ポケモンアーカイブ   作:BREAKERZ

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少しオリジナルを入れます。


カイザーコーポレーションの暗躍

ーヘルメット団sideー

 

時間は少し遡り、覆面水着団がマーケットガードと派手に戦っている間、その爆裂音や破壊音から、ブラックマーケットの市場は騒然となり、一部の露店の店主達は逃げたりして、店がガラ空き状態となった。

そして、露店に置かれていた『商品』を盗んでいく一団があった。

アビドスに大敗し、便利屋68に叩きのめされ、『雇い主』からも見放された、カタカタヘルメット団であった。

 

「リーダー! 〈ゲヘナ〉に行っていた一班が戻ってきました。『例のブツ』も手に入れました!」

 

「よし。こっちも漸くコイツらも回復した」

 

ヘルメット団リーダーの眼前には、便利屋との戦いでボロボロになったボスワルビアルとボスサダイジャがいた。

 

「待っていろアビドス対策委員会! 便利屋68! 今までの屈辱、全て返してやるぞ!!」

 

ヘルメット団リーダーは、盗んだ『商品』をボスワルビアルとボスサダイジャに向けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーアビドスsideー

 

そして時は戻りーーーー。

ヒフミとガルーラと共にアビドスに戻った一同は、早速全員で書類の確認を行っていた。

するとセリカが、バンッ! と、机が壊れんばかりに叩いた。

 

「なっ、何これ!? 一体どういう事なの!?」

 

「・・・・!!」

 

ノノミも驚きと怒りが混ざった顔になり、シロコが表面上は冷静に読み上げた。

 

「現金輸送車の集金記録にはアビドスで788万円集金したと記されてる。私達の学校に来たあのトラックで間違いない。・・・・でも、そのすぐにカタカタヘルメット団に対して、『任務補助金500万円提供』って記録がある・・・・」

 

「と言う事は・・・・それって・・・・」

 

「私達のお金を受け取った後に、ヘルメット団のアジトに直行して任務補助金を渡したって事だよね!?」

 

セリカが怒り収まらずに声を荒げる。

 

「『任務』だなんて・・・・? カタカタヘルメット団に・・・・?」

 

アヤネが一つの『真実』を口にする。

 

「ヘルメット団の背後にいるのは、まさか・・・・カイザーローン?」

 

思いもしなかった『事実』に、一同が黙ってしまう。無関係なヒフミですらも。先生はそんな中、書類に目を走らせると、『ある薬品会社』にも、カイザーから中々の大金が流れてるのを見つけた。

 

“(ーーーーアロナ。この『薬品会社』の情報をできるだけ集めておいて)”

 

《了解しました!》

 

先生はこっそりと『シッテムの箱』のアロナに指示すると、アロナは敬礼して応えた。そして、疑問をノノミが口にする。

 

「ど、どういう事でしょう!? 理解できません! 学校が破産したら、貸し付けたお金も回収できないでしょうに・・・・どうしてそのような事を・・・・?」

 

その通りである。借金を返済されなくなれば〈カイザーローン〉は九億の大金が無駄になり、大きな損失にもなる筈なのだから。

 

「ふーむ・・・・」

 

「この件、銀行単独の仕業じゃなそうだね。カイザーコーポレーション本社の息がかかってるとしか思えない」

 

「・・・・はい。そう見るのが妥当ですね」

 

ホシノが難しげに顔を顰め、シロコの推察をヒフミが肯定した。

 

 

 

 

 

 

 

 

先生と対策委員会がヒフミと連絡先を交換すると、日も暮れ始め、そろそろ帰らなければ〈トリニティ〉の門限に間に合わない事もあり、対策委員会と先生はアビドスの校門でヒフミとガルーラを見送ろうとした。

 

「皆さん、色々とありがとうございました」

 

『ガルガル』

 

『カルカル』

 

ヒフミがペコリと頭を下げると、ガルーラと子ガルーラもペコリと頭を下げた。

 

「変な事に巻き込んでごめんなさい、ヒフミさん。ガルーラさん。子ガルーラさん」

 

『ドン』

 

「あはは・・・・」

 

同じくペコリと謝罪するノノミとサイドンに、ヒフミは苦笑し、ガルーラ達は半眼でジト目になっていた。

 

「今度遊びに行くから、その時はよろしくー」

 

