ポケモンアーカイブ   作:BREAKERZ

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さぁ、長い授業が始まる・・・・。


エデン条約編 第一章
夢の中の邂逅と新たな部活動


ー先生sideー

 

ソコは、謎の空間。先生の目の前にいるのは、肩を出した真っ白い制服を着て、手には萌え袖となっており、頭に黄色い狐耳が生えた生徒、何故か先生はその名を理解した。

その生徒の名はーーーー『百合園セイア』であると。

 

「・・・・つまる処。『エデン条約』というのは、『憎み合うのはもうやめよう』という約束。〈トリニティ〉と〈ゲヘナ〉の間で、長きに渡って存在してきた、確執にも近い敵対関係。ソコに終止符を打たんとするもの」

 

『セイア』は、今〈キヴォトス〉で注目されている〈トリニティ〉と〈ゲヘナ〉で結ばれる『エデン条約』の事を話した。

 

「互いが互いを信じられないが故に、久遠に集積していくしかなかった憎悪を解消する為、ソレに代わって新たに信頼を築き始めようとするプロセス。より簡単に言おうか、つまりはゲヘナとトリニティの平和条約だ」

 

『エデン条約』については、先生も以前から注目していた事案であるが、詳しくは知らなかったので『セイア』の説明はとても助かっていた。

 

「ただ、『連邦生徒会長の失踪』をきっかけに、この条約は何の意味も持たなくなってしまった。『エデン』・・・・ソレは太古の経典に出てくる楽園の名。ソコにどんな意味を込めていたのかは分からないけれど、まあ連邦生徒会長のいつもの悪趣味だろうね」

 

半ば呆れているような口ぶりであった。『セイア』はテラスから見える夜空に燦然と輝く星々を見上げると、先生もソレに倣い夜空を見上げる。

 

「〈キヴォトス〉の、『七つの古則』はご存じかい? その『五つ目』は、まさに『楽園』に関する質問だったね』

 

確かソレは、『シッテムの箱』を起動させるのに使った気がする。

 

「『楽園に辿り着きし者の真実を、証明する事はできるのか』。他の古則もまたそうであるように、少々理解に困る言葉の羅列だ。ただ、一つの解釈としては、コレを『楽園の存在証明に対するパラドックス』であると見る事ができる。もし『楽園』というものが存在するのならば、ソコに辿り着いた者は、至上の満足と喜びを抱くが故に、永遠に楽園の外に出る事はない。もし楽園の外に出たのであれば、つまりソコは真の悦楽を得られるような『本当の楽園』ではなかったという事だ。であるならば、楽園に到達した者が、楽園の外で観測される事はない。存在を捕捉され得る筈がない」

 

『楽園』とは、己の心が真に満足感と幸福感を得られる場所。ならば、ソレは十人十色の形があるのかも知れない。10人中10人全員がソレで満足できるとは、先生には思えなかった。

 

「存在しない者の真実を証明することはできるのか? つまる処・・・・この五つ目の古則は、初めから証明する事ができない事に関する『不可解な問い』なのだよ」

 

まるで『答えのない問題』である。

 

「しかしここで同時に、思う事がある。証明できない真実は無価値だろうか? この冷笑にも近い文章を通じて、何か真に問いたい事があるのではないのだろうか?」

 

『セイア』はまるで『予言者』か『学者』のように言葉を紡いでいく。

 

「『エデン』・・・・経典に出てくる楽園‹パラダイス›。何処にも存在せず、探すことも能わぬ場所。夢想家たちが描く、甘い甘い虚像」

 

自嘲するかのように吐き捨てる『セイア』は先生に向き直って口を開く。

 

「どうだい? そう聞いてみると、この『エデン条約』そのものが、まさしくそんなもののように思えてこないかい?」

 

 

 

 

 

《ーーーーそれで、そんな話をする為に先生を呼び出したのですか?》

 

 

 

 

 

突然、先生の後ろから頭に響いた声に振り向くとソコにはーーーーミュウツーがいた。

 

“ミュウツー・・・・?”

 

《先生。ここはどうやら『夢の世界』、人間で言う所の『明晰夢』のような世界です。眠っている先生の意識に何者かが介入したようなので、私も介入させてもらいました》

 

ミュウツーがそう説明すると、『セイア』は興味深そうに見据える。

 

「成る程。君がミュウツー。人間の業によって生み出された悲劇のポケモンかい?」

 

《私を悲劇の登場人物扱いされるのは心外なのですが》

 

“彼は私の『友人』だよ”

 

「そうか・・・・先生。もしかしたらコレから始まる話は、君のような者には適さない、似つかわしくない話かもしれない。不快で、不愉快で、忌まわしく、眉を顰めるような…相手を疑い、仲間を疑い、同胞を疑い、師を疑い、前提を疑い、思い込みを疑い、真実を疑うような・・・・悲しくて、苦しくて、憂鬱になるような・・・・それでいて、只々後味だけが苦い・・・・そんな話だ」

