注意:デデンネとエレキブルのバトルはありません。
ー先生sideー
ソレから6日後。
『テイルズ・サガ・クロニクル2』の制作に勤しむ『ゲーム開発部』の為に、間食用のサンドイッチを作って来るとソコには『ミレニアムプライス』への出品の為に悪戦苦闘するモモイ達がいた。プラスル達(デデンネとデンチュラも)はポンポンを持って応援しており、御三家もワニノコのダンスに合わせて、ヒノアラシとチコリータも踊りながら応援している。
「お姉ちゃん! まだ!?」
「ま、待って、急がせないで! 後コレだけ入力すれば終わりだから・・・・!」
「後2分だよ!? 急かさずにはいられないって!」
『プラプラ!』
『マイマイ!』
何とか作品を完成させていた。しかし、残り時間は2分を切り、後はエラーを確認して作品を登録するだけとなっていた。
「正確には96秒です、そう言ってる間に残り92秒・・・・」
「わ、分かった分かった! もうできたから!」
すると、無言でタイピングし、ゲームのテストをしてエラーが無いかを確認していたユズが声を上げる。
「コッチは簡単なテストだけやって・・・・うんっ。エラーは出てない。モモイ!」
「オッケー! ファイルをアップロード、完了まで予想時間・・・・15秒! アリス、後何秒!?」
「残り19秒です・・・・!」
モモイは締切までの残り時間は19秒に迫りギリギリだが、サイトにファイルをアップロードした。
「お、お願い・・・・!」
ーーーーカタカタカタカタ・・・・。
「転送完了・・・・」
[ミレニアムプライズへの参加受付が完了しました]
ミドリはモモイがアップロードをするのを祈るように見守る。
そして転送が完了し、ディスプレイに『ミレニアムプライズ』の参加受付完了の文字が表示される。
「間に合ったああぁぁあ!」
『プラプラァ!』
『マイマァイ!』
『デデン!』
「ギリギリ・・・・心臓止まるかと思った・・・・」
『チュラ!』
モモイと一緒にはしゃぐプラスルとマイナンとデデンネ、緊張と焦燥で心身疲労を起こして倒れそうになるユズを、デンチュラが支える。
「後は・・・・3日後の発表を待つだけ、だね」
自分達の作ったゲームの出品を無事完了し、『ゲーム開発部』は6日間にも渡る徹夜で身体と頭の酷使と、ゲームを完成させた達成感に一息を吐いた。
後は3日後の評価の発表を待つばかりである。
「取り敢えず間に合ったけど、まだ結果が出たわけじゃない。3日後には・・・・このままこの部屋にいられるのか、そうじゃないのかが決まる」
モモイが珍しく真面目な話をする。
「・・・・でも3日って結構長いじゃん? ソコで提案なんだけどさ、先に、web版の『テイルズ・サガ・クロニクル2』をアップロードしてみるのはどう?」
モモイは皆に、『TSC2‹テイルズ・サガ・クロニクル2›』のWeb版をアップロードをしたいと言い出した。
「!?」
「ど、どうして?」
それを聞いてミドリとユズは驚きの表情を浮かべた。
「3日間も待てないよ! それに、審査員の評価より先に、ユーザーの反応を見たくない!?」
「うーん、でもちょっと怖いかも・・・・低評価コメントも心配だし」
「何言ってるのさ! そもそも、『ミレニアムプライス』に出品する為“だけ”に作ったゲームじゃないでしょ! 自信を持って、見てもらおうよ! 私達はベストを尽くしたんだから!」
『プラ!』
「そ、ソレはそうだけど・・・・」
『マァイ・・・・』
モモイはユーザーの反応を見たいと考えている。しかし、ミドリには『TSC』で散々酷評された事がトラウマになっているのか、アップロードには消極的である。
「・・・・うん、アップしよう」
「え?」
「『作品』っていうのは・・・・『見てくれる人』、『遊んでくれる人』がいてこそ、『完成』されるものだと思うから。私は・・・・私達のゲームを、キチンと完成させたい」
「ユズちゃん・・・・」
この『ゲーム開発部』で、誰よりも誹謗中傷を浴びてきた筈のユズが、勇気を出して自分からアップロードに同意する事を言い出し、ミドリは面食らった。
『チュラデンチュラ?』
「大丈夫。もし前みたいに、低評価コメントのオンパレードになったとしても・・・・。全力で頑張ったから。それに・・・・今はデンチュラだけじゃない、皆も一緒だから、きっと受け止められる。私はもう、大丈夫」
そんなユズの苦しむ姿を誰よりも間近で見て、支えてきたデンチュラが、『大丈夫なのか?』と心配そうにユズを見上げてみると、ユズは膝を折ってデンチュラの頭を撫でながら笑顔でそう言った。
「・・・・・・・・」
「それじゃ今すぐアップロードー!」
『プラァー!』
『・・・・マァイー!』
「ああっ! ま、待って! 心の準備が・・・・!」
ユズを見ていたミドリをそっちのけで、モモイとプラスルがアップロードをし、「もうどうにでもなれ!」と言わんばかりに、マイナンも同意するが、心の準備ができていないミドリが止めようとするが、構わずにweb版をアップロードするのであった。
ーーーーポロン・・・・。
「転送完了! プレイして感想が貰えるまで少なくとも2、3時間はかかるだろうし、後は暫しの休憩って事で!」
「・・・・はあ、そうだね」
“それじゃあ皆。ーーーーご飯にしようか?”
