ポケモンアーカイブ   作:BREAKERZ

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『秘伝スパイス』の実食はまだまだ先になります。


諦めない努力、アズサの告白

ー先生sideー

 

「どうやら私が思っている以上に、〈トリニティ〉は面倒な事になっているみたいね」

 

“私が余計な事を言ったせいかな・・・・”

 

「先生に落ち度は無いわ。周りの言葉を素直に受け入れられなくなったナギサが『子供』なだけよ」

 

『第2次特別学力試験』を『温泉開発部』に滅茶苦茶にされた後。ヒナと先生は、『補習授業部』の皆を1度『風紀委員会』に預け(余計な詮索をしないようヒナが命令し、手当て等は火宮チナツとタブンネ(色違い)に任せた)、『巨大オトシドリ』がいる岩山へとやって来た。

既に爆破を行った『温泉開発部』のメンバーから、謎のタレコミでこの辺に温泉があると情報を与えられ、爆破を行ったのかは聴衆済みだ。

先生と『補習授業部』、そしてヒナは、ソレがナギサからの妨害だとすぐに理解する。『補習授業部』のポケモン達は怒り心頭になり、今ルカリオとイーブイが怒りのはけ口となって組み手をしている。

 

『ストオオオクッ!!』

 

そして、岩山を登っていたミライドンとアブソルの上空から、『巨大オトシドリ』が行く手を阻むように岩を落としてくるが、先生はミライドンを巧みに操作し、ヒナを背中に乗せたアブソルは軽快な動きで回避しながら岩山を駆け上がる。

そして、ほどなく頂上に到達すると、『巨大オトシドリ』が待ち構えていた。

 

“「・・・・・・・・・・・・」”

 

『ストォッ!?』

 

『巨大オトシドリ』は、先生とヒナを見た瞬間、その白い顔が一瞬で青ざめさせ、一旦頂上の山に寄りかかるっている岩を嘴で砕き、中にある『秘伝スパイス』を頬張ると、

 

『ストオオオオオオオオクッッ!!!』

 

緑色のオーラを纏い、更に力を増したように雄叫びをあげ、勝利を確信したのか、コチラを嘲るような愉悦に満ちたしたり顔で先生とヒナを見下ろすと、【いわなだれ】で岩を落としていく。

 

「ーーーーアブソル。ゴロンダ」

 

『ソルッ!』

 

『ゴロゥ!』

 

ヒナがアブソルから降りてモンスターボールからゴロンダを出すと、落ちてくる岩をアブソルが【つじぎり】で切り裂き、ゴロンダがその拳で粉砕していく。

 

“『秘伝スパイス』を食べてパワーを増強させたようだね”

 

「面倒だから早く終わらせた方が良いわよ、先生」

 

先生とヒナは『巨大オトシドリ』ーーーーの更に上空にいる。ドンカラスの背中に乗ったピカチュウが飛び降りた。

 

“ピカチュウ! 【かみなりパンチ】!”

 

『ピィィィィカァァァァァァァァッッ!!!』

 

ーーーーバチィィィィィィィィッッ!!!

 

『ストオオオオオオオオクッッ!?!?』

 

「アブソル。ゴロンダ。ドンカラス」

 

『『『!!!』』』

 

ーーーードカバキメギボコグシャゴシャ!

 

ーーーーヒュルルルルルルルル・・・・。

 

ガラ空きだった上から苦手なタイプの『でんきタイプ』の技を叩きつけられ、『巨大オトシドリ』は落下し、その最中に四獣3匹に袋叩きにされ、地面に向かって錐揉み回転しながら小さくなっていき、スラム街の何処かに落下していった。

ピカチュウは途中から『巨大オトシドリ』から降りてドンカラスに空中で回収され、先生の元に戻る。

 

「・・・・先生。『秘伝スパイス』よ」

 

『巨大オトシドリ』が落下している間に、『秘伝スパイス』を回収しに行っていたヒナの手には、『緑色に光る秘伝スパイス』が持たれており、大半を先生に手渡した。

 

“ありがとうヒナ。え~と・・・・『ひでん:にがスパイス』。血行促進で血の巡りを良くし、身体もポカポカと暖めて免疫効果もアップする、か”

 

「先生。コレで何か、『補習授業部』の子達にサンドイッチでも作ってあげて。あの子達も落ち込んでいると思うから」

 

“ありがとうヒナ”

 

先生はヒナから『ひでん:にがスパイス』を受け取った。

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

“ヒナ・・・・?”

