ーハナコsideー
ソレは、ほんの1年前ーーーー。
【浦和さんは、本当にスゴいですね こんな問題も簡単に解けてしまうなんて・・・・!】
【浦和さんは良いですわよね、頭がよろしくて・・・・】
【浦和様、この計画にはあなたの協力が必要なんです。ふふっ・・・・】
【浦和さんは優秀だから必要とされるのですわね】
【浦和さん、私たちと共に行きませんか。あの『ティーパーティー』を牽制するには、私達がーーーー】
【浦和さんが『シスターフッド』にスカウトされた!?】
【準備をしておいてください、浦和ハナコさん。来年の『ティーパーティー』の席は、あなたでほぼ確定ですから】
【ねぇ聞きまして? 浦和ハナコさん、来年で『ティーパーティー』に入るそうですわ】
【あらまぁ、優秀な方は羨ましい限りですわねぇ〜】
ハナコはその優秀さ故に、周りから一方的に期待され、羨望され、嫉妬され、色々な派閥からスカウトされていった。中には『シスターフッド』に『ティーパーティー』までも。
【・・・・はぁ。私は、そんな人ではないのに・・・・。私は、私は・・・・】
【・・・・ボーウ】
【あら、あなたは確か・・・・カゲボウズ、人間の負の感情を好んで食べるポケモンですね・・・・あの、その身体の中にどれだけの負の感情が渦巻いているのですか? 私、気になります】
【ボウ!?】
しかし、ハナコはそんな状況に嫌気が差していた。そして、そんな自分を取り巻くドロドロとした空気を気に入ったのか、ジュペッタの進化前の姿『にんぎょうポケモン・カゲボウズ』が現れた時、一体どんな『感情』がその中に蓄えられているのか気になり、しつこくつきまとっている内に、パートナーとしてゲットしていた。
「その人にとって〈トリニティ総合学園〉は、『フェアリータイプ』が生息するキラキラした空間ではなく、『ゴーストタイプ』が好むドロドロとした、嘘と偽りで飾り立てられた欺瞞に満ちた空間でした。パートナーになってくれたカゲボウズ以外に本心を話す事ができず、誰にも本当の姿を見せる事ができないまま・・・・”
【・・・・・・・・それは、寂しくないかい?】
ハナコは本心を、『百合園セイア』に打ち明ける。セイアはソレを聞いて、『寂しい』と思うのであった。
「・・・・・・・・」
「その人にとって、全ての事は無意味で・・・・学校を、辞めようとしていたんです。何せそのままの生活を続ける事は、監獄にいるのと同じでしたから」
“(だからワザとテストで、低い点数を取っていたんだ・・・・)”
「「(でも、ソレでどうして露出狂になったんだろう・・・・)」」
皆がハナコの過去、〈トリニティ〉にいる事が無意味に感じて辞めようとしていた事を聞きつつも、ヒフミとコハルはコレまでの奇行が何の関係があるのかが疑問としていた。
「ですが・・・・その人とアズサちゃんは違いました」
そしてハナコはアズサを見て、自分との違いを話す。
「話は一瞬変わりますが・・・・アズサちゃんは実際に今回の事が終わったら、この学園での生活は終わってしまうんですよね? そもそも書類を偽装して入っていた訳ですし、〈アリウス〉の事も最後には裏切るのだとしたら、最終的には帰る場所も無いという事ですよね?」
「あっ・・・・」
「・・・・・・・・」
ヒフミは気づき、アズサは肯定を示すように目を伏せた。確かにその通りだ。この任務が終わればアズサは〈トリニティ〉からも〈アリウス〉からも居場所を失う
「それを知っていた筈なのにアズサちゃんは・・・・『補習授業部』で、いつも一生懸命でした」
ハナコはアズサがそんな状況であっても、アズサは『補習授業部』で過ごす日々を楽しんでいた。
「その人は試験をワザと台無しにして、学園から逃げようとしていたのに・・・・一方のアズサちゃんは、短い学園生活に全力でした。どうしてそこまでするのでしょう、そこに何の意味があるのでしょう・・・・アズサちゃんがいつも口癖のように言っていた通り、『Vanitas vanitatum‹全ては虚しいもの›』の筈なのに」
