ポケモンアーカイブ   作:BREAKERZ

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カイザーPMC理事との遭遇、謎のドンファン?

ーホシノsideー

 

最初に出てきたオートマタ兵達と遭遇してから三十分。

倒しても倒してもうじゃうじゃと出てくるオートマタ兵達に、辟易としていた。

 

「うへ~、結局なんなのさコイツら?」

 

「そんなに強くないけど邪魔って言うか、面倒くさいって言うか・・・・何か、今まで戦ってきた奴等の中でも一際『厄介』って感じ」

 

「ん、下手したらゲヘナの風紀委員会より面倒・・・・」

 

「何なのでしょう、この方達は・・・・それに、こんな所で一体何をしてるんでしょうか?」

 

謎のオートマタ兵に首を傾げる対策委員会に、アヤネからの通信が入った。

 

《施設に、何らかの『マーク』を発見しました!》

 

アヤネがドローンで撮ったマークの映像を、全員のスマホロトムに送り見せると、〈KAISER PMC〉と記されていた。

 

「これって・・・・」

 

《少々お待ち下さい、今確認を・・・・・・・・確認が取れました。このマーク、この集団は・・・・》

 

「・・・・〈カイザーPMC〉」

 

アヤネの報告を遮るように、ホシノが呟いた。

 

《っ!?・・・・はい、ホシノ先輩の仰る通り、〈カイザーPMC〉です》

 

『民間軍事会社(Private Military Company)』。つまり、カイザー所有の軍事会社と言うことである。

 

「カイザー・・・・? こいつら、カイザーコーポレーションって事!?」

 

《はい、カイザーコーポレーションの系列会社で・・・・》

 

「もうどこ行ってもカイザー、カイザー、カイザー! 一体何なの!?」

 

アヤネの報告を聞いて、セリカはもううんざりと言わんばかりに叫んだ。

さらにノノミが神妙な顔をする。

 

「さらに、『PMC』と言う事は・・・・」

 

「え、何かマズい言葉なの?」

 

「『PMC』とは、民間軍事会社‹Private Military Company›の事です・・・・」

 

「ぐ、軍事・・・・!?」

 

「・・・・・・・・」

 

《ヘルメット団のようなチンピラとはレベルが違います。本当に組織化されたプロの・・・・文字通り、『軍隊』のようなとのです!》

 

「・・・・!」

 

「軍隊ぃ!?」

 

アヤネの言葉に、シロコとセリカが肩を揺らす。如何にポケモンや銃を持っていても、対策委員会は所詮はまだ学生。プロの軍隊と戦って勝てる筈がない。子供でも分かるくらいの差があるのだ。

 

「退学した生徒や不良の生徒達を集めて、企業が私設兵として雇っていると言う噂がありましたが、まさか・・・・」

 

ーーーーヴイイイイィィィィーーーーン!!

 

と、ノノミの言葉を遮るように、けたたましいサイレンが鳴り響いた。

 

「け、警報音・・・・!?」

 

「これ、何だか大ごとになりそうな予感何だけど・・・・」

 

ノノミとセリカが冷汗を垂らし、サイドンとウォーグルが二人を守るように立つ。

すると、空からモーター音と激しい風切り音、さらにキャタピラ音が聴こえ、地面が何かの振動で揺れていた。

 

「これは・・・・ヘリの音・・・・?」

 

「それに、この地面の揺れ・・・・恐らく戦車」

 

ノノミとシロコの言葉を肯定するように、アヤネからの通信が入った。

 

《大規模な兵力が接近中! コチラを包囲しに来ています! 先輩達の仰る通り、装甲車以外にも戦車やヘリまで・・・・! 物凄い数です! 包囲が完成する前に離脱して下さい! 先ずは急いで、その場から離脱を・・・・!》

 

そこまで言ってから、アヤネは先生に向き直る。

 

《先生、指示をお願いします!》

 

“うん。皆、離脱するんだ! でも良いかい、あくまで自衛や私の護衛の為に攻撃するんだ! “こっちからは攻撃をしないように”!”

 

「えっ!? どうしてよ先生!」

 

“説明をしている暇はない! 兎に角、こっちからは攻撃をしては駄目だ!”

 

「な~んか考えがあるみたいだね先生? そんじゃ、先生の言葉を信じてみようか!」

 

「ん。先生を信じる」

 

「はい!」

 

「ああもう分かったわよ!」

 

“アヤネ! ドローンでこの戦いを録画できるかい!?”

 

《は、はい! できます!》

 

“よし! 私の方でも録画しておくから、お願いするよ!”

