ポケモンアーカイブ   作:BREAKERZ

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ブルアカを代表する『普通』の生徒が登場!


ブラックマーケットと『普通』の生徒

ーアヤネsideー

 

便利屋68との戦闘から翌日の朝。朝早くからアヤネは先生と一緒に過ごし、今は登校していた。

その訳はーーーー。

 

「すみません先生。私とビブラーバのバトルの相手をしてもらって・・・・」

 

『ビブラー』

 

“気にしないで。私のリザード達もいい訓練になるから”

 

先日の便利屋とのポケモンバトル、殆ど役に立てなかったアヤネとビブラーバの特訓の為だ。

昼間はアヤネは学校の雑務で忙しいし、先生もシロコとノノミ、あと最近セリカとのバトルの相手をしているので時間が取れないから、朝早くからアヤネのバトルの訓練をしていたのだ。

今朝も、ビブラーバはフシギソウに負けてしまった。そして今日は借金の利息の返済日であった。

 

“ーーーーアヤネは判断も指示も的確だけど、一瞬の対応とかに思考が入ってきて、指示がワンテンポ遅れる所があるね?”

 

「そうですね、自分でも分かっているんですが・・・・」

 

「いやいやメガネっ娘ちゃん、そういうのは直感で指示するものだよ。要は場数を踏んで直感力を鍛えていけば、咄嗟の判断もすぐに出せるようになるって♪」

 

「そういうものですかーーーーって!?」

 

と、先生の会話に割って入ってきたのは、

 

“やぁ浅黄さん。おはよう”

 

「おっはよ~先生、ムツキで良いよ♪ エテボースもご挨拶ご挨拶♪」

 

『ウホホ〜♪』

 

先日のバトルでアヤネとビブラーバを倒した浅黄ムツキとエテボースだった。

ムツキは先生に抱きつき、エテボースも背中に抱き着く。

 

「な、なな・・・・!?」

 

「こんな所で会うなんて、偶然だね!」

 

ムツキはニッコリと笑顔で先生の胸元に頬擦りまでしてきた。

 

「あははー! ん? 重い? 苦しい? ちょっとだけガマンだよー、先生」

 

『ピカピカッ!』

 

「////な、何してるんですか! 離れてください!」

 

先生の肩に乗ったピカチュウが、尻尾でビシビシとエテボースを叩いて離れさせると、次いでアヤネがムツキを引き剥がした。

 

「おっと、引っ張らないでよー」

 

『ウホホ』

 

「いきなりなんですか!? 昨日の今日で馴れ馴れしく現れて! しかもメガネっ娘ちゃんじゃなくて、アヤネです!」

 

『ビブラー!』

 

先日ボコボコに倒された相手に、アヤネとビブラーバは警戒する。ビブラーバに至っては翅で威嚇するように鳴らした。

 

「ん? だって私達、別にメガネっ娘ちゃん達の事嫌いじゃないし。ただ部活で請け負ってる仕事だからさ。仕事以外の時は仲良くしたって良いじゃん?」

 

『ウホウホ』

 

「い、今更公私を区別をしようと言う事ですか!?」

 

「別に良いじゃん。それに『シャーレ』の先生は、アンタ達だけのものじゃないでしょ? だよね、先生?」

 

“皆私の大切な生徒だよ。喧嘩しないで仲良くしてくれると嬉しいな”

 

やんわりとアビドスへの襲撃を辞めて欲しいと言うが、ムツキは笑いながら応える。

 

「あはは、それはムリかなー。こっちも仕事だからね。アルちゃんのモチベ高くてさ、適当にやると怒られちゃうから」

 

“・・・・それじゃムツキ。一つだけ聞きたい事があるんだけど”

 

「ん? 何々?」

 

“先日、『アビドスにいる珍しいポケモンの捕獲』って言ってたけど、便利屋68の目的はアビドスだけじゃなかったの?”

 

「・・・・まぁね。アビドスに珍しいポケモンがいるから捕獲しろ、って依頼されてるの。そっちに珍しいポケモンっている?」

 

一瞬ムツキは目を細めるが、特に隠す事でも無いと思ったのか、素直に話してくれた。

 

「それってーーーーシロコ先輩のイワンコ、いえ、ルガルガンじゃないですか?」

 

「あっ、やっぱりそう思うよね? 『色違いのポケモン』ってかなり珍しいからね。アルちゃんもルガルガンだと思っているようだよ」

 

ムツキは何気なくそう言うが、アヤネは何処か別に心当たりがあった。

そのアヤネの様子に気付いたのか見逃してくれたのか、ムツキは先生と連絡先を交換すると、エテボースと共に踵を返した。

 

