ーミカsideー
「『シスターフッド』、『歌住サクラコ』・・・・!」
突如介入してきた『シスターフッド』に、ミカは啞然と呟くと、この状況を作った『元凶の人物』、ハナコを見て、ソレでも笑顔で声を発する。
「・・・・あはっ、流石に『シスターフッド』と戦うのは初めてだなー。成る程ね、コレが『切り札』って事?・・・・浦和ハナコ、どうやって『シスターフッド』を動かしたの?」
が、ハナコに向ける目には危険な光が宿っていた。
「シスター達と仲良かったのは知ってる。でもあの子達が何の特も無く動く筈がない・・・・ねぇ、“何を支払ったの”?」
「・・・・・・・・・・・・」
ミカの問いに、ハナコは沈黙した。
「・・・・うん、興味深いね。さて、片付けないといけない相手が一気に増えちゃったなぁ」
「・・・・漸く、顔色を変わりましたね、ミカさん?」
「・・・・そうかな? まあどうせホストになったら、『大聖堂』も掃除しようと思ってた所だし。うん、一気にやれるチャンスだって事にしようかなイエッサン。デカヌチャン。ギャロップ」
『『『・・・・・・・・・・・・』』』
「片付け、手伝ってくれる?」
『『『(・・・・・・・・コクン)』』』
「それじゃぁ皆は、指揮系統の要の先生を狙って。先生さえ抑えれば後は簡単だから」
手持ちポケモン達は、ミカの言葉に一瞬辛そうな顔をしながらも頷き、ミカもソレを見て頷くと、先生を狙うように指示を出し、自分の愛銃であるランチェスター短機関銃『サブマシンガン・Quis ut Deus』を持ち直す。
「・・・・さて、じゃあやってみよっか?」
「・・・・あくまでも戦うつもりですか、ミカさん。この状況での勝算がどれ位か、分からないアナタではないですよね?」
「・・・・うん、そうかもね。でもここまで来て、『大人しく降参します』なんて訳にはいかないでしょ?」
ハナコは遠回しに降参するよう言うが、ミカは首を横に振り、銃口を向ける。
「・・・・もう私は、行く所まで行くしかないの」
ーーーーダダダダダダダダ!!
『『『!!』』』
ミカが銃弾を放つと当時に、デカヌチャン達が飛び出した。
“ピカチュウ! ルカリオ! シャワーズ!”
『『『!!!』』』
先生の掛け声と共に、シャワーズがイエッサン(♀)を、ルカリオがデカヌチャンを、ピカチュウがガラルギャロップを相手取った。
“皆。ミカのポケモン達は私とピカチュウ達が抑えるから、『補習授業部』と『シスターフッド』は連携してミカを取り押さえて! ワカシャモ! ヌマクロー! ジュプトルは皆のフォロー!”
『了解!』
『承知しました』
『『『ーーーー!!』』』
ー先生sideー
ヒフミ達とサクラコ達がミカの方に向かい、先生はピカチュウ達に指示を出す。
『デカヌ、チャン!』
“ルカリオ、【ボーンラッシュ】!”
『ルォォッ!!』
デカヌチャンが巨大ハンマーを【ぶんまわす】でルカリオを攻めるが、ルカリオも【ボーンラッシュ】で受け流しながら回避する。
『チャーン!!』
ーーーードゴォオオオオンっ!!
デカヌチャンは【デカハンマー】でルカリオを潰そうとし、ルカリオも【ボーンラッシュ】で受け止めーーーーずに巨大ハンマーを受け流して、体育館の床に盛大に叩き込まれた。
『チャ!? チャ〜ン・・・・!』
床にめり込んでしまった巨大ハンマーを引き抜こうともがくが、ソレを黙って見ているルカリオではなく。
“ルカリオ、【はっけい】”
『カルッ!!』
『チャ!?(バキッ!)チャーン!!』
掌底打ちを叩き込まれたデカヌチャンは、そのまま壁にまで吹き飛んで叩きつけられ、目を回して気絶した。
そしてピカチュウは。
『ヒヒィィィィンン!!』
“ピカチュウ! 回避だ!”
