ーアリスsideー
「嘘・・・・信じられない・・・・」
『バリバリ・・・・』
アリスをの姿に、ヒビキとハラバリーを始めとしたウタハ達『エンジニア部』は愕然となった。
140kgを超えるでろう重量を持つ『光の剣:スーパーノヴァ』を、あんな華奢で小柄な女の子が持ち上げたのだから、当然と言えるであろう。正直、人間で持ち上げられるとしたら『七囚人』の一人であり、『伝説のスケバン』と呼ばれる生徒くらいだと思っていた程だ。
そんな『エンジニア部』に構わず、アリスはスーパーノヴァを持ち上げたまま、アチコチに触りまくっていた。
「えっと、ボタンは・・・・コレがBボタンでしょうか・・・・?」
「ま、待って・・・・!」
『ハラバー!』
いち早く正気に戻ったヒビキとハラバリーが、説明を聞かずスーパーノヴァを使おうとするアリスを止めようとするが、一拍遅かった。
「・・・・っ、光よ!!!」
“(マズイ!)”
ーーーー・・・・・・・・。
アリスがボタンを押した瞬間、スーパーノヴァが展開し、砲口に光が収束されると、エネルギーが発射された。
その際、先生の懐にあるマスターボールから波動が放たれ、先生と他の皆の身体にバリアを張り、念動力でスーパーノヴァの砲口を上に向けさせるとーーーー。
ーーーードカアアアアァァァァン!
その光の奔流は、『エンジニア部』の作業室の屋根を貫通した。
「ああああああああっ! わ、私達の部室の天井がぁっ!?」
『ロトー!?』
『パモー!?』
コトリとロトムとパモが涙目なった。
「・・・・凄いです。アリス、この武器を装着します」
「ほ、本当に使えるなんて・・・・で、ですがソレだけは、その・・・・! 予算とか諸々の問題で、できれば他のでお願いしたく・・・・!」
『ロトロト!』
『パパモ!』
アリスがスーパーノヴァを持って武器として選ぶが、コトリとロトムとパモが土下座する勢いで勘弁して欲しいと懇願しそうになる。
がーーーー。
「・・・・いや、構わないさ。持っていってくれ」
「ウタハ先輩・・・・本当にいいんですか?」
「ああ。どちらにせよ、この子以外には使えないだろうからね。このままここに置いておいても、埃を被るだけだしね。ヒビキ、後でアリスが持ち運びやすいように、肩紐と取っ手の部分を作ってあげてくれ」
「分かった」
部長であるウタハが許可して、ミドリが首を傾げて問うと、ウタハがそう応え、ヒビキに指示を出しすと、ヒビキもコクンと頷いた。
「・・・・前向きに考えると、実践データを取れるようになったのはありがたいかも」
と、ちゃっかり打算的な考えを溢すヒビキに構わず、『ゲーム開発部』ははしゃいだ。
「うわ、何だか物凄い武器をもらっちゃったね! ありがとう!」
「あ、ありがとうございます!」
「いや、お礼にはまだ早いさ」
「え?」
モモイとアリスがお礼を言うと、ウタハはニヤリと小さく笑みを浮かべてそう言うと、ヒビキにさらなる指示を出した。
「さて・・・・ヒビキ、以前処分要請を受けたドローンとロボット、全部出してくれるかい?」
「うん・・・・」
ヒビキは小さく頷くと、自分のロトムが入ったセグウェイにハラバリーと共に乗り込み、そのまま工場の奥へと向かった。
「えっと・・・・ウタハ先輩? 何だか展開がおかしいような・・・・」
「これってもしかして、『そう簡単に武器は持って行かせない!』みたいなパターンじゃない?」
「その通りさ」
嫌〜な予感を感じたミドリとモモイが問い掛けると、ウタハはコクリと頷いた。
「その武器を本当に持って行きたいのなら・・・・」
「私達を倒してからにしてください!」
コトリがウタハの言葉に割って入るように大声で宣誓した。
「!?」
「えええっ!? そんな、ウタハ先輩どうして!?」
「ぶ、武器一つの為にここまで・・・・?」
『プラ〜!?』
『マイマイ〜!?』
驚く『ゲーム開発部』に、ウタハはまるで試練を与える賢者の如く言葉を発する。
「他の武器なら、喜んで渡しただろうけれど・・・・その武器については、『確認』が必要かなと思ってね」
「か、『確認』・・・・?」
「いや・・・・『資格』と呼んだ方が相応しいかな」
「『資格』、それって・・・・?」
ミドリがウタハに聞くがお茶を濁すような言葉に訝しげな顔となるが、アリスが口を挟む。
「前方に戦闘型ドローン及びロボットを確認、敵性反応を確認」
アリスの視線の先を見ると、確かに武器を装備したドローンや四角い箱に昆虫のような足が生えたロボットがコチラに向かってきていた。
「来ます!」
「ああもうっ! マイナン!」
『マァイ!』
「先生お願い! プラスル!」
『プラァ!』
“うん。指示を出すよ。ソレとーーーー皆!”
