今年も拙い文才の今作を宜しくお願いします!
ー先生sideー
補習授業部の皆はテストに合格するべく今日は勉強を続けている。アズサが途中で脱皮したミニリュウの成長記録を付ける為に中断したり、コハルが騒いだりしたが、順調に勉強は進んでいた。
「コハル、質問」
「うん、え? 私? 私に!?」
「そう、コハルに。今同じ所を勉強しているはずだ。この問題なんだけど・・・・」
「う、うん・・・・」
そんな中、アズサが分からない所をコハルに質問する。
コハル自身、自分に勉強を聞かれると思っていなかったのか驚いてしまう。
「・・・・あ、これ知ってる! コレは確かこうやって、下のところを90度になるように、線を引いて・・・・そうすると、この三角形とこの三角形が一緒、分かった?」
「・・・・成る程、そういう事か。助かった。コレは確かに、『正義実現委員会』のエリートというのも頷ける」
「・・・・!? そ、そうよ!エリートだもの!!・・・・も、もし何かまた分からなかったら、私に聞いても良いから。アズサはその、特別に」
「ありがとう、助かる」
人に頼られる事があんまり無かったのか、不安にしていたコハルは知っている問題だったのでアズサに教える。アズサはコハルのおかげで問題が理解できた為、褒めるとコハルは得意げになるのであった。
意図しているのか天然なのか、アズサは意外と褒め上手な所があるようだ。そしてその様子を見て、動き出す悪ノリ娘がいた。
「あらあら・・・・。流石『裸の付き合い』をしただけはあると言いますか、もう深い処まで入った仲なのですね・・・・♡」
「ちょっ、何言ってんの!? そういうアレじゃないから!?////」
「うん? ハナコも身体を洗ってほしいのか?」
「あ、あの、うぅ・・・・」
アズサとコハルが仲良く勉強している姿を見て、ハナコはいつも通りの茶々を入れる。そんなハナコの言葉にコハル(猫目&赤面)は過敏に反応し、アズサは的外れな事を言う、いつもと同じようなやり取りが展開された。
そして、それを見ている部長のヒフミは、ちゃんと勉強して欲しいと思っていたのだが、今が良い空気である事も察しており言い出せずにいた。
「あ、コハル。もう1つ聞きたい」
「ん? この問題は、えっと・・・・」
「コハルも知らない問題か?」
「うーんと、これ、確か参考書で見たような・・・・ちょ、ちょっと待って」
そしてアズサがまたコハルに別の問題を聞くが、問題の解き方を思い出せなかったのか、参考書を鞄の中から取り出そうとゴソゴソと鞄の中を漁る。
「確か持ってきてた筈・・・・」
そして、目当ての本を見つけたのか、勢い良く鞄から手を引き抜く。
「んしょっ」
そして、コハルが参考書だと思ってカバンの中から取り出したのはなんとーーーー。
ーーーードォォォォンン!!
エッチな大人の絵本、エッチな本、エッチ本、つまりは、エロ本であった。
『!!』
「?」
『??』
「!?」
『♪』
「!?」
『!』
『??』
“!!”
