到着、アビドス高等学校
ー先生sideー
先生は電車に乗りながら、これから赴く〈アビドス高等学校〉について、先生は書類の他にアロナに送られた手紙を読み始めた。
《連邦捜査部の先生へ。
こんにちは。私は〈アビドス高等学校〉の『奥空アヤネ』と申します。今回どうしても先生にお願いしたいことがありまして、こうしてお手紙を書きました。 単刀直入に言いますと、今、私達の学校は追い詰められています。それも、地域の暴力組織によってです。 こうなってしまった事情は、かなり複雑ですが・・・・。どうやら、私達の校舎が狙われているようです。 今はどうにか食い止めていますが、そろそろ弾薬などの補給が底を尽いてしまいます・・・・。このままでは、暴力組織に学校を占領されてしまいそうな状況です。 さらには、ここ一年程前から私達の通う学校付近で、野生ポケモン達が群れと縄張りを作り、その勢力と縄張りも徐々に大きくなり、縄張り争いまで起こって私達も巻き込まれており、私達だけでは手に負えなくなっています。 それで、今回先生にお願いできればと思いました。先生どうか私たちの力になっていただけませんか?》
先生は手紙を読み終わるとアロナに質問する。
“アロナ、〈アビドス高等学校〉って?”
《うーん、〈アビドス高等学校〉ですか・・・・。昔はとても大きな自治区でしたけど、気候の変動で厳しい状況になってると聞きました》
アロナはタブレット上に現在のアビドスの航空写真を写す。そこは砂漠が広がる中に、ポツポツと、豆粒のような居住地が広がる場所であった。
“これは・・・・予想以上に凄いな”
『ピィカ・・・・』
先生と肩に乗ったピカチュウは、〈アビドス〉のあまりの広さと、それを飲み込んばかりの砂漠の浸食具合に驚く。
《そういえば先生、アビドス自治区は大きすぎて、街のど真ん中で道に迷って遭難する人がいるそうですよ》
“いくらなんでもそれは誇張し過ぎじゃないかな”
《う~ん、流石に私もそう思います。でも、学校が暴力団や野生ポケモンさんの群による縄張り争いだなんて・・・・ただ事ではありませんね。何が起こっているのでしょう?》
“ーーーーそれを調べる為に、ここに出張したんだけどね”
『ピカ?』
アロナの姿を認識できないピカチュウが首を傾げていると、電車のアナウンスから、〈アビドス〉に間もなく到着する事を告げた。
《先生。ミライドンさんに乗って行きますか?》
“・・・・いや、〈アビドス〉で何が起こっているのか把握できていない状況で、迂闊にミライドンを出すのは危険だ。しばらくは徒歩で行こう”
電車が停止すると、リュックサックを背負った先生達は、〈アビドス〉へと足を踏み入れた。
数日間、遭難する事になるのだが。
ー???sideー
砂漠が広がる中、一本の道路だけが、申し訳ない程度で伸びており、その周りには砂に埋もれた家やビルがあった。
そんな道路をロードバイクで走る一人の少女がいた。
「・・・・・・・・」
犬か猫のような耳を生やした銀髪をセミロングにし、銀髪の隙間から見える人の耳にはピアスを開け、水色の瞳の瞳孔の色が白と黒で左右で違うオッドアイを持つ、非常にミステリアスな雰囲気を醸し出している少女。何処かの学校の制服を着用し、首には砂漠に似つかわしくないペールブルーに黒いラインが入ったマフラーを巻いており、両手にはサイクルグローブを嵌め、背中には中々大きなショルダーバッグを背負い、光学サイトとフォアグリップの付いた『アサルトライフル・WHITE FANG 465』も背負っている。
「・・・・ん?」
と、ソコで少女は、道路の近くの砂漠で倒れている一人の大人の男性とピカチュウを見つけた。
「・・・・・・・・」
キキーッとブレーキをかけてその二人の隣に止まると、話しかけた。
「・・・・あの・・・・」
すると、砂で汚れた服をした男性とピカチュウはヨロヨロと顔を上げて自分を見上げてくる。
「・・・・大丈夫?」
“(コクン)・・・・”
『ピカ・・・・』
「あ、生きてた。道のド真ん中に倒れてるから、死んでるのかと」
“お、お助け・・・・道に迷って・・・・夕べから何も食べてなくて・・・・眠ってもいなくて・・・・もう、ヘトヘトで・・・・”
『ピ、ピカ・・・・』
「えっと・・・・ホームレス?」
“違う、よ・・・・”
『ピカッチュウ・・・・』