 

《わ、分かりました!》

 

そして全員が、その場を離脱し、こちらからは攻撃をせず、向こうからの攻撃を仕掛けたら迎撃する。退却戦を繰り広げる。

途中、砲撃やらはヤドキングの【ねんりき】を使って反らしたり、ミサイルはルカリオの【はどうだん】と言った遠距離攻撃で迎撃していく。その際、ヤドキングよ【ねんりき】やウォーグルの【ふきとばす】で軌道を曲げ、カイザーの施設に飛ばしてしまったが、不可抗力であろう。

そして漸く、バンギラスの縄張りの入り口にまで到着した。

 

「はぁ、はぁ・・・・」

 

「・・・・ふう」

 

「キリが無いなあ、これは・・・・」

 

歩いて十数分の距離だったのに、退却戦をしていた一同はまるで数時間も歩いてきたような疲労感に襲われてしまう。

 

《・・・・せい、聞こえますか? 包囲網を抜け・・・・また・・・・が不安定・・・・早く・・・・退却・・・・が・・・・接近・・・・》

 

アヤネからの通信も不安定となり、通信が切れると、オートマタ兵が先回りして包囲されてしまった。

 

「・・・・絶対絶命?」

 

『ガルル!』

 

「包囲されちゃったかー・・・・」

 

『ヤドー』

 

「・・・・・・・・」

 

『ドン・・・・!』

 

一同が銃を構えて警戒すると、包囲の一部が開け、一台のゴリアテが包囲の中に入り、ゴリアテから、一人のキヴォトス人が出てきた。

身体がとても大きい機械の義体に黒く、見た感じ高級なスーツに身を包んだキヴォトス人の大人であった。

 

「侵入者とは聞いていたが・・・・〈アビドス〉だったとは」

 

『ウォー・・・・!』

 

「な、何よこいつ・・・・」

 

ウォーグルが前に出て、セリカを守るように立ち、そこから顔を出したセリカがそう言った。

 

「・・・・・・・・」

 

「(あいつは・・・・)」

 

ノノミとホシノが警戒するように目を細めた。そして、その男が言葉を発する。

 

「まさかここに来るのは思っていなかったが・・・・まあ良い」

 

その男、『カイザーPMC理事』を見てホシノは、以前目の前の男と、その『協力者』である『黒影』を相手に、『交渉』した時の会話を思い出す。

 

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

「『生徒会長』がいない今、副会長であるあなたが借金を返済していく、と言う事でよろしいでしょうか? 『小鳥遊ホシノ』さん? それとも・・・・私の『提案』を受け入れますか?」

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

「(あの時の・・・・)」

 

ホシノに構わず、カイザーPMC理事は声を発する。

 

「勝手に人の私有地に入り、暴れた事によるこれらの被害額。君達のがっこうのしゃっきんあに加えても良いのだが、まあ、大して額は変わらないな・・・・」

 

「あんたは、あの時の・・・・」

 

カイザーPMC理事は、ホシノに目を向けた。

 

「・・・・確か、例の〈ゲマトリア〉が狙っていた生徒会長・・・・いや、副会長だったか?」

 

“(・・・・〈ゲマトリア〉?)”

 

聞き慣れない単語に先生が目を細めるが、カイザーPMC理事は言葉を続ける。

 

「・・・・ふむ、面白いアイディアが浮かんだ、便利屋68やヘルメット団を雇うよりも良さそうだ」

 

「便利屋・・・・? な、何を言ってるの?」

 

「・・・・あなた達は、誰ですか?」

 

セリカとノノミが問いかけると、カイザーPMC理事は呆れたような素振りと声を発した。

 

「・・・・まさか私の事を知らないとは。アビドス、君達なら良く知っている相手だと思うがね。ーーーー私は、〈カイザーコーポレーション〉の『理事』を務めている者だ。そして君達、アビドス高等学校が借金をしている相手でもある」

 

「!!」

 

「・・・・嘘っ!?」

 

驚くシロコ達を他所に、カイザーPMC理事は近づき、声を発する。

 

「では、古くから続くこの借金について、『話し合い』でもするとしようか」

 

明らかに『マトモな話し合い』がされそうになかったが、抵抗も無駄のようだったので、大人しく連行され、砂漠の施設に連れて行かれ、そして漸くアヤネとの通信が戻った。

 

「アビドスが、借金をしている相手・・・・」

 

《か、〈カイザーコーポレーション〉の・・・・》

 

「正確に言うと、〈カイザーコーポレーション〉、『カイザーローン』、そして『カイザーコンストラクション』の『理事』だ。今は、『カイザーPMC』の『代表取締役』も務めている」

 

カイザーPMC理事の言葉に、シロコが割り込む。

 

