ー先生sideー
〈ミレニアム〉の特殊部隊『Cleaning&Clearing』、略して『C&C』。
メンバーは数人しかいないが、その戦闘力は〈ゲヘナ学園〉の『ゲヘナ風紀委員会』、〈トリニティ総合学園〉の『正義実現委員会』に匹敵し、彼女達によって壊滅させられた過激団体や武装サークルは数知れず。
その『ご奉仕』により最後には必ず痕跡すら残されない、まさに綺麗に『殲滅‹掃除›』される少数精鋭のエージェントメイド部隊。
・・・・と言うのが〈ミレニアム〉では有名な話である。と、アロナが調べてくれた情報だ。
「待って待って待って! 諦めちゃダメだよモモ! 『G.Bible』が欲しいんでしょ!?」
『ドブル!』
『プラプラ!』
「そりゃ欲しいよ! でもだからって、『メイド部』と戦うなんて冗談じゃない! そんなの、暴れてるリングマに抱き着けとか、燃え盛るヒノアラシの背中に頬擦りしろって言われた方がまだマシ!」
『ヒノ?』
そんな武闘派な連中と戦うなんて真っ平御免と言わんばかりにスタコラサッサと帰ろうとするモモイの腰にしがみつくマキとプラスルを抱えるドーブル。
何故か飛び火したヒノアラシが首を傾げる。
「で、でもこのままじゃあたし、部長に怒られ・・・・じゃなくて! 『ゲーム開発部』も終わりだよ! このままじゃ廃部になっちゃうんでしょ!?」
「廃部は嫌だけど・・・・でもこれは話の次元が違う。そりゃ部活は守りたいけど、ゲーム開発部の皆の方が圧倒的に大事! 危険すぎる!」
『プラプラ』
必死に引き留めようとするマキに、モモイが無理だと断言し、プラスルも頷いた。ソレでもマキは食い下がる。
「私も『C&C』が危険なのは分かってるって! でもあたし達は〈ゲヘナ〉の『風紀委員会』でもなければ、〈トリニティ〉の『正義実現委員会』のような武闘派じゃないんだから、何も真正面から喧嘩しようって訳じゃないよ。あたし達の目標は『メイド部を倒す事』じゃなくて、『差押品保管所から『鏡』を取ってくる事』なんだから~・・・・」
「そんなに変わらないじゃん!」
『プラ!』
結局『メイド部』とドンパチは避けられない事に、モモイは拒否を示し、プラスルも両手で☓を示した。
「でも、可能性の無い話じゃない・・・・」
「私の盗ちょ・・・・情報によると、現在の『メイド部』は完全な状態ではありません」
と、ソコでハレとコタマが話に入ってきた。
「えっ?」
『プラ?』
首を傾げるモモイとプラスルに、更に説明をする。
「勿論、『メイド部』は〈ミレニアム〉最強の武力集団。どうして『最強』と呼ばれているのか・・・・ソレは勿論、素晴らしいエージェントのメイドが揃っていると言うのもあるけれど・・・・何よりも大きいのは、『彼女』の存在」
“『彼女』って・・・・”
先生の問い掛けに、ミドリが一拍子置いてから口を開いた。
「『メイド部』の部長、コールサイン・ダブルオー・・・・『ネル先輩』」
“あっ、その名前なら聞いた事があるよ。〈ゲヘナ〉のヒナや〈トリニティ〉のツルギに匹敵する〈キヴォトス〉でも無類の強さとポケモントレーナーとしての実力を持った子だよね?”