『!!??』
「この参考書に乗ってるのか?」
「うん、この参考ーーーー・・・・あれ?」
いきなり出てきたエロ本を見て、ヘラクロスは「あちゃ~」と言う顔になり、ヒフミとハナコ、ガルーラは驚いてしまい、ジュペッタは面白そうに笑う。一方アズサとミニリュウと子ガルーラはどんな本なのか分からないのか、エロ本を参考書だと思っていた。 先生とピカチュウ達も硬直してしまった。
「エッチな本ですねぇ」
「・・・・・・・・うわあぁぁぁっ!? な、なんでっ!?////////」
ハナコが指摘すると、エロ本を鞄から取り出してしまった事に気づいたコハルは、数秒程フリーズしてから大声を出しながら慌ててその本を隠す。しかし、そんなコハルの慌てっぷりを見て、浦和ハナコが黙っている訳はなく。
「コハルちゃん、それはエッチな本ですよね? まぁある意味参考書かもしれませんが。隠しても無駄です、『R-18』ってバッチリ書いてありましたよ?」
「ち、違う! 見間違い! 兎に角違うから! 絶対に違う!!」
「?」
『??』
ズイズイッと近づき、コハルの手に持っている本をエロ本だと指摘するハナコ。そしてその指摘を必死で否定するコハルであった。アズサとミニリュウは首を傾げていた。
だが、コハルの否定で誤魔化せたり、見なかった事にしてくれる程、浦和ハナコと言うエロ大好きな少女は生易しい相手ではない。
「私の目は誤魔化せませんよ、確実に『アレな事』をする本でした。それも結構ハードな・・・・。〈トリニティ〉でも、いえ、〈キヴォトス〉でも中々見る事ができないレベルの内容とお見受けしました。きっと肌と肌とが擦れ合い、敏感な部分を擦り合わせ、嬌声が飛び交い理性が飛び去るような・・・・! どうしてそのような本を持っているのですが? 確か校則でも禁止されていたと思いますが・・・・?」
「い、いや、そのっ・・・・こ、コレはホントに私のじゃなくて、えっと・・・・」
「でもそれ、コハルちゃんの鞄から出てきましたよね? それに『合宿所』まで持ってくるなんて・・・・お気に入りなのですか?」
ハナコはコハルの持っていた本を一瞬チラッと見ただけで、その内容を推測し、今まで見た事無い位のテンションで熱弁する。内容を言い当てられたコハル(猫目&赤面)はもはやタジタジであるが、ハナコに押されても自分の所有物だと認めなかった。
しかし、ハナコは全く引き下がる様子もなく、寧ろ追い討ちをかけるように、納得したように頷く。
「そうですか、あの真面目なコハルちゃんが、エッチな本を・・・・」
『ジュペ・・・・』
「・・・・いえ。成る程、そうですね。考えてみたらそんなに変な事でもありませんね?」
そしてハナコはエロ本を持ってきたコハルに、何故か感心していた。ジュペッタは暴走し始めたパートナーを見て、ルカリオからハリセンを借り、ガルーラが片腕をグルングルンと回してきた。
「予行演習もバッチリ・・・・つまり、合宿の為に必要なものなんですよね、コハルちゃん♡」
更にハナコは、コハルがエロ本で何かの予行演習の為に使うと結論を出した。
「こっ、これは違うんだってばああぁぁぁっ!!」
『ジュペペペペッ!!』
『ガルラ!!』
ーーーースパアアァァァンンッ!!
ーーーーゴォンッ!!
合宿所にコハルの絶叫と、「いい加減にせい!!」、「この歩く18禁娘!!」と言わんばかりにジュペッタの振り下ろしたハリセンとガルーラのゲンコツが響き渡るのであった。
「?」
『??』
「そ、その、ハナコちゃん・・・・その辺りで・・・・」
「・・・・やり過ぎてしまったかもしれませんね、本当にごめんなさい・・・・お話が合うかと思ったのですが・・・・」
「うぅ、うぅぅっ・・・・」
アズサとミニリュウは相変わらず首を傾げ、ヒフミも見てられなくなりハナコを止めると、頭に大きなタンコブを2つ、鏡餅のように重なるように作ったハナコは苦笑して、涙目になってしまったコハルに謝罪した。
◇
「(・・・・スン、スン)」
『ヘラクロ・・・・』
『ガルラ・・・・』
ハナコに詰め寄られてコハルはとうとう泣いてしまい、ヘラクロスとガルーラ、そしてヒフミが慰めて数分後。
「えっと、コハルちゃん・・・・。その、『正義実現委員会』としての活動中に差し押さえた品を、つい入れたままにしてしまった・・・・とか、そういう感じなんですよね?」
「・・・・うん。私、『押収品』の管理とか、してたから・・・・コレは、本当にその時のヤツで・・・・」
「成る程。そう言えば、〈トリニティ〉の『古書館の地下』には何やら、『禁書』が沢山積まれていると言う噂も聞きましたし・・・・『正義実現委員会』がそう言ったものも含めて、色々と差し押さえているとしても何も不思議ではありませんね」
ヒフミは彼女を慰める為に、エロ本を持っていた理由を推測してみる。そしてやり過ぎたと思ったハナコは罪滅ぼしかヒフミの言葉を補足した。
「うーん・・・・であれば、『押収品』ってできるだけ早く返してしまった方が良い気がするのですが、どうしましょう?」
「た、確かに・・・・ずっと忘れてたけど・・・・」
「数が合わなくて騒ぎになる前に、返しに行った方が良いかもしれませんね・・・・」
そしてヒフミは『押収品』であるのなら、早く返しておくべきだと考えたようである。そしてそれにハナコも同意して、話の流れを変える。
「今の内にコッソリ行って、バレないように正義実現委員会のところに戻してくれば大丈夫なんじゃないですか?」
「え、今?」
“それならコハル、一緒に行く?”