「それはどうでも良いけど、要はあなたがアビドス高校を騙して、搾取した張本人って事で良い?」

 

「・・・・ほう」

 

シロコの言葉に、カイザーPMC理事は興味深そうに声を発すると、今度はセリカが声を発する。

 

「そうよ! ヘルメット団と便利屋を仕向けて、ここまで私達をずっと苦しませてきた犯人はあんたって事なんでしょ!?」

 

「ふむ・・・・?」

 

カイザーPMC理事は惚けたように声を漏らす。

 

「あんたのせいで私達は・・・・アビドスは・・・・!!」

 

「やれやれ・・・・最初に出てくる言葉がそれか。勝手に私有地へと侵入し、善良なる我がPMC職員達を攻撃し、施設を散々破壊しておいて・・・・くくっ、面白い」

 

いけしゃあしゃあと言うカイザーPMC理事は、さらに言葉を発する。

 

「だが、口の利き方には気を付けた方が良い。ここは『カイザーPMC』が合法的に事業を営んでいる場所。先ず君達は今、企業の私有地に対し『不法侵入』しているのだと言う事を理解すべきだ」

 

「・・・・!」

 

「・・・・っ!」

 

カイザーPMC理事の言葉に、シロコもセリカが何も言えなくなった。確かにここは、『一応』、カイザーの私有地である。不法侵入したのはアビドス対策委員会だ。

 

「さて話を戻そうか・・・・アビドス自治区の土地だったか。確かに買ったとも。だからどうした? 全ては『合法的な取引』、記録も全てしっかりと存在している。まるで、私達が不法な行為でもしているかのような言い方は止めて貰おうか。態々挑発に来た訳では無いのだろう? ここに来たのは、私達がここで何をしているのか気になったからか? どうしてアビドスの土地を買ったのか、その理由が知りたいのか? それならば教えてやろう。私達はアビドスの何処かに埋められていると言う、『宝物』の調査と、とある『実験』をこの場所で行っているのだよ」

 

《・・・・!》

 

「そんなでまかせ、信じる訳ないでしょ!!」

 

「それはそう。もしそうだとすると、このPMCの兵力について説明がつかない。この兵力は、私達の自治区を武力で制圧する為。違う?」

 

シロコの言葉に、カイザーPMC理事は、やれやれと首を振る。

 

「何を愚かな事を。ここには『危険な化け物』、君達が言うポケモンと言う『化け物共』が彷徨いているだろう? 数百両もの戦車、数百名もの選ばれし兵士達。数百トンもの火薬に弾薬。これくらいの兵力が無ければ危険ではないかね? 『化け物共』が妨害に来た時の為の兵力だ」

 

『『化け物共』・・・・?』

 

カイザーPMC理事がポケモン達の事を『化け物』と呼んだ事に、対策委員会と先生が片眉を揺らした。

 

「さて、そんな事よりも、君達程度をどうにかできるのだよ、私はーーーー」

 

“ーーーーちょっと待ってもらえないか?”

 

カイザーPMC理事が、スマホを取り出して何処かに連絡しようとしたが、先生が待ったをかけた。

 

「っ!」

 

先生の姿を見てカイザーPMC理事は、何やらビクリと、身体を硬直させた。

 

 

 

 

 

 

 

ー先生sideー

 

“ーーーーちょっと待ってもらえないか?”

 

先生が声を発して、ホシノ達の前に出てきた。

 

「っ! 貴様は・・・・!?」

 

先生を見た瞬間、硬直していたカイザーPMC理事は動き出し、何やら警戒するように身構えた。

 

「先生・・・・」

 

“皆。ここは任せて”

 

シロコに向けて先生は笑顔でそう言うと、ピカチュウとルカリオと御三家を率いてカイザーPMC理事に近づき、その眼前に立ち、対峙した。

 

“始めまして、カイザー理事。私は連邦捜査部『シャーレ』の先生だ”

 

「・・・・ああ。あなたが『シャーレ』の先生か?」

 

先生を見据えながら、カイザーPMC理事は弱冠の警戒を込めているかのように声を発した。

 

“あなたは、彼女達アビドスが、〈カイザーコーポレーション〉を探る為に勝手に侵入したかのように言っているが。それはとんだ勘違いだ。ーーーー私がこのアビドス砂漠に、連邦捜査部『シャーレ』の先生として『調査』に来たんだ。そして、彼女達対策委員会は私の『護衛』として、ここに来て貰ったんだ”

 

「『調査』、だと・・・・?」

 

先生の言葉に、カイザーPMC理事は訝しそうに問いかけると、先生は肩を落としながら応える。

 

“何でも、このアビドス砂漠は以前から、サダイジャやワルビアルにドラピオンだけでなく、凶暴性ではポケモンの中でもかなり上位に入っているバンギラスが群れを成しているそうじゃあないか。そんな状況を放っておけなくてね。この砂漠を調査して、バンギラス達がアビドス自治区や他の学校の自治区に行かないか『調査』に来たんだよ”

 

「バカな。『シャーレ』にそこまでの権限は・・・・」

 

“勿論ーーーーちゃんと〈連邦生徒会〉からも調査令状を得ている!”

