ポケモンアーカイブ   作:BREAKERZ

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カイザー、お前の罪を数えろ。
と言うわけで、連日投稿です。


先生の怒り。カイザーの破滅

ー先生sideー

 

『っ!?』

 

突然響いた爆音に、その場にいる先生とピカチュウ達以外が、目を見開いた。

 

「なっ!? き、北の方で大きな爆発を確認!」

 

「合流予定のブラボー小隊が巻き込まれてーーーー!!」

 

「何!?」

 

驚くカイザーPMC理事を他所に更に爆発が起き、その爆発でさらに誘爆して爆発が連鎖して、また別の爆発が起きる。

 

「東の方でも確認! 指揮連絡本部に通信取れません!!!合流予定だったマイク小隊、ベータ小隊も、大量のC4の爆発で・・・・!」

 

「っ! 西の方から『Fー01』が現れました! こちらの部隊を次々と撃破し、こちらに向かってきています!」

 

「何故『Fー01』まで!? 何が起きている!? アビドスの連中は、ここにいるので全員の筈・・・・!?」

 

完全に予想外の事態が起こり、先ほどの王様ぶった横柄な態度が薄れ、小物感が徐々に浮き彫りになっていく。

そして・・・・。

 

ーーーードスンッ!!!

 

その場に、巨大なポケモンが跳んできて、地響きを上げながら着地し土煙を上げると、その頭の上から、一人の女子と一匹のポケモンが立っていた。

 

「全く・・・・大人しく聞いていれば、何を泣き言ばっかり言ってるのかしら・・・・?」

 

風に揺れる長いコードを羽織り、その巨大ポケモンの後ろから、三人の人影と、六体のポケモンの影を従えてきた。

 

「・・・・!?」

 

その声に聞き覚えのあるアヤネは顔を向け、巻き上がった土煙が風で吹き飛ぶと、その姿を露わになっていく。

 

「目には目を、歯には歯を。無慈悲に、孤高に、我が道の如く魔境を行く・・・・。それが、あなた達『覆面水着団』のモットーじゃなかったの?」

 

「・・・・あ、あなたは!?」

 

そう。そこにいたのはーーーー『便利屋68』の社長・陸八魔アルだった。

その貌には、怒りとほんの少しの失望を混ぜたその表情は、彼女の目指すハードボイルドなアウトローに相応しいものだった。

正直、今まで見てきたアルには似合わない、と言うか意外な一面に、対策委員会が見つめる中、アルを淡々と口を開く。

 

「何をすればいいのか分からない、どうすればいいのかも分からない。やる事なす事、全部失敗に終わる・・・・。ここを潜り抜けた所で、この先にも逆境と苦難しかない・・・・」

 

と、そこで、アルは大きく息を吸い込み、怒りを込めて、言い放つ。

 

「だから何なのよっっっ!!!!」

 

「え、えっ・・・・?」

 

アルからの喝に、アヤネは戸惑ったような声を漏らすが、アルは止まらない。その傍らにいるマフィティフは、パートナーの威勢にニンマリと笑みを浮かべて、誇らしげに胸を張っている。

まるでーーーー「これが、俺の自慢のパートナーだ!」と、言わんばかりの態度であった。

 

「仲間が危機に瀕してるんでしょう!? それなのに、くだらない事ばっかり考えて、このまま全部何もかも奪われて、それで納得できるわけ!? あなた達は、そんな情けない集団だったの!? あなたのパートナーはまだ自分達は終わりじゃないって! 自分達は戦えるって! その心意気を見せる為に、進化までしたって言うのに! パートナーのあなたが折れてどうするのよ!!」

 

先生は、アルの中にある『カリスマ性』を見た。

戦いにおいて、銃や作戦、ポケモンの連度とレベル、それらと同じ位に大事だと思っている要素ーーーーそれは『士気』、『勢い』や『ノリ』とも言える。

アルの厳しい叱咤には、それと同じくらい、否、それ以上に周りを奮い立たせ、立ち向かわせる程の力があった。

クセの強いメンバーや獰猛な恐竜ポケモン達を束ね、空崎ヒナのいない〈ゲヘナ風紀委員会〉と互角以上に戦えるのも、アルのカリスマ性の影響が大きいように見えた。

すると、プテラにパートナーのエテボースと共に乗ったムツキが、まぁまぁとアルを宥める。

 

