ー先生sideー
漸く『R』が風に流され、薄まっていった区画にて。
「きええええぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」
ーーーーダンダンダンダンダンダン!!
ツルギが元気良く奇声を上げて、『ユスティナ聖徒会』とポケモン達を蹴散らすが、まるでディグダ叩きのように次から次へと聖徒会とポケモン達がやって来る。
「・・・・キリがありませんね。この者達は、一体・・・・?」
「ま、マズいですね・・・・せめて、先生だけでも脱出を・・・・!?」
体力も弾薬も底を尽きそうになったハスミとヒナタが、先生を逃がそうとしたその時、
ーーーーダダダダダダダダダダダダダダダダ!!
ーーーーザシュンザシュンザシュンザシュン!!
突如上から飛来した『影』が、『ユスティナ聖徒会』を蹴散らした。
「・・・・!?」
『!!』
ミサキも始めて顔を驚愕に染め、ブーバーンが両手のバズーカをその『影』に向けると、『R』が殆ど無くなったその場に現れたのはーーーー。
「ーーーーこっち!」
『アブソル!』
“ヒナ・・・・! アブソル・・・・!”
ボロボロの状態だが、『ゲヘナ風紀委員会委員長 空崎ヒナ』と四獣のリーダーアブソルであった。
「〈ゲヘナ〉の風紀委員委員長・・・・!?」
「へぇ〜、空に待機させてた『ファイアロー』の部隊も倒したんだ」
ヒナと登場にハスミめ驚き、ミサキも目を細めた。
「『正義実現委員会』、先生をこっちに! 今は時間がない!」
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
敵である〈ゲヘナ〉の風紀委員長をハスミはジッと見据え、その視線にヒナも正面から応じる。
「・・・・分かりました。先生、私達がここで敵を止めます。後はあの風紀委員長がきっと何とかしますから、急いで下さい!」
“ハスミ達は!?”
「・・・・私達は、先生の退路を守ります」
「はい。不快ではありますが・・・・あの風紀委員長は、私達がそうすると信じているのでしょう。確かに今は、ソレ以外に方法がありません」
ヒナの真っ直ぐな瞳を見て、ハスミは先生を託す事にし、ツルギは自分達が殿を務めると言った。
“でも・・・・!”
「先生、今〈トリニティ〉の首脳陣はほぼ壊滅状態です。『シスターフッド』も『ティーパーティー』もいない今・・・・先生にまで何があっては、本当に収拾がつかなくなってしまいます!」
“・・・・・・・・”
生徒を置いて脱出する事を渋る先生に、ハスミは先生の安全の方が重要だと諭した。
「・・・・先生の無事を祈ります。その道は、私達が守って見せます!」
「やるぞハスミ・・・・!」
ハスミとツルギが、『ハイパーボール』を取り出し、放り投げた。
「「『ウーラオス』!!」」
ーーーーポンッ!×2
ツルギとハスミの投げた『ハイパーボール』が開き、大柄な熊の獣人の姿をし、白と黒の『鎧』を着込んだかのような屈強な肉体や、たなびく毛が頭部から伸びた鉢巻きのようで、熟練の武術家を思わせる出で立ちをしたポケモン。
ツルギの前に現れたのは、八極拳を思わせる構えを取り、所々の毛は逆立っている『けんぽうポケモン・ウーラオス(いちげきのかた)』。
『べアーク!』
ハスミの前に現れたのは、蟷螂拳を思わせる構えを取り、所々の毛は流れている『けんぽうポケモン・ウーラオス(れんげきのかた)』
『べアクア!』
2体のウーラオスを構えを取る。
「(アレが、『正義実現委員会』の委員長と副委員長が所有する『隠し玉ポケモン』・・・・)」
「先生、急いで!」
「・・・・先生!」
「お、お願いします! 今は行って下さい、先生・・・・!」
“・・・・・・・・ミライドン”
『(ポンッ) アギャァ!』
先生はヒナとアブソルの元へと走り出し、ミライドンを出して乗り込みハスミ達の戦闘音を背に離脱した。
「ーーーー風紀委員長! 先生を、よろしくお願いします!」
ーーーーダンダンダンダンダンダン!!
ーーーーババババババババババババ!!
ーーーードカァァァァァァァァァン!!
「・・・・任せて。先生、今あの怪物達‹ユスティナ聖徒会›をマトモに相手取れる方法はない。今は包囲網を抜けて脱出する事が、っ・・・・!」
『ソル!?』
“ヒナ、傷が・・・・! ソレにゴロンダとドンカラスは!?”