ハナコはコッソリと行って返しておけばバレないと言い出すが、時間は夜遅くである。なので、コハルが夜遅くにでかけることに不安を抱いていると、先生が助け舟を出した。
「せ、先生が?」
「・・・・そうですね。先生が一緒であれば、万が一ハスミさん辺りにバレたとしてもそこまで怒られないでしょうし・・・・」
“ミライドンに乗っていけばすぐに行って帰ってこれるよ”
ーーーーポンッ!
『アギャッ!ーーーークゥ?』
先生がついていくことにハナコも賛成し、先生はミライドンをボールから出して紹介した。
すると、ミライドンはアズサを見て近づいていく。
「む? なんだ?」
『(スンスンスンスン・・・・)アギャッ♪』
ーーーーペロペロペロペロペロペロペロペロペロ・・・・
「む?? 何だコレは??」
ミライドンがアズサの臭いを嗅ぐと、顔を喜色に染めてアズサの顔をペロペロし始めた。
「わぁぁっ!? アズサちゃんがミライドンさんの餌食にっ!?」
『リュー! リュー!』
ヒフミが無抵抗にミライドンに舐められているアズサを助けようとし、ミニリュウも尻尾でミライドンをペシペシと叩いて離れさせようとする。
「あらあら、皆さん仲睦まじいですねぇ」
それを見て微笑ましそうしていたハナコはススッとコハルに近づく。
「ところでコハルちゃん、それはそれとして、もし他にもお勧めがあればぜひ♡」
「う、うるさいっ、バカっ////」
しつこく聞いてきたハナコに、コハル(猫目&赤面)が声を張り上げる。
そうして先生は、ピカチュウとコハル、ヘラクロスと一緒にミライドンに乗って、『正義実現委員会』の部室へと向かった。
◇
夕暮れの放課後の時間。
〈トリニティ総合学園〉の本館辺りにやって来た先生とピカチュウ、コハルとヘラクロス。
「・・・・その、い、言っておくけど、こればっかりは本当に間違いだから!」
“・・・・?”