「あっ! 先生、気が利いてるね! ご飯にしよう! もうこの6日間マトモなご飯食べてなかったからお腹が空いて空いて♪」
ーーーーキュゥ〜・・・・。
「あっ、自覚したらお腹空いてきちゃった・・・・////」
「私も・・・・」
「アリス、HPが不足しています・・・・」
『・・・・・・・・』
モモイが喜ぶと、ミドリとユズとアリス、更に同じくあまり食べていなかったプラスル達もお腹を押さえて空腹を訴えていた。
“うん。それじゃ、『ひでん:しおスパイス』を使ったーーーー『マーマレードサンド』! 塩味が効いていて、身体の痛みに効くよ”
先生がサンドイッチと一緒に手持ちを全員出した。
『アギャ♡』
「ひっ!?」
外に出たミライドンが、早速ユズを舐め回そうと飛び掛かるが、デンチュラが糸で拘束した。
“ーーーーそれじゃあ皆、一緒に”
『いっただきま〜す!』
『ーーーー!!』
先生が取り出した人数分のサンドイッチを、一斉に頬張った。
『ーーーー美味しい!!』
『ーーーー!!』
一口食べて、『ゲーム開発部』全員と、ピカチュウとルカリオとイーブイと御三家、そしてミライドン(拘束中の為、先生が手渡し)が美味しいと絶賛した。
「う~ん! 塩味が効いていて最高!」
「ここの所、部室に籠りっぱなしの座りっぱなしだったから、身体の節々が痛くなってたけど・・・・」
「このサンドイッチのスパイスで消えていく気がする・・・・」
「パンパカパーン! アリス達の体力は全回復しました!」
『プラプラァ!』
『マイマイ!』
『デンチュラ!』
『デデンネ!』
と、皆が絶賛してくれたその時ーーーー。
『アギャァス!!』
『うわぁっ!?』
突如、ミライドンの身体が紫色に光り、デンチュラの糸を引き千切った。
「ど、どうしたのミライドン!?」
“・・・・『秘伝スパイス』を食べて、パワーアップしたんだよ”
「パンパカパーン! ミライドンはレベルアップしました!」
ミライドンがレベルアップし、休憩を楽しく過ごした。そして結局、ユズは解放されたミライドンに舐め回され、ロッカーに引きこもってしまったが。
◇
「・・・・・・・・」
『デデン』
食事を終えると、一眠りしようとする『ゲーム開発部』だが、頭にデデンネを乗せたアリスはコンピューターの前に陣取って、画面をジ~っと見据えていた。
「ん、アリス? 何でコンピューターの前に座ってるの?」
「待機します。ダウンロードしたので気になります」
「コレからゲームをプレイするのにまだ時間がかかるだろうし、待っててもそんなすぐに来ないと思うよ?」
モモイとミドリがアリスに向かってそう言う。・・・・まぁ中には、プレイする前に最初から批判的なコメントを挙げてくる礼儀知らずなプレイヤーもいない訳では無いが。
「はい、ソレでも待ちます」
『デデン』
「わ、私も・・・・」
『デンチュラ』
アリスとデデンネがそう言うと、先生がミライドンを戻したのを見て、ロッカーから出てきたユズとデンチュラもアリスの隣に座る。
「どっちにしろ、緊張で眠れないし・・・・」
『デンチュ・・・・』
顔色を悪くしたユズがそう言うと、デンチュラが背中をさすってあげた。
「・・・・うん。ダメ、私もドキドキしてきちゃった」
『マイ』
するとミドリと、肩に乗ったマイナンも興奮と緊張が混ざったような笑みを浮かべる。
「私は心配でドキドキが止まらないよ・・・・うぅっ、自分で言い出したのに緊張でおかしくなりそう!」
『プラプラァ』
言い出しっぺのモモイはガチガチになっており、頭に乗ったプラスルが「しゃんとしろ」と言わんばかりに、モモイの頭をペシペシと叩いていた。
するとーーーー。
ーーーーピロン。
と、コメントが来た音が流れた。
「あっ、初コメ」
「何て!? 何て!?」
全員がコンピューターの画面に近づくと。
[わお、コレ前回『クソゲーランキング1位』を取った、アレの続編? もうゲーム作りはやめたと思ってたけど、懲りないねえ]