 

先生は『シッテムの箱』に表示されて、『連邦生徒会からの調査令状』を見せた。ご丁寧に、許可を出したのは、現在〈連邦生徒会〉で最も強い権限を持つ『七神リン』の署名が記されていた。

ーーーーこの砂漠に来る直前に、先生がリンに頼み込んで準備して貰ったのだ。リンとしては、いきなりこんな礼状を用意してくれと言われ、頭に血管を浮かべているであろうが、〈連邦生徒会〉でもキナ臭い噂が絶えない〈カイザーコーポレーション〉の秘密が少しでも分かれば良いと言う打算的思考と、必死に頼み込む先生に根負けしたようだ。

そしてそれを見て、カイザー理事だけでなく、他の職員達も動揺したかのように肩を揺らした。

 

「っっ!? た、確かに、これは〈連邦生徒会〉からの許可を受けている令状のようだが、そんな情報はこちらにはーーーー」

 

“あれ? 連絡は来ていない? まぁ、遅れるのは仕方ないね。〈サンクトゥムタワー〉も色々と忙しいし。でも、〈連邦生徒会〉から許可は貰っているのは事実だからね。それなのにあんたの方が勝手に色々とベラベラ喋って話を勝手に進めてるから、中々切り出せなかったんだ。申し訳ないね♪”

 

白々しく応える先生に、カイザー理事は不快そう小さく舌打ちをしながら応じる。

 

「ちっーーーーだが、我が私有地に侵入したのは間違いない。更にこちらにも被害を出したのだがね?」

 

“あれぇ? 可笑しいなぁ? “最初に有無も言わせず銃弾やポケモン達をけしかけてきたのは、カイザーの方だったよ”?”

 

先生が『シッテムの箱』に、カイザーの方から先に攻撃を仕掛けてきた映像を見せた。

 

「・・・・・・・・・・・・ちっ」

 

それを見て、カイザーPMC理事は、不快感を示すように、再び小さく舌打ちをした。

 

“これは明らかにそちら側が攻撃を仕掛け、彼女達は私を守る為に仕方なく迎撃をしたんだ。その証拠に、アビドス側から攻撃は一度もしていないよ? あくまで迎撃行動と撤退行動を取っていただけだよ? まぁ、迎撃でミサイルを跳ね返して、そちらの施設に当たったりしたけど、これは不可抗力だねぇ?”

 

更に映像を見せると、カイザーPMC理事は、ワナワナと身体を震わせる。

 

「! そっか、だからこっちからは攻撃をするなって指示を出したんだ・・・・!」

 

「これなら被害者はこちら側である事を示せられますね!」

 

「ん。それにアヤネの方でもこの映像は録画している筈」

 

《はい! この砂漠に来てから先程までの映像は、先生の指示を事前から受けていましたから、余す事なく録画済みです!》

 

セリカとノノミとシロコとアヤネが納得したように言い、ホシノは先生の背中を真っ直ぐに見つめていた。

カイザーPMC理事は、必死に怒りを収めるように深呼吸をしてから、言葉を続ける。

 

「・・・・・・・・確かに、こちらから攻撃を仕掛けてきたのは明白だが。大人しく降伏すれば良かったのではないかね?」

 

“あなたはポケモンを襲わせて、さらに銃弾をぶっ放してくる相手に対して、『マトモな話し合い』ができるのかな? そのご立派な義体と同じように、随分と豪胆だね? 私はこの通り生身だからそうは思わなかったんだよねぇ”

 

にこやかに『皮肉』を言う先生に、カイザーPMC理事は、不快そうに拳を握り締めた。

 

「・・・・それで、君はどうするのかな?」

 

“・・・・そうだなぁ。〈カイザーコーポレーション〉がアビドス砂漠の奥で施設を作って、何かをしている事を〈連邦生徒会〉に報告するべきかなぁ?”

 

「何だと?」

 

先生の言葉に、カイザーPMC理事は静かに、ドスの効いた声を発するが、先生は怯まない。

 

“あれ? 善良なカイザーが、ここで〈連邦生徒会〉に知られると、なんか不味い事でもしているの?”

 

「馬鹿な。我々はここで『合法的な事業』をしているだけだ」

 

“へぇ〜、どんな『合法的な事業』なのかな?”