 

『セイア』が目を伏せながら、コレから始まる出来事の事をザックリと説明する。

 

「しかし同時に、紛れもない『真実』の話でもある。どうか背を向けず、目を背けず・・・・最後のその時まで、しっかり見ていて欲しい」

 

ーーーーコツン・・・・コツン・・・・。

 

『セイア』はゆっくりと先生に近づき、先生の頬に手を添えた。

 

「それが、先生・・・・『この先』を選んだ、君の義務だ」

 

最後にそう言って、セイアはどこかへと消えていった。

 

“・・・・ミュウツー。どうやら『Xデー』の前に、やらなきゃいけない事ができたみたいだ”

 

『・・・・分かりました。間もなく夢も覚めます。何が起こるか、少し楽しみですね』

 

そう言うと、先生とミュウツーがいた空間、夢の世界が真っ白に染まっていったーーーー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして・・・・奇妙な夢から数週間後ーーーー。

 

「ーーーーもう嫌っ!!」

 

突然、教室にいる“四人の生徒”の1人が、頭を抱えて叫んだ。

 

「こんな事やってらんない! 分からない! つまんない! めんどくさい!!」

 

『ヘラヘラ・・・・』

 

がなり立てる生徒に、パートナーのポケモンは「まぁまぁ」と言わんばかりに抑えた。しかし、その生徒は全く収まらず、先生を指差した。

 

「ソレもコレも、全部先生のせい!!」

 

“えぇ、私・・・・”

 

『ピカァ・・・・』

 

『カルゥ』

 

ーーーースパァンッ!

 

「あいたぁ!!」

 

先生を指差して喚く生徒に、先生とピカチュウは困った顔をし、ルカリオが手に持っていたハリセンでその生徒の頭を叩いた。

 

「もう、『コハルちゃん』。そんな無茶苦茶な事を言ったら、先生が困ってしまうでしょう? あくまで先生は私達を助ける為に来てくださってるんですし」

 

『ジュッペッペッペッペッ♪』

 

もう1人の生徒が注意すると、パートナーのポケモンがケラケラと笑った。

 

「あくまで先生は私達を助ける為に来てくださってるんですし・・・・そもそも勉強が分からないのも試験に落ちたのも、コハルちゃん自身のせいで・・・・」

 

「うっ・・・・!! わ、私は『正義実現委員会』の一員だから! ソレで、授業に出られない事が多くて・・・・そう! そのせいなの!」

 

『コハル』と呼ばれた生徒は一瞬押し黙ったが、すぐに猫のような目になって言い訳を並べた。

 

「ソレは他の『正義実現委員会』のメンバーも同じだ。でもココに来ているのは『コハル』だけ」

 

『リュウ』

 

と、他にもいた生徒が一時勉強を中断して、脱皮した『パートナー』をメジャーで測った後、成長記録を勉強に使っているノートとは別のノートに書きながら『コハル』にそう言った。

 

「・・・・////」

 

その生徒にも言われ、『コハル』は顔を紅くして今度こそ黙ってしまった。

 

「成る程。つまり『アズサちゃん』が言おうとしているのは、只々『コハルちゃん』がおバカさんだからですよ、と言う事で合ってますか?」

 

「まあ、ソレも強ち間違ってはいない『ハナコ』。仕方ないものは仕方ない、人生は往々にして虚しいものだ」

 

「確かに人生は苦痛の連続ですからね・・・・そう言う事もあります」

 

「ああもう、うるさいなぁっ!? そんな事言ったらアンタ達も皆一緒じゃん! 私がバカならココにいる全員バカでしょバーカ!!!!」

 

『ヘラクロ!!』

 

もう1人の生徒、『ハナコ』と呼ばれた生徒と『アズサ』と呼ばれた生徒が、何やら哲学的な話をしていると、『コハル』が爆発して立ち上がり、『パートナー』が羽交い締めして抑えた。

 

「あ、あはは・・・・えっと、ソレはその・・・・」

 

そう言われると反論できないで、最後の1人が苦笑するーーーー『阿慈谷ヒフミ』である。

 

『ガルラ』

 

ヒフミのパートナーであるガルーラが「落ち着きな」と言いたげに、『コハル』の頭を指一本で抑えて座らせる。

 

「な、何も間違ってないでしょ? バカだからココにいるんでしょ!?」

 

ガルーラに座らされても、『コハル』は止まらず、周りの皆を指差していく。

 

「アンタも!」

 

ヒフミを。

 

「アンタも!!」

 

『ハナコ』を。

 

「アンタも!!!」

 

『アズサ』を。

 

「ーーーーアンタもっ!!!!」

 

“私は一応、先生なんだけどな・・・・?”

