ポケモンアーカイブ   作:BREAKERZ

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真夜中の課外授業・再会のゲヘナ風紀委員長

ーハルナsideー

 

「イダイトウがぁーーーーーーーー!!!」

 

「是非お造りの形でと思ったのですが、取り返されてしまいましたね」

 

『金色のイダイトウ』を回収され、ハスミも回復し、『正義実現委員会』も集まって来て、ハルナも冷や汗をかく程のピンチのなった『美食研究会』。

 

「うーん、どうやら完全に囲まれてしまったようですね☆ ベトベトン達も戦闘不能ですし、どうしましょう?」

 

「はっ、バラバラに逃げたら生存率上がるんじゃない!?」

 

唐突にそう言って、ゴンベをモンスターボールに戻したジュンコは、ピューンっ! とその場から逃げ去った。

 

「成る程、良いアイデアですねジュンコさん☆ では足の速さ次第ですが、弱肉強食ということで♪」

 

ーーーーピューン!

 

次にアカリもアローラベトベトンを戻してからそそくさと逃げ出した。

 

「ふふふ、そうですわね。運任せとなりそうですが、それもまたスパイスのようなもの! それでは!」

 

ーーーーハシッ! バササササ!!

 

今度はハルナがアローララッタを戻し、いつの間にか空から降ろされた縄を掴むと、そのまま『巨大な鳥ポケモンの影』が空を飛び、ハルナを連れて飛び去った。

 

「えぇっ!? ちょ、ちょっと! 待って!私だけ置いていかないでー!?」

 

ーーーードテッ。

 

「お、置いてかないでってばー! うわーん! もう、覚えてなさいよっ! いつか絶対仕返ししてやるんだからーーっ!!」

 

ジュンコの逃走を皮切りに、他のメンバー達も散り散りに逃げていく中、最後にイズミがヨクバリスを戻してから逃げようとして、ドテッと転ぶが何とか起き上がってピューン! と逃げていった。

 

「くっ、小癪な・・・・! 各自、分かれて追撃を!!」

 

『はいっ!』

 

「ここは『トリニティ自治区』! 私達から逃げるなんてことは、不可能です!」

 

『『・・・・・・・・・・・・』』

 

分散して逃げ出した『美食研究会』を追撃するよう、ハスミは『正義実現委員会』のメンバーに指示を出した。

妙に気合いが入っているが、恐らく〈トリニティ〉に勝手に入った事だけでなく、スイーツを食べるのを邪魔されたのが相当お冠のようである。ハスミを見るネギガナイトとタイレーツの半眼の視線が物語っていた。

 

「・・・・先生、私達はどうしましょう?」

 

“・・・・取り敢えずアズサ”

 

「ん?」

 

取り残された感のある『補習授業部』の面々。ヒフミが先生に尋ねると、先生はハルナを乗せて飛び去る『巨大な鳥ポケモンの影』、否、腹から垂れ下がるエプロンのような長い体毛に、抜け落ちた自らの羽を編み込み袋を作り、ソレを口に咥え、おくるみのようにしているのが特徴的な、嫌らしい目つきをしたシュバシコウのような鳥系ポケモン、『おとしものポケモン・オトシドリ』が巨大化した『巨大オトシドリ』を指差しながらアズサに声をかけた。

 

“ーーーーアレ、落とせる?”

 

「・・・・問題ない。ミニリュウ」

 

『リュー♪』

 

「【たつまき】」

 

『ーーーーリュー!!』

 

ミニリュウが飛んで逃げるハルナの乗る巨大オトシドリの方向に竜巻を巻き起こすと、その巨体が竜巻に巻き込まれると、

 

ーーーードゴォォォォォォォォンン・・・・!!