少々困った顔になりながらも、少女の言葉を男性とピカチュウは否定する。
「ただの遭難者だったんだね。ああ、ここは元々そう言う所だから。食べ物がある店なんか、とっくに無くなってるよ。こっちじゃなくて、もっと郊外の方に市街地があるけど」
“私、ここに来たのは初めてなんだ・・・・”
「ん。・・・・なるほど。この辺は初めてなんだね。ちょっと待って」
少女はゴソゴソと、バックの中を漁ると。
『ワン♪』
「あっ、『イワンコ』。ちょっとゴメンね」
バックの中から、ポケモンが顔を出した。大きな青い瞳をした犬のポケモン『こいぬポケモン・イワンコ』である。
ただ、少女のイワンコは通常のイワンコよりも目がキリッとしており、さらに本来は茶色い筈の全身がペールブルーで、マズルはこげ茶、鼻は薄い桃色となった『色違いのイワンコ』であった。
少女がバックの中を探ると、ドリンクボトルとポケモンフーズを差し出した。
「はい、これ。エナジードリンクとポケモンフーズ。ライディング用とイワンコのオヤツなんだけど・・・・今はそれしか持ってなくて。でも、お腹の足しにはなると思う。えっとコップは・・・・」
少女がコップを出そうとするが、男性はドリンクボトルにそのまま口をつけ飲み、ピカチュウもポケモンフーズを頬張る。
“(ゴクッ、ゴクッ・・・・!)”
『(カリカリカリカリ・・・・!)』
「・・・・!」
構わず飲んだ男性に、少女は目を僅かに見開いた。
「あ・・・・それ・・・・////」
“ーーーーん? どうかしたの?”
そして弱冠、頬を赤らめのを見て、男性が尋ねる。
「・・・・ううん、何でもない。・・・・気にしないで」
“助かったよ、ありがとう”
『ピカピカ♪』
男性とピカチュウがお礼を言った。
「うん。・・・・見た感じ、〈連邦生徒会〉から来た大人の人みたいだけど・・・・お疲れ様。学校に用があって来たの?」
“うんそうだよ。この近くにあるってのは分かっているんだけどね”
「この近くだと、うちの学校しかないけど・・・・もしかして・・・・〈アビドス〉に行くの?」
『ワゥン?』
少女とイワンコが探るように眉根を寄せる。
“・・・・うん。そうだよ。私達は〈アビドス高等学校〉に用があるんだ”
『ピカピカ!』
そう返すと、少女の目が元に戻る。
「・・・・そっか。久しぶりのお客様だ。それじゃあ、私が案内してあげる。すぐそこだし、この辺りはーーーー『サダイジャ』や『ワルビアル』の縄張りの境界線にあたるから、アイツらの小競り合いに巻き込まれたら大変だし」
“『サダイジャ』? 『ワルビアル』?”
ポケモンの名前を聞いて、男性が首を傾げると、少女は説明する。
「この〈アビドス〉の砂漠地帯にはね、“四体のポケモン達”を『ボス』とした群れがそれぞれに縄張りを作って、我が物顔で他のポケモンや私達の学校を攻撃してくるの。その中の二体が『サダイジャ』と『ワルビアル』。他所から来た人やポケモンが手下の『スナヘビ』、『メグロコ』に『ワルビル』に見つかるとすぐに攻撃を受けてしまうから危ないよ」
“・・・・それはもうーーーー多分大丈夫、だと思うよ”
『ピカチュウ・・・・』
何故だろうか、男性とピカチュウは半眼で苦笑しながら明後日の方向に視線をそらしていた。
「???・・・・取り敢えず早く行こう」
“・・・・そうしたいんだけど、お腹が減って動けなくてね”
「・・・・『ライドポケモン』は?」
“その・・・・ちょっと事情があってね、出せないんだ・・・・”
「うーん・・・・どうしよう」
悩んでいると、男性が声を上げる。
“乗せて欲しいな・・・・”
「えっと、これ一人乗りだから」
“なら背負って欲しいな・・・・”
「・・・・・・・・」
『ピカ・・・・』
『ワゥン・・・・』
男性の言葉に、少女は悩み、ピカチュウとイワンコは半眼で男性に呆れた視線を向ける。
「・・・・まあ、その方が良いか」
『ピィッ!?』
『ワフン!?』
少女の言葉に、ピカチュウとイワンコは「良いの!?」と言わんばかりの声を上げた。
少女はロードバイクを道路の端に停めた。
「ロードバイクはここに停めて、と・・・・。それじゃあ・・・・」
そう言うと、少女は男性を背負おうと、スッと上体を下ろす。
“・・・・では失礼して”
「・・・・あ、待って」
少女が止めると、男性も止まった。
「・・・・・・・・」
“・・・・どうしたの?”
