(ヤマトとか言う子供も相当な才能と実力を持っている事は分かる。だが、あの男ほどじゃない。本部は間違っているよ。“鬼人”ナナシこそ危険人物だ。懸賞金3億?冗談じゃない。全然足りてないよ)

 

 つるはすぐに報告書を纏めた。

内容は主にナナシの事だ。ナナシは危険人物過ぎる。即、懸賞金を上げるべきだと。

そして、白ひげやカイドウ、ビッグ・マムと同様にこちらから攻撃を仕掛けてはいけないとも書いた。

 

 この日から海軍のナナシに対する認知は変わった。バスターコールを退ける程の強さ。

何よりもサカズキの強さを知っている者たちからすれば、化け物でしかない。

 今回の件で二人の懸賞金は格段に上がる。

“鬼人”ナナシ 懸賞金21億ベリー。

“鬼姫”ヤマト 懸賞金14億ベリー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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