そして、新たな御三家も。
新たな冒険の始まり
ー???sideー
ーーーー・・・・・・・・・・・・・・・・
ーーーー私の声が、聞こえますか・・・・。
ーーーーそこにいますか? この世界を救うーーーー
「ーーーー勇者よ。あなたの事をずっと待っていました。今こそ全てを話しましょう。太古。天使と悪魔が・・・・・・・・」
何やら神秘的な空気を纏い、意味深な言葉を並べる少女ーーーー。
「カットカット、カッーーーート! ダメダメ! ありきたり過ぎ! これだと発表と同時にコケそうな感じ! 私がユーザーだったら、プロローグでこのテキストが出た瞬間に『あ、やめよ』ってなるよ!」
が、すぐに騒ぎ出して神秘的な空気も一瞬で霧散してしまい、何やらおちゃらけた空気が充満した。
「もう一回! うーん・・・・・・・・勇者よ、あなたを待っていました。私は、女神『モモリア』」
と、また神秘的な空気と意味深な言葉で自己紹介する。
「私達の世界〈ミレニアムランド〉は今、過去に類を見ない危機に瀕しています。この危機を乗り越え、生徒会よ廃部命令から『ゲーム開発部』を・・・・いて、〈ミレニアムランド〉を救えるのは、あなただけです。過酷な道になるかも知れません・・・・それでも、どうかお願い致します。これから始まる、あなたの冒険のその先に・・・・どんな試練や逆境が待ち受けているのか、今はまだ分かりません。ですが・・・・どうか最後まで、勇気だけは失わないで下さい。勇者様の側には、旅路を共にする少女達もいる筈ですから」
ーーーー新しい世界で、あなたはその少女達から『勇者』ではなく・・・・。
ーーーーもっと特別な、相応しい名で呼ばれる事でしょう。
ーーーー『先生』と言う名前でーーーー。
ー先生sideー
《ーーーーと言う感じで、『部の支援要請』が来ているのですが、どうしましょうか先生?》
“・・・・・・・・”
連邦捜査部『シャーレ』にある先生の執務室にて、アビドスでの事後処理もそこそこ終えて、色々な自治区に赴いてソコで起きた騒動を終えた先生は、〈百鬼夜行連合学院〉に行った時に、『川和シズコ』と『のうてんきポケモン・ルンパッパ』が経営する『百夜堂』で買ったどら焼きを食べながら、『シッテムの箱』のアロナから新しい要請を聞いて眉根を寄せる。
何やら切迫しているようなのは分かるのだが、何かふざけていると言うか、真面目にやれと言いたくなる感じが出ているのであった。
“・・・・まぁ、行ってみようか。ピカチュウ。ルカリオ。イーブイ。ミライドン。『ヒノアラシ』。『チコリータ』。『ワニノコ』”
『ピカッ』
『カルゥ』
『ブイ!』
『アギャァス!』
『ヒノ?』
『チコ?』
『ワニ?』
近くのソファやミライドンに座り、同じくどら焼きを頬張っていたピカチュウ達と、新たに加わった御三家が振り向いてくる。
先ず一匹目は、糸目に尖った顔付きで、鼻先から尻尾までの身体の上は黒く、下は肌色をし、丸めている背中には四つのオレンジ色の斑点がある『ひねずみポケモン・ヒノアラシ』。
次は愛くるしい顔に、黄緑色の全身、四足歩行、長めの首、小さな尻尾、首周りには生えた突起のような芽が生えており、頭には大きな葉っぱが特徴的な『はっぱポケモン・チコリータ』。
最後は水色の小さなワニで、二足歩行をし、胸に黄色いV字模様と背中の赤い背びれ、隈取りのある大きな目など、愛くるしい姿をした『おおあごポケモン・ワニノコ』。
アビドスに残ったリザードン、フシギバナ、カメックスの代わりにリンが用意してくれた御三家である。
“〈ミレニアム〉に行くよ”
そう言って、先生は肩にピカチュウを乗せ、他の皆をボールに収めてから『シャーレ』を出ると、再びミライドンを出して乗り込み、『三大学園』の一角、合理と技術を重視する〈キヴォトス〉の最新鋭と最先端の学校、〈ミレニアムサイエンススクール〉へと走らせた。
◇
“・・・・・・・・”
『ピカピピ!』