「はいっ、勿論です。まだ詳しい事は明らかになってませんが・・・・。これはカイザーコーポレーションが、犯罪者や反社会勢力と何かしら関係があると言う事実上の証拠になります。戻ったら、この事実を〈ティーパーティー〉に報告します!」

 

〈ティーパーティー〉。〈トリニティ総合学園〉における生徒会の事である。

 

「それと、アビドスさんの現在の状況についても・・・・」

 

「・・・・・・・・まー、ティーパーティーはもう知ってると思うけどねー」

 

「は、はいっ!?」

 

しかし、ホシノの言葉に、ヒフミは素っ頓狂な声を上げた。それに構わず、ホシノは説明した。

 

「あれ程の規模を持つ学園の首脳陣なら、それぐらいはもうとっくに把握してると思うんだよー。皆、遊んでばかりじゃないだろうしさ」

 

「そ、そんな・・・・知っているのに、皆さんの事を・・・・」

 

ヒフミがショックを受けたような声を発する。

 

「うん、ヒフミちゃんは純真で良い子だねー。でも世の中、そんなに甘くないからさ」

 

「・・・・・・・・」

 

「ヒフミちゃんの気持ちはありがたいけど、そっちに知らせた所で、これと言った打開策が出る訳じゃないし、かえって私達がパニクる事になりそうな気がするんだよねー」

 

「そ、そうですか・・・・?」

 

ヒフミの問いに、ホシノは少し顔を難しくする。

 

「ほら、今のアビドスって廃校寸前じゃん? トリニティとかゲヘナみたいなマンモス校からのアクションをコントロールできる力がないんだよー。言ってる意味、分かるよね?」

 

「・・・・サポートすると言う名目で悪さされても、それを阻止できない・・・・って事ですよね。・・・・そうですね、その可能性も無くはありません。あうう・・・・政治って難しいです」

 

「でも・・・・ホシノ先輩、悲観的に考え過ぎでは無いでしょうか? 本当に助けてくれるかも知れませんし・・・・」

 

「うへ〜私は他人の好意を素直に受け取れない、汚れたおじさんになっちゃってねー」

 

悲観的なホシノの言葉にヒフミが頭を抱え、ノノミの言葉もいつもの調子で受け流しながも、少し真面目に言う。

 

「『万が一』って事をスルーしたから、アビドスはこの有様になっちゃったんだよー」

 

『・・・・・・・・』

 

“・・・・もしくは・・・・”

 

「ん? 先生?」

 

ホシノの言葉に、全員が閉口すると、不意に先生が声を発し、シロコが目を向ける。

 

“・・・・トリニティやゲヘナが、カイザーコーポレーションの事に介入する『何か』があれば、悪さをする理由が無く、せめてカイザーを潰すまでの協力を漕ぎ着ける事ができるかも・・・・”

 

「ん? 先生、そんな方法あるの?」

 

“あっ、いや・・・・例え! 例え話だから・・・・!”

 

『まだ仮説の段階』故に、口を濁らせる先生。

そしてヒフミが声を発する

 

「では・・・・えっと・・・・本当に・・・・一日で色んな出来事がありましたね」

 

「そうだね、凄く楽しかった」

 

『ルガル♪』

 

「・・・・楽しかったのはシロコ先輩とルガルガンだけじゃないの?」

 

『ウォー・・・・』

 

ヒフミが苦笑しながら言うと、シロコとルガルガンが目をキランもさせながら頷き、セリカがツッコミ、ウォーグルも苦笑した。

 

「あ、あはは・・・・私も楽しかったです」

 

『ガル』

 

「いやぁー、『ファウストちゃん』、お世話になったね」

 

「そ、その呼び方はやめて下さい!」

 

不本意な二つ名で呼ぶホシノにヒフミは慌てて止める。が、ノノミも悪乗りする。

 

「よっ、覆面水着団のリーダーさん!」

 

「皆さん、ヒフミさんが困ってるじゃないですか」

 

アヤネが苦笑しながら止める。

 

「と、兎に角・・・・これからも大変だと思いますが、頑張って下さいね。応援してます」

 

“ヒフミ。駅まで送るよ。まだマーケットガードが彷徨いてるかも知れないし、また他の生徒に絡まれたら大変だからねーーーーミライドン!”