『ピカ?』
『ヘラクロ・・・・』
一同は『正義実現委員会』の建物に向かって歩いていると、コハルが再び間違ってエロ本を持っていたと訴え、先生とピカチュウは首を傾げ、ヘラクロスは「ボロが出るからやめなよ・・・・」と言いたげに頭を押さえるが、コハルは言葉をコッソリと小声で呟く。
「いつものはちゃんと隠・・・・じゃなくて、あんまり持ち歩いたりしてないし・・・・」
“バレないように、上手く隠さないとね”
「!?!?////」
そして、コハルは小声で持ち歩いていないと呟くが、先生にはバッチリと聴こえていた。
「な、何言ってるの!? それ、バレなきゃ持ってても良いって言ってるのと同じじゃん!? せ、先生なんでしょ!? 何考えてるの!? エッチなのは駄目! 死刑!!」
コハルの言葉を聞いた先生が冗談交じりにそう言うと、コハルは猫目&赤面となり、『エ駄死』を言い渡した。
“その理論だと、コハルも刑に・・・・”
『ピカピカ』
『ヘラクロス』
「え、や、ちがっ・・・・? わ、私は、その・・・・。こ、コレについては本当に間違いだから! つまりノーカン!!」
が、それではコハルも死刑になると言う事を先生が指摘し、ピカチュウとヘラクロスも頷くと、コハルは間違えたからノーカンと言い出した。
“うん、じゃあそう言う事にしよう”
「・・・・!? なっ、何それ! 大人の余裕って訳!?」
『『・・・・・・・・』』
これ以上この手の話をしてもあんまり意味もないので、先生は会話を打ち切ろうとするが、コハルは大人の余裕がどうだと言い出して、突っかかって来るのでピカチュウとヘラクロスは半眼で呆れていた。
“色々あるけど、無理に縛られなくて良いと思うよ”
「え・・・・?」
“コハルはコハルだから”
「・・・・分かったような、分からないような・・・・」
『ピ〜・・・・』
『ヘラクロ・・・・』
先生はコハルを気遣って、無理に縛られなくていいと告げるが、コハルは先生の言っている事があまり響かなかったようで、ピカチュウとヘラクロスはまたもため息をつくのであった。
「うん、でも・・・・。先生が私の事を考えてくれてるって事は、少しだけ分かった・・・・」
“まぁ、今はそれを分かってくれただけで十分かな・・・・”
「・・・・じゃ、じゃあっ! お返しに、1つ私の『秘密』を教えてあげる!」
“秘密?”
『???』
「・・・・・・・・」
コハルは、先生が自分の事を考えてくれているという事だけは理解してくれたようで、お礼に自分の『秘密』を教えると言い出し、周りの人の目やポケモンがいない事を確認してから、先生に近づいて小声で話す。
「実は、私・・・・・・・・『補習授業部』が上手く回ってるかを監視する為の、『スパイ』なの!」
“・・・・『スパイ』?”
『ピカチュウ?』
『ヘラクロス・・・・』
その『秘密』は、自分が『スパイ』であるとの事であり、当然の如く先生は首を傾げさせ、ピカチュウはヘラクロスに問いかけると、ヘラクロスはソッポを向いた。
「つまり、『秘密のミッション』を遂行中の身って事。だから今は私がバカみたいに見えてるかも知れないけど、コレも全部フェイクって訳!」
“ミッション・・・・誰からの指示で・・・・?”
「う、えっと・・・・だ、誰って、その・・・・」
コハルが平坦な胸を張って自分が『スパイ』である事を語るのを聞いて、先生は誰の指示で動いているのかと質問すると、言いづらそうにするが口を開く。
「んと・・・・は、ハスミ先輩! そう! ハスミ先輩は〈トリニティ〉の中でもすっごく強くて、『正義実現委員会』の副委員長だし!・・・・あ、後、そう! つ、ツルギ委員長だっているんだから!」
“・・・・なるほど(もしかして・・・・ハスミとツルギって子も、『裏切り者』の調査の為に、丁度『補習授業部』のメンバーになったコハルに『スパイ』をさせてたのかな?)”
「つ、ツルギ委員長はその、えっと、委員長だし・・・・そう、何でもできるの! ぶ、文武両道・・・・? だから! 多分! 何回かしか会ったことないけど・・・・と、兎に角凄いの! だから、そう言う事。私は別に、本当に勉強ができなくて『補習授業部』に入った訳じゃないって事、覚えといて!」
何やら段々メッキが剥がれ始めているような気がするが、先生もピカチュウも何も言わずにいた。
「私はスパイとして大事な任務を任されている、『エリート』なんだから!」
“そうなんだ”
「ふふんっ♪」
そして最後に自分は『エリート』だと自信満々に言い、先生も頷きながら聞き、ピカチュウは苦笑していた。
“でもこれ、教えちゃって大丈夫なことだったの?”