『ピカッ! ピカッピカッピカッピカッピカッピカッ!』
ガラルギャロップは頭の1本角が光り、【メガホーン】でピカチュウを攻撃し、ピカチュウはバックステップをしながら回避する。
ピカチュウにはルカリオのような技と技術は無いが、スピードと身軽さを武器にしている。しかし、相手のガラルギャロップは中型サイズ。しかも『エスパー・フェアリー』の混合タイプである。
ピカチュウの技で効果抜群なのは『はがねタイプ』の技である【アイアンテール】だけ。しかし、ソレだけで倒せる相手でもない。
“ピカチュウ、【かげぶんしん】!”
『ピカッ! ピカピカピカピカピカピカ!!』
『ブルル!』
ピカチュウが高速で動いてガラルギャロップを撹乱させる。だがーーーー。
『ヒ、ヒィィィィンン!!』
ガラルギャロップはその場で回りながら周囲に【ようせいのかぜ】を放ち、分身ピカチュウ達を薙ぎ払う。
『ピッ!?』
『ヒヒィィィィンン!!』
分身達がいなくなり、ピカチュウの姿が露わになると、角をまた光らせ、ソコから幾つもの光の刃【サイコカッター】をピカチュウに向けて放つ。
“ピカチュウ! ダブルで【かみなりパンチ】!”
『ピッ、カァァァァッ!!』
ピカチュウの両手が放電すると、向かってくる光の刃を全て叩き砕く。
『ヒヒィィィィン!!』
ガラルギャロップは【サイコカッター】を放ちながら、その健脚でピカチュウに近付き、至近距離で【メガホーン】を放ち、ピカチュウを突き刺そうとした。
“ピカチュウ! 応戦して!”
『ピカァァァァッ!!』
ピカチュウは自分を突き刺そうとする角を両手の【かみなりパンチ】をぶつけた。
ーーーーバチバチバチバチッ!!
『ピカチュウ!?』
『ブルルルル!?』
お互いの技のぶつかり合いの反動で、2匹は距離を空ける。
『ヒヒィイイイイイイイインン!!』
ガラルギャロップは【ギガインパクト】で突っ込む。
“ピカチュウ! 【ボルテッカー】!!”
『ピカピカピカピカ、ピィカァアアアアアアアア!!』
ピカチュウも電撃を纏った突進する究極技【ボルテッカー】を放ち、ガラルギャロップとぶつかり合う。
そして・・・・。
『ヒィインン!!』
ガラルギャロップは押し負けて、床に転がってしまった。
『〜〜〜〜〜〜〜〜』
倒れたガラルギャロップは目を回して気を失った。
そして先生は、身体を溶かしてイエッサン(♀)の【チャームボイス】を躱しているシャワーズ(色違い)に目を向ける。
“(頃合いだな・・・・)ーーーーシャワーズ! 【バブルこうせん】!”
『シャワァァァァァァァァ!!』
『イエッ!?』
イエッサン(♀)は大量の泡の光線を【ひかりのかべ】を展開して防ぐが、大量の泡でシャワーズの姿を見失ったように見回す。
そしてシャワーズは・・・・。
『ーーーーブィィ〜・・・・』
進化時間が切れてしまったのか、イーブイ(色違い)に戻ってしまった。
しかし、先生にとっては好都合であった。先生は『超進化ライト』の紫の光を当てると、イーブイの姿が、ブラッキー(色違い)に変わった。
『ブラッ!』
“ブラッキー、【バークアウト】!”
『ブゥゥッ、ラッキーっ!!』
『イエッサーン!?』
『エスパータイプ』が苦手とする『あくタイプ』の技を受けて、イエッサンは目を回して倒れた。コレでミカの手持ちポケモン達は全滅した。
先生がミカと戦っている『補習授業部』と『シスターフッド』に目を向けると、バレーボールネットで簀巻きにされたミカがいた。
“皆! 上手くできたんだね!”