 

『アギャッ!ーーーーアギャ♪』

 

「げっ!!」

 

『アギャァァァァス♪』

 

「いやぁーっ!!!!」

 

先生がミライドンを出すと、ミライドンはセリカを見つけ近づくと、セリカは砂煙を上げながら全力で逃げ出し、ミライドンも楽しそうにセリカを追いかけ、校庭を何周も走り回る。

 

『アギャス♪』

 

「た、助けて〜!!!!」

 

『ウォー! ウォー!』

 

が、結局捕まり、ペロペロされたのであった。ウォーグルが止めようとするが、全く止まらなかった。

 

「あ、あの・・・・先生、あのポケモンは?」

 

“私のライドポケモンのミライドン”

 

「凄〜く速いですから、すぐに駅に行けますよ☆」

 

少しして、ガルーラとサイドンもミライドンを抑えて、顔中ベトベトもなったセリカから離れさせると、先生とピカチュウとヒフミはミライドンの背に乗り、ガルーラをモンスターボールに入れて、ミライドンはドライブモードとなって駅に向かって走り出した。

 

「ん。やっぱり速くて良いね、ミライドン」

 

『ルガル』

 

ミライドンを見つめるシロコの言葉にルガルガンは頷く。

そしてシロコは、ベトベトになった顔をハンカチで拭いているセリカに、それはそれは目をキラキラさせて話す。

 

「セリカ、やっぱり一日、いや、半日で良いからミライドンにペロペロ・・・・」

 

「絶対イヤっ!!」

 

「シロコちゃ〜ん。ミライドンを使って何を考えているのかなぁー? おじさんとゆっくり話し合おうー」

 

ホシノがにこやかに圧を放ちながら後ろを取ると、シロコはルガルガンと共に逃げようとするが、ヤドキングの【ねんりき】に捕まってそのまま御用となり、対策委員会は解散となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてミライドンに乗った先生は、ヒフミを連れて駅に十分で到着した。

 

“ーーーー着いたよヒフミ”

 

「はい! 凄いです! これならトリニティまでの快速電車に余裕で間に合います!」

 

万一の用心として、先生とピカチュウはヒフミを電車のホームまで一緒に行くと、先生はヒフミに話しかける。

 

“・・・・ヒフミ”

 

「はい?」

 

“ヒフミは、トリニティのティーパーティーに顔が利くようだね?”

 

「あっ、はい。ナギーーーーいえ! ティーパーティーの重役の方に目をかけて貰っているんです!」

 

それを聞くと、先生はフムと頷いてから、ヒフミに『ある事』を尋ねる。

 

“ヒフミは、トリニティでのブラックマーケットにも精通しているの?”

 

「えっ!? あぁその! モモフレンズのイベントが良く行われるので、遂・・・・」

 

“それじゃーーーー『R』について、何か小耳に挟んでいないかい?”

 

「えっ? それなら、ブラックマーケットだけでなく、トリニティでも結構聞きますし、ティーパーティーや『正義実現委員会』や『トリニティ自警団』にとっても、出所が分からなくて、頭を痛ませている問題だって聞きましたけど・・・・」

 

“うん。それじゃ、そのティーパーティーの重役や、正義実現委員会の羽川ハスミ。それに自警団の守月スズミにも伝えて欲しい事があるんだ”

 

「はい?」

 

首を傾げるヒフミに、先生は『伝言』を言うと、ヒフミは目を見開いた。

 

「そ、それ、本当なんですか? 先生?」

 

“まだ『憶測』の域を出ていないけど、トリニティの方でも調査をして欲しいって伝えてくれるかい?”

 

「は、はい! 分かりました! もしかしたら、アビドスの皆さんのお力になれるかも知れませんし!」

 

そう言って、ヒフミは快速電車に乗って、トリニティに戻っていった。

先生とピカチュウはミライドンに乗ると、何故か人気のない通りを進み、そこでピタッとミライドンを止めてボールに戻すと、虚空に向かって叫ぶ。

 

“ーーーー駅からずっと監視していただろう!? さっさと出てきなよ!”

 

先生がそう叫ぶと、先生の上空にーーーーアーマーガアの群れが現れた。

見た瞬間分かる。ミライドンを追っていたアーマーガア達だ。

 

“・・・・やっぱりね。ミライドンを連れて歩いていれば、いずれ現れると思っていたよ。ピカチュウ!”