「いやいや、アルちゃんその辺で勘弁してあげなよ。メガネっ娘ちゃんは繊細なんだから、こういう時もあるって」

 

「ど、どうしてあなたたちが・・・・!?」

 

戸惑うアヤネに向けて、ムツキかにこやかに手を振ったいた。

 

「あはっ。メガネっ娘ちゃんのビブラーバ進化したんだ!? カッコいいね、フライゴン♪ それにしても、私の可愛いメガネっ娘ちゃんを泣かした罪は重いよ? だからもうこれは・・・・」

 

ムツキが揶揄うように口に手を当てながら笑うが、すぐにその顔が、凶暴で好戦的な笑みに変わって叫ぶ。

 

「ぶっ殺すしかないよねっ!!!」

 

『ウッホホー!!!』

 

『ギャァァっ!!!』

 

ムツキに声に合わせて、エテボースが構え、プテラも牙を剥いて叫んだ。

 

「ふふっ、ふふふふふ・・・・準備はできています、アル様。仕込んだ爆弾もまだまだ沢山ありますので・・・・」

 

『マタドガ〜ス』

 

『キュァァ!!』

 

不気味な笑みと笑いを上げながら、ハルカが言うと、ガラルマタドガスとトリデプスが応えるように声を発する。

 

「はあ、ごめん。先生、色々報告がてらラーメン食べに来たんだけど、どうにも鉄火場になっていたからさ。・・・・埋めておいた爆弾で、敵の増援を遮断。その間に敵の指揮官を無力化させて、指揮系統を崩壊させる。これで相手集団を一気に瓦解させる・・・・本来なら、風紀委員会相手に使う筈だったけど。ま、予行演習って事にしておこうか」

 

『ニャァ〜』

 

『クァァァァ!』

 

カヨコが溜め息を吐くが、カイザーのやり方にご立腹なのか割り切り、レパルダスもラムパルドも同意するように声を上げた。

そして、アルが対策委員会の皆に向けて声を張り上げる。

 

「目を開けなさい。腑抜けたあなた達に今から、真のアウトローの戦い方を見せてあげるわ。ーーーーハルカ」

 

「はいっ!」

 

そして、物騒な光を放つ目で視線を送るアルに、ハルカもこれまた物騒な笑みを浮かべて、ボタンを押す。

その瞬間ーーーー。

 

ーーーードカアアアァァァァァン!!

 

ーーーードドドドドドドォォォン!!

 

ーーーードカアアアァァァァァァァァン!!

 

至る所で爆発の連続が起こり、地響きや爆発音が響き渡る。

 

「うわぁっ!?」

 

『フライ!』

 

よろけるアヤネの身体を、フライゴンがその小さな手と大きな身体で支える。

 

「さあ、今こそ協業の時よ! 合わせられるわよね、先生!? そこの腰抜け達‹対策委員会›に、今こそ真のハードボイルドの力を見せつけてやるわ!」

 

“・・・・よし、やろう! そろそろピカチュウ達も暴れたくてウズウズしていたから!”

 

『ピカチュウ!』

 

『カルォ!』

 

『リザー!』

 

『カメー!』

 

『ソウソウ!』

 

先生の言葉に合わせて、ピカチュウ達も飛び出していった。

 

「せ、先生・・・・」

 

“皆。見ていて・・・・”

 

後ろにいる対策委員会の皆にそう言うと、先生は便利屋68に指示を出した。

 

“ハルカ! 敵を更に撹乱させて!”

 

「はい! マタドガス! 【ワンダースチーム】!」

 

『マタドガ〜ス!』

 

ガラルマタドガスか煙の玉を噴射させてカイザーの部隊に浴びせると、カイザーの兵とポケモン達は混乱したように動きまくる。

 

“ムツキ! 空から攻撃! フシギソウも【リーフストーム】!”

 

「OK! プテラ、【いわなだれ】!」

 

『ギャァァァ!』

 

『ソウー!!』

 

煙の中にいる敵達をプテラの岩と、フシギソウの草の突風で薙ぎ倒す。

 

“カヨコ! 離脱しようとしている奴らを逃さないで! カメールは【アクアテール】!”

