ーネルsideー
激しい閃光と爆音が収まり、両腕で顔を覆っていたネルが腕を下げて見ると、合体技のぶつかった地点には大きなクレーターができ、ソコから大きく外れた場所に着地したエレキブルと、空からギャラドス(色違い)がエレキブルの側に舞い降りている。
周りを見回すと、『シャーレの先生』やその手持ちポケモン達だけでなく、『ゲーム開発部』まで姿を消していた。
「・・・・・・・・」
ネルの元にエレキブルとギャラドスが戻って来た。
「あれれ〜? 先生達いなくなっちゃったよ? 閃光と爆音に紛れて逃げたのかな?」
「どうするリーダー? 追いかける? 『シャーレ』に逃げ込まれたら流石に手が出せなくなるけど?」
「負傷しているアリスちゃんもいますから、先ずは保健室に逃げているとも思えます。〈ミレニアム〉には二桁以上の保健室がありますが・・・・すぐに見つかるでしょう」
他のメンバー達が集まって追撃するかと聞く。
「・・・・・・・・」
「リーダー?」
「・・・・ああ。いや、いい。追撃は無し、もう戻る」
何かを考え込んで黙っているネルをアスナが訝しそうにすると、ネルは作戦終了を告げて、エレキブルと共にギャラドスの背に乗った。
「一通り暴れたし、エレキブルもギャラドスも久しぶりに最大出力で合体技をぶっ放してスッキリしたしな♪」
『ブルゥ〜♪』
『ギャァ〜♪』
「・・・・・・・・」
アレだけ暴れたのを『一通り』の一言で片付けるネルと、同意するようにスッキリした顔をするエレキブルとギャラドスに、カリンはタラリと汗を垂らした。
「『目的』は概ね達成した。『リオ』が『ゲーム開発部』に興味を持つ理由も分かったし・・・・それに・・・・」
「分かった! 気に入っちゃったんでしょ〜、先生の事!」
『プリン♪』
「ばっ、違ぇよ! そ、そういうんじゃなくてだな・・・・!////」
「ふふ、お気持ちは分かります。でも、少々心配ですね」
アスナがニヤケながら言い、プリンも笑みを浮かるとネルは顔を紅くして否定するが、アカネとマルマインもニヤつきながら思考する。
「ゲーム開発部‹あの子達›の体躯を見るに、先生の好みは恐らく・・・・」
『マルマル♪』
アカネは高校生にしては小柄な、下手をすれば小学生でも通用する『ゲーム開発部』の面々を思い浮かべてから、改めてネルを見ると、マルマインはニヤニヤと笑みを浮かべていた。
「少なくともリーダーにとっては、悪い情報じゃない」
『ピィ〜!』
カリンが『ゲーム開発部』と同じ位の体躯であるネルを見てそう言うと、ムクホークが顔を背けて吹き出した。
「うるせぇ! いつまでもそう言う事言ってっとぶっ飛ばすぞ!?」
ウガーっと吠えるネルだが、後に先生の『頼りになるお気に入りの生徒(良い意味で)』に入る上に、『できれば保護者になりたい生徒』にも入るのだ。
関係ない態度のアカネ達だが、アカネは先生の部屋に爆撃(悪意無し)してやって来たり、アスナは先生の『大型犬』になったり、カリンは〈ゲヘナ〉のイオリと同じく『先生のお気に入りの生徒(悪い意味で)』となるのだが、ソレはまた別の話。
「はぁ・・・・」
一旦クールダウンしたネルが、小さく息を吐いた。
ーーーーポンッ!