「・・・・!!」
指摘されて、コハルはハッと肩を揺らした。
「せ、先生が生徒の秘密をやたらに言いふらしたりしないでしょ!? しないよね!?・・・・じゃ、じゃあ大丈夫! 行くわよヘラクロス!」
最後に慌てたコハルはそう言って、ヘラクロスを連れて『押収品管理室』へと走っていってしまった。
そして先生とピカチュウも付いていき、『正義実現委員会・押収品管理室』へと到着した。
「・・・・うん、これで良し。とりあえず一安心ーーーー」
「・・・・コハル?」
コハルはエロ本を返し終えて一安心した次の瞬間、部屋の扉がガチャッと開き、巨大な2つの球体ーーーーではなく、『正義実現委員会・副委員長 羽川ハスミ』が、ネギガナイトとタイレーツを連れて入ってきた。
「は、ハスミ先輩!?」
「それに、先生まで・・・・? 確か合宿で『別館』にいると聞いたのですが、どうかしましたか? 成績が良くなるまで、ここへは出入り禁止になっている筈ですが・・・・」
「そ、その、違うんです、えっと・・・・」
“ちょっと授業に使う書籍がなくて・・・・”
ハスミは『別館』で補習授業をしている筈の、コハルと先生がこの場所にいる事を訝しそうに眉根を寄せる。コハルがハスミへの言い訳に困っているのを見て、先生は良い感じに誤魔化すのであった。
「・・・・成る程、授業に使う書籍の件で。そういう事でしたら、仕方ありませんね」
「は、はい・・・・」
先生の話に、ハスミは納得したように頷いてくれた。今度こそ一安心したコハル。
「ですが、ある意味丁度良かったです。コハルに改めて伝えておきたい事もありましたし・・・・」
「え? わ、私ですか・・・・?」
「先生、申し訳ないのですが少し席を外していただけますでしょうか? 『正義実現委員会』としてお話したい事、と言いますか・・・・」
が、どうやらハスミはコハルに話があるようで、先生に退席をお願いした。
“うん、分かった”
「・・・・すみません、ありがとうございます」
そう言って、先生はピカチュウと共に部屋を出て、隣の部屋で待つ事にした。
その部屋の椅子に座って待つが、誰もいない空間だと設られている時計の秒針の音が酷く響いてくる。
と、その時。
ーーーー・・・・コハル・・・・・・・・で下さい
壁の向こうから、ハスミの声が聞こえてきた。
ーーーー本来の・・・・を・・・・ないで・・・・
『ピカチュウ』
“この距離でも、微妙に声が聞こえてくるね・・・・”
先生とピカチュウは、隣の部屋の会話を盗み聞きしないように、もっと遠くの方に向かおうとしたが、
ーーーーでも・・・・には・・・・無理・・・・
コハルの声も聞こえてきた。
ーーーー・・・・なんて・・・・あまりにも・・・・事で・・・・
ーーーーソレではダメなんです!
『ピッ!?』
“っ!?”
いつもは沈着冷静なハスミが怒鳴り声を上げるのが聞こえ、動きを止めた。
ーーーー・・・・なさい・・・・・・・・ずっと・・・・為に・・・・・・・
どうやらハスミが、コハルを説得しているようである。
ーーーー・・・・先生・・・・・・・・を・・・・です・・・・
“(私・・・・?)”
ーーーーはい・・・・・・・・ます
どうやら、コハルはハスミの話を承諾したようである。
これ以上はやめておこうと思った先生とピカチュウは、遠くのソファに座った。
それから数分後。部屋が開き、コハルとヘラクロスがやって来る。
「お、お待たせ・・・・先生?・・・・帰らないの?」
“・・・・コハル、大丈夫?”
