ポケモンアーカイブ   作:BREAKERZ

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さぁ後半、行ってみよー!


〈アビドス〉に渦巻く陰謀

ー???sideー

 

『・・・・・・・・・・・・・・・・』

 

それは、アビドス自治区にやって来た。

アビドス高校の更に奥にある『アビドス砂漠』。今やそこを縄張りにしていた四匹の中の二匹、比較的に穏健な方のサダイジャとワルビアルがいなくなり、アビドス砂漠のポケモン達の中で狂暴で獰猛な二匹、ドラピオンとバンギラスが縄張りを二分する砂漠から、それはやって来た。

 

『・・・・・・・・・・・・・・・・』

 

しかし、それの瞳と身体には確かな疲労が色濃く出ているようで、ヨロヨロとした足取りで、アビドス自治区に向かっている。

意識があるのか無いのか分からないまま、それは宛もなく彷徨っていくと、砂漠に足を取られたそれは、身体のバランスを崩して、ゴロゴロゴロゴロとボールのように転がっていった。

 

『ウィィィィィィィィィィィィィ!!??』

 

普段なら転がる事に何の苦もないのだが、疲労困憊と空腹で意識が定まらない状態で意もしない状況に混乱してしまった。

そしてーーーー。

 

ーーーーズシャァァァァァァァァァンン!!

 

小高い砂丘に上がり、その勢いで砂地に落下して漸く停止したが。

 

『ル・・・・ファ〜・・・・』

 

完全に目を回して、アビドス高校近くで、それは気を失ったのであった。

 

 

 

 

 

ーアルsideー

 

ゲヘナ風紀委員会との激戦を終えた翌日。

アビドスの学校内にある倉庫にて、カタカタヘルメット団(気絶中)を見張っていた便利屋68は、今後について話し合っていた。因みにポケモン達もセンターで回復して戻って来ている。

 

「それでアルちゃん? このアビドスを出るの? ここにいる間は風紀委員会も襲ってこない、って風紀委員長自身がそう言ってたじゃん?」

 

「・・・・そんなの、風紀委員会にビビってアビドスに引きこもっているようなものじゃない。そんなの全然アウトローじゃないわ」

 

「それじゃ、アビドスを離れる? 風紀委員会にも見つかったし、依頼をキャンセルしたのを〈カイザーコーポレーション〉に知られれば、また面倒な事になるだろうし。いやもう知られてる可能性もあるか」

 

「・・・・はぁぁ〜・・・・」

 

『バフっ』

 

ムツキとカヨコにそう言われ、大きな溜息をつくアルの頭の上に、マフィティフが前足を置いて「元気出せ」と言っているように頭を撫でた。

このアビドスにもそれなりに愛着も湧いてきてるし、今の事務所も気に入っているから引き払うのは嫌なのだ。

しかし、ゲヘナ風紀委員会にアビドスにいる事がバレたと言う事は、万魔殿‹パンデモニウム・ソサエティー›のアホ議長‹マコト›に知られるのも時間の問題だし。悪名高い〈カイザーコーポレーション〉と戦う事を決めた以上、カイザーに居場所を知られている事務所に居続けるのも危険だ。

だが、引き払ったとしても、銀行の口座は風紀委員会によって凍結されているし、これまで稼いだお金もオニスズメの涙のようなものだ。引き払ったとしても前のような裏路地か河川敷かガード下でのテント生活が待っている。

そう思うと、気分がドンヨリ重くなってきて、アルはまた大きな溜め息を溢してくる。

 

「『あのカバン』のお金も、残り全部あのラーメン屋の修理代として置いてきたし。本当にこの社長は・・・・」

 

「う、うるさい! うるさい!」

 

「・・・・はあ。本当に、手のかかる社長だ」

 

『ニャン』

 

「でもこう言うのがアルちゃんだもんね? 一緒にいてスッゴク楽しい!」

 

『ウッホホ〜!』

 

「はい、私もそう思います! アル様! わ、私、アル様がいなかったらきっと今こうして生きていない筈なので・・・・元出して下さい! 私が一番尊敬しているのはアル様ですから!」

 

『マ〜タドガ〜ス』

 

これもひとえに、アルの持つ『世話焼きたくなる人望』が成せる事であろう。

そして、こんな社長だからこそついてきてくれる社員達に、思わずアルが大声を上げようとしたその時ーーーー。

 

ーーーーパッ、パッパー!

