ー先生sideー
そして、アリスが『テイルズ・サガ・クロニクル』を始める。『クソゲーランキング1位』となったゲームがどんなものなのか気になっていた先生も、少し楽しみにしている。
ゲームを始めるとチュートリアルが始まり、武器を選択する為に、指示通りBボタンを押した。
その瞬間ーーーー。
《ドカーーーーン!!》
「???」
突然、画面から爆発音が響き次に・・・・。
《GAME OVER》
「!?!?」
“え・・・・?”
『ピカ・・・?』
『カォ・・・・?』
いきなり画面が、『GAME OVER』となってしまった。
「あははははっ!」
『プラプラプラ!』
すると部室に笑い声が響き目を向けると、モモイとプラスルが帰ってきた。
「予想できる展開ほどつまらないものはないよね! 本当はここで指示通りじゃなくて、Aボタンを押さなきゃいけないの!」
「お姉ちゃん・・・・『学生証』を作りに行くって言ってなかった?」
「行って来たんだけど、遅い時間だったから誰もいなかったの。また明日行く」
「それはさておき、改めて見てもこの部分ちょっと酷いと思う」
「・・・・も、もう一度始めます・・・・」
アリスが顔を僅かに顰めながら、またゲームを始める。
何やら、コレまで感情らしい物を見せなかったアリスに、『感情』が見えた気がした。
「再開・・・・テキストでは説明不可能な『感情』が発生しています」
「あっ、私ソレ分かるかも! きっと『興味』とか『期待』とか、そう言う『感情』だと思う!」
「どう見ても『怒り』か『困惑』だと思うけど・・・・」
はしゃぐモモイと違い、ミドリは不安そうな顔となっていた。
そしてゲームを続ける。アリスは最適と思えるような選択肢をしているのだが・・・・。
《GAME OVER》
「!?!?」
困惑の連続が起こる。
モモイはズレた着眼点を指摘し、ミドリは頭に汗を垂れ流す。アリスは思考が停止したりしながらも、ゲームを進めいきーーーー2時間が経過した。
「・・・・電算処理系統、及び意思表示システムに致命的なエラーが発生」
既にアリスは自分の計算では処理できない異常な展開に、涙目になってしまっていた。
「頑張ってアリス、ここさえ乗り越えれば待望のクライマックスだよ!」
「ううっ・・・・!」
『プラプラ!』
『マイマァイ!』
アリスの様子を見てモモイが必死にフォローし、ミドリは改めて酷いゲームだと思ったのか、いたたまれない気持ちになっているようである。プラスルとマイナンは、ポンポンを両手に持って必死に応援していた。
“・・・・・・・・”
『ピカ・・・・』
『カルゥ・・・・』
先生とピカチュウは、何とも言えない顔で苦笑し、ルカリオは「これじゃクソゲーランキング1位になるのも当然だな・・・・」と言わんげにため息を吐いた。
「エラー発生! エラー発生!」
遂に滅茶苦茶なストーリーにアリスが爆発してしまった。
「が、頑張ってアリスちゃん! クライマックスまでもう少しだから!」
「・・・・リブート。プロセスを回復。・・・・ふぅ」
アリスが目を瞑って『再起動』と『工程の回復』を呟いてから、一息をついた。
「コレが、ゲーム・・・・」
何やら誤ったゲームの理解をしてしまったアリスは、顔を引き締めてコントローラーを握る。
「再開します」
そしてゲームを再開して1時間後・・・・。
「こ、ろ、し、て・・・・」
“アリス、しっかりして!!”
