ポケモンアーカイブ   作:BREAKERZ

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いざ、アビドス砂漠へ!!

ー先生sideー

 

「『カイザーコンストラクション』・・・・『カイザーコーポレーション』の系列ですか・・・・!? アビドス自治区を、カイザーコーポレーションが所有している・・・・!?」

 

「・・・・紫関ラーメンも?」

 

ノノミが信じられないと言わんばかりに繰り返すと、シロコがアヤネに聞くと、アヤネは肯定を示すように頷いた。

 

「・・・・はい。大将はその事を知っていて、随分前から退去命令も出ていたとかで・・・・大将は、元々もうお店を畳む事を決めていたそうです・・・・いつかは起きる筈の事だった、と・・・・」

 

「・・・・・・・・」

 

アヤネの説明に、セリカも無言で首肯すると、シロコ達は肩を揺らす。

 

「!?」

 

「どういう事・・・・!?」

 

「そんな、紫関ラーメンが・・・・」

 

「・・・・既に砂漠になってしまった、本来のアビドス高校本館と、その周辺数千坪の荒れ地。そしてまだ砂漠化が進んでない、市内の建物や土地まで・・・・。所有権がまだ渡ってないのは、今は本館として使っているこの校舎と、周辺の一部の地域だけでした・・・・」

 

「で、ですが、どうしてこんな事に? 学校の自治区の土地の取引だなんて、普通できる筈が・・・・一体誰が、こんな事を・・・・」

 

「・・・・アビドスの生徒会、でしょ?」

 

『(ピクッ)』

 

「・・・・!」

 

ノノミの疑問にホシノが言い、ヤドキングがピクッと反応し、シロコは目を少し見開いた。ホシノが続ける。

 

「学校の資産の議決権は、生徒会にある。それが可能なのは普通に考えて、その学校の生徒会だけ」

 

「・・・・はい、その通りです。取引の主体は、アビドスの前生徒会でした」

 

「そんな・・・・アビドスの生徒会は、もう二年前に無くなって筈では・・・・」

 

「・・・・はい。ですので、生徒会が無くなってからは、取引は行われていません」

 

「そっか、二年前・・・・」

 

ホシノが昔に思いを馳せていると、セリカがドンッとテーブルを叩いた。

 

「何をやってんのよ、その生徒会の奴らは!! 学校の土地を売る? それもカイザーコーポレーションなんかに!? 学校の主体は生徒会でしょ!? どうしてそんな事を・・・・っ!!」

 

「・・・・・・・・」

 

凄い剣幕になるセリカをホシノは静かに一瞥する。

 

「こんな大事に、ずっと私達は気づかないまま・・・・」

 

「・・・・『それぞれの学校の自治区は、学校のもの』。余りにも当たり前の常識です。当たり前過ぎて、借金の方にばかり気を取られて、気づく事ができませんでした。私が、もう少し早く気付いていたら・・・・」

 

自責を感じるアヤネに、ホシノが首を横に振った。

 

「・・・・ううん、それはアヤネちゃんが気にする事じゃないよ。これはアヤネちゃんが入学する前の・・・・いや、対策委員会ができるよりも前の事なんだから」

 

「・・・・ホシノ先輩、何か知ってるの?」

 

「あ、そうです! ホシノ先輩も、アビドスの生徒会でしたよね?」

 

「え? そ、そうだったの!?」

 

「それに・・・・最後の生徒会の、副会長だったと聞きました」

 

セリカは今さっきまで生徒会の悪口を言っていた手前、気まずそうにホシノを見ると、ホシノは「気にしないで」と言いたげに顔に笑みを浮かべて、手をヒラヒラさせると、当時の事を話し出した。

 

「・・・・うへ〜、まあそんな事もあったねえ。二年も前の事だし、そもそも私もその辺の生徒会の人達とは、実際関わりは無くってさー。私が生徒会に入った時には、もう生徒会の人達は殆ど辞めちゃってたから。その時はもう在校生も二桁になってたし、教職員もいない。授業なんてものは、もうとっくの昔に途絶えていた。生徒会も、そうと言われなければただの倉庫にしか見えない所だったし、引継ぎ書類なんて立派な物は一枚も無かった。丁度砂漠化。避けようとして、学校の建物を何度も移してた時期だったって事もあってね」