 

「了解。行くよ皆」

 

『ニャァ♪』

 

『クァァ!』

 

『カメ!』

 

カヨコ達が煙から出てくる兵達を静かに仕留めていく。

 

”ピカチュウとルカリオはアル達と一緒に、派手に暴れてきて!”

 

『ピカ!!』

 

『カルォ!!』

 

「行くわよ! ガチゴラス、【あばれる】!! マフィティフは【ハイパーボイス】!」

 

『ガァァァァァァ!!』

 

『バッフゥゥゥゥンン!!』

 

煙が少し晴れると、そこに空かさずガチゴラスが突撃し、足を蹴り上げ、尻尾を振り回し、マフィティフが音波攻撃をし、ルカリオが飛び出して行くと、カイザーの兵達が枯れ葉のように吹き飛んでいった。

 

『ピーーーーカチュウ!』

 

『カーーールォ!!』

 

「ぐあああぁぁっ!?」

 

そして、ピカチュウの【アイアンテール】と、ルカリオの【はっけい】で殴り飛ばされたカイザーPMC理事も、三メートル程、宙を浮いてから、地面に叩きつけられる。

そして起き上がると、便利屋を睨みつける。

 

「貴様ら、飼い犬の分際でよくも・・・・っ!」

 

「五月蝿いわね、そんなの知ったこっちゃないわよ! あなたなんかより先生の方が、一緒に仕事がしやすかった! それだけの話!」

 

「あはっ。気に入らない雇い主を裏切る事くらい、悪党として当然でしょ! そんな事も予測できなかったの?」

 

若干強がるアルと違い、ムツキは今にも中指を立てて、舌を出してアッカンベーしようとするかのように挑発する。

 

「便利屋の皆さん・・・・」

 

それをフライゴンに支えられながら立ち上がったアヤネが呟く。

 

「そうだね、確かに悪党としては正解」

 

『ルガルガ』

 

「・・・・お陰様で目が覚めました。私達に今、こうして迷っている時間はありません」

 

『ドンッ!』

 

「そうだよ! 何よりも先ず、ホシノ先輩を取り戻さないと!!」

 

『ウォーッ!!』

 

迷いが晴れたかのように、シロコとルガルガン。ノノミとサイドン。セリカとウォーグルが立ち上がった。

 

『フライ』

 

「フライゴン・・・・そうだね。何よりも大切なのは、ホシノ先輩を取り戻す事だよね!」

 

『フラーイ!』

 

「ゴメンねフライゴン。折角進化までしてくれたのに、情けない姿を見せちゃって・・・・」

 

『フライゴン♪』

 

アヤネも漸く立ち上がり、フライゴンに謝罪するが、フライゴンはそんな事気にしておらず、寧ろアヤネが元気になったのが嬉しいと言わんばかりの声を上げ、アヤネに頬ずりまでした。

そして次に、ゴロゴロと地響きの音が対策委員会に近づいてきたのが聞こえ、対策委員会が視線を向けると、機械ドンファンがカイザーの兵達を薙ぎ倒しながら近づいてきた。

 

『ルドンファァン!!』

 

「えっ!? あ、あなた、どうしてここに!?」

 

『・・・・ルドン!』

 

機械ドンファンは、アヤネの質問に応える代わりに、カイザーを睨み付けた。

 

「多分ですけど、カイザーを倒すのに協力してくれるみたいですね♧」

 

「『非公認』だか何だか知らないし、『不法組織』だって構わない! そんな事は今、何の関係もない!」

 

「ホシノ先輩を助ける、今大事なのはそれだけ」

 

セリカとシロコの言葉に、カイザーPMC理事は、忌々しいと言わんばかりに睨み付ける。

 

「くっ、この期に及んで無意味な抵抗を・・・・! よくも・・・・!!」

 

『ピカッ!!』

 

ーーーーバキッ!!

 

「ぐばぁぁぁっ!!」

 

ピカチュウの【アイアンテール】をその横面に叩き込まれ、カイザーPMC理事は、盛大に、無様に倒れる。

そして、そんな男に、先生は静かに怒りを燃やす視線で見下ろしながら言う。

 

“言ったよねカイザー理事? 『一線を越えるような真似をすれば、私は、嫌、私達は絶対に許さないから』、って?”

