今回は先生達が来る前の話で、『万魔殿‹パンデモニウム・ソサエティー›』の手持ちポケモンが分かります。そして、あのポケモンがイブキの。
丹花イブキと小さなお兄ちゃん
ーーーーこれは、先生とピカチュウとルカリオが学園都市〈キヴォトス〉に来る少し前のお話。
『三大学園』の一角して、最も治安が悪い学校〈ゲヘナ学園〉。テロ活動、珍騒動が日常の一部となっているこの学校にて、一人の小さな生徒と、一匹のポケモンの出会いを描こう。
ー???sideー
そのポケモンは、退屈を持て余していた。
足元には自分に喧嘩を売ってきた“このエリア”のポケモン達が、目を回して気絶し、積み木のように重ねられ、その上に自分がヤンキー座りで座っている。
これで自分が“このエリア”で一番強いボスである事が証明されたが、そのポケモンはまるで満たされなかった。ちょっとした退屈しのぎ程度にはなったが。それだけだった。
『・・・・クッ』
ポケモンは舌打ちでもしたように吐き捨てると、倒したポケモン達から降りて、その場から去って行った。
ーヒナsideー
「ーーーー頼む風紀委員長! イブキを探してくれ!!」
『シャー・・・・』
『マタドガス〜・・・・』
「・・・・突然なに?」
ゲヘナ学園・風紀委員会の執務室に突如やって来たのは、スラリとした体形のモデルのような長身と長い脚をし、長い銀髪や鋭い目など、容姿だけなら男装の麗人を思わせる美形であり、軍服のような制服と軍帽を被った、〈ゲヘナ学園〉生徒会・『万魔殿‹パンデモニウム・ソサエティ›』の生徒会長、もとい、議長『羽沼マコト』と、パートナーの紫色の体色に腹に顔のような模様を付けた巨大なコブラ『コブラポケモン・アーボック』と二体の『どくガスポケモン・ドガース』が連結(個々の体形に大きな変化は無い)した、ややゴツく厳めしい人相になっている『どくガスポケモン・マタドガス』が、執務室に入るや否や、いきなり土下座をしてきたのだ。
執務机に座って書類仕事をこなしていたヒナ、その隣に座っているアブソル、ヒナにハーブティーを渡していたゴロンダ、ベランダ近くで配下のヤミカラスの報告を聞いていたドンカラス。更に近くのソファで仕事をしていたアコとマニューラとソーナンス、イオリとヘルガー、チナツとタブンネも目を丸くしていた。
「・・・・取り敢えずマコト、どう言う事なのか順を追って説明して」
「くぅっ・・・・実は、イブキが【パートナーのポケモンが欲しい】と言ってきてな」
「イブキはパートナーを持っていなかったの?」
「当たり前だ! イブキは優しい子だからな! このゲヘナでパートナーポケモンを連れていれば、否が応にもポケモンバトルを挑まれる! それでパートナーが傷だらけにでもなったらーーーーイブキが泣いてしまうではないか!!」
マコトがガバっと起き上がって熱弁した。
「それで、イブキにはまだ早いと言って、イロハの『ニャース』とかと遊ばせて何とか誤魔化してきたのだが、今日の朝、中々登校してこないイブキを心配して部屋に行ってみればーーーーこんな書き置きがあったのだ!!」
マコトが懐から一枚の紙を出すと、ヒナの執務机にダンッと叩きつけた。
その振動で机に山のように積まれた書類(マコトからの嫌がらせ)が崩れそうになり、すぐにアブソルとゴロンダ、マニューラとソーナンスとヘルガーとタブンネが必死に抑えた。
ヒナはアブソル達に礼を言いながら、面倒と思いつつも紙に書かれた文面を読む。
【マコトせんぱいへ。イブキ、パートナーのポケモンさんをさがしてくるね! タンガイブキ】
と、子供らしい可愛らしい文面に、思わずクスリと笑ってしまいそうになるヒナだが、キリッとした顔で必死の形相のマコトに話しかけた。
「成る程。イブキも中々行動力があるわね。それで、探したの?」
「勿論探した! イブキの足で行ける範囲など限られているからな! 学園のアチコチから、イブキと仲の良い『夜桜キララ』や『旗見エリカ』にも聴いたが、今日はイブキを見ていないと! もうこうなれば、風紀委員長! 貴様のドンカラスのネットワークだけが頼りなのだ!!」
『ゲヘナの空の支配者』と呼ばれているヒナのドンカラスは、配下にヤミカラスを四百匹以上も従え、ゲヘナ学園の監視をしている。
そのネットワークを使えば、何処かでイブキを見つけているのかも知れないと思ったのだろう。
「・・・・・・・・」
『ドンガ〜・・・・』
ヒナは一瞬だけ、ドンガラスに目配せすると、ドンガラスは盛大な溜め息を静かに吐いてから、配下のヤミカラスを一匹飛ばした。
