ポケモンアーカイブ   作:BREAKERZ

67 / 69
絶望の惨劇が、始まる・・・・。


絶体絶命、火と灰と煙に染まる世界

「ーーーーきゃあぁぁぁぁっ!?」

 

「こっち、こっちに怪我人が・・・・!」

 

「けほっ、けほっ! だ、誰か・・・・」

 

巡航ミサイルが着弾した『通功の古聖堂』は、一瞬で瓦礫の山と化し、辺りは炎と煙に包まれていた。

ヘイローのある生徒に皆生きてはおり、パートナーのポケモン達も一応無事であり、助けを求めている自分のトレーナーの元に行こうとするが・・・・。

 

『ーーーーーーーー!!!!』

 

突如、ポケモン達の目が紫色に光り、辺り構わず暴れ出してしまい、この光景は正にーーーー『地獄』と呼ぶに相応しい様相であった。

 

 

 

 

 

ーミカsideー

 

《緊急事態です! 古聖堂が、正体不明の爆発によって炎に包まれ・・・・! コレは一体・・・・せっ、尖頭が崩れています!》

 

「・・・・ナギちゃん?」

 

監獄に入っていたミカは、テレビで報道されている映像をみて、ナギサの身を案じていた。

 

 

 

 

ーヒフミsideー

 

ーーーーきゃぁぁぁぁっ!!

 

ーーーー気を付けて! ソッチは・・・・!

 

ーーーーギャァァァァッ!!

 

ーーーーど、どうなってるの!? わ、私のポケモンが暴れてるっ!?

 

ーーーーグゥゥゥゥッ!!

 

ーーーー私のもだわ! 全然言う事を聞いてくれない!!

 

「な、何ですが、コレは・・・・」

 

「(! あのガスは確か・・・・!)ヒフミちゃん! コハルちゃん! ガルーラさんとヘラクロスさんをボールに戻してください!」

 

「「え?」」

 

「あのガスの色ーーーー『R』です!!」

 

「「あ、『R』!?」」

 

飛び出したアズサとハクリューを追ったヒフミ達は、凄まじい衝撃波に呑まれそうになったが、ジュペッタが【ゴーストダイブ】で全員を避難させたのだ。

しかし影の中から出ると、あまりの惨状に愕然となってしまうヒフミとコハルに、ハナコは慌ててそう言いながら、ジュペッタをモンスターボールに戻し、『R』の事を知っているヒフミとコハルも、すぐにガルーラとヘラクロスをボールに戻した。

 

「! あっ、アズサちゃんとハクリューちゃんは何処に・・・・!?」

 

と、ソコでヒフミは先に飛び出してしまったアズサとハクリューを探して周囲を見回すが、2人の姿は当然無かった。

 

「せ、先輩達が・・・・っ!」

 

コハルも尊敬するハスミ達の事を気になり見回すが、『正義実現委員会』の姿は無い。

 

「「!」」

 

「コハルちゃん、ヒフミちゃん! 待ってください! 状況が把握できるまで、動くのは得策ではありません!」

 

堪らず探しに行こうとする2人に、ハナコは極めて真面目な顔で止めた。唯でさえ周りは『R』によって凶暴化されたポケモン達がウヨウヨしているのに、宛もなく動くのは確かに危険である。

 

「で、ですがアズサちゃんが・・・・!」

 

「アズサちゃんもハクリューちゃんも、『正義実現委員会』も、少なくとも自分の身は守れます! 今はソレよりバラバラに散らばる事の方が危険です!」

 

「で、でも・・・・!」

 

ハナコが別行動をしないように言うが、ヒフミもコハルも、アズサやハスミ達を心配する。

 

「ハナコちゃん、コハルちゃん・・・・私達、どうすれば・・・・」

 

ヒフミの問いに、ハナコとコハルは答えられなかった。誰も経験した事がない異常事態。『補習授業部』は取り敢えず、『R』で暴走しているポケモン達から離れていった。

 

 

 

 

ーヒナsideー

 

『ソルっ!』

 

『ゴロロ!』

 

『ガァッ!』

 

『ニャァ!』

 

『ソーナンス!』

 

ヒナとアコの懐のモンスターボールから飛び出したアブソルとゴロンダとマニューラが、爆風でひっくり返った車からヒナとアコを救出していた。

周りから迫る『R』は、ドンカラスが【ぼうふう】で吹き飛ばし、ソーナンスが【しんぴのまもり】をドーム状に展開して守っている。

 

「アブソル・・・・ゴロンダ・・・・ドンカラス・・・・」

 

『『『ーーーー!!』』』

 

「マニューラ、ソーナンス・・・・アコは?」

 