「え、う、うん? 別に、大丈夫だけど・・・・?」
何かハスミに吹き込まれたのかと心配して問うと、大丈夫だとコハルは答えた。
そしてコハルと一緒に外に出て、ミライドンに乗って帰路につき、また1日の終わりに近づいていく。
ーヒフミsideー
その夜。ヒフミとガルーラはシャワーを終えて、体操着に着替えてベッドルームに戻ってきた。子ガルーラが紙パックの牛乳を飲んでいるのは御愛嬌。
「ふぅ、スッキリしました!」
『ガルラ!』
『(ゴキュゴキュ)カルゥ!』
「もうお風呂に入ったんだ、早いねヒフミ」
『リュー』
「うふふ、そうですよね。なにせヒフミちゃんは朝にシャワーを浴びれず、今日1日あるがままの香りでーーーー」
「わわっ! そ、その言い方は恥ずかしいです・・・・っ! うう、寝坊さえしなければ・・・・」
勉強が終わったヒフミは、寝坊してシャワーを浴びれなかったので、皆より先に風呂に入ったのである。脱皮したミニリュウの成長記録をつけていたアズサが風呂に入った事を指摘し、更にハナコがからかい、ヒフミは恥ずかしそうにするのであった。
「・・・・でも、それは私たちの為に模試を準備していたからだ。ごめん、ヒフミ。もし明日の朝も起きるのが辛かったら言って。今度はヒフミの身体を洗ってあげる」
「い、いえ、それは遠慮させていただこうかと・・・・!?」
「自分で洗えば良いでしょ! 子供じゃないんだから!」
「効率の問題だ。皆で洗う事による利点は少なくない。もちろん水の節約にもなる」
ヒフミが寝坊した原因が模試の準備をしていたからだとアズサは理解しており、お礼として身体を洗ってあげると言い出したが、それを聞いたヒフミが遠慮していると、エッチな話題になりそうだと察知したコハルが会話に入ってくるが、アズサは効率の話を始めた。
「大浴場は無いので、皆で一心不乱に洗いっこというイベントはちょっと難しいようですが・・・・。あ、良い事を思いつきました。今度お風呂代わりに、皆裸でプールに飛び込むのはどうでしょう?」
「サラっと何言ってんの!? ダメ! そんなスゴイの絶対禁止っ!!////」
「悪くない案だと思うけど、それをプールでやるメリットがあるのか?」
そしてやはりと言うか、ハナコが裸でプールに飛び込むというイカれた提案をすると、最早お約束的にコハル(猫目&赤面)が過敏な反応を示し、アズサはメリットが理解できず首を傾げた。これはもう『補習授業部』のいつもの流れとなりつつあった。
「解放感があると思いませんか? 青空の下、全てをさらけ出して掛け合う様子を想像するだけで・・・うふふ♡」
ーーーースパンッ!
ハナコが裸でプールに飛び込むことの魅力を説明するが、すかさずジュペッタがハナコの頭にハリセンを張った。
「成る程、そう言うのは確かに考えてなかった。解放感、か・・・・」
「バカバカバカバカ!! 考えちゃダメ想像しちゃダメそういうのはダメっ!」
「?」
そして、裸プールに理解を示そうになっていたアズサをコハルが必死に止め、ハナコは首を傾げるのであった。
「アズサを変な風に染めるな! 〈トリニティ〉の変態はアンタだけで十分だから!!」
「そう言えばコハルちゃんも全裸で泳ぎたい派ですよね?」
「脈絡全無視!? 無敵なの!? そっ、そもそもそんな事言ってないから! プールでは普通に水着! それが正義なの! アンタだって昨日はちゃんと着てたじゃん!」
「あら・・・・?」
コハルはアズサがこれ以上ハナコの変態に毒されないように、必死でハナコの暴走を防ごうとしている。が、それで収まるハナコではなく、話の脈絡を全無視し、今度はコハルにターゲットを変えて、ススッと距離を詰めて来た。
「!?」
「よく思い出してみてください、コハルちゃん。私が昨日プールで着ていたものを・・・・」
「え、あ、あの水着が何・・・・?」
完全にコハルをターゲットにしたハナコは、更に距離を詰める。そして、コハルにしか聞こえない声で彼女に囁き始めた。