「ま、いつかうちの便利屋に遊びにおいでよ、先生。アルちゃんも皆も、きっと喜ぶと思うからさ。そんじゃ、バイバ〜イ。アヤネちゃんもまた今度ね。バトルする時は、リベンジの相手をしてあげるからさ♪」

 

『ウホホ〜♪』

 

「今度会ったらその場で撃ちますし! 次は絶対に私とビブラーバが勝ちますから!!」

 

『ラーバ!!』

 

「はいはーい」

 

アヤネとビブラーバが怒鳴ると、ムツキとエテボースはカラカラと笑いながら去っていった。

 

「はあ・・・・はあ・・・・何ですか、あの人は・・・・!」

 

終始調子を崩されたアヤネは肩で息をしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして先生達はアビドス校門前にて、一台の現金輸送車が止まっており、全身義体のスーツを着た銀行員が、返済額の確認をしている。

 

「・・・・お待たせしました。変動金利等を諸々適用し、利息は788万3250円ですね。すべて現金でお支払いいただきました、以上となります。『カイザーローン』とお取引いただき、毎度ありがとうございます。来月もよろしくおねがいいたします」

 

とてつもなく義務的に、事務的に、話すべきことを話しただけの銀行員は車に乗り、アビドスを去っていった。

 

『・・・・・・・・』

 

「はぁ・・・・今月もなんとか乗りきったねー」

 

ホシノ以外の面々は不満まみれの貌で走り去った車を見据えると、場の空気を変えるように戯けるホシノ。

 

「・・・・完済まで後どれくらい?」

 

「309年返済なので・・・・今までの分を入れると・・・・」

 

「言わなくても良いわよ。正確な数字で言われると更にストレス溜まりそう・・・・!」

 

シロコとアヤネの話をセリカが中断させるが、セリカの目が物騒な光を宿し、影が差す。

 

「どうせ死ぬまで完済できないんだし! 計算しても無駄でしょ!」

 

「・・・・」

 

『ウォー・・・・』

 

アヤネとウォーグルがまぁまぁとセリカを宥めた。

 

「所で、『カイザーローン』は何故現金でしか受け付けないんでしょうね? 態々現金輸送車まで手配して・・・・」

 

ノノミの言葉に先生もフム、と顎に手を当てた。

確かに現金輸送車なんて手間のかかる事をするのに疑問があった。

 

「・・・・ルガルガン」

 

『ガル♪』

 

「(コクリ)」

 

シロコとルガルガンは視線を合わせて頷きあった。

 

「・・・・シロコ先輩、ルガルガン、あの車は襲っちゃ駄目だよ」

 

「うん、分かってる」

 

「計画もしちゃダメ! だいだい二人でどうにかなるとでも!?」

 

「大丈夫。先生のミライドンを貸してもらう。ミライドンにはセリカを一日中ペロペロして良いと言う条件を出して・・・・」

 

「私が犠牲になるじゃない!! 絶対ダメっ!!」

 

「うん・・・・」

 

『ガル・・・・』

 

二匹の狼はシュンと落ち込む。二人の頭を撫でてから、ホシノが口を開く。

 

「ま、取り敢えず先に解決すべきは、目の前の問題でしょ。とにかく教室に戻ろー」

 

 

 

 

 

 

 

 

教室に戻った一同が席に着くと、アヤネが神妙な顔で話を始める。

 

「全員揃ったようなので始めます。先ずは、『二つの案』について話したいと思います。最初に昨日の襲撃の件です。私達を襲ったのは『便利屋68』と言う部活です。〈キヴォトス〉でも最高峰のマンモス校の一角、〈ゲヘナ学園〉に所属し、かなり素行の悪く、ポケモンバトルもゲヘナの風紀委員会に負けない程の実力を持つ危険な生徒達として知られています。便利屋とは、頼まれた事は何でもこなすサービス業で、リーダーで社長の陸八魔アルさんが務め、メンバーは浅黄ムツキさん、鬼方カヨコさん、伊草ハルカさんがそれぞれ、室長、課長、平社員の肩書きをした計の四名の部活です。因みに全員私とセリカちゃんより歳上です」

 

「えっ? そうなの?」

 

「いやぁー、本格的だねー」

 

「社長さんだったんですねアルさん☆ スゴいです!」

 

「いえ、あくまでも『自称』なので・・・・それで今はアビドスの何処かのエリアに入り込んでいるようです。今朝も会いましたし・・・・」

 