『ニャァ・・・・!』

 

『ナンス!』

 

ヒナが目を覚まし、アブソル達は喜び、マニューラとソーナンスにアコの事を聞くが、アコは完全に気を失っており、頭からヒナよりも多くの血を流していた。

ボロボロになった身体を押して、制服の所々焼けたり破れ、頭からも血を流しているヒナが『機関銃МG42・終幕:デストロイヤー』を杖にしながら立ち上がった。

 

「ドンカラス、アコをすぐに『救急医学部』の元へ、お願い急いで・・・・」

 

『っ!〜〜〜〜!! ガァッ!』

 

ヒナの傍を離れたくないが、気を失っているアコも急いで治療しなければ危険だと判断したのか、ドンカラスは顔を苦渋に染めながらも頷き、ゴロンダがアコをドンカラスの背に乗せ、ヒナがマニューラとソーナンスをアコの懐から失敬したモンスターボールに戻し、ドンカラスが大きく翼を広げて宙を浮くと、両足に2匹が入ったボールを掴み、空を飛んでいった。

 

「(・・・・何が起きた? 『爆発』・・・・攻撃された? 状況は?)」

 

『ソル! アブソル!』

 

『ゴロ! ゴロロロ!』

 

改めてヒナが周りを見ると、アブソルとゴロンダが自分達が把握している分の情報をヒナに伝える。

 

「(『巡航ミサイル』が飛んできた・・・・『対空防衛システム』が迎撃できない程の速さで?)」

 

こんな事態を想定し、〈トリニティ〉と〈ゲヘナ〉で『対空防衛システム』も設置していた筈なのだが、ソレが機能していなかった。つまりソレはーーーー“内部からの手引きがあった”、と言う事である。

そしてコレ程の被害に、『R』までもが散布されている。〈トリニティ〉では無いとすると・・・・。

 

「(まさか・・・・〈カイザーコーポレーション〉が?)」

 

ヒナが知る限り、以前の〈アビドス〉の事件から、各自地区で発見された『R』は全て〈ヴァルキューレ〉に押収された筈。

『R』を精製できるとすれば〈カイザー〉の可能性が高い。ここには〈カイザー〉に煮え湯を飲ませた『シャーレの先生』がいるのだ。奴等が報復をしてきたと言うのもあり得るが。

 

「・・・・っ! 先生・・・・!?」

 

そう。もしコレが〈カイザーコーポレーション〉か〈トリニティ〉の策略だとしても、ソレは後で考えるべきであり、今優先すべきは、『ヘイロー』を持たない先生の安否である。

ヒナはゆっくり近づいてくる『R』を警戒し、懐からモンスターボールを出してアブソルとゴロンダを戻してから、先生を探しに向かおうとする。

がしかしーーーー。

 

「ーーーーひ、ヒナさん、まだ立ってますねぇ・・・・。それに、ポケモン達も無傷ですねぇ・・・・」

 

ヒナが知らない、〈トリニティ〉の生徒でも無さそうな女の子とガスマスクを被ったアローラガラガラが、部隊を率いて現れた。

 

「ど、どうしましょう・・・・アレを受けてまだ立っているなんて、スゴいですねぇ、強いですねぇ・・・まだまだ戦うだなんて、どうして・・・・痛い筈なのに、苦しい筈なのに・・・・」

 

その女の子は、ボロボロの身体で、血まで流しながらも立ち上がっているヒナを見ながら憐れみ交じりに言いなが、無線機で誰かと連絡を取っていた。

 

 

 

 

 

 

ーサオリsideー

 

「ーーーーやれ。特にヒナだけは逃がすな」

 

《は、はいっ!》

 

『ゲヘナ風紀委員会委員長 空崎ヒナ』と対峙しているヒヨリに、スマホロトムで『通功の古聖堂』の惨状の映像を見ていたサオリがそう指示した。

 

 

 

 

 

ーヒナsideー

 

通信機を切った女の子がボルトアクション対物ライフル『NTWー20』を構え、ガスマスクを被ったアローラガラガラが手に持つ骨に青緑色の炎を灯して構えると、後ろに控えていた部隊が武器を構え、ガスマスクを被ったバクガメスも背を向けて楯のように前に出る。

 

「そ、そう言う事みたいでして・・・・すみませんね、えへへっ・・・・」

 

「(・・・・アリウス、分校)」

 

後ろから現れた部隊の服装と武器を見て、ヒナは目の前の相手が〈アリウス分校〉であると見抜いた。

 

「あ、あなたを先に行かせないように言われてるので・・・・すみませんが、これも命令でして・・・・」

 

「・・・・・・・・どきなさい」

 