「そう。マトモにやり合うなんてあまりにも危険過ぎる相手。一般生徒であるから、手持ちのポケモンこそ風紀委員長の空崎ヒナや正義実現委員長の剣先ツルギよりも少ないけど、それでも〈キヴォトス〉最強クラスの実力者の1人。けど、彼女は今・・・・」
ーユウカsideー
場所は変わって〈ミレニアム〉の屋上にて。
「ね、ネル先輩がいない!?」
「はい、ミレニアムの外郭に個人的な用事があるそうでして」
最強戦力が不在であると聞き、ユウカは声を上げ、アカネも申し訳なさそうにする。
が、すぐに笑みを浮かべてきた。
「ですが、ご心配なく。厳密に言うと私達のリーダーと手持ちのポケモンは、守る事よりも『壊す事』に特化した方達ですから。勿論、リーダーがいる時の『C&C』が1番強い・・・・と言うのは紛れも無い事実です」
と、ソコで、アカネは「ただ・・・・」と付け加えた。
「『守る』戦いに関しては・・・・私達だけの方が良いかもしれません」
『マルマル♪』
『ゴロニャ』
リーダーがいなくても問題ないと断じるアカネの言葉にマルマインとアローニャゴローニャも不敵な笑みで頷いた。
「では改めまして、依頼をお受けします。約束の時間まで、ゲーム開発部を生徒会の差押品押収所に近づけないこ事・・・・お約束いたしましょう」
ソレを聞いてユウカも、取り敢えずは納得したようだ。
ー先生sideー
場所はまた変わり『ヴェリタス』の部室。
「正面衝突を避けて、『鏡』だけを奪って逃げる・・・・うーん・・・・」
「・・・・やってみよう、お姉ちゃん」
『マァイ』
「えぇ!? でも『ネル先輩』がいないからって、相手はあの『メイド部』だよ!?」
「分かってる、でも・・・・このままゲーム開発部を無くす訳にはいかない」
『ヴェリタス』の説明を聞いても、勝てるかどうか分からず悩むモモイに対し、ミドリは作戦に参加すると言い出した。ミドリの肩に乗ったマイナンも頷く。
いつもは、何かと勢いで突っ走るモモイに流される事が多いミドリの行動に、モモイは驚きの声をあげる。
「ボロボロだし、狭いし、たまに雨漏りするような部室だけど・・・・もう今は、私達がただゲームをするだけの場所じゃない。・・・・皆で一緒にいる為の、大切な場所だから」
ミドリは如何にゲーム開発部が自分達にとって、かけがえのない居場所なのかを話していく。
「だから、少しでも可能性はあるなら・・・・私はやってみたい。ううん。もし『メイド部』と対峙する事になっても、ソレがどれだけ危険だとしても・・・・!」
ミドリが決意を込めた眼差しを向ける。
「守りたいの。アリスちゃんとデデンネの為に、ユズちゃんとデンチュラの為に・・・・私達、全員の為に!」
『マイマイ』
「ミドリ・・・・」
『プラ・・・・』
ミドリのゲーム開発部を守る為の覚悟を聞いたモモイは、妹の決意に感動して目を潤ませていた。 マイナンとプラスルもである。
「私達ならできます」
と、ソコで、今まで黙っていたアリスが笑顔でできると言ってきた。
「伝説の勇者は・・・・世界の滅亡を食い止める為に、魔王を倒します」
『デデン!』
アリスとデデンネもやる気のようだ。『メイド部』の強さを知らないゆえであろうが。
「アリスは計45個のRPGをやって・・・・勇者達が魔王を倒す為に必要な、一番強力な力を知りました」
「『一番強力な力』・・・・レベルアップ? あ、装備の強化? それとも、伝説級や幻級の強力ポケモン??」
「盗聴ですか?」
「EMPショックとか!?」
「ち、違います・・・・」
アリスの『一番強力な力』という言葉にそれぞれの『一番強力な力』を上げていく。コタマは何やら怪しい事を言っているが。しかし、アリスは困った顔を浮かべながら、どれも違うと答える。
「一緒にいる、『仲間』です」
『デデン!』
「アリス・・・・」
『プラ・・・・』
妹やアリスも覚悟を決めた事を言い、モモイとプラスルも腹を括ったような顔となる。
「・・・・うん、よし。やろう! 生徒会に潜入して、『鏡』を取り戻す!」
『プラスル!!』
そしてモモイは、この中で1番頭の良いハレに目を向けた。
「ハレ! 何かいい計画ない!?」
「任せて。ただその計画を実行する為には・・・・。幾つかの『条件』が必要だね。さっき言ってた盗聴も、EMPショックもそう・・・・それに・・・・」
既に計画を練っていたハレが色々と成功させる為の『条件』を提示していく。
「後はやっぱり・・・・『仲間』、かな」
「『仲間』?」
『プララ?』