ホシノとノノミがそう言うと、アヤネがそう説明した。すると次はシロコが口を開く。

 

「〈ゲヘナ学園〉では、起業が許可されているの?」

 

「それはないと思いますが・・・・勝手に起業したのではないでしょうか」

 

「あら・・・・校則違反って事ですね。悪い子達には見えませんでしたが・・・・」

 

傭兵を連れてきたのに、態々一対一のポケモンバトルで決着をつけようとした姿を思い出して、ノノミが言った。

 

「いえ、それが今までかなり非行の限りを尽くしたようで、ゲヘナでも問題児であり、しかも生徒会からも睨まれているようです」

 

するとアヤネは一呼吸入れて、力強く声を張り上げた。

 

「そんな危険な組織が私達の学校を狙っているのです! もっと気を引き締めないといけません!」

 

「次は取っ捕まえて取り調べでもするかー」

 

「はい、機会があれば是非・・・・」

 

「ところでアヤネちゃん、並々ならぬ恨みを感じるんだけど、ビブラーバを負かされた事、気にしてるの?」

 

普段は大人しいアヤネと違った気迫に、セリカがおずおずと聞いた。

 

「・・・・いえ、バトルは私の未熟だっただけなのでそこまでは。ーーーー続きまして、セリカちゃんを襲ったヘルメット団の黒幕についてです!」

 

ビブラーバがアヤネの鞄から、ヘルメット団が使っていた兵器の一部を持ってきて、テーブルの上に置いた。

 

「先日の戦闘で手に入れた戦略兵器の破片を分析した結果・・・・現在は取引されていない型番だと言う事が判明しました」

 

「もう生産してないって事?」

 

「それをどうやって手に入れたのかしら?」

 

ホシノとセリカの疑問に、アヤネは応えた。

 

「生産が中止された型番を手に入れる方法は・・・・〈キヴォトス〉では『ブラックマーケット』しかありません」

 

「『ブラックマーケット』・・・・とっても危ない場所じゃないですか」

 

「そうです。あそこでは中退、休学、退学・・・・様々な理由で学校を辞めた生徒達が集団を形成しており、〈連邦生徒会〉の許可を得ていない非認可の部活も沢山活動していると書きました」

 

「便利屋68みたいに?」

 

「はい。それから便利屋68も、ブラックマーケットで何度か騒ぎを起こしていると聞きました」

 

「では、そこが重要ポイントですね!」

 

「よし、じゃあ決まりだねー。ブラックマーケットを調べてみよう」

 

“うん。重要な手がかりなあるかも知れないね”

 

先生も同意するように頷き、対策委員会はブラックマーケットへと向かった。

 

 

 

 

 

ー先生sideー

 

そして、ブラックマーケットへと赴いた一同はその光景に目を奪われた。

まさにそこは〈キヴォトス〉の黒い場所。学園を問わずに素行の悪い生徒が集まるその場所は、表で広く名の知られる有名企業や医療機関にとって、後ろ暗い試験や実験を行う場所としても重宝される危険な場所であり、その規模は『市場』を越えて『街』と言える程に広がり、それは日に日に増している。

〈連邦生徒会〉の目も届かない、悪党たちの楽園。

そんな場所に、アビドス対策委員会と先生は足を踏み入れた

 

「ここがブラックマーケット・・・・」

 

「わあ☆ スッゴい賑わってますね?」

 

「小さな市場を想像していたけど、街一つくらいの規模だなんて。〈連邦生徒会〉の手の及ばないエリアが、ここまで巨大化してるとは思わなかった」

 

周りには目つきの悪い不良やヘルメットを被った不良が時おり喧嘩を売るように睨んでいた。

道路にはゴミが散乱し、『ゴミぶくろポケモン・ヤブクロン』が徘徊し、路地には『ヘドロポケモン・ベトベター』やその進化系の『ヘドロポケモン・ベトベトン』が彷徨き、空には『ことりポケモン・ココガラ』が飛んでいた。

他にも野良らしきポケモンの姿も見られる。まさに無法者の楽園と呼んでも差し支えない世界である。

 

“皆、物珍しいものが多いからって、単独行動はしないでね”

 

『ピカピカ』

 

セリカとノノミとシロコが、ブラックマーケットを見て呟いた。因みにポケモン達は、先生のピカチュウを除いて皆モンスターボールに入っている。

唯でさえ珍しいシロコの色違いルガルガンは元より、体格の大きいサイドンとウォーグルとヤドキングを出していれば、周りの不良生徒達に絡まれると判断したからだ。

因みにルガルガンがシロコのバックの中に入ろうとしたが、もう入れなくなってしまい、シュンッと落ち込んだのをシロコが慰めていたのは割愛する。

 