 

遂には先生まで指差した。

 

「あう・・・・こ、『コハルちゃん』、ちょっと落ち着いて・・・・」

 

『ガラル! ガルララ!』

 

ヒフミが落ち着くように言い、ガルーラも「『コハル』! いい加減にしな!」と言いたげに声を上げる。

 

「落ち着いてなんていられないわよ! “皆仲良く『退学』になりそうな”、こんな状況で・・・・!」

 

そう言うと、コハルは頭を抱えて項垂れた。

 

「もし『退学』になったら・・・・せ、『正義実現委員会』のメンバーじゃ、なくなっちゃう・・・・うぅ・・・・」

 

『ヘラクロ』

 

涙を浮かべる『コハル』の背中を、『コハルのパートナー』が優しく擦ってあげた。

 

「勿論私も、『退学』するつもりはない。何をしてでも、例え惨めな思いをしてでも、乗り越えてみせる」

 

『リュウリュウ』

 

『アズサのパートナー』を首に掛けながら、『アズサ』が断言するように言った。

 

「まあまあ、『退学』になったからと言って何もかも終わりという訳ではありませんから、気楽に行きましょう。寧ろ・・・・」

 

『ジュペ・・・・』

 

『ハナコ』が何か言いそうになると、『ハナコのパートナー』が、何故か『スピーカー』を手に持ったその時ーーーー。

 

 

 

 

「あ、あのっっっ!!」

 

 

 

 

と、ヒフミが声を張り上げた。

 

「「「・・・・・・・・」」」

 

『『『・・・・・・・・』』』

 

ヒフミの声に、思わず3人と『パートナー』達は黙った。

 

「あ、えっと、その・・・・こうして集まっているのは、そもそも退学せずに済むようにする為ですし・・・・取り敢えずその、今は皆の知恵を寄せ合って、何か良い方法を探さないと・・・・」

 

何とか皆を纏めようとするヒフミ。

 

「そうしないと、“1週間後には本当に仲良く『全員退学』”、何て事に・・・・」

 

「『知恵を寄せ合う』・・・・成る程、悪くないのですが、あまりグッと来る感じではありませんね。もう少しこう、何か・・・・」

 

すると、『ハナコ』が弱冠頬を紅くして返そうとする。

 

「ココは例えば、そうですね・・・・『(ピーーーー!)』、と言う形で如何でしょう? って、『ジュペッタ』。人の台詞にピー音を使ったら、まるで私が如何わしい事を言ったようではないですか?」

 

『ジュペ』

 

『ハナコ』がジッと半眼で見て言うと、『パートナー』である『ジュペッタ』は素知らぬ顔をした。

 

「? 『ハナコ』は何を言おうとしていたんだろうか『ミニリュウ』?」

 

『リュウ??』

 

『アズサ』と『パートナーのミニリュウ』は首を傾げた。

 

「な、何を言ったの!? ピー音を使うって事は下ネタ!? 下ネタはダメ! 禁止! 死刑!////////」

 

『ヘラクロス』

 

「ちょっと『ヘラクロス』止めないで! 『ハナコ』に一発張り飛ばして・・・・!」

 

顔を真っ赤にした『コハル』を、『パートナー』である『ヘラクロス』が羽交い締めした。

 

「ああ、ならば実践してみましょうか。『コハルちゃん』、もう少しこう、脚を開いていただいて・・・・」

 

「・・・・え? えっ!?」

 

そう言って、『ハナコ』は席を立ち、ジリジリと『コハル』に近づくと、『ヘラクロス』は巻き込まれたくないのか、『ジュペッタ』と共に距離を置き、『コハル』は急な展開に戸惑う。

しかし『ハナコ』はそんな『コハル』に構わず近寄ってくる。『ジュペッタ』と『ヘラクロス』は、何処からか『モザイクまみれの仕切り』を運んでくると、『コハル』と『ハナコ』の姿を隠す。

 

「や、やめて! 近づかないで! 知らないし分かりたくもないしまだ早いからっ!! わっ、私が悪かったです! 先生や先輩相手にタメ口ですみませんでした! もう許してやめてっ、ソレはまだ嫌ぁーーー!!!!」

 

『ジュッペッペッペッ♪♪』

 

仕切りの向こうから『コハル』の悲鳴が上がり、『ヘラクロス』は目を閉じて無心の佇まいとなり、『ジュペッタ』はチラッと仕切りの向こうを覗いてケラケラと笑っていた。

 

「・・・・・・・・」

 

『アズサ』は気になったのか、『ミニリュウ』を首に掛けたまま、『ジュペッタ』と共に仕切りの向こうを覗いた。

 