『ピカッ!』
『(ポンッ!)カルゥ!』
『(ポンッ!)ブイ!』
『(ポンッ!)ヒノ!』
『(ポンッ!)チコ!』
『(ポンッ!)ワニ!』
「あっ、先生。“データも欲しいので、イーブイは進化させて欲しい”」
“(コクリ)それじゃぁーーーーグレイシア!”
先生が手持ち達を出すと、ウタハがそう言い、先生は頷くと『水色の進化ライト』の光を浴びせると、イーブイの身体が水色に光り出し、身体が一回り大きくなるとその身体が変わっていった。
モフモフ感が無くなり、シャープでしなやかな姿。通常よりも体色が明るく、額の装飾や足先はより青く、身体はより白くなり、全体的にコントラストと透明感が大変美しい『しんせつポケモン・グレイシア(色違い)』である。
『グレイシー』
「うわっ! グレイシアになった! しかも色違い!」
「『エイミ先輩』もグレイシアを持ってたね」
「パンパンパーン! イーブイがグレイシアに進化しました!」
“行くよ皆! ルカリオ! アリスに付いてあげて!”
『カル』
「パンパカパーン! アリスはルカリオを仲間にしました!」
先生の指揮の元、モモイとプラスル、ミドリとマイナン、アリスとルカリオ、先生とピカチュウとグレイシア、そしてヒノアラシとチコリータとワニノコの御三家を連れて、襲い掛かってくるロボット達をグレイシアが【れいとうビーム】で凍らせ、ピカチュウが【アイアンテール】を、プラスルとマイナンが【チャージビーム】を放って破壊し、飛んでくるドローンはモモイとミドリが銃で応戦し、さらにルカリオの【はどうだん】、御三家が【ひのこ】と【つるのムチ】と【みずでっぽう】で撃ち落とす。
「楽勝楽勝♪ このまま一気に攻略だよ!」
「アリスちゃん。持ち運びとか大丈夫?」
「はい! アリスはこの武器と一心同体です!」
「ーーーーフッフッフ。快進撃もここまでですよ!」
そして次に現れたのは、ノノミのと少し違うガトリング銃、『M134・プロフェッサーK』を携えたコトリと、パワードスーツに入り込んだロトム。そして、コトリの肩に乗ったパモであった。
「げっ!? コトリ!」
「そ、そのパワードスーツは何!?」
“ーーーーもしかして、カイザーの?”