「(キラキラ)」
『(ワクワク)』
モモイとプラスルが首を傾げ、アリスとデデンネは目を輝かせ、ワクワクとしていた。
「でも、私達とはそんなに親しい仲って訳じゃないから・・・・先生にお願いしないとね」
“私にできる事なら、任せて”
『ピカ』
『カル』
『ブイ』
『ヒノ』
『チコ』
『ワニ♪』
『仲間』が必要だと言いうハレが、先生に目を向けると、自分達の『居場所』を守りたいと言うミドリに賛同して、先生も頷き、ピカチュウ達も頷いたのである。
「うん。恐らく彼女達の力無しに、この『計画』は成立しない」
ハレは、先生に『ある部活の娘達』の協力を得るように説明した。
◇
そして先生はそのまま、協力を得る為にその生徒達の元へと向かった。
ーーーー『エンジニア部』である。
「成る程、それは確かに的確な判断だ。君の言う通り、その方法なら私たちじゃないと難しいだろうね。あ、先生にはコレ。依頼された『道具』。後で使えるか試してみてくれ」
『ロト♪』
“ありがとう”
先生は以前『依頼していた道具』が完成したとウタハから連絡が来ており、ソレを受け取ると、ウタハが口を開く。
「うん、分かった協力しよう」
「ほ、本当に良いんですか? 『エンジニア部』は実績もたくさんありますし、こんな危ない橋を渡る必要は・・・・」
「そうだね、そうかもしれない」
「それなのにどうして、『メイド部』と戦うなんて言う危険な計画に乗ってくれるんですか?」
ウタハはミドリ達からの頼みを了承した。しかし、ミドリは自分達とは関係なく、『実績』は十分にある部活である彼女達が、自分達に協力する事に疑問を浮かべた。
「それは・・・・」
「・・・・うん、その方が面白そうだから、かな」
『ロトロト!』
『ハラ!』
「そうです! それに私達も、もっと先生と仲良くなりたいですから!」
『パモ♪』
『ロトロト♪』
ミドリの疑問に、ウタハを筆頭に、面白そうだからとヒビキ達が答える、更に先生と仲良くなりたいようであった。
「そうだね、ソレと・・・・」
しかしウタハはチラッとだけ、アリスの方に視線を寄越した。
「?」
「・・・・?」
「・・・・いや、今は良いさ。よろしく」
「あ、はい。こちらこそ、よろしくお願いします・・・・!」
が、すぐに視線をミドリの方へ戻して、計画の参加を決めた。
◇
『ヴェリタス』の部室に戻った『ゲーム開発部』は、協力を得た事を報告する。
「コレで、メンバーは揃ったよね?」
「うん、準備もできてる」
『パチ♪』
「よしっ!」
『プラ!』
『ゲーム開発部』、『ヴェリタス』、『エンジニア部』の三つのチームが、『鏡』奪還作戦に参加する事になった。
「あ、そう言えば、作戦はいつ始まるの?」
「いつ・・・・?」
モモイが作戦決行日を聞くと、ハレは首を傾げてから口を開く。
「もう始まってるよ」
『パチ♪』
『ポリゴン♪』
ハレは無表情に見えるが、パチリスとポリゴンは笑みを浮かべてそう告げた。
ーユウカsideー
〈ミレニアム〉・屋上にて、『メイド部』との交渉を終えたユウカに、アカネが問いかけた。
「あ、一つだけ質問をしたいのですが」
「何?」
「『ゲーム開発部』と『ヴェリタス』が生徒会を襲撃する・・・・。その事を、あなた達はどこから知ったのですか? 情報戦に関して、〈ミレニアム〉で『ヴェリタス』を超える集団はいないと思っていましたが・・・・」
アカネが探るように目を細める。こと情報戦においては、『ヴェリタス』は凄腕のハッカー集団だ。生徒会‹セミナー›に、その『ヴェリタス』の情報を知っている事に疑問を持つのは当然と言えよう。
「・・・・その通りよ。だから、“『ヴェリタス』が教えてくれた”。それだけの話」
「・・・・はい?」
『マル?』
『ゴローニャ?』
その問いに対するユウカの返答が、一瞬理解できなかったのか、アカネ達は困惑して、思わず間の抜けた声を発してしまった。
「私達に、『ヴェリタス』と『ゲーム開発部』がやって来る事を教えてくれたのは・・・・。『ヴェリタスの部長、ヒマリ』だもの」
ーーーー『ヴェリタス』の部長が、『ヴェリタス』が生徒会に襲撃する事を報せた。アカネも、そして内心ではユウカも、何か良からぬ企みが動いているような感覚を感じていた。
それぞれの思惑が、〈ミレニアム〉で絡み合っていく・・・・。
ーアリスsideー
そしてここは、〈ミレニアムサイエンススクール〉の中心に聳え立つ、『ミレニアムタワー』のオペレーションルームにて・・・・。
ーーーードカアアァァン!