 

『んん??』

 

アビドスの校門前からクラクションが鳴り、何だ何だと便利屋が行ってみるとそこにはーーーー大型のキャンピングカーが停車していた。

 

「な、何これ!?」

 

“あっ、アル。良いところに来たね♪”

 

「せ、先生!?」

 

仰天しているアルに、運転席から先生とピカチュウが出てきた。

 

「先生、このキャンピングカー、どうしたの?」

 

“うん。実はこの前(アロナと)暇つぶしに応募した抽選で当たっちゃってね。貰ったのは良いけど〈シャーレ〉に置いておく訳にはいかないから、便利屋の皆に処分してもらおうと思ったんだ”

 

『えぇーっ!? 処分ーっ!?』

 

便利屋は先生の言葉に驚き、キャンピングカーの内装から車の状態まで細かく調査した。

運転席と助手席は180°回転し、後ろにある椅子や、四人は座れるソファと、小さなテーブルがあり、奥のキャンピングカーの中では広々としたキッチンとシャワーとトイレ。さらに奥には六人は寝られる大きめのベッドまである。状態もサビが無く、外装やタイヤにホイールも頑丈で、ほぼ完全に新車同然のキャンピングカーであった。

 

「あわ、あわわわわ、あわわわわわわわ・・・・!」

 

「〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」

 

あまりにも立派過ぎるキャンピングカーに、アルとハルカは言語力を失ってしまっていた。

 

「うっわ! このキャンピングカー、普通は三千万円以上もする高級キャンピングカーだよ!!」

 

「「ぶくぶくぶくぶくぶくぶく・・・・!!(バタンっ!)」」

 

『バフっ(ペチペチペチペチペチペチ)』

 

『マタドガス〜』

 

ムツキの言った金額に、今度はアルとハルカは白目を剥いて泡を吹き出して失神してしまい、マフィティフがペチペチとアルとハルカの頬を張り、ガラルマタドガスが二人の精神安定の為にリラックス効果のある匂いを噴射する。

 

「社長。ハルカ。早く正気に戻りなよ。それで先生? このキャンピングカーを私達に処分して欲しいって?」

 

“ーーーー私にはキャンプ道具とか揃ってるし、移動にはミライドン‹ライドポケモン›がいるから必要性がないんだ。でも処分したくても、今はアビドスでやらなきゃならない事が多くて時間がないからね。だから、便利屋の皆に依頼しようと思ったんだ。運転できる?”

 

「・・・・まぁ、私と社長は大型の免許を持ってるけど、処分って私達に任せて良いの?」

 

“うん。私の代わりに所有者にしておくから、売ってお金にするのも良いし。自分達で使うのも良いし。皆の好きに使って良いよ”

 

「やったねアルちゃん♪ このキャンピングカー、私達が使って良いって☆」

 

ムツキに笑いながら言うと、漸く回復したアルがヨロヨロと起き上がる(ハルカはまだ失神中)と、キリッとした顔で先生に言う。

 

「そ・・・・そうね、でも・・・・先生、私達は先生と協業する事にしたわ。でも、手付け金は受け取らないわよ。金ではなく物であったとしても」

 

自分のアウトローの美学を重んじるアルは、必死に強がりながらそう言った。先生はそれを見てニコリと微笑み。

 

“私は、アルや皆が、自分のやりたい事を頑張って欲しい。それにこれは『依頼』だから、『手付け金』じゃないよ。皆が好きにして良いんだ”

 

「・・・・・・・・」

 

“・・・・・・・・・”

 

「・・・・ふっ」

 

アルは先生の目を見ると、フッと笑みを浮かべ、バッとコートを翻した。

 

「そう言う事なら仕方ないわね! 先生の『依頼』として、このキャンピングカーの処分は私達、便利屋68が責任を持って執り行うわよ!」

 

“依頼料は今は手持ちが無くて、キャンピングカーの中にある物で何とかならないかな?”