『ピカピカチュウ!』
『・・・・カル』
先生が殺して欲しいと懇願してしまうようになってしまったアリスを正気に戻そうと、両肩を掴んで揺すり、ピカチュウがアリスの頬を張り、ルカリオが部室にあった冷蔵庫から出した氷をビニール袋に入れて氷袋を作ってアリスの頭に乗せた。
そんなアリスに構わず、モモイとプラスルははしゃいでいた。
「凄いよアリス! 開発者二人が一緒とは言え、3時間でトゥルーエンドなんて!」
『プラスル♪』
『マイナン♪』
しかし、ミドリは何かに気付いたように声を上げた。
「そ、それもそうだけど、もしかして、本当にゲームをやればやる程・・・・アリスちゃんの喋り方のパターンが、どんどん多彩になってきてる・・・・?」
すると、正気に戻ったアリスがキリッとした顔で声を発する。
「勇者よ、汝が同意を求めるならば、私はソレを肯定しよう」
「うん、確かにそう・・・・かも?」
何やら妙な話し方になってしまっていた。
「ゲームからそのまま覚えたせいで、ちょっとまだ不自然かもだけど・・・・言葉を羅列してただけの時よりは、かなり良くなったと思う! と、ところでその・・・・こう言うのを面と向かって聞くのは緊張するんだけど・・・・」
ミドリとモモイ、プラスルとマイナンが、ズイッとアリスに近づいた。
「わ、私達のゲーム、どうだった? 面白かった!?」
そしてアリスの感想は・・・・。
「・・・・・・・・説明不可」
「え、ええっ!? なんで!?」
「・・・・類似表現を検索。ロード中・・・・」
「も、もしかして、悪口を探してる・・・・? そんな事ないよね?」
目を閉じて黙ってしまうアリスに、才羽姉妹は不安そうな顔になる。
そして、アリスが口を開いた。
「・・・・『面白さ』、それは、明確に存在・・・・」
「おおっ!」
笑顔で応えるアリスに、顔を喜色に染める。
「プレイを進めれば進める程・・・・。まるで別の世界を旅しているような・・・・。夢を見ているような、そんな気分・・・・もう一度・・・・もう一度・・・・」
そう言いながらアリスは少しずつ声が小さくなり、そしてーーーー。
「(ポロッ)」
涙を浮かべた。
「ええっ!?」
「あ、アリスちゃん!? どうして泣いてるの!?」
「決まってるじゃん! それくらい、私達のゲームが感動的だったって事でしょ!」
「い、いくら何でもソレは・・・・と言うかこのゲーム、ギャグ寄りのRPGの筈だし・・・・」
楽観的なモモイと違い、ミドリは眉根を寄せたが、モモイは構わずアリスにお礼を言う。
「ありがとうアリス! その辺の評論家の言葉なんかより、その涙の方が100倍嬉しいよ! あー、早く『ユズ』にも教えてあげたい・・・・!」
モモイがそう言ったその瞬間ーーーー。
「・・・・ちゃ、ちゃんと、全部見てた」
と、『ゲーム開発部』の部室のロッカーから声が響き、ギギーっとロッカーの扉が内側から開かれると、ソコから一人の女子生徒が出てきた。
「きゃああああ!? お、お、お化け!? マ、マイナン! ほ、【ほうでん】!!」
『マイマイ!』
『プラプラ!』
「落ち着いて、ミドリ! ここで電気技なんか使ったら大切なゲーム機が全部オシャカになる!!」
錯乱したミドリがマイナンにそう指示し、マイナンが放電しようとするが、プラスルが押さえ、ミドリもモモイが押さえつけた。
そしてその女子生徒はーーーー。
「・・・・・・・・」
一部を編んだ赤い長髪を無造作に流し、おでこが特徴的で、ジャケットを着た何処か内気そうな小柄な女の子が立っていた。
「・・・・?」
「『ユズ』!」
『プラプラ!』
『マイマイ!』
「『ユズちゃん』、アレだけ探しても見つからなかったのに! いつからロッカーの中にいたの?」
「み、皆が、『廃墟』から帰ってきた時から・・・・」
「だいぶ前じゃん!? その時からずっとロッカーの中にいたの? あ、もしかしてアリスちゃんが怖かったから? 『モモトーク』か何かで伝えてくれれば良かったのに、ビックリしたよ・・・・」
『廃墟』から戻ってきてから数時間は経過している。その間、ずっとロッカーに隠れて微動だにせずにいたのだ。
“・・・・・・・・”
『カル・・・・』
先生が、ずっとロッカーの近くを陣取っていたルカリオに、「気づいていたの?」と視線を送ると、「害意は無いと思ってましたが、一応見張っておきました」と視線で返していた。
すると、モモイがユズを先生達とアリスに紹介した。
「あ、先生とアリスは初めてだよね。この人が私達『ゲーム開発部』の部長、ユズだよ」
「・・・・・・・・」
紹介されたユズは、オズオズと先生達とアリスに近づき、
“はじめましてユズ。私は先生だよ。パートナーのピカチュウとルカリオ”
『ピッカ!』
『カル』
「は、はじめまして、先生・・・・一年生の、『花岡ユズ』、です・・・・パートナーは・・・・」
ーーーーポンッ!