 

ヒナが先生をジィっと見ており、先生はどうしたのかと問うた。

 

「何でもないわ。早く〈トリニティ〉に戻った方が良い。あまり〈ゲヘナ〉に長居すると、色々面倒だから」

 

“うん”

 

「先生。“あんな事をされても、アナタはナギサを助けたいの”?」

 

今度はヒナが先生に問う。正直ヒナ自身も、『裏切り者』の排除の為にここまで卑劣な手段を講じてくるナギサに、少しばかりの嫌悪感を抱いているのだろう。

先生はそんなヒナの心情を理解しているのか、困ったような顔をしながらも、笑顔で応じる。

 

“確かに、ナギサはやり過ぎてしまっている。けど、ソレでも、ナギサも私の『生徒』だからね。『生徒』が誤った事をしているなら、ソレを止めるのも『先生‹私›』のやるべき事だから”

 

「そう。本当に、お人好しね」

 

ヒナはやれやれと言いたげに肩を落とすと、ミライドンに乗って岩山を降っていく先生を見送った。

 

 

 

 

 

 

 

ーヒナsideー

 

先生を見送るヒナのその目には、何処か寂しそうになっていた。

 

『・・・・・・・・・・・・ソル』

 

「アブソル・・・・?」

 

『カァー』

 

「ドンカラス?」

 

『ゴロォ』

 

『ゴロンダ?』

 

アブソルがヒナの身体に擦り寄り、次にドンカラスが地面に降りて、その翼を広げてヒナを抱き締め、更にはゴロンダが抱き締めた。

 

「・・・・・・・・ありがとう、皆」

 

ヒナは抱き締めてくる皆に身を委ねた。次に懐のハイパーボールに入っている『隠し玉』も出てきて、その子にも抱き締められるのは割愛する。

 

 

 

 

 

 

 

 

ー先生sideー

 

『補習授業部』と合流した先生は『ゲヘナ風紀委員会』にお礼を言い、〈トリニティ〉に戻ると、再び合宿所へと帰ってきた。

ナギサとミカに会おうとしたがナギサは姿をくらまし、ミカとも連絡がつかない状態になっていた。

 

「何だかんだで戻ってくる事になっちゃいましたね」

 

「もうお別れだと思って出たのに、すぐこうなるなんて。やっぱり人生は分からないものだ」

 

合宿所のベッドルームに到着し、温かい飲み物を飲んで人心地付き、ハナコとアズサはいつも通りである、

 

「感傷に浸ってる場合じゃないでしょ!? これからどうするの!?」

 

が、コハルが騒ぎ始めた。

 

「って言うか、本当に『ティーパーティー』の偉い方たちが私たちを退学させようとしてるなら、どうしようもないじゃん! 知恵を寄せ合った所で、何したって無駄なんじゃないの!?」

 

確かにその通りである。この〈トリニティ総合学園〉だけでく、自治区を治める生徒会『ティーパーティー』を敵にすると言う事は、〈トリニティ〉全体を敵に回すのと同じである。たった数人の生徒と数匹のポケモンでどうにかなるものでもない。

 

「一応、1週間後にある『第3次特別学力試験』が最後のチャンスではありますが・・・・」

 

「ここまでありとあらゆる手で邪魔されてしまいますと、確かに厳しいかもしれませんね」

 

「あうぅ・・・・」

 

ヒフミは『第3次特別学力試験』に望みをかけようとしているが、ハナコはここまで妨害してきたナギサの更なる邪魔が入る厳しい状況だと言う。

 

「そ、そもそもどうしてこんなことになってるのよ!? 何で『退学』にならなきゃいけない訳!? 『トリニティの裏切り者』とか意味わかんない! どうして私達が疑われなきゃいけないのさ!? もし本当に退学になったら・・・・『正義実現委員会』には、もう・・・・」

 

『ヘラクロス・・・・』

 

「コハルちゃん・・・・」

 

「・・・・・・・・」

 

『補習授業部』の中で唯一、『裏切り者の容疑者』ではなく、『人質』として入れられたコハルは、こんな事態になっている事に嘆き、そんなコハルの背中をヘラクロスが優しく擦り、他のメンバーは気まずそうに見つめるしかなかった。

 

“・・・・ごめん。私がナギサにああ言ったせいで・・・・”

 

「・・・・いいえ。そのお話を聞いた限り、先生は私達の為に言ってくださったのでしょう? 寧ろ感謝するべき事です」

 

ここに戻るまでに先生が先日、ナギサとの話し合いをして、ナギサを怒らせてしまったせいでこんな事になった事を謝るが、ハナコは先生の真意に気付いており先生に感謝した。

 