「うへ〜、普段私達はアビドスにばかりいるからねー。学区外は結構変な場所が多いんだよー」

 

「ホシノ先輩、ここに来た事あるの?」

 

「いんやー、私も初めてだねー。でも他の学区には、へんちくりんなものが沢山あるだってさー。ちょーデカい水族館で、『アクアリウム』って言うの! 色んな水系ポケモンがいっぱいいるんだってー! 今度行って見たいなー。うへ、『ポッチャマ』・・・・『ポッタイシ』・・・・『エンペルト』・・・・」

 

「ホシノ先輩・・・・ペンギン系ポケモンが好きなの?」

 

と、駄弁っていると、学校からドローンで此方の様子を見ながらオペレーターをしているアヤネから通信が入る。

 

《皆さん、油断しないで下さい。そこは違法な武器や兵器、進化の石や進化アイテムや『わざマシン』の贋物や盗品が取り引きされる場所です。何が起こるか分からないんですよ。何かあったら私が・・・・》

 

ーーーーダダダダダダダダダダダダ!!

 

《きゃあっ!?》

 

「銃声だ」

 

アヤネの言葉を遮るように響いた銃声に、シロコが眉根を寄せて身構える。

すると、一同の行き先で、一人の生徒が不良生徒達に追われていた。

 

「待て!!」

 

「う、うわああ! まずっ、まずいですー! ついてこないでくださいー!!」

 

不良生徒達に追われていたのは、亜麻色の長い髪を二つに結わえ、中々に可愛らしい顔立ちをし、何やら清楚な白い制服を着た女の子だった。何かのキャラクターバックを持ったその生徒を、数人の不良生徒達が追っていた。

 

「そうはいくか!」

 

《あれ・・・・『あの制服』は・・・・》

 

ドローンで見た女の子の制服から、アヤネも察したようだ。

と、そう言っていると、逃げていた女の子がシロコにぶつかりそうになる。

 

「!」

 

「わわわっ、そこどいて下さいー!!」

 

と、女の子とドン、とぶつかったが、そこは運動神経と反射神経の良いシロコ。見事に女の子を抱き留めた。

 

「い、いたた・・・・ご、ごめんなさい!」

 

「大丈夫?ーーーーな訳ないか、追われてるみたいだし」

 

「そ・・・・それが・・・・」

 

女の子が申し訳無さそうに話そうとすると、不良生徒達が声を張り上げた。

 

「何だお前らは。どけ! アタシ達はそこの〈トリニティ〉の生徒に用がある」

 

「あ、あうう・・・・わ、私の方は特に用は無いのですけど・・・・」

 

と、ソコで、アヤネが気づいたように声を上げた。

 

《・・・・!! 思い出しました、その制服・・・・〈キヴォトス〉1のマンモス校の一つ、〈トリニティ総合学園〉です!》

 

アヤネの通信が聞こえたのか、不良生徒達も声を上げた。

 

「そう、そして〈キヴォトス〉で一番金を持っている学校でもある! だから拉致って身代金をたんまり頂こうって訳さ!」

 

「拉致って交渉! 中々の財テクだろう? くくくくくっ」

 

「(あううう~、どうしよう!? 『あの子達』は今お昼寝中だし・・・・! でも、起きてたら起きてたで、大変な事になりますけど・・・・)」

 

女の子はバックの中にあるモンスターボールを一瞥してそう思った。

不良達はお金持ちのお嬢様が多く通う〈トリニティ〉の生徒を拉致しようとしているようだ。シロコとノノミが目配りする。

 

「どうだ、お前らも興味があるなら計画に乗るか? 身代金の分け前は・・・・ん?」

 

ーーーーバスッバスッ!

 

シロコとノノミが同時に不良達を殴り、気絶させた。

 

「うぎゃあっ!」

 

「悪人は懲らしめないとです☆」

 

「うん」

 

結構物騒な二人である。

 

「あ・・・・えっ? えっ?」

 

鮮やかな動きで不良達を気絶させた手際に、女の子は理解が追いつかず、戸惑っていた。

 

“とりあえず、ここから離れようか。それで、君の名前は? 私は〈シャーレ〉の先生だよ”

 

「えっ!? せ、先生!? は、はじめまして先生! 私、〈トリニティ総合学園〉二年生の『阿慈谷ヒフミ』です! ヒフミと呼んで下さい!」

 

“それじゃヒフミ。私達と一緒に離れよう”

 