「・・・・マコト」
「な、何だ・・・・?」
「これは『貸し』よ」
「わ、分かった・・・・」
普段なら突っぱねたい所だが、イブキの存在で風紀委員会と万魔殿‹パンデモニウム・ソサエティ›の仲が衝突せずにいるし、可愛い後輩を見捨てる訳にも行かないし、マコトに『恩』を売っておくのも良いと思い、ヒナは承諾した。
マコトもアホだが、そこまで馬鹿でもない。本来ヒナに『借り』を作るなんて屈辱の極地だろう。しかし、自分の自尊心‹プライド›よりも、イブキの身の安全を優先するその心掛けをヒナは汲んだのだ。
◇
そして、イオリやチナツも捜索に向かわせてから十数分後。
『ヤミカー!』
ドンガラス配下のヤミカラスが、執務室に飛んできた。
『ドンガー』
『ヤミカー!』
ドンカラスが「報告しな」と言いたげな態度を取ると、ヤミカラスは敬礼してから報告し、ドンカラスはそれを聞いてフムフムと首肯してから、ヒナに報告した。
『ドンガ! ドンドンガー!』
「ーーーーうん。分かった」
ドンカラスの言葉を即座に理解したヒナは、腕を組み、その長い美脚を組んで座り、まるでモデルのような美しさがあるが、その顔は苛立ちに染まり、ソワソワと貧乏揺すりをして台無しにしているマコトに話した。
「今朝。『イキリンコタクシー乗り場』に、イブキらしい女の子が運転手に話をし、そのままイキリンコタクシーに乗って何処かに向かったそうよ」
「『イキリンコタクシー』だと!? では何処に向かったのだ!?」
「そこは今から近くにいるチナツを聞きに行かせますから(ロトロトロトロト)おっと、流石はヒナ委員長のドンカラスの配下達、既にチナツも向かわせていたようですね。はいチナツ。どうでしたか?・・・・フムフム。それはーーーー少々厄介な所に行ってしまいましたね。分かりました。すぐに向かってください」
アコがスマホロトムを切ると、ヒナとマコトに伝える。
「タクシーの運転手さんの証言によれば、今朝それらしい女の子を『湿地エリア』に送ったと言ってます」
〈ゲヘナ学園〉の保有するポケモンの保護エリアである『湿地エリア』の事を話した。
「『湿地エリア』だと!? そこにイブキはいるのだな!」
「でも、確か今『湿地エリア』は危険な状態にあるんじゃなかったのアコ?」
ヒナの言葉に、アコは神妙な顔で頷く。
「はい。『エンニュート』を『ボス』とした『ヤトウモリ』の群れが、最近『何者』かに全滅されてしまい、その『何者』かが『ボス』となっているそうですが、その正体は未だ不明となっている状態です」
メスしかいない『どくトカゲポケモン・エンニュート』は、オスで進化前の『どくトカゲポケモン・ヤトウモリ』を侍らかせている。
『湿地エリア』はそのエンニュートが治めていたが、『正体不明の何者』かによって全滅させられた。
と、ヒナとアコも『湿地エリア』の監視をしている風紀委員からの報告を聞いていた。
それを聴いて、何やらマコトがピクッと身体を震わせた。
「何・・・・? 確かそのエンニュートの軍団は、貴様ら風紀委員ですら手を焼く一団と聞いたが?」
「ええ。女王様に気に入られたいのか、下僕のヤトウモリ達の奇襲戦術とかが厄介でして。委員長くらいじゃないと対処が難しいのです」
「その一団を、その『何者』かが、全滅させたと?」
「ええそうよ」
「キキキキ、そうかそうか」
「「(何か良からぬ事考えてるな・・・・)」」
軍帽で目元を隠しながら、含み笑いで身体を震わせるマコトに、ヒナとアコ、更にポケモン達も半眼で呆れていた。
そんな周りの視線に構わず、マコトはバッとソファから立ち上がってロングコートを翻して、風紀委員の執務室から退室しようとする。
が、そんな簡単に行かせる程、風紀委員会行政官の天雨アコは甘くない。
「ちょっと待ってくださいマコト議長」
「何だ行政官? 今急いでいるのだが?」
「そうですね、イブキちゃんが危ないかも知れませんからね。で・す・が、こんな状況なのに、『棗イロハさん』と『京極サツキさん』と『元宮チアキさん』といった『万魔殿‹パンデモニウム・ソサエティー›』の主だったメンバーの姿が確認できていないのですが?」
「っ!」
アコの指摘に、マコトは少し身体をギクッと震わせる。それを見てアコは畳みかける。
「変ですねぇ? 『万魔殿‹パンデモニウム・ソサエティー›』の幹部が揃っていない上に、捜索に出ている部隊もほんの一部隊のみ。彼女達もイブキちゃんを可愛がっていますから絶対捜索に出ていても可笑しくない筈なのに?」