「もし私がその場にいたら、あの『猫ちゃん』にはもっと酷い事をしていたかも知れません」

 

『ジュペ・・・・』

 

ハナコの恐い言葉に同意するように、ジュペッタが袖の爪を鋭くし【シャドークロー】を出して静かに頷く。

 

「・・・・・・・・」

 

「この1週間で、90点以上取れるようになんて・・・・」

 

「そうですね・・・・ソレに、これ以上ナギサさんが良からぬ事をしないように見張らねばなりませんし・・・・」

 

「ぐすっ・・・・無理、絶対無理よ・・・・ここまでスッゴい頑張ったのに、これ以上なんて・・・・。頑張ったもん・・・・でもこれ以上は、私にはもう無理・・・・私、バカなのに・・・・無理だって・・・・うぅっ・・・・」

 

『ヘラクロ・・・・』

 

「コハル・・・・」

 

『リュ〜・・・・』

 

「コハルちゃん・・・・」

 

『ジュペ・・・・』

 

合格する為には90点以上を取り、更に言えば、この〈トリニティ総合学園〉の生徒会『ティーパーティーのホストのリーダー』であるナギサの妨害を突破しなければならない。

ヒフミとハナコが改めて言うと、遂にコハルがこの絶望的な状況に泣き出し、ヘラクロスがソっと優しく抱きしめた。

 

「と、とりあえず、今日はもう休みませんか? 何か、何かしらきっと方法はあると思います・・・・いいえ、ある筈です。頑張って見つけます。それに先生も手伝ってくれますし・・・・」

 

「ヒフミちゃんも、キチンと休んだほうが良いですよ・・・・? ここまでずっと無理されてましたし・・・・」

 

「で、ですが今頑張らないと・・・・」

 

『ガルラ』

 

「へ? ガルーラァァァァッッ!!?」

 

アズサとハナコも絶望しそうになるが、ヒフミは諦めず、打開策を探そうとしているが、無理をしているヒフミを見て、ハナコが休むよう言うがヒフミは部長として頑張らねばと言いそうになるが、ガルーラがヒフミの頭を掴んでベッドの方に放り投げると、ベッドのクッション性でポヨンポヨンとヒフミが弾む。弾みが落ち着いた所で、子ガルーラがヒフミに毛布を掛けた。

 

「私も、一緒に考えますから。コハルちゃんの勉強も、ヒフミちゃんの事も手伝います。・・・・兎に角今日は、一旦休むとしましょう」

 

『ガルっ!』

 

『カルッ!』

 

「そう、ですね・・・・はい」

 

ハナコが説得し、ガルーラ母子も「休め!」と言いたげに言うと、ヒフミも漸く折れた。

 

「では、今日は一旦この辺りで。お疲れ様でした」

 

最後の『特別学力試験』まで、後6日となった1日を終えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして5日経ち、『第3次特別学力試験』に向けて日々勉強と努力を重ね、『第4次補習授業部模試』では、アズサは82点。コハルは74点。ヒフミは79点の不合格になり、ハナコだけは100点を出し、更にヒフミ達は勉強を重ね、ピカチュウ達は洗濯と掃除と食事を執り行いながらサポートに徹し、全員が一丸となっていた。

そして『第5次補習授業部模試』では、ハナコは100点。アズサは94点。コハルは90点。そしてヒフミは93点を出し、見事合格圏に入った。しかし、次の日の『第6次補習授業部模試』では、ハナコは100点。アズサは97点。コハルは83点。ヒフミは89点と、調子が下がっていった。やはり長期に渡る勉強、退学の危機感、そしていつ襲ってくるか分からないナギサの妨害の恐怖、ソレらが重圧‹プレッシャー›となって、食事も睡眠もロクに取れない状態になっているのであろう。

翌日に運命の『第3次特別学力試験』を迎えた夜。

 

「・・・・遂に明日、ですね」

 

「はい・・・・」

 

「・・・・・・・・」

 

「ま、まさか急に、色々と変わったりしないよね?」

 

「はい、今の所は・・・・」

 

「そうですね。試験範囲は以前の通りですし、合格ラインも変わらず90点以上。場所は『トリニティ第19分館の第32教室』。本館からは離れていますが、ソコまで多くはありません。時間は午前9時からで、変わっていませんね」

 

ヒフミがいよいよ最後の試験を控え、全員が緊張する中、コハルが不安そうに呟くと、ヒフミも不安そうに返し、ハナコがスマホロトムに送られてきた掲示板の内容を詳しく話した。

 