先生がそう言うと女の子、ヒフミを連れて、対策委員会がその場を離れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、ありがとうございました。皆さんが来なかったら、学園に迷惑をかけちゃう所でした・・・・」

 

少し離れた場所に行くと、ヒフミが頭を下げてお礼を言った。

 

「それに、こっそり抜け出して来たので、何か問題を起こしたら・・・・あううう・・・・想像しただけでも・・・・」

 

ヒフミが顔を青ざめていると、ホシノが話しかけてきた。

 

「えっとー、ヒフミちゃんだっけ? それにしても、〈トリニティ〉のお嬢様が何でこんな危ない場所に来たの?」

 

「あ、あはは・・・・それはですね・・・・実は、『探し物』がありまして・・・・もう販売されていないので貰う事も出来ないのですが、ブラックマーケットでは密かに取引されているらしくて・・・・」

 

それを聞いて、対策委員会は目を細める。まさか、ヘルメット団の関係者かと思ったのだ。

 

「もしかして・・・・戦車?」

 

「もしくは違法な火器?」

 

「科学武器とかですか?」

 

シロコとホシノとノノミがズイッと聞くと、ヒフミが慌てて否定する。

 

「えっ!? い、いいえ・・・・えっとですね、『ペロロ様の限定グッズ』なんです」

 

「『ペロロ』?」

 

「限定グッズ?」

 

セリカとシロコが聞くと、ヒフミは白く丸っこい鳥の様な姿をし、目をひん剥き、舌を出して涎も垂らしたマスコットが、チョコミントアイスを口に突っ込んだぬいぐるみを取り出した。

 

「はい! これです。ペロロ様とアイス屋さんがコラボした、限定ぬいぐるみ! 限定生産で百体しか作られていないグッズなんですよ。ね? 可愛いでしょう?」

 

「・・・・・・・・」

 

シロコはその独特なデザインを見て、コメントに困っていると、ノノミが声を出してきた。

 

「わあ☆ 『モモフレンズ』ですね! 私も大好きです! ペロロちゃん可愛いですよねぇ! 私は『ミスター・ニコライ』が好きなんです」

 

「分かります! ニコライさんも哲学的な所がカッコ良くて。最近出たニコライさんの本『善悪の彼方』も買いました! それも初版で!」

 

ノノミに同意するようにヒフミが声張り上げ、話が盛り上がる。

 

「・・・・いやー何の話だか、おじさんにはさっぱりだなー」

 

「ホシノ先輩はこういうファンシー系に全く興味ないでしょ」

 

「いやいやそんな事ないよー。ファンシー系のポケモンは好きだよー。『プリン』とか『マホイップ』とか美味しそうだよねぇ〜」

 

「それって食欲じゃない!」

 

「ーーーーふむ。最近の若いやつにはついていけん」

 

「年の差、ほぼ無いじゃん・・・・」

 

などとホシノとセリカが話していると、ヒフミが話を終えた。

 

「という訳で、グッズを買いに来たのですが、先程の人達に絡まれてしまいまして・・・・皆さんがいなかったら今頃どうなっていた事やら・・・・所で、アビドスの皆さんは、何故こちらへ?」

 

「私達も似たようなもんだよ。探し物があるんだー」

 

「そう。今は生産されていなくて手に入れにくい物なんだけど、ここにあるって話を聞いて」

 

「そうなんですか、似たような感じなんですね」

 

と、そこで、アヤネからの通信が入る。

 

《皆さん大変です! 四方から武装とポケモン達を出した人達が向かってきてます!》

 

「何っ!?」

 

全員が辺りを見回すと、先程の不良達が仲間とラッタとオニドリルを連れてやって来た。

 

「あいつらだ!」

 

「よくもやってくれたな! 痛い目に合わせてやるぜ!」

 

自分達の周りに展開する不良達。

 

《先程撃退したチンピラの仲間のようです! 完全に敵対モードです!》

 

「望む所」

 

「全く、何でこんなのばっかり絡んでくるんだろうね? 私達、なんか悪い事した?」

 

《愚痴は後にして・・・・応戦しましょう、皆さん!》

 

「ルガルガン!」

 

『ルガル!』

 

「ウォーグル!」

 

『ウォー!』

 

「サイドン☆」

 

『ドン!』

 

「キンちゃん♪」

 

『ヤド〜』

 

アヤネがそう言うと、対策委員会は武器と、ポケモン達を取り出して迎撃した。

 

 

 

 

 

 

 

 

それからあっという間に撃退した対策委員会とヒフミ。

 

“ヒフミのポケモンは?”

