ポケモンアーカイブ   作:BREAKERZ

4 / 69
先生に新たな手持ちポケモンと、秘書の生徒が登場。


御三家とシッテムの箱のアロナちゃん

ー先生sideー

 

妖しい生徒が去ってすぐリンが駆けつけ、「勝手な行動はやめて下さい」と怒られた後、先程逃げていった狐面の生徒が件の狐坂ワカモであると聞いた。

リンがブラッキーと【ねんりき】でアタッシュケースを宙に浮かせて運んでいるエーフィと共に奥へと向かい、その間先生は、ピカチュウとルカリオのケガを『キズぐすり』で治していると、リン達が戻ってきた。

 

「お待たせしました。まずは、先生にお任せしたい“子達”を。エーフィ」

 

『エフィ』

 

エーフィが、宙に浮かんでいたアタッシュケースを先生に取り出すいように横にして差し出した。

 

「開けて下さい」

 

“・・・・・・・・”

 

先生はケースを開けるとソコにはーーーー“三個のモンスターボールが入っていた”。

 

“・・・・この中にいるの?”

 

「はい。出してあげて下さい」

 

先生は少々訝しそうにしながら、三個のモンスターボールを宙に投げた。

すると、ポンッポンッポンッ、と音を立てて出てきたのは。

 

『カゲ!』

 

『ゼニ!』

 

『ダネ!』

 

オレンジの体色につぶらな瞳をし、二本足で立ち尻尾の先端が炎で燃えている『とかげポケモン・ヒトカゲ』。

大きな甲羅をした青い体色に、先端がクルンと丸まった大きな尻尾をし、二本足で立つカメ『かめのこポケモン・ゼニガメ』。

緑色の体色をした平たいトカゲかカエルのような姿に、自分の体格と同じくらいの大きな種を背負った『たねポケモン・フシギダネ』。

 

“・・・・この子達を、私が育てれば良いの?”

 

「はい。ご覧の通り、『シャーレ』は少々人手とポケモンが不足しています。それ故、今回のように不良生徒の侵入を許してしまう形になってしまいました」

 

リンは僅かに渋面になりながらも説明する。

 

「ですから、この『シャーレ』の警護の為にも、先生が留守を任せるくらい信頼できるポケモン達を先生ご自身で育成してもらいたいのです。この子達はポケモンに携わる生徒達が最初に学ぶ基本の三タイプのポケモン達、『御三家』とも呼ぼれています。先生のポケモン育成能力は、ピカチュウさんとルカリオさんを見れば一目瞭然です。是非お願いします」

 

“・・・・・・・・”

 

そう言われ、先生は改めてヒトカゲとゼニガメとフシギダネに視線を合わせるように片膝を突いた。

 

『カゲカ?』

 

『ゼニゼ?』

 

『ダネダ?』

 

三匹は首を傾げると、先生はニコリと微笑んで、三匹に向けて手を差し出した。

 

“・・・・私で良かったら、一緒に行くかい? ヒトカゲ。ゼニガメ。フシギダネ”

 

『(パァァ〜・・・・!)』

 

三匹は顔を笑顔にすると、先生の手に自分達の手を乗せた。フシギダネはツルを伸ばしたが。

 

『カゲカゲ!』

 

『ゼニゼニ!』

 

『ダネフシェ!』

 

“よろしく。ピカチュウ。ルカリオ。新しい『仲間』だよ”

 

『ピッカァッ!』

 

『ルォル』

 

ピカチュウめ嬉しそうに頷き、ルカリオはコクリと頷いた。

 

“そう言えば、〈キヴォトス〉では六匹のポケモンを所持している子はいるの?”