すると、ネルの懐にある『ハイパーボール』から『ネルの隠し玉ポケモン』が飛び出し、ネルの頭に乗った。
「んあ? お前が出てくるなんて珍しいじゃねぇか? お前も気になってんのか?」
『ーーーー??』
ネルの質問にそのポケモンは「ネルはどうなの?」と聞くと、ネルは一拍黙る。
「『シャーレの先生』、ソレに『ゲーム開発部』か・・・・はっ。楽しみにしてろよ。アタシをチビ扱いした償い、絶対にさせてやっからな」
ニヤリと笑みを浮かべてそう言うと、『C&C』メンバーに向き直る。
「・・・・思いっきり暴れたら腹減ったな。なぁ、ゴローニャ達をセンターで回復させたらラーメンでも食いに行こうぜ」
『ブルゥ』
『ギャ〜』
「良いですねー」
『マルマル♪』
「賛成賛成〜!」
『プリン♪』
「・・・・そう言えばリーダーは『成長期』だった」
『ビィッ!?』
カリンが呟いた言葉に、ムクホークはまたも吹き出した。
「いい加減にしろやぁっ!!」
ネルは自分の背丈に関してしつこくイジってくるメンバーに、『ツイン・ドラゴン』を乱射して怒鳴るのであった。
・・・・後に、『ゲーム開発部』への襲撃や、旧校舎での大暴れの事で、ユウカの雷が落ちるのは後日の事であった。
ー先生sideー
『C&C』こと、メイド部の襲撃から数日後。
ユウカから『C&C』はもう襲ってこないと聞いた先生と『ゲーム開発部』は部室へと戻って来ていた。
「ねえねえアリス、見て見て〜」
「???」
更にその翌日。モモイがデデンネと戯れていたアリスに話し掛けた。
「じゃ~ん、メイド服〜!」
「ひぃっ!」
モモイがアリスの眼前にメイド服を見せると、アリスは怖がってしまい、デデンネを持ったままヒューンっと部屋の隅に丸まって逃げてしまった。
「あはは、良い反応!」
『プラプラァ♪』
『マイマイ〜♪』
「何してるの、もう! アリスちゃんが怯えきってるじゃん!」
モモイとプラスルとマイナンがケラケラと笑っているとミドリが怒り、怯えているアリスに話し掛けた。
「アリスちゃん、大丈夫?」
「あ、アリス、暫くメイド服は見たくありません!」
身体の怪我は全て治ったが、余程ネルの事が心にトラウマとして刻まれたようである。すると、ユズが旧校舎の事での話し合いから帰って来て、皆に報告をする。
「あの、建物。壊しちゃった件について、生徒会‹セミナー›の所に行ってきたんだけど・・・・幸いな事に、部活中の『事故』として処理してもらえたよ」
「嘘っ、ユズソレどうやったの!? もし部が存続したとしても、弁償代として部費は諦めなくっちゃって思ってたのに・・・・!」
「私じゃなくて、『C&C』の方が処理してくれたみたい、ソレと・・・・ネル先輩から伝言」
『ーーーーまた会おうぜ。先生、今度はちゃんと決着‹ケリ›付けような?』
「・・・・って」
「ひぃっ!?」
ネルからの伝言を伝えるユズの顔は青ざめていた。アリスは再び怯えだし、デデンネと共にユズ専用のロッカーに閉じこもってしまった。
「ああっ、アリスちゃん! ロッカーの中に入っちゃダメ! ユズちゃんを見て変な事覚えちゃったよ!」
ミドリが出るように言うが、全く出てこなかった。
「ふぅ・・・・まあソレならソレで良かった。所で・・・・」
「・・・・うん。『ミレニアムプライス』、始まったね」
ミドリがやれやらとため息を吐いてからユズに向き直すと、ユズもコクリと頷いてから、テレビに目を向けると、画面に『ミレニアムプライス』の結果発表が始まろうとしていた。
自分達が作った『テイルズ・サガ・クロニクル2』は多少の冷やかしはあったものの概ね好評であった。『入賞』も狙える評価に彼女たちは期待していた。
「もし受賞したらクラッカー鳴らそっか。でも、もしそうじゃなかったら・・・・」
『プラァ・・・・』
「・・・・すぐに、荷造りしないとね。私達はさておき、ユズちゃんとアリスちゃんは・・・・」
『マァイ・・・・』
「「・・・・・・・・」」
『『・・・・・・・・』』
自信は持っているが、やはり前回の『クソゲーランキング1位』が尾を引いているのか不安なようで、部室の空気は重苦しくなる。
特に問題なのは、メガ引っ込み思案のユズと、『ゲーム開発部』が無くなると行く所がないアリスであった。一応アリスには、先生が『シャーレ』で引き取るようになっている。