「やっぱり、辛いことばっかりですねぇ・・・・」

 

ヒナが銃を構え、目の前の〈アリウス分校〉の部隊も銃を向けようとしたその瞬間。

 

『ゴロッ』

 

「! ゴロンダ?」

 

ゴロンダが突然、ヒナを背後から持ち上げると、空かさずアブソルが駆け出し、ゴロンダはヒナをアブソルの背に乗せると、アブソルとゴロンダは一瞬で頷き合い、アブソルは落ちている瓦礫を使ってジャンプし、『R』が届いていないビルの屋上に到着した。

 

「ゴロンダァッ! アブソル戻って! ゴロンダが!」

 

『ソルゥッ!!』

 

「!」

 

ヒナが戻るように言うが、アブソルの目を見て黙り、眼下で落ちている瓦礫を〈アリウス〉の部隊に投げつけているゴロンダと目が合った。

 

『・・・・ゴロッ』

 

ゴロンダが親指を立てて笑みを浮かべたのを見て、ヒナは理解した。

今優先すべきは先生の安否の確認と保護。

ここで無駄な時間を費やしている場合ではない。だからこそ、怪我もなく素早く動けるアブソルを足にして、ヒナは先生の元へ一刻も早く駆けつけなければならない。しかし、目の前の部隊も放っておく訳にもいかない。

故にゴロンダは、自分が『足止め役』を務める事にした。こんな状況でボールの中で大人しくしていられる性分ではないし、一緒に行きたくてもドンカラスとヤミカラス達がいないのでは、鈍足の自分じゃアブソルに追い付けない。文字通りの『足手まとい』になってしまう。だからこそ、ここで『足止め役』をするのだ。

 

「ゴロンダ・・・・!」

 

『ーーーーゴゥロォッ!!』

 

ヒナが呼ぶが、『R』のガスが区画を充満する中、ゴロンダは両手の拳を叩き合わせると、身体の筋肉が一瞬膨張した。攻撃力と防御力を一時的に上げる【ビルドアップ】をしたのだ。

そして、ガスが区画を覆い、ゴロンダと〈アリウス〉の部隊の姿が見えなくなったのと同時に・・・・。

 

ーーーーズガガガガガガガガ!!

 

ーーーードォォォォンンッッ!!

 

ーーーーバララララララララ!!

 

ーーーーゴォオオオオオオオ!!

 

ーーーーグシャァァァァァッ!!

 

ーーーーバゴォォォォォォン!!

 

けたたましい銃声と破壊音だけが不気味に響くのであった。

 

「・・・・・・・・」

 

『ソルッ・・・・』

 

「分かってる。急ごう、アブソル・・・・」

 

ヒナを乗せたアブソルが、『R』が登ってこないギリギリの箇所を走る。

・・・・その際、ヒナとアブソルから、僅かな水滴が風に乗って流れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

ーマコトsideー

 

そしてその頃ーーーー。

 

「キキキキキキキキッ!! 成功だ! コレぞ計画通りっ! キヒャヒャヒャヒャッ!!」

 

『シャシャシャシャ!!』

 

『マ〜タドガス♪』

 

いつの間にか『飛行船』に乗り込んで離脱していた『万魔殿‹パンデモニウム・ソサエティー›』の代表マコトが、眼下に広がる惨状を見て声高らかに笑い声を上げ、アーボックも一緒になって笑い、マタドガスも笑顔を浮かべていた。

 

「マコト先輩、一体何を・・・・?」

 

『ニャァ?』

 

明らかに非常事態な筈なのに高笑いを上げているマコトを見て、流石のイロハとイロハの肩に乗ったニャースも困惑しながら聞く。

 

「コレで邪魔者はすべて消える。『ティーパーティー』も、あの目障りだったヒナも! 分かるかイロハ、コレぞ『一石二鳥』ってやつだよ。何を隠そうこのマコト様は、〈トリニティ〉を恨んでいる〈アリウス〉と前々から結託していたのさ! 『ティーパーティーの内紛』も、クーデターも、私は最初から知っていた。全ては今日の計画の為に!」

 

「『クーデター』・・・・?」

 

どうやらマコトは以前から〈アリウス〉に接触していたようで、更にはミカの起こした『クーデター』の事も知っていたようである。

 

「いつの間にそんな事を・・・・つまり先輩は、最初から『エデン条約』を結ぶ気は無かったと?」

 