「くっ!? や、やられてしまいました・・・・! ふ、復活の呪文・・・・を・・・・」
アカネのマルマインの【じばく】をモロに受けて、フラフラとなったアリスがドサッと倒れた。
ーユウカsideー
「・・・・・・・・」
『・・・・・・・・』
そして今、アリスを撃退したユウカは呆れ顔を、サーナイトは苦笑しており、ユウカが声を発した。
「・・・・信じられない・・・・どんな方法で来るのかと思ったら、よりにもよって『強行突破』だなんて」
『サナ・・・・』
そして、ユウカの隣ではマルマインをモンスターボールに戻したアカネがにこやかに歩いてきた。
「この子がアリスちゃんですね。とっても可愛いですねー、『6番目』のエージェントメイドとして育てたくなってしまいます。連れて帰っても良いですか?」
『ゴロゴロ』
「・・・・ソレはダメ」
『サナ』
アリスをお持ち帰りしようとし、頷いたアローニャゴローニャが手を伸ばすが、ユウカがダメと言い、サーナイトはアローニャゴローニャの手に触れて止めさせた。
「今は生徒会を襲撃した犯人の一人なんだから・・・・取り敢えず一旦、生徒会の反省部屋にでも閉じ込めておくわ。サーナイト、お願い」
『サナサ』
ユウカに言われ、サーナイトは【ねんりき】でアリスと『スーパーノヴァ』を空中に持ち上げた。
「それにしても・・・・まさかエレベーターの『指紋認識システム』を突破する為とは言え、無理矢理扉を撃ち破るだなんて」
「確認しました。エレベーターのセキュリティロックをすぐに修理するのは難しそうです。対処としては、丸ごと取り換えるしか・・・・」
「そう、じゃあ新しいのに交換・・・・ううん、ちょっと待って」
オペレーターの言葉を聞いたユウカが指示を出そうとしたが、すぐに止めた。
「多分だけど、あのアリスちゃんの意味分からないくらい巨大で重い武器・・・・『エンジニア部』で作られた物に違いないわ。こう言う修理が必要な時はいつも、『エンジニア部』に依頼してたけど・・・・ソコに、『罠』がある可能性も捨てきれない」
ユウカは『ゲーム開発部』と『ヴェリタス』の他に、『エンジニア部』も関わっているのではないかと勘ぐっていた。
「・・・・1番強力そうなセキュリティを購入して、急いで取り換えて。ただし、エンジニア部製じゃないもので」
ー先生sideー
そしてコチラは〈ミレニアム〉の廊下。
『シッテムの箱』に映し出されたオペレーションルームの様子を、先生はアリス達が抜けた『ゲーム開発部』と『ヴェリタス』と一瞬に見ていると、モモイが声を発した。
「うぅっ! アリスが連れて行かれちゃった!」
『プラァ〜』
「落ち着いてモモイ、計画通りだよ」
「アリスちゃん・・・・待ってて、すぐに助けてあげるから」
『マァイ・・・・』
ユズがモモイとプラスルを落ち着かせ、ミドリとマイナンが助けに行くと言うと、同行していたハレが口を開く。
「取り敢えず・・・・『一つ目の仕掛け』は、上手く行った感じかな。そうだよね、先生?」
“うん、そうだね。次は『エンジニア部』の方に、準備が終わったか聞いてみて”
すると、今度はマキがニヤリと笑みを浮かべて答える。
「丁度連絡が来てたよ、『コチラ『エンジニア部』、トロイの木馬を侵入させる事に成功した』・・・・ってね」
「ひゅーっ、ソレは一安心。もし失敗してたら、アリスが意味もなく監禁されるだけ・・・・って事になる所だった」
「じゃあ、次のステップに移ろうか」
マキの報告にモモイが笑みを浮かべ、ハレがそう言うと、次の移動を開始した。
◇