「えっと・・・・さっきまでロードバイクに乗ってたから・・・・そこまで汗だくって訳じゃないけど、その・・・普段は学校のシャワー室を使うの。予備の服もそこにあるし・・・・////」
少し頬を赤らめる少女。汗で少々湿った服で異性に触るのに抵抗があるのだろう。
しかし、
“・・・・気にしないで、寧ろイイ匂いがするよ”
『ワンワン!』
『ピカァ・・・・』
男性の言葉に、イワンコは同意するように頷き、ピカチュウは苦笑する。
「・・・・うーん、ちょ、ちょっと良くわからないけど・・・・それじゃぁ」
少女が男性を背負う。
「しっかり掴まってて」
そう言って、歩き出す。
“・・・・そういえば、名前言ってなかったね。私は先生。この子は相棒のピカチュウ”
『ピッカ!』
「ん、私は『シロコ』。〈アビドス高等学校〉の二年生『砂狼シロコ』。パートナーはイワンコ」
『ワン!』
先生とピカチュウ。シロコとイワンコは、お互いに紹介した。
そして、シロコとイワンコは気付いていない。
自分達の近くにある砂漠に呑まれ傾いたビルの反対側にーーーー目を回して気絶したポケモンが大量にいたのだ。
その中には、シロコが警戒していた『サダイジャ』と『ワルビアル』がいた。
ー先生sideー
紆余曲折もあり、漸く件の学校に到着した先生とピカチュウは、シロコとイワンコに案内され、『対策委員会』と張り紙が貼られた表札の教室に入った。
中は普通の学校の『会議室』。中央にテーブルが置かれ、その側には本棚やホワイトボードが置かれていた。
「ただいま」
「おかえり、シロコせんぱ・・・・い?」
『ワシ?』
シロコの後輩らしき猫耳が生えた黒髪をツインテールにした少女。その肩には、ライオンの鬣のようなモフモフが付いている子鷲のポケモン。
「うわ!? 何っ!? そのおんぶしてるの誰!?」
「わあ♪ シロコちゃんが大人を拉致してきました!」
その向かい側にいたベージュのロングヘアに左側頭部だけ輪を書くように結んだ髪型と、服の上からでも分かる大きな胸元が特徴的で、ゆるふわでおっとりとした生徒が、先生を見て茶化すように微笑んだ。
「拉致!? もしくは死体!? シロコ先輩が遂に犯罪に手を・・・・!!」
『ビブラ!』
黒髪のセミロングな赤い眼鏡をし耳の尖った生徒が割りと失礼な台詞を言うと、その傍らにカゲロウのような姿をした緑色の翅のポケモンが驚いた声を上げた。
「皆落ち着いて! 速やかなに死体を片付けるわよ! 『サダイジャ』達か、『ワルビアル』達の縄張りの何処かに放置すれば、アイツらが殺った事に・・・・!!」
「・・・・・・・・」
口々に失礼な事を言う学友達に、シロコは「心外」と言わんばかりに、先生をゆっくり下ろして、改めて紹介する。
「いや・・・・普通に生きてる大人だから。うちの学校に用があるんだって」
「えっ? 死体じゃ、なかったんですか・・・・?」
「拉致したんじゃなくて、お客さん?」
「そうみたい・・・・」
シロコが言い終わると、先生は立ち上がり、なるべく元気に挨拶した。
“はじめまして!”
『ピッカッ!』
ピカチュウも元気良く挨拶した。
「わぁ、ビックリしました。お客様がいらっしゃるなんて、とっても久しぶりですね」
「そ、それもそうですね・・・・でも、来客の予定ってありましたっけ・・・・」
“シャーレの顧問先生です! そして相棒のピカチュウ! よろしくね!”