と、ソコでヒナも負傷した身体が痛みだしたのか、顔を顰める。
「傷は大した事ない。ドンカラスは負傷したアコを運ぶ為に、ゴロンダは私を先生の元に行かせる為に、1人〈アリウス〉の部隊と戦っているわ・・・・」
“そんな・・・・!”
「大丈夫。・・・・先生、私から離れないで。退路は、私とアブソルがこじ開ける。ミライドン、『R』を通る時は苦しいだろうけど息を止めてね」
『アギャ』
ミライドンに頬ずりされた後、ヒナは進路上に立ち塞がる『ユスティナ聖徒会』に向けて、『機関銃МG42・終幕:デストロイヤー』が火を吹き、アブソルも【エアスラッシュ】や【スピードスター】を放ち、『ユスティナ聖徒会』を蹴散らしていきながら、『R』がまだ残っている区画を通る際にはアブソルとミライドンは息を止めて突き進んで行く。
◇
「はぁっ、はぁっ・・・・」
『ソルッ、ソルッ・・・・』
負傷した身体を押して戦うヒナと、先生と合流するまで追っ手のファイアロー達と戦ってきたアブソルは疲労が顔に色濃く出ていた。
“ヒナ・・・・”
「大丈夫。先生、もう少し耐えて。ここを抜ければ・・・・」
と、ソコでアブソルとミライドンは急停止した。『ユスティナ聖徒会』を引き連れてーーーー少しボロボロになったヒヨリとアローラガラガラが現れたからだ。
「ひ、ヒナさん、また会いましたね」
『ガラァ!』
「っ! アナタ達、ゴロンダが戦っていた筈・・・・!」
「え、えへへ、何とか倒せましたよ。お、お陰で、コッチの部隊は全滅しましたけど、『ミネシス』達を大量に使って、ね」
「っっ!!」
『ソルッ!!』
怒りに駆られて機関銃を構えようとしたヒナだが、アブソルが声を上げて制止した。
『アブソル!』
「っ! アブソル、まさか・・・・!」
『ソルっ!』
「・・・・先生、アブソルから離れて」
“うん”
アブソルが頷くと、ヒナがアブソルから降り、ミライドンから降りた先生もミライドンと共に後退すると、ヒナは懐から取り出した輪っかをアブソルの角に付け、自分は指輪を右手中指に嵌め込んだ。
「へ? ま、まさかソレって・・・・!」
「先生。もう『R』は晴れたから、ルカリオ達も出して大丈夫な筈よ」
“うん。皆!”
ーーーーポンッ!×5
『カルォ!』
『ブイ!』
『シャモ!』
『マクゥ!』
『ジュプ!』
先生がモンスターボールを放り投げると、ルカリオとイーブイ、ワカシャモとヌマクローとジュプトルが出てきた。
ーーーークンクン・・・・ポンッ!
『ピ、ピカァ・・・・』
“ピカチュウ、ダメだよ!”
『R』の影響で体力を使い果たしたピカチュウが出てくるが、先生が両手に抱える。
「先生。ココは一気に攻めるべきよ」
“うん。行こう!”
先生めヒナと同じ物を取り出した。『キーストーンブレス』である。ヒナは指輪の『キーストーンリング』。
“ルカリオ! 絆の力でさらなる高みへ! メガシンカ!!”
「アブソル! 面倒だから、さっさと片付けるわよ! メガシンカ!」
先生の『キーストーンブレス』と、ルカリオのバングルにある『メガストーン』が光り輝き、お互いのアイテムから光の帯が幾つも現れ繋がると、ルカリオの身体は光に包まれ玉になると砕け、メガルカリオへとなる。
ヒナの『キーストーンリング』と、アブソルの角に着けられた『メガストーン』からも光の帯が放たれ繋がると、アブソルの身体に光の玉になって砕けるとメガシンカした。メガシンカのエネルギーで全身の毛が伸びて逆立ち、大きな翼が生えたかのようになり、頭部の毛は片目を隠し、また角や尻尾も伸びて悪魔や堕天使を思わせるような形状になり、アブソルは『メガアブソル』へとなった。
“イーブイ! ブラッキーだよ!”
“ブイ!ーーーーブゥラッキー!!”