 

「ぐぅぅっ!!」

 

先生の言葉に、更に理事は苛立たしげに身体を震わせるが、先生は構わず、毅然とした態度で言う。

 

“お前は一線を越えた・・・・よくも、私の大事な生徒達の想いを土足で踏み躙り、その聞くに耐えない下卑た声で嘲笑ってくれたな?”

 

「!!」

 

“ホシノの事、返してもらうよ”

 

「ふ、ふざけるな! 先生、貴様にそんな権利がーーーー」

 

 

 

《ーーーーその権利が必要ならば、こちらで用意してあげますよ》

 

 

 

カイザーPMC理事の言葉を遮るように、先生のポケットから、アビドス対策委員会も、便利屋68も知らない声が響いてくる。

 

「こ、この声は・・・・!?」

 

しかし、カイザーPMC理事は、その声の主を知っているのか、声を震わせていた。

そして、先生がスマホロトムを呼び出すと、スマホロトムは宙を浮いて、先生の前まで飛び、タブレットモードになって、その大きくなった画面に映された『人物』をカイザーPMC理事に見せた。

その『人物』を見て、カイザーPMC理事は二〜三歩後ろに後退して震える声を上げた。

 

「そ、そんな馬鹿な、今このアビドス自治区では通信妨害を・・・・!」

 

“そう。わざわざあの日、逃げたミライドンを追っていた時と同じパターン数でね。生憎だけど、私には二度の通信妨害が通じない心強い生徒がいるんだよ”

 

《このアロナちゃんにかかれば、あんな妨害電波なんてチョチョイのチョイっと、跳ね返せちゃうんですから!》

 

“ついでに、お前がアーマーガア達に指示を出していた装置も、〈ミレニアム〉がとっくに解析済みだからね”

 

先生が真っ直ぐ見据えながら言い、『シッテムの箱』のアロナがエッヘンと胸を張った。

そして、先生のスマホロトムから声を発した『その人物』は勿論ーーーー〈連邦生徒会〉の首席行政官 七神リン、その人であった。

リンは、それはそれは目に影が指した、にこやかな笑みと穏やかな口調だが、その声には、絶対零度とも言える程の底冷える迫力を混ぜて話し出した。

 

《ーーーー色々と興味深い話を聞かせていただきました。カイザーコーポレーション理事。最近〈キヴォトス〉全域で起こっている『R』との関連と、“アビドス砂漠を拠点に、得体の知れない実験で、太古と未来のポケモン達を呼び寄せて、〈キヴォトス〉への大規模なテロの計画”、とかを》

 

「〜〜〜〜!! き、貴様、約束を破って教えたのか!?」

 

カイザーPMC理事は、震える指でアビドス砂漠での事は見なかった事にした筈の先生を指差すが、先生はハッと鼻で笑う。

 

“いや〜変な事を聞くね? 私は何も報告していないよ。ーーーー〈連邦生徒会〉には、ね?”

 

「何・・・・?」

 

「〈連邦生徒会〉には」、この言葉で、カイザーPMC理事は嫌な予感がして、ブルブルと震える。そして、先生はフッと笑みを浮かべると、言葉を紡いだ。

 

“・・・・私って、結構多くの生徒と知り合っていてね。『R』の事を調べていたゲヘナ風紀委員や、〈トリニティ〉の『正義実現委員会』に『自警団』、『ティーパーティー』に顔が利く生徒に、〈ミレニアム〉の生徒会。その子達にーーーー『アビドス砂漠でこんな事があったんだよ』、って話をして、その子達が連邦生徒会に話したとしても・・・・私が報告した訳じゃあないからね?”