 

ホシノが傍らにヤドキングがゆっくりと歩いてきた。

 

「そもそも最後の生徒会って言ったって、新任の生徒会長と私と、その手持ちポケモン達だけだったし」

 

そして隣に近づいたヤドキングの頭の貝を撫でた。

 

「・・・・その生徒会長は無鉄砲で、会長なのに校内でも随一のバカで・・・・私の方だって、嫌な性格の新入生でさ。いや〜・・・・何もかも滅茶苦茶だったよ」

 

「校内随一のバカが生徒会長・・・・? 何それ、どんな生徒会よ・・・・?」

 

「成績と役割りは別だよ、セリカ」

 

「そもそも、セリカちゃんも成績はそんなに・・・・」

 

『ウォウォ』

 

『ビブビブ』

 

セリカの言葉にシロコがツッコミ、アヤネが苦笑して言うと、ウォーグルとビブラーバも頷く。

 

「わ、分かってるってば!! どうして急に私の成績の話になる訳!? 一応ツッコんでおいただけじゃん!?////」

 

顔を赤くするセリカ。

 

「うへ~、いやいや、正にその通りだよ。生徒会なんて肩書だけで、おバカさん二人と役立たずなポケモンが集まっただけだったからね。何の間違いだか、生徒会なんかに入っちゃって・・・・いや〜、あの時はあちこち行ったり来たりだったねぇ」

 

するとホシノが自嘲気味に口を開く。

 

「ほんっとにバカみたいに、なんにも知らないままさ・・・・」

 

「・・・・・・・・」

 

「・・・・ホシノ先輩」

 

「・・・・ホシノ先輩が責任を感じる事じゃない」

 

シロコが声を上げる。

 

「昔の事情は知らないけど、実際に生徒会が解散した後・・・・アビドスに対策委員会ができたのは、間違いなくホシノ先輩のお陰」

 

「う、うん・・・・?」

 

「ホシノ先輩は怠け者だし、色々とはぐらかしてばっかりだけど、大事な瞬間には絶対に誰よりも前に立っている」

 

「そうです。セリカちゃんが行方不明になった時、真っ先に先生に助けを求めたのもホシノ先輩でしたし・・・・」

 

「・・・・うへ~、そうだっけ? 良く覚えてなーーーー」

 

惚けようとするホシノに、先生が口を開く。

 

“そうだったね、いつも絶対に先陣を切る”

 

「私、それ初耳なんだけど!? 何で教えてくれなかったの!?」

 

セリカが声を張り上げるが、皆は話を進める。

 

「ホシノ先輩は色々とダメな所もあるけど、尊敬はしてる」

 

『ルガ!』

 

「それって褒め言葉なの? 悪口なの・・・・?」

 

「ど、どうしたのシロコちゃん!? 急にそんな青春っぽい台詞を・・・・! おじさんこういう雰囲気、ちょっと苦手なんだけど!?」

 

ホシノが黄色と青のオッドアイを大きく見開いてシロコを見つめる。

 

「・・・・や、なんとなく、言っておこうかなって思って」

 

「え、えぇ・・・・?」

 

「・・・・・・・・」

 

シロコの発言で、部屋の空気が妙な雰囲気になってしまい、暫くの間は全員が無言になってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

シロコの発言から数分後。

ノノミが話を戻そうと声を発する。

 

「・・・・では、どうして前の生徒会は、カイザーコーポレーションにアビドスの土地を売ったんでしょうか?」

 

「実は裏で手を組んでたとか」

 

「いえ・・・・それは違うと思います」

 

「そうだね〜。私もしっかり関わってないからただの推測だけど・・・・ちゃんと学校の為を思って、色々と頑張ってた人達だったんじゃないかーって思ってる」

 

ノノミの疑問にシロコがそう推理し、アヤネとホシノが否定する。

 

「多分、最初は借金を返そうとして・・・・って感じなんだろうな〜」

 

「借金の為に、土地を・・・・」

 

「はい、私もそう思います。当時既に学校の借金は、かなり膨れ上がった状態でした。ただ・・・・それでもこのアビドスの土地に高値が付く筈もなく、少なくとも借金自体を減らすには至らなかった・・・・」

 

「それて、繰り返し土地を売ってしまう負の循環に・・・・と言う事でしょうか」

 