更に先生は『超進化ライト』でイーブイをブラッキー(色違い)にした。
“さぁ・・・・”
「本気で行くわ」
『『『ーーーー!!』』』
アンノーンが【めざめるパワー】を、オーベムとシンボラーは【サイケこうせん】を、『ユスティナ聖徒会』も銃弾を放った。
『っ!!』
が、メガアブソル達はソレを回避し、御三家を先生の護衛とし、メガアブソルとメガルカリオとブラッキー、そしてヒナが前に出て戦う。
『ソルッ!』
『『『!?』』』
メガアブソルが【つじぎり】で『エスパータイプ』のアンノーンとオーベムとシンボラーの群を瞬時に斬り捨てていく。
『ブラァァァァ!!』
ブラッキーも【あくのはどう】で倒していく。
「が、ガラガラ! 【シャドーボーン】!」
“ルカリオ、【ボーンラッシュ】!”
『ガァラァーッ!』
『カルゥ!』
ヒヨリの指示を受け、アローラガラガラは手に持つ骨の両先端に黒い影を纏ってメガルカリオに迫るが、メガルカリオも波動でできた棒を生み出し、アローラガラガラとアクション映画顔負けな棒術の格闘戦を始めた。
『ーーーーーーーー』
そして、『ユスティナ聖徒会のミネシス』が迫ると、
「邪魔・・・・!!」
『シャモ!』
『マクーッ!』
『ジュゥッ!』
ーーーーガガガガガガガガガガガガガ!!
ーーーーバギィっ!!
ーーーーバコォンッ!!
ーーーーズバァンッ!!
ヒナが機関銃を発射し、ワカシャモが【けたぐり】で、ヌマクローは【いわくだき】で、ジュプトル【リーフブレード】でミネシスを薙ぎ倒して、離脱しようと突き進んでいくーーーー。
「はぁ、はぁ・・・・はぁ・・・・くっ・・・・」
しかし、怪我と疲労の為か、ヒナの消耗が激しく遂に倒れてしまった。
“ヒナっ!!”
『っ! アブソル!』
倒れたヒナにすぐに駆け寄る先生とメガアブソル、嫌、ヒナが倒れた事によりメガシンカが解除されアブソルに戻った。
『ーーーーカァルォ!!』
『ガァラァァァァ!!?』
「が、ガラガラ・・・・!」
メガルカリオも、【ボーンラッシュ】を回転させてアローラガラガラの棒を弾くと、【はどうだん】を放ち、ヒヨリの元まで吹き飛ばし、ブラッキーと御三家と共に先生の元に集まる。
すると、複数人の足音と共に、ミサキとブーバーン、そして見た事のない2人の女子とヘルガー(色違い)が現れた。
「『ゲヘナの風紀委員長』、漸く倒れた」
「や、やっとですか・・・・痛かったですよねぇ、よくあの傷でココまで・・・・」
「・・・・・・・・」
「〈トリニティ〉と〈ゲヘナ〉の主要人物は全部片付いた。残りはもう貴様だけだ、『シャーレの先生』」
紫色の2つ三つ編みなフードを被って顔まで覆うマスクを着けた少女と、ヘルガー(色違い)のトレーナーらしい帽子とマスクの少女、恐らくこの帽子の子が事前にアズサから聞いていたアズサの師匠、『錠前サオリ』であろう。そして、このサオリが率いる部隊こそ・・・・。
“・・・・君達が、『アリウススクワッド』?”
「・・・・・・・・」
「ふぅ・・・・」
「えへへ・・・・」
「・・・・・・・・」
「・・・・ああ、そうだ。私達が『アリウススクワッド』。漸く会えたな、先生」
“・・・・!”
〈アリウス分校〉の少数精鋭部隊『アリウススクワッド』が、遂に目の前に現れた。
「アズサが世話になったと聞いた。アイツには今から会いに行く予定だ。・・・・我々は〈トリニティ〉に代わり、この『通功の古聖堂』で『条約に調印』した」
「・・・・・・・・」
“・・・・どういう意味?”
アズサの元に行くサオリに『危機感』を感じたが、〈トリニティ〉に代わって『条約に調印』、ソレがあの『ユスティナ聖徒会』と何か関わりがあるのかと思い質問してみた。
「私達『アリウススクワッド』が、『楽園』の名の下に『条約』を守護する新たな武力集団・・・・『エデン条約機構‹ETO›』になったと言う事だ」
“(『ETO』・・・・前にヒナが言っていた『軍事同盟』の事だ!?)”