 

「うわっ! アルちゃん! カップ麺や保存食、それにポケモンフーズや弾薬や薬とかがいっぱい詰め込まれてるよ!」

 

「何ですって!!??」

 

アルも慌ててキャンピングカーに入り、またキャンピングカーの内装の豪華さに一瞬目眩いがしたが、すぐに立て直して見ると、確かに弾薬と薬と食料とポケモンフーズが置かれていた。

 

「・・・・これだけあれば一ヶ月、節約すれば二ヶ月は保つね」

 

“依頼料の代わりになるかな?”

 

「・・・・フフッ、フフフ。先生」

 

“ん?”

 

アルが肩で笑いながら先生に振り向く。

 

「この依頼、承ったわ!」

 

アルが了解を示し、後は色々とキャンピングカーの手続きをして、所有者を便利屋68にし、漸くハルカも復活すると、カヨコが運転するキャンピングカーに乗り込んだ。

 

“それじゃ皆。『最初の依頼』の方も、お願いね?”

 

「任せておいて、各学区のブラックマーケットでなら、色々噂があるかも知れないし」

 

「先生。対策委員会の子達に伝えておいてくれる? 『負けるんじゃないわよ』、って」

 

“うん伝えるよ”

 

「じゃあね先生〜♪ また遊ぼうね〜☆」

 

「お、お世話になりました・・・・」

 

そう言って、便利屋68の乗るキャンピングカーは、アビドス高校を離れて行った。

 

「ーーーーそれじゃ先ず最初に事務所の後片付けね!」

 

「アルちゃんが書いた『一日一悪』って掛け軸も持っていくの?」

 

「当然!」

 

「か、カッコ良いですものね・・・・」

 

「あっ社長。今事務所の管理人から、家賃滞納してるからすぐに退居しろって連絡が来たよ」

 

「な、何ですってぇぇぇぇ・・・・」

 

愉快な会話が繰り広げながら、便利屋の乗るキャンピングカーは去って行った。

 

《ーーーー良かったんですか先生? 折角のキャンピングカーを?》

 

“(私にはあまり必要ないからね。生徒達の役に立てるなら、それに越した事はないよ)・・・・さてと、ヘルメット団の子達に、色々と聞かなくちゃね”

 

『ピカ』

 

『シッテムの箱』のアロナにそう伝えると、先生とピカチュウは倉庫にいるヘルメット団へと向かった。

余談だが、便利屋68を探しているアビドス自治区にあるカイザーや、アビドス自治区の外に展開されている万魔殿‹パンデモニウム・ソサエティー›やゲヘナ風紀委員会やヤミカラスの監視の目は、便利屋が乗るキャンピングカーを見つけるが「あの貧乏な便利屋が、こんな立派なキャンピングカーを持っている訳ないな」と思われて、そのままアル達はアビドス自治区から何の苦も無く、安全に離脱する事ができたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

ーアヤネsideー

 

そしてここはポケモンセンターの病室。紫関ラーメンの大将とウソッキーが仲良く入院していると、アヤネとセリカと、ヘルメット団への質問を終え、見張りをノノミに任せた先生もやって来た。

 

「こんにちは、大将。ウソッキー。お見舞いに来ました」

 

『ビブラー♪』

 

「大将、ウソッキー、大丈夫?」

 

『ウォウォ?』

 

「やあ、セリカちゃんにウォーグル。それにアヤネちゃんにビブラーバに先生にピカチュウも、こんな早い時間にありがとう」

 

『ソッキー♪』

 

“お体はどうですか?”