目を覚ました先生が見たのは、自分を心配そうに見下ろしているピカチュウとーーーー。
“・・・・知らない天井だ”
「ぶふっ!!」
『プラプラプラプラ!』
『マイマイマイマイ!』
見慣れない天井を見て思わず呟いた言葉に、何処からか噴き出すような声が響き、その声の方に目を向けると、小柄な女の子と二匹のポケモンがお腹を抱えて爆笑していた。
「ちょっとお姉ちゃん! 『プラスル』! 『マイナン』! 笑ってる場合じゃないでしょ!?」
「ーーーーいやだってさ! あんなお約束的な台詞を言うなんて思わないじゃん!」
爆笑している女の子とソックリな容姿をしている女の子が怒ると、漸く笑いが収まった女の子が、先生に近づく。
「では改めましてーーーー先生、大丈夫? このまま目を覚まさないのかと思ったよ」
「本当に良かったです。お姉ちゃんが窓の外に投げたプライステーションが、偶然とは言え先生の頭に命中した時は・・・・このまま殺人事件の容疑者になってしまうかと思いました」
言われて先生は思い出した。
〈ミレニアム〉に到着し、ミライドンをボールに収めると、突然頭に衝撃が走って気を失ってしまったのだ。
「お姉ちゃんの代わりに謝ります。ごめんなさい、先生」
「ふーんだ。そう言う『ミドリ』だって、私が『もしかしたら当たっちゃったかも!?』って叫んだ時、第一声は『プライステーションは無事!?』だったじゃん」
“・・・・・・・・”
『ピカ・・・・?』
『プラ!』
『マイ!』
先生がピカチュウに目を向け、ピカチュウが二匹の双子のようなポケモンに目を向けると、二匹は元気よく頷いてみせた。
「そ、それは、私達『ゲーム開発部』の財産リスト第一号だし、思わず・・・・」
どうやらしっかり者に見えたこの子も、根はお姉ちゃんと呼ぶ女の子と同レベルのようだ。周りを見ると、結構広い部屋に色々なゲーム機が置かれていた。
「と、兎に角!! 先生は、あの『シャーレ』から来たんですよね?」
そう聞かれ、先生が頷くと、お姉ちゃんと呼ばれていた女の子が顔を満面の笑みにする。
「うわっ、本当に!? じゃあ私達が送った手紙、読んでくれたんだ! もし読んでくれたとしても、本当に来てくれるなんて思ってなかった!」
そう言って、二人の女の子、双子の姉妹は並んで挨拶をする。
「『ゲーム開発部』へようこそ、先生!」
「先生に来ていただけて、嬉しいです」
「私は『ゲーム開発部』、シナリオライターの『モモイ』! パートナーは、プラスル!」
『プラ♪』
「私は『ミドリ』。イラストレーターで、ゲームのビジュアルの全般を担当しています。パートナーはマイナンです」
『マイ☆』
最初に自己紹介をしたのは、ネコミミ形のヘッドホンカチューシャと、機械でできている猫の尻尾にを付け、カチューシャやコートを半脱ぎ状態で着て、制服のコートのラインや『ヘイロー』まで桃色になっている双子の姉が〈ミレニアム〉の一年生、『才羽モモイ』。
妹の方は姉よりも大人しい印象を受け、同じネコ耳と服装だが、コートはキチンと着込んでおり、姉の制服やコートの桃色のラインや『ヘイロー』が緑色となっているのが、同じく一年生の『才羽ミドリ』。
モモイの頭の上に乗っているのは、ピカチュウをより小柄にし、ネズミからウサギのような姿になり、長い耳は赤く、ほっぺには赤の円の中に『+』となり、尻尾も赤い『+』の形となっている『おうえんポケモン・プラスル』。
ミドリの肩に乗っているのは、プラスルと瓜二つだが、耳やほっぺや尻尾が青く、『−』となってる『おうえんポケモン・マイナン』であった。
「あと今ここにいないけど、企画周りを担当している私達の部長、『ユズ』とそのパートナーを含めて・・・・」
モモイがそう言うと、双子とプラスルとマイナンは両手を広げて言う。
「私達が、〈ミレニアムサイエンススクール〉の『ゲーム開発部』だよ!」
“うん。よろしくね”
『ピカチュウ』
「よしっ! じゃあ先生も来た事だし、『廃墟』に行くとしよっか!」
“『廃墟』?”