 

地面に凄まじい勢いで落下していった。そして回収に向かうと、『巨大オトシドリ』が羽ばたいて逃げ出し、落下地点には目を回しながら気を失っているハルナの姿があった。

 

 

 

 

 

 

 

ージュンコsideー

 

「はぁ、はぁ・・・・。こ、ここまで来れば流石に大丈夫よね・・・・?」

 

いの一番に逃げ出したジュンコは人気のないカフェが並ぶ路地で漸く立ち止まる。

 

ーーーードサッ・・・・。

 

「・・・・え?」

 

一安心したジュンコの直ぐ側で、何かが落とされた音がしたので目を向けると。

 

「あら、ジュンコさん・・・・」

 

「あ、アカリ!? ど、どうしたのそんなフラフラの状態で!?」

 

「まあ、端的に言いますと・・・・無理でした☆」

 

拘束されてフラフラの状態のアカリであった。

アカリは笑顔でジュンコにそう報告すると力尽きて倒れてしまった。

 

「アカリっ!?」

 

と、ジュンコがアカリの名を呼ぶと、夜闇の向こうからゆっくりと、二つの真っ赤にギラギラとした光を宿した目を持つ『人影』が現れる。

 

「ーーーーくひひっ・・・・きひひひひ・・・・」

 

「・・・・えっ? な、何っ!? 鬼・・・・!?(ゾクッ)っ!!??」

 

『ブギィィィィ・・・・!』

 

後退りするジュンコだが、背後から迫る気配に振り向くとソコには、一匹のポケモンがいた。

ボサボサに振り乱した灰色の長い体毛と、『人影』と同じくギラギラと真っ赤に輝く目、目の下に表れたドス黒い隈等、まるで怒りの化身ともいうべき姿をし、筋肉が肥大化して両腕が太く、血管が切れかけ筋肉が軋むような、どこか痛々しい鳴き声をしたポケモン『ふんどざるポケモン・コノヨザル』である。

そして、『人影』もその姿を顕にした。『正義実現委員会』の制服に身を包み、地面スレスレにまで伸ばされた黒い髪、細く幽鬼のような雰囲気をその身につつみ、その両手には2挺の『ウィンチェスターM1887のショットガン・ブラッド&ガンパウダー』を持った少女、『学園都市キヴォトス』でも3本の指に入る実力者にしてポケモントレーナー、〈トリニティ〉最強(最恐?or最凶?)の称号を持つ『正義実現委員会委員長』、『剣先ツルギ』であった。

 

「きゃははははははははぁぁぁぁっっ!!!」

 

「いやあああぁぁぁぁっ!?ごめんなさいぃぃぃぃぃぃぃぃーーーーっ!?」

 

そしてツルギは〈トリニティ〉に侵入して大暴れたテロリストを成敗すべく、ジュンコに襲い掛かり、その気迫と迫力に充てられて、ジュンコは涙を流して命乞いした。

 

ーーーードガァアアアアアアアン!! ドゴォオオオオオオオオンン!!!

 

が、ソレで許す程ツルギは優しくなく、鮮烈なお仕置きを受けたのであった。

 

 

 

 

ー先生sideー

 

「・・・・素晴らしい・・・・!」

 

〈トリニティ〉の某ビルにて、先生と『補習授業部』は、先に捕まえたハルナに、先生特性のサンドイッチを振る舞うと、ハルナは目に薄っすらと涙を浮かべながら感動していた。

 

「『秘伝スパイス』にだけに拘らず、各々食材がお互いの良さが引き出し調和され、より旨味を増している。正に異なる食材が織りなすシンフォニー・・・・! 先生が『美食』に対してここまで真摯な御方だったとは思いませんでした・・・・!」

 

“喜んでくれて何よりだよ。ソレで、あの『巨大オトシドリ』は君の手持ちなのハルナ?”

 

「そうですね。『風紀委員会』から逃げる途中、彼女達が訓練場として使っている岩山がありまして、最近ソコに落石が相次いでいるのでソコを隠れ蓑にして隠れようと思ったのですが、あのオトシドリが現れて皆で倒し、そして移動手段として使わせてもらっています」

 

空から叩き落とされたハルナは『巨大オトシドリ』に見捨てられ、そのままにお縄になったのだ。逃げ出した『巨大オトシドリ』に対して、ハルナは別段気にしていないようである。

曰くーーーー。『美食研究会』は『EATorDIE』、『食うか死ぬか』。

コレをモットーとしているので、『巨大オトシドリ』の行動は間違っていないとの事である。随分とドラスティックなモットーである。

 

「・・・・先生、もしかしてその『ゲヘナ風紀委員会』の訓練場の山に・・・・」

 

“(コクリ)”

 