本来、〈トリニティ〉と〈ゲヘナ〉が結ぶ筈だった『エデン条約』に〈アリウス〉が調印したと言い出しただけでなく、『エデン条約機構‹ETO›』になったと言い出した。
「これは元々、私達の『義務』だった。本来ならば『第1回公会議』の時点で、私達が行使すべき当然の『権利』。だがソレを、〈トリニティ〉が踏みにじった。私達を紛争の原因、すなわち『鎮圧対象』として定義し、徹底的に弾圧を行った」
サオリは本来、『エデン条約機構‹ETO›』となるのは自分達であると主張する。
「・・・・コレからは『アリウススクワッド』が『エデン条約機構‹ETO›』としての権限を行使し、『鎮圧対象』を定義し直す。〈ゲヘナ〉、そして〈トリニティ〉。この両校こそ『エデン条約』に反する紛争要素であり、排除すべき『鎮圧対象』だ」
“ソレは、つまり・・・・”
「〈トリニティ〉と〈ゲヘナ〉を、〈キヴォトス〉から消し去る。文字通りにな」
更にサオリは、〈トリニティ〉と〈ゲヘナ〉を滅ぼすと宣言した。
すると、複数の足音が響くと、『ユスティナ聖徒会』とミネシス達が『アリウススクワッド』の後ろに隊列を組んで並んだ。
「・・・・この条約の戒律、その守護者達と共に」
“『ユスティナ聖徒会』・・・・!”
「貴様らは『第1回公会議』以来、数百年に渡って積み上げられてきた恨み・・・・私達の憎悪を確認する事になるだろう」
サオリの口ぶりから、どうやら〈アリウス分校〉の『憎しみ』は、先生が思っている以上に深く大きいようだ。
「・・・・だがその前に、貴様を処理しておくとしようか」
ーーーーガチャっ・・・・。
そしてサオリは手に持つ『アサルトライフル』ではなく、拳銃の『オートマチックピストル・M226』の銃口を先生に向けた。
“(銃口が・・・・!)”
『っ!!』
先生が狙われていると感じ、メガルカリオとブラッキー、御三家が先生を守ろうと立ち塞がる。
「ブーバーン」
「が、ガラガラ」
『ブゥバァァァァンン!!』
『ガラガラガラガラっ!!』
ミサキとヒヨリのブーバーンが両手で【かえんほうしゃ】、アローラガラガラが骨を振り回すと【かえんぐるま】が放たれ、炎がメガルカリオ達を襲う。
『カルゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!』
『マァクゥゥゥゥゥゥゥッ!!』
メガルカリオが【ボーンラッシュ】を前方に振り回して盾にし、その後ろにブラッキーが隠れ、【みずでっぽう】を放つヌマクローの後ろに、ワカシャモとジュプトルが隠れる。
が・・・・。
『ハァ、ハァ、ハァ、ハァ・・・・っ!』
『マ、クロォォォォ・・・・』
“ルカリオ! ヌマクロー!”
2体の炎の熱量にメガルカリオは疲弊し、片膝をつくとメガシンカが解けてルカリオに戻ってしまった。ヌマクローも熱量に干からびてしまったようでその場で倒れてしまった。
『ーーーーブラッキー!!』
『ーーーーシャモォ!!』
『ーーーージュプゥ!!』
ルカリオとヌマクローのお陰でダメージを最小限にできたブラッキーとワカシャモとジュプトルが、【でんこうせっか】と【ニトロチャージ】と【ダメおし】を繰り出す。
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
ーーーーバシュンッ!!・・・・バキッ!!
『『『っ!!!???』』』
がしかし、フードの女子が右手を前に突き出した瞬間ーーーー袖の中から『炎の塊』が飛び出し、ブラッキー達を弾き飛ばし、地面に倒れるとブラッキーはイーブイに戻ってしまった。
“イーブイ! ワカシャモ! ジュプトル!”
そして3匹を倒した『炎の塊』は、空中でUターンするとフードの女子の右手の袖の中に戻った。
「(あの炎・・・・アレが彼女の手持ちポケモン達か!)」
『ピ、ピカァ・・・・』
『ソルッ!』
「ヘルガー」
『ルガァァァァ!!』
『ソルッ!?』
ヒナのアブソルが【つじぎり】で攻めようとしたが、ソレよりも早くサオリのヘルガー(色違い)がアブソルの首に齧り付き、アブソルと揉み合いながら地面を転がる。
“アブソル・・・・!”
『・・・・アギャァ!』
ソレまで怖気づいているミライドンが、先生を守ろうと前に出ようとした。
がーーーー。
「・・・・・・・・」
ーーーードォオオオオンン!!