 

そう。手持ちとして所持できるポケモンは六匹と限定されており、それ以上持つと、自動的に『預かりシステム』によって転送されるのだ。

 

「・・・・ポケモンは一体だけでも強力な個体がいます。表で制圧されたニドキングやニドクインが良い例です。あまり多くのポケモンを所持するのは、危険性があります」

 

言われて納得する。確かに市内による銃撃戦と戦車との戦闘が日常茶飯事のような〈キヴォトス〉で、ポケモン達を多く所有するのは危険だ。

 

「故にこの〈キヴォトス〉では、『一般生徒の手持ちポケモンは一匹から二匹』、早瀬さん達のような『役職持ちの生徒は二匹から四匹』が暗黙のルールとなっているのです。しかし、先生は〈キヴォトス〉の外から来た人。安全性を考慮して『六匹以上の所有を認められています』」

 

“六匹以上、ね・・・・”

 

リンは周りに人の耳が無い事を確認すると、先生の耳元で囁くように呟く。

 

「・・・・先生と共にいる『あのポケモン』は、『特例の七匹目』と言う事で所持を許可していますが、緊急時以外は外に出す事はなるべくしないで下さいね」

 

リンの言葉に、先生は小さく頷いたのを見て、リンは離れる。

 

「ーーーーそしてコレが、連邦生徒会長が残した物です。幸い、傷一つなく無事でした」

 

次いでリンが先生に差し出したのは、スマホロトムではない『タブレット端末』だった。

 

「・・・・受け取って下さい」

 

“このタブレット端末が・・・・?”

 

「はい。これが、連邦生徒会長が先生に残した物。『シッテムの箱』です」

 

“(何処かで聞いた事ある名前・・・・)”

 

訝しそうに『シッテムの箱』を見る先生に、リンは説明を続ける。

 

「普通のタブレットに見えますが、実は正体の分からない物です。製造会社も、ОSも、システム構造も、動く仕組み全てが不明」

 

“調べなかったの・・・・?”

 

「勿論、ロトムや『ポリゴン』と言ったポケモン達も使って調べようとしましたが、全てが失敗でした」 

 

“・・・・・・・・”

 

「連邦生徒会長は、この『シッテムの箱』は先生の物で、先生がこれでサンクトゥムタワーの制御権を回復させられる筈だと言ってました。私達では起動すらできなかった物ですが、先生ならコレを起動させられるでしょうか、それとも・・・・」

 

リンが一抹の期待と不安が混じった顔になる。

 

“・・・・・・・・”

 

『ピカ・・・・』

 

『ルォ・・・・』

 

「・・・・・・・・」

 

『フィ・・・・』

 

『ラキ・・・・』

 

先生だけでなく、リンも無言になるが、リンは改めて声を発する。

 

「・・・・では、私はここまでです。ここから先は、全て先生にかかってます。邪魔にならないように、離れています」

 

そう言って、小さく頭を下げてから、エーフィとブラッキーを連れて、リンは離れていった。

 

“・・・・・・・・”

 

それを見てから、肩にピカチュウが乗り、先生は改めて『シッテムの箱』を見て、普通のタブレット端末を動かすように起動させる。

 

ーーーーConnecting to the Crate of Shittim

 

ーーーーシステム接続パスワードを入力してください

 

“・・・・パスワードは・・・・・”

 

知っている筈がない。しかし、何故か脳裏に浮かんだ文章を入力した。

 

ーーーー『我々は望む、七つの嘆きを』

 

ーーーー『我々は覚えている、ジェリコの古則を』

 

知っている筈がない。しかし、何故か脳裏に浮かんだ文章を入力する。

 

・・・・。

 

ーーーー接続パスワード承認

 

ーーーー現在の接続者情報は先生、確認できました。

 

[シッテムの箱へようこそ、先生]

 

『ピカァ!』

 

『ルォ』

 

『カゲ!』

 

『ゼニィ!』

 

『ダネダネ!』

 

ピカチュウから「成功した」と言われ、ルカリオ達が頷いた。

 

[生体認証及び認証書生成のため、メインオペレートシステムA.R.O.N.Aに変換します]

 

と、その時、先生の見ている景色が一変した。

 

 

 

 

 

 

 

 

“っ・・・・!”