「寧ろ気になる点と言えば・・・・昨日から本館が不自然な位に静かな事です。人気がピタッと無くなってしまったようで。・・・・念の為今晩も、私の方で掲示板をずっと見ておきますね」

 

「は、ハナコちゃんも寝た方が・・・・」

 

「ふふっ、私は大丈夫です。ソレに、私にはこれくらいしかできませんし・・・・」

 

「そ、そんな事はありません! ハナコちゃんが凄く丁寧に勉強を教えてくれたお陰で、私もアズサちゃんとコハルちゃんも、スッゴク成績が上がって・・・・!」

 

「ソレは、皆さんが頑張ったからですよ。何日もロクに睡眠をとれなかったのに、良く頑張ったと思います」

 

実際、ヒフミでも分からない問題や、ナギサの妨害の予想もハナコの尽力で捗った。ハナコの貢献度は『補習授業部』で1番と言って良い。

 

“・・・・うん、きっと大丈夫”

 

「はい。ソレでも、90点はギリギリですが・・・・明日の『試験問題』が簡単だったら、きっと・・・・」

 

「・・・・・・・・」

 

「・・・・っ! そ、そんな都合の良い事起きる訳ない! 私はまだまだ深夜まで勉強するから! 100点! 100点取れれば、誰も文句なんて言えないでしょ!?」

 

コレまでの勉強で大丈夫だと言う先生とヒフミだが、アズサは目を逸らし、コハルは夜更かしして勉強すると言い出した。

 

「こ、コハルちゃんまで・・・・気持ちは分かりますが、今日はもうゆっくり休んだ方が・・・・」

 

「そうですよ。コハルちゃんが頑張ったのは皆が知ってます、大丈夫です。今日はもう休んで、明日に備えた方が良いと思いますよ」

 

「休むのも戦略の内だ」

 

「はい。そしてソレは、アズサちゃんも同じですよ?」

 

「・・・・うん。今日くらいはゆっくり休もうと思う」

 

無理しようとするコハルを皆で休むように言うと、ヒフミが締めるように声を発する。

 

「いよいよ明日・・・・私達の運命が決まります」

 

「もし・・・・いや、縁起の悪い事は言わないでおこう。必ず合格する」

 

「わ、私も! 絶対に負けないんだから!」

 

「そ、そうですね。泣いても笑っても後1回です。頑張りましょう」

 

「はい。ここまでしっかり頑張ってきたのですから、後は最後まで最善を尽くすだけです」

 

アズサとコハルはやる気十分であり、ハナコもソレに頷いた。

 

“・・・・今までの頑張りを信じよう。きっと大丈夫”

 

「はいっ」

 

「そうですね」

 

「うん」

 

「・・・・・・・・」

 

そして、全員が明日に備えて就寝した。

 

 

 

 

 

 

 

ーアズサsideー

 

「・・・・・・・・」

 

皆が寝静まった夜中にアズサは起き上がって、傍らに眠るミニリュウを置いてどこかへ向かっていった。

これまで何度もこうして夜中にどこかへ行っている。

 

「・・・・・・・・」

 

『ジュペ・・・・』

 

そして、ハナコとジュペッタはソレ気づいていながら、何も言わず、その背中を見ているのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてアズサは〈トリニティ〉の廃墟にて、以前会っていた女性と、傍らにいるヘルガー(色違い)と会合していた。

 

「アズサ、日程が変わった」

 

「・・・・?」

 

「明日の午前中だ、約束の場所で命令を待て」

 

白いロングコートに『アリウス分校』の腕章を付けた彼女はアズサに作戦の日程変更を伝える。

 

「ま、待って『サオリ』、明日は・・・・」

 

「何か問題が?」

 

「ま、まだ準備ができてない。計画よりも日程を早めるのは、リスクが大きすぎる」

 

「いや、明日決行だ。これは確定事項、しっかり準備をしておけ」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

アズサは明日が『第3次特別学力試験』があるので、日程を早めるのに反対するが、『サオリ』と呼ばれた女性に拒否されてしまった。

 

「明日になれば、全てが変わる。私達の〈アリウス〉にも、この〈トリニティ〉にも、不可逆の大きな変化が起きる事になる。〈トリニティ〉の『ティーパーティー』のホスト、“桐藤ナギサのヘイローを破壊する”・・・・その為にお前はここにいるんだ」

 

「・・・・・・・・」

 

「レンタルポケモンが使えないだろうが、お前の実力は信頼している。上手くやれ、“百合園セイアの時のように”」

 

『サオリ』の目的はナギサのヘイローを破壊するようで、ソレをアズサにやらせようというのである。・・・・セイアと同じくと言って。

 