 

『ピカッ!』

 

先生が肩に乗ったピカチュウに言うと、ピカチュウは地面に降り、先生はルカリオ達を出す。

 

“さぁ皆ーーーーちょっと派手に行こう!”

 

『ピカチュウ!』

 

『カルォ!』

 

『リザ!』

 

『カメ!』

 

『ソウ!』

 

先生の言葉にピカチュウ達が力強く頷くと、アーマーガア達が、一斉に先生達に襲いかかってきたーーーー。

 

 

 

 

 

ー便利屋sideー

 

そして翌日の昼近く。便利屋68の事務所。

 

「おはよー」

 

『ウホー』

 

「おはよう・・・・」

 

『ファ〜・・・・バフ』

 

ムツキとエテボースが元気に挨拶すると、それとは対照的に、椅子に座ったアルはゲッソリした顔で応え、その足元にいるマフィティフも今起きたのか、大きな欠伸をしてから応える。

 

「うわっ、ビックリした! アルちゃん、徹夜でもした?」

 

「ううん、ちゃんと寝たわ・・・・」

 

しかし、アルのその顔を見ると、説得力がまるで無かった。

すると、ムツキより先に来ていたカヨコも、レパルダスのブラッシングを終えてから話しかける。

 

「社長、何か悩みでもあるの?」

 

「計画はしっかり立てたじゃん? 人をこれまでの二倍の雇って、地の利を生かせる戦場にアビドスを誘き出す」

 

「ハルカは爆弾を設置しに、朝早く出かけた。計画では、爆弾を数十ヶ所仕掛けたゾーンでアビドスをコテンパンにするって感じだよね」

 

カヨコとムツキが計画を再確認していると、事務所のドアがガチャッと開き、ハルカとガラルマタドガスが帰ってきた。

 

「ただいま戻りました」

 

『マタドガス〜』

 

「おかえり二人とも。お疲れ様。それで首尾は?」

 

「主要ポイントに爆弾を埋めておきました。後は、このボタンを押すだけで・・・・」

 

「よしよし、頑張ったねー。場所だけは忘れずに、しっかり覚えといて」

 

「いつでも言って下さい。私がこの手で、全部ふっ飛ばしてやりますから・・・・この手で・・・・」

 

ムツキがハルカの頭を撫でると、ハルカは何やら物騒な言葉を呟く。

しかしアルは、その次の襲撃が失敗すれば、便利屋が立ち行かなくなる事に、重圧‹プレッシャー›を感じていたのであった。

 

「はあ・・・・」

 

『・・・・・・・・』

 

傍らに座るマフィティフがアルを見上げる。

 

「なぁに死にそうな顔してんの? それなら最初からクライアントから手付金貰って、それを資金に充てれば良かったじゃん」

 

「・・・・手付金は貰わない。それがうちの鉄則よ」

 

アルの様子にムツキが眉根を寄せて言うが、アルは否定すると、カヨコが口を開く。

 

「手付金を貰うと、クライアントの命令に従わざる得なくなるから・・・・って理由だっけ?」

 

「その通り。華麗に仕事を終えてから依頼料を受け取る。この順番が崩れたら、私達が追求するビジョンは達成できないの」

 

「ビジョン? そんなのあったけ?」

 

『ウホッ?』

 

「あるわよ!! 法理と規律に縛られない、ハードボイルドのアウトロー! それが便利屋68のビジョンでしょう!!」

 

「そうだっけ? ああ、思い出した、思い出した」

 

『ウホホ』

 

ムツキがエテボースと一緒に、ポンッと手を叩いた。

するとアルが、話を戻すように切り出した。

 

「さっきカヨコが言ったように、クライアントの依頼も同じ。それが私達を縛る『足枷』になる事もあるわ。私達が望まない行動を強いられるかも知れないわよ」

 

案外とアルも、アルなりのポリシーを守る為に考えて行動しているようだ。

 

「だから依頼料は、絶対に成功報酬として受け取るの!」

 

「・・・・・・・・」

 

アルの言葉に、カヨコは『足枷になる』と言う部分には同意するのだが、アルが重圧を感じているのも察していた。

 

「そこまでプレッシャー感じてるなら、全部投げ捨てて〈ゲヘナ〉に帰るのも手だよ。もう『万魔殿‹パンデモニウム・ソサエティー›』の連中もほとぼりが冷めたと思うしさ、社長」

 

カヨコが〈ゲヘナ学園〉の生徒会、『万魔殿‹パンデモニウム・ソサエティー›』の事を言った。

 