 

目の前に広がっていたのは、青だった。透き通るような青空。

何処までも広がる海。窓辺からそれが見える。

尤も、窓のある壁は大半が吹き飛んでおり、覗き込めばその海は何処までも深く、しかし何故か教室の机や椅子が海から積み上がっているので底はあるように見え、床はピチャピチャと薄く浸水している。

正直混乱しそうになるが、確かに今自分が立っているここは、教室であった。

 

「・・・・くうぅ・・・・ZZZ」

 

と、そんな紛争かポケモンの攻撃で半壊した教室に、薄い水色の髪、青い制服、青い光輪、これまで会った生徒達より小さな少女。

 

「・・・・くうぅ・・・・ZZZ」

 

そんな少女が、机にうつ伏せになって、呑気に居眠りをしている。

 

「むにゃ・・・・カステラにはぁ・・・・いちごミルクより・・・・バナナミルクのほうがぁ・・・・」

 

何やら幸せな夢を見ているようだ。

 

「・・・・くううぅぅ・・・・ZZZ」

 

とりあえず近づいてみる。

 

「えへっ・・・・まだたくさんありますよぉ・・・・」

 

正直、こんなに幸せそうに寝ている娘を起こすのは気が引けるが、先生は少女を揺すったり、頬を突っついたりして起こそうとする。

 

「・・・・うぅぅぅぅぅんっ」

 

ガタッと机が音を立てて、少女がむくりと起き上がる。

 

「むにゃ・・・・んもう・・・・ありゃ?」

 

若干ヨダレを垂らして寝ぼけ眼のまま、先生を見上げている。

 

「ありゃ、ありゃありゃ・・・・?」

 

少女が先生と目があった。

 

「え? あれ? あれれ?/////」

 

羞恥で顔が紅くなる。

 

「せ、先生!?」

 

前髪で片目だけしか見えないが、目を丸くした。

 

「この空間に入ってきたって言う事は、ま、ま、まさか先生・・・・?!/////」

 

“うんそうだよ。君の名前は?”

 

「う、うわああ!? そうですね! もうこんな時間!?」

 

少女は目に見えて狼狽えだす。

 

「うわ、わああ? お、落ち着いて、落ち着いて・・・・」

 

少女は自分の動悸を抑えるように、胸に手を置いた。

 

「えっと・・・・その・・・・あっ、そうだ、先ず自己紹介から!」

 

少女は自分の名を言う。

 

「私はアロナ! この『シッテムの箱』に常駐しているシステム管理者であり、メインОS、そしてこれから先生をアシストする秘書です!」

 

そう言って少女、アロナは満面の笑みを浮かべる。

 

「やっと会う事ができました! 私はここで先生をずっと、ずーっと待っていました!」

 

“・・・・・・・・あまりに待たせ過ぎて、つい寝ちゃったくらい?”

 

「あ、あうう・・・・も、勿論たまに居眠りしたりする事もあるけど・・・・/////」

 

先生の一言に、顔を赤くするアロナ。それを見て先生はクスッと笑みを浮かべる。

 

“これからよろしくね、アロナ”

 

「はい! よろしくお願いします!」

 

そう言葉を交わすと、アロナは目を閉じて自分の状態を診断する。

 

「まだ身体のバリエーションが低い状態でして、特に声帯周りの調整が必要ですが・・・・これから先、頑張って色々な面で先生の事をサポートしていきますね!」

 

するもアロナが思い出したように声を発する。

 

「あ、そうだ! ではまず、形式的ではありますが、生体認証を行います♪」

 

言って、アロナが気まずそうな顔になる。

 

「うう・・・・少し恥ずかしいですが、手続きだから仕方ないんです。こちらの方に来て下さい」

 

言われて、先生が一歩近づく。

 

「もう少しです」

 

そして先生は、アロナのすぐ近くに立つと、アロナは笑みを浮かべて、右手人差し指を先生に指し出した。

 

「さあ、この私の指に、先生の指を当てて下さい」

 

“うん”

 

先生は自分の人差し指を、アロナの指に当てた。

 

「うふふ、まるで指切りして約束するみたいでしょう?」

 

“そうだね。でも、昔見た宇宙人の映画のワンシーンみたいにも見えるよ”

 

その言葉に、アロナは少し半眼になる。

 

「実は、これで生体情報の指紋を確認するんです! 画面に残った指紋を目視で確認するのですが・・・・すぐ終わります! こう見えて目は良いので」

 

すると、アロナが指を離す。

 

「どれどれ・・・・うう・・・・(うーん・・・・よく見えないかも・・・・まあ、これで良いですかね?)」

 

何やら難しそうな顔になったアロナだが、すぐに満面の笑顔を見せる。

 

「・・・・はい! 確認終わりました♪」

 

“何か、手抜きされたような気がするけど?”