『(バシュゥンン!) アギャァアアアア!!』
フードの女の子が今度は左手を突き出すと、今度は巨大な火球が飛んできて、ミライドンに当たり、ミライドンは身体から煙を上げながら倒れた。
“ミライドン!”
最早、先生を守る存在はいない。そしてサオリは引き金に力を込める。
「『シャーレの先生』・・・・貴様が『計画』の1番の支障になりそうだと、『彼女』は言っていたからな」
ーーーーパァン!!
『ピカァァァァ!!』
サオリが冷徹に弾丸を撃つのと同時に、先生の腕の中にいた疲労困憊のピカチュウが飛び出すが、放たれた弾丸はピカチュウの脇腹を貫通しーーーー先生の腹部に突き刺さり、先生は両膝を付いた。
『ーーーーーーーー!!!!』
ルカリオとイーブイ、ワカシャモとヌマクローとジュプトル、そしてミライドンが涙を流しながらの叫びが、その区画に大きく、そして虚しく響いた・・・・。
ーサオリsideー
最初の1発はピカチュウが盾になったが、ソレでも貫通し、シャーレの先生に当たったのは見えた。更に弾丸を撃ち込もうとサオリは引き金を引く。
「ーーーーああぁあぁぁぁぁっ!!!」
ーーーーパァン!! パァン!! パァン!!
「・・・・っ! まだ動けるのか、空崎ヒナ!」
が、満身創痍で倒れていた空崎ヒナが大声を上げて立ち上がり、サオリが放った弾丸を受けた姿を見て戦慄する。
『ーーーーヘルゥゥゥゥ!』
「ヘルガー!?」
『ソルッ!』
サオリの手持ちのヘルガーが足元に倒れるのと同時に、ヘルガーが足止めしていた空崎ヒナのアブソルも現れた。
更にーーーー。
『ーーーードンガァァァァァァァァッ!!』
『ーーーーヤミカァァァァァァァァッ!!』
「っ! サオリ! 空を!!」
「っ!!」
ミサキが突然空からの雄叫びに目を向け、サオリに声を掛けると、サオリも空を見上げて目を開いた。
〈トリニティ〉の空を黒く覆い尽くす程のーーーーヤミカラスの軍勢。そしてソレを率いるのは、空崎ヒナの手持ちポケモン、『〈ゲヘナ〉の空の支配者』とまで称されるドンカラスであった。
「・・・・・・・・」
そしてヒナは、懐にあったハイパーボールを取り出して宙に放り投げた。
「・・・・お願いーーーールギアァァァァァァァァ!!」
『ーーーーギャーアアアアスッ!!!』
ヒナの頭上に現れたのは、全身は丸みを帯びた翼竜。翼の先はまるで水を掻くのに適した手のような形になり、鋭い目元や背中、尻尾の先から姿勢制御用と思われる藍色のフィンが生え、腹部はそれより少し薄い青色となったその身体は、銀色に輝く『伝説のポケモン』、『せんすいポケモン・ルギア』であった。
「あ、ああああのポケモンは!?」
「『伝説のポケモン』の一角、『ルギア』・・・・。『ゲヘナ風紀委員長』の『四獣』と称される手持ちポケモンの最後の1匹・・・・」
「・・・・・・・・」
「っ! 避けろ!」
『アリウススクワッド』は、ルギアの登場に面食らったが、サオリが直ぐに避けるように叫ぶと同時に、ヒナが声を張り上げる。
「吹き飛ばせーーーー【エアロブラスト】!」
『ーーーーギャアアアアアアアアァァァァァァァァッッ!!!』
『っ!!』
ルギアが空気圧の塊を放つと、『アリウススクワッド』はギリギリ回避できたが、『ユスティナ聖徒会』は吹き飛ばされてしまった。
「コレが・・・・! 〈ゲヘナ〉の風紀委員長の『隠し玉ポケモン』、ルギアか!?」
『ガァァァァァァァァッ!!』
『カァァァァ!』
ーーーービュオオオオォォォォ!!