『ピカチュウ!』
先生がシャーレの者だと言うと、シロコ以外の三人が、ビクッと肩を震わせた。
「・・・・え、ええっ!? まさか!?」
「連邦捜査部〈シャーレ〉の先生!?」
「わあ☆ 『支援要請』が受理されたのですね! 良かったですね、『アヤネ』ちゃん!」
「はい! これで・・・・弾薬や補給品の補助が受けられます!」
ほんわかとした生徒が言うと、眼鏡の生徒が満面の笑みでそう応えた。
“ーーーー所で、手紙を送ってくれた生徒は・・・・”
「あっ、私です! 一年生の『奥空アヤネ』です! この子はパートナーの『ビブラーバ』です! 来てくださりありがとうございます!」
『ビブラー!』
件のアヤネが、大きく頭を下げながら感謝を述べ、『しんどうポケモン・ビブラーバ』も頭を下げる。
次に、猫耳の生徒が前に出る。
「私、一年生の『黒見セリカ』。こっちはパートナーの『ワシボン』っていいます」
『ワシボン!』
少々ぎこちないセリカと、元気良く挨拶する『ヒナわしポケモン・ワシボン』だった、
「私は二年生の『十六夜ノノミ』です。私のパートナーは此処ではちょっと狭いので、外に出たらお見せしますね☆」
ノノミがお行儀良く頭を下げた時、その大きな胸元が、フルン、と揺れた。
「あ、早く『ホシノ先輩』にも知らせてあげないと!・・・・あれ、『ホシノ先輩』は?」
「委員長は隣の教室で寝てるよ。私、起こしてくる」
そう言って、セリカはワシボンを肩に乗せたまま急いで教室を出た。
その瞬間、
ーーーーダダダダダダダダダダダダダダダッ!
外からマシンガンの銃声が響いた。
「じゅ、銃声!?」
「!!」
ノノミが驚き、シロコが銃を持って窓際に近づき、外を見る。
ー???sideー
外、アビドスの正門には、ヘルメットを被った女子生徒達が、銃を持ってたむろって、騒いでいた。
「ひゃーっははははははは!」
「攻撃! 攻撃だ! 奴らは既に弾薬やキズくすりの補給は絶たれている! 襲撃せよ! 学園を占拠するのだ!」
ーーーータタタタタタタタタタタタタタタッ!!
明らかに不良な生徒達が、銃を乱射してアビトスを攻撃してくる。
ー先生sideー
「わわっ! 武装集団が学校に接近してます! 『カタカタヘルメット団』のようです!」
“・・・・『ガラクタヘルメット団』?”
「あ、いえ先生。『カタカタヘルメット団』です。お手紙にあった暴力組織です」
「アイツら・・・・!! 性懲りも無く!」
件の手紙にあった暴力組織の登場に、アヤネは慌てながらも先生に説明し、シロコが目を鋭くすると、セリカが片手に一人の生徒を、もう片方の手にポケモンを引きずってやって来た。
「ホシノ先輩と『ヤドキング』連れてきたよ! 二人共! 寝ぼけてないで、起きて!」
ピンク色の長髪の頭頂にピョコンと一本の大きなアホ毛が伸び、左右の目が青と黄色のオッドアイに、口には八重歯が生えた、高校生どころか、下手すれば小学生でも通じる程に小柄な生徒と、モモカのパートナーのヤドンの進化系で、頭に大きく豪華な巻貝を王冠のように被り、首元にもケープやポンチョの様な紅白の襟巻きがある二足歩行のポケモン『おうじゃポケモン・ヤドキング』が、眠そうな顔をしていた。
「むにゃ・・・・まだ起きる時間じゃないよー」
『ヤドヤド・・・・ZZZ』
微睡んでいる『ホシノ』と違い、ヤドキングは再びねむり状態になってしまった。見かねたアヤネが声を張り上げる。
「ホシノ先輩! ヘルメット団が再び襲撃を! こちらシャーレの先生です」
「ありゃ〜そりゃ大変だね・・・・・・・・あ、先生? よろしく〜、むにゃ」
ホシノと呼ばれる生徒は、一瞬だけ、先生とピカチュウを警戒したような視線を向けると、すぐに呑気な調子に戻り、再び眠りに入ろうとする。
「先輩、しっかりして! 出動だよ! 武装持って! 学校を守らないと!」
「ふぁあ・・・・むにゃ。おちおち昼寝もできないじゃないかー、ヘルメット団めー」
セリカが忙しなく騒ぐと、観念したのか起き出すホシノ。
そして、シロコがアサルトライフルを、ノノミが『M134ミニガン・リトルマリンガンV』、本体重量だけでも18kgあり、射撃時の強烈な反動も完璧にコントロールしなければならない武器を、ホシノが『ベレッタ1301 Tactical・Eye of Horus』のピストルグリップモデルと折りたたみ式の盾を、セリカが『AR70/223・シンシアリティ』を、アヤネはドローンを飛ばし、オペレーターとして付くと、ビブラーバはアヤネの護衛のように側に立つ。
シロコ達の動きに合わせて、イワンコとワシボンも気合いを入れる。ヤドキングはまだ寝てるので放っておく。
「すぐに出るよ。先生のお陰で、弾薬と補給品は十分」
「はーい、皆で出現です☆」
そう言って、アヤネとビブラーバ以外が部屋から出ていった。
“さて、私はサポート、かな?”