『リュウ?』

 

「・・・・成る程、そう言う『制圧術』も有るのか。白兵戦で使えそうだ・・・・勉強になった。ただ、無駄な動作が多い気がするな。私なら後2テンポ前の段階で、関節をきめている」

 

『ガルガ、ガルガルーラ・・・・』

 

『ミニリュウ』は良く分かっていない感じだったが、『アズサ』は何やら違う解釈をしてしまったようである。ガルーラが「『アズサ』、コッチに来な・・・・」と言いたげに『アズサ』を摘み上げ、自分のお腹の袋に入れて仕切りから離れた。

 

「・・・・せ、先生ぇ・・・・」

 

“・・・・うん、私達も頑張るね”

 

『ピカァ・・・・』

 

『カルゥ・・・・』

 

泣きつきそうになるヒフミに、先生とピカチュウは苦笑して応え、ルカリオは頭痛を感じているのか頭を押さえた。

 

「よ、よろしくお願いします・・・・。このままだと、本当に・・・・私達皆、『退学』に・・・・」

 

ヒフミは頭を抱えそうになっていた。

教室の外では、子ガルーラと先生のイーブイ(色違い)と、『新しい御三家』が仲睦まじく遊んでいた。

 

 

 

 

 

〜話の発端は、数週間前に遡る〜

 

 

 

 

 

『ゲーム開発部』との楽しい日々が終わってから、先生はマグマラシとベイリーフとアリゲイツの3匹に『シャーレ』の防衛を任せた。その際、ベイリーフが先生と離れたくないと【つるのムチ】で先生に巻き付き、納得させるのにかなり時間が掛かった。

リンから更に新しい『御三家』を貰い受け、〈レッドウィンター連邦学園〉にて、『連河チェリノ』と『パートナー』である『がんめんポケモン・オニゴーリ』と『せきたんポケモン・セキタンザン』に出会い、交流を深めていった。

そして、先生はある日の夜にて、『セイア』との出会いがあった夢が気になり〈アビドス〉で世話になった〈トリニティ〉の『ティーパーティー』に遅ればせながらの挨拶と、『落第生への特別授業』の依頼を受けにやって来た。

 

「ーーーーこんにちは、先生。こうしてお会いするのは初めまして、ですね。〈トリニティ〉の生徒会『ティーパーティー』の『ホスト』、『桐藤ナギサ』です。そしてコチラはパートナーの『イエッサン』。『タブンネ』。『ポットデス』です」

 

『イエッサン』

 

『タブンネ』

 

『ポット』

 

〈トリニティ〉・テラスにて、長いテーブルの下座に座る先生と、右肩にピカチュウが、左肩にイーブイ(色違い)乗り、傍らにはルカリオが、新たな御三家を頭や両肩に乗せて立っていた。

ルカリオの頭に乗っているのは、オレンジ色の大きなヒヨコ。頭には3本の毛が跳ねており、小さな嘴や大きな眼など、実に愛くるしい容姿をしている『ひよこポケモン・アチャモ』。

右肩に乗っているのは、両生類のような姿で水色の体色を持ち、シッカリとした四肢や頬には目立つエラなど、可愛らしくも独自性の強いフォルムをした『ぬまうおポケモン・ミズゴロウ』。

左肩に乗っているのは、黄緑色の体色に緑色の尻尾をした二足歩行のヤモリのようなポケモン、『もりトカゲポケモン・キモリ』。

 

そして先生の席の向こうにいる上座に座る『ティーパーティー』の代表、『ホスト』であるナギサが挨拶すると、執事とメイドのように後ろに控えていたイエッサン(♂)とタブンネ、ソレとタブンネに持たれているポットデスがペコリと頭を下げた。

 

“〈アビドス〉の1件では助かったよ。改めて、ありがとう”

 

「いえいえ。そしてコチラは、同じく『ティーパーティー』のメンバー、『聖園ミカさん』と、『パートナー』である『イエッサン』と『デカヌチャン』と『ガラルギャロップ』です」

 

ナギサが自分の近くの席に座る生徒を紹介した。『ティーパーティー』の所属を意味する白い制服と制服越しのスタイルの良さ。ピンク色の長髪の毛先は白く、側頭部でお団子に結わえており、腰には大きくフワフワとした白い羽、天真爛漫な笑顔がよく似合っており、『ヘイロー』はまるで星系のようである。

そしてその『ミカ』の後ろでは、ナギサのイエッサンとは少し頭部が違う『かんじょうポケモン・イエッサン メスのすがた』がメイドのように控えており。

他にも、ピンク色の小さな身体に大量の髪の毛、むっちりした肌質も相まって、さながら桃色の原始人だが、大きく立派な鋼鉄ハンマーも軽々と持っている『ハンマーポケモン・デカヌチャン』