 

『ピカチュウ?』

 

「ああ、先生まで。俺はちょっと擦りむいただけだ。ウソッキーももう殆ど回復したからな」

 

『ソッキー♪』

 

大将が言うと、ウソッキーはもう大丈夫だと示すように踊り出した。

 

「・・・・でも・・・・大将のお店が・・・・」

 

「ああ、バイトができなくなっちゃってごめんな、セリカちゃん。ウォーグル」

 

「そう言う問題じゃないわよ・・・・」

 

『ウォ〜・・・・』

 

ほぼ自分達のイザコザに巻き込んでしまって、セリカとウォーグルは申し訳ない気持ちになる。

が、大将はやれやれと肩を竦める。

 

「まぁ、そもそも、もうすぐ店を畳む予定だったからな。予定がちょっと早くなっただけだ。な、ウソッキー?」

 

『ソッキー』

 

大将の言葉にウソッキーはコクンと頷いた。

しかし、意外な言葉に全員が目を見張る。

 

「お店をですか・・・・?」

 

「ああ。ちょっと前から『退居通知』を受け取ってね」

 

「た、『退居通知』って、何の話ですか? アビドス自治区の建物の所有権は、アビドス高校で・・・・」

 

「・・・・そうか、君達は知らなかったんだな」

 

アヤネの疑問に、大将は溜め息交じりに応えた。

 

「・・・・何年か前、アビドスの生徒会が借金を返せなくて、建物と土地の所有権が移ったんだ」

 

「えっ!?」

 

「う、嘘!? アビドスの自治区なのに!? じゃあ今は一体誰が!?」

 

それはつまり、対策委員会が返済している以外にも借金があったと言う事である。アヤネとセリカが戸惑っていると、先生が思い当たる名を呟いた。

 

“・・・・〈カイザーコーポレーション〉、ですか?”

 

「うーん・・・・そんな名前だったような気もするが・・・・悪いな、はっきり覚えてねえや」

 

「そんな・・・・でも、そう言う事なら・・・・」

 

アヤネが顎に手を当てて思考を巡らせると、神妙な顔となって、セリカと先生に目を向けた。

 

「セリカちゃん、先生。皆さんは先に学校へ戻ってきて下さい。私とビブラーバは確認したい事があるので、ちょっと別の所に寄ってから行きます」

 

『ビブ!』

 

「ん、何の事? 良く分からないけど・・・・私達も行く!」

 

『ウォ〜!』

 

「では先生は学校に戻っていて下さい! 私達もすぐに戻りますので!」

 

“・・・・分かった。私も伝えたい事があるから、待ってるね”

 

「大将、まだ引退とか考えないでよ! 分かった!?」

 

「お、おお・・・・あっ、そうだセリカちゃん最後に、お店の所に大金が入った変なカバンがあったんだけど、何か知ってるかい?」

 

『ソッキー!』

 

ウソッキーがベットの下から出したそのカバンを見た瞬間。

 

「「あ"・・・・!?」」

 

『ビブラ!?』

 

『ウォッ!?』

 

アヤネとセリカ、ビブラーバとウォーグルは顔を青ざめ、目を逸らした。何故ならそれはーーーー『覆面水着団』が闇銀行から奪ったお金が入ったカバンだったからだ。

先生が中身を見てお金を数えると、少し無くなっていたが、間違いなくあの時のお金であった。

そして先生は、にこやかな笑みを浮かべて、大将に言う。

 

“きっとお店の再建の為に、心優しい人が置いて行ってくれたんですよ”

 

「お、おお?」

 

先生の説明に便乗して、セリカとアヤネも口を開く。

 

「そ、そうよ! 大将! これは善意の第三者からだよ!」

 

「そ、そうですよ! これは紫関ラーメンを再開する為に使っていいと思います!」

 

『『(コクコクコクコクコクコク!!)』』

 

“このお金をくれた人達は、きっと紫関ラーメンの味に感動したんだと思いますよ?”