『チュラ!』
ユズが言い終わる前に、ユズのモンスターボールから飛び出てきたのはーーーー黄色い大きな蜘蛛であった。
太い四本の脚、六つの多眼だが二つを大きくなっている眼と、顔の下には二本の触角のような手があり、全体にモフモフ感があるポケモン『でんきグモポケモン・デンチュラ』である。
「あ、あの・・・・パートナーの、デンチュラです。よろしくお願いします・・・・」
『チュラ』
“うん。宜しくねユズ。デンチュラ”
パートナーと共に先生にペコリと頭を下げてから、ユズは改めてアリスに向き直り、少し顔を俯かせて、顔を紅潮させながらもスッと近づいていく。
「?」
「えっと、あの、その・・・・」
『チュラチュラ』
『プラプラ』
『マァイ』
デンチュラとプラスルとマイナンが後ろで「頑張れユズ」、と言いたげに小さく声を上げて応援していると、ユズはコクンと頷いた。
「う、うん・・・・あ、あ、あ・・・・」
「あ?」
「・・・・ありがとう。ゲーム、面白いって言ってくれて・・・・もう一度やりたいって言ってくれて・・・・泣いてくれて・・・・本当に、ありがとう」
「???」
お礼を言われる意味が分からないのか、アリスは小首を傾げるが、ユズはアリスの言葉が本当に嬉しかったのか、自分の精一杯の感謝を示す。
「『面白い』とか、『もう一度』とか・・・・そう言う言葉が、ずっと聞きたかったの」
「ユズちゃん・・・・」
感極まって涙を流すユズの姿は、本当に嬉しかった事を示していた。
ーーーーユズが泣き止むのを待つ事10分後。改めて、ユズはアリスに自己紹介をした。
「兎に角、改めまして。『ゲーム開発部』の部長、ユズとパートナーのデンチュラです。この部に来てくれてありがとう、アリスちゃん。これからよろしくね」
『チュララ』
「よろ、しく・・・・?」
ユズの言葉に首を傾げるアリスだが、すぐに理解したように頷いて。
「・・・・了解。ユズとデンチュラが仲間に入りました、パンパカパーン!」
満面の笑みを浮かべて両手を上げてそう宣言して、ユズに話しかける。
「・・・・あってますか?」
「あ、うん。大体そんな感じ、かな」
かなりゲームの影響を受けた様子のアリスに、ユズは少し苦笑してから、再び笑顔を見せる。
「ふふっ、その様子だと、本当に私達のゲームを楽しんでくれたんだね・・・・仲間が増えるのは、RPGの醍醐味の一つだもんね」
ソレからユズも加わり、『ゲーム開発部』の皆でアリスへの情報教育のように、オススメのゲームをするようになった。
先生は、アロナから『生徒からの依頼』が来たと報らされたので、一度『シャーレ』に戻った。
◇
〈トリニティ〉の『正義実現委員会』からの依頼を受けた先生は、委員長の『剣先ツルギ』とパートナーの『ふんどざるポケモン・コノヨザル』に『めいそうポケモン・チャーレム』、委員の『静山マシロ』に『さかだちポケモン・カポエラー』と出会い、交流を深めた。
そして、食事を携えて『ゲーム開発部』に戻ると。
「パンパカパーン! アリスは先生にピカチュウとエンカウントしました!」
“やぁアリス。随分明るく元気になったね?”
『ピカピカ』
「はい先生! アリスはモモイ達とゲームを重ねてレベルアップを果たしました!」
「あはは、先生、おはようございます・・・・」
「おはよう、ございます・・・・」
ミドリとユズは苦笑を禁じ得ない顔で先生に挨拶をした。マイナンとデンチュラはまだ寝ているが。
そして先生は、この場にいないモモイとプラスルを探した。
“モモイとプラスルは?”
「モモイとプラスルは、ミドリとマイナン、ユズとデンチュラが起きる1時間前に部屋を出ました! 武器屋で装備を整えていると思われます!」
アリスがRPGな説明をするのと同時に、部室の扉が開かれ、モモイとプラスルが戻ってきた。
「おはよう! あ、先生もおはよう!」
『プラスル!』
“おはようモモイ、プラスル。これご飯のサンドイッチね。何処かに行ってきたの?”