「あれは、本当に“水・着”だったと思いますか・・・・?」
「!?!!?」
ハナコはコハルの耳元言葉を囁く。すると、案の定コハルは猫目&赤面した。
「み、水着じゃなかったら何なのよ・・・・?」
「最近の下着はデザインがかなり充実していますし、一目で水着かどうかの判断は難しいと思いませんか?それに、ペイントという線も・・・・♡」
「・・・・!?!? え、嘘!? って、言う事は・・・・!?」
そして追い打ちをかけるように、ハナコは最近の下着のデザインやペイントの話をコハルにする。すると更にコハルは顔を赤面させ、ハナコのことを疑い始める。
「あら、どうしたんですか? アレがもし水着じゃなかったとして、何が変わってしまうんでしょうか? ねえ、コハルちゃん?」
「え、だ、だって・・・・」
「例えば、水着と下着の違い・・・・それは何でしょう? 『防水機能』? 『お肌の保護』? 『デザイン』? 『露出の範囲』? コハルちゃんは見た目で分からなかったですよね? あの場、あの時は、それは『水着』だと信じられていましたよね?」
「・・・・?」
完全にハナコのペースに呑み込まれてしまったコハルに、水着と下着の違いをハナコは問いかける。
しかし、コハルの頭は沸騰しそうになり、ハナコの問いに答えられない。
「実はアレが『下着』だったとして・・・・その『真実』かもしれない何かは、どうすれば証明できるのでしょう? 証明できない真実程無力なものは無い・・・・そう思いませんか?」
「な、何言ってるのか分かんない・・・・け、結局どういう事!?」
「あの水着可愛かったですよね、というお話です♡」
「・・・・はぁ!? 全部冗談!?」
そして、何やら下世話だが哲学的な会話を繰り広げるが、混乱しているコハルには全く理解できず、結局ハナコは全て冗談だと明かし、いつもの流れに落ち着いた。
「・・・・成る程、『五つ目のアレ』か」
「・・・・!」
「『五つ目』・・・・? えっと、アズサちゃん、何のお話ですか・・・・?」
が、ここで驚く事が起こった。なんと、ハナコの言葉にアズサが何やら妙な反応したのである。それを聞いたハナコは珍しく、本当に驚いているようで、ほんの一瞬だけいつもの笑顔が消えていた。
「・・・・・・・・」
『ジュペ・・・・』
ヒフミが問いかけると、ハナコは困った顔となり、ジュペッタも目をパチクリとさせるが、アズサは淡々と話しだした。
「ただの聞いた話だけど・・・・・〈キヴォトス〉に昔から伝わる『7つの古則』。確か、その内の5つ目だった筈。『楽園に辿り着きし者の真実を、証明することはできるのか』・・・・そんな感じだった気がする。残りは知らないけど。つまり、誰も証明できない楽園は存在し得るのか・・・・そういう禅問答みたいなものだったと記憶してる」
「アズサちゃん、どうしてそれを・・・・」
ヒフミに五つ目の古則のことを聞かれたアズサは、自分がどこかで聞いた話を皆に説明する。いつもなら、ハナコが博識でフォローをする筈なのだが、何やらショックを受けたかのように、アズサに何で知っているのかを聞いた。
「その話を知っているのは・・・・もしかしてアズサちゃん、『セイアちゃん』に会ったことがあるんですか・・・・!?」
「・・・・・・・・」
「・・・・セイア?」
「それって、『ティーパーティー』の『セイア様』の事ですか・・・・?」
『五つ目の古則』の話を聞いたハナコが、何故か『ティーパーティー』の『ホスト』の1人、『百合園セイア』の名を口にした。
そしてそれを聞いたアズサも何故か目を逸らす。そして、ヒフミとコハルも、セイアの名前が出てきたことに疑問を感じていた。
「・・・・・・・・」
『リュー?』
アズサは一拍子空けてから、声を発する。
「・・・・・分からない。この話はただ、どこかで聞いた記憶があるだけで・・・・」
「・・・・・・・・そうでしたか・・・・そう言えばアズサちゃんは転校生、でしたね・・・・・」