純白の身体で、鬣は青緑と薄紫色のパステルカラーの毛先がカールにしたボリューミーなロングヘア。足からも生えた毛はさながら雲を纏っているかのようであり、頭に長い螺旋状の角を付けた『いっかくポケモン・ギャロップ(ガラルのすがた)』がミカの後ろに控えていた。

 

「♪」

 

『『『(ペコッ)』』』

 

ミカは可愛く笑みを浮かべて小さく手を振り、イエッサン(♀)とデカヌチャンとガラルギャロップは小さく会釈した。

 

「改めまして、お初にお目にかかります。私達が〈トリニティ〉の生徒会、『ティーパーティー』です」

 

目の前にいるこの2人の少女達が、〈トリニティ総合学園〉の生徒会、通称『ティーパーティー』の代表‹ホスト›であった。

 

「へー、コレが噂の先生と手持ちポケモン達かー。あんまり私達と変わらない感じなんだね?」

 

ミカは席を立って、初めて見る先生をジロジロと値踏みするかのように見る。

 

「なるほどー、ふーん・・・・うん、私は結構良いと思う!! ナギちゃん的にはどう?」

 

「・・・・ミカさん、初対面でそういった話はあまり礼儀がなっていませんよ。愛が溢れるのは結構ですが、時と場所は選びましょうね」

 

そんなミカの行動を見て、ナギサはミカの行動を注意する。

 

「うぅっ、それはまあ確かに・・・・・。先生、ごめんね? まあとりあえず、これからよろしくって事で!」

 

“こちらこそ、よろしく”

 

「・・・・・・・・」

 

「ふふっ☆」

 

ナギサに注意されたミカは、形だけとばかりに先生に謝り、ナギサはミカの行動にため息をつく。ナギサのその反応を見ても、ミカは態度を変えることは無く、含み笑いをあげるだけであった。

 

「・・・・トリニティの外の方が、この『ティーパーティー』の場に招待されたのは、私の記憶では先生が初めてです。普段は、トリニティの一般の生徒たちにも簡単には招待されない席でして・・・・」

 

「あー、何それナギちゃんちょっといやらしい! 恩着せがましい感じー!」

 

「・・・・・・・・失礼いたしました、先生。そういった意図は無かったのですが・・・・それはさておき、ミカさん?」

 

「あー・・・・ごめん、おとなしくしてるね。できるだけ」

 

自己紹介を終え、ナギサは先生を招待した経緯を説明すると、その合間にミカが茶々を入れる。ソレにどうやらイラっとしのか、ナギサは語気を強めて再びミカを注意した。

 

「・・・・では、あらためて。こうして先生をご招待したのは、少々お願いしたい事がありまして」

 

“お願い?”

 

「おぉっ、ナギちゃんいきなりだね!? もうちょっとこう、アイスブレイクとか要らないの? ちょっとした小粋な雑談とかは? 天気が良いですねとか、昨日は何を食べたのですかとか、ポケモン達の毛並みとか、どれだけのバトルの経験があるのか、とか、そういうの挟まないの? ほら、『ティーパーティー』って、基本的には社交界なんだし?」

 

「・・・・・・・・」

 

話に割り込んで茶々を入れるミカに、ナギサの睨むように目を細めて、片眉がヒクヒクと動き出す。

 

『『・・・・・・・・』』

 

『(カタカタ・・・・)』

 

イエッサン(♂)とタブンネが「抑えて抑えて」、と言いたげにナギサを抑え、ポットデスがポットに隠れて震えていた。

 

「そんな綺麗な目で睨んでも、コレは『ティーパーティー』としての在り方の問題なんだからダメー! キチンとしないと!」

 

「ミカさん、そういった事はあなたがホストになった際に追求してください。今は一応私がホストですので、私の方法に従ってくださいな」

 

「・・・・・・・・」

 

笑顔なのに圧力を放っているナギサに、思わずミカも少し黙った。

 

「・・・・まあ、お客様の前でこのような論争を広げるのもまた、望ましい姿ではない事は確かですね」

 

ミカが黙った事で、ナギサも再びお淑やかな笑みを浮かべて話を再開したようなので、先生も話を始めた。

 

“アナタ達が、〈トリニティ〉の生徒会長なんだよね?”