「はあ!? ぷ、プレッシャーだなんて言ってないわよ! そ、それに議長の『マコト』の奴は、一度根に持ったら末代まで恨み潰しそうな性格してるし、まだ私達の事を根に持って狙ってる可能性があるでしょう!?」

 

「・・・・まぁ、それはそうだね」

 

懐からスーパーボールを出したカヨコが、アルに同意した。このボールに入っているポケモン達が、自分達が『万魔殿‹パンデモニウム・ソサエティー›』に狙われる一因になったのだが、それを掘り返してもどうにもならないし、今ではこの子達も自分達の大事な仲間なのだから。

すると、ムツキが両腕を組んで難しい顔になる。

 

「うーん。今さら帰るのは無理なんじゃない? 『万魔殿‹パンデモニウム・ソサエティー›』もそうだけど、『風紀委員』の奴らも黙っちゃいないよ?」

 

「『風紀委員会』・・・・か」

 

それを聞いて、カヨコの目が鋭くなる。

 

「確かに『風紀委員会』は、私達を目の上のたんこぶみたいに思ってはいるけど・・・・。今の私達は、奴らから逃げてきた訳じゃない。それと、そもそもゲヘナ‹うち›の『風紀委員会』が、時に『〈キヴォトス〉最強』とも言われてる理由は・・・・風紀委員長、『空崎ヒナ』の存在があるから」

 

〈学園都市キヴォトス〉で特に戦闘能力が高く、手持ちポケモンの強さと練度が群を抜いて高いトレーナーは、『三大学園』にそれぞれ一人ずついる三人の生徒達。

〈トリニティ総合学園〉の『正義実現委員会』の委員長。

〈ミレニアムサイエンススクール〉の『メイド隊』のリーダー。

そして、〈ゲヘナ学園〉の『風紀委員会』の委員長の『空崎ヒナ』の三人なのだ。

 

「風紀委員会の戦力の大半は殆ど彼女と、彼女の手持ちのポケモン達が担っていると言っても過言じゃない。しかも、“〈ゲヘナ〉の監視ネットワークも、彼女の手持ちがいて成り立っている”。戦力としては百人力。〈ゲヘナ学園〉にいれば、彼女の手持ちによる監視ネットワークの支配下に置かれる。『風紀委員会の肝』と言っても過言じゃないような人」

 

そこまで言って、カヨコは「でも・・・・」と、付け加える。

 

「言い換えるなら、ヒナ達以外の風紀委員は、大した事ないって事。『この子達』と計画をキチンと練れば、十分勝機はある」

 

カヨコが手にしていたスーパーボールを握る手に、少し力を入れて断言した。

 

「そうなの? カヨコっち、そこまで考えてたんだ?」

 

「いつか必ず相まみえる事になるだろうから。ヒナ達抜きの『風紀委員会』なら今アビドスにかけている労力を考えれば、難なく戦えるよ」

 

『ニャァォ!』

 

カヨコの言葉に同意するように、レパルダスが声を上げた。

 

「でも、逆に言えば、アビドスはそれぐらい侮れない相手って事。生徒の数が少ないって事が最大の弱点だけどね」

 

「え? そんなに強いかな・・・・?」

 

「・・・・・・・・」

 

カヨコの話を聞いてから、アルは少し考えてシリアス顔で口を開く。

 

「・・・・いえ、今さら〈ゲヘナ〉に戻るって言う選択肢はないわ。かと言って、はあ・・・・」

 

が、すぐに白目に剥いて、盛大な溜め息を吐いた。

 

「・・・・一体何が引っかかってるの?」

 

ーーーーロトロトロトロト、ロトロトロトロト、ロトロトロトロト・・・・。

 

「ん? はいはいもしもし? ムツキだよー♪」

 

ムツキのスマホロトムが鳴り、ムツキが電話に出た。

 

「あっ、おっはよー! どうしたの?・・・・フムフム。オッケー♪ ちょうど昨日からな〜んにも食べてなかったから助かるよー☆ うん。うん。んじゃ『柴関ラーメン』でねー♪」

 

そう言って、ムツキの通話を切った。

 

「ムツキ。誰からの電話?」

 

「うん。“シャーレの先生からだよー”♪」

 

『えっ!?』

 

『っ!?』

 