 

「あ・・・・あぁ・・・・ああっ・・・・・!?」

 

カイザーPMC理事の声が、段々恐怖が高まっているのが伝わった。まさか、今まで詐欺のやり方でアビドスから土地を奪ってきた自分が、詐欺まがいのやり方で出し抜かれるとは、なんと皮肉な事だろうか。

先生はそんなカイザーPMC理事に、まるで死刑宣告をする裁判長のように言った。

 

“それと、今このスマホロトム、『複数通話』になっているから、他の生徒の皆も紹介するね♪”

 

先生はリンの画面を小さくすると複数の画面が表示され、その下の文字には『チナツ』。『ハスミ』。『スズミ』。『ユウカ』。『ヒフミ』と記されていた。

『三大学園』の中で、先生と連絡が付いている生徒達だ。

そして、先生のスマホロトムから、リンと同じくらい氷のように冷たい声が響く。

 

《キキキ。どうも始めましてだなカイザー理事? 『単細胞の猿しかいない動物園』とーーーー》

 

《『世間知らずの馬鹿なお嬢様達』とーーーー》

 

《『計算しか能がない頭でっかちのマヌケ共』とーーーー》

 

《『クソ生意気な小娘共』です》

 

リンとユウカ以外、先生の知らない女の子の声が響いた。

恐らく、この連絡を受けたチナツ、ハスミにスズミにヒフミが、各々の学校の生徒会の代表にも聞かせたのだろう。

 

「あわ、あわわわ、あわわわわ・・・・!!」

 

最早カイザーPMC理事に、先程までの王様気分は欠片もなく、まるで大型のドラゴンタイプポケモンに睨まれた小型のむしタイプポケモンのように、惨めに怯えているだけであった。

 

“ーーーーアンタが言っていた『薬局』とかはね。もうとっくに各校の風紀委員や戦闘部隊が取り押さえているよ”

 

「な、なんだとっ!?」

 

先生の言葉に、カイザーPMC理事は、慌てて妨害電波を止めるように兵に指示を出してから、スマホで連絡を取ると、自分のスマホからの声と、先生のスマホロトムからの声が、重なった。

 

《『もしもし? もう既に捕まえていますよ?』》

 

職員のスマホに出たのは、各校の代表だった。

 

「なぁっ!? な、何故私の計画が分かった!?」

 

理由が分からないと言いたげなカイザーPMC理事に、先生が説明する。

 

“ゲヘナにある『薬局』には、カイザーの系列だからね。もしかしたら、他の系列の『薬局』のような場所にも『R』を運んでいるんじゃないかと思って、〈ミレニアム〉と〈トリニティ〉にいる生徒達に調査してもらったんだ。それと、他の学区の方には、便利屋の皆に、ブラックマーケットとかで調査して貰ってね。大当たりの連続だったんだ”

 

「フフフッ、中々楽しめたわ」

 

「〈百鬼夜行〉や〈山海経〉のご飯とか美味しかったね♪」

 

そう。先生はブラックマーケットの事件の時から、この可能性を視野に入れ、〈ミレニアム〉にはユウカとノアに連絡を入れ、〈トリニティ〉にはヒフミに伝達役になってもらって、便利屋には、アロナがピックアップした店を調べてもらっていたのだ。

そして、先程の会話からリンが各校に連絡をして動いてもらい、各地の自治区にあるカイザー系列の企業を制圧したと言う訳だ。

 

「ば・・・・馬鹿な・・・・! わ、私の計画が・・・・! 〈キヴォトス〉の支配者となる私の計画がぁ・・・・!!」

 

カイザーPMC理事が頭を抱える。今彼は、自分の足元にあるこれまで積み上げてきた地位が、権力が、その全てが、音を立てて砕けてゆき、地獄に真っ逆さまに落ちていく錯覚を覚えた。

 

《ーーーーでは、我々はこれにて失礼させていただきます。本社に逃げ帰っても、理事の椅子が残っていると良いですね?ーーーーでは先生。後はお任せしてもよろしいでしょうか?》

 

“うん。ありがとう皆”

 

そう言って、リン達は通信を切った。

 

「き、貴様ぁ・・・・!!」

 

せめてと言いたげに、カイザーPMC理事は先生を呪い殺さんばかりに睨み付けるが、先生はそんな視線に怯まず、逆に冷酷な視線で返した。

 

“ーーーーお前には、少しの逃げ場も逃げ道も与えない。徹底的に潰させてもらうよ”

 

「・・・・先生、怖い」

 

「気持ちは分かるけど、相当キレてるねあれ・・・・」

 

「ん。当然の報い」

 

「アハハッ♪ 小悪党にはお似合いの最後だね」

 

セリカとカヨコは流石に少し退くが、シロコとムツキはうんうんと頷く。

 

「あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"っ!!!」

 

