ポケモンアーカイブ   作:BREAKERZ

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さぁ新年の投稿で遂に! あの! 人気のチームが出てきます!


こちらアウトローな何でも屋、便利屋68‹シックスティーエイト›!

ー先生sideー

 

時間遡り、セリカを保健室で寝かせ、ウォーグルとシロコとイワンコが看病していると、対策委員会の教室で先生達は話し合っていた。

 

「先生達がいなかったら、大変な事になる所でした・・・・」

 

『ビブラー♪』

 

「うんうん。先生のおかげでセリカちゃんの居場所を逃さず追跡できましたし、ピカチュウ達の活躍で楽に勝てましたし、さらにワシボンもウォーグルに大きくなって進化しました。やっぱり凄いです☆」

 

『サイサイ☆』

 

「確かに、ただのストーカーじゃなかったって事だね」

 

『ヤド・・・・グゥ~』

 

対策委員会の皆が先生達を称賛した。

すると、アヤネが顔を引き締め、ある物を取り出した。

 

「・・・・皆さん、これを見てください」

 

アヤネがテーブルの上に置いたのは、ヘルメット団が使っていた戦車の部品だった。

 

「散らばった戦車の部品を確認した所、〈キヴォトス〉では使用が禁止されている違法機種と判明しました。もう少し調べる必要はありますが・・・・ヘルメット団は、自分達では入手できない武器やアイテムまで保有しているそうです」

 

「この部品の流通ルートを分析すれば、ヘルメット団の裏にいる『黒幕』の存在を探し出せますね!」

 

「はい。ただのチンピラが、何故ここまで執拗に私達の学校を狙っているのかも、明らかになるかも知れません。もしかしたら、この砂漠地帯のボス達がヘルメット団の手持ちになっていたのも、その『黒幕』が絡んでいるのかも知れません」

 

“・・・・・・・・”

 

『ピカ・・・・』

 

何故か先生とピカチュウが視線を気まずそうに逸らした。

 

「ま、取り敢えず分かった。じっくり調べて見よっかー」

 

ホシノがこの話を締めたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

ー???sideー

 

そしてその夜。とある高層オフィスビルの一室。

 

「・・・・」

 

大きな身体で無駄に豪奢な椅子に座った人物が、ドローンから映し出された映像を見ていた。

〈アビドス対策委員会〉に全滅されたカタカタヘルメット団の醜態を。

 

「・・・・格下のチンピラごときでは、強力な『化け物』を手に入れても、あの程度が限界か。主力戦車まで送り出したと言うのに、このザマとは」

 

ヘルメット団の敗北を見て、不甲斐ないと言わんばかりに吐き捨てる。

 

「しかし・・・・まさか『アレ』が、“戻ってきたとは”、しかもアビドスの生徒達に協力しているだと? これではいずれ奴らが嗅ぎ付けてくる恐れもあるか・・・・!」

 

映像に映された『ポケモン』を見て、その人物は顎に手を当てて思考する。

 

「ふむ・・・・となると、目には目を、生徒には生徒を、『化け物』には『化け物』・・・・か。『専門家』に依頼するとしよう」

 

そうして、その人物は『専門家』に連絡を入れた。

 

《はい、どんな事でも解決します。〈便利屋68〉です》

 

「仕事を頼みたい、便利屋」

 

そして、まるでギャングかマフィアのボスのような服装をしたロボットのような人間が依頼した。

 

 

 

 

 

 

 

ー???sideー

 

そして、〈カタカタヘルメット団〉のアジトでは。

 

「うわぁぁぁぁ!!」

 

『ビアァァァァァァル!!』

 

ーーーータタタタタタタタタタタタンッ!!

 

ーーーードゴンっ!!

 

ヘルメット団の団員の一人と手持ちのワルビアルが、突然の銃撃と攻撃に倒れた。

 

「あーあー、こっちは終わったよー」

 

『ウホウホ♪』

 

「こっちも制圧完了だ、ボス」

 

『ニャァ』

 

別方面から逃げていたヘルメット団員を全滅させた。

 

 

 

 

ー???sideー

 

そして、ヘルメット団リーダーは、昼間のダメージが残っているとは言え、『雇い主』から支給された『物』を使って、“強制的に暴走させたボスワルビアルとボスサダイジャ”を撃破させた相手を見据える。

 

「う、うう・・・・何者だ、貴様らは・・・・」

 

「・・・・ふふふ」

 

ヘルメット団リーダーに近づく少女の人影が、リーダーの頭をグリッと踏みつける。

 

「うあああっ!! ま、まさか、〈アビドス〉の!? よくも我々を・・・・」

 

「はあ、こんな不潔で変な匂いのする場所がアジトだなんて、あなた達も冴えないわね。そう思わない?ーーーー『マフィティフ』?」

 

『バフッ』

 

その少女の言葉に、大柄で力強い身体を持ち、オールバックのような灰色の頭部に大きく蓄えた髭のような口元をした、年配のマフィアのボスを思わせる顔立ち、黒目が大きいパッチリした目に見えるが、黒い部分は模様でオレンジ色の目で、模様が相まって黒白目に見える『おやぶんポケモン・マフィティフ』が同意するように声を上げた。

 

「・・・・しかも、こんな『下劣な物』まで使うなんて」

 

ーーーーダンッ!! バキンッ!!

 

と、少女はヘルメット団リーダーが使った『支給品』が入った試験管を、嫌悪に満ちた目で睨んでから銃で撃ち砕いた。

 

「・・・・まぁいいわ。あなた達を、労働から解放してあげる」

 

「なっ、何だって!?」

 

「要するにクビって事。現時刻をもって、〈アビドス〉は私達が引き受けるわ」

 

「ふっ、ふざけた真似を! 貴様らは一体・・・・」

 

ーーーーガツッ!