「・・・・・・・・」
始める前からの誹謗的なコメントであった。ソレをアリスはボーッと見ている。
「あ、アリス、こういうのはあんまり気にせず・・・・」
「・・・・・・・・」
モモイがフォローしようとすると、アリスがモモイのスマホロトムを手に取る。
「マキに連絡。該当IPアドレスに対して、最大出力のビーム砲を食らわせてきます」
『デデン、デデネ!』
報復を言い出したアリスに、デデンネ「やったれ、アリス!」と言わんばかりの声を張り上げた。
「そ、ソレはダメ!」
『マイマイ!』
ミドリとマイナンがアリスの持つ、スマホロトム(モモイの)を取り上げた。
「・・・・大丈夫。ゲームをやってもいない人の発言だから・・・・ね」
ーーーーピロン。
と、ユズもフォローに回っていると、新しいコメントが来た。
[前回の『TSC』は確かに、手放しで賞賛できる作品ではなかったかもしれません。ですが新鮮味があり、少なくてもありふれた作品ではありませんでした。今回の2ではどんな目新しさを見せてくれるのか、楽しみです]
「おっ、徐々にちゃんとした反応が・・・・」
ーーーーピロン。
[さて、鬼が出るか蛇が出るか・・・・折角なら中庸じゃなくて、例えどっち側だったとしても、振り切った体験をしたいね]
ーーーーピロン。
[前作はやったけど、良い思い出として残ってない。ソレ処か、苦い記憶が幾つも鮮明に思い出せるくらい。でも、どうしてかな・・・・続編だって知ってるのに、ついダウンロードしちゃった]
「す、凄い! 何か私達のゲーム、滅茶苦茶期待されてない!?」
『プラスルゥ!』
「全体的になんか、『時限爆弾を楽しそうに解除しようとしてる』感じって言うか」
『マイマイ・・・・』
「『怖い物見たさ』、みたいな・・・・」
『デンチュ・・・・』
はしゃぐモモイとプラスルと対照的に、ミドリとマイナン、ユズとデンチュラは先行きが不安になってきた。
ーーーーピロン。ピロン。
[2時間後に補習でテストがあるんだけど・・・・そんな事より今はこのゲームをやりたい気分]
[テストなんてコレから先、幾らでもあるじゃん。コレを遊ぶ最高のタイミングは、アップされたばっかりの今だけなんだよ!]
「えっと、ソレはできれば・・・・テストを受けに行って欲しいかも・・・」
「だ、ダウンロード数がもう2000を超えてる!? 流石におかしくない!?」
「あ・・・・有名なポータルサイトに、私達のゲームが発表されたって記事が載ったみたい」
『クソゲー』の烙印を押された自分達のゲームに、ここまでダウンロード数を稼げるなんて不自然だと思ったモモイに、すでにスマホロトムで調べていたミドリがそう言った。
「うわあぁぁぁぁ・・・・! 無関心じゃなければ良いな、くらいに思ってたのに! ここまで数が増えると急に怖くなってきた!」
『プラァァァァ・・・・!』
モモイとプラスルがガタガタと震えだす。
ーーーーピロン。
[知り合いがこのゲームの前作『テイルズ・サガ・クロニクル』をやっているのを横で見ていました。作った生徒達がゲームの事が好きだと言う気持ちは本物のように感じ、少し興味が湧いた。今『友人』のスマホロトムを使ってプレイさせて貰っています]
と、チャット名『M2』と名乗る人物からもメッセージが送られてきた。
「・・・・・・・・・・・・ドキドキします」
『デデン!』
「うぅっ! 期待と不安で、心臓が爆発しそう!」
『プラスル!』
アリスとデデンネがにこやかに、モモイとプラスルが緊張で震えだした。
その時ーーーー。
『っ! カルォ!』
“っ! 皆伏せてぇ!!”
『ピカチュウ!!』
『カルゥォォ!!』
『ブイ!』
ルカリオが、『波動』を感じて先生に言うと、先生が声を発して、ピカチュウとルカリオとイーブイが、すぐに『ゲーム開発部』と御三家を伏せさせた、その瞬間ーーーー。
ーーーードカアアアアァァァァン!!