そしてアズサは少し気まずそうに俯くと、百合園セイアの事は分からないと答えた。
ソレを聞いたハナコは、何か思うところがあるようであった。
「『vanitas vabutatum』・・・・と言う事は・・・・」
「「???」」
『『『『???』』』』
更にハナコは、アズサがよく口にしている『空の空』『虚無の虚無』と言う意味の言葉を呟くと、何も知らないヒフミとコハル、ガルーラ親子とヘラクロスとミニリュウは首を傾げ、アズサとハナコの様子を不思議そうに見ていた。
「・・・・いえ、何でもありません。もう遅い時間ですし、そろそろ寝た方が良さそうですね。では、今日も1日お疲れ様でした!」
これ以上の詮索は空気が悪くなると感じたのか、ハナコはいつもの笑顔でこの話を打ち切るのであった。
ー先生sideー
そして時間が少し経ち、先生達は部屋で、これからの勉強内容を話していた。
ヒフミは真面目だからコツコツと勉強をすれば問題はない。
アズサも真面目な為か、まるで水を吸ったスポンジのように学んでいっている。
コハルはまだ意地と見栄を張っているのが難点である。
ハナコの方は正直、ハナコ自身が実力を隠していると先生は思えて仕方なかった。
先生達が話し合っていると、ドアがノックされ、ルカリオが出ると、ヒフミが入ってきた。
「・・・・先生」
“ヒフミ? どうしたの・・・・?”
「ハナコちゃんの事、なのですが・・・・」
“・・・・・・・・”
どうやら、ヒフミはハナコの事で先生に報告しに来たようだ。そして先生達の方でもハナコについて、思う事があったのでヒフミの話を聞こうとする。
「・・・・『模範解答』を集めている最中に、何故か束になって保管されていたんです。珍しい事だから保管されていたのか、その理由は分かりませんが・・・・。昨年の試験、1年生から3年生までの全ての試験における解答用紙が、まとまっていました。どういう訳か、その全てを回答した方がいたようでして・・・・」
“まさか、それが・・・・”
「・・・・はい、ハナコちゃんでした」
ヒフミは模試を作成する為に、『模範解答』を集めていた時に、偶然去年のテストを見つけてしまったようである。
そして、その解答者がーーーー『浦和ハナコ』だったのだ。
「昨日見つけた1年生の時の成績に引き続き、盗み見る形になってしまったのですが・・・・。ハナコちゃんは去年の1年生の段階で、3年生の秀才クラスでも難しいとされる課程を含めて『全ての試験』で満点を出しています・・・・完膚無きまでに『秀才』、と言えるレベルです・・・・」
“そ、そんなに・・・・”
3年生の難しい問題を満点を叩き出してしまっていたとは。実は頭が良いのではないかと見ていたが、どうやらハナコは先生が思っていた以上の切れ者だったようである。
「1年生の試験結果を見て、ハナコちゃんはきっと『今年になって急に成績が落ちてしまったんだ』と思っていました。でも、この結果を見る限りそうではなく・・・・」
“去年の段階で、どんな問題でも解けてる筈。つまり・・・・”
「・・・・ハナコちゃんは今・・・・ワザと試験に落ちているとしか思えません・・・・」
つまり今のハナコは、テストが解けないのではなく、ワザと低い点数を取っている事が分かってしまった。
「ハナコちゃん・・・・どうして・・・・」
これ程の秀才が、何故ワザと低い点数を取るようになってしまったのか?
もしかしたら、ハナコが『トリニティの裏切り者』なのではないのか?
色々な不可解が頭に過ったヒフミは、戸惑いがちにここにいないハナコに問いかけていた・・・・。
ーハナコsideー
ヒフミが先生と話し合っているその最中、合宿所のロビーにて。
「・・・・アズサちゃん・・・・ミニリュウちゃんを連れないでまた見張りを・・・・」
『ジュペッ・・・・』
ハナコとジュペッタは、パートナーであるミニリュウを置いて夜遅くに見張りに行くアズサの背中を難しい顔で見つめていた。