「ああ、そんな事これっぽっちも興味無いね! 私の関心はずっと、邪魔者共を片付ける事だけだ! いつまで経っても姿を現さない『ティーパーティー』の奴等を誘き出す為、あくまでその為に『エデン条約』へ同意するフリをしていたのさ! そのついでにヒナまで片付いた、こんなラッキーな事は無い! まぁ、ヒナの四獣達は勿体なかったがな。アレだけの実力と能力、そして何よりも高い忠誠心を持った奴等を失うのは惜しいが、仕方あるまい。キキキキッ!」

 

イロハはマコトに『エデン条約』を締結するつもりがなかったのかと聞くと、マコトはハッキリと興味無いと告げ、単に『ティーパーティー』と何かと自分より目立つヒナを纏めて始末する事だと断言した。何度か『万魔殿‹パンデモニウム・ソサエティー›』に勧誘していたアブソル達を失うのは惜しんでいた。

・・・・因みに勧誘の度にアブソル達から威嚇され、ヒナから『殺意』を向けられていたが。

 

「その為に、〈アリウス〉は多大なサポートをしてくれた。この『飛行船』だって私達の『友好の証』としての贈り物・・・・敵の敵は味方と言う事だよ、キキキキッ!!」

 

『シャシャシャシャ!』

 

『マ〜タドガス♪』

 

『「・・・・・・・・」』

 

マコトとアーボックとマタドガスが笑みを浮かべるが、イロハとニャースは嫌な予感を感じでならなかった。

 

「さあ、〈アリウス〉に連絡を。本格的に〈トリニティ〉の壊滅戦を始めようじゃないか。ヒナにナギサ、私の邪魔者はもういない! 今こそ〈トリニティ〉を、〈キヴォトス〉の地図から消し去る時だ!」

 

『飛行船』で〈トリニティ〉に乗り込むように指示をするマコトだが、イロハが努めて冷静に声を発する。

 

「マコト先輩・・・・〈アリウス〉は〈トリニティ〉以上に憎んでいるのが、私達〈ゲヘナ〉なんですよ。どうして私達と手を組むと思ったんですか?」

 

「・・・・・・・・何ぃっ!?」

 

確かに〈アリウス分校〉は〈トリニティ総合学園〉からの弾圧を受けて恨んでいるが、それ以上に憎んでいるのが〈ゲヘナ学園〉であった。

『ティーパーティー』やヒナを出し抜く事ばかりで、そんな初歩的な情報すら知らなかったのが、マコトの抜けている所である。

 

「ねえねえグレッグル‹グレちゃん›、このたくさん書いてある箱って何? 『取扱禁止』『可燃性』って書いてあるけど・・・・」

 

『ンー』

 

マコト達『万魔殿‹パンデモニウム・ソサエティー›』が溺愛している丹花イブキが、パートナーのグレッグルと共に見つけた箱を聞いて、イロハは諦めたかのように溜め息を吐いた。

 

「ーーーーまぁ、つまりは・・・・またマコト先輩が騙された、と」

 

ーーーードカアアアアァァァァァァァァン!!!

 

そして、〈アリウス〉から貰った『飛行船』に仕掛けられていた爆弾が、グレッグルが丹花イブキを両手で担いで逃げ出すのと同時に、盛大に爆発した。

 

 

 

 

 

 

ーサオリsideー

 

「ーーーー『チームⅡ』、報告を」

 

最大に伸ばされたクレーン車のクレーンの上で、〈ゲヘナ学園〉の『万魔殿‹パンデモニウム・ソサエティー›』が乗る『飛行船』が、船体が火だるまになって落下していくを見届けているサオリとヘルガー(色違い)。

サオリは『チームⅡ』の指揮を取っているミサキに連絡を取る。

 

《『チームⅡ』、古聖堂に侵入した。そろそろ『正義実現委員会』との戦闘に突入する。ソッチは?》

 

「ああ。こっちも『用事』は終わった」

 

すると次に、慌てた声をしたヒヨリの声が通信機に響く。

 

《ち、『チームⅢ』! げ、現在ヒナさんに逃げられて、ヒナさんのポケモンのゴロンダと交戦中です! な、何なんですか何なんですかあのポケモンは!? 『R』が充満した空間でもお構いなしに攻撃してきてーーーーうわぁ!! コッチに来ましたぁ! が、ガラガラ! 【かえんぐるま】!!》

 

《『ガァラァー!!』》

 

「・・・・ヒナのゴロンダか。ヤツはどう戦っている?」

 

《え、え~と・・・・あっ、倒したバクガメスのガスマスクを奪って、ソレを被って1回深呼吸してからまた戦ってます!》

 