ハナコは、アズサが良く口にする『自分も全ては虚しい』と達観したように虚無感を感じていたのに、ソレでも全力だったアズサに自分とは違う何かを感じていたようである。
「ですが同時に・・・・アズサちゃんはその後ろに、いつも言葉を付け加えました」
【・・・・うん。例え全てが虚しい事だとしても、ソレは今日最善を尽くさない理由にはならない】
そうアズサは・・・・諦めなかった。
【ソレにあの時は気の毒だけど、いつまでも虐げられているだけじゃダメ。ソレが例え『虚しい事』であっても、抵抗し続ける事を止めるべきじゃない】
「そうして・・・・漸く、その人も気付いたんです。・・・・学園生活の、楽しさに」
ハナコは見てきた。全てが虚しいと理解しつつも、諦めず、抵抗し、最善を尽くしてきた事を見てきたアズサの姿に、『補習授業部』と皆と過ごす、宝石よりもキラキラとした日々に・・・・。
「水着でプール掃除をしたり、皆水着で夜を過ごしたり、裸で色々な所を打ち明け合ったり・・・・自分をさらけ出せる人達と、そう言った『良くある事』を全力ですると言う事が、こんなにも楽しかったんだと」
「うん・・・・いや、裸ではなかったけど・・・・」
「さ、散歩も水着ではありませんでしたよ・・・・!?」
「え、やっぱりアレ下着だったの!?」
“遂にハナコ、総ツッコミを受けたね・・・・”
「ふふっ♡」
『補習授業部』のメンバー総出でツッコミを入れられたのだが、ハナコはソレすらも愛おしいと言わんばかりに笑みを浮かべた。
「・・・・本当に、その人は散々周りから『優秀』だの『聡明』だのと言われていましたが、そんな『当たり前の事』すら理解できない自分が、酷く陳腐な存在に思えてしまったのでしょうね」
“ハナコ・・・・”
自虐的に話すハナコのその顔は、何処かスッキリしているようにも見えた。
「・・・・アズサちゃんの言っていた通りです。虚しい事だとしても、最後まで抵抗をやめてはいけませんね」
「ハナコ・・・・」
「アズサちゃん、もっと学びたいんでしょう? もっと知りたいんでしょう? 皆で色んな事をやってみたいって、あの時話したじゃないですか。海に遊びに行くとか、ドリンクバーで粘って夜更かしとか。それを諦めてしまうんですか?」
「うっ・・・・」
アズサの在り方が、自分の価値観を覆したようでハナコはその事に感謝をしているようである。
そして、ハナコは再びアズサと目を合わせて問うと、アズサは答えを詰まらせる。ソレが雄弁に物語り、ハナコはアズサに近づく。
「・・・・何も諦める必要はありません。桐藤ナギサさん・・・・彼女を、〈アリウス〉の襲撃から守りましょう。そして私達は私達で無事試験を受け、合格するのです」
諦める事はないとアズサに言い聞かせるハナコは、更にナギサを助け、皆で試験に合格しようと高らかに宣言するのであった。
「後からどんな文句も言えないように、かけておいた罠はそのままに・・・・。それでも試験会場に辿り着き、皆で90点以上を取って、堂々と合格するんです。それが今の私たちにとって救いとなる、唯一の『答え』ではありませんか?」
「・・・・でも、そんな事は物理的に不可能な筈・・・・。試験は9時から。〈アリウス〉の作戦開始時刻もまた、同じ時間に予定されてる」
「ほ、他の方達に助けを求めるとか・・・・?」
「・・・・それもそうですが・・・・私達がしっかりと試験に合格するためには、それだけでは足りません。・・・・先ずは私達の方から動きましょう。これまで様々な嘘や策略の中で弄ばれてきましたが・・・・今度は私達の方から仕掛ける番です」
ハナコはそれが唯一の『答え』を言うが、アズサにそれは不可能と返し、ヒフミは他の誰かに助けを求める事を提案したが、ハナコはそれだけでは足りないので、自分達から動こうと皆に促した。