『ピカ?』
モモイの言葉に、先生とピカチュウが首を傾げた。
「あ、じゃあ最初から順に説明するね」
先生とピカチュウに、モモイが詳しく話した。
「えっとね、先ず私達『ゲーム開発部』は今まですっと、平和に16ビットのゲームとかを作ってたんだけど。ある日・・・・急に生徒会から襲撃されたの!」
“襲撃!?”
『ピカ!?』
「一昨日には、生徒会四天王の一人であるユウカから最後通牒を突きつけられて」
“ユウカからの最後通牒?”
『ピカチュウ?』
「それについては直接私から説明しましょうか?」
モモイの話を聞いていると、ゲーム開発部の部室の扉が開き、よく知る少女が入ってくる。
「「こ、この声は!?」」
『プララ!』
『マイマイ!』
「・・・・・・・・」
『・・・・(ペコリ)』
驚きの声を上げるモモイとミドリ、歓迎するように片手を上げるプラスルとマイナンの後に、〈ミレニアムサイエンススクール〉の生徒会『セミナー』の会計である早瀬ユウカとそのパートナーであるサーナイトが立っており、サーナイトは優雅に会釈した。
「出たな、生徒会四天王の一人! 『冷酷な算術使い』の異名を持つ生徒会の会計、ユウカ! そしてそのパートナーである、去年の『ミレニアム・ポケモンタッグバトル』の優勝者の片割れにして、『ミレニアム・ポケモンコンテスト』の『うつくしさ部門』&『かしこさ部門』の覇者、サーナイト!」
「勝手に変な異名を付けて、人を何かの軍団か何かみたいに呼ばないでくれる? 失礼ね。まぁ、私のサーナイトが強くて賢くて美人だって言うのは事実だけど!」
モモイの変な異名にユウカは眉間に皺を寄せ、不機嫌そうな顔になるが、サーナイトの事を褒められて少し機嫌を良くする。
「それよりも・・・・先生。ピカチュウ」
“やあ、ユウカ”
『ピッカ!』
「あっ、ユウカってば声色を変えてない?」
「『ふとももの算術使い』とも呼ばれているのに、先生やピカチュウの前だとあんな態度なのかな?」
「私達のプラスルとマイナンにも鼻の下を伸ばしている癖に浮気かな?」
「そこ、うるさい!」
モモイとミドリが先生とピカチュウを前にして大人しい態度を取るユウカを見て、ヒソヒソと話をしていると、ユウカがビシッ、と指差してから、ため息を吐いた。
「・・・・はぁ、こんな形で会うなんて。先生とは色々と話したい事もありますが、それはまた後にするとして・・・・モモイ」
「ぅ・・・・」
ユウカがモモイの方に目を向けると、モモイはギクッと肩を震わせ、気まずそうな顔をした。
「本当に諦めが悪いわね。廃部を食い止める為に、わざわざ『シャーレ』まで巻き込むだなんて。けど、そんなことしても無意味よ。例え〈連邦生徒会のシャーレ〉だとしても・・・・いえ、あの『連邦生徒会長』が戻ってきたとしても! 部活の運営については概ね、各学校の生徒会に委ねられているんだから」
『サーサー』
ユウカは段々ヒートアップし、サーナイトがまぁまぁと宥めている。その熱気に押されたモモイは、ジリジリとユウカから距離を取っていった。
「『ゲーム開発部の廃部』はもう決まったことなの、これはもう誰にも覆せない」
「そ、そんな事はない!」
後退するモモイにユウカはにじり寄り、その事実を突き付けた。その事実を突き返すかのように、モモイはユウカに勇気を出して詰め寄る。
「言ってたでしょ、部員が規定人数に達するか、ミレニアムの部活として見合う成果を出せれば・・・・」
「・・・・ソレが出来れば良し。もしできなかったら廃部、部費は勿論部室も没収するって。私、そこまでちゃんと言ったわよね」