ノノミとアヤネが推測していく。

 

「何それ、何かおかしくない? 最初からどうしようもないって言うか・・・・」

 

“・・・・そう言う手口も、あるよね”

 

「え? どういう事?」

 

“アビドスは、悪質な罠に嵌められたのかも知れない”

 

「え、え?」

 

先生は、詐欺のようなやり方で生徒達から土地を奪っていくカイザーコーポレーションに、静かな怒りを燃やす。

 

「あ〜・・・・成る程、そっか」

 

「・・・・アビドスにお金を貸したのも、カイザーコーポレーション」

 

「・・・・!!」

 

先生の言葉の意を理解したホシノとシロコが呟くと、アヤネとノノミも察したように肩を震わせた。

 

「と言う事は・・・・」

 

「カイザーローンが、学校の手に負えない位のお金を貸して、利子だけでも払って貰う為に土地を売るように仕向ける」

 

「はい。きっと最初は、要らない砂漠や荒廃した土地で売ったらと、甘言を弄したのでしょう。どうせ砂漠の化した使い道のない土地、その提案を断る積極的な理由もなく・・・・」

 

シロコとアヤネが推測を並べていく。

 

「ですが、同時にそんな安値で売った所で借金が減る訳でもなく、土地を取られる一方で・・・・アビドス自治区そのものが、ゆっくりとカイザーコーポレーションのものになる」

 

「元々そう言う計算だったのかも知れない」

 

推測を聞いて、ノノミが悲しそうな顔になる。

 

「アビドスにお金を貸した時点で、こうなるように全てを・・・・」

 

「大分前から計画してた罠だったたのかもね。それこそ、何十年も前から・・・・それくらい、規模の大きな計画だったのかも・・・・」

 

「何それ!? 只々カイザーコーポレーションの奴等に弄ばれてるだけじゃん! 生徒会の奴等、どんだけ無能な訳!? こんな詐欺みたいなやり方に、騙されてさえいなければ・・・・!」

 

“セリカ、落ち着いて”

 

『ウォ〜』

 

先生とウォーグルが、怒り狂うセリカを宥める。

 

「ウォーグル・・・・。先生・・・・?」

 

“悪いのは騙される事より、騙す事だと思うよ”

 

『ピカチュウ』

 

「・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・」

 

先生とピカチュウの言葉に、セリカも落ち着きを取り戻し、ホシノも見つめる。

 

「・・・・わ、私も分かってるわよ! た、たまに詐欺でブレスレットとか買ったりするし、下手したらここの誰よりも分かってる! 悪いのは騙した方だって事は!////」

 

顔を赤くするセリカは、すぐに悔しそうに顔を俯かせる

 

「でも・・・・悔しい、どうして・・・・ただでさえ苦しんでるアビドスに、どうしてこんな酷い事を・・・・」

 

理不尽過ぎる現実に、やり場の無い怒りで拳をキツく握り締める。

 

『ウォー』

 

ウォーグルがセリカの背中に翼を当てた。

 

「セリカちゃん・・・・」

 

“・・・・・・・・”

 

「・・・・・・・」

 

「・・・・・・・」

 

アヤネと先生も、シロコもノノミも、気持ち的にはセリカと同じである。

そんな中、ホシノが口を開く。

 

「・・・・苦しんでる人達って、切羽詰まりやすくなっちゃうからね〜」

 

「・・・・え?」

 

「切羽詰まると、人は何でもやっちゃうものなんだよ・・・・」

 

シリアスの顔でそう言うが、すぐにいつものニヤケ顔に戻る。

 

「ま、良くある話だけどね。ただそれだけだと思うよ、セリカちゃん」

 

 

 

 

 

 

 

 

そして一旦休憩を挟んで話を戻す。

 

「学校の借金、このアビドスが陥ってる状況、そして私達が先生と一緒に見つけ出してきた幾つかの糸口。全てが少しずつ、繋がり始めている気がします」

 

アヤネが話を纏めていく。

 

「カイザーコーポレーションは、アビドスの生徒会が消えてしまってから土地を購入する方法がなくなり・・・・まだ手に入れてない『最後の土地』であるこの学校を奪う為に、ヘルメット団を雇用していた・・・・!」

 

そして、結論を言う。

 