サオリが目を見開くと同時に、ドンカラスの号令の元、300数匹以上のヤミカラス達が一斉に【かぜおこし】を放ち、その暴風と砂煙に『アリウススクワッド』の視界と動きを封じた。
「『セナ』っ! コッチ!!」
そして空崎ヒナが声を張り上げると、〈ゲヘナ学園〉の『救急医学部』の救急車が物凄いドリフトをしてやってきた。
「救急車・・・・!?」
そして救急車が先生の眼前に止まると、バックドアが開き、ソコから確か・・・・〈ゲヘナ学園〉の『救急車医学部』所属『氷室セナ』がシャーレの先生に手を伸ばしていた。
「先生! 手を!」
“・・・・・・・・”
シャーレの先生は朦朧とする意識で氷室セナの手を掴んだ。
「逃がすかっ!」
「ゾロアーク!」
『ゾロア!』
サオリ達『アリウススクワッド』が銃を構えようとした瞬間、氷室セナの手持ちポケモンらしいゾロアークが飛び出ると、サオリ達の眼前の空間が渦を巻いて歪み、墓地のような空間に変化し、シャーレの先生達の姿すら消えてしまった。
「ひぃぃぃっ!? なんですかなんですか!?」
「落ち着いてヒヨリ。ゾロアークの『イリュージョン』だよ」
突然墓場に連れてこられ狼狽えるヒヨリに、ミサキは冷静に告げた。
何百人もの人を化かす程の強力な幻影で『相手を幻の空間に閉じ込める』事ができるゾロアークの特性『イリュージョン』である。
「辺り構わずに撃て! 所詮は幻、本物のシャーレの先生は目の前にいる筈だ!」
ーーーードドドドドドドド!!
ーーーーバシュンッ!!
ーーーードォオオオオオン!!
サオリの号令で、先程まで先生がいた空間に向けて銃を乱射する『アリウススクワッド』。
しかし、空間が再び渦を巻いて歪み、元の空間に戻ると、シャーレの先生と救急車はおろか、他のポケモン達の姿が無かった。
ーーーーブゥゥゥゥンン・・・・。
エンジン音が遠くから聞こえ、ソチラに目を向けると、救急車の後ろ姿が遥か向こうに見え、その周りにはヤミカラスの群れが包囲するように飛んでいた。
「ヒヨリ。撃てるか?」
「・・・・だ、駄目です、ヤミカラスの群れが邪魔でーーーーあっ、先生のポケモン達や、ふ、風紀委員長のゴロンダらしいポケモンがヤミカラス達に運ばれています」
「・・・・逃げられた」
「まあ良い。ピカチュウや空崎ヒナに妨害されたが、銃弾は当たっている。アレは〈キヴォトス〉の外の者だ。『ヘイロー』は壊れ・・・・いや、死ぬ筈だ」
当たったのは最初の1発、ソレもピカチュウが邪魔したせいで狙いは僅かに外れたが、コレで終わったとサオリが確信する。
「しかし、あの様子・・・・あの先生が、そんなに『大事な存在』なのか」
「・・・・・・・・(スッ、スッ、スッ・・・・)」
「『あの人がいなかったら全て『計画通り』だった筈』・・・・? そ、そうなんですか姫ちゃん? え、『ソレにアズサもきっと・・・・』?」
『正義実現委員会』、『シスターフッド』、そして『ゲヘナ風紀委員会』。険悪な関係の組織達が利害を捨てて守ろうとした『シャーレの先生』に、サオリは疑問視するが、アツコは再び手話で意思を伝えるとヒヨリが通訳した。
「・・・・・・・・」
そしてアツコは、もう後ろ姿さえ見えなくなった救急車、嫌、その中にいる先生を見据えていた。
ー先生sideー
“(お腹が熱い・・・・)”
そして身体は救急車の振動で揺れ、朦朧とする意識の先生にセナが努めて冷静に話しかける。
「よく聞いて下さい先生、アナタは銃で撃たれました。奇跡的に急所は避けていますが、この出血は放っておけません。コレより応急処置に入ります。痛かったら悲鳴を上げて下さい」
“ピカ、チュウ・・・・”
「ピカチュウはすぐ側にいますよ。ですが、弾が貫通しコチラも出血が酷い状態です」
“イーブイ・・・・”
「は?」
“イーブイ・・・・ニン、フィア・・・・いやしの・・・・ピカチュウ、に・・・・”
「・・・・分かりました。ゾロアーク。近くにいるヤミカラスに、先生のルカリオとイーブイを連れてこさせて下さい。ニンフィアに進化させて【いやしのはどう】でピカチュウの傷口を塞ぎます」
『ゾロア!』
セナは先生の意図を察してくれたようで、ゾロアークに指示をしてから、再び先生の方に向き直る。