 

『ピカピカ!』

 

その言葉に、大将とウソッキーは涙ぐんだ。

 

「グスッ・・・・なんてこったい。だとしたら、ラーメン屋冥利に尽きるってもんだ。なぁ、ウソッキー」

 

『ウソウソ〜!!』

 

ウソッキーも目をウルウルさせる。

 

「俺はただ、腹が減ったお客さんに美味いラーメンをたらふく食ってもらいたい、そう思って頑張ってきたからよ・・・・!!」

 

『ソッキ〜!!』

 

ウソッキーは男泣きで号泣した。

 

「皆、大将のラーメンを待っていますから」

 

“早く元気になって、お店立て直しましょう”

 

「そしたらまたアルバイトとして雇ってよ、大将?」

 

「応よ! 任せておけ! 再開したら真っ先にたらふく食べさせてやらあ!」

 

『ソッキー!』

 

「うん! 楽しみにしてる!」

 

『ウォーッ!』

 

そう言って、漸く大将にウソッキー、セリカにウォーグルが笑顔を浮かべた。

 

「ーーーーそれじゃ・・・・行こう、セリカちゃん!」

 

「ーーーーうん! 何処に行くのか分かってないけど・・・・先生、また後でね!」

 

そして、顔を引き締め直したアヤネがそう言うと、セリカも真面目顔に戻り、病室を去って行った。

 

「・・・・先生」

 

“はい?”

 

「あの子達の事、頼んで良いかい? 俺にできる事は、あの子達に美味いラーメンを作って、腹一杯にしてやる事くらいしかできないが、先生だったら、それ以上の事をしてあげられると思うんだ。ーーーー頼む」

 

『ソッキー』

 

大将とウソッキーが、ペコリと頭を下げる。

 

“大将のラーメンだって、対策委員会の皆の元気の元になっている筈ですよ”

 

「・・・・そうかい?」

 

“そうですよ。だから、私も、また大将のラーメンやウソッキーの餃子、楽しみにしていますから”

 

『ピカピカ♪』

 

「へっ、ありがとうよ先生。そう言や、あの便利屋の子達はどうしたんだい?」

 

“彼女達は、少しこの街を離れるそうだけど、大将のラーメンをまた食べに行くって言ってました”

 

「そうかいそうかい。それじゃ、ちゃっちゃと身体を治すぞウソッキー!」

 

『ソッキー!』

 

そう言って、大将とウソッキーは身体を休め。

先生とピカチュウは笑みを浮かべて、病室から去って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

先生とピカチュウがミライドンに乗ってアビドス高校に戻ると、ノノミとサイドンが出迎えた。

 

「あれ、先生? 思ったより早かったですね☆」

 

“ノノミの方はどうしたの? ヘルメット団は?”

 

「あ、はい。丁度ホシノ先輩が尋問を終えて、ヤドキングが【あくび】を使って皆ぐっすり眠っちゃってますよ☆ 大将とウソッキーは、大丈夫でしたか・・・・?」

 

“・・・・身体の方は大丈夫だった。二人とも、早く身体を治して、店を再開するって張り切っていたよ”

 

先生がそう言うと、不安そうにしていたノノミの顔が、ホッとしたような顔となった。

 

「・・・・そうでしたか、それは良かったです☆ この目でご無事を確認したい気持ちもありましたが、大勢で押し掛ける訳にもいけませんし、ヘルメット団の見張りもしておかないと、後で風紀委員会の方達に引き渡す前に逃げられちゃいますからね・・・・」

 

呑気に見えて、ノノミは案外とその辺はしっかりしているのだ。

 

「落ち着いたら、シロコちゃんとホシノ先輩と一緒に伺うとしましょう。ですが、『身体の方は』と言う事は・・・・」

 

ノノミが表情を少し曇らせて問いかける。

 

「それ以外の所で、問題があった・・・・と言う事でしょうか?」

 

“・・・・ノノミには敵わないね”

 

先生が降参を示すように両手を上げると、ノノミも苦笑した。

 