「カイザーコーポレーションの狙いは『お金』ではなく『土地』だった、と言う結論で良いと思います!」

 

「ですね、バッチリかと。そうなると、次の疑問が出てきますが・・・・どうして『土地』なんでしょうか? アビドス自治区は、もう殆どが荒れ地と砂漠、砂まみれので野生ポケモン達の住処になっている廃墟になっているのに・・・・」

 

「確かに・・・・こんな土地を奪った所で、何か『大きな利益』があるとは思えませんが・・・・」

 

ノノミの疑問に、アヤネも眉根を寄せると、先生が口を開いた。

 

“砂漠と言えば、ちょっと耳に入れたい事が・・・・”

 

「・・・・先生?」

 

先生は、ヒナから聞いた情報を皆に話した。

 

「アビドスの砂漠で・・・・」

 

「カイザーコーポレーションが・・・・」

 

「何かを企んでる・・・・?」

 

「そ、そんな事をどうして、ゲヘナの風紀委員長が・・・・」

 

「それに、どうして先生に・・・・?」

 

先生はヒナ、と言うより、チナツと、このアビドスに来る前に起こった事を皆に話そうとした。

が、セリカが話を中断させるように声を上げる。

 

「ああもう、そんな難しい事を考えるより、先にやる事があるでしょ! アビドスの砂漠はうちの自治区なんだから! 実際に行ってみれば良いじゃない!」

 

セリカがさらに声を張り上げる。

 

「何が何だか分からないけど、この目で確かめた方が早いって!」

 

「・・・・ん、そうだね」

 

『ルガル』

 

「・・・・いや〜、セリカちゃん良い事言うねえ。こんなに逞しく育ってママは嬉しいよ、泣いちゃいそう。キンちゃん、ティッシュちょうだい」

 

『ヤド〜』

 

「・・・・・・・・」

 

『ドンドン』

 

シロコとルガルガンが同意し、ホシノがヤドキングと共にヨヨヨと泣き、ノノミとサイドンも「セリカちゃんは良い子」と言いたげな視線を向ける。

 

「な、何よこの雰囲気!? 私がマトモな事言ったらおかしい訳!?////」

 

『ウォーウォー!』

 

セリカが顔を赤くし、ウォーグルは「うちのセリカは良い子だろう!」と言いたげにエッヘンと胸を反らす。

 

「あ、あはは・・・・そんな事は・・・・ですが、セリカちゃんの言う通りです」

 

『ビブ〜♪』

 

アヤネは苦笑し、ビブラーバは翅を鳴らす。

そして先生が声を上げる。

 

“じゃあ、準備ができたら行こっか。『アビドス砂漠』へ!”

 

『ピカチュウ!』

 

『はい!/うん!』

 

『ーーーー!!』

 

全員が異種異音で了解を示した。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして準備と、カタカタヘルメット団をゲヘナ風紀委員会に渡す為に各々動いている中、先生は廊下で『シッテムの箱』のアロナに『頼んでいた事』の進捗を聞いていた。

 

“(アロナ。首尾は?)”

 

《バッチリですよ先生! これでもしもの時があってもーーーー》

 

と、アロナが満面の笑みでオーケーサインを出していると、ルガルガンを連れたシロコが声をかけてきた。

 

「・・・・先生。出発する前に、ちょっと時間が欲しい」

 

“どうしたの?”

 

「・・・・相談したい事があって」

 

“・・・・分かった”

 

シロコの雰囲気に先生は頷き、シロコ達の後をついていくと、誰もいない教室に入った。

 

「・・・・・・・・これ」

 

するとシロコが何かを差し出し、先生がそれを受け取る。

 

「・・・・ホシノ先輩のバックの中から見つけたの」

 

眉根を寄せるシロコがそう言って、渡された物をよく見るとそれはーーーー『退会・退部届』だった。

 

“退会・退部届・・・・対策委員会小鳥遊ホシノ・・・・!?”

 

『ピカッ!?』

 

先生とピカチュウが目を見開くと、シロコとルガルガンが頷く。

さっきのあまりにもシロコらしくない行動でホシノに詰め寄ったのはこの為だったようだ。

 

「・・・・ん。書かれてる通りの意味だと思う。先生以外には誰にも見せてないし、言ってもないけど・・・・そもそもバックを漁った事自体、ホシノ先輩にはバレてる気がする」

 

“シロコは、どうして・・・・?”