「なんせ今ここには『正義実現委員会のメンバー』と、『ゲリラ戦の達人』と、『ティーパーティーの偏愛を受ける自称平凡な人』と、トリニティのほぼ全てに精通した人がいます」
「・・・・?」
「へ、偏愛・・・・!?」
「・・・・?」
そしてハナコはこの場にいるメンバーを改めて見て言うと、コハルとアズサは首を傾げるが、ナギサからの『偏愛』を受けている自覚がないヒフミは首を傾げる。
「更に、優秀なパートナーポケモン達もいます。ジュペッタ。それに皆さん、やられたら徹底的にやり返してやりましょう☆」
『ジュペ♪』
『ガル!』
『カル!』
『リュ〜!』
『ヘラクロス!』
そして、自分のパートナーのジュペッタだけでなく、ガルーラ達にも視線を向けると、ポケモン達は気合いをいれるように返答した。
「そして、ちょっとした『マスターキー』のような『シャーレ』の先生とポケモン達までいるんですよ?」
“ま、まぁ・・・・”
「この組み合わせであれば、きっと・・・・〈トリニティ〉くらい、半日で転覆させられますよ♡」
「・・・・・・・・はい!?」
「えっ、どう言う事!? 何をする気!?」
「・・・・・・・・」
『っっ!!?』
最後にハナコは先生達の事を挙げて、コレだけの戦力ならば、半日で〈トリニティ総合学園〉を転覆できると言い出し、ソレを聞いて一同は当然困惑してしまう。
「何をする何も、『試験』を受けて『合格』するだけです♡」
そんな周りの反応を見ても、ハナコはにこやかに微笑んでいた。
「作戦内容は一旦、私にお任せください。さあ、今こそ力を合わせる時です。行きましょう!」
“え、えっと・・・・と、とりあえず頑張ろう!”
「おーーーー!!」
『ジュペーーーー!!』
「「「お、おぉーーーー!!」」」
『ーーーー!!』
取り敢えず先生が締めると、ハナコとジュペッタは勢いよく、他のメンバーは戸惑い交じりに手を挙げ、『補習授業部』は作戦を開始した。
ー〈アリウス〉sideー
〈トリニティ総合学園〉の未明。複数ある校門の前に、白い服にボディプロテクターを装備し、アズサの付けるガスマスクを顔に被り、その手には破壊力抜群の『グレネードランチャー』を持った生徒達が隊列を組んで並んでいた。
足元には背中に刺々しい甲羅を背負い、2本足で立ち、頭に背中の甲羅のような物を被り、顔から突き出たストローのような鼻から火を吹く、『ばくはつがめポケモン・バクガメス』も同じ並ぶ。
「・・・・チームⅣ、到着」
「特に変わった様子は無し、警戒も予想通り」
「チームⅤ、チームⅥ、チームⅧ、全て準備完了との事です」
「ターゲットの位置は確認済み。予定通り作戦を開始する。総員前へ」
武装した生徒達は、そのままバクガメスを連れて〈トリニティ〉へと侵入する。〈アリウス分校〉の1部隊である。
彼女達の目的はーーーー『桐藤ナギサのヘイローを破壊』である。
ーナギサsideー
その頃、〈トリニティ総合学園〉の何処かにある『セーフハウス』では、行方を眩ませていたナギサが、イエッサン(♂)とタブンネとポットデスと共に過ごしていた。
「・・・・ふぅ」
電気も点けず、夜の闇に支配されたセーフハウスで、タブンネの淹れてくれた紅茶を飲みながらひと息吐いていると、コンコンコンッ、とセーフルームの扉がノックされた。
「・・・・食事でしたらまだ早いです」
すると、ドアを誰かがノックしたが、ナギサは従者が夜食でも作ってきただと思っていた。
が・・・・。
「・・・・?」
『?』
「・・・・可哀想に、眠れないのですね」
「っ!?」
『!!』
部屋の扉が開かれ、誰かと思ったが、闇の向こうから聞き覚えのある声が聞こえてきて、ナギサはビクッと身体を震わせ、タブンネ達も警戒する。
「それもそうですよね、『正義実現委員会』が殆ど傍らにいない状態・・・不安にもなりますよね、ナギサさん?」