 

「いやな感じーッ!!」

 

リーダーが吠えそうになると、少女の仲間がヘルメット団リーダーを殴り飛ばした。

 

「ま、『マタドガス』、お願い・・・・」

 

『マタドガ〜ス』

 

その仲間の少女が、全身が灰色になっており、頭頂部がまるでシルクハットを連想させるような煙突状で、口回りや眉の部分に高濃度のガスが付着し、まるで髭や眉毛のように見えており、全体的に英国紳士のような風貌となっている『どくガスポケモン・ガラルマタドガス』が、周囲の汚い匂いを吸収し、綺麗な空気に変えた。

 

「う~ん、いい空気だわ♪」

 

『バフッ♪』

 

汚い匂いと『下品な物』のせいで不快になった気分が少し晴れた。

そして、完全に全滅された『カタカタヘルメット団』が死屍累々と倒れ、それを眺めながら少女は、集まってきた仲間達を率いて口を開く。

 

「私達は、『便利屋68‹シックスティーエイト›』。金さえ貰えれば、何でもする・・・・『何でも屋』よ」

 

そう言って、『便利屋68』は夜の闇の中へと消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーアヤネsideー

 

そしてさらにそれから数日後。

いつもの『対策委員会・教室』よりも広い教室にて、サイドンやウォーグルやミライドンと言った大型ポケモン達も交えた話し合いが始まろうとしていた。

 

「・・・・それでは、〈アビドス対策委員会〉の定例会議を始めたいのですが・・・・」

 

『アギャァァスッ♪』

 

「うわぁぁぁっ!! く、来るな来るな! ウ、ウォーグル! あいつが来たら【エアスラッシュ】で攻撃して!!」

 

『ウォー・・・・』

 

“駄目だよミライドン! いくらセリカが好きだからって、今は自重して!”

 

ミライドンがセリカの姿を見るなり舐め回そうと襲い掛かりそうになり、先生とシロコとノノミ、そしてピカチュウ達とシロコのイワンコとノノミのサイドンが抑えていた。

セリカはセリカで、すっかりミライドンに苦手意識が生まれたのか、ウォーグルの背後に隠れ、まるでペルシアンのようにフーッ! と威嚇していた。

 

「これは少し待った方が良いねー」

 

「・・・・ですね」

 

ホシノの言葉に、アヤネはハァと肩を落とした。

そして数分後、何とかミライドンを抑えるのに成功し、ミライドンは教室の隅で寝ており、改めて定例会議が始まった。

 

「・・・・それでは改めまして、定例会議を始めます。本日は先生にもお越しいただいたので、いつもより真面目な議論ができると思うのですが・・・・」

 

『ビブラー・・・・』

 

「は〜い☆」

 

『サイサイ〜☆』

 

「勿論」

 

『ワン!』

 

「何よ、いつもは不真面目みたいじゃない・・・・」

 

『ウォー・・・・』

 

「うへ、よろしくねー、先生」

 

『ヤドー』

 

“うん。よろしく”

 

『ピカピカ』

 

『カルォ』

 

『リザ』

 

『カメ』

 

『ソウ』

 

それぞれが挨拶すると、アヤネが代表するように口を動かす。しかし、シロコとイワンコは何やらスマホロトムで調べていた。

 

「早速議題に入ります。本日は、私達にとって非常に重要な問題・・・・『学校の負積をどう返済するか』について、具体的な方法を議題します。ご意見のある方は、挙手をお願いします」

 

「はい! はい!」

 

『ウォー・・・・』

 

アヤネの言葉に、セリカが挙手するが、何故かウォーグルは半眼になっていた。

 

「はい、一年の黒見さん。お願いします」

 

「・・・・あのさ、先ず名字で呼ぶの、やめない? ぎこちないんだけど」

 

「せ、セリカちゃん・・・・でも、折角の会議だし・・・・」

 

「いいじゃーん、おカタ〜い感じで。それに今日は珍しく、先生もいるんだし」

 

「珍しくて言うより、初めて」

 

「ですよね! 何だか委員会っぽくてイイと思いま〜す☆」

 

「はあ・・・・ま、先輩達がそう言うなら・・・・」

 

セリカが仕切り直すように、壊さない程度の力でテーブルをバンッと叩いた。

 

「・・・・とにかく! 対策委員会の会計担当としては、現在の我が校の財政状況は破産寸前としか言えないわ! このままじゃ廃校だよ! 皆、分かってるよね?」

 

「うん、まあねー」

 

「毎月の返済額は利息だけで788万円! 私達も頑張って稼いでるけど、正直この利息の返済も追いつかない。これまで通り、指名手配犯を捕まえたり、苦情を解決したり、ボランティアするだけじゃ限界があるわ。このままじゃ、埒が明かないって事! 何かこう、デッカくドカンと一発狙わないと!」

 

「デッカくドカン・・・・って、例えば?」

 

「これこれ! 街で配ってたチラシ!」

 

「これは・・・・!?」

 

熱弁しているセリカにアヤネが聞くと、セリカは大きく手を上げて、チラシを全員に見せる。そこには『ゲルマニウム麦飯石ブレスレットであなたも一攫千金!』と大きく書かれていた。

 

『あー・・・・』

 

『・・・・・・・・』

 

先生とセリカ以外の対策委員会の面々は同じタイミングで声に出し、さらに顔を翼で覆ったウォーグルと寝ているミライドン以外のポケモン達は呆れて半眼になっていた。

何故ならーーーー誰がどう見ても、詐欺であったのだから。

そんや周りの反応に気付かず、セリカは説明する。

 