ムツキの言葉に、エテボース以外の全員が目をパチクリさせた。

 

「話したい事があるから、来て欲しいって。お昼ご飯も奢るってさー。バイトちゃんは午後からのシフトだから、今行っても鉢合わせしないよー」

 

「な、何で先生が・・・・まさか!」

 

アルはチラリと、先日拾った『バッグ』を見据える。

 

「・・・・多分それは無いと思うけど、取り敢えず行ってみるしかないね。社長の元気づけにもなりそうだし」

 

「じゃあ決まりー。行こ行こ♪」

 

便利屋は柴関ラーメンへと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

ー先生sideー

 

時間は少し遡り、朝のアビドス対策委員会の教室にて。

 

“おはよう”

 

『ピカピカ♪』

 

先生とピカチュウが教室に入ると、ホシノがノノミに膝枕してもらっていた。

 

「おはよー、先生、ピカチュウ」

 

「先生、ピカチュウさん、おはようございます。今朝は早いですね?」

 

“ちょっと昨日ヒフミを帰した後、軽く運動したからね”

 

『ピカチュウ』

 

先生とピカチュウは何ともない体で返した。

 

“それで、ホシノは何をしてるの? 随分リラックスしてるね?”

 

「うへ〜ノノミちゃんの膝枕は柔らかくてサイコーなんだよー。私だけの特等席だもんねー」

 

「先生も如何です? はい、どうぞ〜☆」

 

ノノミがホシノの頭を片方の膝に乗せると、もう片方の膝を先生に向ける。

 

“・・・・・・・・”

 

ノノミもハスミ程ではないが、十分肉付きの良いグラマラスな肢体をしている。当然、膝もまるで高級枕のような寝心地の良さが発せられており、先生もついつい吸い込まれそうになっていた。

 

「ダメだよー。ここは私の場所なんだから、先生はあっちの座り心地悪そうな椅子に座ってねー」

 

「私の膝は先輩専用じゃないですよう・・・・」

 

ホシノの言葉に、ノノミが苦笑し、先生にボソッと耳打ちする。

 

「・・・・今度、誰もいない時にしましょうね、先生」

 

“・・・・それは、ありがとう”

 

先生がそう応えると、ホシノが欠伸をしながら起き上がる。

 

「よいしょっと。ふあぁ〜、皆朝早くから元気だなあ」

 

「のんびりできるのは久しぶりですから・・・・今は皆、やりたい事をやってるんでしょうね。うーん、シロコちゃんとルガルガンは先程セリカちゃんとウォーグルと一緒に裏庭に行きましたから、多分ポケモンバトルのトレーニングでしょうし、アヤネちゃんは多分勉強をしに図書室でしょうか・・・・」

 

「ノノミちゃんは学校の掃除と教室の整備をしてくれたよねー。うへ〜、皆真面目だなー」

 

“ホシノは?”

 

「ん? 私? うへ〜、私は当然ここでダラダラしてただけだよー」

 

「先輩も何か始めてみてはどうでしょう? アルバイトとか、筋トレとか」

 

「無理無理ー、おじさんは年齢的に無理が利かない身体になっちゃったもんでねー」

 

「歳は私とほぼ変わらないですよ?」

 

明らかに見た目で見れば対策委員会で一番年若そうなのに、年寄じみた台詞を言うホシノに、ノノミは苦笑する。

 

「うへ〜。兎に角先生め来たし、他の皆もそろそろじゃない? そんじゃ、私ゃこの辺でドロン」

 

「あら先輩、どちらへ?」

 

「うへ〜今日おじさんはオフなんでね。適当にサボってるから、何かあったら連絡ちょーだい、ノノミちゃん」

 

そう言って、教室を去っていくホシノ。

 

「ホシノ先輩・・・・またお昼寝に行くみたいですね」

 

“・・・・ノノミ。今日、私も留守にさせてもらうよ”

 

「あら? 先生もお昼寝ですか? それなら私の膝を貸しますよ?」

 

ノノミが膝枕を示すが、先生は苦笑して断る。

 

“ーーーーとても魅力的なお誘いだけど、お昼寝じゃないんだ。ちょっと、『用事』をしに行くんだ”

 

「『用事』? なんですか?」

 

“ーーーーうまくすれば、もう『あの子達』がアビドスと戦う理由が無くなるかもね”

 

先生がそう言うと、ノノミは察してくれたように頷いた。

 

「ーーーー分かりました。会議はアヤネちゃんがしっかり進めてくれますから、大丈夫ですよ」

 

すると今度は笑みを浮かべる。

 

「あはは・・・・それにしてもホシノ先輩も、以前と比べて大分変わりました」

 

“そうなの? 以前はどうだったの?”