部室の外から、凄まじい音が響いた。
「!?」
「ほ、本当にモモイの心臓、爆発しちゃったんですか?」
「ち、違う! 私の心臓じゃない!」
「一体何の・・・・? ゲーム機が爆発!?」
「え、長時間やり過ぎたかな・・・・?」
“違う! コレは外からの攻撃だよ!”
「コレは46mm砲・・・・カリン先輩の!」
ーーーードカアアアアァァァァン!!
先生とミドリがそう言うと、再び砲撃音が部室に響いた。
「ひゃっ!?」
『チュラ!』
「遠距離攻撃を確認。部室正面に対して11時の方角! 距離、約1km・・・・!」
『デデ!・・・・・・・・デデンネ!』
怯えるユズを覆うデンチュラ。アリスが砲撃音からカリンの居場所を推察すると、デデンネがアリスの頭から降りて、窓からソっと顔を出して空の景色を見ると、丁度離れたビルの屋上に、不自然に光る物体、恐らく狙撃手‹スナイパー›のカリンを見つけた。
「ま、まさか前回の仕返し!?」
『プラァ!?』
『ミレニアムタワー』でまんまと出し抜いて『鏡』を奪取した『ゲーム開発部』に、『C&C』がリベンジに来たのだ。
「反撃を開始します!」
アリスが『スーパーノヴァ(充電満タン)』を構えようとするが、モモイが止めた。
「ううん、アリス、一旦出よう! ここだと先生も巻き込んじゃうし、ソレに・・・・このまま此処で戦ったら、私達の部室が壊れちゃう!」
「お姉ちゃん・・・・」
確かにその通りだ。カリンが逆襲に来たという事は、他の『C&C』メンバーもいる筈である。
爆破を得意とするアカネと、マルマインにアローニャゴローニャ。
予測不能な動きをするアスナと、そのアスナに育てられたプリンとハピナス。
そして、『ミレニアム最強』である、あのネルとエレキブル、そしてまだ見せていないネルの手持ちも来る可能性が高い。
こんな狭い部室で、あの武闘派部隊と戦うのは圧倒的に不利であろう。下手をすれば部室がボロボロになり、皆にとって『大切な宝物』であるゲーム機が全部壊れてしまう。
と、モモイの考えをコンマ数秒で理解した先生が、『シッテムの箱』で状況の確認をすると、窓に移動してコッソリと外の景色、ソレも下の方を見ると。
「そ、外に『生徒会』の人達も・・・・! 『鏡』の件の報復・・・・!?」
「ち、ちょっと申し訳ないと思ってたけど・・・・!」
『デンチュラ!』
ユズがそう言うと、デンチュラは屋根に飛びつき、屋根裏に移動してカサカサっ、と移動していった。
「ユズ。デンチュラは何処へ?」
「た、多分、迎撃準備に向かったんだと思う。デンチュラって、時々屋根裏を移動して、建物内の構造を調べているから・・・・」
アリスにユズが答えると、モモイが声を張り上げる。
「ひぃっ、また来る!」
“落ち着いて! カリンはまだリロードしていると思うから、今の内に兎に角外に出よう!”
「先生・・・・! はいっ!」
『マイ!』
先生の言葉に頷き、才羽姉妹とユズも銃を手に取る。
「アリス! 私とユズが前に立つ!」
「はい。アリスは、先生と皆を守ります」
「ーーーーよし、行こう!!」
モモイがそう言うと、一同は部室を飛び出していった。
その際、先生が『シッテムの箱』を使って、“自分のスマホロトムに向けてメールを送っていると、数秒後に『マスターボール』がテレポートしてきた”。
ーネルsideー
部室棟を無傷で出た『ゲーム開発部』と『シャーレ』の先生は、カリンの狙撃によって誘導されるように動いていく。
「ーーーーあぁ? ドローンと生徒会の奴等が全滅しただぁ? どういうこったそらぁ?」
すると、カリンと同じビルで高みの見物をしているネルは、アカネからの通信を聞いて訝しそうに眉根を寄せた。『ゲーム開発部』にいっぱい食らわされたお礼参りとして、戦闘用のドローンや、『ゲーム開発部』にやり返ししたいと思っていた生徒会の役員の一部(ユウカとノアは除く)を使ったが、ソレらが全滅したのだ。
《そ、ソレが・・・・部室棟に入った瞬間、電流入りの糸のトラップに引っ掛かり、身動きが取れなくなったそうです。恐らく、『ゲーム開発部』の部長、花岡ユズさんのデンチュラの仕業かと・・・・短時間でこんな罠を仕掛けていたという事は、恐らく前もって準備していたんでしょうね》
「・・・・・・・・アイツの手持ちか」