「そうっ! これでガッポガッポ稼ごうよ! この間、街で声をかけられて、説明会に連れてってもらったの。運気を上げるゲルマニウムブレスレットってのをうってるんだって! これね、身に着けるだけで運気が上がるんだって! で、これを三人に売れば・・・・」

 

周りは残念な目でセリカに見つめてからウォーグルに、「何で止めなかったの?」と言わんばかりに視線を向けるが、ウォーグルも「申し訳ない」と言わんばかりに頭を下げる。

 

「皆、どうしたの・・・・?」

 

「却下ー」

 

周囲の反応にセリカが首を傾げると、ホシノは自然な手付きでセリカからチラシを奪うとクシャクシャに丸めて、リザードに向けて投げると、リザードは尻尾の炎であっという間に灰にした。

 

「えーっ!? 何で? どうして!?」

 

騒ぐセリカにアヤネが苦笑して言う。

 

「セリカちゃん・・・・それ、マルチ商法だから・・・・」

 

「儲かる訳ない」

 

「へっ!?」

 

「そもそもゲルマニウムと運気アップって関係あるのかな? こんな怪しい所で、マトモなビジネスを提案してくれる筈なんてないよ」

 

「そっ、そうなの? 私、二個も買っちゃったんだけど!?」

 

「セリカちゃん、騙されちゃいましたね。可愛いです☆」

 

「・・・・!!」

 

「全く、セリカちゃんは世間知らずだねー。気を付けないと、悪い大人に騙されて、人生取り返しのつかないことになっちゃうかもよー?」

 

「そ、そんなぁ・・・・そんな風に見えなかったのに・・・・折角ウォーグルもお昼抜いて、漸く貯めたお金で買ったのに・・・・」

 

ノノミとホシノの言葉に、セリカがガクンと、テーブルに頭を叩きつけて落ち込み、その背中をウォーグルが翼で慰めるように擦った。

 

「大丈夫ですよセリカちゃん。お昼。一緒に食べましょう? 私がご馳走しますから」

 

「ぐすっ・・・・ノノミせんぱぁい・・・・」

 

“取り敢えず、セリカは騙されない為に国語と数学の勉強をしよう。バイト中でもできる勉強、考えるから”

 

ノノミがセリカの頭を撫でて慰めると、先生はそう言った。

そして改めて、アヤネが会議を続ける。

 

「えっと・・・・それでは、黒見さんからの意見はこの辺で・・・・他にご意見のある方・・・・」

 

「はい! はい!」

 

すると今度は、ホシノが何やら元気良く挙手した。

 

「えっと・・・・はい、三年の小鳥遊委員長。ちょっと嫌な予感がしますが・・・・」

 

「うむうむ、えっへん!」

 

少し不安そうなアヤネに構わず、ホシノは立ち上がって咳払いをして言う。

 

「我が校の一番の問題は、全校生徒がここにいる五人だけって事なんだよねー。生徒の数=学校の力。〈トリニティ〉や〈ゲヘナ〉みたいに、生徒数を桁違いに増やせれば、毎月のお金だけでもかなりの金額になる筈ー」

 

「え・・・・そ、そうなんですか?」

 

「そう言う事ー! だから先ずは生徒の数を増やさないとねー、先ずはそこからかなー。そうすれば議員も輩出できるし、連邦生徒会での発言権も与えられるしね」

 

ホシノらしくない真面目な意見に、アヤネは少し面食らった。

 

「鋭いご指摘ですが・・・・でもどうやって・・・・」

 

「簡単だよー、“他校のスクールバスを拉致ればオッケー”!」

 

「はい!?」

 

『ビブラ!?』

 

全然真面目ではなかった。

 

「登校中のスクールバスをジャックして、うちの学校への転入学書類にハンコを押さないとバスから降りられないようにするのー。うへ~、これで生徒数がグンと増える事間違いナッシー!」

 

「(キラン)それ、興味深いね」

 

『(キラン)ワンワン』

 

そこで目をキランとさせたシロコとイワンコが銃を構え、気合いを込める。

 

「ターゲットは〈トリニティ〉? 〈ゲヘナ〉? 〈ミレニアム〉? 狙いを何処に定めるかによって、戦略を変える必要があるかも」

 

「お?・・・・えーっと、うーん・・・・そうだなあ、〈トリニティ〉? いや、〈ゲヘナ〉にしよーっと!」

 

ホシノはやる気になっているシロコ達に少し驚きながらも、とりあえず最終的に止めれば良いと思い言葉を続ける。

が、アヤネがそれを止めた。

 

「ちょ、ちょっと待って下さい! そんな方法で転校とかありなんですか!? それに、他校の『風紀委員』が黙っていませんよ・・・・」

 

「うへ~やっぱそうだよねー?」

 

ホシノはアヤネの意見に同意した。最初から無理だと思っていたのだろう。それに気づかず、アヤネが話す。

 

「やっぱそうだよねー、じゃありませんよ、ホシノ先輩・・・・もっと真面目に会議に臨んでいただかないと・・・・」

 

「良い考えがある」

 

次にシロコが挙手した。正直ホシノ以上に嫌な予感がするが、アヤネが応える。

 

「・・・・はい、二年の砂狼シロコさん・・・・」

 

「ーーーー銀行を襲うの」

 

「はいっ!?」

 

『ビブラ!?』

 

これまた強烈な意見だった。

 

「確実かつ簡単な方法り。ターゲットも選定済み。市街地にある第一中央銀行。イワンコと協力して、金庫の位置、警備員の動線、現金輸送車の走行ルートは事前に把握しておいたから」

 

「さっきからスマホロトムで何かを一生懸命調べていたのは、それですか!?」

 

「五分で一億は稼げる。はい、覆面の準備もしておいた」

 

