ポケモンアーカイブ   作:BREAKERZ

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遂に初めてしまった。
後悔はない。
先生のパートナーは勿論あの子。


プロローグ・赴任
銃を持つ少女達と不思議な生き物達の世界


ーーーー『我々は望む、七つの嘆きを』

 

ーーーー『我々は覚えている、ジェリコの古則を』

 

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『『シッテムの箱』へようこそ、先生』

 

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

 

 

目を覚ましたのは電車の座席だった。自分の目の前の座席に、一人の少女が座っていた。

窓の外の景色がゆっくりと流れていくのを、自分はただ、“膝の上で傷だらけになって眠る『相棒』”に手を優しく乗せながら眺めていた。

ふと下を見ると、“これまで共に苦難を乗り越えた『仲間達』”が、『相棒』と同じく、傷だらけで死んだように眠っていた。

 

【・・・・私のミスでした】

 

彼の対面に座る少女。その少女がポツリと呟いた。

 

【私の選択、そしてそれによって招かれた全ての状況】

 

傷だらけで、白い服に血が流れている少女が言葉を発する。

 

【結局、この結果に辿り着いて初めて、あなたの方が正しかったことを悟るだなんて】

 

少女の後悔に満ちた言葉を、『自分』は黙って聞いていた。 何が正しい選択だったかなど、『自分』には分からない。ただ、全てが過ぎ去った今、言える事がある。

 

【私の選択、そしてそれによって招かれたこの全ての状況】

 

目の前にいる少女は。

 

【結局この結果に辿り着いて初めて、あなたの方が正しかったことを悟るだなんて・・・・】

 

悲嘆と絶望に染まったこの少女は。

 

【・・・・今更図々しいですが、お願いします】

 

この少女はーーーー。

 

【・・・・先生】

 

自分の『生徒』であると。

 

【きっと私の話は忘れてしまうでしょうが、それでも構いません】

 

『生徒』の彼女は、自分を見つめる。

 

【何も思い出せなくても、おそらくあなたは同じ状況で、同じ『選択』をされるでしょうから・・・・】

 

悟ったように語る少女。

 

【ですから・・・・大事なのは『経験』ではなく、『選択』】

 

少女は伝える。

 

【あなたにしか出来ない『選択の数々』】

 

その時一瞬だけ、自分の脳裏に、多くの情景と、女の子達の姿が過った。

 

【『責任』を負う者について、話したことがありましたね】

 

ピクッと、自分の『相棒』と『仲間達』の身体が動く。

 

【あの時の私にはわかりませんでしたが・・・・今なら理解できます】

 

ゆっくりと、ヨロヨロと、だがしっかりとした足取りで、立ち上がろうとする。

 

【『大人』としての、『責任と義務』。その延長線上にあった、あなたの『選択』】

 

立ち上がった『相棒』と『仲間達』が、自分の周りに集まっていく。

 

【それが意味する心延えも】

 

自分を守るように立つ『相棒』と、集まった『仲間達』がジッと『生徒』を見据える。

 

【・・・・・・・・】

 

それを見て、安心したような息を吐く少女。

 

【ですから、先生】

 

『生徒』がそれを見て、何処か小さく笑みを浮かべる。

 

【私が信じられる大人である、あなたになら】

 

『生徒』の後ろの窓から、『何か』が現れた。

 

【この捻れて歪んだ終着点とは、また別の『結果』を・・・・】

 

薄い桃色の体色で、足と尻尾が長く頭部には耳と思われる二つの小突起を持った『相棒』と同じくらいの大きさをした『生き物』。

 

【そこへ繫がる『選択肢』は・・・・きっと見つかる筈です】

 

その『生き物』も、自分を見て笑ったように見えた。

 

【だから先生、どうか・・・・】

 

【・・・・ミュー・・・・】

 

その言葉を最後に、自分の意識は途切れた・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

 

「・・・・せい・・・・」

 

鋭い声がした。女性の声だ。

 

“ぐぅ・・・・”

 

『ピィ・・・・』

 

「・・・・先生。起きてください」

 

“・・・・う〜ん・・・・もう少し、あとちょっとで新作サンドイッチのアイデアが・・・・”

 

『ピカ・・・・ピィ・・・・(ジュルリ)』

 

「先生!」

 

“わひゃぁっ!!”