ネルの脳裏に『差押保管庫』で会った、ビビりながらも自分と対面していた女の子、確か名は『ユズキ』と名乗っていたのを思い出した。『ユズ』と言うのが本名なのだろう。あんなに怯えていた少女の手持ちポケモンが、まさかコチラの戦力を無力化させるとは思っても見なかった。
「『ゲーム開発部』なんてインドアな部活動の中に、とんだダークホースがいたもんだな? そう言えば、ユウカ曰く、『シャーレ』の先生の手持ちポケモンのピカチュウとルカリオは、かなり強いようだな?」
《はい。他にも自由に進化系になれる色違いイーブイと、アスナ先輩曰く、“そろそろ進化しそうになっている御三家”を持っているそうです》
「・・・・成る程な。ソイツはーーーー面白くなりそうだ。なぁ? エレキブル?」
『エレキブル・・・・!』
ネルがニヤリと好戦的な笑みを浮かべて聞くと、エレキブルも、その太い腕に電流を迸らせながら拳を打ち合う。
そしてネルは、手持ちのポケモンが入った『スーパーボール』と『ハイパーボール』を、まるでお手玉のようにジャグリングしていると、『ゲーム開発部』と『シャーレの先生』が乗るライドポケモンを狙撃するが、『4階の建物に届く程の大ジャンプ』を見せるライドポケモンを誘導しているカリンが声をかける。
「それでリーダー。このまま『ゲーム開発部』と『シャーレ』の先生を、『旧校舎』に誘導すればいいの?」
「あぁ。アカネとアスナにも手伝わせておけ。後は・・・・アタシ達の『お楽しみ』だ!」
カリンにそう笑顔で答えるネル。
しかしその顔は、『笑うという行為は本来攻撃的なものであり、獣が牙を剥く行為が原点である』、と言う言葉を、如実に表していると、カリンとレントラーとムクホークは半眼で見ていた。
ーアリスsideー
そして、日が落ち始め、夕闇が世界を支配する黄昏時。
先生の指示を受けながら逃げ続け、今では人気が無くなった〈ミレニアム〉の『旧校舎』へと到着した『ゲーム開発部』。
「はぁ、はぁ・・・・な、何とか逃げ切れた?」
『プラァ・・・・』
部室棟に迫っていた戦闘用ドローンと生徒会役員達は、ユズのデンチュラが屋根裏から【ねばねばネット】と【エレキネット】の合わせ技を使い、無力化させてくれたお陰で難なく突破できたのだが、外に出てからのカリンからの狙撃と、アカネの爆弾、さらにアスナの奇襲から逃げている内に、この『旧校舎』へと到着したのであった。
「こ、コレからどうする・・・・?」
『デンチュ?』
「もう『ミレニアムプライス』への出品は終わってるんだし・・・・取り敢えず結果が出るまで、このまま逃げ続けよう!」
『マイ!』
“・・・・暫くの間『シャーレ』で匿って、ほとぼりが冷めるのを待つのもあるよ”
『ピカチュウ』
「あっ! ソレで行こう! 『C&C』も『生徒会‹セミナー›』も、『シャーレ』でドンパチしようなんて思わないだろうしね!」
「先生。ここから『シャーレ』までどれくらいかかりますか?」
“う~ん、と・・・・ミライドンを法定速度ギリギリまで飛ばして、アリスの『スーパーノヴァ』をエーフィに浮かばせて貰うとしても・・・・およそ25分だね”
「分かりました! ソレじゃぁすぐに逃げてーーーー」
『カルゥ!』
ミドリがすぐに旧校舎を出て『シャーレ』に逃げ込もうと言おうとした瞬間、ルカリオが前方の闇から近づいてくる、『凄まじい波動』を感じて前に出て構える。
「ーーーー逃げ切れると思ったか?」
「!?」
“ルカリオ!”
ーーーーダダダッ!
『ーーーーカルォォォォ!!』
闇の向こうからミドリに向かって弾丸が飛んできて、先生がルカリオに指示を出すと、ルカリオは【ボーンラッシュ】で飛んでくる弾丸を全て弾き飛ばした。
「なななな、何事かぁ!?」
モモイが驚き、全員が武器を前方の闇に向けると、闇の向こうから小柄な女の子と、大きなポケモンが現れた。
「・・・・・・・・・・・・成る程な」
『・・・・・・・・・・・・』
『ミレニアム最強』の美甘ネルと、エレキブルであった。ネルはジッと見据えると納得したように頷いてみせる。
「道理で、一々良い判断だと思ったぜ。さっきこのチビ達を指揮したのも、『差押保管庫』を襲撃してのも。アンタだったか」
ニヤリと笑みを浮かべるネルは、先生を見据える。
「『先生』・・・・って呼べば良いか? アカネが調査した例の『先生』・・・・噂は大袈裟じゃ無かったみてぇだな」
“えっと・・・・始めましてだね。ネル、で良いかな? それでどういう要件? リベンジ?”