ヒフミが後ろからコッソリと話すと、先生も同意するように頷いた。

すると、ドサドサッと大きな音を立てて、簀巻きにされた『美食研究会』の他のメンバー2人が地面に置かれた。

 

「あら、ジュンコさんにアカリさん」

 

「あ、ハルナ。アンタも捕まったの? オトシドリで跳んで逃げたのに?」

 

「ふふっ、10メートル飛んだ所で【たつまき】に巻き込まれて叩き落とされました」

 

「みじか・・・・ってか、何食べてるの?」

 

「先生が作ってくれた『特製サンドイッチ』です。『あまスパイス』も使われてとても美味ですよ」

 

「えっ! ズルイ! 私も食べたい!」

 

“全員分あるから大丈夫だよ”

 

『ピカチュウ!』

 

『カルォ』

ピカチュウとルカリオが、ジュンコと気絶しているアカリの分のサンドイッチを持ってくる。

 

「・・・・無事脱出に成功したのはイズミさんだけと言う事でしょうか。良かったですね、私達の犠牲は無駄ではなかったようです」

 

「(モグモグッ)ーーーーうまっ! いや犠牲って言うか、最初はほぼ逆の構造だったけど・・・・」

 

「『正義実現委員会』・・・・成る程、流石は〈トリニティ〉きっての武力集団ですわね。凄まじい戦闘能力です」

 

「ビックリしたよ! あのアカリが一瞬で潰れた缶ジュースみたいに・・・・マジでビックリした・・・・(モグモグ)」

 

サンドイッチを食べながら、ジュンコはツルギを思い出したのかブルブルと僅かに震えるが、サンドイッチを食べる口は休んでいない。

 

「もう、だからトリニティの本拠地まで来るなんて・・・・いくら『金色のイダイトウ』だからって、どうしてこんな所にまで・・・・!」

 

「ソレはですねジュンコさん。詰まる所、こういう事ですわ。誰もいない流し台で水が流しっぱなしになっていたらーーーー」

 

「それ前にも聞いたから!!」

 

ジュンコは〈トリニティ〉の中心にまで食材を取りに来たハルナに文句を言うが、ハルナは相変わらず自分の持論を語り出したがジュンコに止められた。

 

「・・・・私達、これからどうなるのかな?」

 

「まあ順当に考えて、『風紀委員会』に引き渡しじゃないでしょうか?」

 

サンドイッチを食べ終えたジュンコが、自分の今後を考えて落ち込んでいると、アカリが起き上がってきた。

 

「びっっっっくりしたぁ!? 無言で起き上がらないでよ!? 無事で良かったわねアカリ!?」

 

「ふふ、まあそうそう簡単にはやられませんよ☆ あ、先生、私にもサンドイッチを」

 

思わずジュンコはビックリして飛び上がるが、無事を喜んだ。 そしてアカリもルカリオからサンドイッチを食べさせてもらい、頬を緩めた。

 

「っていうか、そっか、『風紀委員会』か・・・・やだなぁ、もう考えるだけで・・・・」

 

「参りましたわね・・・・ヒナさんの手に私たちの命運が託されるのは、できれば避けたかったのですが・・・・」

 

「(モグモグ)・・・・あら美味しい♪・・・・まあちょっと今回は無茶をし過ぎましたね☆ 仕方ないかもしれません」

 

ジュンコは『風紀委員会』の事を考えて、憂鬱な気分になる。ハルナの方もどうやらヒナの事は恐れているようであった。アカリはサンドイッチを咀嚼しながら達観とした顔つきである。

 

「(ーーーーどうして私まで・・・・(モグモグ)美味しいなぁ。今度先生に〈ゲヘナ〉に来て欲しいなぁ)」

 

そしてフウカも先生特性のサンドイッチを食べながら、巻き込まれた自分も『美食研究会』の『協力者』扱いされている状況に憂いつつもサンドイッチを美味しそうに食べていた。

 

 

 

 

ーイズミsideー

 

一方その頃、イズミの方は・・・・。

 

「こ、ここは何処? 私はイズミ・・・・うわーん! もう、どこに行けばいいのぉ!?」

 

1人だけ難を逃れたイズミは、土地勘の全くない『トリニティ自治区』を走り回っていた。所謂迷子であった。

 

 

 

 

 

ー先生sideー

 