先生が問い掛けると、モモイは小さく頷いてから懐から、首に下げられるようにした『〈ミレニアム〉の校章が付いた紙』を取り出し、アリスに手渡した。
「うん! はいアリス、これ」
「・・・・?? アリスは『正体不明の書類』を獲得した」
「あっ、また更に口調が洗練されてるね。これは『学生証』だよ」
「洗練って言うか、レトロゲームの会話調そのものだけどね・・・・」
モモイの言葉に、ミドリは眉根を寄せてそう言った。アリスは『学生証』を見つめる。
「『学生証』・・・・?」
「この『学生証』は、私達の学校の生徒だっていう『証明書』。生徒名簿にも『ヴェリタス』が『ハッキ・・・・いや、登場してくれたから、もうアリスは正式に私達の『仲間』だよ!」
“モモイ。『アウト』だよそれ”
「あ、先生!」
明らかに『ハッキング』と聞こえた先生は、モモイの頭に手を置いてそう言った。
“あのね、そういうのが必要な時は、私に一言相談して。『シャーレ』でできる事もあるから、危ない橋を渡る際には『大人』を頼って欲しいな”
「・・・・うん、ごめんね先生」
先生がそう言う、モモイとプラスルはペコリと頭を下げ、作ってきたご飯を渡すと、『ゲーム開発部』は全員で食べ始め、「美味しい! 美味しい!」と言っていた。
しかし、皆の笑顔と感謝を見聞きしながら、先生は少し奇妙な『違和感』を感じた。
『ヴェリタス』は何故ハッキングして『学生証』の発行なんて、〈ミレニアム〉の生徒会である『セミナー』にバレれば自分達にも飛び火するような危険な行為に手を貸しているのか、ソレが妙に引っ掛かっていたのだ。アリスを見つけた『廃墟』の事も、その『ヴェリタス』の『ヒマリ』っと言う生徒の入れ知恵のようなものであった。
“(ーーーー何だろう、この感覚・・・・? まるで、私も、『ゲーム開発部』の皆も・・・・そしてアリスも、“誰かの手の平の上で踊らされているようなを感じ”がする)”
先生がそう思案していると、アリスは『学生証』をマジマジと見つめながら、理解したように頷く。
「『仲間』・・・・成る程、理解しました」
アリスは『学生証』を天に掲げる。
「パンパカパーン、アリスが『仲間』として合流しました!」
「さて『服装』と『学生証』、それに『話し方』! この辺は全部解決できたから・・・・」
ある程度の問題はクリアできたが、あと『二つ』、必要な物をモモイが口にする。
「後は・・・・『武器』と『ポケモン』、だね。〈ミレニアム〉・・・・ううん、〈キヴォトス〉の生徒は、皆それぞれ『武器』と『ポケモン』を持ってるの。だから、アリスにも『武器』と『ポケモン』を見繕ってもらわないとね」
そう。この〈キヴォトス〉では、生徒は皆銃を所持している。〈ゲヘナ〉のヒナや〈アビドス〉のノノミのように常時所持しているには邪魔になりそうな大型もあれば、『便利屋68』のカヨコのように携帯が楽な拳銃を所持している。
そして何より、この『世界』に存在する不思議な生命体、ポケモン。所持をしないで『レンタルポケモン』で済ませる人間も稀にいるが、基本は皆、パートナーとなるポケモンの他に、一般生徒は2匹まで、ユウカ達のような役職持ちは4匹までポケモンを所有できる、と言う暗黙のルールが置かれている。
アリスは一応、一般生徒の立場なので、一匹か二匹のポケモンは所持していないとならないのだ。
「あ・・・・ポケモンの方は、私とデンチュラで、見繕ってみるね・・・・」
『チュラ』
「オッケー! じゃあ『武器』の方は、調達する方法は幾らでもあるけど、この〈ミレニアム〉で一番手っ取り早く、ちゃんとした『武器』が手に入る場所と言えば・・・・やっぱり『エンジニア部』かな」
「エンジニア、部・・・・?」
“!”