 

「おお、先生の方から空気を読んでくれた! ほら、ナギちゃん見た!? コレが大人の話術だよ! 自然な会話への誘導!」

 

「・・・・はい。仰る通り、私達が『トリニティ総合学園』の生徒会会長“達”です。『生徒会長達』というのは耳慣れない言葉かも知れませんね・・・・最初から説明すると、〈トリニティ〉の生徒会長は代々複数人で担っているものなのです」

 

「あれ、ナギちゃん無視? もしかして無視かなー? おーい?」

 

ナギサはミカの事を無視して説明を続けると、ミカが声を掛けるが無視する。

 

「昔・・・・『トリニティ総合学園』が生まれる前、各分派の代表たちが紛争を解決するために『ティーパーティー』を開いた事から、この歴史は始まりました」

 

「え、ひどっ・・・・クスン、私ちょっと傷ついた・・・・」

 

「『パテル』、『ファリウス』、『サンクトゥス』・・・・ソレらの三つの学園の代表を筆頭に『ティーパーティー』を開き、和解への流れが生み出されたのです」

 

ミカが鳴き真似をするが、ナギサは一切構わず話を続けた。

 

「ナギちゃんが本当に無視した・・・・嫌がらせだぁ・・・・」

 

『サン』

 

『ブルル・・・・』

 

『チャン』

 

「皆ぁ酷いと思わない? 私達一応10年来の幼馴染だよ? こんな事今までに・・・・結構あったかもだけど・・・・」

 

無視を決め込むナギサの態度に、ミカは傷ついたと言ってあからさまに泣いているような演技をしてみせる。それでも無視を決めるナギサは、話を続ける。

 

「・・・・その後から、〈トリニティ〉の生徒会は『ティーパーティー』と言う通称で呼ばれるようになり、各派閥の代表たちが順番に『ホスト』をーーーー」

 

「うぇぇ〜ん、デカヌちゃん、イエッちゃん、ギャロちゃん、ナギちゃんが無視してるよぉ〜」

 

「ーーーーああもう五月蝿いですね!?」

 

「ひえっ・・・・」

 

『イエッ!』

 

『タブン!』

 

『(ガタガタガタガタッ・・・・!)』

 

しつこく泣き真似をするミカに、遂にナギサの堪忍袋の緒が切れてしまい、その様子を見てミカはやり過ぎたと思い顔を青くし、イエッサン(♂)とタブンネが抑え、ポットデスは更に震えていた。

 

「今、私が説明しているんですよ!?」

 

「う、うん」

 

「それなのにさっきからずっと! 横でぶつぶつぶつぶつと・・・・!」

 

“な、ナギサ・・・・落ち着こう・・・・”

 

「どうしても黙れないのでしたら、その小さな口に・・・・」

 

先生が落ち着くように言うが、ナギサは止まらず、何故かテーブルに置かれたロールケーキを手に取ると、

 

「ロールケーキをブチ込みますよっ!?」

 

ミカの口にロールケーキを突き立てた。

 

「・・・・・・・・」

 

『『『・・・・・・・・』』』

 

“・・・・・・・・”

 

『・・・・・・・・』

 

『『『『『・・・・・・・・・』』』』』

 

そのあまりの剣幕に、ミカも手持ちポケモン達も、先生もピカチュウ達も、閉口してしまう。

 

「・・・・・・・・」

 

『『『・・・・・・・・』』』

 

ナギサは剣幕の顔のまま黙り、ナギサの手持ちポケモン達も「あちゃ~」と言わんばかりに肩を落とした。

 

「・・・・あら。・・・・私ったら、何と言う言葉遣いを・・・・」

 

我に返ったナギサが、口に手を当てて座り直した。

 

「・・・・失礼しました、先生・・・・ミカさんも」

 

「いやー、怖い怖い・・・・」

 

“(中々本題に入らないな・・・・)”

 

一応落ち着いたナギサは、先ほどの言葉遣いを2人に謝るが、ミカの方は大して反省していないようであり、先生は中々本題に入らない、『ティーパーティー』の空気に呑まれていた。

 

「・・・・そろそろ本題に入りましょうか。私達が先生にお願いしたいのは、簡単な事です」

 

「簡単だけど、重要な事だよ」

 

「はい、そうですね。・・・・『補習授業部』の、顧問になっていただけませんか?」

 

“『補習授業部』?”

 

そして漸くナギサが本題に入った。『ティーパーティー』の『落第生への特別授業』、『補習授業部』の顧問になって欲しいとの事であるようだ。

 

「はい。つまり、『落第』の危機に陥っている生徒達を救っていただきたいのです。『部』という形ではありますが、今回は顧問というより『担当の先生』と言った方が良いかもしれませんね。〈トリニティ総合学園〉は、昔からキヴォトスにおいて『文武両道』を掲げる、歴史と伝統が息づく学園です。それなのにあろう事か、よりにもよってこの時期に、成績が振るわない方がなんと4名もいらっしゃいまして・・・・」

 

「私達としてはちょっと困ったタイミングでっていうか・・・・」

 

ざっくばらんに言うと、『〈トリニティ〉の成績が悪い生徒が4人もいるので、先生にはそれを何とかして欲しい』、との事のようだ。

普段ならば大した問題ではないようだが、今の〈トリニティ〉の状況的に宜しくないようだ。

 