 

「す、すみません、今はお昼寝中で出てこないんです・・・・」

 

《敵、後退していきます! だけどこのままでは・・・・》

 

「仲間を呼ぶつもり? いくらでも相手してあげる」

 

『ガルっ!』

 

勇ましいシロコとルガルガンだが、ヒフミが声を張り上げた。

 

「まっ、待ってください! それ以上戦っちゃダメです!」

 

「ん? どうして?」

 

「だ、だって・・・・ブラックマーケットで騒ぎを起こしたら、ここを管理している治安機関に見つかってしまうかも知れません! あうう・・・・そうなったら大事です・・・・先ずはこの場から離れて・・・・」

 

ヒフミの言葉に、ホシノが頷いた。

 

「ふむ・・・・分かった。ここの事はヒフミちゃんの方が詳しいだろうから、従おう」

 

「ちぇっ、運の良い奴らめ!」

 

「こっちです!」

 

すぐにルガルガン達をボールに戻して、一同はその場から離れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヒフミに案内されながら、対策委員会はブラックマーケットの歓楽街へと移動した。

 

「・・・・ここまで来れば大丈夫でしょう」

 

「ふむ・・・・ここはかなり危険な場所だって認識してるんだね」

 

「えっ? と、当然です。〈連邦生徒会〉の手が及ばない場所の一つですから・・・・。ブラックマーケットだけでも、学園数個分の規模に匹敵しますし、決して無視はできないかと・・・・」

 

シロコの問いに、ヒフミがより詳しくブラックマーケットの事を説明しだした。

 

「それに様々な『企業』が、この場所で違法な事柄を巡って利権争いをしていると聞きました。それだけじゃありません。ここ専用の『金融機関』や『治安機関』がある程ですから・・・・」

 

その言葉に、セリカが声を上げて驚く。

 

「『銀行』や『警察』があるって事・・・・!? そ、それって勿論、許可されていない違法な団体だよね!?」

 

「はい・・・・そうです」

 

「スケールがケタ違いですね・・・・」

 

流石のノノミも汗を垂らす。

 

「中でも特に治安機関は、兎に角避けるのが一番です・・・・。騒ぎを起こしたら、先ずは身を潜めるべきです・・・・」

 

「ふ~ん、ヒフミちゃん、ここの事に意外と詳しいんだね〜」

 

「えっ? そうですか? 危険な場所なので、事前調査をしっかりしたせいでしょうか・・・・」

 

ホシノが何か企んだかのような光を宿し、ヒフミを見据える。そんな視線に気づかず、ヒフミが応えるとホシノはポンッとヒフミの肩に手を置いた。

 

「よし、決めたー」

 

「・・・・?」

 

首を傾げるヒフミに、ホシノが言う。

 

「助けてあげたお礼に、私達の『探し物』が手に入れるまで一緒に行動してもらうからねー♪」

 

「え? ええっ?」

 

「わあ☆ いいアイデアですね!」

 

「成る程、誘拐だね」

 

「はいっ!?」

 

ノノミとシロコが悪乗りしたように同意した。ヒフミが状況についていけず戸惑うばかりであった。

取り敢えず、セリカと先生とピカチュウがフォローする。

 

「誘拐じゃないくて、案内をお願いしたいだけでしょ?」

 

“ヒフミ。私達はまだこの辺りの地理や歩き方を知らないから、良ければ協力してくれると助かるんだけど・・・・”

 

『ピカチュウ・・・・』

 

先生や先生のパートナーにまで頼まれては無下にできないと思ったのか、ヒフミが躊躇いがちに応じた。

 

「あ、あうう・・・・私なんかでお役に立てるか分かりませんが・・・・アビドスの皆さんにはお世話になりましたし、喜んで引き受けます」

 

「よーし。それじゃあ、ちょっとだけ同行頼むねー」

 

そしてヒフミの案内の元、対策委員会と先生は、ブラックマーケットを歩いていった。

 

 

 

 

 

ーアルsideー

 

さて、ここは『便利屋68』のオフィス。無駄に派手な家具が置かれ、『一日一悪』の掛け軸が堂々と壁に飾られていた。

 

ーーーージリリリリ・・・・ジリリリリ・・・・ジリリリリ・・・・。

 

と、社長のアルの机に置かれた黒電話が鳴り響く。

 

「・・・・・・・・」

 

『・・・・・・・・』

 

それを暗い貌で見ながら脂汗を流すアルと、そんなパートナーを半眼で見据えるマフィティフ。

近くではムツキがエテボースとボールジャグリングをして遊び、カヨコがレパルダスをブラッシングし、ハルカが爆弾製作をし、ガラルマタドガスがその上をフワフワと浮遊していた。