「その通りだよ先生」
コトリの隣にいるロトムが入ったパワードスーツは、〈カイザーコーポレーション〉のカイザーPMC理事(元)が使っていた『パワードスーツ・ゴリアテ』に面影があり、先生が問い掛けるとウタハが肯定を示すように説明した。
「『アビドス砂漠』の戦闘でユウカが半壊していたパワードスーツを見つけてね。カイザーの技術力を少し調べさせてもらおうと回収してもらって、我々『エンジニア部』で改良し、ロトム用のパワードスーツとして開発、ロトムが入り込んで新たな姿となった。名付けるならばーーーー『パワードロトム』だ。タイプは『かくとう』と『でんき』だよ!」
『ロットォ!!』
ウタハの説明が終わると、コトリのロトム、否、パワードロトムは銃もミサイルも装備していない両腕をガシャンっと鳴らして身構えて見せた。
「さぁ! このパワードロトムに勝てるか!? 『ゲーム開発部』!!」
「皆さん! イベント発動です! このイベントをクリアして、光の剣を入手しましょう!」
パワードロトムを連れて意気揚々なコトリを見て、アリスが宣言した。
“・・・・モモイとピカチュウとルカリオは動き回ってコトリ達を撹乱。パワードロトムはミドリとグレイシアが狙撃と【れいとうビーム】で攻撃して、ヒノアラシとチコリータとワニノコはコトリとパモを。アリスは『光の剣』のチャージをして”
『プラプラ!?』『マイマイ!?』
プラスルとマイナンが「僕達は!?」と聞くと、先生はコッソリと二匹に指示を出した。
「うりゃぁぁぁぁ!」
『ピカピカピカピカピカ!』
『カルゥ!』
モモイがアサルトライフルで、ピカチュウが【かげぶんしん】でコトリ達を撹乱し、ルカリオが接近してフットワークでヒット&アウェイを繰り広げパワードロトムを牽制、ヒノアラシとチコリータとワニノコがコトリとパモを攻撃し、パモは【チャージビーム】で攻撃し、ミドリとグレイシアが援護していた。
“ヒノアラシ【かえんぐるま】! チコリータ【エナジーボール】! ワニノコ【かみつく】!”
『ヒィノォ!!』
『チコォ!!』
『ワァニィ!!』
ヒノアラシが背中に炎を出して身体を回転して突撃する【かえんぐるま】を、チコリータは緑色のエネルギー弾【エナジーボール】を放ち、ソレらを回避してバランスを崩したパモをワニノコがその大顎で噛もうとするが、寸前で回避される。
『ピカッ!』
『ロト!?』
そして、ピカチュウもパワードロトムに急接近した。
“ピカチュウ【かみなりパンチ】! グレイシア【こおりのつぶて】!”
『ピカチュウ!』
『グレイ!』
「うわっ! ロトム! パモ! 【こらえる】!」
『ロト!』
『パモ!』
が、防御態勢に入った二匹は、その攻撃に耐えた。
“(ニヤリ・・・・チラッ)”
「「(・・・・グッ!)」」
『『(・・・・グッ!)』』
ソレを見て小さく笑みを浮かべた先生がモモイ達に視線を寄越すと、才羽姉妹は親指を立て、プラスルとマイナンは力こぶを作るような仕草をした。
「フッフッフ。惜しかったですね! では決めましょう! ロトム【インファイト】! パモ【10まんボルト】!」
『『(・・・・サッ)』』
「・・・・へ?」
コトリが攻撃の指示を出したその時、パワードロトムとパモは、【こらえる】の体勢になってしまっていた。
「ちょ、ちょっと何してるの二人とも!? 攻撃だって言ったでしょ!?」
「・・・・コトリ」
コトリが慌てて二匹に声を上げるが、ウタハと同じ位置で観戦していたヒビキが声をかけた。
「【アンコール】を受けてるよ・・・・」
「はい・・・・?」
コトリが目を向けると、プラスルとマイナンがその手にポンポンを生み出して、パワードロトムとパモに向かって、『同じ技を何度も使ってしまう技』である【アンコール】を放っているのが見えた。
「あぁ~!! しまったぁ!!」
「しかも一箇所に集められたね。これじゃーーーー」
“アリス!”
ガビーンと、涙目になったコトリにウタハが言い終わる前に、先生がアリスに指示を出すと、スーパーノヴァのチャージを終えたアリスが砲口を、いつの間にか一箇所に集められていたコトリ達に向けてーーーー。
「ーーーー光よ!!」
ーーーードシュゥウウウウウウウウウ!!