 

『ピカァッ!?』

 

そう呼ばれて飛び起きる一人と一匹。

 

“・・・・おはようございます?”

 

「・・・・おはようございます。お疲れだったようですね。中々起きない程に熟睡されるとは」

 

『エーフィ・・・・』

 

『ブラァ・・・・』

 

目の前には長い黒髪に耳の尖った、頭の上に光輪を浮かべた眼鏡をかけた女性が立っていた。服装は、白を基調として差し色に群青を取り入れられ、肩章や金ボタンが付いており、群青のネクタイを締めている規律正しい制服。なのだが、妙に身体にピッチリとしており、大きな胸元と抜群のスタイルを見て取れて、目の保養にも毒にもなる。

その女性の足元には、薄いピンクの体毛に、細くしなやかな体躯に二又に分かれた尾を持ち、額には赤い宝石を付けた四足の猫のような生き物と、赤い瞳と楕円体の耳や尻尾を持ち、全身が漆黒の体毛で、あちこちに黄色いリング状の模様がある生き物だった。

少し呆れたような顔をした女性と二匹を見て、ふと濡れた感覚のする方へ目をやると、袖がヨダレで湿っていた。

 

“・・・・なんか大切で、重要な夢を見ていた気がする”

 

「・・・・サンドイッチの事だと思います。ちゃんと目を覚まして、集中してくださーーーーあっ、『エーフィ』、『ブラッキー』、いけませんよ」

 

『エーフィ』

 

『ブラブラ』

 

『ピカァ? ピッカァ♪』

 

女性の足元にいた二匹が前に出て、自分の『相棒』と会話をしているようだった。女性は二匹を下がらせると、コホン、と咳払いをする。

 

「もう一度、改めて今の状況をお伝えします。よろしいですか? 『先生』?」

 

“よろしくお願いするよ。本当に何もわかってないものでね。さ、聞こうか?ーーーー『ピカチュウ』”

 

『ピカチュウ!!』

 

『先生』と呼ばれた自分は、足元にいた黄色い体が特徴的で、長い耳の先端は黒く、背中は茶色い横線が二本走り、手足が短く、稲妻のような尻尾をし、愛くるしい顔の両頬には赤い◯を付けた可愛らしい『相棒』、『でんきねずみポケモン・ピカチュウ』に手を差し出すと、ピカチュウはその手を伝って肩に乗り、嬉しそうに笑みを浮かべた。

女性は改めて、コホン、と咳払いをして話し出す。

 

「・・・・では。まず、私は『七神リン』。学園都市『キヴォトス』の〈連邦生徒会所属〉の幹部です。こちらの二匹は私の『パートナー』である『エーフィ』と『ブラッキー』です」

 

『エーフィ!』

 

『ブラッキー!』

 

女性、リンは自己紹介し、『たいようポケモン・エーフィ』と『げっこうポケモン・ブラッキー』もペコリと頭を下げた。

 

“つまり、『リンちゃん』は私の生徒という事で良いんだよね?”

 

「そうですね。私たちが呼び出した先生ですから。・・・・そう、その筈なのですが。私も生徒がここに来た経緯は詳しくは知りまーーーーって、ちょっと待ってください。何故いきなり『リンちゃん』って呼ぶのですか?」

 

“えっ? そっちの方がカワイイと思ってね。ね、ピカチュウ?”

 

『ピカピカ♪』

 

『フィフィ!』

 

『ブラッブラッ!』

 

『リンちゃん』呼びに不満があるように半眼で言うリンだが、先生だけでなく、ピカチュウや二匹の『パートナー』まで同意するように頷くのを見て、ハァ、と溜息を吐いてから、再三コホン、と咳払いをし、先生も改めて問い掛ける。

 

“・・・・呼び出した、のに知らないの?”

 

「はい。・・・・混乱、されますよね。分かります。こんな状況になってしまったこと、遺憾に思います。でも今は取り敢えず、私についてきてください。どうしても、先生にやっていただかなくてはいけない『仕事』があります」

 

“『仕事』、か・・・・。色々と細かい事は今は置いておこう。でも、一体どんな『仕事』なのかな?”

 

「・・・・『学園都市』の命運をかけた大事な事・・・・と言う事にしておきましょう」

 

“ーーーー『命運をかける』、か。随分と大仰だね?”