そして、ビルを出てトリニティ中央の繁華街に戻って来た先生と『補習授業』、そしてハスミは先生達に感謝を述べた。

 

「お疲れ様でした。先生、そして『補習授業部』の皆さん。お蔭様で、事態を無事に収拾する事ができました」

 

「あ、あはは・・・・最後の方はズルい手段を取った気がしますが・・・・」

 

『ガルーラ』

 

「ミニリュウの訓練にもなったし、『正義実現委員会』の戦術を目の前で見る事ができて、良い勉強になった。本格的なポケモンバトルは初めてだが、思いの外楽しかった」

 

『リュー♪』

 

「や、役に立てたのかどうかは、分かりませんが・・・・!」

 

『ヘラクロス』

 

ヒフミが苦笑して言うと、ガルーラは笑みを浮かべて「ドンと構えな」と、ヒフミの背中を優しく叩き、アズサは初めてのポケモンバトルに満足気であり、コハルはやや緊張気味だが、ヘラクロスは笑顔である。

 

「所で、美食研究会‹あの方々›はこの後どうなるのですか?」

 

『ジュペ』

 

「本来なら私達の方でこの後の処遇を決めるのですが・・・今回は時期が時期ですので、〈ゲヘナ〉の『風紀委員会』に託そうかと」

 

“なるほど”

 

ハナコは何処かに連れて行かれた『美食研究会』の今後が気になり、彼女たちの処遇をハスミに尋ねと、ハスミは『エデン条約前』という状況から、彼女達をゲヘナの風紀委員会に引き渡す事にしたようである。

 

「はい。そこで、先生にもう1つお願いがあるのですが・・・・」

 

“うん、何をしたら良い?”

 

「『エデン条約』の事を考えると、ここから先も私たちが能動的に動くのは少々避けたい所です。ですので、『風紀委員会』への引き渡し・・・・この部分を先生にお願いできませんでしょうか? 『シャーレ』が生徒を引き渡す・・・・この形でしたら、私達にとってもゲヘナ側にとっても、政治的な憂慮が大分減るのです」

 

ハスミは先生に、『美食研究会』を『ゲヘナ風紀委員会』に引き渡す役を頼んだ。

『超法規的中立的』な『シャーレ』の先生がその役をする事で、事を荒立てずに済ませたいようだ。

 

“分かった、任せて”

 

先生はハスミの意図を理解し、『確認しておきたい事』もあったので快く承諾した。

 

「はい。何から何までありがとうございます、先生。それでは、私たちは一旦引いた位置にいますので・・・・よろしくお願いいたします」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして先生とピカチュウとルカリオとイーブイ、そして御三家とミライドンは、『トリニティ自治区』の外郭の大橋にて、『ゲヘナ風紀委員会』の車両の到着を待っていると。

 

ーーーーピーポーピーポーピーポー!!

 

前方から走ってきた緊急車両が先生達の目の前に停車すると、中からゲヘナ生と思わしき少女とポケモンが飛び出してきた。

 

「・・・・お待たせしました。『死体』は何処ですか?」

 

“・・・・え?”

 

『ピカ?』

 

『カル?』

 

『ブイ?』

 

『チャモ?』

 

『ミジュ?』

 

『キゥ?』

 

『アギャァ?』

 

そして少女は開口一番に『死体』という言葉を口にし、先生達を唖然とさせた。

 

「・・・・失礼、『死体』ではなく負傷者でしたね。たまに混同してしまって」

 

『ゾロア』

 

死体と負傷者を混同したと喋っているちょっと物騒な少女とソレに頷くポケモン。

 

「えー・・・・納品リストには、新鮮な負傷者3名と人質1人・・・・と書かれていましたが」

 

“新鮮な・・・・?”

 

少女はスマホロトムの納品リスト確認して、先生が連れている人数を確認すると、先生の方を見る。

 

「・・・・所であなたは? 『正義実現委員会』ではなさそうですが・・・・?」

 

“えっと・・・・”

 

質問に答えようとした先生だが、その前に、先生と少女の間に、1匹のポケモンが舞い降りた。

ーーーーアブソルだ。

 

「その方は、『シャーレ』の先生」

 

アブソルの背中から軽やかに降り立ったその白いフワフワとした長髪と、お人形のような美しい顔立ちをした小柄な少女は・・・・。

 

“ーーーーヒナ!”