「先生・・・・はい! ヒナタさんとガルーラ、ジュペッタさんとサクラコ様のゲンガーが取り押さえている隙に、ヘラクロスさんとワカシャモさんがバレーボールのネットを使って縛り上げられました!」
「ふむ。まさか体育館には、ここまでの装備があったとは、意外とこの『合宿所』もちゃんとした戦闘施設であったんだな」
「いえ、普通に考えて、体育館の備品を使って戦おうなんて考えませんよアズサちゃん・・・・」
ヒフミが的外れなコメントを言うアズサにやんわりとツッコミを入れた。
「・・・・何これ、洒落にならないなぁ」
簀巻きにされたミカは、気を失い、ガルーラやヨノワールに運ばれているイエッサン達を見て溜め息を吐く。
「・・・・どうして? セイアちゃんが襲撃された時だって、動かなかったのに・・・・今このタイミングで『シスターフッド』が介入するなんて、冗談にも程があるよ」
ミカは、セイアが危険な時にすら動かなかった『シスターフッド』が介入してきた事が納得できないでいるようである。
「・・・・何を見誤ったのかな?・・・・ハナコちゃんの事を、見くびった?」
「・・・・・・・・」
「ううん、『浦和ハナコ』がとんでもない存在だって事は知ってた。でもいつの間に『無害な存在』になってた。『変数』として計算する必要が無い位に」
アズサの方に目を向ける。
「・・・・アズサちゃんが、裏切ったから?」
「・・・・・・・・」
「ううん。アズサちゃんはただの『操り人形』。裏切ろうも裏切らなかろうと、私の『望む結果』には何も関係なかった」
次に、ヒフミとコハルに目を向けた。
「・・・・ヒフミちゃんはただの『普通の子』で、コハルちゃんはただの『おバカさん』でしょ? 変数になるような存在じゃなかった」
「・・・・・・・・」
「・・・・(あれ、サラッと私、ディスられた?)」
「それなのに、どうして負けるかなぁ・・・・」
『補習授業部』の面々に目を向けながら、何を見誤ったのか自問自答し始めた。
「どこからズレちゃったんだろ」
“・・・・・・・・”
ソコでミカは、先生の方に目を向けた。
「・・・・そう言えば、『1番大きい変数』を忘れてたね。『シャーレ』の、先生・・・・うん、そうだね。考えてみればきっと、あなたを連れて来た時点で私の負けだった。ナギちゃんが『裏切り者』がいるって騒ぐから、仕方ないなぁって、丁度良さそうだなって思って『シャーレ』に連絡して・・・・そっか、あの時かぁ」
『イエ、サン』
『ブルルル・・・・』
『チャ〜・・・・』
そこで漸く。全ては『シャーレの先生』を巻き込んでしまった事が、自身の計画の失敗であると気づいた。
そんなミカを、目を覚ましたイエッサン達が辛そうな顔で見つめる。
「ゴメンね、皆・・・・本当はこんな汚い事なんて、やりたくなかったのにね。いやー・・・・ダメだな、私・・・・」
ミカはイエッサン(♀)とデカヌチャンとガラルギャロップに目を向けて謝罪すると、また溜め息を吐いた。
「はぁ・・・・」
「ミカさん、セイアちゃんは・・・・」
「・・・・本当に、殺すつもりじゃなかったの。今の私が何を言っても言い訳になるけど・・・・。多分、『事故』だった。セイアちゃん、元々体が弱かったし・・・・それに・・・・」
「・・・・セイアちゃんは無事です」
「・・・・!?」
『『『!?』』』
意気消沈となっているミカは、セイアの事は本気で後悔している様子であった。しかし、ハナコはセイアが生きているという事を伝え、ミカとイエッサン(♀)達も目を開いた。
「ずっと、『偽装』していたんです。襲撃の犯人が見つからなかったので、安全の為というのもあって・・・・〈トリニティ〉の外で身を隠しています」
「セイアちゃんが・・・・無事・・・・?」
「傷が治らなくて、まだ目が覚めていないのですが・・・・『救護騎士団』の団長と『パートナーポケモン』、セイアちゃんの手持ちである『ネイティオ』と『ブリムオン』、そして『フワライド』が今もすぐ傍で守ってくれています」
「『ミネ団長』と『ピクシー』、『ネイティオ』達が・・・・?」