「・・・・イロハとサツキとチアキには昨日から、『特別任務』を与えて出払っているのだ。他の兵達も一緒だ」
「それはそれで可笑しいですね? いつものマコト議長ならば、何よりもイブキちゃんを優先して、『『特別任務』なんてどうでも良いからイブキを探せ!!』って言っても不思議じゃないのに?」
『ソーナンス!』
アコの後ろでボールから勝手に出てきたソーナンスが同意するように声を上げるが、アコは無言でボールに戻す。
「ふむ、そうだな。イブキの事でいっぱいいっぱいで失念していたぞ。ではすぐにイロハ達にも連絡しなければな。では急いでいるので」
マコトはそう言うと、そそくさと部屋を出ていった。
「・・・・委員長。あのタヌキ、何か企んでいますね? イブキちゃんの事を心配しているのは本当でしょうが、他のメンバーに関しては何か隠しているようです」
「面倒ね・・・・ドンカラス、一応、他のヤミカラス達に、イロハ達の事も捜索するように指示をしておいて」
『ドンガー!』
ヒナからの指示を受けて、ドンカラスは即座に配下達に命令する。それを見てから、アコはアブソル達と共に窓を開け放つ。
「委員長が直々に行くのですか?」
「『湿地エリア』の状況も確認しておきたかったからついでよ。アコ、イロハ達の動きが分かったら報告して」
「了解しました」
と、ヒナはアブソルの背中に座り、ドンカラスは数匹の配下と共に綱を持ってゴロンダをブランコのように宙吊りにすると『湿地エリア』へと向かった。
ーイブキsideー
ゲヘナ学園の自治区内では『ヒノム火山』と呼ばれる火山があり、その影響か温泉が多いらしく、『温泉開発部』が勝手に開発・改修した温泉施設もそれなりに存在している。
『湿地エリア』もその『ヒノム火山』の影響で生まれた地域と言っても過言ではない。
「♪〜♪〜♪〜♪〜♪」
そしてそのエリアに、ゲヘナ学園の生徒会『万魔殿‹パンデモニウム・ソサエティー›』に所属する1年生、『丹花イブキ』がいた。年齢11歳。明るい金髪と金色の瞳。頭には小さいが角が生え、腰には小さいがコウモリの羽と、長い悪魔の尻尾が伸びた小柄な少女、イヤ、幼女である。
本来ならばゲヘナ学園初等部に所属する生徒であり、実際に着ている制服は初等部の物であり、その上に万魔殿‹パンデモニウム・ソサエティー›の腕章を付けたロングコートを着用しているが、丈が合わずロングコートの下は地面に付きそうになり、袖はまるで合っておらずイブキの腕を完全に覆っている状態である。突出した能力故に、飛び級で高等部一年となっている生徒である。
背中には可愛いニャースのリュックを背負い、肩にはモデルH&K HK416『アサルトライフル・バンバーン!ちゃん』を掛けていた。
「ーーーーねぇねぇ! この辺りに、大っきくて強いポケモンさんとかいるのかなぁ!?」
『・・・・ケッ』
「あっ! こっちだね!」
イブキは、自分の前を歩いているポケモンに向かって声を発した。
青紫の体色に、頬にあるオレンジ色の部分は袋になっており、膨らませながら縮ませ、お腹の白い部分はまるでサラシのように見える二足歩行のカエル『どくづきポケモン・グレッグル』である。
グレッグルは舌打ちのような声を発するが、イブキはソレで意図を理解したように声を上げた。
『ンー・・・・ンー・・・・』
「ンー♪・・・・ンー♪・・・・」
イブキはグレッグルの気の抜けた声にリズム良く合わせ、グレッグルが手をブランブランとさせながら歩くのに合わせ、イブキも萌え袖をブランブランとさせながら『湿地エリア』を歩いていた。
何故イブキがグレッグルと一緒に歩いているのかと言うと、『湿地エリア』に到着したイブキは、パートナーになってくれるポケモンを探そうと『湿地エリア』に入ろうとしたら、入口付近でヤンキー座りをしてボーっとしているグレッグルと出会った。
正直、頼りになる先輩達がいなくて少し不安だったイブキは、そのグレッグルに近づき、持ってきていたお菓子をプレゼントして道案内を頼んで現在に至るのだ。
グレッグルが道行く地面の状態や小さく生えて突き出た木の枝や小石などを退かしながら、イブキの行き先を安全に整理していくが・・・・。
「あっ、あっちの木できのみが実ってる!」
イブキはグレッグルから離れて、トコトコときのみが成っている木に近づく。すると、木の影から『スカンクポケモン・スカンプー』の群れとその進化系『スカンクポケモン・スカタンク』が現れ、イブキに驚いたのか、尻尾の先から激臭の液体を放とうとしていた。
『ーーーークッ!』
ーーーードカァァァァンッ!!