モモイの言葉に、アリスは首を傾げ、先生はピクリと反応した。ユウカが『秘伝スパイス』の解析を任せてある部活であったからだ。
首を傾げるアリスに、ミドリが説明に加わる。
「機械を作ったり、修繕したりする専門家達の事を、〈ミレニアム〉では『マイスター』って呼んでるんだけど。『エンジニア部』はその『マイスター』が沢山集まってる、ハードウェアに特化した部活なの」
「機械全般に精通しているのは勿論。武器の修理とか改造、モンスターボールの製作なんかも担当している部活だから、多分使ってない武器とか色々残っているんじゃないかなって。アリス、折角だし案内するよ」
「案内・・・・?」
「私達の学校、〈ミレニアム〉を!」
◇
そして、サンドイッチを食べ終え、ユズとデンチュラと一旦別れた一同は、アリスに〈ミレニアム〉を案内しながら、『エンジニア部』の『作業室』へとやって来た。中の広さが企業の工場レベルであり、置いてある器具も機械も見た事が無い物ばかり、兵器の数々の量もクオリティも凄い物なのも頷ける。
そして、その『エンジニア部』の部長、白衣を肩に羽織った紫の長髪の上のヘイローの横に何かのパーツが浮遊した三年の生徒『白石ウタハ』。
そしてその横に浮遊する、小さな丸い身体に尖がった頭頂部をし、エクトプラズムを思わせる薄緑と白のオーラ状のもので身体中が覆われているが、この個体は赤くなっており、両側からは手の様な形で雷マークが飛び出し、青い軌跡を描きながら浮遊する、今ではスマホロトムにも使われている、『プラズマポケモン・ロトム(色違い)』が、モモイから武器を譲って欲しいと頼まれていた。
「・・・・成る程。大体把握できたよ。新しい仲間に、より良い武器をプレゼントしたい・・・・と」
ソコまで言ってから、ウタハはキランと目を光らせた。
「そう言う事であれば、『エンジニア部』に来たのは素晴らしい選択だね。〈ミレニアム〉における勝敗と言うのは、優れた技術者の有無に大きく左右されてしまうものだ」
するとウタハは、色々な武器が置かれた区画を指差した。
「ソコに置いてあるものであれば、どれを持って行っても構わないよ」
「やった! ありがとう、先輩!」
『プラプラ!』
『マイマイ!』
「アリスちゃん、行ってみよう」
「はい」
モモイがそう言うと、プラスルとマイナンもペコリと頭を下げ、ミドリとアリスを連れて武器のある方へと歩いていった。先生も行こうとしたら、ウタハに呼び止められた。
「ーーーーこうして会うのは初めてだね、先生。〈ミレニアム〉の三年、白石ウタハとパートナーのロトムだ」
『ロト!』
“コチラこそ、はじめましてだねウタハ。『秘伝スパイス』の解析とか色々やってくれてありがとう”
「いやいや、こちらとしても大変興味深い物を調べさせてもらったよ。〈アビドス〉でもこれまで作ったが御蔵入りになってしまった兵器類のテストに、まだまだ未知の部分があるパラドックスポケモンのデータ。中々楽しませてもらったよ。ただ、捕獲されたパラドックスポケモン達はまだ、〈連邦生徒会〉の方にいるから、調査は滞っているけどね」
そう。便利屋68とヒナと〈トリニティ〉のファウスト‹ヒフミ›、そしてユウカによって倒されたパラドックスポケモン達は、〈連邦生徒会〉の保護化に置かれている。
何度か先生も足を運んだが、まだ治療中と言う事で会えていないのだ。
「さて、先生の方は私達『エンジニア部』に何か改造してもらいたいものはないかい? 楽しい実験‹テスト›をさせてくれたお礼をしたいのだが?」
“ーーーーそれなら、一つお願いしたい事が・・・・”
ーアリスsideー
先生がウタハと話をしている間、アリスは壁に立てかけられた武器類を見ながら、自分の『武器』を選んでいると、クセのある長い黒髪に、垂れた犬耳か猫耳のような物と、大きなゴーグルを頭に付け、半開きの瞳をし、黒いキャミソールに黒い短パン、更に足にはストッキングを着て白衣を腕にかけ、肩を丸出しにしたファンキーなファッションをした女子が話しかけてきた。
「やあ・・・・一年生の『猫塚ヒビキ』だよ。良ければ私が、何か良いものを見繕ってあげる・・・・。ちなみに私のパートナーはロトムと『ハラバリー』ね」
ウタハと違い通常のロトムの他に、青緑色のボディをしたゆるキャラの様にファンシーな姿で、お腹の中央にある丸い部分は発電器官となり、よく見ると透明な膜のようなもので覆われていた。ぷにぷにした全身は弾力性に富み、頭の側面には目玉のような形状と模様をしたものがあるが、よく見るとデコイのコブであり、内側の鼻みたいな黄色い部分が本当の目らしい『でんきがえるポケモン・ハラバリー』であった。
『ロト』