「はっ! そんなくだらない理由で来る訳ねぇだろうが」
先生の問いに鼻で笑ったネルだが、その視線を顔を青ざめさせているユズに向けた。
「強いて言うなら先ずは・・・・ソコの、デコ出してるアンタ。あの時は、よくもアタシを騙してくれたな・・・・?」
「ひっ・・・・! す、すみません!」
鋭い目つきで言うネルに、ユズは土下座する勢いで頭を下げた。
が・・・・。
「やるじゃねえか。褒めてやるぜ」
「・・・・え?」
「怯えたフリをしてブルブル震えながら、アタシを騙すなんてな。大した演技力だ」
怯えていたのは演技ではなく素だったのだが、ここは敢えて言わない『ゲーム開発部』と先生。
「まあソレは良いとして・・・・ソッチのバカみたいにデケェ武器持ってるアンタ」
「・・・・・・・・」
ネルはアリスに向けて声を上げるが、アリスはキョロキョロと周りを見回していた。
「アンタだよ、アンタ!」
「アリスの事ですか?」
古典的なボケをかますアリスに、ネルはキレの良いツッコミを炸裂させた。
「そうだ、テメェに用がある。『C&C』に、一発食らわせてくれたらしいじゃねえか・・・・?」
そう。『鏡』奪還作戦が成功したのは、アリスの功績が一番大きいと言っても過言ではなかった。
「ちっと面貸せや」
武器を持って顎でしゃくって言うネルに、モモイ達は緊迫したように身体を固くする。
と・・・・。
「アリス・・・・知ってます」
アリスがキリッとした顔になって。
「『私にあんな事をしたのは、貴方が初めてよ・・・・っ』」
何やらツンデレヒロインのような台詞を呟くと。
「『告白イベント』ですね。チビメイド様はアリスと先生に惚れていると。スチル獲得です」
「ーーーーは?」
『エレブバァっ!!』
トチ狂った台詞にネルは一瞬思考停止し、エレキブルは盛大に吹き出して爆笑し、お腹を抱えてその場に蹲った
“・・・・・・・・・・・・中々乙な光景だね”
『ピカピカ・・・・』
『(コツンっ)カルゥカルォ・・・・』
先生は何を想像したのかウンウンと頷き、ピカチュウは半眼で呆れ、ルカリオは「妙な妄想を生徒でしないで下さい」と言わんばかりに、【ボーンラッシュ】でコツンっ、と先生の頭を叩いた。
するとーーーー。
「ふ、ふっざけんなこの野郎っ! ってか、誰がチビメイド様だ!? ぶっ殺されてぇのか!?」
顔をビリリダマのように真っ赤にしたネルが、『おうじゃポケモン カエンジシ』よろしくな怒鳴り声を上げた。
「ひっ・・・・!」
『デデっ・・・・!』
「こ、怖っ!!」
『プラっ!!』
思わず飛び上がる程にビビるアリス達。
『(プルプルプルプルプルプルプルプル・・・・)』
「エレキブル! テメェもいつまで笑ってやがる!!」
笑い過ぎて呼吸困難になったエレキブルのお尻に、ネルがゲシッ、ゲシッ、と蹴りを叩き込んでいた。
◇
「はぁ・・・・」
『・・・・エレキ』
ひとしきりにエレキブル(笑いが収まった)を蹴って落ち着きを取り戻した。
「中々苛つかせてくれるじゃねぇか、まあ良い。誤解してるかもしれねぇから一応言っとくが、別に『C&C』に一発食らわせた分の復讐って訳じゃねぇ。アチコチ怪しい所はあったが、コッチとしては『正当な依頼』の中での出来事だった。ソッチはソッチで、アタシらを相手に目標を達成しただけだ。・・・・別にそこに恨みはねぇが・・・・俄然、興味が湧いてきてな」
ネルはニヤリと笑みを浮かべてアリスを見据える。
「興味・・・・?」
「『確認』、って言った方が良いかも知れねえが・・・・」
“(『確認』・・・・?)”
先生はネルがボソッと呟いた言葉に、訝しそうに眉根を寄せる。
思えば、この『ゲーム開発部』の騒動には色々と不可解な点が多過ぎた。
『G.Bible』の所在。アリスの存在。『廃墟』での戦闘。そして、『ミレニアムタワー』での騒動。そして今のネルの発言。
まるでコレまでの事が、『第三者』の手の平の上で動かされているかのような、奇妙な感覚が常に付き纏っていたのだ。
“(ネルは何かを知っているのかな・・・・?)”