すると、ムツキとエテボースはジャグリングを止めてアルに話しかける。

 

「アルちゃん。何してんの? 電話でないの?」

 

『ウホホ?』

 

「・・・・・・・・」

 

暗い表情のまま、アルは返答しない。ブラッシングを終えたカヨコも話に加わる。

 

「表情が暗い・・・・もしかしてクライアント・・・・?」

 

『フワァ〜・・・・!』

 

カヨコが電話相手を推察し、レパルダスは興味ないと言わんばかりに身体を伸ばして大きな欠伸をする。

 

「うわ、そりゃそんな顔にもなるわ。失敗したって報告しないとじゃん?」

 

『ウホ〜』

 

「アル様・・・・」

 

『ドガ〜・・・・』

 

ムツキとエテボースとハルカめ不安そうな顔になる。ガラルマタドガスは相変わらずノンビリ浮遊しているが、こっそりとリラックス効果のある香りがする空気を吐き出していた。

 

「・・・・くっ」

 

そのお陰か、少し肩の強張りが緩くなったアルは意を決して受話器をガチャ、と手に取り耳に当てた。

 

「はい・・・・便利屋68です」

 

『依頼人』に報告した。

 

 

 

 

 

ーカイザー理事sideー

 

〈キヴォトス〉の某所にある大きく聳え立つ高層ビルの最上階にある豪奢な執務室の、これまた豪奢な執務机の椅子に腰掛ける、身体がとてもゴツいロボットのような義体に黒い高級スーツを着たキヴォトス人の大人、〈カイザーPMC〉の『カイザーPMC理事』は、依頼をした〈便利屋68〉からの報告を聞いていた。

 

「・・・・ふむ、興味深い報告だ。ここまでの『練習』は拝見したよ。で、『実戦』はいつだ?」

 

不穏な声色を混ぜて、カイザー理事は電話相手の陸八魔アルにそう言った。

 

 

 

 

 

ーアルsideー

 

「・・・・うえ? あれが『実戦』だったんです・・・・が・・・・」

 

アルは顔に一筋の脂汗を垂らし、白目を剥いてしまう。が、すぐに立て直して言い訳する。

 

「あ、いえ、何でもありません。も、勿論『実戦』はすぐにでも・・・・と言う感じで・・・・あっ、えっと、一週間以内には・・・・はい」

 

『バフゥ〜・・・・』

 

「!?」

 

『ZZZ・・・・』

 

「!!」

 

『ウホッ!?』

 

アルの言葉に、マフィティフは「やっちまった」と言わんばかりに溜め息を吐き、カヨコとムツキとエテボースは目を見開き、レパルダスは寝ていた。

そんな周囲の様子を気に掛ける余裕無く、アルは取り繕うように余裕な態度で、依頼人との話を進める。

 

「ふふっ。はい、そうです。・・・・お任せください」

 

 

 

 

 

ーカイザー理事sideー

 

カイザー理事はアルの言葉を聞くと、電話を切って、椅子に深く腰掛ける。

 

「奴らのデータ自体は正確だった筈。計算ミスか? いや、しかし明らかに『化け物』共の力も明らかに上がっていた・・・・」

 

カイザー理事は『標的』であるアビドス対策委員会の戦力データを計算して、便利屋を選んだ。例えポケモンバトルになっても、勝てる算段だったのだ。

にも関わらず、対策委員会は便利屋を撃退した。これに少々の疑問を感じてならなかった。

と、そこで、理事の部屋の隅の闇から人影が現れる。

 

「・・・・お困りのようですね?」

 

「『黒服』・・・・」

 

服装は黒いスーツで手には黒い手袋を嵌めた、割りと普通の人間の体型なのだが、その顔は炎のような、影のような、ヒビ割れたナニカのような。怪しい、『異形』とも言える大人がそこに現れ、カイザー理事は『黒服』と呼んだ。

 

「・・・・いや、困ってはいない。ただ、計算に少しのエラーが生じただけだ。アビドスの連中が、データよりも遥かに強かっただけの事」

 

「・・・・・・・・」

 

カイザー理事の言葉に、黒服は腑に落ちないと言わんばかりに声を出す。

 

「・・・・データに不備はありません」

 

「・・・・?」

 

「これは単に、アビドスの生徒がさらに強くなった、と解釈すべきかと」

 

「それは一体・・・・」

 

「アビドスにどのような変化要因があったのか、確認してみましょう。・・・・では」

 

そう言って、黒服は理事の執務室から退室した。

 