そして時間は夜。ミレニアムタワーは灯りが殆どない暗闇の空間となっていた。いつもは近未来的なビルの中のような校舎が、まるで不気味な魔城のように思えてしまう。
「・・・・さて、始めよっか。はあ、緊張する・・・・こんな気持ち、『古代史研究会』の建物を襲撃した時以来」
「あの時は『アンノーン』に囲まれたんだよねぇ〜。ソレで、ヒビキとウタハ先輩は?」
《もう『お客さん』を出迎える準備は出来てるって》
「良いね、流石」
「やってるのは決して良い事じゃないけどね・・・・」
ミドリとモモイが話していると、通信機からハレの声が響いてきて、モモイはニヤリと笑みを浮かべ、ミドリは溜息を吐いてくる。
「マキとコトリの方は?」
《コッチも準備OK、待機中だよ〜》
《お任せ下さい! 私の理論上、この作戦が成功する確率は『2%』です!》
「えぇっ、ほぼ間違いなく失敗じゃん! 何で自信満々なの!?」
《えへへ、場を和ませる冗談ですよ! 逆です、『98%』成功するでしょう!》
成功確率2%を堂々と言うコトリに、モモイが目をひん剥いて言うが、本当は逆であるとコトリがイタズラっぽく言った。
「コトリちゃんとマキちゃんの準備も終わったなら・・・・」
「『第2段階』、だね」
「ソレでも・・・・先生!」
ミドリが先生に顔を向けて言うと、先生も頷く。
“作戦開始!”
「はいっ!」
「行っくぞー!!」
ーユウカsideー
そしてオペレーションルームでは、傍らにサーナイトを置いたユウカが、目を瞑って待っていた。
ーーーーピピピッ、ピピピッ・・・・。
『サナ』
「・・・・来た」
サーナイトが声を掛けると、ユウカが目を開け、オペレーターの報告が入った。
「監視カメラにて対象を発見しました。1番ゲート、ポイントA1にターゲットを確認。間もなくポイントA2に進入します」
「ソコまで入れば、もう脱出はほぼ不可能と見て良いのですよね?・・・・では、私が行きましょう」
『ゴローニャ』
『ーーーーマルマル』
アカネがアローニャゴローニャと回復したマルマインを引き連れて行こうとする。
「あら、大分高く買ってるみたいね。アカネがわざわざ行く必要、ある?」
「勿論です。ーーーーお客様のお出迎えは、メイドとしての基本ですから」
ユウカが問いに、アカネはにこやかな笑みを浮かべて返した。
ー???sideー
* * *
ーーーー時は遡り、2時間前。『ヴェリタス』の部室で作戦会議をしていた時。
「じゃあ、私達のターゲット『鏡』があるとされる、生徒会の差押品保管所について説明するね。〈ミレニアム〉の生徒会『セミナー』は、基本的にミレニアムタワーの最上階を専用スペースとして使用してる。『鏡』がある差押品保管所は、その最上階の西側」
「調べた感じ、入口から差押品保管所へ辿り着くには、約400台の監視カメラと50近い警備ロボット、ソレにブラック企業から押収した戦闘ロボット数十体を突破しなきゃいけないみたい」
「正確には監視カメラが442台、警備ロボットが3種に分類されて計52体だね。警備ロボットがいるからポケモン達がいないのが救いだね」
ハレが『鏡』のある場所を言い、マキがソコに至るまでに突破しなければならない物を教え、ウタハが更に詳しく監視カメラ等の台数を述べていく。しかし、何故ウタハはソコまで知ってるのかと聞くと、ミレニアムタワーのセキュリティシステムの構築に『エンジニア部』が協力していたからだと応えた。
「うえぇ・・・・」
『プラァ・・・・』
改めて聞かされると、心が折れてしまいそうになるモモイとプラスル。
しかしハレは説明を続ける。