と、そんな不安と期待が複雑に絡み合う中、『ミレニアムプライス』の結果発表が始まった。
司会役は『エンジニア部』のコトリと、パモットとロトムであった。
《これより、『ミレニアムプライス』を始めます! 司会及び進行を担当するのは私、コトリです! 今回は、コレまでの『ミレニアムプライス』の中でも最多の応募数となりました。おそらくは生徒会の方針変更により、部活動維持の為に『成果』が必要になった影響かと思われます!》
《パモッ!》
『ロトロト!』
「・・・・コトリちゃんの方も、無事だったみたいだね」
「『エンジニア部』は元々、〈ミレニアム〉の中でもかなり功績が認められてる部活な事もあったし・・・・でも、本当に良かった」
『『鏡』奪還作戦』では、マキと共にアカネの足止め役をしていた。マキから無事であるとは聞かされていたが、こうして元気な姿を見れて、ミドリとユズ、それにモモイとアリスも安堵したのだ。
「うん。所で、史上最多の応募数か・・・・」
「それはちょっと困るなぁ・・・・」
『ゲーム開発部』一同はテレビの周りに集まり、先生達は少し離れた位置にいながら、結果を見守っていた。
《昨年の優勝作品である生塩ノアさんの『思い出の詩集』は、本来の意図とは少し違ったようですが・・・・その形而上的な言葉の羅列が、〈ミレニアム〉最高の不眠症に対する治療法として評価されました!》
去年はノアの作品が優勝したようである。
《今回も、『歯磨き粉と見せかけてモッツァレラチーズが出る持ち歩きチーズ入れ』、『ミサイルが内蔵された護身用の傘』、『ネクタイ型モバイルバッテリー』、『光学迷彩下着セット』、『丁度缶1個なら入る筆箱型個人用冷蔵庫』、そして! 今〈キヴォトス〉のインターネット上でセンセーションを巻き起こしている、スマホロトムでマルチプレイが楽しめるレトロ風ゲーム、『テイルズ・サガ・クロニクル2』等々!》
何やら怪しげな作品の後に、『ゲーム開発部』の作品が発表された。
《今回出品された三桁の応募作品の内、栄光の座を手にするのは、たったの7作品!》
「(ごくっ・・・・)」
《それでは7位から、受賞作品を発表します!》
応募された多くの作品中、受賞できるのはたったの7作品と聞いて、ユズは固唾を呑み込む。
『ゲーム開発部』の存亡は、この受賞に掛かっているのだ。
ちなみに7位は、『エンジニア部』のウタハが作った『光学迷彩下着セット』である。
ソレから、6位、5位、4位と発表されたが、『テイルズ・サガ・クロニクル2』が出る事はなく、『ゲーム開発部』の貌に不安の色が濃くなってくる。
「私達の名前、呼ばれないね・・・・」
「ううぅっ! そろそろお願い!」
『プラプラァ・・・・!』
『マァイィ・・・・!』
ミドリが不安の色が濃くなり、モモイはプラスルとマイナンと共に拝みながら祈っていた。
そして、コトリが進行を続ける。
《さあ、ここからはベスト3です! 3位は・・・・!》
「も、もう心臓がもたない!」
『マ、マイ〜・・・・!』
「お願い・・・・お願い・・・・」
『チュラ・・・・』
最早ミドリとユズとマイナンは、緊張と不安で心臓が飛び出しそうなのを必死に耐えており、デンチュラは結果が出るのを静かに待つのみであった。
《さあ、ここからはベスト3です! 3位は・・・・!》
コトリが発表し、パモットとロトムが作品の写真を出した。
3位はーーーー違う作品であった
《僅差で2位を受賞したのは・・・・!》
「・・・・お願いします、私達の名前を・・・・!」
『デデン!!』
アリスとデデンネが懇願するが2位はーーーー違う作品であった。
「くっ、2位でもない・・・・! って言う事は・・・・!」
『プラァ・・・・!』
残す所は、もう1位の発表となり、『ゲーム開発部』の名前は呼ばれない。彼女たちの精神はもう限界であるが、モモイはもしかしたら、と一抹の可能性に賭ける。
《最後に! 今回の『ミレニアムプライス』で、最高の栄誉を受賞した作品です!》
「ドキドキ・・・・」
《その1位は・・・・!》
「うぅ・・・・っ!」
いよいよ最後の1位の発表となり、『ゲーム開発部』はその様子を固唾を飲んで見守る。
アリスは期待しながら、ミドリは不安になりながら、それぞれ結果が出るのを待っていた。
そして、
ーーーードドンッ!!