すると、カイザーPMC理事はスマホをグシャッと握り潰して、ヒステリックにアスファルトに叩きつけると、獣のように喚き出した。

 

「もう良い!! こうなればこのアビドスだけでも手に入れて! ここを拠点に〈キヴォトス〉を支配してくれるわっ!! 『アレ』を持ってこい!! ついでに『化物共』もだ!!」

 

「し、しかし! 『アレ』はまだ調整中で、『化物達』も、前回の『Aー01』との戦いの負傷が回復したばかり、今使用するのは危険過ぎまーーーー」

 

「構わんっっ!!!」

 

「(グシャッ)ぐはっ!?」

 

カイザーPMC理事は近くにいた兵を殴り飛ばす。

 

「こうなったら徹底的に思い知らせてやろう・・・・!!」

 

そう言った瞬間、カイザーPMC理事の後方から、『巨大な兵器』が降り立ち、カイザーPMC理事はそれに乗り込んだ

 

「見るがよい! 我々の技術の粋を集めた超強化外骨格! 最高純度の素材で組成した装甲とアクチュエーターを搭載した、最新兵器だ!!!」

 

頭部に当たる部分に大砲を備えた、全身武器だらけな『パワードスーツ・ゴリアテ』の改良型と思われる機体が二本足で立った。

 

「出力は12860馬力! 四方八方からの銃撃や爆弾の爆発を至近距離で受けながらも耐える強靭な装甲! 両腕のガトリングガンと肩部ミサイルポッド、主砲のビーム砲による圧倒的な火力とこの巨体!!」

 

「うわ~おっきい〜♪」

 

「ど、どどど、どうしましょう・・・・?」

 

「これはちょっとキツイかな?」

 

ムツキは面白そうに言い、ハルカとカヨコは頬に汗を垂らす。

 

「先生、さがって・・・・!」

 

シロコが先生の手を引き、自分達の近くにいさせるが、カイザーPMC理事は、怨嗟に満ちた声を張り上げた。

 

「シャーレの先生っ! 貴様だけはっ! 貴様だけは私自らの手で! バラバラにしてくれるわっ!!」

 

『先生!!』

 

「貴様らの相手はコイツらだ!!」

 

対策委員会と便利屋が先生を守ろうと動こうとするが、カイザーPMC理事が虚空に向かって叫ぶと、空からモンスターボールが大量にばら撒かれ、それが開かれると、中から出てきたのは、ドンファンではなく、毒々しい姿をしたサソリのようなポケモンと、ゴリアテと同じ巨体をした怪獣のようなポケモンであった。

先ずは、尻尾が蛇腹状に長く伸び、これまた蛇腹状に伸びた腕が頭部から直接生えているという、異形な外見をしたサソリのようなポケモン『ばけさそりポケモン・ドラピオン』。

 

『ドラァアアアアアアアアアアアアアアアア!!!』

 

もう一方は、肌が緑色の岩のようにゴツゴツとしており、背中はいくつもの鋭い背ビレで覆われている。目つきは鋭く獰猛さを醸し出している。体中心が菱形に開いており、青い模様が背中にもある。首元や膝部分などには黒い穴が開いている怪獣のようなポケモン『よろいポケモン・バンギラス』。

 

『ギラァアアアアアアアアアアアアアアアア!!!』

 

その見るからに獰猛で凶暴そうなポケモン達の首には、何かの『首輪』が付けられ、十数匹かの群れとなっていた。

更に空から、同じように『首輪』を付けられたアーマーガアの群れまで現れた。

 

『ガァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!』

 

現れたポケモン達は、カイザーPMC理事の周りに集まっていった。

 

「っっ!!?」

 

『ルガルっ!?』

 

「あ、アイツらって・・・・!?」

 

「間違いありません! アビドス砂漠の奥地を縄張りにしている、ドラピオンとバンギラスですっ!」

 

「で、でもどうしてあの凶暴な二匹の群れが、カイザーに!? まさか別の・・・・?」

 

「違うノノミ。あの中に特に大きくて、身体に傷があるボス達の特徴がある。アイツらはアビドス砂漠のドラピオンとバンギラスだよ」

 