 

『ゲヘナ風紀委員会』の委員長にして、ツルギに並ぶ実力者兼トレーナーである空崎ヒナ。

そしてヒナのパートナーであるアブソルと、空からドンガラスを筆頭にヤミカラス達の空中ブランコに乗ってゴロンダが着地し、その肩にドンカラスが降りた。

空崎ヒナの『四獣』と呼ばれる手持ちポケモンも集結していた。

 

「久しぶりね、先生。いつぶりかしら。・・・・所で、ここで何をしてたの?」

 

「知り合いでしたか、風紀委員長」

 

「うん・・・・まあ、そうね」

 

〈アビドス〉での決戦から暫く会っていないヒナと、諸々の事情とかを話した。

 

「成る程。このタイミングでお互い政治的な問題にしない為に、先生が・・・・」

 

“うん。そうなんだ。〈トリニティ〉としてもあまり問題にしたくないようだからね”

 

「問題にしたくないのはこちらも同じ。だからこそ、公的には今回こうして『風紀委員会』ではなく、コッチの『救急医学部』が来た事になってる。私達は基本的に、ただの付き添い」

 

先生の説明を聞いてヒナも自分は『付き添い』であり、『救急医学部』が『美食研究会』を引き取りに来たと話した。

 

「・・・・救急医学部の部長、『氷室セナ』です。以後よろしくお願いいたします、先生。こちらはパートナーの『ゾロアーク』です」

 

『ゾロア』

 

灰色のショートヘアに〈ゲヘナ〉の生徒らしい小さな角、頭にナースキャップを被り、紺色のナース服らしき服の腰にエプロンを巻いており、無表情だが整った顔と金色の瞳をした、その手には『M79グレネードランチャー・救急用突入キット』を持った〈ゲヘナ〉の『救急医学部』で3年生の『氷室セナ』。

そしてその隣にいるのは、黒い体を基調とした大きい二足歩行の狐の姿で、非常にボリュームのある赤いタテガミや隈取のような模様など、歌舞伎を連想させる『ばけぎつねポケモン・ゾロアーク』であった。

 

「死た・・・・いえ、負傷者がいたらいつでもお呼びください。配送料は頂きませんので」

 

『ゾロア』

 

“よ、よろしくね・・・・”

 

『・・・・・・・・・・・・』

 

ヒナの説明の後に、初めて先生と会うセナが自己紹介とパートナーを紹介する。その独特な物言いに、先生達はちょっと引いている。

 

「『救急医学部』は〈ゲヘナ〉の中でも、特に政治的な部分に関りが薄い立場にいる。だから今回、こうしてお願いしたの」

 

「『政治ごっこ』は風紀委員長にお任せします。私は死体以外に興味ありませんので」

 

「『負傷者』でしょう? ソレに、『本物の死体』を見た事ないでしょうに」

 

「はい、『負傷者』でした。その事については、風紀委員長も無いでしょう?」

 

ヒナがこの場に『救急医学部』を呼び出した理由は、政治から離れた位置にいるからであると説明し、そして相変わらず死体に拘るセナに対し、ヒナは実際の死体を見た事が無い事を言って、彼女の言葉に苦言を呈した。

 

「兎に角・・・・『美食研究会』はこの中? じゃあ、コッチに移してもらえる?」

 

ヒナはセナとの話を打ち切ると、『美食研究会』を移送しようとする、最初に『正義実現委員会』の護送車から出て来たのはハルナであった

 

「・・・・ふふっ。ヒナさん、お久しぶりですわね」

 

「ハルナ、相変わらず・・・・いや、詳しい話は帰ってからで」

 

ハルナは連行されているにも関わらず、余裕綽々な表情でヒナに向き合っていた。

 

「あら、やはり『救急医学部』の方でしたか☆ ちょっと私の腕の角度が有り得ない方向に曲がっているのですが、診ていただけます?」

 

「うぇっ、酔った・・・・吐きそう・・・・」

 

『『『・・・・・・・・・・・・』』』

 

「皆、殺気を放つのはやめなさい」

 

ヒナに迷惑をかけたのに、まっっっったく反省の色が無い『美食研究会』に、『四獣』達は殺意の波動を纏うが、ヒナの言葉で収めた。

 