と言って、シロコが鞄からピンクの覆面、頭に二つ孔がいた青の覆面、緑色の覆面、猫耳が付いた赤い覆面、額に0と記された黄色の覆面。それぞれ額に数字が付けられた覆面と、ポケモン達用の覆面や目元を隠すマスクが置かれた。

 

『クゥ〜ン・・・・』

 

「イワンコ我慢して、正体を隠さないといけないから」

 

嫌がるイワンコに覆面を被せてから、シロコもキランとなりながら、青に額に2と記された覆面を被った。

 

「いつの間にこんなものまで・・・」

 

「うわー、これ、シロコちゃんの手作りー? キンちゃんやサイドンには目元に付けるマスクだねー」

 

『ヤドー・・・・ZZZ』

 

ホシノは額に1と記されたピンクの覆面を手にとってそう言うと、寝ているヤドキングにマスクを結わえた。

 

「わあ、見てください! レスラーみたいです!」

 

『サイドーン!』

 

すると今度は、ノノミが緑色に3のマスクを被り、サイドンにマスクを結わえた。

 

「・・・・・・・・」

 

『・・・・・・・・』

 

アヤネとビブラーバは唖然となる。

 

「いやー、良いねぇ。人生一発でキメないと。ねえ、セリカちゃん?」

 

ホシノがそう言うと、漸く復活したセリカがガバッと起き上がった。

 

「そんな訳あるか! 却下! 却下ー!!」

 

「そっ、そうですっ! 犯罪はいけませんっ!」

 

『ウォーッ!』

 

『ビブラーバ!』

 

一年生組とポケモン達がバツを示すように両手を交差させた。ノノミは素直に覆面を脱ぎ、サイドンも外して、ホシノも寝ているヤドキングからマスクを外す。

 

「・・・・・・・・」

 

『・・・・・・・・』

 

シロコとイワンコは覆面を外すと、何やらムゥ〜っとした顔になった。

 

「そんなふくれっ面をしてもダメなものはダメです、シロコ先輩! イワンコ!」

 

ツッコミの連続でアヤネは疲れたように溜め息を吐く。

 

「はあ・・・・皆さん、もうちょっとマトモな提案をしていただかないと・・・・」

 

「あのー! はい! 次は私が!」

 

今度はノノミが挙手した。シロコよりはマシな提案をしてくれる事を期待するアヤネ。

 

「はい・・・・二年の十六夜ノノミさん。犯罪とか詐欺は抜きでご意見をお願いします・・・・」

 

「はい! 犯罪でもマルチ商法でもない、とってもクリーンかつ確実な方法があります!」

 

そして、自信満々でノノミは言う。

 

「アイドルです! スクールアイドル!」

 

「ア、アイドル・・・・!?」

 

「そうです! アニメで観たんですけど、学校を復興する定番の方法はアイドルです! 私達全員がアイドルとしてデビューすれば・・・・」

 

「却下」

 

が、ホシノがバッサリと切り捨てた。

 

「あら・・・・これも駄目なんですか?」

 

「何で? ホシノ先輩なら、特定のマニアに大ウケしそうなのに♪」

 

セリカがホシノの小柄な体型をニヤついて見ながら言った。

 

「うへーこんな貧弱な身体が好きとか言っちゃう輩なんて、人間としてダメっしょー。ないわー、ないない」

 

『・・・・・・・・』

 

ホシノが手を振ってそう言うが、ポケモン達(いつの間にか起きてたヤドキングとミライドンもまざる)は何やら円陣を組んで会議をしているようだった。

 

「決めポーズも考えておいたのに・・・・」

 

ノノミがポーズを取って、愛嬌を振り撒いた笑顔を見せる。

 

「ジャーン! 『水着少女団』のクリスティーナで〜す♧」

 

「・・・・どう言う事よ・・・・何が『で〜す♧』よ! それに『水着少女団』って! ダッサイ!」

 

セリカが爆発した。

 

「えー、徹夜で考えたのに・・・・」

 

ノノミが残念そうに席に着いた。

 

「あのう・・・・議論が中々進まないんですけど、そろそろ結論を・・・・」

 

「それは先生に任せちゃおうー。先生、これまでの意見で、やるならどれが良い?」

 

「えっ!? これまでの意見から運ぶんですか!? も、もう少しマトモな意見を出してからの方が良いのでは!?」

 

あまりにもしょうもない意見から選出する事に、アヤネは反対するが。

 

「大丈夫だよー。先生が選んだものなら、問題ないって」

 

「ちょ、ちょっと待って下さい! 何でそう言い切れるんですですか!?」

 

「先生ーお願いねー」

 

ホシノにふられた先生は。

 

“ーーーーアイドルで行こう。私がプロデューサーになる!”

 

「即答ですか!?」

 

“ピカチュウ達も応援団を結成するみたいだよ”

 

驚くアヤネに先生が指差すと、いつの間にか両手にサイリウムを持ったピカチュウ達(イワンコとウォーグルとミライドンは口に咥え、フシギソウはツルで持っていた)が、キレッキレの踊りを踊っていた。

 

『ピカッ! ピカッ! ピカピカピカピカッ!!』

 

ピカチュウを筆頭に見事な踊りである。どうやらポケモン達はアイドルに賛成のようだ。

 

「わーい!採用されました!」

 

「えー? やるのー? まぁ先生やキンちゃん達がそういうなら仕方ないかー」

 

「ん。決まったのなら仕方ない。ライブ会場を探す」

 

「えっ!? 本当にやるの!? ウォーグル達もノリノリだけど、これでいくの!?」

 

「ん。行動は迅速に。早ければ早いほど良い。でしょ、アヤネ?」

 

「・・・・い・・・・」

 