「ならばヤツは、“息を止めた状態で戦っているんだ”。呼吸をしなければ『R』の影響は受けない。だからバクガメス達からガスマスクを奪い、呼吸を整えてから深呼吸をして再び息を止めて戦っている。持久戦に持ち込めば勝てるだろうが、ヒナを自由にさせるのは危険だ。バクガメス達から離れさせ、間髪入れずに攻撃を繰り出し、息を止めていられずにすればすぐに呼吸をする。そうすれば『R』を吸い込み暴走する木偶の坊になる筈だ。ヒナの方は“空で待機しているポケモン達に対処させる”」

 

《り、了解! 『チームⅤ』は予定通り、地下に侵入中・・・・!》

 

「了解。すぐに合流する」

 

『ーーーー!!』

 

サオリ落下する『飛行船』に向けて冷笑を浮かべると、『R』によって暴走した野生のひこうポケモン達が襲い来る。

 

『ルガァァァァ!!』

 

「〈トリニティ〉、そして〈ゲヘナ〉よ・・・・コレまでの長きに渡る我らの『憎悪』、その負債を払ってもらう時だ。我々〈アリウス〉が楽園の名の下に・・・・」

 

ヘルガー(色違い)が【かえんほうしゃ】を放ち、ひこうポケモン達が丸焼けになって落下する。

 

「貴様らを審判してやろう」

 

サオリは冷酷に呟くと、ヘルガーと共にその場から立ち去った。

 

 

 

 

 

 

ー先生sideー

 

「・・・・い! 先生、目を覚まして下さい!」

 

“アロナ・・・・?”

 

先生が目を覚ますと、半壊した廃墟の教室、破壊された外壁から見える透き通るような青空と大海ーーーーそうソコは、アロナのいる『シッテムの箱』の世界であった。

そしてアロナが涙目で自分に声を掛けていた。

 

「先生、大丈夫ですか!? 気を確かに・・・・!」

 

“一体何が・・・・”

 

「古聖堂が爆破させられて・・・・何とか先生を守ろうとしたのですが・・・・もう、コレ以上は・・・・・・・・しっかり・・・・力が・・・・」

 

アロナが状況を説明しようとするが、段々と先生の意識が遠退き・・・・。

 

 

 

 

 

 

『カルゥォッ!!』

 

『エーフィッ!!』

 

『シャシャモ!!』

 

『マクマク!!』

 

『ジュプッ!!』

 

『アギャァッ!!』

 

“ーーーー・・・・み、皆・・・・?”

 

突然の光と衝撃波と『紫色の煙』に呑み込まれ、気を失っていた先生が目を覚ますと、ルカリオに何故か進化しているエーフィ(色違い)、ワカシャモ達御三家にミライドンが心配そうに横になっている自分を見下ろしていた。

先生の無事にルカリオ達は安堵するが、先生が顔を動かして周囲を見るとソコはーーーー『地獄』であった。

周りは炎の海と紫色のガス『R』が充満とし、ほんの少し前まで趣のある古聖堂が完全な瓦礫の山と化していた。

 

“!?”

 

すると、先生の視界に、タキシードを身に纏った双頭のマネキン人形のような姿をした人間(?)が横切り、炎と瓦礫の山に消えた。

 

“(今のは・・・・!)”

 

一瞬、その人物を目で追い身体を起こした瞬間に鈍痛が身体を襲った。

 

“〜〜〜〜! 皆、何が起こったの?”

 

『カルゥ』

 

ルカリオが説明を始めた。突然の爆発と衝撃波で古聖堂が崩壊したが、先生とピカチュウは運良く瓦礫の隙間に挟まり助かった。

そして即座に瓦礫の中からルカリオだけが出てきて、【はどうだん】や【はっけい】で瓦礫を破壊して脱出し、他の皆も飛び出して先生を運んだが、迫り来る炎から先生を守る為、イーブイをエーフィを進化させ、【サイコキネシス】のバリアを張ろうとした。

しかし、爆風で先生の懐から離れたのか『超進化ライト』が迫る『R』の直ぐ側にあり、ピカチュウがライトを持って来たが間に合わず、『R』を吸い込んでしまい、暴走してしまった。

 

“っ! ピカチュウは!?”

 

『・・・・カルゥ』

 

ルカリオが、ミライドンの足元に視線を向け、先生も追うとソコにはーーーー。

 

『ピィカヂュウゥゥゥゥッ!!!』

 

目が紫色に光り、放電しているピカチュウがミライドンの前足に背中を押さえつけられ地面に伏せている姿があった。ピカチュウの目は完全に『R』に汚染された様子である。

そしてルカリオが言うには、ギリギリ『超進化ライト』をルカリオに手渡し、ルカリオがイーブイをエーフィに進化させバリアを張り、その中にピカチュウを入れる事が出来たが、やはり暴走してしまい、ルカリオが【ボーンラッシュ】で取り押さえ、ミライドンが前足で動けなくさせたと言うのだ。

 

“ピカチュウ・・・・!”