「た、助かった・・・・」

 

「あら、『給食部』の・・・・今日1日見てないと思ったら、こんな所に。今、学園で『ジュリ』が・・・・いや、やっぱり説明は帰りながらで」

 

「え・・・・?」

 

アカリとジュンコも余裕のある態度で出てきた。恐らく常習犯なのか。そしてフウカが出てくると、ヒナは訝しそうに眉根を寄せながら声を発し、フウカは何か嫌な予感がしたのか顔を青ざめさせた。

 

「なんだか、『美食研究会』がもう1人足りてない気がするけど・・・・まあ面倒だから良いわ」

 

「色々と配慮と、素晴らしいサンドイッチをご馳走していただいてありがとうございます、先生。今度〈ゲヘナ〉にいらした際には、私達が美味しい物でおもてなし致しますね」

 

「ではまた今度~☆」

 

「またね、サンドイッチ美味しかったわ」

 

「・・・・うるさい。ゴロンダ、早く入れて」

 

『ゴロ』

 

ヒナはイズミがいない事を訝しそうに眉根を寄せるが、面倒臭くなったのか考えるのを止めたようである。

ハルナとアカリとジュンコが先生にお礼とお別れの言葉と、サンドイッチをご馳走してもらった礼を言っているのを見て少しイラっとしたのか、ヒナがそう指示し、ゴロンダは三人の頭を掴むと、護送車の中に放り込んだ。

 

“えっと、じゃあまた。気をつけてね・・・・”

 

「・・・・積載完了しました。出発の準備もできてます」

 

「・・・・少し待ってて」

 

出発となったにも関わらず、ヒナはセナに待つよう指示し、『四獣』を連れて先生に近付く。

 

「・・・・先生・・・・〈トリニティ〉で、何をしてるの?」

 

“『補習授業部』っていう所の担任を・・・・”

 

「ソレはもう知ってる。色々と情報は入ってきてるから・・・・」

 

ヒナは先生に〈トリニティ〉で何をしているのかと先生に聞き、先生は応えるがヒナはソレで納得せず、問い詰めるように近付く。

 

「そうじゃなくて、『シャーレ』は『中立的な組織』だった筈。この時期に〈トリニティ〉にいるとまるで・・・・」

 

“・・・・・・・・・・・・”

 

ヒナは『シャーレ』は『中立の立場』にあるのに、『エデン条約』の締結前に、先生が〈トリニティ〉にいるという事は、〈トリニティ〉に肩入れしているみたいだと言いたいようだ。

 

「・・・・やっぱり今のは無し、気にしないで。先生がそんなことする訳が無い」

 

“(気を遣わせちゃったな・・・・)”

 

しかし、ヒナは先生の事を信頼してくれているのか、その話をするのを止めた。 気遣われたと思った先生は、意を決してヒナに話しかける。

 

“ーーーーヒナ、こっちからも1つ聞きたいんだけど”

 

「うん? 聞きたい事・・・・?」

 

“ヒナは『エデン条約』についてどう考えてる?”

 

すると今度は先生がヒナに『エデン条約』についての見解を聞き、現在の自分の状況と今後の展望を彼女に詳しく話し始めた。

『ティーパーティー』の事。『補習授業部』の事。ナギサの暗躍の事。ミカから聞いた『裏切り者』の事。そして『補習授業部』との合宿の事。『水着パーティー』の事。そして、『美食研究会』の巨大オトシドリは『秘伝スパイス』を摂取している可能性があり、〈ゲヘナ〉の方に『秘伝スパイス』があるかも知れないと言う事を。

 

「成る程・・・・先生、結構複雑な状況にいるのね」

 

“うん・・・・”

 

「・・・・いや、待って。何か今、変な話が混ざってなかった?」

 

『『『(キランッ)』』』

 

“気のせいだと思う。いや、間違い無く気のせいです”

 

『(サッ)』

 

『水着パーティー』の事を聞いてヒナが訝しそうな顔になり、何故かアブソルとゴロンダとドンカラスの目が光ったが、先生は気のせいと言って、ピカチュウ達は顔を背けた。

 

「・・・・まあ、兎に角・・・・」

 

この話はすぐに打ち切るべきだと、聡明なヒナは悟ってくれたのか話を戻す。

 