「『エデン条約』の件で、今はバタバタしててね。あの子達の件も何とか解決しないといけないんだけど、人手も時間も足りなくって・・・・」

 

ミカも困ったような顔をして説明すると、すぐにパァッと顔を明るくする。

 

「その時にちょうど見つけたの! 新聞に載ってた『シャーレ』の活躍っぷりを! 迷子のポケモン探し、街の掃除、宅配便の配達から、悪徳企業‹カイザーコーポレーション›の成敗まで、八面六臂の大活躍! この『シャーレ』になら、“きっと面倒事を任せられそうだなって”!」

 

“・・・・・・・・“

 

『・・・・・・・・』

 

どうやら今トリニティでは、先生も警戒している『エデン条約』にかかりきりらしい。ミカはそんな忙しい状況で、『補習授業部』の仕事を任せる、否、押し付ける為に先生を呼びつけたようだ。

その遠慮なしの言いように先生とピカチュウ達も唖然としてしまった。

 

「・・・・『面倒事』なんて言ってはいけませんよ、ミカさん」

 

「ま、まあでも、ある意味本当のことでもあるし・・・・それに、『先生』なんでしょ? 今は皆BDで学習する時代だし、学校の職員とか、教授とかならまだしも、『先生』って概念は珍しいんだよね。先の道を生きると書いて『先生』・・・・『導いてくれる役割』って事だよね? 尊敬の対象、或いは生きる指針として皆に手を差し伸べ、導く・・・・『補習授業部の顧問』として、これはピッタリだなって思って!」

 

「噂では、『尊敬』と言う言葉が合うかどうかについては、意見が割れているようですが・・・・」

 

「あー、そうだったね。報告書によって全然違うって言うか・・・・まあ、コレは先生の名誉の為に何も言わないでおくか」

 

“一体どんな噂が流れているのかは、聞かないでおこう・・・・”

 

大仰に『先生』の事を言うミカに、ナギサは苦笑しながら窘め、ミカは何やら気になる事を言ったが、先生は聞かなかった事にした。

 

「兎に角! 今はちょっと忙しい事もあって、是非先生に、この子達の事を引き受けて欲しいの!」

 

「もう少々説明しますと・・・・この『補習授業部』は常設されているものではなく、特殊な事態に応じて創設し、救済が必要な生徒達を加入させるものです。少々特殊な形ではありますが、急ぎと言う事もあり、『シャーレ』の超法規的な権限もお借りつつ・・・・と言った形で、ですね」

 

ナギサが『補習授業部』の設立について説明する。

 

「色々とややこしいですが、本質はあくまで『成績を振るわない生徒達を救済する事』にあります。だからこそ、こういった特殊な形で創設が許された理由ですが・・・・如何でしょう、先生? 助けが必要な生徒達に、手を差し伸べていただけませんか?」

 

ナギサは申し訳なさそうに、先生に補習授業部の顧問を頼むのであった。

 

“私にできる事であれば、喜んで”

 

元々、『エデン条約』の事が気がかりであった先生も、ソレが行われる〈トリニティ〉で仕事をするのは都合が良いので快く承諾した。

 

「やった! ありがとー先生!」

 

「・・・・ふふっ、きっと断らないでしょうとは思っていましたが・・・・」

 

先生の返答を聞いた2人は、先生の決断に喜ぶのであった。

 

「ありがとうございます。では、イエッサン」

 

ナギサが目を向けると、イエッサン(♂)が近づいてきて、名簿を先生に手渡し、ソレを受け取った。

 

「ソチラの方々が対象の生徒と手持ちのポケモンです」

 

「つまり、〈トリニティ〉のやっかーーーー」

 

「その表現は愛が足りませんよ、ミカさん。こう言いましょうか、〈トリニティ〉における『愛が必要な生徒達』」

 

「まあ呼び方は何でもいいけどねー」

 

ミカは名簿に載っている者たちを『トリニティの厄介者』と言いかけたが、ナギサに止められた。先生は名簿に目を通しすと、肩に乗ってるピカチュウとイーブイ、ソレとルカリオも目を通した。

 

“(あれ、この子って・・・・・)”

 

『(ピカァ)』

 

『(ブィ)』

 

『(カル)』

 

『(チャ?)』

 

『(キゥ?)』

 

『(ミズ?)』

 

アチャモ達御三家は知らないが、先生とピカチュウとルカリオとイーブイは、“知っている生徒の名前”を見て、目をパチクリとさせた。

 

「ん? 何か気になる子でもいた、先生?」

 

“・・・・ううん、何でもない”

 

名簿を見た先生は、ある人物のことを見つける。ミカは先生の様子が変わった事を目ざとく見るが、先生は誤魔化した。

 

「詳しい内容についてはまた追ってご連絡いたします。他に気になる点はございませんか?」

 

“ソレじゃ2つ程。先ずは、『エデン条約』って、結局何?”