 

『カルゥ!』

 

『ーーーー!!』

 

相棒の変わり果てた姿に、思わず先生は身体を押して近づこうとしたが、ルカリオ達が全員で抑えた。

 

『カルカルォ!』

 

“・・・・ごめん、ルカリオ”

 

ルカリオが「しっかりして下さい!」と叫ぶと、何とか冷静になった先生が大人しくなる。

チナツ曰く、『R』の効果は5分〜10分で切れる。スマホロトムの時計を見ると、少なくても既に8分は経過している。このままピカチュウが正気に戻るのを待つかと思ったその時ーーーー。

 

「・・・・先生!」

 

声がした方に目を向けると、独特の修道服をボロボロになり、今にも破け豊満な胸と肉付きのいい太腿を晒しそうになったヒナタが現れた。

 

「せ、先生・・・・けほっ、こほっ・・・・ご無事でしたか!」

 

“な、何とかね・・・・”

 

『ーーーーシャァァァァッ!!』

 

「先生危ない!!」

 

先生の後ろの瓦礫から、『R』で暴走したハブネークが毒の牙を滴らせて大口を開けて先生に襲い来る。

が、ヒナタがハブネークの刃のような尻尾を掴み取ると、50kg以上はあるハブネークの身体を軽々と持ち上げて、投げ飛ばしてしまった。

 

“(・・・・前に、ヒナタは『力持ち』だって聞いた事があるけど本当だったんだ・・・・)”

 

「コレだけの力がある事に、今は感謝します・・・・先生、立てますか?」

 

“・・・・何とか、ね”

 

先生はルカリオとミライドンに抑えられているピカチュウを気にしつつ、ヌマクローとワカシャモとジュプトルに支えられながら立ち上がる。

 

「お怪我は・・・・無さそうですね。あの爆発に巻き込まれて殆ど傷が無いだなんて、本当に『奇跡』のようです・・・・」

 

恐らくアロナが守ってくれたのだろうと、先生は直感した。

 

「ーーーー先生! ご無事でしたか!」

 

「せ、先生・・・・!」

 

「『正義実現委員会』の皆さん・・・・!」

 

すると、次に目に入ったのはハスミとツルギであった。二人共も、身体も制服も殆どボロボロの状態であった。

 

“皆、酷い怪我だ・・・・”

 

「これくらい大した事はありません。ですが先程の爆発で、『正義実現委員会』の殆どは戦闘不能になりました」

 

“皆のポケモンは・・・・?”

 

「・・・・『R』が蔓延して、ソレを吸い込んでしまい暴走しましたけど、何とか『制圧』しました。私はネギガナイトだけでしたが、ツルギはチャーレムとコノヨザルが・・・・」

 

「・・・・・・・・」

 

「わ、私のヨノワールも・・・・!」

 

全員の表情から恐らくーーーー“自分の手でポケモン達を倒してしまった”、と言う事だ。

ハスミとツルギ、そしてヒナタがミライドンの足の下で足掻いているピカチュウを見て、自分の手持ちポケモン達の暴れてしまった姿と、そのポケモン達を止める為とは言え傷付けてしまった事を思い出し、辛そうな顔をした。

 

“・・・・ナギサとサクラコは?”

 

「・・・・お二人も、他の方も見当たりませんでした」

 

今は現状を知らなくてはならないので、先生はエーフィのバリアから出て話を聞くと、ハスミも察してくれたのか報告する。

 

「・・・・〈ゲヘナ〉側も、殆ど見当たりませんね。コレは一体どう言う・・・・」

 

「っ!!」

 

被害に遭っているのは『ゲヘナ風紀委員会』だけであり、『万魔殿‹パンデモニウム・ソサエティー›』と言った〈ゲヘナ学園〉の代表達がいない事を訝しむハスミ。しかし、ツルギが別方向にバッと目を向けると・・・・。

 

ーーーーバララララララララララララ!!

 

突然、足元に銃弾が飛んできて、先生達がソッチに目を向けるとーーーー。

 

「作戦地域に到着。『正義実現委員会』の残党を発見。・・・・いや、訂正。『残党』じゃなく、『正義実現委員会の真髄』だ。ツルギにハスミか・・・・兵力をコッチ回して、コレより交戦に入る」

 

『ブーバーン』

 

『FIMー92スティンガーロケットランチャー・セイントプレデター』を持った少女ミサキと、ガスマスクを被ったブーバーンを中心に、同じくガスマスクを被ったバクガメスを連れたこの部隊は、

 

“彼女達は・・・・!”