 

「・・・・ゲヘナ風紀委員会との戦闘時、ホシノ先輩があそこまで長い時間席を外すなんて事、今まで無かった。それに、風紀委員会からあんなに追い詰められるまで、先輩達が来ないなんて。それがどうしても引っかかって・・・・先輩のバックを漁って見たら出てきたの」

 

すると、シロコは頭を下げ、ルガルガンも下げる。

 

「・・・・ごめん、悪い事なのは分かってる。ホシノ先輩からは勿論、生徒として、先生にも怒られても仕方ない」

 

“・・・・まだ、分かっていない事が多過ぎるから、取り敢えず保留で。一旦これは秘密にしておこうか”

 

「・・・・うん。先生も分かってると思うけど・・・・ホシノ先輩、何か『隠し事』をしてる」

 

先生もホシノが何かを隠している事は察していた。それは、時々ホシノが、消えてしまうのではないかと思えてしまいそうな程の儚さを見せていたからだ。

 

 

 

 

 

 

ーホシノsideー

 

「・・・・・・・・」

 

『ヤド・・・・』

 

ーーーークンクン、クンクン・・・・。

 

ホシノは屋上からアビドスを見渡し、その姿をヤドキングと『ボールに入ったパートナー』が不安そうに見つめていた。

 

 

 

 

 

ー先生sideー

 

それから準備を終え、ヘルメット団をチナツが率いる風紀委員会の護送車に入れて帰らせてから、アビドス砂漠へと向かった。

列車に揺らされる事数十分。オペレーターとして学校に残ったアヤネとビブラーバを除いたメンバーが砂まみれになった駅に立つ。周りを見渡して見ると、列車や建物が砂に埋もれており、今立っている駅も、辛うじてその体裁を保っていた。

と、その時、アヤネからの通信が入る。

 

《ここまでは列車で来る事が出来ましたが、ここからの移動手段は徒歩しかありません。少し進めばもうアビドス砂漠・・・・このアビドスにおける砂漠化が進む前から、元々砂漠だった場所です。この先はドラピオン達の縄張りで、さらにその奥がバンギラス達の縄張りになっています。昼は壊れたドローンや警備ロボット、オートマタ等が徘徊し、夜は夜行性のドラピオン達が徘徊しているので、危険な場所なんですが・・・・今は強行突破するしかありません。こんな場所で、カイザーコーポレーションが何を企んでいるのか・・・・実際に行って確かめて見ましょう》

 

いつもは慎重なアヤネらしくない強硬なやり方。仕方ないと言えば仕方ないのだが。

しかし、セリカが疑問を口にした。

 

「・・・・けどさ、アヤネちゃん。よく考えると、良く考えると、その情報をくれたのってゲヘナの風紀委員長でしょ。それって何かおかしくない? いくら風紀委員長とは言え、どうして他の学園の生徒が、うちの自治区の事をそこまで知ってる訳?」

 

《うーん、あくまで推測に過ぎないけど・・・・便利屋の皆さんからの情報では、風紀委員長のドンカラスは監視ネットワークだけでなく、情報収集も行っているって言ってたけど・・・・》

 

『ゲヘナの空の支配者』とも呼ばれ、四百匹以上のヤミカラスを従えているのなら、何処からか情報を聞いたのかも知れないとアヤネは推測した。

 

“・・・・私もカヨコから聴いたけど、カイザーはゲヘナ風紀委員会でもヴァルキューレ警察学校でも、かなりブラックに近いグレーな企業として警戒しているからね。そんなカイザーが、比較的にゲヘナに近いアビドス砂漠で何か不審な行動を取っている。でも、調査をしたくても他校の自治区で好き勝手に動く事はできないから、対策委員会に動いてもらおうと思っているんじゃないかな?”