『ハラ』
「『エンジニア部』って、皆ロトムを持ってるの?」
「まあ自分達の開発した武器や発明品のテストをするのに、ロトムは頼りになるからね」
ミドリの質問に、ヒビキが応える。
ロトムは家電と言った電化製品に取り付く事ができ、洗濯機や掃除機に入る事で他の『タイプ』の能力を得る事もあり、ロトムに入ってもらって不具合とかを調べてもらっている。故に『エンジニア部』はスマホロトムの他に、ロトムを手持ちとして所有するのが暗黙のルールとなっていると言うのだ。
ヒビキは置かれていた拳銃を手に取ると、アリスに見せた。
「・・・・これはどう、アリス?」
「へえ、拳銃?」
「見た感じ、多分だけど・・・・これまでに戦闘経験は無い筈・・・・」
拳銃はヘイローを持つ生徒達にとっては攻撃力はそんなに高くないし、弾の弾数も少ないが、利便性も高く携帯も便利な武器である。それに戦闘経験の少ない子でも扱える武器だ。まぁ便利屋のカヨコのように、隠密戦闘を得意とする子も良く使うが。
「その言葉は否定します。アリスはこれまでに人類を27回救い、魔王軍との46回に渡る戦闘を行い、3桁を越えるダンジョン捜索を行ってきました。経験値はそれなりに豊富です」
「・・・・・・・・」
「それは、スゴイね・・・・」
『ロト・・・・』
『ハラ・・・・』
ゲーム経験を語るアリスに、ミドリとマイナンは「あちゃー」って顔になり、ヒビキとロトムとハラバリーも半眼で応えるが、ヒビキは話を戻す。
「兎に角、銃器を使用した経験は・・・・あまり無さそう。そう言う人にはやっぱり拳銃が良い・・・・コレはプラスチック製だから軽いし、反動も少ない・・・・。そう言う意味でも、色々と初心者に優しい筈・・・・ソレに、何より・・・・」
ヒビキは拳銃について話をすると、一拍置いてから目をキランッと光らせてから話し出す。
「この銃には〈ミレニアム〉史上、今まで存在しなかった『機能』が搭載されてる」
「な、何それ・・・・?」
『プラ?』
「何か聞く前から凄そう・・・・一体どんな『機能』なの?」
『マイ?』
「それはね・・・・『Bluetooth』機能だよ」
『ロトロト!』
『(パァン!)ハラバリー!』
断言したヒビキの後ろで、ロトムが雷マークを描きながら飛び、ハラバリーがクラッカーを鳴らす。
「・・・・えっ?」
『プラ・・・・?』
才羽姉妹とプラスルとマイナンも目を点にしてしまう。が、ヒビキは説明を続ける。
「『Bluetooth』を通じて、音楽鑑賞やファイルの転送まで可能な拳銃・・・・調べた限り、そんな物今まで存在しなかった。勿論、『スモモ』機能も搭載。乗り場のICパネルにタッチして、交通機関を利用する事もできる。ソレに『NFC』機能も付いてるから、コンビニペイだって使えちゃう・・・・」
「す、凄いと言えば、凄い気もするけど・・・・コンビニで『これで決済を』って拳銃を突き出したら、コンビニの人がビックリしちゃうよ!」
『プラプラ』
『マァイ〜・・・・マイ!? マイマイ!!』
プラスルが客役で、マイナンがコンビニ店員役で、プラスルが拳銃を突き出したら、マイナンが悲鳴を上げる小芝居を繰り広げていた。
と、ソコで、ミドリがアリスがいない事に気付いた。
「あれ、そう言えばアリスちゃんは何処に・・・・? アリスちゃん、アリスちゃーん?」
「・・・・あ、あそこに。アレは・・・・」
アリスはヒビキの説明に飽きたのか、既に別の武器を見て回っていたのだが、ある一つの武器が置かれた場所で止まっていた。
「(ジーッ・・・・)」
アリスの身体よりも大きな機械の武器を見つめている。余程興味を引かれたのか立ち止まって、真っ直ぐに見据えると、その機械を指差した。
「コレは・・・・?」
「ふっふっふっ・・・・お客さん、お目が高いですね」
アリスに話しかけたのは、ファー付きの黒いコートを腕に掛け、茶髪のショートヘアに、片方のレンズが涙を垂れているようなデザインの眼鏡を掛け、ワイシャツの胸元が開き、小柄な体型に不釣り合いに実っている胸元から生まれる谷間に、ネクタイが刺さった格好をした生徒である。さらにその後ろから『エンジニア部』の証であるロトムと、肩に小さなポケモンを乗せて現れた。
「え、えっと・・・・?」
アリスがその生徒に首を傾げる。
「説明が必要なら、いつでもどこでも答えをご提供! 『エンジニア部』のマイスター、一年生の『豊見コトリ』! そしてパートナーのロトムと『パモ』です!」
『ロトロト♪』
『パモ♪』
コトリの肩に乗っているのは、オレンジの体毛で膨れたずんぐりとした体つきをしており、両手に肉球を備えられている『ねずみポケモン・パモ』であった。