ユウカはそんなモモイに対し、ただ淡々と廃部の理由を述べる。そして彼女の言っている事は〈ミレニアム〉で制定されている規定である以上、『ゲーム開発部』が従わなければならないものである。
「あなた達は部員数も足りない上に、部活としての成果を証明できるようなものも無いまま、もう何か月も経ってるんだから・・・・廃部になっても何の異議もないはずだけど?」
「異議あり! 凄くあり! 私たちだって全力で部活動してる! だからあの・・・・『上場閣僚』? みたいなのがあっても良い筈!!」
「それを言うなら『情状酌量』でしょう・・・・。それより、今なんて言ったかしら? 全力で活動してる・・・・? 笑わせないで!」
『サナ!』
モモイの全力で活動しているという言葉に対し、ユウカの怒りのボルテージが一気に上がり、モモイも黙ってしまい、サーナイトがユウカを羽交い締めして必死に抑えるが、ユウカは廃部理由を言う。
「校内に変な建物を建てたと思ったら、まるでカジノみたいに装飾してギャンブル大会を始めるし、レトロゲームを探すとか言いながら『古代史研究会』を襲撃するし・・・・おかしいでしょう!? 『全力』かも知れないけど、部活動としては間違ってるわよ! ソレに、これだけ各所に迷惑かけておいて、よく毎度のように部費なんか請求できるわね!? 真っ当な言い訳してみたらどうなの!」
「と、時に結果よりも、心意気を評価してあげる事も必要・・・・」
「負け犬の言い訳なんて聞きたくない」
「聞きたいのか聞きたくないのかどっちなのか!」
ユウカの言っている事は正に正論の暴力であり、叩きこまれまくるが、ソレでもモモイが反論する。
「無意味な言い訳は聞きたくないって事よ。〈ミレニアム〉では『結果』が全てよ!」
「け、結果だってあるもん! 私達も、ゲーム開発してるんだから!」
「そ、そうですよ!『テイルズ・サガ・クロニクル』はちゃんと、『あのコンテスト』で受賞、も・・・・」
ーーーー『結果が全て』。
合理的な〈ミレニアム〉らしいユウカの言葉に対し、モモイとミドリは姉妹揃って反論する。ゲーム開発部と名乗るだけあってゲーム自体は作っているようだ。
“『テイルズ・サガ・クロニクル』?”
先生は、聞いた事のないゲーム名に首を傾げていると、ユウカがワナワナと震えながら声を発する。
「・・・・そうね、確かに受賞、してたわ」
一旦落ち着いたユウカを見て、サーナイトが羽交い締めを緩めると、ユウカは先生に目を向けた。
「その反応を見るに、先生はご存じないようですね。『テイルズ・サガ・クロニクル』・・・・この『ゲーム開発部』における、唯一の成果です。ゲームそのものもさることながら、レビューが大変印象的でした」
“へぇ、どんなレビュー?”
「『私がやって来たゲーム史上、ダントツで『絶望的』なRPG。いやシナリオの内容とかじゃなくて、ゲームとしての完成度が』」
“え・・・・?”
「『このゲームに何が足りないのか数え出したらキリがないけど・・・・まあ、一番足りてないのは『正気』だろうね』」
『ピカ・・・・?』
「『このゲームをプレイした後だと、『デッドクリームゾーン』はもしかして名作の部類に入るんじゃ・・・・って思っちゃうわ』」
“・・・・・・・・”
『・・・・・・・・』
先生とピカチュウの顔が、何とも言えないものに変わる。
「わ、私達のゲームは、インターネットの悪意なんかに屈しな・・・・」
「例えユーザーが無限にいたとしても、沢山の評価を収束すれば、ソレは真実に一番近い結果よ。それに、あなた達の持っている『結果』は『その年のクソゲーランキング1位』だけでしょう?」
「そ、それはそうだけど・・・・っ!」
“1位!? スゴイね、逆にそのゲーム気になる!!”