「・・・・分かった。準備しておく」

 

アズサはそう返して、背を向けて立ち去ろうとするが、『サオリ』はそんなアズサに向けて声を発した。

 

「アズサ」

 

「・・・・?」

 

「忘れてないだろうな、『vanitas vanitatum』」

 

「・・・・『全ては虚しいもの』。どんな努力も、成功も、失敗も・・・・全ては最終的に、無意味なだけ。・・・・1度だって、忘れた事はない」

 

アズサがよく口に出す言葉を、『サオリ』が口にする。ソレにアズサは噛み締めように返答するのであった。

 

「・・・・・・・」

 

『・・・・?』

 

『サオリ』は立ち去っていくアズサの背中を見送り、ヘルガー(色違い)は一瞬、別の通路の暗がりに目を向けるが、『サオリ』が立ち去ったのでついて行った。

 

 

 

 

 

ーハナコsideー

 

「・・・・・・・・」

 

『・・・・・・・・』

 

そして、アズサが出ていくのを見ていたハナコとジュペッタが、【ゴーストダイブ】で影に隠れながら、ヘルガー(色違い)が一瞥していた通路から出てきた。

 

 

 

 

 

ー先生sideー

 

その頃、先生が明日に備えてアイテムやらを確認していると、部屋のドアがノックされ、ルカリオが出るとソコには。

 

「こ、こんばんは、先生・・・・ま、まだ起きていらっしゃいましたか」

 

“ヒフミも、眠れない感じ?”

 

「は、はい・・・・」

 

やはり不安なのか、ヒフミとガルーラがやって来た。すると、またドアがノックされ開かれると。

 

「私も来ちゃいました♡」

 

『ジュペ♪』

 

「ハナコちゃん・・・・」

 

ハナコとジュペッタもやって来た。しかし、またもドアがノックされ。

 

「皆何してるの・・・・?」

 

『ヘラクロス・・・・』

 

「コハルちゃん達まで・・・・」

 

今度は何故かミニリュウを抱えているコハルとヘラクロスまでやって来た。

 

「明日は試験なのに、何してるのよ。休む事も大事だって言ったのはソッチでしょ・・・・!?」

 

「まあ、そうなのですが・・・・」

 

「何かアズサも、ミニリュウ置いてどっか行っちゃったみたいだし・・・・」

 

『リュ〜・・・・!』

 

アズサが居なくて泣きそうになっているミニリュウ。

 

「まあ、緊張する気持ちは凄く分かるけど・・・・」

 

「・・・・実は先程、『シスターフッド』の方々に少し会ってきたんです。色々と調べたい事があって・・・・」

 

ハナコがシリアスな顔となり、意を決して話し始めた。

 

「明日、私達が試験を受ける予定の『第19分館』についてなのですが・・・・」

 

「ま、まさかまた場所が変わって・・・・!?」

 

「いえ、そうではありません。ただソコにはこの後、“かなりの数の『正義実現委員会』が派遣されて、建物全体を隔離するとの事です”」

 

「!!?」

 

「建物全体を・・・・?」

 

「『エデン条約に必要な重要書類を保護する』と言う名目で『ティーパーティー』からの要請があり、建物全体を『正義実現委員会』として守る厳戒態勢に入ったとか。ソレから、どうやら本館の方にも『戒厳令』が出ているようです。昨日から変に静かだったのは、このせいみたいですね」

 

「か、『戒厳令』・・・・そんなの聞いたの初めてです・・・・」

 

「恐らく、誰1人あの建物への出入りは許されません。『エデン条約』が締結されるまで、ずっと」

 

ソレは端的に言うと、『補習授業部』が『第3次特別学力試験』を受ける事も、許されないと言う事だ。

 

「ちょっ、ちょっと待って! そしたら私達の『試験』はどうなるの!?」

 

「・・・・つまり、こう言う事です。『試験を受けたいのであれば、『正義実現委員会』を敵に回せ』、と・・・・」

 

「あ・・・・」

 

「そ、そんな・・・・わ、私がハスミ先輩に事情を説明して・・・・!」

 

「・・・・難しいと思います。ハスミさんには『裏側の理由」は知らされていないでしょうし。ハスミさんが私達を助けたら、ソレは『ティーパーティー』に対する明確な離反と同義。ハスミさんも『正義実現委員会』から追放されてしまうのではないでしょうか」

 

「うっ、うぅ・・・・」

 

「全く・・・・どうやらナギサさんは本気で、私達を『退学』にさせようとしているようですね・・・・」

 