アヤネがプルプルも震えている。

 

『あっ・・・・』

 

『ーーーーっ』

 

対策委員会の皆とビブラーバ達はススッと離れ、先生とピカチュウ達も不穏な気配を感じてアヤネから距離を空けた。

その瞬間ーーーー。

 

「いい訳ないじゃないですかぁ!!」

 

大噴火ひたアヤネが、ガッシャーンと、机をひっくり返した。

 

「出たー!アヤネちゃんのちゃぶ台返しー!」

 

「・・・・・・・・」

 

「きゃあ、アヤネちゃんが怒りました! 非常事態です!」

 

「うへ~キレのある返しができる子に育ってくれたねえ。ママは嬉しいよーん」

 

「誰がママですかっ! もうっ、ちゃんと真面目にやって下さい!」

 

『ビブラー・・・・』

 

完全にキレたアヤネに、パートナーのビブラーバもドン引きしながらも、まぁまぁと宥めるが、アヤネは止まらない。

 

「いつもふざけてばっかり! 銀行強盗とかマルチ商法とかそんな事ばっかり言って!」

 

「「・・・・・・・・」」

 

セリカとシロコがバツが悪そうに目を背ける。

 

「皆さんもう少し、真面目にやってくださぁぁいっ!!」

 

この後滅茶苦茶に怒ったアヤネに滅茶苦茶に説教された一同だった。

 

 

 

 

 

 

ー先生Sideー

 

そしてメチャメチャになった会議はお開きになり、セリカのバイトの時間となったので、全員が『柴関ラーメン』へと向かって食事をした。

 

「いやぁー、悪かったてば、アヤネちゃーん。ラーメン奢ってあげるからさ、怒らないで、ねっ?」

 

「怒ってません・・・・」

 

明らかに怒ってラーメンを食べるアヤネ。

 

「はい。お口拭いて。はい、良くできましたねー☆」

 

「赤ちゃんじゃありませんからっ」

 

ノノミに口を拭かれ、鎮火していった怒りが少し強くなる。

それを見ながら苦笑したバイト中のセリカが、口を開く。

 

「・・・・何でも良いんだけどさ。何でまたウチに来たの?」

 

「アヤネ、チャーシューもっと食べる?」

 

「(モゴモゴ)ふぁい」

 

セリカの言葉を聞かず、全員がアヤネを宥めていた。テーブルの下ではピカチュウ達がラーメンを美味しそうに食べている。

 

“そう言えばセリカ。ウォーグルはどうしたの?”

 

そう。ワシボンの頃は客が来たら出迎えたり客が来た事を知らせる役のウォーグルがいない事に、先生が尋ねると。

 

「あぁ、あの大きな身体じゃお店の中での仕事はできないから・・・・出前をやらせるようにしたの!」

 

セリカがチラシを見せると、『柴関ラーメン、デリバリー始めました! ウォーグルが即座にお届けします!』と、足におかもちを持ったウォーグルのウィンクした姿がデカデカと描かれていた。

 

「これが意外と評判良くてね! 今も出前に行ってるのよ」

 

“ウォーグルも一生懸命働いているんだね”

 

ーーーーガタッ、ガララッ。

 

と、話していると、店の扉が開いた。

 

「・・・・・・・・」

 

扉が少し開き、そこから一人の少女がおずおずと顔を出す。紫色のショートヘアに気弱そうな目と様子に、卑屈なオーラが全身から出ており、ショットガンを持ち、肩には首吊りウサギのアクセサリーを付けた鞄をかけた生徒であった。

 

 

 

 

 

 

ーセリカsideー

 

「あ・・・・あのう・・・・」

 

「いらっしゃいませ! 何名様ですか?」

 

すぐに応対するセリカに、少女はおずおずと話し出す。

 

「・・・・こ、ここで一番安いメニューって、お、おいくらですか?」

 

「一番安いのは・・・・580円の柴関ラーメンです! 看板メニューなんて、美味しいですよ! ポケモンも入れますよ!」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

セリカの言葉に、少女は満面の笑みを浮かべた。

するとーーーー。

 

ーーーーガララッ。

 

「ん?」

 

店の扉が開かれると、少女と同じ制服を着た四人の少女と四匹のポケモンが入ってきた。

1人は灰色の長髪を黒いリボンでサイドポニーにした小柄で自分と同じ大きさのマシンガンを持ち、紫色の体躯に二股の尻尾の先が手になったサルのポケモン『おながポケモン・エテボース』である。

 

「えへへっ、やっと見つかった、600円以下のメニュー!

 

『ウッホ〜♪』

 

次いで、傍目から見ると余裕の笑みを浮かべ、スナイパーライフルを持ち、薄紅色の髪と瞳、首の裏から角が伸びており、マフィアかギャングのボスのようなロングコートを羽織った生徒と、その足元にノッソノッソと歩くマフィティフが入ってきた。

 

「ふふふ、ほら、何事にも解決策はあるのよ。全部想定内だわ。ねぇマフィティフ」

 

『・・・・バフ』

 

と、生徒が問うと、マフィティフは何処か呆れ顔ながら同意した。

 

「そ、そうでしたか。流石社長、なんでもご存知ですね・・・・。あ、マタドガス、ガスは出さないでね・・・・」

 

『マ〜タドガ〜ス』

 

先程訪れた気弱な生徒が憧れの眼差しを向け、パートナーらしいガラルマタドガスが浮遊しながら応える。

 

「はぁ・・・・」

 

『ニャァ〜・・・・』

 

最後に入ってきたのは、目つきは鋭く、白と黒にはっきりと別れた髪を後頭部の角でポニーテールに結わえ、パーカーを着ている生徒が呆れと諦めが混ざったため息を吐いていた。よく見ればホルダーにハンドガンが見える。