 

「そ、そんな事ありません!」

 

“・・・・・・・・”

 

「・・・・・・・・」

 

無言になる両名。先生がふと呟く。

 

“・・・・最近の機械やスマホロトムは指紋認識位自動だけど? 一秒もかからないし”

 

「え? わ、私にはスマホロトムのような最先端の機能は無いですが・・・・。そ、そんな能力が無くてもアロナは役に立ちますから!? 目でも十分確認できますから! この場所にはロトムさんや『ポリゴン』さんだって侵入させた事ありませんよ!」

 

“・・・・・・・・”

 

アロナが必死にアピールするが、先生の目は冷ややかだった。

 

「・・・・全然信じてないって顔ですね・・・・」

 

“・・・・・・・・”

 

「・・・・・・・・」

 

“・・・・・・・・”

 

「うう・・・・」

 

いたたまれない空気が辺りに漂う。

 

「(ウルッ)だったらその最先端のスマホロトムさんの所に行ってしまったらどうですか!」

 

遂に涙目になって不貞腐れてしまい、先生は苦笑しながら冗談と言って慰めた。

 

「グスン・・・・」

 

少し泣いちゃったアロナを、先生はいっぱいいっぱい慰めた。

 

「・・・・・・・・成る程、先生の事情は大体分かりました。『連邦生徒会長』が行方不明になって、そのせいで〈キヴォトス〉のタワーを制御する手段がなくなった・・・・」

 

それから、アロナにこれまでの経緯を説明した。

 

“『連邦生徒会長』について知ってる?”

 

「私も〈キヴォトス〉の情報の多くを知っていますが・・・・『連邦生徒会長』については殆ど知りません。『彼女』が何者なのか、どうしていなくなったのかも・・・・お役に立てず、すみません」

 

謝るアロナに、先生も「大丈夫」と言ってフォローすると、アロナは目をキラめかせて話す。

 

「・・・・ですが、〈サンクトゥムタワー〉の問題は私が何とか解決できそうです」

 

“じゃあお願い、アロナ”

 

「はい! 分かりました。それでは、〈サンクトゥムタワー〉のアクセス権を修復します! 少々お待ち下さい!」

 

すると、先生の目の前がまたも真っ白に染まっていきーーーー。

 

 

 

 

 

 

 

『ーーーーピ! ピカピピ!』

 

『ルォォゥ!』

 

『カゲカー!』

 

『ゼニゼー!』

 

『ダネダー!』

 

“っ! ピカチュウ、皆・・・・”

 

仲間達の声が聞こえハッとなると、自分に心配そうに声を上げていた。

 

“(・・・・意識が、飛んでいたのか・・・・)皆、私はどれくらいボーッとしていたの?”

 

『ルォゥッ』

 

ルカリオが両手で1と0を作って並べるのを見て、十秒間と聞き返すと全員が頷いた。

と、その時ーーーー。

 

ーーーーウイィィィィィィィィンーーーー

 

『シャーレ』の建物全体から機械音が響くと、薄暗かった内部に、電気が点いた。

すると、『シッテムの箱』から、アロナの言葉が表示される。

 

《・・・・〈サンクトゥムタワー〉のadmin権限を取得完了・・・・。先生。〈サンクトゥムタワー〉の制御権を無事回収できました。今〈サンクトゥムタワー〉は、私アロナの統制下にあります。今の〈キヴォトス〉は、先生の支配下にあるも同然です!》

 

アロナが目を光らせているのが良く分かる。

 

《先生が承認さえしてくだされば、〈サンクトゥムタワー〉の制御権を『連邦生徒会』に移管できます。でも・・・・大丈夫ですか? 『連邦生徒会』に制御権を渡しても・・・・》

 

アロナがやや不安そうな文を送る。それに対して先生は、迷いなく答える。

 

“(大丈夫。承認する)”

 

《分かりました。コレより〈サンクトゥムタワー〉の制御権を『連邦生徒会』に移管します!》

 

すると、次いで近くにいるリンが建物内に設られた電話から、誰かと連絡を取っていた。

 