部屋の中に入ってきたのは、ナギサにとって予想外の人物ーーーーハナコであった。ハナコは入って来て早々に、ナギサに嫌味を言う。その笑顔には、底冷えするような暗さを滲ませて。
「う、浦和ハナコさん・・・・!? あなたがどうして、ここに・・・・!?」
「それは『このセーフハウスをどうやって知ったのか』、言う意味ですか? それは勿論、全て把握しているからですよ。合計87個のセーフハウス、そしてそのローテーションまで・・・・ふふっ♡」
「・・・・!?」
ナギサは戦慄した。このセーフハウスの存在を全て知っていただけでなく、ナギサが潜伏する順番まで把握していた事にだ。
「変則的な運用も大凡把握してます。例えば・・・・今のように心から不安な時は、ここの『秘密の屋根裏部屋』に隠れると言う事も♡」
「なっ・・・・!」
『『『っ!!』』』
「ジュペッタ」
ソコまで読まれている事にナギサは更に戦慄し、タブンネがナギサの前に立ち、イエッサン(♂)とポットデスがそれぞれ【トライアタック】と【ナイトヘッド】でハナコを攻撃する。
が、ハナコの身体がシュンッと、『影の中に消えて技を回避する』と、2匹の背後からジュペッタが、『影の中から』目を光らせて現れた。
「ジュペッタ。【シャドークロー】」
『ジュペ!!』
『サンッ!?』
『ポッドっ!?』
背後からの、しかも急所への攻撃を受けて、イエッサン(♂)とポットデスはセーフハウスの床に倒れる。
「イエッサン! ポットデス!」
「(カチャっ)動くな」
「・・・・!」
『タブン!?』
『リュウ・・・・』
2匹蛾倒れ、立ち上がりそうになったナギサの背後から、いつの間にか部屋に入り、背後に回った白州アズサが静かに銃口を押しつけ、タブンネの首にはーーーーミニリュウが巻き付き、更にジュペッタも【シャドークロー】をタブンネに突き立てていた。
「あぁ、勿論ここまでの間に警護の方々は全員片付けさせていただきました。だからこそこうやって堂々来た理由ですが」
ハナコはナギサに、とっくに護衛を全て片付けたと教えると、ナギサは目を鋭くしてハナコを睨む。
「白洲アズサさん、浦和ハナコさん・・・・まさか・・・・!『裏切り者』は1人ではなく、2人・・・・!?」
「・・・・ふふっ、単純な思考回路ですねぇ♡ 私もアズサちゃんも、ただの『駒』に過ぎませんよ。『指揮官』は別にいます」
「・・・・!! ソレは、誰ですか・・・・!」
この場にハナコだけでなく、アズサまで現れ、予想は完全に外れたしまったナギサの心中は混乱の極みとなる。
そしてハナコは自分達は『駒』で、『指揮官』は別にいるとと言い出し、ナギサは息を呑んだ。
「そのお話の前にナギサさん・・・・『ここまでやる必要』、ありましたか?」
「・・・・・・・・」
しかしその前に、ナギサはコレまでのナギサの理不尽な仕打ちを問い詰める。
「『補習授業部』の事です。ナギサさんの心労は、よく分かります。ですがこうして『シャーレ』まで動員して、何もここまでやる必要は無かったのではありませんか? 『第2次特別学力試験』の時なんて、『エデン条約』の相手である〈ゲヘナ〉まで巻き込んで、『ゲヘナ風紀委員長さん』なんて、ナギサさんの事を理知的な人物だと思っていたのに、失望されたそうですよ?」
「それは・・・・」
それに関してナギサは何も答えられない。ナギサ自身も、この『やり方』には思う所は一応持ち合わさていたようである。
「最初から怪しかった私や、アズサちゃんは仕方ありません。ですが・・・・ヒフミちゃんとコハルちゃんに対しては、あんまりだと思いませんか?」
「・・・・・・・・」
「特にヒフミちゃんは・・・・ナギサさんと、仲が良かったじゃないですか。どうしてこんな事をしてしまったのですか? ヒフミちゃんがどれだけ傷ついてしまうのか、考えなかったのですか?」