「あはは・・・・何となく、そう思っただけです。セリカちゃん達とアヤネちゃん達と一緒だった筈なのに、戻って来たのは先生達だけでしたので・・・・そこには何か、理由があるのかな、と。・・・・気になりますが、今はその時ではありませんね。また後程、皆で集まった時にでも教えていただけると嬉しいです」

 

先生はノノミはまるで対策委員会のお母さんみたいだなぁ、と思った。

 

“そうだね、その時にまた”

 

「・・・・・・・・」

 

すると、ノノミは妙に思い耽ったような顔で先生を見ていた。

 

「まだそんなに経っていないのに・・・・思えば、先生がいらっしゃった頃から、急激に色々な事が変わった気がします。勿論、沢山の良い事が、嬉しい事がありました。初めて顧問の先生ができて、ヘルメット団も追い払う事ができて・・・・補給も確保できて、色々な問題を乗り越える事ができました。なのに・・・・次々に色んな事が、私達の前に立ちはだかって・・・・」

 

ノノミは辛そうな顔になってしまう。

 

「ヘルメット団、便利屋68、ゲヘナ風紀委員会・・・・それに、〈カイザーコーポレーション〉・・・・次は何が来るんでしょうか?」

 

良く考えれば、うんざりしてしまうような相手ばかりだ。良くこの少人数で立ち向かわなければならないと思う。ノノミの気分がネガティブになるのも仕方ない。

 

「・・・・・・・・」

 

“ノノミ・・・・”

 

心配そうに声を掛ける先生に、ノノミは笑みを浮かべた。

 

「すみません。暗いお話をしてしまいました。それでも私達はアビドスの為に進むしかありませんし・・・・先生も、一緒にいて下さいますよね?」

 

“勿論。当たり前だよ”

 

ノノミが先生の手をそっと握ると、先生も笑みを浮かべてその手を握り返すと、ノノミの笑顔が明るくなった。

 

「ありがとうございます! 先生にそう仰っていただけると、心強いです」

 

『ピカ〜』

 

『サイサイ〜』

 

それを見て、サイドンと、その頭の上に乗ったピカチュウがにこやかに笑っていた。すると、ロードバイクに乗ったシロコと、その隣で走っていたルガルガンが登校してきた。

 

「先生、ノノミ」

 

『ルガル!』

 

「あ、シロコちゃんとルガルガンも早かったですね?」

 

「うん・・・・ホシノ先輩は?」

 

「ホシノ先輩は多分、また学校の何処かでお昼寝の最中かと・・・・」

「・・・・そっか」

 

シロコはそれを聞くと、眉根を寄せながら少し考えるような素振りを見せると、先生に顔を向ける。

 

「・・・・先生、大将の容体は?」

 

“大将は・・・・”

 

「大将は、身体の方は無事だったそうです☆」

 

が、先生の言葉を遮るように、ノノミが声を張り上げる。

 

「・・・・ただ、それとは別に色々とあるそうでして、皆が集まったから、改めてその辺りの話を聞いて見ましょう」

 

「・・・・うん、分かった」

 

そう言うが、シロコは何やら難しい顔を浮かべて、校舎に向かった。

 

「・・・・じゃあ、先に入ってるね。行こうルガルガン」

 

『ガル』

 

シロコとルガルガンが校舎に入っていった。

 

「・・・・? シロコちゃん、何だかちょっと・・・・」

 

『ドン?』

 

“・・・・ちょっと変、かも?”

 

『ピ〜カ?』

 

ノノミもシロコの様子がいつもと違うのに、訝しそうに見て、先生も首を傾げていた。

 

「やっぱり、先生もそう思います? 何でしょう? ちょっと不安そうと言いますか、焦っていると言いますか・・・・気のせいだと良いのですが・・・・」

 

“・・・・私達も、中に入ろう”

 

「は、はい」

 

そう言って、先生達は校舎へと入っていった。

そして少し歩くと。

 

ーーーードンッ!

 

ーーーーバタンッ!

 

何やら向こうで激しい音が廊下にまで響いていた。そして次に、ホシノの声が響く。

 

ーーーーいたた・・・・痛いじゃ〜ん、どしたのシロコちゃん。

 

ーーーー・・・・いつまでしらを切るつもり?