「ではコレより先生の応急処置に入ります。痛かったら悲鳴を上げて下さい。死なせません。私は、『救急医学部』ですから」
そう言ってセナが治療に取り掛かるが。
“(意識に、霞が・・・・)”
先生の意識は、暗い闇へと堕ちていったーーーー。
ー???sideー
「・・・・・・・・」
「・・・・ここでお前が出てくるのか」
「まさか姿を現すとはね・・・・そのまま逃げ出しても良かったのに」
「えへへ、お久しぶりですね・・・・」
『アリウススクワッド』のメンバーは、自分達の目の前に現れた人物を見て目を細める。
「はぁ、はぁ、はぁ・・・・」
息を切らせ、暴走ポケモン達とも戦ってきたのか制服の所々が破れたり焦げが付いたりしている少女、〈トリニティ〉に侵入させていたスパイにして裏切り者ーーーー『白州アズサ』であった。
「・・・・どうだ、アズサ」
「どうして、どうして・・・・」
何故こんな事を、と言いたげなアズサの激しい怒りが宿った瞳でサオリを睨みつけるが、サオリはそんな視線を受け流しながら淡々と答える。
「私の言った通りだっただろう。〈トリニティ〉にも、『シャーレ』にも、お前の『居場所』はない。私達みたいな『人殺し』を受け入れてくれる場所なんて、この世界には無いんだよ」
「どうして、先生を・・・・!」
「そんな場所があるように見えても、全ては儚く消える・・・・さっきの『先生』とやらのようにな・・・・全ては無駄だ。それなのにどうして足掻くんだ、白洲アズサ」
サオリ達を睨みつけるアズサに対し、サオリはこの地獄のような状況を見せて、アズサも自分達と同じ、『居場所の無い人間』であると告げる。
そしてアズサは、先生を撃った事に怒りを露わにするが、サオリは全ては無意味と言わんばかりに、アズサの事を否定する。
「サオリいぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!」
ーーーーダンダンダンダン!!
「まだ『甘い夢』に酔っているのか・・・・仕方ない、手伝ってやろう。何度でも、その『夢』から目を覚まさせてやる」
ーーーーガチャ・・・・。
「来い!!」
アズサは怒りに吠え、『アサルトライフル・Et Omnia Vanitas』をサオリに向けて撃ち、その弾丸を回避しながら、まだ足掻こうとするアズサに、サオリは憐みの目を向けながら自分の銃『SIG-SAUER SIG516・アリウス製アサルトライフル』を構え、迎え撃つのであった。
ー先生sideー
“ーーーーココは・・・・”
意識が闇に沈んだ先生が目を覚ますと、ソコは夜の〈トリニティ〉の『ティーパーティー』のテラスであった。身体を見ると、サオリに撃たれた傷も血も無く、痛みすら無かった。
『せん、せい・・・・』
“っ! ミュウツー!”
声がする方に振り向くと、ボロボロの傷だらけとなったミュウツーが、片膝を付いていた。
“何があったの?”
『分かりません・・・・。古聖堂に向かってミサイルが飛んでくるのが見え、破壊しようと向かおうとした時、何者かの攻撃を受けてしまい、今は〈ミレニアム〉の『岩壁エリア』の奥にある滝壺にいます』
「・・・・どうやらピンチのようだね」
“! 君は・・・・?”
「・・・・はじめましてかな、先生。そして人間の業によって生まれたポケモン、ミュウツー。私の名前は『百合園セイア』。そしてココは君の夢の中だ・・・・或いは、私の夢の中かも知れないがね」
“セイア・・・・”
『?』
何度か『夢の中』で会っていたセイアなのだが、目の前のセイアはまるで初対面のような態度であった。
「おっと、もしかして『はじめまして』ではないのかな? コレは失礼。『今の私』にとって、時間の流れは少しばかり捻れていてね。しかし先生、ミュウツー、大事なのはソコではなく、君達と私がこうして会えていると言う事だ」
そう言って、セイアは先生に近づく。
「さあ・・・・では、お話を紐解いていくとしよう」
セイアは先生に話を始めた。
「先生、君は『〈キヴォトス〉の外部から来た者』であり『大人』だ。となれば、『契約』、『取引』・・・・そう言った『約束事』の持つ重要性について、良く知っている事だろう。例えば『悪魔と契約する』、と言う言い回しがあるだろう」
“ポップカルチャーのような?”