《CMの後で!》
《パモッ!》
《ロト!》
ーーーーズデン!
「アリスっっ!!!」
「充電完了、いつでも撃てます!!」
“落ち着いて!!”
「気持ちは分かる! 気持ちは分かるけど、授賞式会場もこの画面も撃っちゃダメ・・・!」
CMに入られてしまい、盛大にズッコケた後、キレて起き上がったモモイは、アリスにTVの破壊を命じ、アリスも『スーパーノヴァ』を構えるが、先生達とミドリが必死に止めるのであった。
「うぅ、もう焦らさないで欲しい・・・・」
そして約1分半後。『ゲーム開発部』にとっては、10分は経ったのかと錯覚してしまうくらいの時間が経ち、CMがあけた。
《さあ! それでは発表します!》
心臓が引き絞られそうな感覚の中、コトリが1位を発表したーーーー。
《待望の1位は・・・・『新素材開発部』ーーーー》
ーーーーダンダンダンダンッ! バリバリバリバリィッ!!
「きゃあっ! 本当にディスプレイを撃ったり電撃放ってどうするの!?」
「どうせ全部持っていかれちゃうんだし、もう関係ない! うえぇぇん! 今度こそ終わりだぁぁぁぁぁ!!」
『プラプラァァァァァァァァ!!』
『マァイィィィィィィィィィ!!』
発表された第1位の作品は、ゲーム開発部の『テイルズ・サガ・クロニクル2』ではなかった。
ソレを聞いたモモイとプラスルとマイナンは、もうヤケクソと言わんばかりに、TVに銃弾と電撃を浴びせると、モモイとプラスルとマイナンはその場に蹲って号泣するのであった。
◇
そして、数分の時間が経過しても、全く泣き止まないモモイとプラスルとマイナン。
「うぅ・・・・結局、こうなっちゃうなんて・・・・」
「落ち着いて、お姉ちゃん。プラスルもマイナンも。でも・・・・」
「分かってるよ! 全部が否定された訳じゃない、ヘコたれる必要なんて無いって・・・・。ネット上の評価も悪くなかったし、『クソゲーランキング1位』のあの時から、ちゃんと成長した。これからも、きっと成長していける」
悲しみに暮れていた『ゲーム開発部』の面々。ユズは泣きそうになり、ミドリも悔しいのが目に見えていた。漸く泣き止んだモモイは前向きに捉え、涙をゴシゴシと拭ってから顔を上げる。
「次はもっと良い結果を出して、今より立派な大きい部室だってもらえるはず! でも・・・・」
「うん・・・・だって、ここを追い出されたら、ユズちゃんとアリスちゃんは・・・・」
「・・・・・・・・」
『デンチュ』
「・・・・うん」
過去のトラウマによる部室に引きこもっていたユズが、寮で生活できるか不安と心配になるモモイとミドリ。ユズはそんな2人を見ると、デンチュラが励ますように声を掛けると、ユズは頷いてからモモイとミドリに話し掛ける。
「・・・・心配しないで、ミドリ。私、寮に戻る」
「えっ?」
ユズが寮に戻ると言い出し、ソレを聞いてミドリは驚きの声をあげた。
「もう私の事を、『クソゲー開発者』って呼ぶ人はいないと思う。ううん、もし仮にいたとしても、大丈夫。今の私にはデンチュラだけじゃない・・・・モモイにプラスル、ミドリにマイナン、アリスちゃんにデデンネ、後それに、先生達もいるから」
ユズはそう言うと、デンチュラと共に見守っていた先生達に向き直る。
「ありがとうございました、先生。先生達がこの部室に来てくれた時から・・・・私達は、大きく変わる事ができました」
『チュラ』
ユズはこの一連の出来事で大きく成長し、心も強くなったようである。ユズとデンチュラは皆にお礼と感謝の言葉を述べるのであった。
“ユズ・・・・”
『ピカ・・・・』
『カルゥ・・・・』
『ブィ・・・・』
『ベイ・・・・』
『マグ・・・・』
『アリゲイ・・・・』
しかし、先生達の顔は重く沈み、イーブイとベイリーフに至っては悔し涙を滲ませていた。
「ただ、アリスちゃんとデデンネは・・・・」
“・・・・うん、私に任せて。アリスとデデンネは『シャーレ』で引き取るよ。私が責任を持つから”
次にユズは居場所の無くなってしまうアリスと、パートナーのデデンネの方を心配する。だがそんなアリスの境遇を心配し、先生が『シャーレ』で引き取る事にした。
“アリス、『シャーレ』に来る?”