「一時の問題は、保管所まで行くまでは、必ず『エレベーター』を使わなきゃいけないと言う事。このエレベーターは、生徒会の役員と限られた人しか通過できない、『指紋認証システム』が付いてる。もし仮にエレベーターを突破出来たとしても、セミナー所属の生徒達や手持ちポケモン達、武装した警備員が勿論いるだろうし、何より・・・・」
ハレはソコで一呼吸置いてから話し出す。
「最上階は、各部屋ごとセクションで分けられてる」
「セクション・・・・部屋が仕切られてるのは当然の事じゃないの?」
「セクションと、セキュリティシステムとが対応してる。だからもし、何処かの部屋で火事が起きたり煙が発生したら、シャッターを下ろして他の部屋と隔離したりする事もできる。もしシャッターが下りたら、コレもまた生徒会の指紋でしか解除ができない。登録されていない指紋や強い衝撃に反応すると、次はもっと強力なチタン製の2番目のシャッターが出てくる。そうなると今度は、生徒会役員の指紋と虹彩、この2つの認証が必要になる」
「うーーん、ややこしい・・・・ソレに何だか凄過ぎて、実感が湧いてこないって言うか・・・・ポリゴン達にセキュリティシステムの中に入ってもらうのは?」
ポリゴンの身体は実体化したプログラムで出来ており、デジタルデータへ自らを変換する事で電脳空間へ自由に入り込んで移動する事ができる。その能力を使えば、ミレニアムタワーのシステムもダウンさせる事も、とミドリが提案するが、ハレは首を横に振る。
「残念ながら。ミレニアムタワーのシステムには強力なファイアウォールが張られていてね。ポリゴン達でも簡単に侵入できないんだ。と言うよりも、向こうのオペレーター達もその為の対処も万全にしているしね」
「基本的に、外部から遮断されているから、正面突破は『ヴェリタス』でも難しい。監視カメラはハッキングができそうだが」
ハレの説明にウタハも入る。
「そうか・・・・話を整理すると、まず差押品保管所まで移動する方法はエレベーターしかない。それから指紋を利用したセキュリティシステムがあって、ソレでミスするとシャッターが下ろされて、他のセクションに移動するのが難しくなる。ソレを無理に通過しようとしても、更に強力なシャッターが下ろされて閉じ込められちゃう・・・・」
「警備ロボと監視カメラも忘れずに〜」
「あ、もう一つ新しい情報が入った。エレベーターに無理矢理入ろうとすると、最上階の全部のセクションにシャッターが下ろされるみたい」
ミドリが話を整理し、マキが付け加える。すると、ハレが更にミッションが困難になったのを伝えた。
「ああもう、何か難しいし絶望的な話ばっかじゃん! 何か良い話はないの!?」
『プラプラ!』
『マイマイ!』
聞けば聞くほど不可能なミッションにモモイとプラスルとマイナンが叫ぶと、ヒビキが口を開く。
「・・・・弱点なら、ある。まず、外部電力を遮断する方式に弱い。電力を絶つと自然に外部のネットワークに繋がるから、一時的にハッキングの隙が生まれる。私達が作った超小型EMPなら、その隙を狙ってあらゆるシステムを無効化する事ができる。恐らく、無効化できる時間は・・・・約6秒」
「6秒、か・・・・」
ヒビキの説明を聞いて、ハレは顎に手を当て思考を巡らせると、目をキランっと光らせる。
「十分だね」
と、断言した。
* * *
ーーーーそして時は再び、現代。
『謎の小柄な影・1号』と『小さなポケモンの影・1号』、『謎の小柄な影・2号』と『小さなポケモンの影・2号』は『ミレニアムタワー』の廊下をコッソリと進んでいた。