 

「企業秘密になるので応えられん」

 

“ふ~ん。如何わしい事をしている訳じゃあ無いのなら、別に報告されても文句は無いんじゃあないかなぁ?”

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

“・・・・・・・・・・・・”

 

カイザーPMC理事と先生の間で、静かに、しかし凄まじい火花が飛び散っているのを、対策委員会や周りのPMC職員達は感じていた。

 

「・・・・・・・・良いだろう。今回の事は『特別に不問』にしてやる。その代わり、〈連邦生徒会〉への報告は待ってもらえないか?」

 

“・・・・それはどうしてかな?”

 

「質問を質問で返すな。私がその気になれば、アビドスの借金を今から数十倍にする事も可能なのだぞ?」

 

『っ!?』

 

その言葉に、対策委員会の面々は肩を震わせる。

 

“ーーーーそれって『脅迫行為』であり、『シャーレ』だけでなく、〈連邦生徒会〉にも喧嘩を売る行為だって事、自覚してる?”

 

「ちっ・・・・運よく手に入れた権利で小賢しい手を使う小童が!」

 

“子供達を相手に、借金云々を持ち込んで卑劣な事をするロクでなしな『大人気取りの子供』よりマシだと思うけど?”

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

“・・・・・・・・・・・・”

 

再び火花を散らす二人。だが、先生の方が笑みを浮かべる。

 

“ーーーーでもまぁ、確かにこれ以上は不毛だね。ここはお互いに何も見なかったって事で良いかな?”

 

「・・・・良いだろう。余計な事をすればどうなるか、分かるな?」

 

カイザーPMC理事が、チラリと対策委員会を睨んで言った。

そして先生は、彼女達と理事の間に割って入る。

 

“そっちこそ、“一線を越えるような真似”をすれば、私は、嫌、私達は絶対に許さないからね?”

 

先生の言葉に同意するように、ピカチュウは小さく放電し、ルカリオは拳を鳴らし、リザードは口から炎を小さく吐き、カメールが小さな泡を吐き出し、フシギソウが葉っぱを散らせる。

 

「ーーーーふん。さっさと立ち去れ」

 

カイザーPMC理事は吐き捨てるように言うと、先生達は対策委員会の皆と合流しようと歩き出した。

 

“(・・・・アロナーーーー“どうだい”?)”

 

《はい! しっかり録音しました! これから認証します!ーーーーっ! 先生、カイザーが何か話をしています!》

 

先生は『シッテムの箱』のアロナに、カイザーPMC理事の声を録音させていた。

そして、アロナはカイザーPMC理事と職員の会話を集音機能で拾う。

 

《ーーーーよろしいのですか理事? あの先生と呼ばれる『シャーレ』の人間は、『実験体Fー00』を所持しているのですが?》

 

《ーーーー構わん。今〈連邦生徒会〉にふんぞり返っている、あの生意気な首席行政官‹七神リン›に感づかれる訳にはいかんからな》

 

《ーーーーしかし、このまま帰られてはいずれ・・・・》

 

《ーーーー心配するな。奴らがこの砂漠から学校に戻る為には駅を使うだろう? そこで『捕まえた化け物』共を使え。奴らは我々が『化け物』共を所有している事を知らん。野生の凶暴な『化け物』に襲われたと言えばどうとでもなる。ボロボロになった所で、『カラス』達を使ってーーーー》

 

と、何やら物騒な会話を繰り広げているのをアロナに録音されているのに気づかず、このまま記録しようと思ったその時ーーーー。

 

ーーーードゴオオオオォォォォーーーーンンッ!!

 

凄まじい地響きと衝撃音が辺りに響き、一瞬、その場にいた全員がよろめき、音のした方に目を向けると。

 

 

 

『ーーーードン! フアアアアンド!!』

 

 

 

そこに現れたのはーーーー『ドンファンのようなポケモン』であった。

『ドンファンのような』、と言う妙な言い回しなのは、そのポケモンが明らかに、ドンファンとは違い過ぎたのだ。

ドンファンに似た容貌をしているが、曲がりくねった長い牙、四肢に生えた赤い体毛、黒い背中にウロコと赤い棘が並んだ鱗板骨に長い尻尾、ギザ歯状の口と、怪獣染みた外見をし、ドンファンの亜種と思われるような姿。しかし、それだけではない。明らかにそのドンファンのようなポケモンはーーーー巨大だったのだ。

通常のドンファンの二十倍はあるであろう巨大な体躯。下手をすると小さな建物にも匹敵し得るその巨体は、明らかにドンファンのレベルを超えていた。

そして、その巨大ドンファン?は、周囲を囲んでいたカイザーPMCの戦車やオートマタ兵やドンファン達を、その巨体の足と鼻で薙ぎ払っていった。

 