ずっと浮かない顔をし、デデンネを抱き締めていたアリスに、先生が話し掛けると、アリスは何かを言いたそうにしていたが、押し黙ってしまう。
「・・・・アリスちゃん、デデンネ」
「・・・・・・・・」
「・・・・ごめんね」
『プラスル・・・・』
『マイナン・・・・』
アリスの心境を理解してあげているのか、ミドリが部活を守れず、アリスと離れ離れになってしまった事を必死に謝り、プラスルとマイナンも一緒に頭を下げた。
「いえ。先生の事は、信じられますから。ですが・・・・もう・・・・もう皆とは・・・・一緒にはいられないのですね」
『デデン・・・・!!』
「!!」
気丈に振る舞おうとするアリスだが、悲しい思いがあふれてしまい、デデンネまで嗚咽を漏らし出し、ソレがきっかけになって、『ゲーム開発部』の皆は泣き出してしまった。
「うっ、ごめんね・・・・ごめんね、アリスちゃん! 私、毎日『シャーレ』に行くからね! 本当に、絶対毎日行く! どこに行っても! 一緒にゲームを作ろう!」
「うううう・・・・!」
ミドリがポロポロと泣いてアリスに抱き着くと、ソレを見てモモイが再び泣き出した。
「やっ、やっぱり嫌! 先生! やっぱアリスとデデンネを連れていっちゃダメ! わ、私の部屋に連れていく! ベッドも一緒に使おう! ごはんも四人で分けて食べるから!」
『プラァ!』
“も、モモイ、プラスル・・・・”
「私の分もあげるっ!」
『マイマイ!』
“ミドリ、マイナン・・・・”
「み、皆、先生達を困らせないであげて・・・ソレに、もしその事がバレたら、モモイも、ミドリも・・・・」
『チュラチュラ!』
『シャーレ』に行ってしまうアリスとデデンネを、モモイとプラスルは必死に引き留め、ミドリとマイナンも同調する。だが寮で一緒に暮らす事はできないと分かっているユズとデンチュラが彼女達を必死に宥めようとする。
『ゲーム開発部』の部室が悲しみに暮れていたその時・・・・。
ーーーーガチャッ。
「モモイ! プラスル! ミドリ! マイナン! アリスちゃん! デデンネ! ユズ! デンチュラ!」
『サナサー!』
いきなり部室の扉が開かれ、ユウカとサーナイトが笑顔で入ってきた。
「ひいっ! もうユウカとサーナイトが!」
『プララァ!』
「ちょ、ちょっと待って! そんなすぐになんて・・・・!」
『マイマァ!!』
モモイとプラスル、ミドリとマイナンはもう部室を撤収させに来たと思い込み、絶望の眼差しをユウカとサーナイトに向ける。
「悪魔め! 生徒会には人の心が無いわけ!?」
「ーーーーおめでとうっ!」
『サナー!』
「・・・・?」
『マイ?』
「・・・・え?」
『プラ?』
「え、えっ・・・・?」
『デンチュ?』
「?」
『デデン?』
何故か賞賛の言葉を口にしたユウカに、泣き顔の『ゲーム開発部』が困惑の顔と声を発した。
「え、何この反応? 『結果』、見てなかったの?」
『サナ?』
「・・・・『結果』?」
「私達、7位以内に入れなくて・・・・」
「はぁ? 何を言ってるの、今も放送中なんだからちゃんと見なさいよ」
「お姉ちゃんとプラスルとマイナンが怒って、ディスプレイを吹っ飛ばしちゃって・・・・」
1位が発表された時点で、モモイがTVをぶっ壊した為、彼女達はその後の発表を知らないのだ。
「ほんとに何してるのよ・・・・ほら、見てみて。私達もスマホロトムで見てて、途中から走ってきたの」
そう言ってユウカはスマホロトムの画面を見せると、『ミレニアムプライス』の審査員(ロボット住人)だった。
《『ミレニアムプライス』はコレまで、生徒達の才能と能力で作られた作品に対し、『実用性』を軸に据えて受賞を行ってきました。これはより良い未来を求め、実現していくという趣旨に基づいています》