 

ーーーーヤドキン〜!

 

ーーーーガルルルル!

 

ーーーードガドガドガドガ!!

 

「!!? 今の音は」

 

廊下にまで聞こえるホシノとシロコの揉める声が聞こえ、更にヤドキングとルガルガンが争っているような音が響き、ノノミがビクッと肩を震わせ、音がした教室へと急いで向かった。

 

 

 

 

 

ーシロコsideー

 

その教室にでは、シロコがホシノに詰め寄り、ルガルガンが倒れたヤドキングの上に乗っかっていた。

 

「うへ~、何の事を言ってるのか、おじさんには良く分からないな〜・・・・?」

 

「・・・・・・・・嘘つかないで」

 

「嘘じゃないって〜・・・・ん?」

 

ホシノが目を向けると、ノノミと先生が教室に入ってきた。

 

「ホシノ先輩! シロコちゃん!? どうしたんですか!?」

 

“・・・・どうしたの?”

 

「ん、その・・・・」

 

ノノミと先生を見て、シロコはバツの悪そうな顔をした。

 

「一体、何があったんですか・・・・?」

 

「・・・・ホシノ先輩、用事があるの」

 

「・・・・・・・・」

 

シロコはホシノをジロリと見ると、ホシノは素知らぬ顔をする。

 

“・・・・ルカリオ”

 

『(ポンッ)ルォ』

 

“ルガルガンをヤドキングから降ろして”

 

『カルゥ(ヒョイっ)』

 

『ルガ!?』

 

ルカリオがルガルガンの首根っこを片手で掴んで、ヤドキングから降ろさせると、ヤドキングはのんびりと立ち上がった。

 

「・・・・悪いけど、私達だけにして」

 

「う~ん、それはダメです☆」

 

ノノミが両手で✕を組んだ。

 

「・・・・・・・・」

 

「対策委員会に『二人だけの秘密♡』みたいなものは許されません。何と言っても、運命共同体ですから」

 

「・・・・でも、」

 

「ですので、キチンと状況を説明してくれない悪い子には・・・・お仕置き☆ しちゃいますよ?」

 

ノノミが表面上はにこやかに笑みを浮かべながらシロコに詰め寄った。

 

「う、うーん・・・・」

 

「・・・・えっとねぇ」

 

これは暗に、何か隠し事をしているホシノにも言っているように見えた。

流石のシロコも返答に困っていると、ホシノが口を開く。

 

「・・・・実はおじさんがこっそりお昼寝してたのがバレちゃったんだよね〜。私の怠け癖なんて、今に始まった訳じゃないと思うけど、おじさんもここ最近ちょ〜っと寝過ぎだったかも。まあ、それで少しばかり叱られちゃっのさ〜」

 

「あ、う、うん・・・・」

 

「にしたって、そんなに怒らなくても良いのに〜。シロコちゃんは真面目だなあ」

 

明らかに嘘を吐いているような感じだが、シロコも同意するように頷いた。

 

「ま、人にはそう言う時もあるよね〜。そろそろ集まる時間だし、行こっかー」

 

そう言って、ホシノはヤドキングを連れて教室を出ていった。

 

「・・・・ん・・・・」

 

シロコも同意し、ルカリオから解放されたルガルガンを連れて教室を出ていった。

 

「・・・・・・・・」

 

『ドンドン・・・・』

 

“ノノミ、大丈夫?”