 

「・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・」

 

先生が知る『エデン条約』の情報は、『長年犬猿の仲だった〈トリニティ〉と〈ゲヘナ〉が和解する』、と言う、一般公開されている、『表向きの理由』だけなので、詳しく聞こうと質問すると、ミカとナギサは気まずそうに黙ってしまった。

 

「うーん・・・・それは、何て言えば良いのかなぁ」

 

「その説明には中々時間がかかってしまいますので、また後日お話しますね。一応、ソレなりに『内部機密』ということもありますし・・・・。ソレに、『補習授業部』の件とはそれほど関係のない事ですから・・・・」

 

ミカは歯切れの悪い言葉になり、ナギサの方は『補習授業部』の件とは関係ないと言って、この話を打ち切った。

 

“(やはり会って間もない大人に、そう簡単に教えられない、か)・・・・それならもう1つ。“『ティーパーティー』のもう1人の生徒会長は?””

 

「・・・・・・・・」

 

「ソレは・・・・」

 

今度はミカだけでなく、ナギサまで歯切れの悪い言葉を返してきた。が、ミカが口を開く。

 

「『セイアちゃん』は今、〈トリニティ〉にいないの。“入院中で”・・・・」

 

「本来であれば、今のホストはそのセイアさんだったのですが・・・・そういった事情で不在の為、私がホストを務めている所です」

 

先生も『あの夢』の後、〈トリニティ〉の『ティーパーティー』についてアロナに調べて貰ったが、『ティーパーティー』は『パテル』、『ファリウス』、『サンクトゥス』の3つの派閥が集まったものであり、生徒会長‹ホスト›も3人いる事も知っていたが、3人目のホスト、『セイア』の事は、2人は目を伏せて入院中だと答えた。

 

「元々『ティーパーティー』のホストは、順番でやるものだからね」

 

“そっか、早く良くなると良いね。・・・・今聞きたいのはこれ位かな”

 

「承知しました、また何かあれば聞いてください」

 

『セイア』の事情を聞いて、先生は彼女の体調を気遣う言葉をかけ、会合は終わりに向かう。

 

「では準備が整い次第、先生には〈トリニティ総合学園〉に派遣という形で来ていただくことにできればと。先生のご協力に感謝します、これで一安心です」

 

「じゃっ、またね先生。また会えるのかどうか分からないけどっ」

 

「そうですね。特に今は忙しい時期ですし、『ティーパーティー』の生徒会長がこうしてまたすぐに集まれるとも限りませんから」

 

「ふふっ、やっぱり忙しいんだ? ま、でも先生のお陰でナギちゃんの顔を見られたし、良かった良かった」

 

「はい、私もですよ。ミカさん」

 

「ふふっ」

 

幼馴染みの筈なのに、その笑顔は何処か余所余所しいと言うか、まるで『仮面』のようであり、纏っている空気もギスギスとしているように思えたが、ナギサは先生に向き直り、お淑やかな笑顔を向けた。

 

「では、これからよろしくお願い致しますね、先生。私も『ティーパーティーのホスト』として、先生をエスコートいたしますので」

 

“うん。よろしくね”

 

そう言って、先生はピカチュウ達と共に、『ティーパーティー』のテラスから立ち去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして翌日。先生は先ず、『補習授業部』の名簿にあった、見た事のある名前の生徒に会いに行った。そして・・・・。

 

“やっぱり・・・・!”

 

『ピカァ!』

 

『ルカァ・・・・!』

 

『ブイィ!』

 

『『『???』』』

 

その生徒を見て、先生とピカチュウとイーブイがその場でステーン、とすっ転び、ルカリオは頭痛を堪えるように頭を抑え、アチャモとミズゴロウとキモリは首を傾げた。

何故ならソコにいたのはーーーー。

 

「あ、アハハ・・・・こんにちわ、先生」

 

『ガルラ・・・・』

 

『カル・・・・』

 

〈アビドス〉で出会い、『カイザーコーポレーション』との激戦にも参加してくれた、『覆面水着団』のリーダー『ファウスト』こと、阿慈谷ヒフミとガルーラであった。

 

「あの、コレはその、やむを得ない事情がありまして・・・・」

 

『ガルラ』

 

「あうぅ・・・・」

 

言い訳しようとするヒフミの頭をガルーラが「反省しな」と言わんげに、片手で優しくグリグリした。




ミカの手持ちで、イエッサンはメス。パワー&フェアリータイプでデカヌチャン。カラー的にガラルギャロップが似合うと思いました。
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