「どっひゃぁぁぁぁ!!」
出力を抑えたレーザーがコトリ達を飲み込み、光が収まると涙目になり黒焦げになって倒れるコトリと、目を回したパモと、パワードスーツからヨロヨロと出てきて気を失ったロトムだけであった。
「これは・・・・負けだね」
「ああ」
ヒビキとウタハがそう言い終わると、戦闘は終わった。
「やったぁ! 勝ったぁ!」
「ふぅ・・・・」
「パンパカパーン! アリス達はレベルアップしました!」
モモイとアリスが勝利を喜び、プラスルとマイナンもはしゃぎ、ミドリは安堵したように息を零した。
「・・・・・・・・素晴らしい」
「くっ、悔しい・・・・ですが、コレが結果ですね!」
これまでポーカーフェイスだったウタハは一瞬だけ言葉を失うがすぐに称賛の声をあげ、ヒビキも目をパチクリとさせ、起き上がってロトムとパモをモンスターボールに戻したコトリが、涙目で悔しそうに言うと、アリスに向けて笑みを浮かべから言う。
「アリス、その『光の剣』は改めて、あなたの物です!」
「わぁ、わぁっ・・・・!」
アリスは心から欲しかった玩具が手に入った事を喜ぶ子供のように無邪気な笑顔で喜んだ。
その笑顔を見て、ミドリも笑みを浮かべる。
「ふぅ、取り敢えず良かった」
「ソレを使いこなせるなんて、本当に凄いね・・・・」
ヒビキも扱いづらい筈のスーパーノヴァを完全に使いこなしているアリスに感心したような声を上げてから、アリスを手招きする。
「おいで、アリス。もう少し使い方を教えてあげる。ソレから、取手の部分をもう少し補強しようか」
「はい!」
アリスはヒビキと一緒に作業机に行き、スーパーノヴァの補強作業と、手入れの仕方を教わる。
ーウタハsideー
「・・・・・・・・」
ソレを離れた位置から、ウタハはジッとアリスを見ていた。
“アリスが気になるの? ウタハ?”
「あぁ先生。・・・・うん。まぁね」
先生に話しかけられ、ウタハはスパナを手に持ち、クルクルと回しながら自分の考えを言う。
「最低でも1トン以上と推定される握力、発射時にもブレない安定した体幹バランス、強度や出力は勿論、肌全体に傷すら見当たらない綺麗な肉体・・・・いや、『機体』。つまり、最初から厳しい環境での活動を想定し、『ナノマシン』によって『自己修復』する事を前提として作られた身体・・・・」
ウタハは先程の戦闘でアリスの事を分析していたようだ。お馬鹿な部分はあるが、根は『マイスター』の称号に相応しい頭脳を持ったウタハである。アリスが『何者』なのかは、ある程度の推察を並べているのだろう。
「先生も先程の戦闘でおおよその検討も付いていると思うけど、その『目的』はきっと・・・・『戦闘』、だな」
“っ!”
ウタハがチラリと先生を見てそう言うと、先生がピクッと身体を揺らすのを見てから、改めてアリスに目を向ける。
「アリス、君は一体・・・・?」
スーパーノヴァを肩紐で担いで、クルクル回りながら笑顔を振りまくアリスに、ウタハは小さく疑問の声を投げかけた。
ーアリスsideー
部室に戻った一同の前に、目を回して網に捕まったポケモン達を連れたユズとデンチュラがいた。
「あっ、ユズ! アリスのパートナーになりそうなポケモン、見つけてきた?」
「う、うん。デンチュラのトラップに引っ掛かった子達を連れてきたけど・・・・」
そう。ユズはデンチュラに頼み、外にいるポケモンをなるべく痛い目に合わせないように捕まえてきて欲しいと頼み、デンチュラが外で糸で網を作り、ソコに入った野生ポケモン達を捕らえて連れて来たのだ。
“・・・・ちょっと感心できないけど・・・・アリス、どのポケモンがいい?”