「・・・・何あれ?」

 

「ドンファン、なんでしょうか・・・・?」

 

「いや、大き過ぎでしょう!? ていうか、ドンファンってあんなんじゃないじゃん!!」

 

シロコとノノミが首を傾げるが、セリカはカイザーのオートマタ兵の近くにいるドンファンと、巨大ドンファン?を交互に指差しながら叫んだ。

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

しかし、ホシノだけは冷静にその巨大ドンファン?を見据えていた。嫌、ここにももう一人。

 

“(アロナ・・・・あのドンファンみたいのって・・・・)”

 

《はい! 体内から、『秘伝スパイス』の反応が検知できました! 以前遭遇したガケガニさんと同じです!》

 

このアビドスに来る前日、〈ミレニアム〉の『岩壁エリア』で遭遇した先生である。あの時の巨大ガケガニと似た様に見える巨大ドンファン?を『シッテムの箱』で撮影した。

そんな事をカイザーの近くでやれば、向こうが騒ぎ出す筈なのだが、別の理由で彼らは騒ぎ始める。

 

「理事! 『実験体Aー01』を確認しました!!」

 

「そんな事は見れば分かる! しかしどうなっている!? 奴は、“あんな巨体では無かった筈だ”!!」

 

オートマタ兵の報告するが、カイザーPMC理事は巨大ドンファン?を指差しながら怒鳴りつける。どうやら、向こうはあの巨大ドンファン?の事を知っているような口ぶりだ。

それが気になった先生は、アヤネにこの映像を録画しているのかと質問しようとした。その時ーーーー。

 

《きゃああああああああああああああああ!!!》

 

『っっ!!??』

 

突然、通信機からアヤネの悲鳴が聞こえ、一同はカイザーも巨大ドンファン?もそっちのけで、通信機に手を当てた。

 

「アヤネちゃん!? どうしたの!?」

 

《な、何か、こちらにも見た事のない、変なポケモンが『ウィィィィィッ!!』『ビブラァー!!』 あっ、ビブラーバ!(ブツン!)・・・・》

 

と、セリカの問いに応えようとしたアヤネだが、聴いた事のないポケモンの鳴き声と、ビブラーバの鳴き声が聴こえるのも同時に、通信が切れてしまった。

 

「アヤネちゃん!? 聞こえるアヤネちゃん!?」

 

「すぐに戻りましょう! アヤネちゃんとビブラーバが心配です!」

 

「ん。先生」

 

“うん。ホシノ、ここからヤドキングの【テレポート】で行ける?”

 

「うん。ちょっと遠いけど。キンちゃん、本気で行くよ?」

 

『ヤドキン』

 

今までになく真面目顔のホシノに目を向けられ、ヤドキングも顔を引きし締めて頷くと、一同はピカチュウ以外をボールに戻し、ヤドキングを中心に固まる。

 

「っ! ま、待て貴様ら!!」

 

逃がしてなるものか、とカイザーPMC理事が声を張り上げるが、知った事ではない。

 

“悪いけど、“お互いに見なかった事にしよう”って事にした以上、ここに留まっているつもりは無いんでね! ホシノ!!”

 

「キンちゃん! 【テレポート】!!」

 

『ヤン!!』

 

ホシノが指示をすると、ヤドキングの周りにいた一同が、光りに包まれ、シュンッと音を立てて、瞬時に砂漠の景色から、見慣れたアビドス高校の正門に到着し、校舎の裏手から激しい轟音が響いてきて、全員がそこに向かった。

 

 

 

 

 

 

ーカイザーsideー

 

「おのれぇっ!!」

 

『ーーーードンファァァァド!!』

 

「のわっ!? ぐへっ!!」

 

一瞬で消えた『シャーレの先生』と『アビドス対策委員会』にカイザーPMC理事は忌々しいと言わんばかりに地団駄を踏むが、すぐに『実験体Aー01』の雄叫びと地響きでバランスを崩し、そのまま無様に尻餅を付いてしまうと、破壊された戦車の一部が、尻餅をついた自分の頭上すれすれを通過して地面に落ちてきた。

 

「っっ!! ひぃぃぃぃぃっ!!」

 

後、数ミリ、戦車の一部が下だったら自分の頭がふっ飛んでいたので、頭を押さえて見苦しく脅えるカイザーPMC理事に、カイザー職員が駆け寄る。

 

「理事! ご無事ですか?」

 

「な、何をしている!? 早くアレを捕獲しろ!!」

 