ハナコはセイアを襲撃した『犯人』が見つからないのもあって、現在セイアは〈トリニティ〉の外で療養していると話した。そしてセイアは今手持ちポケモン達だけでなく、『救護騎士団』の団長である『蒼森ミネ』とパートナーの『ピクシー』が護衛をしていると。
「そしてあの時、セイアちゃんを助けてくれたのは・・・・」
が、セイアを助けた人間がおり、その事を話そうとしたが、ソコで一拍置いた。
「・・・・いえ、これは直接ご本人の口からが良いでしょう」
「・・・・そっか。生きてたんだ・・・・良かったぁ」
ーーーーカチャ・・・・。
セイアが生きていた事実を聞いて、ミカは漸く大人しくなり、銃を床に置き、安心しきった顔で純粋にセイアが生きている事に安堵した。
「・・・・降参。私の負けだよ。おめでとう、『補習授業部』・・・・そして先生。アナタ達の勝ちって事にしておいてあげる」
漸く負けを認めたミカ。一見負け惜しみに聞こえるが、先生は何故か、“ミカは本気で勝とうとしていなかったように見えた”。
「もう何でも良いや。私の事も好きにして」
「・・・・・・・・」
「・・・・アズサちゃん。自分が何をしてるのか、その『結果』この先どうなるのか。それは分かってるんだよね?」
「勿論」
完全に降参したミカは、その様子を黙って見ていたアズサに目を向け、“この先に何が待ち構えているのか”を問うた。
そしてアズサはそ問いに対し、間髪入れずに頷いた。
「・・・・〈トリニティ〉が、あなたのこを事守ってくれると思う? コレからずっと追われ続けるよ。ずっと、どこに行っても・・・・アナタが安心して眠れる日は、来るのかな?」
『ーーーークゥゥゥゥ』
「・・・・ハクリュー」
ミカが『追われる身』となってしまったアズサを心配するかのように言うと、ハクリューがアズサを囲うようにトグロを巻き、アズサの頬に頬ずりする。
ーーーーまるで、「アズサは僕が守る」と言いたげに。
「・・・・・・・・」
アズサは薄く笑みを浮かべ、優しくハクリューの撫でた。
「・・・・成る程ね。パートナーは得たって事?・・・・でも、『サオリ』から逃げ切れると思う? 〈アリウス〉出身なら勿論知ってるよね、『万物は空虚である‹Et omnia vanitas›』・・・・」
「うん、分かってる。ソレでも私は最後まで足掻いてみせる、最後のその時まで」
「・・・・・・・・うん、そっか」
ミカはアズサと連絡をとっていた少女、『サオリ』の事も口に出すが、アズサはそれでも最後まで足掻いてみせると言ってみせた。ソレを聞いたミカは納得したかのように頷いた。
ーミカsideー
その後、太陽が昇り始め、ミカと手持ちポケモン達、更に〈アリウス分校〉の部隊の大半は、漸くやって来た『正義実現委員会』が逮捕し連行されていく。
“ミカ・・・・”
「今はちょっと、先生からは何も聞きたくないなぁ・・・・」
先生が対話しようとするか、ミカはそんな気分ではないようだ。
「やっぱり『シャーレ』を巻き込んだのが、私の『最大のミス』だった。うん、でも・・・・」
ミカの脳裏に、「ミカの味方でもある」と言う言葉が過った。
「・・・・あの言葉を聞いた時は本当に、本当に嬉しかったんだ。あの時、もし・・・・・・・・ううん、やっぱり何でもない。ーーーーバイバイ、先生」
仮定の話なんて意味が無いと言わんばかりに、首を横に振るミカはそのまま別れを告げて連行されていった。
〈トリニティ〉を揺るがす一連の事件は、後味の悪さを残しつつも一応の幕を下ろすのであった。
ー先生sideー
「ーーーーあ、あうぅ・・・・もう色々あり過ぎて、疲労困憊です」
『ガルゥアァ〜・・・・!!』
『カルゥ・・・・(ウトウト)』
ミカが『正義実現委員会』に連行されていく姿を見送り終えると、ヒフミが最大に溜め息を吐き、ガルーラ母子は夜通し戦っていたから眠そうに欠伸をしていた。
「漸く落ち着きましたね・・・・」
『ジュペ〜・・・・』
「うん・・・・(フラフラ)」
『ヘラクロ!』
「・・・・っ!」
疲労によりフラフラとなってしまい、倒れそうになるコハルの身体をヘラクロスが慌てて支え、コハルもハッ、と目を覚ました。