 

「ま、そう言う事もあるかもね〜?」

 

先生の出した推測に、ホシノも肯定を示した。

 

《・・・・そう言えば、あの時あちらの行政官が確か・・・・》

 

【《ーーーーましてや他の学園自治区の付近なのだから、キチンとその辺りは注意するのが当然でしょう?》】

 

《・・・・と、言ってましたね。自治区の『中』ではなく、あくまで『付近』、と》

 

「そ、そうだっけ!?」

 

全然覚えていないセリカが目を見開くが、アヤネは続ける。

 

《それに・・・・》

 

【《あまり望ましくない出来事もありましたが、まだ違法行為と言い切れないでしょうし・・・・やむ得なかったと言う事でご理解いただけると幸いです》】

 

《【まだ違法行為と言い切れない】・・・・あの言葉も、良く考えてみると・・・・あの時はてっきり苦しい言い訳かと思っていましたが・・・・もしかしたら向こうは本当に、不法侵入の意図は無かったのかも知れません》

 

アヤネの推測に、今度はシロコが加わる。

 

「・・・・もしかしたらそうかも知れない。けど、あの時の風紀委員会には、明らかに侵犯行為だと取れる言動が多々あった。あそこがアビドスの所持している自治区だったかどうかは、そんなに重要じゃない。それに、あのアコの行動は明確な敵対行動。それだけで十分。アヤネの判断は間違ってない」

 

《・・・・はい、そうですね。ありがとうございます、シロコ先輩。ですが・・・・あの行政官は、私達の知らない事実を知っていた。少なくともその可能性がある、そう考えるのが妥当かも知れません。そうなると、ゲヘナの風紀委員長が私達の知らない事を知っているとしても、何もおかしくありません》

 

そこまで話してから、ホシノが口を開く。

 

「ま、行ってみたらそれも含めて、きっと色々分かるでしょ。セリカちゃんが言ってた通り、直接この目で確かめれば早いんだしさ〜」

 

「ん。いずれにしても、私とルガルガンはそれでも構わない。またここに来られたのならもっけの幸い」

 

『(ポンッ)ーーーールガル!』

 

シロコの言葉に続くように、ルガルガンがボールから飛び出してきた。

 

「シロコ先輩とルガルガン、何かやる気になってるけど?」

 

「うへ~。シロコちゃんとルガルガン、いんやイワンコって、ドラピオン達と因縁があるみたいだからね〜」

 

「何でもシロコちゃんがイワンコと会って、パートナーにする前に戦ったのがドラピオンらしいんですよね」

 

「あの頃の私はまだ戦術や戦闘が杜撰だったし、ルガルガンもイワンコでパワーも経験も不足していた。でも今ならあいつらを全滅できる」

 

『ルガ!』

 

“残念だけどシロコ、ルガルガン。ドラピオンは夜行性のポケモンだから、昼間は活動しないよ”

 

『「えっ/ルガ?」』

 

「じゃ、引き続き進むとしよっか〜?」

 

シロコとルガルガンが目を丸くするのを無視して、一同はミライドンに先生とピカチュウ、盾を使うホシノと今回は乗れたノノミが、ウォーグルにはセリカとシロコが乗って、砂漠を進んでいった。周囲を見て、ミライドンが少し怯えた様子を見せたの何とか宥めた。

途中、ドローンや警備ロボットやオートマタが襲いに来たが、この面子の相手にはならなかった。しかし、先生は『違和感』を感じていた。

 

“・・・・・・・・”

 

「どうしたの先生?」

 

“・・・・夜行性のドラピオンがいないのは仕方ないけど、他のポケモンの姿が見えないんだ”

 

「あら? 確かにそうですね? ドラピオン達は夜に活動するので、昼間は他のポケモン達が他の縄張りよりも安全に過ごしている筈なのに」

 

『ウォー?』

 

《ラーバ?》

 

ノノミの疑問に、ウォーグルとこの映像を観ているビブラーバも首を傾げた。一年以上前では、このドラピオンの縄張りで過ごしていたワシボンとナックラーの二人は不自然な程に他のポケモン達の姿が無い事に『違和感』を感じてならなかった。

そうこう話している内に、砂漠と荒野が混じったような、ただひたすらに何もない殺風景な景色に到着した。

到着してすぐに、未だに怯えていたミライドンがボールに戻りたがっていたのでボールに戻す。

 

“・・・・この辺りが、バンギラスの縄張り”

 

『ピィカ・・・・』

 

アビドス砂漠で最も勢力は小さいが、凶暴性と攻撃力は間違いなく最強のポケモン、『よろいポケモン・バンギラス』の縄張りに到着し、先生とピカチュウ、そして対策委員会全員が緊張していた。