ハスミにも頼れない状況を作られてしまっていた。ハスミは『正義実現委員会』に必要不可欠な副委員長。そんなハスミを切り捨てる事にもなりかねない状況を作るとは、ナギサは本当になりふり構っていないようだ。

 

「どうして、ソコまで・・・・」

 

ヒフミも、自分にあんなに好意に接してくれたナギサのやり方を理不尽と思った。『やらかし』をした自分は兎も角、他の皆にまでこんな理不尽を強いるだなんて。

と、途方に暮れそうになる中、ドアが開かれ、深刻な顔をしたアズサが入ってきた。

 

「・・・・私のせいだ」

 

『っ! リュ〜!』

 

「アズサちゃん!? ど、どこに行ってたんですか・・・・?」

 

『ガルラ!』

 

「・・・・・・・・」

 

『・・・・・・・・』

 

夜中に勝手にいなくなったアズサに、ミニリュウはコハルの手から出て、アズサの足元に近づき頬ずりし、ヒフミとガルーラはどこに行っていたのかと問いかける。

ハナコとジュペッタは何かを知っているようで、アズサをジッと見つめていた。

 

「・・・・皆、聞いて。話たい事がある」

 

「アズサちゃん・・・・?」

 

「・・・・・・・・」

 

「アズサ・・・・? ど、どうしたの? 具合でも悪いの?」

 

「アズサちゃん、身体が震えて・・・・?」

 

そして唐突に、アズサは身体を若干震わせながら話したい事があると言い出し、ソレを聞いたヒフミとコハルは彼女を心配する。

 

「・・・・皆にずっと、隠していた事があった。でも、ここまで来たらもうこれ以上隠しておけない・・・・」

 

ミニリュウを首に掛けたアズサは、震える身体を鎮めながら口を開く。

 

「・・・・『ティーパーティー』のナギサが探している『トリニティの裏切り者』は、私だ」

 

「・・・・はい?」

 

「え? きゅ、急に何の話・・・・?」

 

「・・・・・・・・」

 

アズサは自分が、『トリニティの裏切り者』であると告白した。ソレを聞いて、ヒフミとコハルは訳が分からないと戸惑い、ハナコは悲しそうに顔を俯かせる。

 

「私は元々〈アリウス分校〉の出身。今は書類上の身分を偽って、〈トリニティ〉に潜入している」

 

『リュ〜?』

 

「あ、〈アリウス〉? 潜入・・・・?」

 

『ガル?』

 

『カル?』

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

『ジュペ・・・・』

 

「・・・・えっと・・・・何それ? 〈アリウス〉・・・・? どういう事?」

 

『ヘラクロス??』

 

アズサは自分は〈アリウス分校〉という学校の出身であると告げるが、ヒフミとガルーラ、コハルとヘラクロスは〈アリウス〉が何なのかよく分かっていないようであった。

 

「〈アリウス分校〉・・・・かつて〈トリニティ〉の連合に反対した、分派の学園です。その反発のせいでトラブルとなり、その後はキヴォトスのどこかに身を潜めてひっそりと過ごしていると聞きましたが・・・・」

 

流石と言うか、ハナコはやはり〈アリウス分校〉の事も知っており、ヒフミ達とコハル達の為に〈アリウス分校〉について説明した。

 

「そう。私はここに来るまで、ずっと『アリウスの自治区』にいた。アリウスとしての任務を受けて、今はこうしてこの学園に潜入している・・・・」

 

ソコでアズサは一拍置いてから口を開く。

 

「その任務と言うのは・・・・『ティーパーティー』の桐藤ナギサ、『彼女のヘイローを破壊する事』」

 

アズサが明かしたのは、自分がナギサのヘイローを破壊する為に潜入していると言う、つまり『暗殺』と言う事だ。

 

「・・・・っ!?」

 

「嘘でしょ!? そ、ソレってつまり・・・・」

 

「・・・・〈アリウス〉は『ティーパーティー』を消す為なら、何でもしようという覚悟でいる。〈アリウス〉は先ず『ティーパーティー』のメンバーであるミカを騙して、私をこの学園に入れた。詳細は知らないけど、きっとトリニティと和解したいとか、そういう嘘を吐いたんだろう」

 

「成る程、ミカさんを・・・・確かに彼女は政治には向いていないと言われていましたが・・・・」

 

アズサの衝撃的な告白に、ヒフミは言葉を失い、コハルも絶句してしまう。更に〈アリウス〉は、ミカを騙してアズサを学園に入れたという事実が伝えた。

 

「恐らくは全てが終わった後、その罪をミカさんに着せる・・・・そういう流れを想定しているのでしょうか。〈アリウス〉が〈トリニティ〉を憎んでいる事は知っていましたが、成る程・・・・」