「ご、ゴメン、ヘラクロス。何だか力が抜けちゃって・・・・あ、ありがと」
「ソレもそうですよね。一晩中戦ってたようなものですし・・・・」
「ソレにここ1週間、あまり睡眠もキチンと取れてないですからね。コレで漸く・・・・」
「ーーーー何を言ってるのヒフミ、ここからが『スタート』だ」
ハナコとヒフミが、全員のコンディションは最悪であると告げ、休もうとしたその時、アズサがここからが本番だと言わんばかりの態度であった。
「・・・・はい?」
「あー・・・・」
「そ、そうでした、試験が・・・・」
「・・・・忘れてた」
そう。今日は運命の日とも言える『第3次特別学力試験』の日であったのだ。
「現在時刻は7時50分。『試験会場』まで1時間で着かないと、走ろう」
『クゥゥゥゥ!』
そう言ってアズサはハクリューを連れて、ピューっと走り出していった。
「えぇっ!? 走るんですか!? 待って下さいアズサちゃん早っ! ここから走って着く距離ですか!?」
「う~ん、全力で走ればギリギリ、ミライドンさん達に運んでもらえば多少余裕で着くでしょうか? さあヒフミちゃん、コハルちゃん! ファイトです!」
『ジュペ!』
ハナコはジュペッタに【サイコキネシス】で宙を浮いて運んでもらい、コハルはヘラクロスに抱えて飛んでもらう。
「うぅ・・・・待ちなさいよぉ・・・・!」
『ヘラクロ!』
“ヒフミ、乗って! 途中でアズサも拾うから!”
『アギャァ!』
「ど、どうして最後の最後までこんな事に・・・・!」
◇
途中でアズサを乗せ、ハクリューはエーフィ(色違い)に【サイコキネシス】で浮かばせて運び、そして漸く、『第3次特別学力試験』の会場に到着した。
会場前には、『正義実現委員会』の部員が立っている。
「や、やっと到着しましたね・・・・」
「お待ちしておりました。『補習授業部』の皆さん。ハスミ副委員長から伝言です。『頑張って下さい』・・・・と」
「あらあら」
「は、ハスミ先輩・・・・!////」
その伝言に、ハスミを尊敬するコハルは感激する。
“うん。じゃあ、入ろっか”
まだハスミは『補習授業部』の裏に隠された『ナギサの謀略』を知らないようだ。
しかしソレに構わずピカチュウとハクリュー意外はボールに戻し、全員が会場へと入っていった。
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
“・・・・・・・・コレが、『最後の試験』だね”
教室に到着し、裏返しになった答案用紙が置かれた席に着いた『補習授業部』は緊張からか黙っていると、先生がそう言った。
「・・・・うん。どんな『結果』であれ、この試験で全てが決まる」
「そうですね」
「あうぅ・・・・」
「・・・・っ」
アズサの言葉にハナコは頷き、ヒフミとコハルが緊張で身体が強張る。
「・・・・ここまで、色々ありましたね」
「・・・・気持ちは分かる、けど感傷に浸るのは試験が終わってからにしよう」
「はい、そうですね・・・・兎に角、私達の努力の成果をしっかり発揮しましょう」
「うん、最後まで諦めない」
「はい、私もです。折角アズサちゃんに、教えてもらいましたから」
「わ、私今度こそ満点取るから! 取っちゃうからね!」
全員が気持ちを引き締めると、開始時間となった。
“ーーーーでは『第3次特別学力試験』・・・・開始!”
先生の声と共に、全員が裏返しにされた答案用紙を返し、シャーペンを持ってテストに挑んだ。
そしてーーーー。
第3次特別学力試験の結果
浦和ハナコーーーー100点(合格)
白州アズサーーーー97点(合格)
下江コハルーーーー91点(合格)
阿慈谷ヒフミーーーー94点(合格)
『補習授業部』ーーーー全員合格
〜夢の中〜
《先生、起きて下さい。いや、この場合は違うか。おやすみなさい?》
“・・・・ミュウツー?”
先生は目を覚ますと、夜の『ティーパーティー』のテラスで椅子に座って眠っており、ミュウツーが外に出ていた。そしてこの空間に覚えがあった。ここはーーーー夢の世界であると。
“私は、またどうしてこの世界に?”