 

「ここから先が、捨てられた砂漠・・・・」

 

「砂だらけの市街地に行った事はありましたが、ここから先は私も初めてです・・・・」

 

セリカとノノミが初めて訪れた場所に緊張するが、ホシノは違った。

 

「いや〜、久しぶりだねえこの景色も」

 

「先輩は、ここに来た事あるの?」

 

「うん。前に生徒会の仕事で何度かね〜。もう少し進めばそこにはなんと、かつてアビドスの『砂祭り』が開かれていたオアシスが!」

 

「え、オアシス? こんな所に?」

 

「うん、まあ今はもう全部干上がちゃったんだけどね〜。元々はそんじょそこらの湖よりも広くって、船を浮かべるくらいだったとか、キンちゃんのような水辺に住むポケモンもいっぱい住んでいたようだよ。ま、私も実際に見た事ないんだけど〜」

 

ホシノの説明に、先生は納得した。ヤドキングの進化前であるヤドンは、どちらかと言うと水辺に生息するポケモンであり、砂漠のアビドスにいる事に疑問を感じていたのだ。

すると、シロコがホシノに尋ねる。

 

「『砂祭り』・・・・私も聞いた事ある。アビドスでは有名なお祭りで、凄い数の人やポケモンが集まるって」

 

「そうそう、別の学校やエリアからもそのお祭り見たさに人やポケモンが来るくらいだったからね。ま、砂漠化が進み始めるより何十年も前の事だけど」

 

「へえ、今となってはこんな光景な上に、バンギラス達のような獰猛なポケモンの縄張りになっちゃってるけど、ここでそんな凄いお祭りが・・・・?」

 

「前までは、この辺りも結構住みやすい場所だったらしいよ〜。その時はこんな砂漠も無かったし、バンギラス達もいなかったからね〜。・・・・でも」

 

が、そこで一旦間を置いて、ホシノが辺りをキョロキョロと見回った。

 

「な~んか変だねえ。もう私達はバンギラスの縄張りに入ったっていうのに、“とうのバンギラスが現れないなんて”・・・・」

 

そう。対策委員会の調査では、この荒野がバンギラス達の縄張りだと言うのだ。しかし、バンギラスどころか、見張り役でもあるバンギラスの進化前のポケモン『いわはだポケモン・ヨーギラス』までいない事に、奇妙な不気味さを感じていた。

 

“・・・・反応もないね。まるで無人って感じだ”

 

『シッテムの箱』で探知した先生もそう言った。

 

「・・・・まぁここまで来たら行ってみるしかないね。それでアヤネちゃん、まだ目的地は遠そう?」

 

《ゲヘナの風紀委員長が言っていたセクターまでは、もう少し時間が掛かりそうです。こちらでもレーダーで索敵しましたが、バンギラス達の反応はまるでありません。見た所、この辺りは特に何も無さそうですが・・・・取り敢えず、ここからは歩きで、引き続き警戒しつつ前進して下さい》

 

アヤネからもそう言われ、先生と対策委員会はそのまま歩いで、バンギラスの縄張りの更に奥へと進んでいった。

 

 

 

 

 

 

そして、荒野の奥へと進むと、風が強まって砂埃が舞い上がり、視界を遮る中をドローンとオートマタが彷徨いていたのを見つけた。

 

「ふむ。ドローンにオートマタか・・・・この辺り、何でかこういうのが良く集まるんだよね」

 

と、ホシノが欠伸混じりに言うと、アヤネからの通信が入った。

 

《・・・・っ!? 皆さん、前方に何かあります!! 砂埃で、まだハッキリと姿が見えないなですが・・・・! 巨大な町・・・・いえ工場、或いは駐屯地・・・・? と、兎に角、物凄い大きな『施設』のようなものが・・・・?》

 

「・・・・こんな所に『施設』? 何かの見間違いじゃなくて? 今の所、こっちからは干からびたオアシスしか見えないけど・・・・」

 

《恐らく見間違いで無いと思うのですが・・・・取り敢えず、肉眼で確認できる所まで進んで見て下さい》

 

アヤネからそう指示を受け、一同は警戒しながら進んでいくとそこにはーーーー有刺鉄線で囲まれた建物と、その周囲に置かれたベースキャンプであった。

 

「・・・・・・・・」

 

「何これ・・・・」

 

「この張り巡られている有刺鉄線、優に数km先までありそう・・・・」

 

「工場・・・・? 石油ボーリング施設、でも無さそうな・・・・一体何なのでしょう、この建物は・・・・?」

 

ホシノが視線を鋭くし、他のメンバーは啞然となっていた。

 

「こんなの、昔は無かった・・・・」

 

と、ホシノが呟いたと同時に・・・・。

 

ーーーーダダダダダダダダダダダダダダダダダダ!!