『スカアアアアァァァァ・・・・』
空かさずグレッグルがイブキより先に飛び出し、ドロップキックでスカタンク達を空高く蹴り飛ばした。
「あれ? どうしたの??」
『・・・・ケッ』
イブキは首を傾げるが、グレッグルは木にひとっ飛びで登り、きのみを両手一杯に抱えて降りてくると、取ってきたきのみを一口食べて毒見してから、イブキに手渡した。
「うわぁ、ありがとう! ハグッ・・・・う〜ん、おいしい♪」
『ケッ』
グレッグルはフンッと鼻を鳴らすと、また歩き出し、イブキもその後を追った。
ソレから、イブキとグレッグルのポケモン探しは続いた。
少し歩いていると、草かげから『ツルじょうポケモン・モンジャラ』がツルを伸ばしてイブキを捕まえようとしたので、グレッグルがそのツルを掴んでハンマー投げよろしく投げ飛ばし。
イブキが沼に近づくと、『むしとりポケモン・マスキッパ』が現れ、大口を開けてイブキを食べようとすれば、グレッグルが【どくづき】でぶっ飛ばし。
イブキが歩く先に『トラップポケモン・マッギョ』が待ち構えていれば、【けたぐり】で蹴り飛ばし。
イブキが勝手に何処か行かないように袖を掴んで優しく引きながら『湿地エリア』を歩いていった。
「ーーーーそれでねマコト先輩達、【イブキにパートナーポケモンはまだ早い】って言ってね! イブキだってパートナーのポケモンさん持てるもん! って思って、ここに来たの!」
『・・・・・・・・』
何やらイブキがグレッグルに手を引かれながらも、楽しそうに会話を繰り広げていた。
「だからイブキね! マコト先輩のアーボックちゃんやマタドガスちゃんに、イロハ先輩のニャースちゃんに『ドオー』ちゃんに、サツキ先輩の『スリーパー』ちゃんに『マネネ』ちゃん、チアキ先輩の『メガヤンマ』ちゃんに『ドクケイル』ちゃんみたいなポケモンさんを捕まえて、イブキだって『万魔殿‹パンデモニウム・ソサエティー›』の立派な一員だって見せたいんだぁ!」
『・・・・・・・・』
「ねぇねぇグレッグルちゃん、この奥に強いポケモンさんいるの? イブキ早く会いたいなぁ!」
『クッ』
イブキのマシンガンみたいな会話を聞きながら、グレッグルはイブキの手を引いて『湿地エリア』の奥へと向かった。
『・・・・ヤミカー!』
その二人の様子を、二匹のヤミカラスが上空から見つけ、一匹が離れ、もう一匹は二人の追跡を続けている事に気付かず。
ーヒナsideー
「ーーーーイブキは何処だぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!?」
『シャーボック!』
『マ〜タドガ〜ス』
イブキがグレッグルと奥へと向かっている頃。
『湿地エリア』に到着したマコトは大声を上げながら、アーボックとマタドガスと共にエリアの石の下から木の影、岩の陰、ありとあらゆる場所を見ながら、イブキを探しまくっていた。
「それで委員長、イブキちゃんが何処に行ったか分かりますか?」
「・・・・ドンカラス」
『ドンガ』
半眼で呆れるチナツがヒナに話しかけると、ヒナはすぐにドンカラスに目を向け、ドンカラスがコクリと頷くと同時に、ヒナ達が到着する前に捜索に向かわせたヤミカラスの数匹が飛んできて、地面に足を付けると、ドンカラスに話しかけた。
『ヤミカ、ヤミカヤミカヤミカー!』
『ドンガドンガ。ドン、ドンガラー!』
「・・・・成る程」
ヤミカラスからの報告を聞き、そのまま聞いた全ての情報をヒナに伝えるドンカラス。ヒナはフムと顎に手を当てて少し考える素振りを見せる。
「委員長。何か分かりましたか?」
「イブキの方はエリアの奥へと向かったそうよ。何故かグレッグルに道案内をしてもらってね」
「え? グレッグル、ですか・・・・? 確か風紀委員会の調査では、この『湿地エリア』に、そのグレッグルの進化系の『ドクロッグ』が群れを成していて、『エンニュート』の後釜を狙っているって聞きましたけど?」
「他のヤミカラス達からの報告では、その『エンニュート』も、自分からボスの座を奪った奴に復讐するつもりなのか、軍団を再編成をしているようよ。『湿地エリア』の奥では、『エンニュート』の軍団と『ドクロッグ』の軍団が今から抗争を始めようとしているみたいね」