《『補習授業部』が全員合格し、皆で大はしゃぎしたのですが、先生も含めて全員が疲労と眠気がピークに来てしまい、『正義実現委員会』に『仮眠室』に案内され、ソコでベッドに倒れ、全員そのまま寝てしまったのです》
ミュウツーにそう説明され、先生が納得していると、目の前に1人の狐耳の少女が現れた。
「・・・・『補習授業部』の皆はしっかりと、自分達の力で『合格』を勝ち取ったのだね」
“セイア・・・・?”
そう。『百合園セイア』であった。
「コハルはこの後、晴れて『正義実現委員会』に戻れる筈だ。ハナコは、自らを曝け出せるような良き相手を、良き友を得たようだね。恐らくは今、少なくとも学校を辞めようとは思っていないだろう。アズサはきっとコレからも、『学び』を続けられる。そしてある意味では誰よりも最前線で、真摯に努力を積み重ねてきたヒフミは、今までの『日常』に戻れるだろうね」
セイアは『補習授業部』の面々の事を話すと、不意に顔を少し曇らせる。
「・・・・ミカは学校の監獄に幽閉された。もしかしたらもう2度と会えないかも知れない。ナギサは・・・・予想通り、『エデン条約』に調印しに行くだろう」
と、ミカとナギサの事を話してから、一拍置いて話を続ける。
「・・・・うん。ここまでは良くできたお話だ。・・・・でも、まだエンドロールには早すぎる。なにせ君が見守るべき『結末』は、まだその全貌を現してはいない。このお話が例えどんな風に転がっていこうと・・・・全ては、『破局』へと向かっていく」
“『破局』??”
物騒な言葉に首を傾げる先生にセイアは近づいて口を開く。
「・・・・『暗雲』。誰の手にも言えないような、2度と太陽を拝めなくなるような・・・・そんな『暗雲』が、今ゆっくりと押し寄せてきている。まだ『残っているモノ』がある、コレで『終幕』じゃない・・・・その事は君がきっと、誰よりも良く分かっているだろう?」
ーーーーそうだ。まだ、終わっていない。寧ろここからが『スタートライン』なのだ。
先生はミュウツーと顔を見合わせて頷くと、先生の視界は真っ白に染まった。
◇
合格が発表された翌日。
先生は『合宿所』のプールサイドに、レジャーシートを広げ、その上に『ひでん:にがスパイス』を使ったサンドイッチと、色々なスイーツを紙皿の上に乗せていた。
「先生ーっ!」
すると、ヒフミが『補習授業部』の面々を引き連れてやって来た。
“あっ皆。お祝いパーティーの準備はできたよ”
「・・・・何でプールでお祝いパーティーしなくちゃいけないのよ」
「仕方ないですよコハルちゃん。先日の戦闘で『合宿所』の校舎も体育館もボロボロ。唯一無事だったのはこのプールだけだったんですから」
「だからって、別に『合宿所』でやらなくても・・・・」
「いえいえ。私達『補習授業部』の日々はこの『合宿所』から始まったんです。ならば終わるのも『合宿所』で行うべきなのです」
「ふむ。成る程」
「アハハ・・・・」
レジャーシートに座りながら愚痴るコハルに、ハナコは説得し、アズサは納得し、ヒフミは苦笑する。
『クゥゥゥゥ♪』
『ヌマウオー♫』
『シャワー♡』
『ジュペジュペ☆』
『ジュプ♧』
ハクリューとヌマクローとシャワーズ(色違い)はプールに飛び込んで泳いでおり、ジュペッタはスターサングラスを掛けてアロハシャツと麦わら帽子を着用し、ジュプトルもカッコいいサングラスを掛け、2匹はそれぞれベッド型のフロートに寝そべり日向ぼっこをしている。
『ピカチュウ♪』
『ルォゥ♧』
『シャモシャモ♪』
『ヘラクロ☆』
ピカチュウとルカリオとワカシャモとヘラクロスもサングラスを掛け、それぞれビーチチェアに寝そべりまったりしている。
『カルゥ♪』
『ガルラ♫』
浮き輪を使って泳ぎの練習をする子ガルーラと、プールに入って練習を見てあげている母ガルーラもいた。
「あうぅ、ガルーラ達はエンジョイしてますね・・・・」
「先生、浮き輪とかわざわざ持ってきたの?」
“いや、このプールの用具室に保管されていたんだ”
「ですが、ミライドンさんは入らないのですか?」
『アギャ☆』
「むぅぅぅぅ・・・・!!」
ヒフミ達はプールを楽しんでいるポケモン達に苦笑する中、ミライドンはアズサをペロペロしようと覆い被さり、アズサは両手足を使って抵抗していた。
“はいはい皆! もうパーティーの時間だから集まって!”