「『トリニティの裏切り者』・・・・ね。数多くの言葉が飛び交い、誰の言葉が真実なのか、誰が嘘をついているのか分からない状況・・・・」

 

“色んな見方がありそうだなって思って。ソレに見方によって、『真実』は変わるかもしれないから”

 

「慎重なのか楽天的なのか、ホント分からないわね・・・・」

 

〈トリニティ〉の事情を先生から聞いて、ヒナは難しい顔をする。しかし一方の先生は、そんな誰の言葉を信じて良いのか分からない状況にも関わらず、呑気とも言える態度にヒナは若干呆れてしまっていた。

 

「・・・・所で、こんな大事なことを私に話して良いの?」

 

“うん、ヒナの事信じてるから”

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

内部事情を全て話してしまう先生に、ヒナは念の為に確認すると、先生は迷いなく満面の笑みでヒナを信じていると返した。

 

「・・・・・・・・・・・・////////」

 

『ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー』

 

『(ガリガリガリガリガリガリガリガリ・・・・)』

 

『(ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・)』

 

その言葉を聞いてヒナは顔を少し赤らめ、アブソルは『フレーメン反応』をしたように顔を歪め、ゴロンダは全身が痒いのかその剛腕で掻き、ドンカラスは何故かヒナに向かって「抱きつけ! 押し倒せ! 唇でも奪ってしまえ!!」と言わんばかりのオーラを放っている。

 

『『(ニヨニヨニヨニヨ・・・・)』』

 

『ブィィィィ〜・・・・!!』

 

『『〜〜〜〜!!』』

 

『『(ボヘ〜・・・・)』』

 

ピカチュウとアチャモはニヨニヨと笑い、怒れるイーブイをルカリオとキモリが抑え、ミズゴロウとミライドンはキョトンと見ていた。

 

「・・・・そういうのが、先生の悪い所」

 

“・・・・?”

 

「・・・・独り言よ」

 

プイッと顔を背けるヒナを、先生は少し可愛いと思ってしまった。そして少し熟考してから、ヒナは先生に顔を向けて声を発する。

 

「『エデン条約』が軍事同盟、ね・・・・まあ、興味深い見方ではあるかもしれない」

 

“・・・・・・・・”

 

「ただ、少なくとも私はそうは思わない。アレはれっきとした『平和条約』、私はそう考えてる」

 

“成る程・・・・?”

 

ミカは『エデン条約』が、『新たな軍事同盟』だと見ているが、ヒナは『平和条約』であると認識しているようである。

 

「条約によって生み出される『エデン条約機構‹ETO›』・・・・アレを『武力集団』と捉えた所で、アレはナギサが単身で統制できるようなものじゃない。『万魔殿‹パンデモニウム・ソサエティー›』のリーダーである『マコト』も、ナギサと同様の権限を持つ事になる。ソレだけじゃなく、他の『ティーパーティー』や『万魔殿』のメンバーに対してもある程度の権限が分割される。だからETOが誰か1人の意志で本来の目的を失って、暴走するような事は考えにくい」

 

確かに、ヒナの見解は尤もだ。『武力集団』となったとしても、元々犬猿の仲である両校、そして我の強い代表達がそう簡単に足並みを揃える事は先ず無い。

 

「勿論、その全員が協力するなんて事態になれば、理論的には有り得る事かも知れないけど・・・・」

 

ヒナは一拍置いてからまた口を開く。

 

「そもそもの話として、もしそんな事ができるのなら、両学園の統合でもしておけば良いだけの筈。ソレに、『マコト』は誰かと協力するだなんて事ができない質だから・・・・」

 

『『『(コクコクッ!)』』』

 

ヒナの言葉に、アブソル達は激しく同意するように首を縦に力強く振った。

 

“・・・・じゃあマコトは、どうして『エデン条約』に賛同してるの?”

 

実は先生も、マコトには以前〈アビドス〉での騒動で、声だけを聞いた事があるが、確かに協調性のある性格には思えなかった。

 

「・・・・賛同というか多分、何も考えてないんじゃないかしら。そもそも、ゲヘナ側で『エデン条約』を推進したのは、私だったから」

 

“ヒナが・・・・? どうして?”