「・・・・はい。分かりました」

 

通話を終えたリンが受話器を置いて先生に近づく。

 

「〈サンクトゥムタワー〉の制御権の確保が確認できました。これからは連邦生徒会長がいた頃と同じ様に、行政管理を進められますね」

 

そしてリンは晴れやかな笑みを浮かべる。

 

「お疲れ様でした、先生。〈キヴォトス〉の混乱を防いでくれた事に、『連邦生徒会』を代表して深く感謝致します」

 

『エフィ』

 

『ブラァ』

 

エーフィとブラッキーも感謝を示すように頭を下げる。そしてリンは気を改めて話をする。

 

「ここを攻撃した不良達と停学中の生徒達については、これから追跡して討伐致しますので、ご心配なく。それでは『シッテムの箱』と『御三家』は渡しましたし、私の役目は終わったようですね。・・・・あ、もう一つありました」

 

そう言ってすぐ、リンは何かを思い出したように声を発した。

 

「ついてきてください。連邦捜査部『シャーレ』をご紹介致します」

 

歩くリンとエーフィとブラッキーを追って、先生達は『シャーレ』の内部、メインロビーに、シャーレの部室、と言うか執務室に案内された。

 

“私はこれから何をすればいい?”

 

「・・・・『シャーレ』は、権限だけはありますが目標のない組織なので、特に何かやらなきゃいけない・・・・と言う強制力は存在しません。〈キヴォトス〉のどんな学園の自治区にも自由に出入りができ、所属に関係なく、先生が希望する生徒達を部員として加入させる事も可能です・・・・」

 

そう説明すると、リンは薄く笑った。

 

「面白いですよね。捜査部とは呼んでいますが、その部分に関しては、連邦生徒会長も特に触れていませんでした」

 

“ーーーーと言う事は”

 

「つまり、何でも先生がやりたい事をやって良い・・・・と言う事ですね」

 

あまりにフワッとした説明に、それから少し無言になる。リンも困った顔になる。

 

「・・・・本人に聞いてみたくても、連邦生徒会長は相変わらず行方不明のまま。私達は彼女を探すのに全力を尽くしている為、〈キヴォトス〉のアチコチで起こる問題に対応できる程の余力がありません」

 

確かに、今回の脱走者と言い、問題はあるようだ。

 

「今も『連邦生徒会』に寄せられてくるあらゆる苦情・・・・『支援物資の要請』、『環境改善』、『落第生への特別授業』、『部の支援要請』などなど・・・・」

 

本当に問題や山積みのようだ。

 

「・・・・もしかしたら、時間が有り余っている『シャーレ』なら、この面倒な苦情の数々を解決できるかも知れませんね」

 

中々キツイことを言うリンが、執務室の机に置かれた書類の山を差す。

 

「その辺に関する書類は、先生の机の上に沢山置いておきました。気が向いたらお読みください。全ては、先生の自由ですので」

 

ニコリも微笑むリンが一礼する。

 

「それではごゆっくり。必要な時には、またご連絡致します」

 

そう言って、リンはエーフィとブラッキーを連れて、去って行った。

 

“・・・・とりあえず皆”

 

『???』

 

“ご飯にするか?”

 

『(パァァァ〜!)』

 

先生がそう言うと、ピカチュウ達は嬉しそうに顔を綻ばせた。

 

 

 

 

 

 

そして、外で待っているユウカ達に、先生とピカチュウが建物から出て、ルカリオと御三家がサンドイッチを持って、ユウカ達に近づく。

 

「先生。この子達は?」

 

“ピカチュウと同じ、私の元々の手持ちのルカリオ。それと、これから私が育てていくヒトカゲとゼニガメとフシギダネだよ”

 

『リオ』

 

『カゲカ』

 

『ゼニゼ』

 

『ダネフシェ』

 

スズミの問いに先生がそう応える。

 

「ええ。〈サンクトゥムタワー〉の制御権を『連邦生徒会』が取り戻した事を確認したわ」

 

「ワカモは自治区に逃げてしまったのですけど・・・・すぐ捕まるでしょう。私達はここまで。後は、担当者に任せます」

 