「・・・・・・・・」
網に入って大人しくしているポケモンの中で、アリスがスーパーノヴァの時のように、真っ直ぐに見つめているポケモンがいた。
顔と胴体の幅がほぼ等しいので、かなりズングリムックリとしており、耳は黒とクリームの楕円型で、黒い尻尾は細長く、背中には縦線の模様が入っており、赤い頬にはピカチュウ達のような電気袋をしており、長いヒゲが生えている。20cmの小さな身体をし、オレンジ色のハムスターのような姿をしていたーーーー。
『デデン?』
『アンテナポケモン・デデンネ』であった。
「・・・・・・・・」
『デデ』
アリスがソっと手を伸ばすと、デデンネも手を伸ばし、お互いの手が触れた瞬間、アリスとデデンネはお互いに笑みを浮かべ、アリスは皆に笑顔を向けた。
「アリス、この子にします!」
『デデン!』
「えっ良いのアリスちゃん? デデンネよりも強そうな子もいるけど?」
「アリス。デデンネが良いんです!」
『デデン!』
ミドリが一応確認するが、アリスは満面の笑みでデデンネが良いと言い、デデンネも肯定するかのように頷いた。
“アリスがソレで良いなら、私達はコレ以上何も言わないよ。ユズ、他のポケモン達には悪いけど、放してあげて。お詫びにクッキーも渡しておいてね”
「は、はい・・・・デンチュラ、皆を解放してこよう」
『チュラ』
ユズは先生からクッキーを手渡され、デンチュラと一緒に他の捕らえたポケモン達を解放する為、ソレらを連れて部室から外に出ていった。
そして、先生がモンスターボールをアリスに手渡した。
“それじゃぁアリス。デデンネをゲットしてみよう”
「はい! デデンネ!」
『デデンネ♪』
アリスがモンスターボールを差し出すと、デデンネは頭をコツンと当てさせ、そのままボールが開き、デデンネはボールに入ると、すぐにゲットが完了された。
「やりました! アリスはデデンネをゲットしました!」
はしゃぐアリスは早速デデンネをボールから出すと、デデンネはアリスの背負っているスーパーノヴァから登り、アリスの肩から頭の上に鎮座した。
『デンネ!』
「わぁい! アリスはパートナーを得ましたぁ!!」
アリスはデデンネを頭に乗せたまま、クルクルとその場で回った。その際に、スーパーノヴァも振り回されて危なかったが、ソコはご愛嬌。
「ーーーーさてっ、もう廃部の危機は免れたんだし、安心してゲーム三昧できるね!(ドスンっ!)オフっ!!」
呑気を言うモモイのお腹に、プラスルとマイナンが「違うでしょうが!」と言わんばかりに【ずつき】を炸裂させた。
「お姉ちゃん! ちょっと気を緩めるの早くない!? ユウカにはもう言ったの? 『部員が4人になったから、部の資格要件は備えた』って」
倒れた姉に、ミドリは確認を取った。部の資格要件として、『部の規定人数は4人まで』と言うのが〈ミレニアム〉の条件なのだから当然と言える。
「あたた・・・・も、勿論。ソレで今日の午後に、アリスの『資格審査』に来るって・・・・」
「『資格審査』って何!? そんなの初めて聞いたんだけど!? その『資格審査』に、私達の部の存続がかかってるのに・・・・呑気にゲームしてる場合じゃないでしょ!?」
「心配し過ぎだって、アリスの準備についてはもう完璧なんだし」
「え、そうなの?」
苦言を言う妹に、モモイは自信満々の笑みでそう応えると、アリスに勢い良く話しかけた。
「アリス、自己紹介を!」
「私の名前は『アリス・ザ・ブルーアイ』、ドワーフ族の槍騎士。使用武器はガンランス『火竜の牙』、出身地は鋼鉄山脈。幼い頃、魔族の襲撃により家族を失って、燃え上がる鉱山の中へと単身乗り込み・・・・」
「いやゲーム内アバターのプロフィールじゃなくて、アリス自身の!」
がしかし、アリスは自分の紹介ではなくゲーム内でのアバターの自己紹介を始めてしまい、モモイは焦り、アリス自身の紹介をするよう言う。
「あ、間違えました。私の名前は『天童アリス』。パートナーはデデンネです。〈ミレニアムサイエンススクール〉の1年生。最近転校してきたばかりで受講申請のタイミングを逃してしまった為、まだ授業の登録ができていない状態なのですが、来月から正式に授業に参加する予定です。授業にはまだ参加できなくても、部活動への参加は可能とのことでしたので、ゲーム開発部に入部しました」