「・・・・・・・・そう、ですね。ヒフミさんには『悪い事』をしたかも知れません・・・・」
自分やアズサは怪しい点が多かったから仕方がないと割り切っているが、『正義実現委員会』で1番成績の悪かったからと言って、『人質』として扱ったコハルやナギサと仲の良い筈のヒフミに対する仕打ちに納得できないようである。
そして、ヒフミの名前を出された事によりナギサは言い淀むと、悪い事をしてしまったと打ち明けた。
「ですが、後悔はしていません。全ては『大義』の為。確かに彼女との間柄だけは、守れればと思っていましたが・・・・私は・・・・」
ここまでやっておいて、まだナギサにはヒフミとの『友情』に『未練』があるようだが、ハナコの目には・・・・一切の『容赦』が無かった。
「・・・・ふふっ♡ では改めて私達の『指揮官』からナギサさんへ、『メッセージ』をお伝えしますね」
「な、なにを・・・・」
「『あはは・・・・えっと、ソレなりに楽しかったですよ。ナギサ様との『お友達ごっこ』』・・・・との事です♡」
「・・・・っ!? ま、まさか、という事は・・・・!?」
そしてハナコは、ナギサがに『指揮官である人物』の『メッセージ』を伝え、そして文面から、『指揮官』が誰なのか察し、ナギサの顔は青ざめると同時にーーーー。
ーーーーダダダダダダダダダダッ!!!
アズサがナギサに発砲し、ナギサは意識を手放した。
ーアズサsideー
気絶したナギサを担ぎ、ナギサの懐から拝借したモンスターボールにタブンネ達を収めたアズサが、ハナコと共にセーフハウスから出ると、〈トリニティ総合学園〉の校舎前で、アズサは通信機で報告をする。
「目標を確保。近距離で5.56mm弾が丸々1弾倉分当てたから、1時間くらいはこのまま気を失っている筈」
「ふふっ♡ ではアズサちゃん、ここからは『敵の誘導』をお願いできますか?」
「了解。コレで、まだどこかにいる『本当のトリニティの裏切り者』に嘘の情報が流れる筈・・・・?」
実はアズサとハナコはーーーー『本当の裏切り者』を炙り出そうとし、ハナコはアズサに『誘導』を頼み、アズサはナギサを背負い直しながら頷いたのだ。
「そのハナコの仮説通りであれば、確かに〈アリウス〉も襲撃を急ぐに違いない」
「はい。私達の推測通りなら、まだ分かっていない事も幾つかあるものの・・・・。まだハッキリとした証拠は無い状態ですが・・・・『本当の裏切り者』については、個人的にはほぼ確信がありますし」
「・・・・ところで、さっきの最後のあのセリフ、必要だった?」
「あぁ、あれはヒフミちゃんの頑張りの分、勝手な仕返しと言います・・・・ちょっとくらいはショックを受けてもらおうかと。まあ全てが終われば、すぐに誤解は解けるでしょう」
「・・・・・・・・」
アズサは先程ハナコがナギサに、ヒフミからの伝言として伝えた『お友達ごっこ』発言の『ウソ』は必要だったのかとハナコに尋ねると、ハナコはちょっとした仕返しだと返答したが、アズサは呆れた目で見ていた。
「所でアズサちゃん、〈アリウス〉の兵力はどれ位か分かりますか? 正確に言うと、“ミニリュウちゃんと御三家さん達5人でどれくらい持つか”を把握したいのですが」
「詳細は分からない。けど備えは随分前からしてきたから、どれ程の相手だったとしてもかなり時間は稼げる筈。この為に毎晩、学園の周辺に『トラップ』やら『塹壕』やらを作っておいたから。ソレに、向こうには私が『手持ちポケモン』としてミニリュウを得ている事は知らないし、先生からアチャモ達を手助けとして渡されているから、その隙を突き、『トラップ』や『塹壕』がある場所に誘導しつつ、ゲリラ戦で時間を稼ぐ」
アズサは気絶したナギサをジュペッタに託し、先生から預かったアチャモとミズゴロウとキモリの入ったモンスターボールを見せ、ハナコと共に頷き合うと、お互いに背を向けて歩き出そうとした。