 

「・・・・色々面倒だし、『引退』するのもアリかなって」

 

“『引退』?”

 

「ETOができたら、今より遙かに〈ゲヘナ〉の秩序はマシになる筈。そうなったらもう、私が風紀委員長じゃなくても良いでしょう」

 

“成る程・・・・”

 

ヒナが『エデン条約』を推進している事に疑問に思い、そしてヒナはその理由が、『ゲヘナ風紀委員長を引退したい』からと言った。

 

「風紀委員長、まだですか?」

 

「・・・・ええ、今行く」

 

先生と結構長く話し込んでいた為、、セナさ待ちくたびれたのか、早く切り上げるよう、やんわりと抗議する。

ソレに頷いて、ヒナはアブソルの背中に乗り、ゴロンダがドンカラス達のブランコに乗り、静かに去ろうとした。

が、その歩みを少し止め、ヒナは先生に視線を向ける。

 

「『補習授業部』の事は、先生が守るのよね?」

 

“うん”

 

「・・・・そう」

 

そしてヒナは、『補習授業部』について確認し、ソレに対して先生は真っすぐな眼で肯定した。

 

「・・・・じゃあ、『秘伝スパイス』の事が分かったら連絡するから、その時までーーーーまたね」

 

“じゃあね、ヒナ。『秘伝スパイス』の場所が分かったら一緒に採りに行こう、またね”

 

「・・・・予定があけばね」

 

最後に、2人は『秘伝スパイスの回収の約束』をして、「またね」と、次も会おうと言う『約束』をして別れた。

そして先生は両肩にイーブイとアチャモを乗せ、頭にピカチュウを乗せたミライドンに乗り込み、その先生の後ろにミズゴロウとキモリ、そしてルカリオが乗り込み、〈トリニティ〉へと戻って行った。

 

 

 

 

 

 

 

そして先生達と『補習授業部』の面々は合宿所に戻り、ベッドルームに行くと、漸く人心地付いた。

 

「何だか、怒涛の1日でしたね・・・・」

 

『ガルラ〜・・・・!』

 

「そうですね、夜のお散歩がこんなにハードな事になるなんて・・・・」

 

『ジュペぺぺぺ☆』

 

「ーーーーうん、でも楽しかった」

 

『リュ〜・・・・』

 

「・・・・えへへ」

 

『ヘラクロ』

 

朝の大雨、洗濯物全滅、停電、『水着パーティー』、夜のお散歩、さらに『美食研究会』とバトル。濃い1日を過ごしヒフミは疲れたように肩を落とし、母ガルーラは大きく欠伸をし、子ガルーラは帰る途中で夢の世界に旅立ってしまった。

ハナコも流石に疲れたように同意するが、ジュペッタは楽しかったと言わんげで宙を泳ぐ。

アズサも楽しかったと言い、子ガルーラと同じく夢の世界に行ってしまったミニリュウをベッドに優しく寝かしつけてあげた。

そんな中、コハルは嬉しそうに頬を緩め、ヘラクロスもニコニコと笑っていた。

 

「コハルちゃんは、アレからずっと嬉しそうですね? やはり、ハスミさんの期待に応えられたからですか?」

 

「そうよっ、悪い!? ハスミ先輩が応援してくれるなんて、初めてだったし・・・・私とヘラクロスが十分強いだなんて、嬉しい・・・・! えへ、えへへへへっ・・・・!」

 

「うふふ、ソレは何よりです♡ 後はハスミさんが願っている通り、落第を免れないといけませんね?」

 

「わ、分かってる! 大丈夫よ、わ、私はエリートなんだから!」

 

「はい・・・・私も、頑張らないとです♡」

 

すっかり舞い上がってしまっているコハルに、ハナコがニコリと現実に引き戻す事を言い、漸くシャキッとなると、ハナコも真面目に取り組むような事を言った。

 

「あはは・・・・もう遅いですし、そろそろ寝ましょうか。明日の勉強に支障が出ると良くないですし・・・・では、お疲れ様でした」

 

“皆お疲れ様、おやすみ”

 

ヒフミがそう締めると、先生達は自室に戻り、ヒフミ達もジャージに着替えてベッドの中に入ると、すぐに眠った。

長い1日が終わりを告げ、新たな明日へと始まろうとしていた。

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