その傍らに、引き締められた靭やかな体躯をし、紫色の体毛に三角形の模様がいくつもあり、お腹と四足のあしの体毛は黄色く、尻尾は長く先が刃のような形となっいる、大きな豹にも見える猫の様なポケモン『れいこくポケモン・レパルダス』が呆れたため息を吐いていた。

いかにも〈アビドス〉で見かけない生徒達だが、セリカはお客様として応対する。

 

「四名様にポケモン四匹様ですね? お席にご案内しますね」

 

「んーん、どうせ一杯しか頼めないし大丈夫」

 

案内しようとするセリカにこ小柄な生徒が首を横に振ってからそう言った。

 

「一杯だけ・・・・? でも・・・・どうせならごゆっくりお席の方へどうぞ。今は暇な時間なので、開いてる席も多いですし」

 

「おー、親切な店員さんだね! ありがとう、それじゃあお言葉に甘えて・・・・あっ、ワガママのついでに、箸は四膳でよろしく。優しいバイトちゃん」

 

「えっ? 四膳ですか? ま、まさか一杯のラーメンを四人で分け合うつもり?」

 

小柄な生徒の言葉に、セリカが目を見開いた。すると、気弱な生徒が顔を青くさせて、物凄い勢いで頭を下げまくってきた。

 

「ご、ご、ごめんなさい! 貧乏ですみません! お金が無くてすみません!」

 

「あ、い、いや・・・・! その、別にそう謝らなくても・・・・」

 

「いいえ! お金が無いのは首が無いのものも同じ! 生きる資格なんて無いんです! 虫けら以下の存在なのです! 虫けら以下ですみま(ガンッ)ぜん"!」

 

『マ〜タドガ〜ス』

 

何やら暴走している気弱な生徒に、ガラルマタドガスがその浮遊させていた身体を気弱な生徒にのしかかるように下に落とすと、気弱な生徒が珍妙な悲鳴を上げて倒れそうになる身体をエテボースとレパルダスが二股の尻尾と頭で支えた。

そして、白と黒の生徒が、マタドガスの頭を撫でてから、ため息交じりに声を発する。

 

「ナイス、マタドガス。はあ・・・・ちょっと声デカいよ、『ハルカ』。周りに迷惑・・・・」

 

「そんな! お金が無いのは罪じゃないよ! 胸を張って!」

 

極貧の気持ちが分かるセリカは、『ハルカ』と呼ばれた生徒の肩に手を置く。

 

「へ?・・・・はい!?」

 

ガラルマタドガスが再び浮き、『ハルカ』は身体を起こすと、セリカの言葉に目をパチクリさせた。それに構わずセリカが力説する。

 

「お金は天下の回り者、ってね! そもそもまだ学生だし! それでも、小銭をかき集めて食べに来てくれたんでしょ? そういうのが大事なんだよ! もう少し待っててね。すぐ持ってくるから!」

 

そう言って、セリカは厨房に駆け出した。

 

 

 

 

 

 

ー???sideー

 

「・・・・何か妙な勘違いされてるみたいだけど?」

 

「まあ、私達もいつもはそんなに貧乏って訳じゃないんだけどね。強いて言えば、金遣いの荒い『アルちゃん』と、大飯食らいの『あの子達』のせいだし」

 

白と黒の生徒がボソリと言うと、小柄の生徒がエテボースと一緒にニシシと笑いながら言う。

すると、薄紅色の生徒がムッとした顔で口を開く。

 

「『アルちゃん』じゃなくて『社長』でしょ? 『ムツキ室長』、肩書きはちゃんと付けてよ」

 

「ん? だってもう仕事終わったプライベートの時間じゃん? ところで、社長の癖に社員にラーメン一杯奢れないなんて」

 

「・・・・・・・・」

 

『ムツキ』と呼ばれた小柄な生徒の言葉に、『アルちゃん』と呼ばれた生徒が顔に汗を垂らす。

 

「今回の襲撃任務に投入する人員を雇う為に、ほぼ全財産使っちゃったし・・・・。まぁ、レパルダス達のエサ代は残していたけどね。私達の食費分は残らなかったけど・・・・」

 

「フフフ。でも『カヨコ』、こうして実際ラーメンは口にできる訳でしょ? それくらい想定内よ」

 

「たったの一杯じゃん。せめて四杯分のお金は確保しておこうよ・・・・」

 

ドヤ顔を浮かべる『アルちゃん』に、『カヨコ』と呼ばれた生徒はため息を吐くと、『ムツキ』がニヤニヤしながら話に入る。

 

「ぶっちゃけ、忘れてたんでしょ? ねぇ、アルちゃん。夕食代取っておくの、忘れてたんでしょ?」

 

「・・・・ふふふ」

 

笑って誤魔化そうとしていた。

 

「はあ、ま、リスクは減らせた方が良いし。今回のターゲットはヘルメット団のようなザコみたいに扱えないって事には同意する。でも全財産の大半をはたいてまで人を雇わなきゃいけない程、〈アビドス〉は危険な連中で、回収を言われたポケモンも危険なの?」

 

「それは・・・・」

 

『カヨコ』がジト目で見ると、『アルちゃん』は気まずそうな顔になる。すると『ムツキ』が笑いながら言う。

 

「多分『アルちゃん』も良く分かってないと思うよ。だからビビっていっぱい雇ってるんだよ」

 

『ウホホ〜』

 

「誰がビビってるって!? 全部私の想定内! 失敗は許されない、あらゆるリソースを総動員して仕事に臨む。それが〈便利屋68〉のモットーよ!」

 

『ムツキ』の言葉にムキになる『アルちゃん』に、『カヨコ』が頬に汗を垂らす。

 