 

「・・・・取り敢えず、此方へ。エレベーターで一階に向かいます。見せたいものもありますから」

 

先生はピカチュウを肩に乗せ、何個かの『ボール』を懐に入れて、リンに連れられるままエレベーターに乗る。

ガラス張りのソレから、都市が見える。

 

“うわぁ〜・・・・!”

 

『ピカァ〜・・・・!』

 

「『キヴォトス』へようこそ、先生。ピカチュウさん」

 

眼下に広がる太陽に照らされた巨大な都市を見下ろしながら、先生とピカチュウは感嘆の声を上げた。

 

“これは・・・・素晴らしい景色だね”

 

「ーーーーそう言っていただけると嬉しいですね。ここ、『キヴォトス』は数千の学園が集まって出来ている巨大な『学園都市』です。これから先生が働くところでもあります」

 

“この規模の学園に都市となると、色々な『生徒』や多くの『ポケモン』がいるんだろうね”

 

「はい。『この世界』に存在する不思議な不思議な生き物、『ポケットモンスター』、縮めて『ポケモン』。私達にとっては大事な『パートナー』です」

 

リンは足元にいるエーフィとブラッキーの頭を優しく撫でると、二匹は心地良さそうな顔をしていた。

 

「ーーーーきっと先生がいらっしゃった所とは色々と違っていて、慣れるのに苦労するだろうと思いますが、あの『連邦生徒会長』がお選びになった方ですから、大丈夫だと思います」

 

“その『連邦生徒会長』は一体何処に?”

 

先生がそう問うと、リンは微かに顔を俯かせる。

 

「ーーーーそれは後でゆっくり説明することにして。着きましたよ。一階」

 

『一階・レセプションルーム』。訪問客を迎えるその場所は、多くの人が集まり、大きな喧騒を生んでいた。

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

リンは隠しきれない苛立ちと共にその光景を見ている。

 

「・・・・いつもこうでは、ないんですよ、先生」

 

“・・・・もう少し、肩の力を抜いたほうが良いよリンちゃん。深呼吸した方が良いよ?”

 

「・・・・いえ、大丈夫です。行きましょう。目的地はまだまだ遠いので」

 

“そうなの?・・・・ところで、ここに居る子達は皆が『生徒』、と言う事なのかな?”

 

「そうですね。この部屋にいる方々はそうです」

 

そう言って、スタスタ歩いていると。

 

「ちょっと待って!」

 

一人が此方を、リンを見つけて近付いてくる。シンプルな丸い黒輪を頭の上に浮かべ、腰まで伸ばした菫色の髪をツーサイドアップにし、同じ色の瞳をし、白いジャケットに黒いブレザー、腰には予備のマガジンを収めたベルトと『ポケモン用のボール』、両手にはハーフグローブを嵌めてサブマシンガンを携行しているその生徒は、少し怒気を浮かべながら叫ぶ。

 

「代行! 見つけた! 待ってたわよ! 連邦生徒会長を呼んできて!」

 

『サナ・・・・!』

 

声を荒げる『生徒』の後ろで、緑色の短髪ような頭部に、背中を貫通する赤色の器官が特徴的な美しいポケモンが羽交い締めして抑えていた。

 

『サナサー!』

 

「離して『サーナイト』! 今日と言う今日こそは!・・・・うん? 代行、隣の大人の方は?」

 

と、先生と目が合ったので尋ねて来るが、それに答えるより速く、新たな女性が前に出る。

 

「ーーーー首席行政官。お待ちしておりました」

 

『カモッ』

 

ボルトアクション式のスナイパーライフルを携えた、長い黒髪で黒い羽の生えた黒い制服に、とても学生とは思えない位に、色々と大きい生徒がそう言って近付いてくる。

その背後には、大きく白いカモがキリッとした顔をし、両手に自身の背丈よりも長くて鋭い槍のようなネギの茎と、盾のように分厚く硬い葉を手にしたポケモンがいた。

その生徒のすぐ側には、銀髪でサイドテールのような位置に羽の生えた生徒もいる。こちらも当然の様にアサルトライフルを所持していた。

隣には長い手足で二足歩行する銀色とも灰色とも見える体色のドラゴンが、ジャラランと、頭や腕に金色のシンバルのような鱗をつけていたポケモンがいた。

さらにその近くに、別の制服を着た生徒もいた。

 