 

ハナコは〈アリウス〉がミカを利用しようとしていると理解を示す。

 

「ま、待って・・・・急に何の話・・・・? いや、嘘だとは思わないけど、別に今の私達とは関係ないじゃん・・・・? 〈アリウス〉の事は良く分からないけど、それが私達の『補習授業部』とどういう関係がある理由・・・・? アズサは何で急に、そんな話をしてるの・・・・?」

 

コハルは、突拍子もない話をアズサからが聞かされて、自分達と何か関係があるのかと問う。

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

“・・・・・・・・・・・・・”

 

『・・・・・・・・・・・・』

 

それからその場を沈黙が支配すると、アズサが声を発する。

 

「ーーーー明日の朝、〈アリウス分校〉の生徒達がナギサを狙ってトリニティに潜入する。・・・・私は、ナギサを守らなきゃいけない」

 

「・・・・・・・・」

 

「あ、明日・・・・!?」

 

「!?」

 

「うん、私はソレをどうにか阻止しないと」

 

アズサが明日、『第3次特別学力試験』がある日に、〈アリウス〉がナギサを襲撃すると言った。

アズサはナギサのヘイローを破壊するのではなく、ソレを阻止しようと思っているようだ。

 

「本館には『戒厳令』が出ている状態・・・・最後の試験でのナギサさんの無茶もあって、『正義実現委員会』は本館にいないタイミング・・・・。成る程、要人警護には最適の日ですね。アリウスもだいぶ頭は回るようです」

 

「ハナコちゃん・・・・」

 

ハナコはソコまで聞いて、〈トリニティ〉の内部情報は〈アリウス〉に筒抜けで、連中の企てを読んだ。

 

「ま、待って! おかしくない!? よ、良く分かんないけどアズサは『ティーパーティー』をやっつけに来たんでしょ? なのに守るってどういう事? 話が合わないじゃん!」

 

「ソレは・・・・」

 

コハルはアズサの言葉を聞いて、ナギサを殺しにきた筈なのに、何故ナギサを助けるのかが分からないようだ。

 

「・・・・アズサちゃん“自身”は、最初からその目的で〈トリニティ〉に来た。そう言う事ですね?」

 

「!・・・・」

 

ハナコの言葉にアズサはピクリと反応を示した。

 

「最初からナギサさんを守る為に、ナギサさんを襲撃する任務に参加した・・・・言わば、『二重スパイ』。〈アリウス〉側には『連絡係』として、常に問題無いと嘘の報告をしながら・・・・本当は裏切る為の準備をしていた」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

ハナコの推理にアズサは肯定を示すように沈黙する。

 

「・・・・どうして、ナギサさんを守ろうとするんですか? ソレは、誰の『命令』で?」

 

「・・・・コレは誰かに命令されたわけじゃない。私自身の『判断』だ」

 

アズサの行動にハナコは疑念に思い、誰かから『命令』されたのかと問うが、アズサは『自分の判断』であると言った。

 

「桐藤ナギサがいなければ、『エデン条約』は取り消しになってしまう。あの平和条約が無くなればこの先、〈キヴォトス〉の混乱はさらに深まるだろう。その時また、〈アリウス〉のような学園が生まれないとは思えない・・・・」

 

「だから平和の為に、ということですか?・・・・とっても甘くて、夢のような話ですね。今回の条約の名前と同じくらい、虚しい響きです」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

「アズサちゃんは『嘘つき』で、『裏切り者』だった・・・・。〈トリニティ〉でも本当の姿を隠し、〈アリウス〉でも本音を隠していた。アズサちゃんの周辺には。アズサちゃんに騙された人達しかいなかった、ずっと周りの全てを騙していた・・・・そういう事で合ってますか?」

 

「ハナコちゃん・・・・」

 

「いつか言った通りだ。私は皆の事も、皆の信頼も・・・・皆の心も、裏切ってしまう事になる、と」

 

「アズサ、ちゃん・・・・」

 

ハナコは更に問い詰め、その言葉を聞いて、アズサはただそれを受け入れるように肯定した。

 

「だから、彼女が探している『トリニティの裏切り者』は私。私のせいで『補習授業部』は、こんな危機に陥っている。本当にごめん。私のことを恨んでほしい。今のこの状況は全て、私がもたらしたことだから・・・・」

 

“・・・・それは違うよ”

 

「・・・・先生?」

 

“元々の原因はきっと、『信じられなかった事』の方”