「えーっと、この辺で良いんだっけ?」
『?』
「凄く奥の方まで来た感じですが・・・・恐らく間違ってないかと」
『(コクコク)』
「ええ、合っていますよ」
「「!?」」
と、ソコで、知らない声が聞こえ、その声の主以外がビクッと身体を震わせて、声のした方に目を向けるとソコには、成人女性並の長身とグラマラスな肢体をメイド服に包んだ眼鏡を掛けた物腰柔らかそうな穏やかな雰囲気をした女の子と、その後ろにモンスターボールが逆さまになってニヤリ笑顔を浮かべるマルマインと、ヒゲのようなものを付けたゴローニャ、否、アローニャゴローニャが立っていた。
「こんばんは、良い夜ですね。お二人のここまでの行動は、監視カメラで全て見せていただきました。薄々お気づきかもしれませんが、あなた達の計画はもう失敗しています。お早めに投降する事をお勧めしますよ」
すると、その眼鏡メイドの少女は優雅に一礼し、マルマインとアローニャゴローニャもペコリと一礼する。
「改めまして、私は『C&C』のコールサイン・ゼロスリー・・・・本名は秘密ですので、『謎の美女メイド』とでもお呼び下さい」
自分で自分を『謎の美女メイド』と呼ぶ少女に、マルマインとアローニャゴローニャは一瞬半眼の視線を向ける。
「あ、アカネ先輩!」
「特技が『暗殺』で有名な、あのアカネ先輩?」
「うーん・・・・一応秘密のエージェントの筈なのですが、いつの間にかそんな知られ方を・・・・正体を明かさない系のヒロインは、もう時代遅れなのでしょうか・・・・」
が、『謎の小柄な影・2号』がその少女、アカネの名前を呼び、『謎の小柄な影・1号』が首を傾げながら言うと、アカネは苦笑してしまうと、更に『謎の小柄な影・妹』が喋りだす。
「色々知ってるよー。コタマ先輩によると、どうやら最近体重が・・・・」
「マルマイン、【スパーク】」
『マイーン!!』
「わひゃぁぁぁぁっ!!」
『ーーーーーーーー!!』
アカネがボソッと指示すると、マルマインが『謎の小柄な影・1号』の足元に電撃を放つと、その影とポケモンの影がピョンっと跳ねて避けた。
「その情報漏洩は流石に問題ありますよ!? その情報は永久に黙っていただきます・・・・! さあ、そろそろ姿を見せていただきましょうか、モモイちゃん、ミドリちゃん! プラスル、マイナン!」
「「・・・・・・・・」」
『『・・・・・・・・』』
「ふふふ・・・・」
「?」
『『???』』
黙っていた2人と2匹が黙っていると、1人が小さく笑い声をあげると、アカネとマルマインとアローニャゴローニャが首を傾げる。
「まだ気づいていない感じかな。失敗してるのは、ソッチの計画の方だよ?」
「はい?」
言っている言葉の意味が分からず、首を傾げると、4つの影がまるでマントを脱ぐように身を翻すと、ソコに現れたのはーーーーマキとドーブル。コトリと、パモが直立し二足歩行化し、頭と耳の体毛が二股に分かれ顔も少しパーツが離れてバランスが良くなり、手のクリーム色部分の境目の形となり、パモの頃は真っ直ぐだったが、パモットはハートの上半分のようなモコモコした形となっているパモの進化系『ねずみポケモン・パモット』であった。
「ハ〜イ、アカネ先輩! 寮に戻ろうとしてたんだけど、道に迷っちゃってさ〜」
「あ、あなた達は!?」
驚くアカネに、コトリが威勢よく答える。
「あなた達はと聞かれたら!」
「答えてあげるが世の情け!」
「ゲーム開発部の破壊を防ぐ為!」
「ゲーム開発部の平和を守る為!」
「どんな質問にも答えを提供! 『エンジニア部』の説明の化身、豊見コトリ!」