「連邦生徒会長に会いに来ました。風紀委員長が、今の状況について納得のいく回答を要求されています」

 

『ブンネ〜』

 

とてつもなく重そうで、人一人が入れる位の大きさの医療バッグにパンパンと何かを詰め込み、それを軽々と携えた眼鏡の生徒とその隣に、紫色の体色をした可愛らしい二足歩行のポケモンが可愛く小首を傾げていた。

 

「・・・・面倒な人たちに捕まってしまいましたね・・・・」

 

リンが心底疲れた声で、溜息を吐いてから、顔に影をさしながら、表面上は笑顔で話し出す。

 

「・・・・こんにちは、各学園からわざわざここまで訪問してくださった、生徒会、風紀委員会、その他時間を持て余している皆さん。こんな暇そ・・・・大事な方々がここを訪れた理由は、よく分かっています。今学園都市に起きている混乱の責任を問う為に・・・・でしょう?」

 

『エフィエフィ・・・・』

 

『ブラブラ・・・・』

 

エーフィとブラッキーが「抑えて抑えて」と言わんばかり、二本立ちになって、前足をフイフイ動かしてリンを宥める。

 

「そこまで分かってるなら何とかしなさいよ! 連邦生徒会なんでしょ! 数千もの学園自治区が混乱に陥ってるのよ! この前なんかうちの学園の風力発電所がシャットダウンしたんだから!」

 

先生はリンに最初に話しかけてきた彼女が提げている証明書に書かれている〈MILLENIUM‹ミレニアム›〉という学園名に目を向けた。

寝る前にリンから貰った書類に記載されており、確か正式名称は、〈ミレニアムサイエンススクール〉。

キヴォトスでも特に勢力と影響力の強い『三大学園』の一つで、歴史こそ他の二校に比べて浅く新しい学園だが、技術が発展している学園で、キヴォトスの最先端で最新鋭の街並みや武器生産もしている学園だ。

すると、今度は医療バッグを持った生徒が前に出る。

 

「〈連邦矯正局〉で停学中の生徒たちについて、一部が脱走したという情報もありました」

 

『風紀』と記された腕章から、恐らく『三大学園』の一角、〈ゲヘナ学園〉の風紀委員会の生徒であろう。

『自由と混沌』を校風としている他、破天荒、型破り、粗暴な生徒が多く、それによる銃撃戦が茶飯事という領内の治安は非常に悪く、学級崩壊は当たり前。教育機関としての機能はほぼ損失しているらしい。

次は銀髪の生徒と黒髪の生徒が出てくる。

 

「スケバンのような不良達が、登校中の生徒たちを襲う頻度も、最近急激に高くなりました。治安の維持が難しくなっています」

 

「戦車やヘリコプターなど、『出所のわからない武器の不法流通』に、キヴォトスでは中々見かけない『大型のポケモンの所持や戦闘での使用』、『進化の石と進化アイテムの不法取引』等が2000%以上増加しました。これでは正常な学園生活に支障が生じてしまいます。さらに、最近野良や違法ギャンブルのポケモンバトルに、『妙なガス』が使われている噂があるようです」

 

恐らくこの二人は最後の『三大学園』。〈トリニティ総合学園〉。不良高校のゲヘナとは宿敵かつ犬猿の仲のお嬢様学校だと先生は記憶している。

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

各校の代表達の話に、リンは僅かに眉根を寄せる。

 

「こんな状況で連邦生徒会長は何をしているの? どうして何週間も姿を見せないの? 今すぐ会わせて!」

 

『サナサナ』

 

リンは観念したかのように小さく息を吐いてから声を発した。

 

「・・・・連邦生徒会長は今、席におりません。正直に言いますと、行方不明になりました」

 

「・・・・えっ!?」

 

「・・・・!!」

 

「やはりあの噂は・・・・」

 

「結論から言うと、〈サンクトゥムタワー〉の最終管理者がいなくなった為、今の連邦生徒会は行政制御権を失った状態です。認証を迂回できる方法を探していましたが・・・・先程まで、そのような方法は見つかっていませんでした」

 

「それでは、今は方法があるということですか? 首席行政官」

 

「はい。この先生こそが、フィクサーになってくれるはずです」

 

「!?」

 

「!」

 