 

「〈アリウス分校〉・・・・!? ど、何処からコレ程の兵力が・・・・!? どうやって、周辺地域は全て警戒態勢だったのに・・・・」

 

「ま、まさか・・・・!!」

 

先生とハスミが〈アリウス分校〉の部隊の登場に驚くと同時に、〈トリニティ〉と〈ゲヘナ〉の警戒網の中からこんな大部隊を連れてきたのか疑問に思うと、ヒナタが目を見開いて口を開く。

 

「まさか、『地下』から・・・・? 古聖堂の地下にある、あの『カタコンベ』から・・・・!?」

 

先程ヒナタが先生とピカチュウに話した『通功の古聖堂』の地下にある数十キロにも及ぶ『地下の共同墓地‹カタコンベ›』の事を思い出し口にした。

 

「・・・・成る程。つまりこの状況、アナタ達〈アリウス〉の仕業だと考えて良いでしょうか?・・・・許しません。その『代償』、今ここで・・・・っ!」

 

そしてソレを聞いたハスミは、この惨劇の原因が〈アリウス分校〉であると理解し、怒りを顕にして『スナイパーライフル・インペイルメント』の銃口を〈アリウス〉の部隊、恐らく部隊長であるミサキに向けた。

が、そんな義憤に駆られるハスミを制する者がいた。

 

「・・・・ハスミ」

 

「・・・・!」

 

「落ち着け」

 

「・・・・はい、そうですね。ありがとうございます、ツルギ。今は先生の安全が最優先・・・・先生を連れて、ココから離脱します」

 

「あぁ・・・・暴れるのは、私の役目だ」

 

意外な事に、ハスミを止めたのはツルギであった。普段は狂暴性と奇声で暴れて、ハスミに制されているように見えるが、ツルギはいざとなれば状況をクレバーに見る判断力と、血気に逸る仲間達を纏め上げる高い統率力を発揮する事ができる。だからこそ、ツルギが『正義実現委員会』のリーダーを務めているのだ。

 

「くひひひひっ・・・・さぁ」

 

ツルギが愛銃『ウィンチェスターM1887』の2挺のショットガン『ブラッド&ガンパウダー』を構える。

 

「ーーーー相手してやるぜ、虫けら共! 掛かってきなぁっ!!」

 

今日まで比較的に大人しくしていたツルギが、本領発揮した。

 

「・・・・面倒だな。ブーバーン、【かえんほうしゃ】」

 

『バァァァァンン!!』

 

ブーバーンが両手をバズーカ砲にすると、凄まじい熱量の炎を発射した。

 

「ひゃっははははははははああああぁぁぁぁーーーーっ!」

 

「先生、行きましょう!」

 

“うん。皆、ボールに戻って!”

 

『ルォ!?』

 

『エフィ!』

 

『シャモ!』

 

『マクゥ!』

 

『ジュゥ!』

 

『アギャァ!』

 

“駄目だよ。『R』が蔓延しているこの状況じゃ”

 

ツルギがブーバーンを連れている部隊長の女の子の気を引いている間に、先生がピカチュウも含む全員をボールに戻そうとする。

が、勿論全員が首を横に振るが、この『R』が充満している空間ではルカリオ達が危険であるからモンスターボールに戻した。

 

『ピ・・・・ピカピピ・・・・』

 

そして、漸く正気に戻ったピカチュウが、先生を見上げる。

 

“ピカチュウ。助かったよ、ありがとう。でも、今はボールに戻って・・・・ゴメンね”

 

『ピ、ピカァ・・・・』

 

ピカチュウが力弱く先生を見上げて首を横に振って何か言おうとするが、先生はモンスターボールに入るのを嫌っているピカチュウに1回謝罪してから、ピカチュウをボールに入れる、ハスミとツルギ、そして愛銃である『デザートイーグル・ブレッシング』を構えたヒナタと共に、この包囲網を突破し始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、ツルギの殲滅力とハスミの戦闘力、ヒナタの怪力、先生の指揮能力を駆使して何とかミサキ達の包囲網と暴走したポケモン達をくぐり抜けたその瞬間、

 

「くっ! 一体何ですか、アレは・・・・!」

 

「・・・・・・・・」

 

ハスミとツルギが訝しげに、突如として現れた『ソレ』を見据えた。

 

『・・・・・・・・』

 

手に持っている武器は『サブマシンガン』に『アサルトライフル』に『スナイパーライフル』で装備し、『シスターフッド』が着ているのとは微妙に違う修道服にハナコが見たら騒ぎそうなハイレグレオタード姿をし、〈アリウス〉のようなガスマスクを被っているが、素肌は不気味な程に青白く、まるで生気を感じないーーーーまるでそう、『幽霊』のような印象を受ける子達である。