『ピカッ!』
『・・・・・・・・』
散々なレビューを付けられ、クソゲーのランキングで1位を取った。逆にどんなゲームなのか気になった先生とピカチュウに、才羽姉妹とプラスルとマイナン、ユウカとサーナイトも黙ってしまうが、ユウカがサーナイトの腕から離れると、口を開く。
するとサーナイトは、ササッと先生のすぐ隣に移動した。
「・・・・兎に角。あなた達のような部活がこのまま活動していても、かえって学校の名誉を傷つけるだけよ。ソレに、その分の部費を他に回せば、キチンと有意義にある活動をしている生徒達の為にもなる・・・・だから、もし自分達の活動にも意義があるのだと主張したいのなら・・・・証明して見せなさい」
「証明、って・・・・?」
「はぁ・・・・何度も言ってるでしょう。きちんとした『功績』や『成果』を出せば、廃部は撤回するって」
ゲーム開発部にチャンスを与えようとするユウカ。何だかんだで面倒見の良い子である。
「例えば、何かの大会で受賞するとか?」
「そう、スポーツならインターハイとか『ポケスロン』に出るとか、『エンジニア部』なら発明品を公表するとか、そういう類のものよ。『ゲーム開発部』なら、そういうコンテストも色々あると思うけど・・・・」
ミドリの問いに応えてから、目を細めて笑うように声を発する。
「とは言え、出せば何とかなるとも思えないわね。あなた達の能力は、あの『クソゲーランキング』が証明済み」
「ぐっ・・・・」
どうせ無理だろう、と言いたげなユウカの言葉にミドリが黙る。
「どうせなら、お互い楽な形で済ませましょう? 今すぐ部室を明けて、この辺のガラクタも捨てて」
「・・・・っ」
周りにある多種多様なゲーム機を『ガラクタ』と言われ、モモイがカチンっと来たように肩を揺らした。
「ガ、ガラクタとか言わないで・・・・!」
「じゃあ、何なの・・・・?」
「そ、それは・・・・」
そう言われ、モモイは一瞬黙るが、意を決して声を発する。
「・・・・分かった・・・・全部結果で示す」
「へぇ・・・・?」
モモイが結果を示す事を宣言し、ユウカが細めた目を向ける。
「その為の準備だって、もう出来てるんだから!」
「え?」
「そうなの!?」
『マァイ?』
『プラプラ』
準備はもう出来ているようだが、ユウカどころか、妹のミドリすら驚いていた。マイナンがプラスルに「知ってる?」と聞いてると、プラスルは「全然」と言いたげに首を横に振った。
「何でミドリやプラスルもマイナンまで驚くのさ!? 兎に角、私達には『切り札』がある。その『切り札』を使って、今回の『ミレニアムプライズ』に私達のゲーム・・・・『TSC2』・・・・『テイルズ・サガ・クロニクル2』を、出すんだから!」
「!?」
“『ミレニアムプライス』・・・・って、何?”
『ピカチュウ?』
モモイの発言に、ユウカも驚いたようだ。
そんな中、先生のピカチュウは、モモイの発言の意味が良く分からなかったようで、〈ミレニアムプライス〉とは何か尋ねた。
「〈ミレニアムプライス〉とは! ミレニアム中の部活が各々の成果を競い合う、ミレニアムでも最大級のコンテスト! コレで受賞さえすれば、いくら何でも文句言えないでしょ!」
「・・・・まあ、そうね。受賞できたなら、の話だけど。けどねモモイ、今あなたが言ってるのは運動部がインターハイに出場するとか、ポケスロンで全競技を優勝するとか、そういうレベルじゃなくて・・・・『ポケモンを手にして数日のトレーナーがいきなりリーグチャンピオンになる』みたいな、雲を掴むような話よ」
〈ミレニアムプライス〉というのが、どうやら〈ミレニアム〉の生徒にとって大事な催しで、モモイはそんな競争率の高い大会で受賞をすると再び宣言するが、ユウカは現実的な視点で物を言った。
「・・・・まあ良いわ。何でだろ、私もちょっと楽しみになってきたし。分かった、じゃあソコまで待ちましょう。今日から〈ミレニアムプライズ〉まで後2週間・・・・この短い期間でどんな結果が出せるのか、楽しみにしてるわ」
受賞するなんて欠片も思っていない顔で笑みを浮かべるユウカ。サーナイトは意地悪なパートナーに苦笑してしまう。
だがモモイとミドリはユウカの余裕綽々の態度に対し、ちっこい二人はそんなユウカを見返してやろうという気持ちが湧いてきており、プラスルとマイナンも気持ちが昂ぶっているように見えた。
「・・・・ふぅ。まさか先生の前でこんな、可愛くないところを見せてしまうことになるなんて・・・・。ただ、これも生徒会の仕事なので」
“うん。分かってるよ”
先生はユウカの職務上、あんな態度を取ってしまっていた事を理解しており、小さく笑みを浮かべて首肯した。
「次はもっと違った、落ち着いた状況でお会いしましょうね、先生。それではまた。サーナイト、帰るわよ」
『サナ。サナサー』
いつの間にか先生の隣を陣取っていたサーナイトも、先生に優雅にお辞儀をしてから、 ユウカと共にゲーム開発部の部室を後にした。
ーーーー・・・・ねぇ、サーナイト。何でいつの間にか先生の側に移動していたの?