「・・・・・・・・」

 

理事は少し顎に手を当てると、執務室に設えた操作盤を操作すると、立体映像にて、自社の保有する部隊の部隊長を呼び寄せた。

 

《これは理事。どうされましたか?》

 

「・・・・『例の二匹』はどうだ?」

 

《本日の未明、漸く二匹とも拘束する事に成功しました。しかし、まるで言う事を聞かず、暴れている状態です》

 

「・・・・『アレ』に紛れて逃げ出した『他の二匹』はどうだ?」

 

《発見はしたのですが、内一匹が、とてつもない『巨体』となってしまい、我々では未だに手に負えません》

 

「ならばすぐに『例の二匹』を使えるようにしておけ。いざとなれば『あのガス』も使うのだ」

 

《はっ!》

 

そう言って、部隊長との連絡を終えた理事は、『捕獲された二匹』の映像を映した。

 

《ギラァァァァァァァァァァァァ!!》

 

《ドラァァァァァァァァァァァァ!!》

 

『怪獣のようなポケモン』と『サソリのようなポケモン』が、自分達を拘束している鎖を引き千切ろうと暴れているのであった。

 

 

 

 

 

 

 

ーアルsideー

 

そしてこちらは、依頼人との連絡を終えたアルはーーーー。

 

「・・・・はあ」

 

今さっきの余裕な態度は完全に消滅し、白目を剥いて口から魂を吐き出さんばかりの溜め息を吐いた。

 

「やつれたねぇ、アルちゃん」

 

「社長、一体どういう事・・・・? まさか、また戦うの?」

 

「・・・・あの依頼人‹クライアント›は、私も詳しくは知らないけど、超大物なのよ。・・・・この依頼、失敗する訳にはいかないわ」

 

ムツキとカヨコが言うと、アルが依頼人がただ者じゃない事を告げると、カヨコは頭痛を堪えるように溜め息を吐く。

 

「だけどアビドスの連中、思ったより強かったじゃん。今度はポケモンバトル抜きでの戦いになったら、『シャーレ』の先生のポケモンも敵になるかもよ?ーーーー『この子達』、使う?」

 

ムツキが懐からスーパーボールを取り出して人差し指の上でクルクルと器用に回す。それを見て、アルとカヨコとハルカも、懐からスーパーボールを取り出す。この中にいるポケモン達を使えば、確かに『風紀委員長』クラスの相手でなければ負ける事は無いだろう。

だが、カヨコは否定する。

 

「いや、『この子達』を使ったら、逆に被害による損害の方が大きいって・・・・。だいたいこんな高いオフィスなんか借りてるから、無駄にお金が掛かっているんじゃ・・・・」

 

「う、うるさいっ! ちゃんとした会社なら、事務所は基本でしょ! その方が仕事の依頼も増えるんだから!」

 

「別に、私はこの前みたいに公園でテントでも構わないけどー」

 

「わ、私も、食べられる野草探します・・・・」

 

「黙りなさいよ! 皆うるさい! 静かに!」

 

遂に爆発したアルに、全員が黙った。

 

「・・・・・・・・」

 

『・・・・・・・・』

 

考えるに考えたアルはーーーー。

 

「・・・・融資を受けるわ」

 

「は? アルちゃん、ブラックリスト入りしてるでしょ」

 

「違うわよ!? 私は指名手配されて口座が凍結されただけ!」

 

「そうだっけ?・・・・あ、そうだった。『風紀委員会にやられたんだよね。後なぜか『生徒会』にも睨まれるようになったし』」

 

「くっ・・・・『風紀委員会』め・・・・ここまで徹底的に傷めつけられるとは思わなかったわ」

 

「これじゃ中央金庫も、行った所で門前払いだろーね」

 

「うるさいってば! 他にも方法はあるんだから!」

 

「・・・・・・・・」

 

カヨコは先行きが不安でしょうがないようであった。

 

「見てなさいよ、アビドス。このままじゃ終わらせないんだから。ーーーー便利屋のミッションははこれからなのよ!」

 

『・・・・バフ』

 

意気揚々と飛び出していくアル。そんなパートナーに呆れながらもノッソノッソとついていくマフィティフ。

 

「・・・・・・・・」

 

「へー、一体どうするつもりなんだろ」

 

取り敢えず、社長だけでは不安なので、他のメンバーもついていくのであった。

 

 

 

そこでアルは目撃するーーーー『真のアウトロー』を。

 




ヒフミの手持ちポケモンは、〈トリニティ〉の代表タイプではなく、『普通』のポケモンです。
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