「さあ、ちょっくら相手してもらおうか。アタシと戦って勝てたら、このまま大人しく引き下がってやる。お互いを理解するには、コレが一番手っ取り早いからな。どうだ、難しい話じゃねえだろ?」
先生はそんな思考を巡らせるが、エレキブルから離れて前に出るネルが発した、喧嘩上等な脳筋言葉で我に返る。
「・・・・・・・・分かりました」
「おっ、やる気満々ときたか♪」
「一騎打ちのイベント戦闘・・・・みたいなものですね。理解しました」
「イベ・・・・何つった?」
アリスの言葉に首を傾げるネルに構わず、アリスは頭に乗せたデデンネをミドリに預け、『スーパーノヴァ』を構えた。
「ミレニアムタワーの戦い‹あの時›は狭かったですし、『鏡』を持って帰るという使命がありましたが・・・・今なら・・・・!」
そして、アリスは重厚な音を立てて『スーパーノヴァ』を変形・展開する。一撃で相手を葬り去る、対艦想定の過剰出力がネルに向けられた。
「行きます、魔力充填、100%!」
「ちっ、コレは・・・・!」
「ーーーー光よ!!」
ーーーードカアアアアァァァァンン!!!
青い光が爆発的に広がり、周囲を破壊の嵐で包み込み、凄まじい轟音と爆煙が、後方にいる先生達にも襲いくるが、『マスターボール』から放たれる『念動力』によるシールドの展開によって防がられた。
「くっ!」
「わぉ!」
「何と言う威力・・・・! 校舎の壁を、こうも簡単に消し飛ばす程の・・・・!」
駆け付けた他の『C&C』メンバーも、轟音と爆煙に撒かれてしまった。
「す、スゴイ・・・・!」
「こんな火力、見た事ない・・・・」
モモイとミドリも唖然とし、ユズとポケモン達は目を見開いていた。
「・・・・やったか」
「アリスちゃん! その台詞は無闇に言っちゃダメ!」
「あ、ネル先輩は3年生でした。言い直します。ーーーーや、やっつけられましたか・・・・?」
「いや、敬語の問題じゃなくて・・・・!」
『スーパーノヴァ』を撃ち終わった後、アリスは『お約束的な台詞』を言うと、ミドリが空かさずツッコミを入れ、的外れな事を言うアリスにまたもやツッコミを入れた。
『・・・・ファ〜・・・・』
パートナーがやられたと言うのに、エレキブルは呑気そうに大きな欠伸を吐いたその瞬間・・・・。
“ーーーーまだだよ”
ーーーーダダダダッ!
「うぁっ!?」
先生が呟くと同時に、爆煙の向こうから放たれた弾丸が、アリスに襲い掛かった。
そして爆煙の向こうから、『サブマシンガンMPX ツイン・ドラゴン』。その名の通り、金色の龍の模様が入っている二挺一対の短機関銃『サブマシンガンMPX ツイン・ドラゴン』を構える、ほぼ無傷のネルが立っていた。
「確かに、並大抵の火力じゃねぇが・・・・ただ、ソレだけだ」
何とネルは、あの距離から放たれたレールガンを回避していたのだ。
「も、もう一度、魔力の充電・・・・!」
「遅ぇよ」
「あっ・・・・!」
アリスがチャージを始める前にネルが接近してくる。チャージを止めたアリスは、『スーパーノヴァ』を単発撃ちに変えてネルを撃つが、ネルは光線。走りながら全て回避して接近する。
ーーーーガッ!
「きゃぁっ!」
ネルはアリスに蹴りを入れると、アリスは『スーパーノヴァ』を盾にして防ぐが、その威力が高く後ろに後退する。140kg以上ある『スーパーノヴァ』を、小柄なネルは軽く蹴り飛ばしたのだ。凄まじい脚力である。
そして蹴りの反動で宙に浮いたネルは『ツイン・ドラゴン』の引き金を引いて火を吹かせる。
「てめぇの武器は確かに強い。だが引き金を引いた後、発射まで最低でもコンマ数秒はかかる」
ーーーーダダダッ!
「その上、その強すぎる火力のせいで、相手にある程度の距離まで入られたら撃てねぇ。爆圧に自分‹テメェ›まで巻き込まれるからな」
戦いながらアリスの武器の弱点を的確に説明するネル。その顔には余裕綽々と言わんばかりの笑みを浮かべているのである。
「そしてこの間合いでアタシに勝てる奴なんざ、〈キヴォトス〉全体でもそう多くは・・・・」
ソコまで言ってから一拍子置いて、ネルはトドメの攻撃をアリスに向けて放つ。
「・・・・いや、一人もいねぇ」
ーーーーダダダッ!