 

一同の前方に弾丸が降り注がれた。

 

「うわっ!? 何々!?」

 

驚くセリカと同時に、建物から小銃を持ったオートマタ兵がぞろぞろと現れた。

 

「ーーーー侵入者だ!」

 

「ーーーー捕らえろ、逃がすな!」

 

「ーーーーポケモン共も出せ!」

 

『ーーーーファァァァンン!!』

 

オートマタ兵はなんと、『よろいポケモン・ドンファン』を出して、小銃の銃弾を放ちながら、こちらへと向かってくる。

 

《前方から、正体不明の兵力が攻撃を仕掛けて来ています! しかも、あれはこの辺りを縄張りにしているバンギラス達です!》

 

「よく分からないけど、歓迎の挨拶なら返してあげた方が良さそうだね?」

 

ホシノが珍しくやる気を出し、ヤドキングを出して、『ベレッタ1301 Tactical・Eye of Horus』と折りたたみ式の盾を構える。

 

「じゃ、派手に行こうか〜!」

 

ホシノの号令と共に、シロコはルガルガンを、ノノミはサイドンを、セリカはウォーグルを、先生はルカリオと御三家を出して、対策委員会は駆け出していく。

 

『ドンファァァァン!!』

 

オートマタ兵のドンファン達が【ころがる】で、まるでタイヤのように回転しながら迫りくる。

 

“セリカ、ドンファン達の体制を崩して!”

 

「了解! ウォーグル! 【ふきとばし】!!」

 

『ウォーッ!!』

 

ウォーグルが翼をバッサバッサと羽ばたかせて砂を巻き上げ、激しい向かい風となり、タイヤの形となっているドンファンを逆に吹き飛ばし、更に砂煙でオートマタ兵達の視界を塞いだ。

 

「ぬぅぉ!? 砂が!!」

 

「し、視界を塞がれました!」

 

オートマタ兵達が怯んだ。その隙を逃さない。

 

“皆! 一斉に攻撃!!”

 

「キンちゃん、【ねんりき】!」

 

「ルガルガン、【インファイト】!」

 

「ウォーグル、【ブレイクロー】!」

 

「サイドン、【ドリルライナー】!」

 

“ピカチュウ、【かみなりパンチ】! ルカリオ、【はどうだん】! リザード、【かえんほうしゃ】! カメール、【アクアテール】! フシギソウ、【リーフストーム】!”

 

各々のポケモン達が一斉に攻撃を繰り出し、オートマタ兵とドンファン達を薙ぎ倒し、さらに銃弾を撃ち出す。

相手側も対策委員会からの攻撃を受けながらも、反撃に転じ、砂漠での銃撃戦を繰り広げていく。

 

 

 

 

 

 

 

ー???sideー

 

『・・・・・・・・・・・・・・・・・・』

 

ーーーーそれは、ゆっくりと目を覚ました。漸く目障りな『ライバル』を追い出し、『縄張り』でのんびりしていたというのに、自分が『縄張り』とした場所で好き勝手な事をしている、『自分を訳の分からない世界に連れてきた奴等』の他に、別の『余所者』が侵入してきて、『奴等』と戦っている事を察していた。

 

『ドン・・・・フアド』

 

ゆっくりと起き上がったそれは、自分の『縄張り』に入った者達を追い出す為に、その巨体を起こしてズンズンと、住処にしている洞窟を進んでいったーーーー。

 

 

 

 

 

 

 

ー???sideー

 

『・・・・・・・・・・・・ルドン・・・・』

 

ーーーー今まで気絶していたそれは、ヨロヨロと身体を起こし、目の前にある建物を見据えると、お腹も空いており、何か食料はないかとその建物ーーーーアビドス高校へと向かっていった。

 

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