ユウカとハスミとチナツは、それぞれの所属との連絡を終えると、先生に向き直る。

 

「お疲れ様でした、先生。先生の活躍は〈キヴォトス〉全域に広がるでしょう。すぐにSNSで話題になってしまうかも知れませんね」

 

“皆もお疲れ様。それと、労いとこれからもよろしくを含めて、サンドイッチをプレゼントするよ”

 

ユウカが何処か熱を帯びた視線と笑顔で先生を労うと、先生がそう言う。

 

「えっ? そんな悪(キュゥゥ・・・・)ぁ/////」

 

ーーーーキュゥゥ・・・・。

 

『ぁっ/////』

 

遠慮しようとしたユウカだが、身体は正直に栄養を求めていた。するとその音が始まりのように、他の子達の身体も栄養を求めるサインが鳴った。まぁここまで休憩も食事も抜きだったので、仕方ないと言えばそうだが。

 

“・・・・皆。遠慮しなくて良いよ”

 

『・・・・・・・・・・・・はい。いただきます/////』

 

頬を紅くしながら頷くと、サンドイッチを持ったヒトカゲがユウカに。ゼニガメがスズミに。フシギダネがツルでチナツに手渡していくと、ルカリオもハスミに近づきサンドイッチを手渡そうとする。

 

「あ、ありがとうござーーーーっ・・・・!」

 

と、ハスミが礼を言ってサンドイッチを手にしようとした瞬間、ハスミの腰に巻き付けたベルトの付いた黒に黄色のHの文字が入った『ハイパーボール』が弾んだように動き、ハスミが身体をビクッと震わせるとその場で止まる。

 

『・・・・クワ』

 

『ルォ』

 

動きが止まったハスミの代わりに、ネギガナイトがルカリオからサンドイッチを貰おうとしたーーーーその時。

 

『ーーーークワッ!』

 

ネギガナイトが剣で刺突するようにルカリオに向けて放った。

が・・・・。

 

『リオ♪』

 

何とルカリオは、にこやかな笑みを浮かべたまま、持っていたサンドイッチでネギガナイトの刺突を防御した。

 

「ネギガナイト!」

 

“大丈夫だよハスミ”

 

ハスミがネギガナイトの行動に驚くが先生が示すと、ルカリオはそのままサンドイッチを二等分して、片方をハスミに、もう片方をネギガナイトに渡した。

ユウカとサーナイトも、スズミとジャランゴも、チナツとタブンネも受け取ったサンドイッチを半分こした。

 

“さ、食べて食べて”

 

先生がそう言うと、全員が一斉に食べると。

 

『ーーーーんっ!? 美味しいっ!!』

 

『サー!!』

 

『カモー!!』

 

『ブンネー!!』

 

『ジャラララ!!』

 

全員が美味しそうに顔を綻ばせた。

 

“そう言って貰えると、作ったかいがあったよ”

 

「えっ!? このサンドイッチ、先生が作ったんですか!?」

 

「す、凄く美味しいです・・・・!」

 

「これは最早プロの領域ですね・・・・!」

 

「うちの『給食部』に欲しいくらいです・・・・!」

 

戦慄と驚愕が交ざった顔になる生徒達は、サンドイッチを食べ終えると満足そうな笑みを浮かべ、先生と連絡先を交換した。

 

「ーーーーそれでは先生。これでお別れですが、近い内に是非〈トリニティ総合学園〉に立ち寄って下さい」

 

「(ペコリ)」

 

ハスミが弱冠頬を紅くしながら言うと、スズミも頭を下げて、ネギガナイトとジャランゴも頭を下げて、その場を去った。

 

「私も、風紀委員長に今日の事を報告しに戻ります。〈ゲヘナ学園〉にいらっしゃった時は、是非訪ねて下さい」

 

「〈ミレニアムサイエンススクール〉に来てくだされば、またお会いできるかも? 先生、ではまた!」

 

チナツとタブンネも頭をペコリと下げ、頬を紅くしたユウカもサーナイトを連れて去って行った。

 

“・・・・じゃあ皆、戻ろうか! 私達の『仕事場』へ!”