審査員が『ミレニアムプライス』の意義の説明をしていた。
《しかし今回の作品の中には、新しい角度から『実用性』を感じさせてくれたものがありました。とある『ゲーム』が実際に、懐かしい過去をありありと思い出させ、未来への可能性を感じさせてくれたのです。よって私達はこの度、異例の選択をすることにしました》
審査員はどうやらその、とある『ゲーム』を見て、新たな可能性を感じたようである。
《今回は『特別賞』を設けます、その受賞作品は・・・・『ゲーム開発部』の『テイルズ・サガ・クロニクル2』です》
自分達の作品、『テイルズ・サガ・クロニクル2』が異例の『特別賞』に選ばれた事が発表された。
「えぇ、嘘っ!?」
「何が起きてるの・・・・?」
驚く才羽姉妹に、審査員が説明しだす。
《レトロ風と言う時代を超えたコンセプト、常識と縛られず次々と想像を超えていく展開、一見ソレらとマッチしそうにない不可思議な世界観、と、最初は困惑の連続でしたが・・・・新しい世界を旅して、一つ一つ新たな絆を結びながら、魔王を倒しに行く・・・・そう言ったRPGの根本的な楽しさが、しっかりと込められた作品だと思います。プレイしながら、かつて初めてゲームに夢中になった頃の思い出を、鮮明に思い出しました。そう言った点を評価して、この作品に・・・・今回、『ミレニアムプライス特別賞』を授与します!》
「え・・・・あ・・・・」
思いも寄らなかった展開に、『ゲーム開発部』の面々は理解が追いつかず、困惑しているとユウカが笑顔で声を発する。
「本当におめでとう! その、実は私もプレイしてみたの。決して手放しに面白かったとは言えないけど・・・・良いゲームを遊んだ後の、あの独特な感覚を味わえた」
ーーーーガチャッ。
「モモ、ミド! アタシも『TSC2』やってみたよ、スッゴイ面白かった! 今ネット上でも大騒ぎだよ!」
『ドブル!』
『ポリィ!』
どうやらユウカも『テイルズ・サガ・クロニクル2』をプレイしていたようで、恥ずかしそうに感想を述べていると、マキとドーブルとポリゴンも入ってきて『授賞おめでとう!』とドーブルの筆で描いた横断幕を広げて見せ、更に話し出す。
「『ヴェリタス』の調べだと、有名アイドルの名前より、『TSC2』の検索数の方が多くなってるってさ」
「ほ、ホントに・・・・?」
「確認しました」
未だ困惑しているミドリに、アリスが報告しだす。
「3時間前にアップした『テイルズ・サガ・クロニクル2』は、先程までダウンロード7705回、合計1372個のコメントが付いていましたが・・・・『ミレニアムプライス』の発表以降、約26秒間でダウンロード回数が1万を超えました」
「!?」
「コメントも約500個追加、言葉のニュアンスからして否定的・疑惑のコメントは242個、肯定的・期待のコメントが191個、残りは不明、あるいは評価を保留にしているコメントです」
「え、あれ・・・・? そ、そしたら私達・・・・結局ダメって事!?」
「ううん、そんな事は無い」
アリスの報告に、ミドリは不安そうな顔になるが、ユズが違うと言う。
「ユズちゃん・・・・?」
「・・・・・・・・」
ユズは自分のスマホロトムでもコメントを検索すると、顔を綻ばせながら、全員に見せた。
「見て、今同率で、1番多くの共感を貰ってる、3つのベストコメント、最後の方にはあの『M2』って人のコメントが入ってる・・・・」
[実際にプレイするかどうか、最初は散々迷いました・・・・でも今はこう思います。このゲームに出会えて、良かったです]
[コレまで〈ミレニアム〉に対して、偏見を持ってしまっていました。冷静さと合理性しか無いという〈ミレニアム〉の生徒達への偏見は、今回の『ミレニアムプライス』と『テイルズ・サガ・クロニクル2』を通じて、完全に無くなったと断言できます]