 

「はい。私は大丈夫です。・・・・何か言いたくない事があるみたいですね」

 

明らかに、ホシノが何か『隠し事』をしている事を察しているノノミが、何処か寂しそうな顔をしていたので、サイドンと先生が話しかけると、苦笑を浮かべて応えた。

 

「・・・・ふぅ。仕方ありませんね。誰しも言いたくない『秘密』の一つや二つくらい、持っているものでしょうし・・・・。私達も行きましょうか。そろそろ皆帰ってきてるかも知れません」

 

そう言って、ノノミとサイドン、先生とピカチュウとルカリオも、対策委員会の教室へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、その教室に入ってみるとーーーー。

 

「うへ~・・・・」

 

『ヤド〜・・・・』

 

「・・・・・・・・」

 

『・・・・・・・・』

 

「・・・・・・・・」

 

『・・・・・・・・』

 

“(気まずい・・・・)”

 

『(ピィカ〜・・・・)』

 

『・・・・・・・・』

 

まだセリカとアヤネは帰っておらず、さっきの今なので、教室に気まずい空気が充満していた。

その時、窓をカンカンと叩かれて見てみると、ウォーグルに乗ったセリカとアヤネとビブラーバがいた。ルカリオが窓を開けると、四人はすぐに教室に飛び込んでくる。

 

「先輩達、大変! これ見て!」

 

「アビドス自治区の関係書類を持ってきました! これを・・・・・・・・?」

 

「・・・・あれ?」

 

『ウォ?』

 

『ビブ?』

 

と、鞄から書類の束を出したアヤネとセリカだが、妙な空気に包まれている事に気付き、ウォーグルとビブラーバと共に首を傾げる。

 

『・・・・・・・・・・・・・・・・』

 

「・・・・な、何、この雰囲気?」

 

「何かあったんですか・・・・?」

 

重苦しい空気を読んで、セリカとアヤネが戸惑い、先生に問いかける。

 

“取り敢えず今は大丈夫。おかえり、皆”

 

「・・・・うん、ただいま? い、いやそれよりも! とんでもない事が分かったの!」

 

「はい、衝撃の事実です・・・・! 皆さん、先ずはこれを見て下さい!」

 

漸く本題に入ろうとするセリカ達。アヤネが折り畳まれた紙を取り出し広げるとそれはーーーー。

 

「ん〜、これって・・・・地図?」

 

 

「直近までの取引が記録されてる、アビドス自治区の土地の台帳・・・・『地籍図』と呼ばれる物です」

 

「土地の所有者を確認できる書類、と言う事ですか・・・・? でも書類なんて見なくても、アビドスの土地は当然アビドス高校の所有で・・・・」

 

ノノミが先程のアヤネとセリカのような事を言いそうなるが、セリカ達が遮る。

 

「私もさっきまでそう思ってた! でもそうじゃなかったの!」

 

「お見舞いへ行った時に、大将から話を聞いたんです。紫関ラーメンが入っている建物は勿論の事、このアビドス自治区の殆どが・・・・」

 

一旦区切ってから、息を整えて話を始める。

 

「・・・・私達の学校が保有している事に、なってませんでした」

 

「えっ・・・・!?」

 

流石にホシノも、真面目な顔となって驚き立ち上がる。

 

「・・・・どういう事? アビドス自治区がアビドスの所有じゃないって、そんな訳・・・・」

 

ホシノはそう言って書類の束を手に取り、シロコとノノミと共に書類をめくって目を走らせる。

 

「・・・・これって、」

 

「現在の所有者は・・・・」

 

ホシノとノノミの言葉をアヤネが口にする。

 

「『カイザーコンストラクション』・・・・そう書かれています」

 

ーーーー『コンストラクション』。つまり、カイザーコーポレーション系列の建設会社だと言う事。

 

「・・・・!!」

 

「そんな・・・・!?」

 

「・・・・っ!?」

 

ホシノ達が驚きに目を見開いた。

 

 

 

 

 

 

ー先生sideー

 

“・・・・・・・・(アロナ)”

 

《はい先生!》

 

“(これから私達は砂漠に向かうだろう。それで、〈連邦生徒会〉にいるリンちゃんに・・・・)”

 

対策委員会先生はこっそりと、『シッテムの箱』のアロナに指示を送った。

 

《了解しました! すぐに連絡して、準備します!》

 

アロナが元気良く応えた。

 




便利屋68は、先生から大型キャンピングカーを貰い、原作よりも多少マシな生活を送っています。
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