 

「そうですね・・・・。今はいつも寝ぼけているような感じですが・・・・、初めて出会った頃のホシノ先輩は、常に『何か』に追われているようでした。その頃は、ヤドキングも今ののんびりした感じじゃなくて、目をキリッと鋭くなってたんでよ」

 

『ピカ〜?』

 

ノノミの説明に、ピカチュウは顎に手を当てて、イメージがつかないのか難しく顔をしていた。

 

“『何か』って、なんなの?”

 

「んと、ありとあらゆる事に、と言いましょうか。聞いた話ですが、以前とある先輩がいたそうで・・・・。アビドス最後の生徒会長だったらしいんですがとても頼りになる人で、その人とその人のポケモン達がここを去ってからは全てをホシノ先輩が引き受ける事になった、と・・・・」

 

すると、ノノミは今度は苦笑しながらも、感慨深げに言葉を続ける。

 

「ホシノ先輩は当時一年生だったとか・・・・。詳しくは私も知らないのですが。でも今は先生もいますし、他の学園の生徒達との交流もできますし・・・・。以前だったら、他の学園と関わる事自体嫌がっていた筈が・・・・かなり丸くなりましたね」

 

そう言って、先生に顔を向けて笑顔を見せる。

 

「うん。きっと先生のお陰ですね☆」

 

“ーーーーだと、良いんだけどね。・・・・それじゃ、私は『用事』を片付けくるよ。アヤネ達には、上手く言っておいてちょうだい”

 

「はい☆ 任せてください♧」

 

そうして、先生は教室を去った。

 

 

 

 

 

ーホシノsideー

 

「・・・・・・・・」

 

学校を出たホシノは、今まで見せた事のない険しい顔つきで、管理されていない筈の無人のビルへとやって来た。ビルのエレベーターは稼働し上へと登ると、ホシノは一室へと入った。

 

「これはこれは」

 

電気はつけていない、一つの窓から差し込む日差しだけしかないその一室の執務机から、一人の男が立ち上がり、ホシノに向かって声を発する。

 

「お待ちしておりましたよ、暁のホル・・・・いや、ホシノさんでしたね。これは失礼。いやいや、“〈キヴォトス〉にはまだ馴染めなくて”。こちらへどうぞ、ホシノさん」

 

不気味なその人物に、ホシノは若干の警戒と敵意を込めた声で問いかける。

 

「・・・・黒服の人、今度は何の用なのさ?」

 

そう、ホシノを呼びつけたのは、カイザーコーポレーション理事と話をしていた謎の人物ーーーー『黒服』であった。

『黒服』は含み笑いを発しながら、ホシノに話しかける。

 

「・・・・ふふ、状況が変わりましてね。今度は再度、『アビドス最高の神秘』をお持ちのホシノさんに『ご提案』をしようと思いまして」

 

「っ! 『あの子達』はもうアビドスから離れた! もう自由になったんだ! それに『提案』? ふざけるな!!! それはもう・・・・!!」

 

思わず声を荒げるホシノに、『黒服』は慇懃無礼な態度で話し出す。

 

「まあまあ、落ち着いて下さい」

 

「・・・・!?」

 

「・・・・お気に入りの映画の台詞がありましたね。今回はそれを引用してみましょう」

 

すると、『黒服』は再び執務机に腰掛け、両肘を机に立て、両手を胸元に重ねて、ホシノの顔を見上げる。

 

「あなたは、決して拒めないであろう『提案』を一つ。興味深い『提案』だと思いますので、どうかご静聴下さい」

 

「・・・・・・・・」

 

ホシノは喉が渇き、背中に冷たい物が広がるのを感じる。腰のモンスターボールからヤドキングと、『もう一匹のパートナー』が出ていこうとボールを揺すっており、ホシノは両手でボールを強く握り締めて止めた。

 

「ククッ、クックックックックッ・・・・」

 

『黒服』の不気味な笑い声だけが、この薄暗い一室に異様に響くのであった。




ホシノにはヤドキングの他に、もう一匹の相棒がいます。
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