[ゲームと言うものが何故こんなにも多くの人達を魅了するのかをこのゲームをプレイする事で理解した。確かに稚拙と思える部分はあるが、まるで別の世界に行ったかのような気持ちになり、私の心に初めて高揚感と言う感情をもたらせてくれた。このゲームにやっている内に、開発者である生徒達の努力と情熱を感じた。もしまた新しいゲームが作られたら、またプレイしてみたいと心から願います]
「・・・・!」
「えっと・・・・って言う事は、廃部にはならないんだよね!」
『プラプラ!』
『マイマイ!』
ミドリが目を見開き、モモイとプラスルとマイナンがユウカに廃部の事を尋ねる。
「ええ、そうよ。あ、でもあくまで『臨時の猶予』だから。正式な受賞ではないし、生徒会‹セミナー›はまた来学期まで・・・・『ゲーム開発部』の部室の没収及び廃部を、『保留』する事にしたの」
『特別賞』を受賞した事で、ユウカは『ゲーム開発部』の廃部を来学期まで保留にするという決定をしたと全員に告げた。
“(ありがとう、“ミュウツー”)”
そして先生は、『M2』、『シャーレ』で先生のスマホを使って隠れてプレイしている友人に感謝した。
「えっと、それから・・・・。その・・・・」
「ん?」
「・・・・ご、ごめんなさい。ここにあるゲーム機の事、ガラクタって言って・・・・アナタ達のお陰で思い出したわ。小さい頃に遊んでた、色んなゲームの事を。久しぶりにあの頃の・・・・新しい世界で旅する楽しさを感じられた」
『・・・・・・・・』
『ブイ〜!』
『ベイ〜!』
ユウカが気まずそうに、以前の自分の発言を謝罪し、ソレを見て『ゲーム開発部』は面食らい、サーナイトも小さく笑みを浮かべながら、ちゃっかり先生の側に行こうとするが、イーブイとベイリーフが威嚇して近づかせないようにした。
「・・・・ありがとう。それじゃあ、部室の延長申請とか部費の受取受理とかは必要だから、落ち着いたら生徒会室に来てね。じゃ、また後で! 行くわよ、サーナイト!」
『サナ』
そしてユウカは早口で、申請の話をしてサーナイトを連れて、足早に部室から出てしまった。
「じゃ、じゃあ・・・・!」
「・・・・!」
「や・・・・」
「やったああああぁぁぁぁっ!」
『『『『『『『ーーーー!!!』』』』』』』
「良かった・・・・!」
「やった・・・・嬉しい・・・・!」
『チュラ』
『カルゥ』
「???」
正式に部の存続が決まった事が分かり、アリス以外の『ゲーム開発部』だけでなく、ピカチュウ達も喜びを爆発させ、アリゲイツを中心にラインダンスする。
ただ、アリスだけは状況を良く呑み込めていないようで、その場でキョロキョロと視線を泳がせていた。
「え、えっと・・・・」
「アリスちゃん! 私達、『特別賞』を受賞したんだよ! この場所も、私たちの部室のまま!」
「えっと、つ、つまり・・・・。アリスとデデンネはこれからも・・・・皆と一緒にいて、良いのですか・・・・?」
「「うんっ!」」
「これからも、よろしくね・・・・!」
「・・・・・・・・」
ミドリの説明で、漸くアリスも事態を呑み込み、
「私も・・・・私も、嬉しいです」
『デデン』
喜びの涙を零し、デデンネはその涙を優しく拭った。
「アリスちゃんっ!! デデンネッ!!」
『マイナン!』
「私達・・・・っ!!」
『プラァ!』
「コレからも、ずっと一緒だよ!」
『デンチュ!』
「・・・・はい!」
『デデンネ!』
「コレからも、よろしくお願いします・・・・!」
太陽のように輝く笑顔を浮かべて、アリスはそう言った。
“ーーーーソレじゃ、お祝いしようか! 私が奢るよ!”