「えっ? イブキちゃん、大丈夫なんですか? もしかしてそのグレッグル、ドクロッグ達の手下だったりとかは?」
『ブンネ?』
「・・・・・・・・」
『(コクリ)』
チナツとタブンネがそう聞くと、ヒナはドンカラスに視線を向け、ドンカラスは小さく頷き、手下のヤミカラス達をイブキとグレッグルの元へと向かわせた。
「さて、マコトをさっさと連れて行くわよ」
ヒナの視線の先には、何故か『ひげうおポケモン・ナマズン』とバトルをしているマコト達を呼びに行った。
「・・・・イブキ。あの子、結構運が良い子みたいね」
「委員長?」
「ーーーー“このエリアで、最も強いポケモンと一緒にいるなんてね”」
ーイブキsideー
「ーーーーねぇねぇ、なんか向こうでポケモンさん達が喧嘩しそうになってるけど、どうしたのかな?」
『???』
イブキとグレッグルは、『湿地エリア』の奥に到着すると、昼食にしようと、ソコの小高い丘の上でイブキがレジャーシートを広げ、その上に靴を脱いで座り、グレッグルも足の汚れをイブキが手渡したウェットティッシュで拭き取ってから座り、二人仲良くお菓子を食べていると、丘の下の湿地では、二つポケモンの軍団が向かい合い睨み合っていた。
黒いオオトカゲが二本足で立ち、腹部から尻尾まで火のような紋様が浮かび、色香を放つ女盗賊のような雰囲気よ『どくトカゲポケモン・エンニュート』に率いれられた、エンニュートよりも暗いモノトーンを基調としたイモリの様で、黒い頭部分には二本の特徴的なトサカのような物があり、何処となくバンダナを被った盗賊を思わせる『どくトカゲポケモン・ヤトウモリ』の大群が現れた。
エンニュート達と対面しているのは、頭部からツノのような突起が生え、拳からも赤く鋭いトゲかツメが伸びており、喉元には真っ赤な毒袋を携えたグレッグルの進化系『どくづきポケモン・ドクロッグ』の軍団であった。
『クルルルルルルルル・・・・!』
『グロロロロロロロロ・・・・!』
エンニュートとボスらしいドクロッグが睨み合うとーーーー。
『カァァァァ!!』
一匹のヤトウモリがボスドクロッグに向かって【かみくだく】を繰り出した。
が・・・・。
『ログ!』
ーーーーバキッ!
『アァァァァ!!』
片手で殴り飛ばされたヤトウモリだが、ソレがゴングとなったのか、エンニュートのヤトウモリ達とドクロッグ軍団が戦い始めた。
ヤトウモリが【かえんほうしゃ】を放ち、ドクロッグが【どくづき】で応戦した。
「何だか凄いねー?」
『ケッ』
イブキは突然起こったポケモン同士の抗争をグレッグルと眺めながら、美味しいお菓子ときのみを食べながら、完全に平和なランチタイムをしていた。
◇
そして、エンニュートと数匹のヤトウモリ、ボスドクロッグと数匹のドクロッグだけが残っていた。
『ケッ?』
「う~ん・・・・イブキ、エンニュートさんもドクロッグさんも恐いからパートナーになって欲しくないなぁ・・・・ふぁ・・・・」
完全に観戦モードになっている二人。お菓子ときのみでパンパンになったお腹を満足そうにさするグレッグルが「あの中から選ぶか?」と聞くと、イブキは微妙な顔をして首を横に振ると、ここまで歩いた疲労と満腹感で眠そうになり、レジャーシートの上で丸くなって眠ってしまった。
ーグレッグルsideー
『・・・・ケッ』
グレッグルは眠ってしまった『イブキ』と名乗る子供の衣服を上着をソッと脱がせ毛布代わりにし、軍帽を傍らに置いて、まだ少しだけ残っているお菓子やきのみを袋に片付け、イブキのリュックから大きめの空の袋を取り出し、ゴミとかを入れた。
退屈で退屈で仕方なかったグレッグルは、『湿地エリア』の外には、強い人間とポケモンがいると聞いたので、ソイツらと戦えば少しは退屈しのぎができるのかと思って待っていれば、現れたのはポケモンを連れていない子供だった。
美味しいお菓子を食べれると思い、案内役をやってみれば、この子供は少し目を離すとアッチへフラフラ、コッチへフラフラと手の掛かる子供であった。
・・・・まぁ、退屈しのぎには十分なったが。