「・・・・・・・・?」
「あなたがアリスですね。『ゲーム開発部』、4人目のメンバー!」
「あ、コトリちゃん久しぶり。所で、アリスちゃんが見てるこの大きいのは何? まるで・・・・『大砲』、みたいだけど」
首を傾げるアリスに話しかけるコトリに、ミドリがアリスが見ている機械の事を聞いた。
「良い質問ですね、ミドリ。これはエンジニア部の下半期の予算、その内の約70%近くをかけて作られた・・・・『エンジニア部』の野心作、『宇宙戦艦搭載用レールガン』です!」
「『宇宙戦艦』、って・・・・また何かとんでもない事を・・・・」
「何を言いますかモモイ! ポケモンだって宇宙で生存できる子達がいるんですよ! 我々もいずれはその子達の生きる世界に行けずして、ポケモンとの共存ができるでしょうか!?」
「いや、でもさ・・・・」
「前にも、確かコールドスリープしようとして、『未来でまた会おう』って言いながら冬眠装置を作って大騒ぎした挙句、皆して風邪ひいてなかった?」
熱弁するコトリの気迫にモモイが引くが、ミドリも半ば呆れながらそう聞くと、先生との話を終えたウタハが先生と共に近づき、話に割り込んできた。
「・・・・その『未来直行エクスプレス』なら、今でもよく使っているよ。・・・・まぁ冷蔵庫として、だがね。食べ物をもっと先の未来に送れるようになったから、失敗ではないさ」
「使い道の割に、名前が大袈裟!」
「話を戻しますと『エンジニア部』は今、ヘリコプターや汎用作業ロボットに続いて、宇宙戦艦の開発を目標としているのです!このレールガンはその最初の第一歩! 大気圏外での戦闘を目的として開発された実弾兵器! コレはミレニアム史上、明らかに類を見ない初の試みです!」
「カッコいい・・・・聞いただけでワクワクしてくる!」
「流石〈ミレニアム〉の『エンジニア部』! 今回は上手く行ってるんだね!?」
ソコまで聞いて、才羽姉妹も好奇心が刺激されたのか、目を輝かせた。
「ふっふっふっ、勿論です!」
コトリが身体を反らすと、その胸元がフルンっと揺れた。が、すぐに涙目になった。
「ーーーーと言いたい所だったのですが、ちょっと今は中断してまして・・・・」
「ええっ!? 何で! 期待したのに!」
モモイがガックリすると、コトリが悔しそうに呟く。
「いつもの事ながら技術者の足を引っ張るのは、いつの世も想像力や情熱の欠如ではなく、『予算』なんです・・・・」
確かに、如何に『エンジニア部』に技術力があっても、学校の部活。レールガンなら何とかなるだろうが、宇宙戦艦の開発となれば、〈ミレニアム〉の全ての予算を注ぎ込まなければならないだろう。そんなのユウカが許す筈ない上に、下手をすれば〈ミレニアム〉が崩壊する事もありえる。
ソレに構わず、コトリは更に言葉を紡ぐ。
「このレールガンを作るだけで下半期の予算の70%もかかったのに、宇宙戦艦そのものを作るには果たして、この何千倍の予算がかかる事やら・・・・」
「そんなの計画段階で分かることじゃん! どうしてこのレールガン、完成まで持って行っちゃたのさ!?」
モモイが真っ当な指摘をした。確かに、予算云々が出る前に、計画やらを立てて開発をするのが定石であろう。
しかし、部長であるウタハとロトム(色違い)が前に出て、ヒビキとロトムとハラバリーもその隣に立ち、反対側にコトリとロトムとパモが立つ。
「愚問だね、モモイ」
そしてウタハは、断言するように言う。まるで背中にザパァーン、っと津波が弾けた。
「・・・・ビーム砲は、ロマンだからだよ」
「(コクリ)」
「その通りです!ビーム砲の魅力が分からないなんて、全くこれだからモモイは」
ウタハの言葉にヒビキは同意するかように頷き、コトリはモモイに向かって肩をすくませて、やれやれと言わんばかりに首を振った。
「バカだ! 頭いいのにバカの集団がいる!!」
モモイが頭を押さえて仰け反って断言するように言うと、ミドリにプラスルとマイナンもウンウンと頷いた。
ソレに構わず『エンジニア部』は武器の紹介を続ける。
「『エンジニア部』の情熱が注ぎ込まれた、この武器の正式名称は・・・・」
「『光の剣:スーパーノヴァ』!!」
「また無駄に大袈裟な名前を・・・・」
ヒビキとコトリの言葉に、ミドリは呆れたように呟く。
が、当のアリスはーーーー。
「・・・・! ひ、光の剣・・・・!?」
「あ、アリスの目が輝いてる・・・・!?」
モモイの驚きは目に入らず、アリスははしゃぎながら『光の剣:スーパーノヴァ』を色々な角度で眺めていた。
「わぁ、うわぁ・・・・!」
今までにないくらい興奮しているアリスの様子に、先生は笑みを浮かべながら言う。
“アリスは、この大砲が良いの?”