『やったぁぁぁぁー!!』
先生と共に、お菓子や料理の材料を買いに『ゲーム開発部』は外へと向かった。
“・・・・・・・・・・・・”
しかし、先生の胸中では、未だに『奇妙な違和感』が消えていない。
この『『ゲーム開発部』の廃部騒動』。『『G.Bible』の所在』。『アリスの存在』。『『鏡』奪還作戦での出来事』。更に言えば『『C&C』とのバトル』。この全てがまるで、『何者』かの手の平の上にいるかのような感覚が常に付き纏っていたのだ。
いっそマグマラシ達御三家を配備しておこうかと思ったが、御三家達の本来の役割は、『先生不在の間の『シャーレ』の防衛』である。リザードン達の方は〈アビドス〉の事情もあったので特別に許可されたが、今回はそうはいかない。
もしこの『違和感』が、後に『ゲーム開発部』の皆を、アリスを危機に晒してしまうのではないかと、言いようのない『不安感』を感じてしまうのであった。
ー???sideー
[・・・・・・・・]
そして、先生と『ゲーム開発部』の皆が宴会をする為に外へと買い物に行き、無人となった『ゲーム開発部』部室では。
[ーーーーデータ復旧率98.00%]
『G.Bible』を移したモモイのゲーム機が、独りでに動き出す。
[システム作動・・・・準備完了]
ゲームの画面が真っ赤に染まった。
“プログラムをセット・・・・・・・・”
すると画面に『Divi:Sion』と表示される。
[Divi:Sion・・・・・・・・]
すると、『誰』かの声が発せられる。
[AL-1S・・・・いえ・・・アリス・・・・私の・・・・私の、大事な・・・・・・・・&%%&%’”&’#!!]
この言葉は一体、誰の言葉で、一体、誰なのだろうか・・・・。
ー先生sideー
『ゲーム開発部』の皆とパーティーをした翌日。
先生は『ひでん:しおスパイス』を届けようと、久しぶりに〈アビドス〉に赴くと、リザードン、カメックス、フシギバナに歓迎され、『アビドス対策委員会』の皆と久しぶりに交流した。
セリカが早速ミライドンの餌食になり、マグマラシ達がリザードン達と手合わせし、シロコが「先生は暫く来なかった分、私達を甘やかすべき」と詰め寄り。『しおスパイス』を食べたコライドンが大ジャンプをした後、アヤネを舐め回したりし、ソレを見てホシノとノノミがカラカラと笑っていた。
そして、セリカのヤミラミ(色違い)が路地裏とか『アビドス砂漠』で『とあるアイテム』を拾っており、ソレらを『シッテムの箱』で解析した。
そしてその幾つかが対策委員会に預けられ、残りは先生が預かる事になった。貰った『アイテム』の1つは、
「ヒフミちゃんにお礼としての届けて欲しい」
とホシノ達は言っていた。
そして、『アビドス対策委員会』が面白半分で応募した『懸賞』で『ポケモンのタマゴ』を当ててしまい、ソレを先生に贈られた。先生が孵して育ててもいいし、他の生徒にプレゼントしても良いとホシノ達が言い、先生は快く受け取ると、対策委員会と柴関ラーメンを食べに行った。
後に、先生が貰い受けた『ポケモンのタマゴ』と、『ヒフミへのプレゼント』とソレらの『アイテム』が、次に先生に待ち受けている仕事場、〈トリニティ総合学園〉での騒動、そしてーーーー『エデン条約』で活躍する事を、この時は誰も知らない。
次回、『エデン条約編』がスタート。