「この方が・・・・?」

 

その場にいた全員が、先生に目を向けた。

 

“はじめまして、私が『先生』だよ。そしてこの子は相棒のピカチュウ。よろしくね”

 

『ピッカ!』

 

「はぁぁ〜・・・・♥」

 

『サナァ・・・・』

 

先生が挨拶し、肩に乗ったピカチュウが挨拶すると、〈ミレニアム〉の生徒の頬がほんのり赤くなり、さらに瞳孔がハートマークとなった。隣のポケモンが呆れたように半眼を作っている。

 

「ーーーーはっ! じゃなくて! この先生は一体どなた? どうしてここにいるの?」

 

「〈キヴォトス〉ではない所から来たようですが・・・・先生だったのですね」

 

〈トリニティ〉の黒髪の生徒がそう聞くと、リンは改めて紹介をした。

 

「はい。コチラの先生は、これから〈キヴォトス〉の先生として働く方であり、連邦生徒会長が特別に指名した人物です」

 

「行方不明になった連邦生徒会長が指名・・・・? ますますこんがらがってきたじゃないの」

 

〈ミレニアム〉の生徒が、汗をタラリと流した。

 

“こんにちは”

 

「こ、こんにちは先生。私は〈ミレニアムサイエンススクール〉の・・・・い、いや、挨拶なんて今はどうでも良くて・・・・!」

 

「そのうるさい方は気にしなくて良いです。続けますと・・・・」

 

「誰がうるさいって!? わ、私は『早瀬ユウカ』! この子は私のパートナーの『サーナイト』です! 覚えておいて下さい、先生!」

 

『サー』

 

リンの言葉に血管を浮かべながら、ユウカと名乗った生徒は、先生に対して大人しい声で自分とパートナーのポケモンを紹介し、紹介されたポケモン、『ほうようポケモン・サーナイト』は笑みを浮かべて優雅に一礼をした。

 

“よろしくね”

 

『ピカッ!』

 

挨拶をする先生とピカチュウに、リンは再び話を戻した。

 

「先生は元々、連邦生徒会長が立ち上げた、『ある部活』の担当顧問として此方に来る事になりました。

連邦捜査部〈S.C.H.A.L.E‹シャーレ›〉。

単なる部活ではなく、一種の超法規的機関。連邦組織の為、キヴォトスに存在するす全ての学園の生徒たちを、制限なく加入させる事すらも可能で、各学園の自治区で、制約無しに戦闘行為を行う事も可能です」

 

頭を抑えながらリンは説明を続ける。

 

「何故これだけの権限を持つ機関を、連邦生徒会長が作ったのかはわかりませんが・・・・。シャーレの部室はここから約三十kmは離れた外郭地区にあります。今は殆ど何も無い建物ですが、連邦生徒会長の命令でソコの地下に『とあるモノ』を持ち込んでいます」

 

“『とある物』?”

 

「はい。それとーーーー先生には『ソレ』を貰ってから、コチラから『お渡ししたい子達』がいます」

 

“『子達』?”

 

『ピカ?』

 

「取り敢えず、先生をソコにお連れしなければなりません」

 

そう言って、リンの眼前に『プラズマポケモン・ロトム』が入ったスマートフォン、『スマホロトム』が飛んできて、通信を始めた。

 

「『モモカ』、『シャーレの部室』に直行するヘリが必要なんだけど・・・・」

 

すると、画面から立体映像付きで通信が入った。リンと同じ制服を着崩したピンク色の髪をツインテールにした小柄な生徒が、同じくピンク色の体色で間の抜けた顔をした『まぬけポケモン・ヤドン』を頭に乗せて、手にはスナック菓子を持って気怠げに話し出した。

 

《『シャーレの部室』?・・・・ああ、外郭地区の? ソコ、今大騒ぎだけど?》

 

「大騒ぎ・・・・?」

 

 

だいぶ呆けた声で聞き返すリンに、『モモカ』と言う生徒は詳しく伝える。

 

《『矯正局』を脱走した生徒が騒ぎを起こしたの。そこは今戦場になってるよ》

 

「・・・・うん?」

 

リンの顔にまた影が指す。

 