『ーーーー!!』
先生の呼び掛けに応じて、ポケモン達が集まり、『ひでん:にがスパイス』を使った『マスターきほんのサンド』や『放課後スイーツ部』がお勧めするスイーツの数々が乗った紙皿が並べられ、ジュースが入った紙コップが渡される。
“それじゃ皆、特別学力試験合格と退学免除・・・・お疲れ様でした!”
『お疲れ様でした!』
全員が紙コップを掲げて声高く言った。
そして、いざ『マスターきほんのサンド』を口にした。口に広がるブラックコーヒーかブラックチョコのような苦味があるが、旨味もまた広がっていく。
「う~ん、『にがスパイス』はあまり好みではないですね」
「うん。甘いの食べたい」
「コレは少し私達には早い味覚ですね・・・・」
「・・・・・・・・似た味だ」
『補習授業部』には少々不満げだったようだ。しかし、アズサはふと呟く。
“アズサ?”
「今回の騒動の後味に似ている味だ」
『あっ・・・・』
アズサの指摘に、全員が顔を俯かせた。
確かに、ナギサの執拗な妨害。アズサが〈アリウス分校〉からの刺客。ミカの裏切り。ありとあらゆる出来事が振りかかり、最終的にミカは投獄。今回の1件で『ティーパーティー』に裏切り者がいた事で権威がかなり落ちた。否、ソレだけではない。ナギサにとってミカは『10年来の幼馴染み』である。その彼女が『裏切り者』てあったなんて、ナギサのショックは計り知れない。
確かにこのサンドイッチと『ひでん:にがスパイス』の味は、何処か後味が悪く、やり切れない苦い思いを全員がした。
「聖園ミカは、本気で戦おうとしていたのだろうか? 私達や『シスターフッド』との戦いも心ここにあらずだったし、ポケモン達の方も『おまかせ状態』だった・・・・」
「・・・・そうですね。ソレに、ミカさんが所持する『ティーパーティー』の『隠し玉ポケモン』も出して来ませんでした。本気で私達を倒そうとしていたら、床に這いつくばっていたのは私達だったかも知れませんね」
“・・・・多分ミカも、“誰かに自分を止めて欲しかったんじゃないかな”?”
ミカが本気を出していなかった事をアズサとハナコが指摘し、先生もミカは心の底の何処かでは、自分の行いを止めて欲しかったんだと言う。
そしてアズサ更に・・・・。
「〈アリウス〉はまだ・・・・本気を出していない」
「? どういう事ですか?」
「本気でミカと共にナギサを誘拐するつもりなら、あの場に『アリウススクワッド』が来なかったのは不自然」
「あ、『アリウススクワッド』って・・・・?」
「〈アリウス分校〉の少数精鋭の特殊部隊。彼女達のリーダーは、私に戦闘技術を教えた人物だ」
“つまり、アズサの師匠にあたるんだね?”