「うぅ・・・・!」
「アリス!」
『デデン!』
防戦一方のアリスに、ネルが『ツイン・ドラゴン』の連射を止めない。
「思った以上にガッカリだったな。この程度で、アイツらがやられたとは到底・・・・」
「・・・・!!」
落胆したかのような声を漏らすネルの一瞬の隙を狙い、アリスはブォンッと、『スーパーノヴァ』を振り回し、ネルに叩きつけた。
「ぐっ!!」
流石のネルも、140kgもある武器を遠心力付きで叩き込まれ、苦悶の顔を浮かべる。
「その銃身を、振り回せんのかよ・・・・!」
「はっ。接近戦としては悪くねぇ判断だ・・・・けどな」
ミドリが思わず荒いコメントを言い、ネルは再びアリスに近づき、『ツイン・ドラゴン』を発射する。
「相変わらずこの距離じゃ、アタシの方が圧倒的に有利。テメェは発射しようにも、アタシに照準は合わせられねぇ」
脳筋な暴れん坊に見えて、意外とクレバーかつ堅実な戦い方をするネル。
「・・・・照準は、必要ありません」
が、ソレはアリスも同じである。
「行きます!」
「だから無理だって・・・・ん?」
アリスが『スーパーノヴァ』を構えるのを見て、ネルは目を見開く。
「この状況で発射準備・・・・? おい、まさかテメェ・・・・!?」
嫌な予感がしたネルに構わず、アリスは砲口をーーーー床へと向けた。
「アタシじゃなく・・・・床に!? 正気か!? そのまま撃ったらテメェも・・・・!」
そう。『スーパーノヴァ』のようなレールガンを足元に撃てば、爆発がネルだけでなくアリスにも襲いかかるのだ。しかし、アリスは一瞬も一切の躊躇いもなく、『スーパーノヴァ』のボタンを押した。
「光よ!!」
ーーーードカアアアアァァァァンン!!!
床に放たれた光線が爆裂し、ネルとアリスを包む。
“(っ!ーーーーミュウツー!!)”
《ーーーーーーーー!!!》
先生は念話でミュウツーを名を呼ぶと、ミュウツーは【テレキネシス】で先生と『ゲーム開発部』、『C&C』の身体にバリアを張ってもらうと同時に、強烈な閃光と共に襲い来る爆煙に旧校舎の廊下包まれた。
「アリスちゃん! うっ、煙で視界が・・・・!」
『デデン!!』
デデンネがミドリから降りると、真っ先に殆ど崩れてしまった床を走り、アリスを見つけた。
「見つけたデデンネ!?」
「に、肉体損傷48%・・・・後退を望みます!」
“私が背負う。イーブイ!”
『(ポンッ)ブイ!』
“エーフィに進化!”
先生がイーブイ(色違い)を出し、『超進化ライト』でエーフィ(色違い)にすると、エーフィは【サイコキネシス】で『スーパーノヴァ』を持ち上げ、先生がアリスを背負い、『ゲーム開発』と共にこの場を逃げようとした。
がしかし・・・・。
ーーーードォォン!
『うわぁ!?』
足元に弾丸が撃たれ、一瞬動きを止めた一同を囲うように、レントラーとアローニャゴローニャ、そしてハピナスがおり、さらにカリンとアカネとアスナによって包囲されてしまった。
“くっ、レントラーの『透視能力』で、私達の居場所は通抜けだったか・・・・(そして、あの子がカリンか・・・・)”
先生はアスナとアカネ以外で始めて会ったカリンな目を向けた。長く綺麗な黒髪と〈ゲヘナ〉のイオリよりも濃い褐色のお肌、長身であり他の二人に比べると弱冠小さいが十分な巨乳とグラマラスな肢体。そして先生が何よりも目を引いたのは、白いニーソックスに包まれた、ムチッと肉付きの良い太ももであった。
“(ーーーーキランっ)”
『『・・・・・・・・』』
この時、先生がカリンを完全にロックオンしたのを、ピカチュウとルカリオだけが気付き、半眼になって呆れていた。
次回、先生と『C&C』がポケモンバトル。
ネル&エレキブル
ネルが中学生の頃、校外学習で電気発電所の見学に行った際、ソコで暴れているエレキッドと出会い、激しい大喧嘩の末に勝利。ソコでマブダチとなり手持ちとし、以来は多くの喧嘩と任務をこなしていく内にエレブー、そしてエレキブルに進化した。家事能力は高く。肉料理が得意のネルと反対に野菜料理が得意。