《連邦生徒会に恨みを抱いて、地域の不良達を先頭に周りを焼け野原にしてるみたいなの。巡航戦車までどっかから手に入れてきたみたいだよ? それでー、どうやら連邦生徒会所有の『シャーレの部室』を占拠しようとしてるらしいの。まるでそこに何か『大事な物』でもあるみたいな動きだけど?》

 

「・・・・・・・・」

 

絶句し、目がすわりだすリン。

 

《まぁでも、もうとっくに滅茶苦茶な場所なんだから、別に大した事な・・・・あ、先輩。お昼ごはんのデリバリー来たからまた後で連絡するねー。ヤドン、【ねんりき】で運んでー》

 

《ヤー・・・・》

 

そうして、ブツンッと、通信が切れた。

 

「(プルプル)・・・・」

 

『『(オロオロオロオロ)』』

 

リンはプルプルと震え、眼鏡が光っており、エーフィとブラッキーが必死に宥める。

 

“大丈夫?・・・・深呼吸でもする?”

 

「・・・・だ、大丈夫です。・・・・少々問題が発生しましたが、大した事ではありません」

 

先生の前では努めてにこやかな顔を見せるが、他の生徒達には目を向けると、目を細めてジーッと見据えていた。

 

「・・・・?」

 

「な、何? どうして私達の事を見つめてるの?」

 

「ちょうどここに各学園を代表する、立派で暇そうな方々がいるので、私は心強いです」

 

「・・・・えっ?」

 

戸惑うユウカをよそに、リンは表面上はにこやかな笑みを浮かべながら話す。

 

「キヴォトスの正常化のために、暇を持て余した皆さんの力が、今切実に必要です。行きましょう」

 

「ちょ、ちょっと待って!? ど、どこに行くのよ!?」

 

スタスタと先生を連れて歩き出したリンを追いかけ、他の生徒とポケモン達も続いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

D.U.外郭地区・シャーレの部室付近。

ヒュオオオオーーーー!! っと、風が吹き抜ける街に着いた先生達の眼の前で、

 

ーーーードガアアァァァァン!

 

爆発が起こり、爆風が吹き荒んだ。

 

「な、何、これ!?」

 

ユウカが代表するように叫んだ。

 

ーーーーダダダダダダ!

 

ーーーーズガアァァン!

 

「何で私達が不良達と戦わなきゃいけないの!!」

 

弾丸とポケモンの技が飛び交う戦場と化した街で瓦礫に隠れたユウカが叫ぶ。

 

「〈サンクトゥムタワー〉の制御権を取り戻す為には、あの部室の奪還が必要ですから・・・・」

 

「それは聞いたけど・・・・! 私これでも、うちの学校では生徒会に所属してて、それなりの扱いなんだけど! 何で私が・・・・!」

 

眼鏡の生徒が宥めるが、ユウカはそれでも不満を言う。

がーーーー。

 

ーーーーパパパパパパパパっ!

 

弾丸がユウカに当たる。

 

「いっ、痛っ!! 痛いってば!! アイツら違法JHP弾を使ってるじゃない!?」

 

〈キヴォトス〉の人間でなければ、今の弾丸でとっくに天国に行っているが、ユウカは豆鉄砲でも浴びたようなダメージで済んでいた。

 

「伏せて下さい、ユウカ。それに、ホローポイント弾は違法指定されてはいません」

 

「うちの学校ではこれから違法になるの! 傷跡が残るでしょ!」

 

「今は先生が一緒なので、その点は気を付けましょう。先生を守るのが最優先。あの建物の奪還はその次です」

 

「ハスミさんの言う通りです。先生は〈キヴォトス〉では無い所から来た方ですので・・・・。私達とは違って、弾丸一つでも生命の危機に晒される可能性があります。その点ご注意を!」

 

生徒達が話をしている間、先生は不良生徒達とポケモン達を見る。

武器の装備、練度、連携はそれほどの実力も無いし、連れているポケモンは『ねずみポケモン・コラッタ』に『ねずみポケモン・ラッタ』の群れ。『ことりポケモン・オニスズメ』に『くちばしポケモン・オニドリル』の群れだ。それほど強敵ではないが、数の暴力が厄介だ。

ユウカ達も彼女達のポケモンも、一目で不良生徒達など相手にならない練度だと分かるが、今いち連携が取れず、個々で戦っている。このまま押し切られたりしたら、もしもの可能性も否定できない。

 