『デデンネ』
今度はちゃんと自己紹介をしていく。
「あ、結構それっぽい」
「ゲーム開発部で担っている役割は、タンク兼光属性アタッカー・・・・」
「違う違う、役割は『プログラマー』!」
アリスの自己紹介を聞いてミドリは微かに安心しだしたのだが、アリスはまたゲームの紹介をしだした為、慌ててモモイが訂正する。
「ぷ、『プログラマー』です! 生まれた時から、母国語よりも先にJabaを使っていまして・・・・」
「ううっ、本当に大丈夫かな・・・・!?」
“まぁ、最悪は私もユウカを説得するから・・・・”
アリスの現状を見てミドリの不安は増すだけであり、先生が苦笑しながらそう言うと、後ろでユウカの髪型をしたウィッグを被ったピカチュウが、先生と同じ背広を着たルカリオに壁ドンされ、少女漫画のような世界を繰り広げていた。
次にサーナイトのウィッグを付けたワニノコがルカリオの背中にくっつき、ピカチュウとワニノコがルカリオを取り合ってドロドロの昼ドラを演じていた。
プラスルとマイナンとヒノアラシがソレを見てケラケラと笑い、イーブイとチコリータは半眼で見据えていた。
◇
そして、約束の時間となりーーーー。
「・・・あり得ないわ。『ゲーム開発部』に新入部員が入っただなんて、あり得ない・・・・!」
『サナ・・・・』
ユウカはゲーム開発部の部室に入るなり、開口一番そう呟き、サーナイトは苦笑していた。ゲーム開発部に部員が入った事が、ユウカにとっては信じられなかったらしい。
「残念だけど、事実だよ!」
『プラスル!』
「ユウカ・・・・」
『マイナン!』
「・・・・?」
『デデン?』
才羽姉妹とプラスルとマイナンが、「どうだ!」と言わんばかりにふんぞり、アリスとデデンネは良く分かっていないのか首を傾げた。
「あなたが噂のアリスちゃんね。『ゲーム開発部』に入った、4人目のメンバー」
ユウカはアリスに近付いて、マジマジとその顔を見据えていた。
「ふーん、ミレニアムの生徒ならほぼ全員把握してると思ってたけど・・・・。私がこんな可愛い子のことを知らなかったなんて、ちょっと信じられないわね」
「(ビクッ)」
聴く人によっては『誤解』を生み出しかねない台詞を吐くユウカに、モモイはバレないか不安そうにしていた。
『サナ』
“ん? やぁサーナイト”
『サナ』
サーナイトはまたも先生のすぐ隣にススッと移動すると、先生のネクタイが曲がっているので直そうと、少し妖しい手つきで先生のネクタイを治そうとした。
『ブイブイブイ!』
『チコチコ!』
『サナサナ、ササササ・・・・』
が、その手は先生の両肩に瞬時に乗ったイーブイとチコリータが、「先生に馴れ馴れしい!」と言わんばかりにサーナイトを威嚇するが、「アラアラ、怖い怖い」と言わんばかりにお淑やかに笑みを浮かべるだけであった。
「・・・・?」
そして当のアリスは、自分を見据えるユウカを訝しそうに眉根を寄せていると・・・・。
「よ、妖怪が出現しました・・・・!」
『プッ・・・・』
突然、ユウカを指さしてそう言い、サーナイトは思わず小さく吹き出した。
余談だが、サーナイトと兄のエルレイドがまだ野生の『ラルトス』だった頃、二匹の可憐さに鼻の下を伸ばして一目惚れしたユウカが、二匹をパートナーにしようと追いかけてきて、何度も【テレポート】で逃げていた事を思い出したのだろう。
「い、今この子、私の事を『妖怪』って言ったわよね!?」
「か、勘違いだよ! サーナイトのような『妖精』って言ったのを聞き間違えたんでしょ、もう、アリスは嘘がつけないんだからー」
アリスの失言を必死に誤魔化そうとするモモイ。
「くっ・・・・『悪役』には慣れているとは言え、まさか初めて会う子に妖怪扱いされるだなんて。いい度胸してるじゃない・・・・!」
だが、ユウカは『妖怪』と言われた事が余程ショックだったのか、頭に血管を浮かべて怒り出してしまいそうだった。
『サナ』
が、寸前で、サーナイトが【テレポート】でユウカの背後に飛び、羽交い締めして抑えた。