「じゃあ、一旦ここで。後でまた、合流地点で会おう」
「はい、また後ほど!」
そしてそう言って、アズサとミニリュウと御三家は、ハナコやジュペッタ、そしてジュペッタに抱えられたナギサと一旦別れるのであった。
ーアリウスsideー
そして、『目標』が潜んでいる筈のセーフハウスに辿り着いたアリウス兵士達は・・・・
「セーフハウスを発見! ターゲットは見当たりません!」
「・・・・先客があったか。“あの情報”が本当だったとはな。周辺を捜索しろ! できるだけ静かに! 合流する筈の『スパイ』は何処だ!? アイツを早く探せ!」
《こちらチームⅣ、奇襲に遭遇!》
「何っ!?」
ナギサの姿はなく、指揮官らしい生徒が『スパイ』を探すように指示をすると、突如、別チームの無線から奇襲を受けていると聞いて驚ぬ。
《『スパイ』です! 『スパイ』が裏切りました!》
《ーーーーシューッ、シューッ・・・・》
《うわあぁぁっ!?》
「『スパイ』が裏切っただと!? な、何が起きているんだ!!」
ーーーーダダダダダダダダっ! ドォオオオオンン!!
無線から聞こえる報告と銃声、そして小規模の爆発音に、指揮官は訳が分からないも言う。
そして、
《『裏切り』、それ以上でもそれ以下でもない》
「!?」
無線から聞こえてくる、相手が『スパイ』である白州アズサだと分かると、部隊長は更に驚いた。
アズサは今、自分達〈アリウス〉にゲリラ戦を仕掛けているからだ。
《目標は私が先に貰った》
「な、何故だ! どうしてそんな事を・・・・!」
《早く終わらせて、『試験』を受けなきゃいけないから》
「・・・・え?」
更に『目標』、桐藤ナギサも自分が貰ったと聞かされ、部隊長は何故そんな事をしたのかと返すとアズサは、『試験を受ける為』と答え、彼女は意味が分からず、間の抜けた声を出すのであった。
《因みにもう『正義実現委員会』に報告は届いてる、逃げるなら今のうち》
アズサは『正義実現委員会』にも報告した言って無線を切った。
「・・・・・・・・」
「・・・・退却しますか?」
「いや、はったり‹ブラフ›だ。『情報』が正しければ、『正義実現委員会』は絶対に動かない筈。気にする事は無い、行け!」
『了解』
しかし、指揮官はすぐに冷静さを取り戻し、この情報がブラフと判断し、このまま作戦を続行した。
◇
そしてここは、『補習授業部』が過ごしている『合宿所』。〈アリウス〉の生徒達が集まってきた。
「コチラです! 『ターゲット』を連れたまま、この建物に入るのを確認しました!」
「成る程・・・・ここに陣地を築いたという事か、白洲アズサめ」
「中に通じる入り口は2か所のみ! その内の1か所はバリケードで塞がれています!」
「開いている入り口は1つ・・・・いや、ソッチは罠だ。塞がれたバリケードを爆発させて、ソチラから侵入せよ!」
合宿所には入り口を2つ用意してあり、その一方をバリケードで塞がれていたが、指揮官はその入り口は罠だと見抜き、バリケードが敷いてある方の入り口に進むのであった。
「騒ぎになりそうですが、大丈夫でしょうか?」
「ああ、構わん。丁度『スクワッド』からも連絡が来た、すぐに増援部隊が『トリニティ自治区』に入ってくる。こうなっては最早〈トリニティ〉との全面抗争も想定した方が良い。しかしできる限りその前に、『ターゲット』を回収する!」
アリウス兵士の1人が騒ぎになっても良いのかと聞くと、指揮官は、恐らく主力チームであろう『スクワッド』からの連絡で増援が来るから問題無いと判断した。
「行くぞ! バクガメス、【ギガインパクト】!」
『バクガァァァァァァァァ!!!』
ーーーードガァァァァァァァァン!!
そして指揮官の命令で、バクガメス達がバリケードをブチ破り、内部へと侵入した。
「よし、突入!」
「だと思った」
「なぁっ!?」
ーーーードゴォォォォォォォォン!!