『っ! クルル!』
『っ! グロッ!』
と、考えていると、眼下の『雑魚達』がグレッグル達、嫌、グレッグルの存在に気付いたのか、目の前の相手に向けていた『敵意』と『殺意』を、グレッグル一匹に注ぎ、猛然と一斉にコチラに向かってきた。
『・・・・・・・・ケッ』
グレッグルは迫りくるポケモン達に全く臆さず、軽く柔軟をしてから、食後の運動と言わんばかりに腕を回し、エンニュート達とボスドクロッグ達に向かって悠然と歩いていった。
ーヒナsideー
「・・・・何だこれは?」
隣りにいるマコトの言葉を聞き流しながら、ヒナは眼前に広がる攻撃を見据えていた。
以前までこの『湿地エリア』のボスであったエンニュート。そしてその後釜を狙っていたドクロッグ。その双方が今、ボロボロに叩きのめされ、目を回しながら仲良くテトリスのように重なって山のようになっていたのだから。
更にその山の向こうでは、スヤスヤと眠るイブキと、そのイブキの傍らで座っているグレッグル(無傷)がいたのだ。
「貴様ー!! ソコのグレッグル! イブキに何をしているか!! アーボック!!」
『シャーボック!』
イブキに危害を加えようとしていると感じたのか、アーボックをけしかけるマコト。
「アーボック! 【どくばり】!」
『シャー!』
アーボックが口から幾つもの毒針を放出する。
『ーーーークッ』
が、グレッグルは座ったまま器用にジャンプし、毒針を回避する。
「マタドガス! 【あくのはどう】!」
『マ〜タドガ〜ス!』
マタドガスが漆黒の波動を放つが、ソレも回避するグレッグル。
「・・・・いい動きね。マコトのアーボックもマタドガスもそれなりに強いけど、まるで相手になっていないわ」
「ただのグレッグルではない、と言う事ですか?」
『ドンガ?』
ヒナとチナツが話をしていると、ドンカラスが近くで見つけたマッギョから、話を聞いていた。
「己、チョコマカと! マタドガス! 【えんまく】をはれ!」
『マタドガス〜!』
『・・・・・・・・』
マタドガスが煙を噴射してグレッグルの視界を奪う。
「アーボック! 【まきつく】!」
『シャー!』
アーボックがグレッグルに巻き付いた。
『グッ』
アーボックの締め付けに動きを封じられるグレッグル。
「良し! そのまま【どくどく】を浴びせろ!」
『シャー・・・・!』
アーボックが牙から毒を滴らせ、グレッグルに迫る。
がしかしーーーー。
『ーーーーケッ!』
『シャボ!?』
グレッグルはなんと、両腕でアーボックの締め付けを自力で脱出した。そして、アーボックの尻尾の先を掴み取ると、そのままアーボックをジャイアントスイングでぶん回す。
『グレッグルー!!』
『シャボォォォォォォォォォォォォォォォ!?』
ぶん回したアーボックをマタドガスに向けて投げ飛ばし、マタドガスは受け止めようとしたが、全く勢いを殺し切れず、そのままアーボックとモロにぶつかり、諸共吹き飛ばされそしてーーーー。
「何ぃぃぃぃぃ!?(グシャァ!)ごはぁぁっ!?」
マコトの上にのしかかる形で墜落し、マコトは下敷きになってしまった。
「お、おのれぇ・・・・! 風紀委員長! 貴様がぶちのめせ! 構わんからコテンコテンにのしてやれ!!」
「はぁ・・・・。ゴロンダ!」
『ゴロ!』
仕方ないと肩を落としたヒナから指示を受け、ゴロンダが前に出る。
『・・・・・・・・』
『・・・・・・・・』
と、その時、お互いを見たグレッグルとゴロンダは、無言で睨み合うと・・・・。
『クックッ』
『ゴロゴ』
拳を構えだした。
「ゴロンダ?」
ソレをヒナは訝しそうに見る。ゴロンダが拳を構える時は、“相手を強敵と見なした時だけである”。
『クッ!』
『っ、ゴロォ!』
『ククッーーーークァ!』
『(ドスンッ)ゴロッ!?』
グレッグルが小柄を生かしたスピードで【どくづき】を繰り出しと、ゴロンダは顔を僅かに動かして回避し、【バレットパンチ】を放つが、グレッグルはその拳を受け流し、【けたぐり】をゴロンダに当てる。
『ーーーーゴォロォ!!』
『っ! グァ!!』
しかし、ゴロンダも攻撃を受けながらも、【リベンジ】を放ってグレッグルを殴り飛ばし、その先には木があり、ぶつかりそうになる。