「初耳だね、そんなモットー・・・・」

 

「今思いついたに決まってるよ♪」

 

「うるさい! じゃあ今回の依頼が終わったら! その報酬ですき焼きを食べるわよ! だから気合入れなさい! 皆!」

 

『っ!』

 

すき焼きと聞いて、ポケモン達がピクッと反応した。

 

「すっ・・・・すき焼きとはっ・・・・それは一体!?」

 

『ハルカ』は首を傾げている

 

「大人な食べ物だよ、すごく高価な・・・・」

 

『カヨコ』が補足すると、『ハルカ』が涙ぐむ。

 

「う、うわぁ・・・・私なんかが食べていいものなんでしょうか? 食べた後はハラキリですか・・・・?」

 

「ふふふ。うちみたいな凄い会社の社員なら、それぐらいの贅沢はしないとね」

 

「へ〜やる気満々じゃん、『アルちゃん』」

 

「『アルちゃん』じゃなくて! 社! 長!!」

 

そんな中、セリカがラーメンを、その後ろでウソッキーが大皿を持って運んできた。

 

「はいお待たせしましたー! 熱いのでお気をつけて!」

 

『ウッ、ソー!!』

 

ダンッ、と音を立てて机に置かれた丼には、軽く十人前はある麺と具材が乗っており、更にウソッキーが置いた大皿には、山のように餃子が乗せられていたいた。

 

「ひぇっ、何これぇ!? ラーメン&餃子超大盛じゃん!」

 

「ざっと十人前はあるね・・・・」

 

「こ、これはオーダーミスなのでは? こんなの食べるお金ありませんよう・・・・」

 

『ムツキ』と『カヨコ』が目を見開いて驚き、『ハルカ』が口に涎を垂らしながらセリカに問いかける。因みにマフィティフ達は口から涎を滝のように流していた。

 

「いやいや、コレで合ってますって。580円の柴関ラーメン並! アーンド、サービスの餃子! ですよね、大将?」

 

「あぁ、悪いなお客さん。ちょっと手元が狂って量が増えちまったんだ。それと申し訳ないんだが、うちのウソッキーの奴、餃子作りにハマっちまってな。冷蔵庫に入り切らない分をサービスとして出したんだ。食い切らなかったら持ち帰って良いぜ」

 

『ウソウソ〜♪』

 

「ウソじゃねぇよ。ラーメンも食い切れなくても大丈夫だから気にせず食べてくれ。セリカちゃん、ついでだ。取り皿も頼むわ」

 

厨房から顔を出した大将がそう言った。

 

「あ、はーい!大将もああ言ってるだから、遠慮しないで! それじゃ、ごゆっくりどうぞー」

 

全員分の取り皿を置いて、セリカは仕事に戻り、ウソッキーも厨房に戻っていった。

 

「う、うわあ・・・・」

 

『マ〜タド〜(タラリ)』

 

『ハルカ』がラーメンと餃子を見て目を輝かせ、ガラルマタドガスと一緒に涎を垂らす。

 

「よく分かんないけどラッキー!いただきまーす!」

 

『ウホホ♪』

 

「・・・・ふふふ、流石にこれは想定外だったけど、厚意に応えて、ありがたく頂かないとね」

 

『バフッ!』

 

「食べよっ!」

 

『ムツキ』とエテボースが全員分の箸を渡し、取り皿にラーメンと餃子を乗せると、『アルちゃん』とマフィティフが満面の笑みを浮かべて、全員がラーメンと餃子を食べた。

 

『!!!』

 

すると、全員に衝撃が走り、顔を合わせ、『ハルカ』が思わず大声を上げる。

 

「お、おいしいっ!」

 

『マ〜タドガ〜スっ!』

 

「中々イケるじゃん? こんな辺ぴな場所なのに、このクオリティなんて」

 

「でしょう? でしょう? 美味しいでしょう?」

 

『サイドン!』

 

と、そこでノノミとサイドンがスッと横から入ってきた。

 

「あれ・・・・? 隣の席の・・・・」

 

「うんうん。ここのラーメンは本当に最高なんです。遠くからわざわざ来るお客さんもいるんですよ」

 

『ビブラー!』

 

「ええ、分かるわ。色んな所で色んなのを食べてきたけど、このレベルのラーメンは中々お目にかかれないもの」

 

『アルちゃん』が上機嫌で言うと、機嫌が直ったアヤネとビブラーバも参加した。

 

「えへへ・・・・私達、ここの常連なんです。他の学校の皆さんに食べていただけるなんて、なんか嬉しいです・・・・」

 

「その制服と連れてるポケモンのタイプから察すると、〈ゲヘナ〉? 遠くから来たんだね」

 

『ワン!』

 

シロコとイワンコも参加して、連れているポケモン達を見てそう言った。

聞く所によると、〈ミレニアム〉の生徒の大半が『でんき』と『エスパー』タイプを所有し、〈ゲヘナ〉の生徒の大半は『あく』と『どく』タイプを所有しているらしい。

 

「私、こういう光景。見た事があります。一杯のラーメン、でしたっけ・・・・」

 

「うへ〜、それは一杯のかけ蕎麦じゃなかったけ?」

 

ノノミの台詞にツッコみながら、ホシノも参加する。ヤドキングは食べ終わったら寝てしまっていた。先生は一応会計を済ませている。

すると、『カヨコ』は対策委員会の皆を眉をひそめて見据えていた。

 

「(・・・・・・・・連中の制服・・・・)」

 

「(あれ、ホントだ)」

 

小声で『ムツキ』に話すと、彼女も気づいたようだ。

 

「うふふふっ! いいわ、こんな所で気が合う人達に会えるなんて。想定外だけど。予測できない出来事こそ人生の醍醐味じゃないかしら」

 