「ぐあぁぁっ!?」
空かさず突入すると、ソコには白州アズサが待ち受けていた。
〈アリウス〉の兵たちはバリケードを破って突入してきた為、白州アズサの設置したトラップにまんまと引っかかった。
「ちぃっ! バクガメス、【てっぺき】!」
『バクッ!』
バクガメスがその背中の甲羅で〈アリウス〉の兵達を囲むようにすると、アズサのトラップを防いでいく。
「くっ! 退くな退くな! 攻め入ってしまえば数がある以上、こちらが有利!」
ーーーーズガァァァァァァァァァン!!
バクガメスを盾のように前面に出しながら前進し、『合宿所』の教室に辿り着くが、
『アチャモ!』
『うわっ!?』
机の列から飛び出したアチャモの奇襲で【ニトロチャージ】で攻撃し、さらにトラップが発動する。
ーーーードカァァァァァァァァァン!!
「なっ、こっちも!?」
アチャモが教室を出て行き、ソレを追い、今度は廊下に出ると。
『ミジュゥゥゥゥッ!!』
『ぶわぁっ!?』
『バクガァァァァ!?』
待ち伏せしていたミズゴロウが【みずでっぽう】を放ち、バクガメス達に効果抜群の攻撃をして、トラップを起動させた。
ーーーーボォォォォォォォォン!!
「く、クレイモアだと!? どわあぁっ!?」
地雷の爆風に紛れてアチャモとミズゴロウを見失い、そしてベッドルームに入ると、
『キゥ!!』
『ぐぁっ!!』
『バグっ!?』
天井から真上に降りたキモリが【ダメおし】で攻撃して、またもやトラップを起動させる。
ーーーードドドオオオオオオオオンン!!
「なんだ、ビニール袋・・・・? いや、IED‹即席爆発装置›!? ぎゃあぁぁっ!!」
白州アズサが『合宿所』の至る所に仕掛けたトラップに見事にハマり、バクガメス達もダメージが蓄積され、御三家達に逃げられ、更に時間が経過していく。
◇
そしてポケモンの奇襲やトラップを受けつつも、漸く白州アズサと、仲間であろう『浦和ハナコ』がいる広間まで追い詰めた。
「・・・・手こずらせてくれたじゃないか、白州アズサ」
「・・・・・・・・」
苛立たしげにガスマスク越しに白州アズサを睨む指揮官だが、睨まれた本人のその顔は冷静そのものであった。
「・・・・成る程、大分減りましたね。流石はアズサちゃん達」
「うん」
「このままでは行き止まり、か・・・・『ターゲット』は何処だ?」
「隠した」
浦和ハナコが部隊の数がかなり減ったのを確認すると、白州アズサは頷き、指揮官が『ターゲット』、桐藤ナギサの所在を聞くが、隠したと返され、苛立ちを抑えながら声を発する。
「・・・・早めに吐いた方が良い。他の部隊がこちらに向かい、今にもこの建物を包囲しようとしている。逃げても抵抗しても、どちらにせよ無意味だ」
「・・・・増員?」
「ああ、それも部隊単位でな!」
指揮官は更に増員が向かっていると、得意げに語った。
「・・・・『スクワッド』は?」
「『スクワッド』が来るまでも無いさ。ソレにどうやら、『他にやる事』があるみたいでね」
「なら問題無い」
「【あやしいひかり】」
『ジュペ!』
白州アズサが『スクワッド』が来ていないと聞き、目を閉じると、いつの間にか浦和ハナコも目を閉じており、ボソッと呟いた瞬間、浦和ハナコの背中からジュペッタが飛び出し、目からポケモンを『こんらん状態』にさせる【あやしいひかり】を放ち、〈アリウス〉の部隊とバクガメス達が慌てて視界を塞ぐ。
すると、白州アズサと浦和ハナコが離れていく足音が聞こえた。
「くっ、この期に及んでこの先に体育館しかないのは把握済みだ! ソレに、これ以上トラップが無い事もな! 逃がすか、追え!」
光が収まると、白州アズサ達を追って体育館の方へ向かっていき、体育館へと到着すると、他の〈トリニティ〉の生徒、阿慈谷ヒフミとガルーラ、下江コハルとヘラクロス、そして自分達に奇襲を仕掛けた御三家達と合流した。