 

「あの威力・・・・そして幾ら戦っても手応えの無い、この不思議な感覚・・・・アレは、本当に『人』・・・・? ソレとも・・・・」

 

ハスミが『人間』とは思えない『ソレ』を見据えると、ヒナタが前に乗り出した。

 

「シスターヒナタ・・・・?」

 

「あの姿、見た事があります・・・・アレは『聖徒会』の服装」

 

「・・・・『聖徒会』?」

 

「『ユスティナ聖徒会』・・・・数百年前に消えた筈の『戒律の守護者達』が、どうして今ここに・・・・!?」

 

ーーーー『ユスティナ聖徒会』。かつての複数の分派にわかれていた学園を〈トリニティ総合学園〉に統合した『第1回公会議』で定められた戒律を守り続けた『組織』であり戒律を破る者への対処をするトリニティの武力集団で『シスターフッド』の前身である。

ソレが今、現代に蘇り、〈アリウス分校〉と共に暴虐を繰り広げていたる。

更にはーーーー。

 

『ーーーー』

 

『ーーーー』

 

『ーーーー』

 

『ユスティナ聖徒会』の周囲に、丸い大きな1つの目玉から、手足とも角ともつかない棒状のものが枝のように生えて枝分かれをし、まるで身体で文字を表しているようなポケモン、『シンボルポケモン・アンノーン』。

宇宙人のような埴輪っぽい見た目をし、腕には3色の指をしたポケモン、『ブレインポケモン・オーベム』。

黄色に青と赤の模様を走らせた羽根と尾羽、緑と黒の丸っこい胴体のような部分からは腕のような突起とアンテナの様な突起が生えている鳥に似たポケモン、『とりもどきポケモン・シンボラー』。

ソレらがまるで彼女(?)達の手持ちのように包囲し、更に他にも『ユスティナ聖徒会』とアンノーンの群れとオーベムの群れとシンボラーの群れが、1人に1匹ずつで現れた。

 

「・・・・尋常ではない数です。周りに数十・・・・いえ、数百人規模の・・・・」

 

「っ!」

 

ヒナタの報告を聞き、更に後ろからミサキが率いる部隊もやって来た。

 

「・・・・追いついた。聖徒会の複製‹ミメシス›も確認。『条約』に調印が為された・・・・ソレに、人形との取引と上手く行ったみたいだね。アツコ」

 

 

 

 

ーアツコsideー

 

その頃、『通功の古聖堂』だった建物の地下にて、部隊に守られていたアツコの元に、靴音を高く鳴らしながら現れたのは、先程先生が見かけた、タキシードを身に纏った双頭のマネキン人形のような不気味な人間(?)が現れる。

 

「ひぃっ・・・・!!」

 

「き、木の人形・・・・!? ソレとも、ポケモン・・・・!?」

 

アツコの周りにいる〈アリウス〉の生徒が、異形の存在を見てビクッとなる。

 

「・・・・無作法だな。私を呼ぶのであれば、芸術への敬意を込めて『マエストロ』と呼んで欲しいものだ」

 

「・・・・・・・・」

 

ポケモン呼ばわりされた『マエストロ』と名乗る存在は心外と言わんばかりに呆れた声を発すると、アツコに目を向けた。

 

「ソナタらにはまだ、『芸術』の何たるかは尚早だろうが・・・・ならば済まないが、ソナタらとは愉しい対話は成り立ちそうにない。『知性』、『品格』、『経験』・・・・ソレラを携えて来るが良い。〈キヴォトス〉な生徒達よ、どうか私を落胆させてくれるな」

 

マエストロは何やら難しい会話をしているようである。

 

「・・・・されど、あの守護者達の『威厳』を複製‹ミメシス›できると言うその一点には興味を惹かれた。ソレに免じて、今回はソナタらを助けよう。戒律を守護せし者の血統・・・・その『ロイヤルブラッド』の『戒命』が動作する様を見届けられたのは、幸甚であった」

 

「・・・・・・・・」

 

「お陰で私の『実験』は、更に『崇高』に近づく事ができるだろう」

 

マエストロの話を、アツコは黙って聞いている。

 

「・・・・ふむ。説明は退屈しにして由無し事だろうか。では約束通り、この地下にある『教義』の下まで案内してもらうとしよう」

 

「・・・・・・・・」

 

「さあ、往かん・・・・」

 

そして、アツコ達とマエストロは、何処かへと歩き出して行った。




次回、遂に・・・・。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。