「はい! これ、欲しいです!」
「・・・・え?」
「偉大なる鋼鉄の職人よ、あの龍の息吹が欲しいのだ」
「うーん、そう言ってくれるのは嬉しいのだけど・・・・」
「申し訳ないのですが、ソレはちょっとできない相談です!」
欲しいと言うアリスに、『エンジニア部』はそう返した。
「何で!? この部屋にあるものなら何でも持っていって良いって言ったじゃん!」
「・・・・ソレは、理由があって」
「理由? もしかして、私のレベルが足りてないから・・・・装着可能レベルを教えて下さい!」
「いや、悪いがそう言った問題ではなくてだね・・・・もっと現実的な問題なんだ」
歯切れ悪く応える『エンジニア部』に、一同は訝しそうに眉根を寄せた顔になる。
「お金かー・・・・」
モモイが現実的な問題を予想する。確かに『エンジニア部』の予算の7割を注ぎ込んで製作した武器なのだから、金額も相当のーーーー。
「お金の問題でもないよ・・・・」
「あれ!?」
「・・・・この武器は、個人の火器として使うには大きくて重過ぎる」
「なんと、基本重量だけでも140kg以上です! さらに光学照準器とバッテリーを足した上で砲撃を行うと、瞬間的な反動は200kgを超えます! 正直『ゴーリキー』のようなパワータイプか、【ねんりき】が使えるエスパータイプでもなければ使えないのです!」
「・・・・・・・・」
ウタハとコトリが言った、シンプルに重量の問題に、アリスはショボンとした顔でスーパーノヴァを見つめる。余程この大砲が気に入ったようだ。
その表情を見て、ウタハも申し訳ない顔となる。
「これをカッコいいと言ってくれだけで、私達は嬉しいよ。ありがとう。持って行けるのならば、本当にあげたいのだけど・・・・」
「・・・・?・・・・!」
アリスは、ウタハの言葉を聞いて、顔を再び笑顔で輝かせた。
「・・・・汝、その言葉に一点の曇りもないと誓えるか?」
「ん? この子、また喋り方が・・・・」
“アリスはこう言う喋り方をしちゃうんだよ。『お年頃』ってやつでね・・・・”
「あぁ・・・・」
何とか納得してもらおうと考えた先生の言葉に、ウタハは『多感な年頃の病気』であると認識してくれたのか、納得したように頷いた。
“それで今のは、『本当なのですか?』って聞いているんだと思うよ”
「勿論嘘は言っていないが・・・・それはつまり、アレを持ち上げるつもり、と言う事かい?」
『ロトロト』
ウタハの質問にアリスはコクリと頷き、ロトム(色違い)は「無理無理」と言わんばかりに、ニヤついていた。
アリスはスーパーノヴァに近づいて手に取ると、目を閉じて呟く。
「この武器を抜く者・・・・此の地の覇者になるだろう!」
「フフフっ、成る程、意気込みは素晴らしいですね!」
『パモパモ』
「ふっーーーー」
アリスはコトリとパモの言葉を受けて、力を込めてスーパーノヴァを持ち上げようとする。
「無理は、しない方が良い・・・・ロトム達にクレーンや作業用ロボットに入ってもらって漸く持ち上がってーーーー」
『バリバリ、バリバリ・・・・』
「え?」
ヒビキが目を閉ざしてそう言うが、ハラバリーがアリスを指差しているのを見て目を向けると・・・・。
「んんんんんんっっ・・・・!」
「・・・・まさか」
『ロト!?』
「えぇぇっ!?」
『パモっ!?』
『『ロトロト!?』』
『エンジニア部』が目を開いた。何故ならばーーーー。
「・・・・も、持ち上がりました!」
スーパーノヴァを抱えて満面の笑顔を浮かべるアリスが、ソコに立っていたからだ。
ユズ&デンチュラ
ユズがロッカーに引きこもっている時、何処から紛れたのかバチュルが現れ、驚きのあまり錯乱したユズがロッカーから飛び出し、部室にあった色々なものを投げつけると、怒ったバチュルがデンチュラに進化し襲い掛かって来てしまい、ユズが思わず銃を撃って弱らせたが起き上がり更に怒って再び襲い掛かってきたので、無我夢中で投げたものがモンスターボールで、そのままゲット。暫くは少し険悪だったが、今では段ボールに隠れたユズを台車に乗せて糸で固定して、そのまま運搬役とかをしてくれている。