「お、落ち着いて! 生徒会が個人的な感情を挟んじゃダメでしょ!?」
『プラプラ!』
モモイとプラスルが必死に宥め、気を逸らそうとユウカに、改めて話し出す。
「兎に角、部の規定人数は満たしたよ! コレで『ゲーム開発部は存続ってことでOKだよね?」
「存続・・・・。確かにそうね・・・・この子が本当に、自分の意志でここに来た部員だったら、の話だけど」
「(ドキッ)」
「本来は部員の加入を申告すれば、それだけで良かったのだけれど・・・・。最近は部活の運営規則も少し変わって、もう少し厳しく確認する必要が出てきたの」
気を取り直したユウカはサーナイトから解放され(サーナイトは再び先生の隣に移動し、イーブイとチコリータからの敵意剥き出しの視線をたおやかな笑みで受け流していた)、モモイたちに向き直る。
どうやら、ただ部員の加入を申請するだけでは部の存続ができる訳ではないようだ。
「だから、アリスちゃんに簡単な『取り調べ』・・・・あら、思ってもない言葉が・・・・。じゃあ、いくつか簡単な質問をするわね」
「思いっきり本音が出てた気がする・・・・」
「本格的にマズイかも・・・・」
ユウカの発言を聞いてモモイとミドリはそう呟き、少し嫌な予感がしていた。
そしてユウカは、不安そうなアリスに話しかける。
「そんなに時間はかからないわ」
「(ゴクッ)せ、選択によっては、バットエンドになる事もありますか?」
「バットエンド・・・・まあ、そういう事もあるかもね。それじゃあ・・・・アリスちゃん」
ユウカは一拍置いてから口を開く。
「・・・・質問を、始めるわ」
ユウカの質問と言う体の『取り調べ』が始まるのであった。
ー先生sideー
“ーーーーサーナイト。ちょっとお願いがあるんだけど?”
『サナ?』
『取り調べ』が始まる際、先生がサーナイトに耳打ちをした。(イーブイとチコリータはピカチュウとルカリオ、ヒノアラシとワニノコが押さえている)
ーアリスsideー
「・・・・アリスちゃん。もし『ゲーム開発部』に脅されて仕方なくこの場にいるのなら、左目で瞬きをして」
「・・・・?」
「ちょっと、最初から何その質問!? 小声で言っても聞こえてるから! っていうかそんな事しないって!!」
取り調べの初っ端から、いきなりユウカは小声でアリスにそう呟く。
だが、アリスの方は言っている意味が解らず首を傾げた。それを聞いたモモイが叫びながら、アリスの首にぶら下げられた『ヴェリタス』に偽装してもらった『学生証』を、まるで時代劇の印籠の如くユウカと、ユウカの後ろに秘書かメイドのように控えるサーナイトに、自信満々に見せた。
「ほら見て、この眩しい『学生証』を! 〈ミレニアム〉の生徒だっていう紛う事無き証明!」
「ふーん・・・・確かに、生徒名簿にアリスちゃんが登録されていることも確認したけれど・・・・。私はそんな簡単に騙される女じゃないわ」
「(ビクッ)」
「(ば、バレた!?)」
が、そんな『学生証』など意に介さず、薄く笑みを浮かべて質問を続けていくユウカを見て、モモイとミドリは更に不安を増してしまった。
「さて、それじゃあ『取り調べ』を再開しましょうか」
「もう隠すつもりないじゃん・・・・」
完全に個人的な『取り調べ』である事を隠さなくなってきたユウカにモモイは毒づくが、そんな言葉を無視して、ユウカはアワアワとなっているアリスへ取り調べを続けていく。
「アリスちゃん、あなたがゲーム開発部に来たきっかけは何?」
「気が付いた時はすでにここに、ではなく・・・・」
「モモイ、プラスル、何でそんなにアリスちゃんを睨んだり、『×』のプラカードなんて挙げている訳? やめてあげなさい」
教えた答えではないことを話そうとするアリスに対し、モモイとプラスルが必死で修正しようとするが、ユウカはそれに気づき止めさせる。
「えっと、『魔王城ドラキュラ』がやりたくってそれで、『ゲーム開発部』の存在を知って・・・・」
「ふーん・・・・そうなの」
「(よし!アリスちゃん、その調子!)」
『(マイマイ!)』
今度はちゃんとした答えを言ったアリスに対し、ミドリは内心ガッツポーズをし、マイナンはポンポンを出して応援していた。