「そう。彼女達に比べたらミカと一緒にいた部隊は、2軍か3軍が良い所」
「その特殊部隊がいなかったと言う事はつまり・・・・〈アリウス〉側にとって、ナギサさんを捕まえる事は、成功しようが失敗しようが自分達には支障がない程度の案件だった、と言う訳ですか?」
「うん。恐らく」
アズサの説明に、全員が顔を少し曇らせた。
ーーーーまだ終わっていない。〈アリウス分校〉との戦いは。
と言う不安が、彼女達の中に生まれた。と、その時ーーーー。
『アギャァスっ!!』
『っ!?』
『秘伝:にがスパイス』入りの『マスターきほんのサンド』を食べ終えたミライドンの身体が紫色に光り、プールに飛び込むと。
『アギャァァス♪』
何とミライドンが水面に浮き、リングを回転させ、折り畳まれた脚部の噴射口からジェット噴射を行い、まるでウェーブランナー(水上バイク)のようにプールを駆け巡った。
「おぉ、ミライドンが水面を走っている」
“水上形態、『フロートモード』だね”
楽しそうに水上を走るミライドンの背中に、子ガルーラやピカチュウや御三家達も乗り込んで遊んでいた。
「コレは私達も乗らせていただきましょうコハルちゃん!」
「な、何でそうなるのよ!? ちょっと! やめて! せ、せめて水着に着替えさせてー!!」
「しかし、プールでは少し狭そうだな」
「だったら、今度ミライドンも一緒に海に行きしょう! アズサちゃんも行った事が無いって言ってましたし!」
後にそのヒフミの提案が、『正義実現委員会』に多大な迷惑を被るのはすぐ後の話である。
先生達は暫く、詳しく言うと以前から注目していた『Xデー』・・・・『エデン条約』が無事に終わるまで、〈トリニティ〉に滞在する事にした。
この日に何かが起こる。そんな予感が、先生の胸中に渦巻いていたからである・・・・。
ー『サオリ』sideー
トリニティ郊外の廃ビル。
「・・・・準備しろ、皆」
ソコいたのは、アズサと連絡を取り合っていた『サオリ』と、パートナーのヘルガー(色違い)が、後ろにいる『仲間達』に向けて声を発すると、暗闇の中から3人の女子と2匹のポケモンが現れた。
「あ、あぁっ・・・・つ、遂にに始まるんですか・・・・!? よ、漸くこの時が・・・・でも苦しいんですよね、辛いんですよね・・・・?」
「・・・・うん。でも大丈夫、苦しいのは生きている証拠」
薄いライトグリーンの色をした髪を無造作に伸ばして片目を隠し、サイドポニーにして厚手の服装に白いマフラーを首に巻いた少女が、背中に大きなケースを背負い、何やら嘆いているのを、黒いボブカットヘアと黒いマスクを付け、厚手のコートを着用し、ロケットランチャーを背負った少女が宥める。
嘆いている少女の後ろから、骨を被った痩せ細った黒っぽく身体。その背中には背骨から骨盤を彷彿とさせる模様がある風貌をし、手に持った骨の両端に青緑色の炎を灯した『ほねずきポケモン・ガラガラ(アローラのすがた)』が立ち。
黒髪の少女の背後には、大きな卵型の様な体格に鋭い目つき、タラコ唇の様な口をして、両腕はバズーカの様な筒状になってツメが生えた『ばくえんポケモン・ブーバーン』が控えていた。
「・・・・・・・・」
「ひ、『姫ちゃん』が手話で何か言ってますけど。えっと・・・・」
「・・・・『あの子はどうなって』、って? 気になるの、『姫』?」
そして最後の1人、マスクを顔まで覆ったフード付きのコートから覗く紫色の長髪を左右の肩に三つ編みにして掛けている、『姫』と呼ばれた少女が何やら手話で会話を始める。どうやらアズサが気になっていたようだ。
「・・・・どうでも良くない? 結局は速いか遅いかだけの問題で」
「その辺にしておけ」
「「「・・・・・・・・」」」
集まって話している3人は、サオリの1言で雑談を止めるように言うと、ソレを聞いて少女達はすぐに会話を止めた。
するとサオリは、空を見上げる。
「黒い雲・・・・・明日は雨になるな」
「あ、雨ですか? 嫌ですね、雨はジメジメして・・・・、苦しいですし、気持ち悪いですし、ガラガラ達が濡れないようにしないとだし・・・・」
薄いライトグリーンの女の子が愚痴るが、サオリは黒雲を見上げながら、自分達を裏切った1人の女の子、アズサの事を考えていた。
「(・・・・・アズサ。どれだけ足掻こうと、お前は抜け出す事はできない。お前の体は覚えている。すぐに思い出す筈だ、『真実』を)」
そして、サオリは断言するように呟く。
「ーーー曰く・・・・『Vanitas vanitatum vanitas‹全ては虚しい。どこまで行こうとも、全てはただ虚しいものだ›』」
サオリ達『アリウススクワッド』は、闇の中へと向かって歩み始めた。
間もなく『エデン条約』の調印式の日が来る。〈トリニティ〉に・・・・否、〈キヴォトス〉に大きな危機がゆっくりと、しかし、確実に迫っていた。
次回、陰謀と憎悪が絡む『エデン条約編』が、いよいよ本格的に始まります!