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

アズサは自分のせいで『補習授業部』の皆が理不尽な目にあっている事を気にし、皆に自分を恨んでほしいと言い出したが、先生は否定すると元々の原因は『信じられなかった事』と諭す。

 

“ナギサがもっとヒフミを、ハナコを、アズサを、ハスミとコハルを信じていたら。ミカがもっとナギサの事を信じていたら。もっとお互いがお互いの事を深く信じられていたら、こんな事にはならなかった”

 

ナギサが、ミカが、そして皆が、お互いの事をもっと信じ合えていれば、こんな事にはならなかったと、先生は何処か悲しそうに言った。

 

「・・・・そうですね、そうかもしれません。今のナギサさんのように、誰も信じられなくなってしまった人を変える事は難しいです。誰かを信じるという事は、元々難しいですし」

 

先生の言葉に、ハナコは肯定を示した。『人を疑うのは簡単。人を信じるのは困難』と言うが、今回のは正にソレであろう。ハナコはソレを理解しているように見える。

 

「ですがアズサちゃんは、私達にこうして本心を語ってくれました。黙り続ける事もできたはずなのに、謝ってくれました」

 

アズサは『補習授業部』の皆の前で真実を明かし謝罪した。だがハナコはアズサを責めるように問い詰めていた。

 

「・・・・ごめんなさい。先程は何と言いますか、どうしても意地悪したくなってしまったんです。アズサちゃんの真っすぐな顔を見ていると、何だか心が落ち着かなくて」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

ハナコが謝罪するが、アズサはハナコの意見は当然だと言わんばかりな視線を向けており、気にしてはいないようだ。

 

「『補習授業部』はちょっと変わった意味で、ある種の舞台のように注目を浴びる存在として生まれました。本来ならアズサちゃんのような『スパイ』は、こんな注目される所に長くいてはいけない筈です。誰にも気づかれないように消える・・・・そういう手段やタイミングは、今まで幾らでもあった筈。しかしアズサちゃんは、そうしませんでした」

 

「・・・・・・・・」

 

アズサ程の手練であれば、誰にも気づかれずに逃げる事は出来た筈なのにしなかった。アズサは思わず、目を逸らしてしまう。

 

「その理由を、私は知っています。『『補習授業部』での時間があまりにも楽しかったから』。そうではありませんか?」

 

「・・・・!」

 

そしてハナコが、その理由は『補習授業部での時間が楽しかったから』、だと答えると、アズサは図星とばかりに肩を震わせ、息を詰まらせた。

 

「皆で一緒に勉強したり、ご飯を食べたり、お洗濯をしたり、お掃除をしたり、ミニリュウちゃんのお世話をしたり・・・・何をしても楽しいことばかりだったから。だから、この楽しい時間を壊したくなかった・・・・目標に向かって皆で努力する事・・・・そしてヒフミちゃんとコハルちゃんと先生と、ピカチュウさん達とガルーラさんとヘラクロスさんとジュペッタ、そしてーーーーミニリュウちゃんと、皆で知らなかったことを学んでいく事が楽しかったから・・・・違いますか、アズサちゃん?」

 

『リュゥ・・・・?』

 

「・・・・ソレは・・・・私は・・・・いや、うん。・・・・そうかも知れないな。何かを学ぶという事、みんなで何かをするというという事、パートナーのポケモンを得て、共に過ごしていく事・・・・。その楽しい時間を、私は手放せなかった・・・・」

 

ハナコがこれまで『補習授業部』でやってきた事を挙げていくと、アズサにとってそれら全てが新鮮で楽しかったから。

 

「・・・・まだまだ知りたい事が、沢山ある」

 

『リュ〜♪』

 

「海とか、お祭りとか遊園地とか・・・・行きたい所も、知りたい事もまだまだ沢山あって・・・・」

 

「アズサちゃん・・・・」

 

「・・・・・・・・」

 

首に掛けていたミニリュウを両手で持って、優しく抱き締めながらアズサが自分の『本当の気持ち』を口にし、ヒフミとコハルとハナコは黙って見ていると、不意にハナコが口を開いた。

 

「・・・・何だか知ったような口を効いてしまいましたが・・・・分かるんです、その気持ち。何せ・・・はい。同じように思った人が、いたんです」

 

『ジュペ・・・・』

 

「・・・・?」

 

「何故か要領が良くて、何をしても周りから煽てられてしまうようなタイプで・・・・」

 

アズサの『本当の気持ち』を知り、ハナコが昔話を始めた。他人の事のように話すが、恐らくソレはーーーーハナコ自身の事なのだろう。




次回語られるハナコの過去。
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