駆け寄った職員の胸ぐらを掴んで、カイザーPMC理事は見苦しく喚く。

 

「し、しかし・・・・! アレの戦闘力が思いの外に高く、兵達も苦戦を強いられております!」

 

「ならば『あの二匹』を使わんか!!」

 

「! で、ですが、『あの二匹』を使用するのはまだ危険です! まだ『調教』も済んでいないのに!」

 

「構わん! アレを止められるのは『あの二匹』だけだ! すぐに持ってこい!!」

 

カイザーPMC理事の命令に、職員は渋面を浮かべつつ、ゴリアテに置いておいた『二つのモンスターボール』を持ってきて、カイザーPMC理事に渡した。

 

「ーーーーさあ! 踏みにじって来い!!」

 

モンスターボールをカイザーPMC理事が投げると、ポンッ! とボールが開き、中から二体のポケモンが姿を現した。

 

『ギラァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!』

 

『ドラァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!』

 

『っ! ドン! フアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアドッッ!!!』

 

二体のポケモンが雄叫びを聞いて、巨大ドンファン?も雄叫びを上げて、二体のポケモンに向かって凄まじい勢いで突進していった。

 

 

 

 

 

 

 

ー先生sideー

 

“ーーーーアヤネ!!”

 

「アヤネちゃん無事!?」

 

「っ! あ、先生! 皆さん!」

 

校舎裏についた一同の目の前には、アヤネとビブラーバが、『見た事のないポケモン』とバトルをしていた。

 

 

 

『ーーーーウィ・ルドン・ファァァァァァァ!!』

 

 

 

ーーーーそこにいたのは、先程カイザーを襲った巨大ドンファン?と同じで、アレよりも普通のドンファンより二回り大きい体躯をしており、ドンファンとは思えない姿をしていた。

シルエットは、一見ドンファンのようにも見えるが、顔は小ぢんまりとしており、ドンファンの鼻であったベルト部分と完全に切り離されており、ベルトは赤と白のグラデーションに発光し、その顔も仮面のようなデザインで下顎以外は丸型のディスプレイ状の顔らしき部分に目と口が表示され、その横には小さいが牙のようなものが伸び、胴体は丸みを帯びた鉄球のような体型に飛行機の翼のようなものまで伸び、四足はその球体の身体を申し訳ない程度に支える、まるでむしポケモンのような小さく細い、それでいた機械的な足をしており、まるでドンファンに似せたロボットのようなポケモンだった。

 

「また変なドンファン!? 何なの!? 今日はドンファンに襲われる厄日なの!?」

 

「アヤネちゃん、あのドンファンどうしたの?」

 

「そ、それが、私達にも良く分からないんです・・・・。先生がカイザーと話し合いが終わった時、教室の近くにあるビブラーバ達のオヤツのポケモンフーズが置かれた倉庫から、変な物音がして、野生のポケモンでも侵入したのかな? ってビブラーバと一緒に見に行ったら、あのポケモンが盗み食いしていて、私達に気付くと襲い掛かってきたんです。それで思わず悲鳴をあげて、何とかビブラーバがここまで誘導して、そのままバトルになっちゃったんです・・・・」

 

『ルドン・ファアアアアア!!』

 

と、アヤネが経緯を話していると機械ドンファン?が吠えて、ベルトのような鼻を振り上げて攻撃してくる。

 

「っ! ビブラーバ! 【むしのさざめき】!!」

 

『ビブラー!!』

 

アヤネからの指示で、ビブラーバは翅から音波を発して機械ドンファン?を攻撃する。

が。

 

『ルドーンッ!!』

 

がしかし、むしタイプの攻撃はあまり効果が無いように見える。

 

“・・・・見た感じ、ドンファンと同じじめんタイプの他に、はがねタイプって感じだね”

 

「ん。それならノノミのサイドンか、先生のリザードかルカリオで攻めるべき?」

 

「いえ、私とビブラーバに任せて下さい。少し試したい事があるんです」

 

『ビブラー!』

 

アヤネと宙を浮いたビブラーバが前に出た。

対策委員会では一番ポケモンバトルの経験が浅く、以前の便利屋とのバトルでも黒星を上げてしまった。しかし、その日から早朝に先生にポケモンバトルの特訓に付き合って貰って、多少の腕を上げたから、その成果をこの機械ドンファン?で試そうとしているようだ。

 

「先生、どうしましょう?」

 

“・・・・アヤネとビブラーバの好きにさせてみよう”

 

ノノミが少し心配そうに訊くが、特訓に付き合ってきた先生は静かにそう言った。

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

『・・・・・・・・・・・・』

 

『・・・・・・・・・・・・』

 