「芸術と科学のコンビネーション! 『ヴェリタス』のデジタルアーティスト、小塗マキ!」
「〈キヴォトス〉を駆ける次代の天才2人には!」
「ホワイトホール、白い明日が待ってるよ!」
「「な〜んてね!」」
『ドブル!』
『パモット!』
何やらカッコつけた名乗りを上げた2人と2匹だが、アカネはそんな事よりも気になっている事を言った。
「そんな、ここに来たのはモモイちゃんとミドリちゃんにプラスルとマイナンだった筈!? 監視カメラで、確かに・・・・!」
アカネは急いでインカムでオペレーションルームにいるユウカに通信を送った。
ーユウカsideー
《ユウカ! 何が起きているんですか!?》
アカネのインカムから、状況を聞いていたユウカも、頭を抱えていた。
「分からない! コッチの監視カメラでは、今も確かにモモイとミドリが映ってる! ソレにアカネ、あなたの姿が見えない・・・・!」
《な、なんですって? コレは、もしかして・・・・!?》
アカネのその答えに至ったのだろうが、ソレに答えず、ユウカは苛立たし気に声を上げて指示を出す。
「カメラの設定を初期化! クラウド接続を遮断して、プライベート回線で画面をもう一度映して!」
「変更します! 新しい画面・・・・出ました! アカネを確認! コトリとマキと対峙中です!」
《成る程、と言う事は・・・・私達がさっきまで見ていた映像は、まさか!?》
《そうだよ〜。私達の『ヴェリタス』のポリゴン部隊でハッキングして、偽物の映像を見せてたんだよ〜》
『ポリ?ーーーーポリゴン!』
アカネのインカムからマキの声が聞こえると同時に、オペレーションルームの監視カメラの映像の画面の端に、ポリゴン達がヒョッコリと見切れるように顔を出して、すぐに引っ込めて何処かに逃げた。
「やられた!!」
『サナ〜』
ユウカは地団駄を踏み、サーナイトは『あらあら〜』と言わんげに口元に手を当てて苦笑していた。
ー先生sideー
そして、アカネ達がいる廊下の下の階のミレニアムタワーの広い廊下ではーーーー。
「そろそろ、ポリゴン達の誤魔化しがバレた頃かな」
『プラスル』
「今更だけど、平和な状態の映像でも流しておいて、コッソリ『鏡』を取りに行った方が良かったんじゃないの?」
『マイナン?』
「人の出入りが難儀な所だったし、何もない方が違和感を覚えるかもしれないでしょ? ソレに、こうして『C&C』の先輩達を分裂させて閉じ込めておいた方が、最終的にミッションの成功率が高くなる筈」
『プラスル!』『マイナン!』
ミドリの提案にモモイがそう返すと、プラスルとマイナンが納得したようにポンッと手を叩いた。
「そうだけど・・・・このまま上手く行ってくれれば良いけど。先生、差押保管所までのルートはどうですか?」
“・・・・うん。地図は既に入っているから、行けると思うよ”
『ピカチュウ』
『カルォ』
そう話していると、エレベーターが到着した。
「あ、エレベーターが来た! ソレじゃ、『本当に』入るとしよっか!」
「ちょっと待って・・・・先生、周囲は暗いですし、私達の手をしっかり握っていて下さいね」
“うん”
先生はミドリの手を握った。
「ソレでは・・・・行きましょう!」
「Go!」
モモイとミドリ、プラスルとマイナン、先生とピカチュウとルカリオがエレベーターに乗り込んだ。
ウウゥゥゥゥゥゥゥゥーーーー
その瞬間、けたたましいサイレン音がミレニアムタワー中に響き渡った。
次回、先生の『大型犬』と『セクハラ被害者第二号』の手持ちをご紹介します!