対策委員会と便利屋、そして先生は、まさにそこに現れたポケモン達の中で、カイザーPMC理事の乗るゴリアテ改の後ろ隣に立つ二体のドラピオンとバンギラスを見る。

他の群れの中で、一周り大きな体躯をし、バンギラスのその身体には、無数の傷が刻まれていた。

ドラピオンも身体にも傷があるが、一番に目を引くのはその顔にある目の傷であろう。片方の目には、明らかにポケモンのではなく、銃創の傷跡が一直線に伸びていた。

 

『っっ!!? ドラァァァァァァァァァァ!!!』

 

そしてボスらしいドラピオンーーーーボスドラピオンが、対策委員会を、否、正確に言うならばシロコもルガルガンを見ると、まるで親の仇でも見つけたかのように雄叫びを上げた。

 

「ドラピオン・・・・!!」

 

『ルガルゥゥ・・・・!!』

 

しかしそれは、シロコとルガルガンも同じであった。まるで宿敵にでもあったかのように目を細め、銃を構え、牙を剥いて身を低くし、いつでも迎撃や強襲が取れる臨戦態勢となっていた。

しかし、アビドス砂漠の奥地にいるボスドラピオンが率いるドラピオン軍と、ボスバンギラスが率いるバンギラス軍が、カイザーコーポレーションにどうして従っているのかが分からなかった。

 

「で、でも何でバンギラスにドラピオンがっ!?」

 

“っ! 『R』を使ったのかな・・・・?”

 

セリカの言葉に、先生が思わず呟いた言葉が聞こえたのか、カイザーPMC理事は、高笑い混じりに声を張り上げた。

 

「その通りだ! アビドス砂漠の奥地で小競り合いをしていたコイツらに、ドローンで『R』をばら撒き、暴走状態にさせて暴れさせたのだ! そして暴走を終えて疲弊し、疲労困憊になったコイツらを捕らえるのは造作も無かった! さらにコイツらが暴走したお陰で、“最も厄介で目障りだった『化物共』も片付けられたのだからな”!!」

 

そして、カイザーPMC理事は、ボスバンギラス軍とボスドラピオン軍、そしてアーマーガア軍に向けて命令をする。

 

「さぁやれ化物共!! 私から全てを奪ったあの男を! 『シャーレ』の先生を八つ裂きにしてしまえぇっ!!!(ピッ)」

 

『(ビリビリビリビリ)ドラァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!』

 

『(ビリビリビリビリ)ギラァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!』

 

『(ビリビリビリビリ)ガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!』

 

ボスドラピオンとボスバンギラス、さらに他のバンギラス達やドラピオン達やアーマーガア達の首に巻かれた『首輪』から電流のようなものが流れ、苦しんでいるような叫びを上げた。

 

「あれって・・・・?」

 

「カイザーのようなトレーナーでない奴らとかが良く使う手だよ。自分達のレベルの低さから言う事を聞かないポケモン達や、ゲットした訳ではないポケモンには、ああいった首輪を使って無理矢理言う事を聞かせるってやり方だ」

 

「そんな・・・・! ポケモンを何だと思っているのですか!?」

 

「さっきあの理事っておじさんが言ってた通り、『ただの化物』程度にしか思っていないんだよ」

 

シロコの質問にカヨコが不快そうに目を細めて説明し、普段は温厚なノノミですら怒りを感じているように声を上げ、ムツキが、瞳に更に怒りを宿しながら断言した。

ポケモン達をパートナーとして、友として大切にしているポケモントレーナー達にとって、こんな道具を使った無理矢理従わせるだなんてやり方に、不快感と怒りを感じずにはいられないのだろう。現に、先生も腸が煮えくり返りそうである。

が、そんな先生達の怒りなど知った事ではないと言わんばかりに、カイザーPMC理事は、まるでオモチャを自慢する幼稚な子供のように騒ぎ出す。

 

「どうだ! これが貴様達が『友達だ!』、『パートナーだ!』、『家族だ!』と幼稚な言葉で並べている『化物共』の本来の使い道だ! 所詮我々のような技術と知識を持つ者にーーーー『道具』として扱われるのが、この『化物共』に相応しい姿なのだよ!!」

 

『っっ!!』

 

対策委員会、便利屋、そしてそのパートナーのポケモン達が、臨戦態勢となってカイザーPMC理事に向けて銃口を向けた。

が、その前に、先生とピカチュウ、ルカリオと御三家が立った。

 