がーーーー。
『っ、グレ・・・・グゥルゥ!!』
『(ドゴッ!) ゴロォッ!!』
何と、グレッグルは飛ばされた先にあった木をまるで体操の順手車輪のように回転して、その勢いで【かわらわり】をゴロンダに叩き込み、ゴロンダはたまらず倒れた。
「そんなっ!? 委員長のゴロンダと互角に渡り合ってる!?」
『ブンネ!?』
「・・・・やはり、あの子がそうなのね」
「ーーーー何だ風紀委員長。何がそうなのだ?」
『剛力無双』と呼ばれているヒナのゴロンダと対等に渡し合っているグレッグルに、チナツとタブンネが目を見開き、ヒナは確信したように呟くと、アーボックとマタドガスをボールに戻したマコトがヨロヨロと起き上がり問い掛けた。
「あのグレッグルだったのよ。エンニュートを倒して、この『湿地エリア』の『ボス』となったのは」
「な、何ぃぃぃぃぃ!? あんな小さな身体のグレッグルが!? このエリアのボスだとぉ!?」
マコトが目をひん剥いて驚くが、チナツも少し驚いた。
「ほ、本当なんですか委員長・・・・?」
「ええ。ゴロンダの攻撃をマトモに受けても立っている耐久力。ゴロンダが危険と判断した攻撃力。吹き飛ばされた先を利用した判断力。ソレにあの動きとスピード。どれを取っても、並のポケモンではないわ。それに、ドンカラスもソコにいるマッギョから聞いたみたいね?」
『ドンカ!』
ヒナの言葉に、ドンカラスは頷いた。すると、ヒナが歩を進め、起き上がろうとするゴロンダの隣に立った。
『ーーーーゴロ・・・・?』
「ゴロンダ。ここからは私が指示を出すわ」
『ゴロ!? ゴロロロロ!』
「俺はまだやれる!」と言わんばかりにゴロンダが声を上げるが、ヒナは首を横に振った。
「分かっているでしょう? あのグレッグルは半端ではないわ。手心を加えてどうにかなる相手ではない」
『・・・・・・・・ゴロ』
ヒナがそう言うと、ゴロンダは完全に立ち上がり、ヒナの指示に従うと頷いた。
『クッ!』
再びグレッグルが飛び出し、ゴロンダはヒナを守るように前に立つ。
『クッ』
グレッグルはダメージを受けているとは思えない軽快なフットワークでゴロンダを翻弄するように動き、死角から【どくづき】を繰り出すーーーーしかし。
「ーーーーゴロンダ」
『!』
ーーーーバキッ!
『っ!?』
何と、ゴロンダはグレッグルの方を見向きもしないでアッパーを繰り出し、グレッグルはその拳を受けて吹き飛ぶ。
『!? クッ!』
一瞬訳が分からないと言わんばかりのグレッグルだったが、すぐにまた攻撃に入る。だが・・・・。
「ゴロンダ」
『!』
『(ドスンッ!)っ!』
「ゴロンダ」
『ゴロ!』
『(ドシュッ!)っ!!』
「ゴロンダ」
『ゴロロ!』
『(バキィッ!!) グァァ!?』
ヒナが一声かけただけで、まるでソレだけでヒナの言葉の意味を理解していると言わんばかりに拳を動かし、ソレがまるで吸い込まれるようにグレッグルにクリティカルしていく。
『フゥ・・・・フゥ・・・・フゥ・・・・!』
流石のグレッグルも、ダメージでヨロヨロになる。
「・・・・どうなっているのだアレは?」
「委員長と四獣達は絶大な信頼関係で結ばれています。だから、委員長が一声だけでも、ゴロンダにはその内に込められた指示が聞こえているのでしょう」
「ゴロンダ‹油断しないで、まだ向こうは余力があるわ›」
『ゴロロ(コクリ)』
ヒナの一声に込められた意思に、ゴロンダは力強く頷いた。
と、ソコでーーーー。
「んん〜・・・・フワァ〜・・・・あれ、マコト先輩?」
「イブキー!!」
レジャーシートで眠っていたイブキが欠伸をあげて起きてきて、マコトがダッと駆け出してイブキの体を抱きしめた。
「うにゅ!? どうしたの?ーーーーあっ、グレッグルちゃん!」
グレッグルを見たイブキはマコトから脱出すると、グレッグルに抱き着いた。
「ねぇねぇ! エンニュートさんとドクロッグさんのケンカはどうなったの?」
『クッ』
抱き着かれたグレッグルはエンニュート達を指すと、気絶したエンニュート達とドクロッグ達がいた。
「あっ、皆やられちゃったんだ」
「イブキ」