ーーーーちょっと待って! 何でなにも言ってくれないの!?
ーーーーサーナイト!? ねぇ! サーナイトってばぁ!!
何やら外でユウカが騒いでいるが、ソレに構わず、ゲーム開発部が話をする。
「・・・・・・・・」
『プラァ・・・・』
「・・・・お姉ちゃん。どっちも確率は低いだろうけど、今から私達がゲームを作るより、部員を募集する方がまだ良いんじゃないの?」
『マイマイ』
無言になるモモイの頭の上でプラスルが不安そうな顔になり、ミドリが現実的な方法を提案し、肩に乗ったマイナンも同意するように頷いた。
が・・・・。
「ソレならこの一ヶ月、散々やってみたでしょ・・・・結局、誰も入ってくれなかったし。『プーッ! VRですらとう古いのに、何がレトロゲームだよ』ってバカにされるのは、もうウンザリ」
「・・・・・・・・」
『『・・・・・・・・』』
モモイの言葉に、ミドリもプラスルもマイナンも顔を顰めた。先生はレトロゲームもVRも、どちらも面白いと思うから、古いとか新しいとかでゲームを馬鹿にするような言い分には、少し納得がいかない。
「ユウカの卑怯者め! 私達みたいなオタクには友達が少ないって事を利用するなんて! 許せない!」
「いや・・・・ソレはユウカじゃなくて、100%私達の自業自得だと思うけど」
「兎に角。これ以上部員を募集しても明るい未来は見えない。ソレに、まだ他に『希望』はある」
「あ、そうだ。さっき言ってた『切り札』って、一体何の事?」
ミドリが聞くと、モモイはバッと先生を見せた。
「ソレは勿論ーーーー先生の事だよ!」
“・・・・私?”
「話を戻すと、私達の『目的』は『廃墟』にあるの」
“その『廃墟』って?”
「『廃墟』って言うのは・・・・元々は〈連邦生徒会〉が出入りを制限してた、〈ミレニアム〉近郊の謎の領域。出入りを制限してたのは『危険な地域だから』って言われていたけど・・・・実際の所、具体的に何がどう危険なのかを誰も知らない。誰も入った事が無いのか、そもそも入る事ができないのか、それも戻ってきた人が誰もいないのか・・・・ソレすらも良く分からない。・・・・そう言う謎に包まれた場所があるの」
“ほうほう。でも一体どうして、そんな所に行こうと?”
先生は『謎に包まれた場所』と言うワードに、好奇心半分、生徒を危険な場所に行かせられない気持ち半分で問いかけた。
「良いゲームを作りたいから!」
すると、モモイが元気良く、真っ直ぐな瞳で宣言する。
「私は、証明したいんだ。例え、今の私達のレベルが『クソゲーランキング1位』に過ぎないとしても。私が大好きな・・・・私を幸せにしてくれたこのゲーム達が・・・・決して『ガラクタ』じゃない、『宝物』なんだって事を!」
「・・・・お姉ちゃん」
『プラプラ・・・・』
『マイマイ・・・・』
その真っ直ぐな瞳と言葉に、ミドリとプラスルとマイナンも賛同するように微笑む。
ユウカに散々言われた彼女達だが、ゲームへの、そして自分達の部活への想いは本当物であると先生は確信すると、
“ソレなら、私も協力するよ。ね、ピカチュウ?”
『ピカチュウ!』
ピカチュウが同意するように頷く。
“ソレで、その『廃墟』には何があるの?”
「『廃墟』には『アレ』があるって噂があるの」
“『アレ』?”
「あ、順番が良くなかったかも。今度は、この話をしないとね」
そう言って、モモイが神妙な顔で『アレ』の事を話した。
「先生・・・・。『G.Bible』・・・・って、知ってる?」
今、自分達の『大切な居場所』を守る為に、『ゲーム開発部』の大冒険が始まった。
次回、ゲーム開発部は〈キヴォトス〉の命運を決める出会いをする。