“ーーーー皆。アイツは私達に任せて”

 

『先生!?』

 

先生がそう言うと、全員が声を張り上げた。キヴォトス人ではない先生が、あんなパワードスーツを相手に戦うなんて自殺行為だと思われるのだから、当然とも言える。

しかし、先生はにこやかな、笑みを浮かべて、皆に指示を出す。

 

“今、カイザー理事の標的は私だ。私が前に出ればヤツは私にばかりに攻撃を集中するだろう。けど、裏を返せば、私だけマークして、他の皆への注意が疎かになるって事だよ”

 

「つまり、指揮系統は僅かに乱れるから、私達はその隙を突けって事?」

 

“そう。空のアーマーガア達は、セリカとウォーグル。ムツキとプテラ。それとできれば・・・・アヤネとフライゴンにも”

 

先生が経験が浅く、進化して間もないアヤネとフライゴンを見て難しげな顔を浮かべるが、アヤネが前に出る。

 

「・・・・先生。さっきまで情けない姿を見せましたが。もう大丈夫です」

 

“アヤネ・・・・”

 

「私達も戦います! ホシノ先輩を取り戻す為にも!!」

 

『フラーイ!!』

 

アヤネとフライゴンの決意に満ちた目を見て、先生は頷いき、指示を飛ばす。

 

“ーーーー分かった。無理はしないでね。バンギラス達の方だけど、体格とパワーから、アルとマフィティフとガチゴラス。ノノミとサイドンに任せたい”

 

「分かったわ!」

 

「・・・・あの先生、一つお願いがあります」

 

“ん?”

 

アルは了承したが、ノノミが小さく手を上げて前に出る。

 

「ボスバンギラスの方は、私とサイドンに任せて下さい」

 

『ドン!』

 

ノノミとサイドンの目には、無謀に挑もうとしている気配を感じられなかった。

 

“分かった。それじゃそこの未来ドンファンもアルに協力してくれるかな?”

 

『ウィ〜?』

 

先生が機械ドンファンに目を向けてそう言うが、機械ドンファンは「何で俺がお前の命令に従うんだよ?」と言わんばかりの訝しそうな顔をする。

 

「お、お願いします、ドンファン?」

 

『・・・・ルドン』

 

アヤネが頼むと、仕方ないと言う顔をして頷いた。その様子に少し苦笑した先生は、改めて指示を出す。

 

“・・・・それじゃ、ドラピオンの方はカヨコとレパルダスとラムパルド、ハルカとガラルマタドガスとトリデプスにお願いしていいかな?”

 

「うん。任せて」

 

『ニャァォッ』

 

『クァァァッ』

 

「い、一匹残らず、殲滅します・・・・!」

 

『マタドガ〜ス』

 

『キュァァァ!』

 

機械ドンファンの態度に先生が苦笑しつつも、カヨコとハルカに指示を出し、二人が承諾すると、ポケモン達も了解を示した。

 

“ーーーーシロコ。ルガルガン”

 

「ん」

 

『ルガ』

 

“念願のボスドラピオンとの一騎打ちだ。任せたよ”

 

「勿論」

 

『ルガルッ!』

 

先生は既にターゲットを決めているシロコとルガルガンに、ボスドラピオンを任せた。

 

『ドラァァァァァァァァ・・・・!!』

 

向こうも、シロコとルガルガンをターゲットにしたようだ。

 

“理事。僕達とバトルだ! シャーレとアビドス対策委員会と便利屋68と、お前達カイザーPMCとな!”

 

「良いだろう!! ここにいるポケモンは、“全て私の手持ちだ”! 貴様ら全員、このアビドス自治区も更地にしてくれるわっ!!」

最早冷静な判断が取れているとは言えない様子で、カイザーPMC理事がそう叫ぶのを『シッテムの箱』で記録した先生は、ミライドンを呼び出し、その上に乗ってから、周りにいる対策委員会と便利屋の生徒達に声を上げる。

 

“それじゃぁ皆ーーーー行こう! ここから反撃開始だ!!”

 

『はいっ!』

 

『ーーーー!!』

 

そして今、アビドス自治区で激しい戦いの火蓋が、切って落とされた。




次回、アビドス攻防戦が繰り広げられる!
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