 

『ピカチュウ!』

 

『カルォッ!』

 

『カゲー!』

 

『ゼニー!』

 

『ダァネー!』

 

肩にピカチュウを乗せた先生は、『仲間達』と共に、シャーレのオフィスに戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

ーハスミsideー

 

「・・・・・・・・」

 

スズミとジャランゴの後ろを歩きながら、ハスミは先程騒いだ『ハイパーボール』を手に取り、その中にいる『ポケモン』を見据える。

 

「(・・・・先生のルカリオに反応した。つまり、あのルカリオを『強者』と認めたと言う事ですか?)」

 

次いでハスミが足元にいるネギガナイトを一瞥する。

 

「(ネギガナイトは先生のルカリオの力量を測る為に、わざとあのような行動を取った。そして、『強者』だと認識した・・・・この事は、『ツルギ』にも伝えて置いた方が良いですね。“あなたのご兄弟にもねーーーー『ウーラオス』”?)」

 

ハスミは『隠し玉のポケモン』に向けてそう呟いた。

 

 

 

 

 

 

ーチナツsideー

 

そしてここに、先生のポケモンのピカチュウとルカリオを見て、僅かな警戒心を抱いている生徒、チナツがいた。

 

「(狐坂ワカモのポケモン達の実力は、映像だけで見ただけですが、恐らく我が〈ゲヘナ〉で対抗できるのは『委員長のポケモン達』くらいではないかと思っていたけど、その狐坂ワカモを撃退できると言う事は、先生のポケモン達は少なくても『イオリ』以上と言っても過言ではなさそうですね。あの御三家のポケモンもどう化けるのか、空恐ろしく感じます・・・・)」

 

チナツは、先生と敵対するのは危険だと認識した。

と、その時、スマホロトムが起動して、チナツの前に来ると、先生からのメールが届いた事を告げた。

 

「先生から? 一体・・・・えっ?ーーーー“『R』について分かっている情報を可能な限り教えて欲しい?”」

 

 

 

 

 

 

 

ーワカモsideー

 

「・・・・・・・・」

 

『『コン?』』

 

と、その頃、自治区に逃げ延びたワカモは、タマモ(キュウコン)とミクモ(アローラキュウコン)に『すごいキズぐすり』を使って回復させると、物思いに耽るように黙った。

 

「・・・・ああ、これは困りましたね・・・・。フフ・・・・フフフ・・・・ウフフフフフフフフフフフ♡」

 

『『・・・・・・・・』』

 

不気味に含み笑いを上げるワカモに、タマモとミクモは嫌~な予感を感じてならなかった。

 

 

 

 

 

 

ー先生sideー

 

そして先生は、再びアロナの空間に入ると、アロナを労った。

 

「あはは・・・・何だか慌ただしい感じでしたが・・・・ある程度、落ち着いたみたいですね。お疲れ様でした」

 

“アロナもお疲れ様”

 

「はい! でも、本当に大変なのは、これからですよ?」

 

そう言って、またも目をキラーンとさせるアロナは続ける。

 

「これから先生やピカチュウさん達と一緒に、〈キヴォトス〉の生徒さん達が直面している『問題』を解決していくのです・・・・! 単純に見えても決して簡単ではない・・・・とっても重要な事です!」

 

そして、満面の笑顔を向けるアロナ。

 

「それでは〈キヴォトス〉を、『シャーレ』をよろしくお願いします、先生」

 

“こちらこそ。よろしくね、アロナ”

 

「それではこれより、連邦捜査部『シャーレ』として、最初の公式任務を始めましょう!」

 

そう言って、アロナの前に四つの『案件』の紙が、宙を浮いていた。

 

『補給物資の申請』。

 

『部の支援要請』。

 

『落第生への特別授業』。

 

『学園閉鎖の撤回嘆願』。

 

「他にも色々と問題の案件はありますが、特に重要性が高いのは、この四つですね! どれから始めますか?」

 

“うん、それじゃあーーーー”

 

そう言って、先生が一つの『案件』に手を伸ばした。




この世界の先生のサンドイッチ作りの腕前はプロ並です。そして、先生の手持ちは初代御三家。これから6匹目と新たな御三家も登場するかもしれません。
と、次はアビドスへ・・・・の前に、もう少し話があります。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。