「・・・・成る程、逃げたのではく待ち伏せだったと。だが、ソレだけか? たった四人と『6匹』で私たち相手に、何分耐えられると思っているのだ。こんな退路も無い場所で!」
「あうぅ・・・・」
「・・・・っ」
指揮官の気迫に押され、阿慈谷ヒフミと下江コハルは少し腰が引いている。
「その通り、もう退路はない。お前達は逃げられない」
「ですね、一先ず仕上げと行きましょうか♡」
しかしこんな状況であるのに、白州アズサと浦和ハナコは余裕をまるで崩していない事を、指揮官は訝しげにガスマスク越しに眉根を寄せると。
“ーーーー待ってたよ”
「っ!」
突然後ろから聞こえる男性の声に振り向くと、ソコには背広を着た大人の男性と、ピカチュウとルカリオ、本来は黄色主体の体色だが、黄緑色に、鋭く尖った毛並みをバチバチと火花を散らせた『かみなりポケモン・サンダース』がいた。
「ご存知かは分かりませんが・・・・『補習授業部』よ顧問であり、『シャーレ』の顧問の先生です♡」
“この狭い空間だと、この技が使えるね。サンダースーーーー”
「こちらも行こう、ミニリュウーーーー」
『リュ〜!』
“「【かみなり】!」”
『ダァァァスッ!!』
『リュゥゥゥッ!!』
サンダース(色違い)と、体育館の踊り場にいたミニリュウがいつの間にか天井に広げていた雷雲から、雷を叩き落とした。
『うわぁああああああああ!!?』
本来は命中率が高くない技だが、この体育館と言う空間で密集していた〈アリウス〉部隊に、無情に落ちていった。この体育館は味方にとっても、敵にとっても『袋小路』のフィールドなのだ。
「あ、アズサ・・・・アンタいつの間にミニリュウに【かみなり】なんて覚えさせたのよ?」
「うん。先生が、〈アビドス〉と言う所にいる生徒の手持ちであるヤミラミが見つけて、譲ってもらった『わざマシン』を使わせてもらった」
「えっ? あ、〈アビドス〉!?」
「あらヒフミちゃん、知ってるんですか?」
「ええ、まぁ・・・・色々とお世話になりまして・・・・」
『補習授業部』は【かみなり】に打たれている〈アリウス〉を見てそんな会話をしていた。
ー先生sideー
「ば、バカな・・・・ミニリュウ、だと? 『シャーレ』の先生の手持ちは、ピカチュウとルカリオと色違いのイーブイ、そして御三家の、筈・・・・?」
【かみなり】で身体が痺れているようだが、ヨロヨロと立ち上がる指揮官がアズサの元に戻ってくるミニリュウを見てそう言った。
「あらアズサちゃん、ミニリュウちゃんを手持ちにしていた事を話していなかったのですか?」
「・・・・・・・・あまり危ない事にミニリュウを巻き込みたくなかったし、ソレに・・・・」
「ソレに?」
「よくよく思い返してみたのだが、“私はまだミニリュウをモンスターボールに収めてゲットした訳では無いから、正式に『手持ち』と言うのではないのではないか?”」
“「「「あっ・・・・」」」”
『!』
アズサの言葉に、先生と『補習授業部』、更にミニリュウを除いたポケモン達も思い出した。確かにタマゴから生まれてから今日まで、ずっとアズサが面倒を見たり、脱皮した際の観察日記を毎日付けていたから気にしていなかったが、確かにアズサはまだミニリュウをモンスターボールを使ってゲットしていないから、正確には『手持ちポケモン』と言う訳では無い。
“と、取り敢えず、その話は後にして、『補習授業部』、行くよ!”
「うん。ここからはーーーー殲滅戦だ!」
先生の号令の元、銃を構えたアズサを筆頭に、『補習授業部』が動き出した。
〈アリウス分校〉がメインに使うタイプは『ほのおタイプ』です。