「でもここは『レトロゲーム部』じゃない、あくまで』ゲーム開発部』。つまり、あなたもゲーム作りに参加するという事よね? 何を担当するの?」
「タンク兼光属性アタッカー・・・・」
「えっ?」
「じゃなくて、えっと、ぷ、ぷ、ぷ・・・・プログラマラスです!」
「・・・・はい? プログラマー、じゃなくて?」
「あ、はい。そうです、その通りです。間違いなく私は完璧なプログラマーです」
ユウカの次の質問にアリスはゲームでのジョブを答えようとしたが、ユウカに聞き返されて同様してしまい、ヘンテコな答えをしてしまった。
「(まずい・・・・っ!?)」
アリスの様子を見て、ユウカの疑念はますます強まっていき、モモイとプラスルは頭を抱えてしまう。
「プログラマーね・・・・。すごく難しい役割だと聞くけれど」
「はい、そうです。プログラマーは大変です。たまに過労で意識を失ったりもします」
「な、なんですって!?」
アリスの発言を聞いて、ユウカは驚いて目を見開く。過労で意識を失うと言われて、根は良い子なので心配そうに声を上げた。
「それでも大丈夫です!」
「いや、大丈夫じゃないでしょ・・・・ちゃんと休みなさいよ・・・・」
「宿屋で寝て起きるか、聖堂にお金を払えば、仲間達と一緒に復活できます!」
「そっ、そんな訳ないでしょ!?」
アリスの発言はどんどん、ゲーム寄りの方向へと変わっていき、ソレを聞いたユウカは困惑していく。
「そんな訳ないのです・・・・? 常識の筈ですが・・・・もしかして、『英雄神話』や『聖槍伝説』をご存じないのですか?」
するとアリスは、満面の笑みを浮かべてーーーー。
「本当に『神ゲー』ですよ」
「「・・・・・・・・・・・・」」
『『・・・・・・・・・・・・』』
「終わった、全てが・・・」
そんなアリスとは逆に、モモイとミドリ、プラスルとマイナンは、何もかも終わったと、顔面蒼白となって四つん這いになって項垂れ、先生達は片手で顔を覆うしかできなかった。
「・・・・ありがとう、分かったわ。短い時間だったけれど、アリスちゃん。あなたのことについては概ね理解できた」
少し時が経ち、ユウカは取り調べを終了する。だが、アリスと頭の上のデデンネ以外のからは、この世の終わりのような雰囲気が出ていた。
「(もうダメだぁっ!)」
「(どうしよう・・・・!?)」
『プラァ〜』
『マァイ〜』
「・・・!?」
モモイとミドリは動揺し、プラスルとマイナンは泣いているだけに終わっていた。
がーーーー。
「ちょっと怪しいところはあるけれど・・・・ゲームが好きだってこと。それに、新しい世界を冒険したり、仲間と一緒に何かをやり遂げるストーリーが好きなんだってことは、十分に伝わってきた・・・・」
“おや?”
「そんなあなたがゲーム開発部の部員だというのは、何も不思議な事じゃないわ」
「え・・・・?」
「っていう事は!?」
『プラ?』
『マァイ?』
「『規定人数』を満たしているので、『ゲーム開発部』を改めて正式な部活として認定・・・・部としての存続を承認します」
しかし予想外な事に、ユウカはアリスの事を『ゲーム開発部』の部員であると認めた。
「やったぁ!」
「良かったぁっ!」
『プラプラ☆』
『マイマイ☆』
ユウカに認められ、正式に『ゲーム開発部』は〈ミレニアム〉の部活として認められた。
先程まで絶望で顔を覆っていた一同は、その言葉を聞いて元気を取り戻した。
「そ、そしたら部費も貰えるし、このまま部室を使ってもいいんだよね!?」
「ええ、もちろんよ。『今学期』までは・・・・ね」
「わーぃ・・・・え?」
「な、な、なんで!?」
ユウカの言葉に、才羽姉妹はピタッと止まり、プラスルとマイナンはその場で倒れてしまった。
アリスのパートナーは、アニポケでシトロンのパートナー候補にもなったデデンネにしました!
オリジナルロトム・『パワードロトム』
プラズマポケモン でんき・かくとうタイプ
全長2.3メートル 重さ300kg 特性ふゆう
パワードスーツにロトムがはいったフォルム。パワーが強く、ロトムじしんもチカラカゲンがむずかしい。