「分かってるわ。先生、先生は戦場に出ないで下さい! 私達が戦ってる間は、この安全な場所にいて下さいね!」

 

『ピカピカ?』

 

ユウカがそう言うと、相棒のピカチュウが、「ああ言ってるけどどうする?」と、言わんばかりに笑みを浮かべて問うと、先生はニッ、と唇の端を上げた。

 

“私が指揮する、任せて。今から私の指示に従って”

 

「え、ええっ? 戦術指揮をされるんですか? まあ・・・・先生ですし・・・・」

 

「分かりました。これより先生の指揮に従います」

 

「生徒が先生の言葉に従うのは自然な事、ですね。よろしくお願いします」

 

“う~ん、そんな自分達を駒のように扱わなくても良いよ。でも、その前に、先ずは皆の名前や、ポケモン達の事を教えて”

 

概ね了承された所で、先生は先ず銀髪の生徒に話しかける。

 

“私は先生。この子は相棒のピカチュウ。君の名前と相棒は?”

 

「は、はい。すいません先生。ここまで自己紹介もなく・・・・。『守月‹モリヅキ›スズミ』です。〈トリニティ総合学園〉で自警団活動を行っています。この子が私のパートナーの『ジャランゴ』です」

 

『ジャララ!』

 

スズミが自分と、パートナーである『うろこポケモン・ジャランゴ』を紹介した。

 

“スズミにジャランゴ、か。うん、覚えたよ。結構鍛えさせているようだね?”

 

「はい! まだジャランゴですけど、【ばくおんぱ】も覚えたんですよ!」

 

“それは凄いね! 頼もしいよ! さて・・・・”

 

すると次に、黒髪の生徒に目を向けた。

 

“君の名前は?”

 

「はい。スズミさんと同じ〈トリニティ総合学園〉、〈正義実現委員会〉所属、副委員長をしています『羽川‹ハネカワ›ハスミ』と、パートナーの『ネギガナイト』です」

 

冷静に自己紹介する『ハスミ』と、その紹介で騎士が直立するかのように武器を構えている『かるがもポケモン・ネギガナイト』。

 

“うんうん。見事に育てているのが分かるね。心強いよ”

 

「ありがとうございます」

 

立ち姿だけでネギガナイトの実力を見抜いた先生に驚きつつにこやかに笑みを浮かべる。

 

“さてーーーー”

 

と、先生は眼鏡の生徒に目を向け、生徒は弱冠顔を赤くした。

 

“君は?”

 

「ひ、『火宮‹ヒノミヤ›チナツ』です。ゲヘナ学園で風紀委員会に所属しています。この子はパートナーの『タブンネ』です。よろしく、お願いします」

 

『タブンネ〜♪』

 

“普通のタブンネとは違うね?”

 

「は、はい。この子は『色違い』なので」

 

チナツの『ヒヤリングポケモン・タブンネ』は通常は桃色の体色の所が、かなり珍しい『色違い』である為、紫色になっている。

 

“うん。お互いに良く支え合うパートナーって感じだね。頼りさせてもらうよ”

 

「はい! 任せて下さい!」

 

そして先生はユウカに目を向けた。

 

“ユウカにサーナイト、で良いかな?”

 

「へっ!? あ、はい! 早瀬ユウカとパートナーのサーナイトです!」

 

『サーサー』

 

狼狽するユウカを、サーナイトが落ち着かせるように肩に手を置いた。

 

“先程から見てたけど、信頼関係は抜群だね。指示に従ってくれるかな?”

 

「ま、任せて下さい!」

 

“うん。じゃあ皆”

 

『ピカッ!』

 

自己紹介を終えると、先生は一同を見て声を掛ける。

弾丸とかが飛び交うのに、凄い胆力である。

 

“まだまだ色々話したい事があるけど取り敢えず、ちょっとヤンチャな生徒達には、オシオキをしちゃおうか!”

 

『はい!』

 

『ピッカァ!』

 

先生の言葉に、生徒達とポケモン達が力強く頷き、ピカチュウも元気よく応えた。

 




後書きでは、生徒とポケモン達の出会いとお互いどう思っているのか説明します。

リン&エーフィとブラッキー。
お互い良きパートナーと思っている。
出会いはタマゴから生まれた双子のイーブイの世話をしている内に、黄昏時でエーフィとブラッキーに進化した。
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