「あっ、風紀委員長さん」
「あなた、このエリアが一番強いポケモンであるグレッグルを見つけたのね」
「えっ!? グレッグルちゃんが一番強いの!?」
『・・・・ケッ』
グレッグルがそっぽを向く。
「ぁっ! ねぇねぇグレッグルちゃん!」
『?』
「イブキのパートナーになって!」
「「「えっ!?」」」
イブキがグレッグルをパートナーにしたいと言い出し、三人は驚いた。
『・・・・・・・・』
そして当のグレッグルは、ゴロンダを、そしてアブソルやドンカラスを見てからイブキを見て四獣達を指す。
『グレッグ』
「うん! イブキのパートナーになってくれたら、時々風紀委員長さんのポケモンさん達と勝負させて貰えるようにするから!」
「えっ?」
『ググ』
「うん! きっと退屈しないよ!」
『・・・・グレッグ』
そして、グレッグルは頷くと、イブキは一旦離れて、モンスターボールを差し出すと、グレッグルはボールに触れ、ボールが開いて吸い込まれると、そのままボールに収まった。
「ーーーーやったぁ! グレッグル! ゲットしたよ!!」
イブキがボールを掲げて嬉しそうにピョンピョンと跳ねた。
「い、良いのかイブキ? そんな不良のようなヤツで・・・?」
「うん! イブキ、グレッグルちゃんがいいの! えい!」
マコトが心配そうに言うが、イブキは満面の笑みを浮かべてボールを放り投げると、グレッグルが出てきた。
『クッ』
「えへへ! よろしくね、『グレちゃん』♪」
『ケッ』
「じゃぁ帰ろう! イロハ先輩達も紹介するから!」
そしてイブキは、グレッグルと手を繋いで、帰路についたのであった。その姿はパートナーと言うよりも、『兄妹』のようであった。
「(チッ! イブキと仲良しなのは気に食わんが、エリアのボスとなるポケモンならば、戦力として申し分ないな。コレで後はイロハ達が『温泉開発部』との取り引きで手に入れた『化石ポケモン』の化石からポケモン達を復活させれば・・・・)」
「ん? イオリ? どうしましたか?・・・・えっ? マコト議長」
「ん? 何だ火宮チナツ?」
「イロハさん達が乗ったトラックが『美食研究会』に襲われて、トラックの中身が川に落ちてしまったようですよ」
「何ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっっ!?」
チナツからの報告を聞いて、マコトは目を裏返して絶叫を上げた。
ちなみに、その川に落ちた化石は、『便利屋68』が拾って、自分達の仲間にしてしまったのであった。
結局『万魔殿‹パンデモニウム・ソサエティー›』に残った『化石ポケモン』は、『ヒレのかせき』から生まれた『ツンドラポケモン・アマルス』で、この子もイブキの手持ちとなった。
◇
それから何日か過ぎたある日。
マコトが何を思ったのか、ゲヘナ学園に自分の像(しかも金)を作って仁王立ちしていた。
「キキキキ、キャハハハハハ! 見よ! この偉大なマコト像の勇姿を!!」
相も変わらず馬鹿やるマコトに、風紀委員会を頭を悩ませ、ヒナも心底面倒に思い、四獣達に至っては像ごとあの馬鹿を粉砕したいと全身からオーラとして放っていた。
すると、マコトの背後からイブキのグレッグルが現れーーーー。
『ーーーーケッ』
「おぐっ!? シビビビビビ・・・・!!」
マコトに【どくづき】をくらわせ、痺れて倒れたマコトの首根っこを掴んでズルズルと引き摺っていく。
『クックックッ・・・・』
何やら笑いながらマコトを引き摺っていくグレッグル。
「良いなぁマコト先輩。いつもグレちゃんと楽しそうで。ね? 『マルちゃん』?」
『クゥ〜』
その光景を、アマルスの背中に乗ったイブキが何処かズレた感想を言った。
コレを気に、マコトが何か馬鹿をやらかすとイブキのグレッグルを連れてくると言う決まりがゲヘナ風紀委員会でできたとか・・・・。
はい。分かる人には分かりますが、『万魔殿‹パンデモニウム・ソサエティー›』のポケモン達は、アニポケのロケット団のムサシとコジロウの手持ちです。
イブキの手持ちは『タケシのグレッグル』とアマルスです。主にグレッグルのオシオキをくらうのはマコトですが(笑)。