気づいていない社長。

 

「(『アルちゃん』は気づいていないみたいだけど?)」

 

「(・・・・言うべき?)」

 

「(・・・・面白いから放っておこ♪ エテボース達も言わないでね♪)」

 

『(コクン)』

 

『ムツキ』の言葉に、ポケモン達は頷いた。

そして、そんな社員の心境も知らず、『アルちゃん』は対策委員会の皆と和気あいあいと大盛り上がりで話をしていた。

 

「・・・・・・・・・・・・はぁ」

 

『バフッ・・・・』

 

それを見て、『カヨコ』は黄昏れた風に溜息を吐き、その足にマフィティフが同情するように前足をポンッと置いた。

 

 

 

 

 

 

 

それから『アルちゃん』達は、使い捨てタッパーに入った餃子を入れたビニール袋を提げて店を出た。

 

「それじゃ! 気を付けてね!」

 

「お仕事、上手くいきますように!」

 

「あははっ! 了解! あなた達も学校の復興、頑張ってね! 私も応援してるから! じゃあね!」

 

店の前で別れを告げる 『アルちゃん』と対策委員会は、スッカリ意気投合し、仲良くなっていた。

 

「ふう・・・・いい人達だったわね」

 

「「・・・・・・・・」」

 

『・・・・・・・・』

 

『カヨコ』は眉間に指を当てて頭痛を堪え、『ムツキ』はエテボースと共に楽しそうにニヤニヤし、マフィティフとレパルダスは呆れている。

仕方なく『カヨコ』が口を開く。

 

「社長。・・・・あの子達の制服、気付いた?」

 

「えっ? 制服? 何が?」

 

全く気付いていないようだ。『ムツキ』が嬉々として言う。

 

「〈アビドス〉だよ、アイツら♪」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

一瞬、『ムツキ』の言葉が分からず、その場で思考停止した『アルちゃん』。しかし、その言葉の意味を頭が理解するとーーーー。

 

 

 

「なななな、なっ、何ですってーーーーーーーー!!!???」

 

 

 

目を白目にし、口を盛大に開け、明らかに『ガーン』と言う効果音が聞こえるような声が、〈アビドス〉の空に響き渡った。

それを見て『カヨコ』とマフィティフとレパルダスはまた頭を抱え、『ムツキ』とエテボースはお腹を抱えて笑う。

 

「あはははははは、その反応ウケるー」

 

「はあ・・・・本当に気づかなったのか・・・・」

 

「えっ? そ、それって私達のターゲットって事ですよね? わ、私達が始末してきましょうかっ!?」

 

『マ〜タドガ〜ス』

 

同じく気づいてなかった『ハルカ』が、ガラルマタドガスを連れて行こうとするが、『ムツキ』が止めた。

 

「あははは、遅い、遅い。どうせもうちょっとしたら攻撃を仕掛けるんだし、その時に暴れよっ、『ハルカ』ちゃん、マタドガス」

 

しかし、社長の『アルちゃん』、改め、アルは愕然となりながら口を開く。

 

「う、嘘でしょ・・・・あの子達が? 〈アビドス〉だなんて・・・・う、うう・・・・何と言う運命のイタズラ・・・・」

 

「何してんの、アルちゃん。仕事するよ?」

 

「バイトの皆が、命令が下るのを待ってる」

 

ムツキとカヨコがそう言うが、アルは呆然と呟く。

 

「本当に・・・・? 私、今から・・・・あの子達を・・・・」

 

「あはは、心優しいアルちゃんに、この状況はちょっとキツいねー。『情け無用』、『お金さえ貰えれば何でもやります』がうちのモットーでしょ? 今更何悩んでるの?」

 

流石に苦笑してしまうムツキだが、すぐに焚き付けるような事を言う。

 

「そ、そうだけど・・・・」

 

「(これ、完全に参ってるね・・・・)」

 

カヨコが苦い顔をしていると、アルは自問自答するように声を張り上げる。

 

「こ、このままじゃダメよ、アル! 一企業な長として、このままじゃ!」

 

すると、餃子が入ったビニール袋を全部、鞄に押し込むと、すぐに顔を引き締めて声を上げる。

 

「ーーーー行くわよ! バイトを集めて!」

 

 

 

 

 

 

 

 

少し歩くと、アルバイトの傭兵である生徒が待っていた。

 

「何だよ〜、遅かったじゃん」

 

「少し野暮用よ。準備は出来てるわね?」

 

「勿論。何でも良いけど、残業は無しでね。時給も値切られてるし」

 

「細かい事は今は置いといて! さあ、行きましょう! 〈アビドス〉を襲撃するわよ!」

 

「出動〜!」

 

『ウホホ〜!』

 

「はあ・・・・」

 

『ニャァ・・・・』

 

「アル様! わっ、私、頑張りますから! 一人残らず、ぶっ潰しちゃいますっ!」

 

『マタドガ〜ス〜!』

 

楽しんでいるムツキとエテボース。黄昏れるカヨコとレパルダス。ただ二人やる気に満ちているハルカとガラルマタドガス。

そして当のアル本人はーーーー。

 

「(どうしよう!? 本当にどうしよう!? どうしたらいいのマフィティフー!? )」

 

『バフッ・・・・』

 

心の中でマフィティフに泣きつき、マフィティフは呆れながらどうすべきか考えていた。

 

 

 

 

〈アビドス〉に、強力な敵が訪れる・・・・・・・・かも知れない。




〈ゲヘナ学園〉の生徒達の大半は、『あくタイプ』か『どくタイプ』のポケモンを使用しています。あくまで大半ですから、全ての生徒がそうではないですからね。
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