「そう。昔話においても『驚異的な存在が何か不注意な約束をしてしまったが為に敗北する』、或いは逆に『そう言った約束によって打ち勝つ』と言う話は幾つもある。ーーーーソコからは、こうも読み取れないかい? 単純な紙切れ、或いは口約束に過ぎないとしても・・・・『約束』と言うものは時に何かを強く拘束し、定義付ける事もある。『契約』、『戒律』、『約束』・・・・こう言ったものはソレら昔話と同時に、〈キヴォトス〉においても『重要な概念』だ」
セイアはこの〈キヴォトス〉で、そう言う『約束事』がどれだけ重要なのかを説明している。
「例えば〈トリニティ〉の経典には太古の始まりの『神性』。そしてソレとの間に接続された『10の戒命』が描かれている。その他にも、私達は原初に置いて『約束』を破ったから『楽園』から追放されたのだ・・・・その様な事も書き伝えられている」
そう言って、セイアが目を閉じて話す。
「・・・・今更な話かな。何せ実際に君は、そう言った『概念』を利用した『誰か』を救った事があった筈だ」
“私が・・・・?”
「思い出して欲しい。『ゲマトリア』は〈アビドス〉の生徒に何かを強いる事はできず、ただ『契約』を要求してきた。その『契約』が成立しないとなれば、『ゲマトリア』は退くしかなかっただろう」
“『ゲマトリア』・・・・『黒服』・・・・!”
先生の脳裏に、ホシノを利用しようとしていた黒服の姿が過った。あの時は『契約の穴』を突いてはホシノと交わした『契約』を無効にする事ができた。だからこそ、『ゲマトリア』は〈カイザーコーポレーション〉との戦いに、アレ以上介入して来なかった。
「・・・・・・・・」
しかし、目の前のセイアが『ゲマトリア』の事を知らない筈だが、どうやらコレが彼女の『能力』なのだろう。
そして、『エデン条約』もまた『契約』。〈アリウス〉がソレを調印させたから『ユスティナ聖徒会』と言う、あの不可思議な存在達を操っていた。つまりーーーー。
「この事件もまた、つまりそう言う事。『エデン条約』、コレ自体が学園間で行われる『約束事』である事は確かだ。しかし、この『条約』が行われる『特別な場所』・・・・」
“ソレが、『通功の古聖堂』”
「(コクリ) そして条約締結の為に集まった、『代表者達の資格』。こう言った『要素』により、コレは大きな意味を持つ『約束』となった。歪曲されつつも、コレは明らかに『公会議』の再現。そしてその約束である『戒律』を守護する『ユスティナ聖徒会』とこの時の為に集めたポケモン達を、特別な方法で『複数‹ミネシス›』として顕現させた」
“それじゃぁ、あのアンノーン達は・・・・?”
「かつて、『ユスティナ聖徒会』の手持ちポケモン達の『複製‹ミネシス›』だろうね。つまる所、『契約』で『曲解』し、『歪曲』し、自分達の望む結果を捏造した・・・・そうまとめても良いだろう。コレが『ゲマトリア』と言う、『大人のやり方』・・・・」
“・・・・・・・・”
『・・・・・・・・』
先生とミュウツーは、静かに怒りを燃やす。『R』が出てきた時に予想はついていた。
以前から目をつけていた『Xデー』、『エデン条約』に、『ゲマトリア』が『R』を使って良からぬ事を企んでいるのではないかと。しかし、ココまで大規模な事を企てていたとは。
しかし、ここまで分かるとは、セイアはまさか『未来予知』をしていたのかと視線を向ける先生。
「・・・・ああ、念の為に言っておくが、私はコレらの事を事前に知っていた訳ではないよ。あくまで君の『夢』を通じて、『観測』しただけだ。『ゲマトリア‹アレら›』は私の基本的な理解を超えた、不可解な存在だからね。形式的な話から離れると、つまる所・・・・」
セイアは一拍置いてから口を開いた。
「・・・・〈アリウス〉の背後には『ゲマトリア』がいて。〈アリウス〉は倒れる事も死ぬ事も無い、『強大な軍隊』を手に入れた。コレが現在の状況にして『事実』。私達がかつて追放された楽園・・・・『エデン』、その名を冠する条約の元に」
ウーラオス(いちげき)は、狂暴に見えて実はクレバーなツルギに。ウーラオス(れんげき)は冷静に見えて実は激情に流されやすいハスミに。
そして遂にルギアが登場しました。
〈アリウス分校〉の生徒達はバクガメスだけでなく、ファイアローも所持しています。
凶弾に倒れた先生とピカチュウの運命はいかに。因みに先生のニンフィア(色違い)は、【いやしのはどう】が使える設定です。