アヤネとビブラーバ、機械ドンファン?が睨み合う。その静かな静寂の中、一陣の風が吹いた。

 

『ウィィィィィィィィィィィィィィィ!!』

 

機械ドンファン?が突撃し、その凄まじい勢いが衝撃の壁を作り出す。強力な突進技【ギガインパクト】を繰り出した。

 

「っ!! ビブラーバ!!」

 

『ビブ!!』

 

アヤネからの指示で、ビブラーバは地面に向かって急降下して、地面に着地する。

 

「【だいちのちから】!!」

 

『ビブラー!!』

 

ビブラーバが着地した地面からエネルギーが迸り、突進してくる機械ドンファン?の真下に来ると、地面が弾け飛んだ。

 

『ルドォォォォォォン!!??』

 

弾け飛んだ機械ドンファン?はそのまま上空に吹き飛ばされると、それを追ってビブラーバが重力に従って落下する機械ドンファン?に近づき。

 

「ビブラーバ! 【りゅうのいぶき】!!」

 

『ビブラァァァァァァァ!!』

 

『ファアアアアアアアアアアアアアア!!』

 

アヤネが指示を出すと、ビブラーバは口から竜の形をした息を吐き出すと、機械ドンファン?は地面に凄い勢いで落下し、何回かバウンドして漸く止まると、『まひ状態』となり、顔のディスプレイには目は大きな✕を作って動けなくなった。

 

“ーーーービブラーバの勝利!”

 

『ビブラー!』

 

「やったねビブラーバ!」

 

アヤネとビブラーバがハイタッチして喜びを分かち合うと、他の対策委員会のメンバーが集まる。

 

「凄いじゃんアヤネちゃん! ビブラーバ!」

 

「ん。勝利おめでとう」

 

「お見事でしたよ!」

 

「ちゃんと成長してくれてて、ママは嬉しいよぉ〜」

 

「ありがとうございます! 相手のポケモンが、疲弊してくれたのもありましたが」

 

アヤネの頭を撫でたり、ビブラーバをルガルガン達が胴上げした。

 

『・・・・・・・・・・・・・・・・』

 

そして改めて、この機械ドンファン?を見てみると、誰かが作ったドローンか何かだと思えるがポケモントレーナーとしての直感が、「これはポケモン、生命体である」と、全員とパートナー達は直感した。

ポケモンの中には、明らかに生物ではなくドローンやロボットに思われるような個体も存在するので、別段不思議ではないのだが、先生も対策委員会もこのドンファンと似た異様なポケモンを見た事があるのだ。

ーーーー否、ついさっきまで、ドラピオンの縄張りからバンギラスの縄張りに移動するまで、“先生とピカチュウ、ホシノとノノミが乗っていたライドポケモンと重なって見えたのである”。

 

ーーーーポンッ!

 

『アギャァ!』

 

“ーーーーミライドン?”

 

先生の腰から、バンギラスの縄張りに着いてから、モンスターボールに引き篭もっていたミライドンが飛び出してきた。

ミライドンを見て、セリカがすぐにウォーグルの背中に隠れるが、

 

『ウィィィィ・・・・? ルドン!?』

 

『アジャスッ!』

 

機械ドンファン?が目を覚ましてミライドンを見ると、驚いたようにディスプレイの顔を変化させた。

 

『ルドンルドドン!? ファァァァ!』

 

『アギャアギャ!』

 

何やら機械ドンファン?とミライドンの間で話し合いが行われていた。

 

「うへ~。先生、今さらなんだけどさ〜。ミライドンって何なの? そこのドンファン擬きもそうだけど、スマホロトムの『ポケモン図鑑アプリ』でも『NO Data』って表示されているんだけど? 教えてくれないかなぁ〜?」

 

ホシノの質問に、全員が先生に視線を向けていた。

先生はピカチュウとルカリオに目を向けると、二人もコクンて頷いた。

 

“・・・・それじゃぁ、もういい加減話した方が良いね。前もって言っておくけど。まだ確証も無かったし、皆を無駄に不安にさせないようにと思って、話さなかったんだ。でも、先程のカイザーとの会話で、私も腹を括ったよ”

 

そう言ってから先生は一度、深呼吸をしてから気持ちを落ち着かせると、対策委員会全員に向かって口を開いた。

 

“ーーーー皆、話すよ。私達がこの〈アビドス自治区〉に来る前日に何が起こったのか。そして、アビドスに渦巻いている謎の数々を・・・・!”

 




カイザーが何か仕掛けてきても良いように、リンちゃんに『調査令状』を頼んでいたのです。
そして次回、先生が〈アビドス自治区〉に来る前に起こった事を話します。
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