「はい。よろしくお願いします先生!」
ーシロコsideー
シロコ達は正面玄関に到着し、遮蔽物が置かれた校庭から、ヘルメット団がモンスターボールを構えているのが見えた。
「ん、アイツらポケモンを出す気・・・・」
『グルルル・・・・!』
「ふん! ヘルメット団のポケモンなんて、どうせいつもの『サボネア』か『ノクタス』か『イワパレス』、もしくは『イシヘンジン』が良いところでしょう? 楽勝よ!」
『ワシボン!』
シロコとイワンコが警戒し、セリカはいつも戦っているポケモンだろうと思い余裕の態度を見せ、ワシボンも同意するように鳴き声を上げた。
が、しかしーーーー。
「おら! 行け!!」
ヘルメット団達が投げたボールから出てきたのはーーーー。
『ーーーーグワァー!!』
『ーーーーシャー!!』
なんと、二本足で立つワニ『さばくワニポケモン・ワルビル』と、頭に袋のような物をつけた長く白いヘビ『すなへびポケモン・スナヘビ』が、四匹ずつ現れたのであった。
「ありゃりゃ〜、あれこの辺りを縄張りにしている『ワルビアル』と『サダイジャ』の手下達だね〜」
「うそぉ!? 何でアイツらがヘルメット団に!?」
「これはちょっと手強そうですねー、では私もーーーー『サイドン』!!」
ホシノがヘルメット団の団員達が出したポケモン達を、アビトス周辺を縄張りにしているポケモンの一派であると見抜くと、セリカが思い掛けない敵に目を見開く。
するとノノミが、モンスターボールを投げるとその中から、鼻先の角は大きなドリル状になっている二本足歩行のサイのポケモン『ドリルポケモン・サイドン』であった。
『サイドーン!!』
「出やがったな! アビドスのサイドン! ワルビル軍団! サイドンの足止めだ! 盾役でもあるヤツを抑えるんだ!!」
『・・・・・・・・ガァァー!!』
ワルビル達は、一瞬命令を聞くのを不満そうな顔をするが、切り替えてシロコ達に、と言うよりサイドンに向かっていく。
ー先生sideー
“・・・・・・・・”
『・・・・・・・・』
その頃、ドローンからの映像で、ワルビルとスナヘビを見た先生とピカチュウは額に大きな汗を滲ませる。
“あの・・・・アヤネ、あのワルビルとスナヘビって・・・・”
「はい。手紙にも記しました、縄張り争いをしているポケモン達です。・・・・でもおかしいですね。ヘルメット団に捕まるようなレベルでは無かったと思いますけど」
“・・・・と、取り敢えず、サポートを頑張るよ”
先生は全力で話を逸らす。
ー生徒sideー
「サイドン、【じだんだ】!」
『ドンドンドンドンドーン!』
ノノミがサイドンに指示を出すと、サイドンが地面を何度も踏みつけると、地面から岩が飛び出し、ワルビル達へと放たれる。
『ガァー!?』
ワルビル達が進軍を止めると、すかさずシロコとセリカはイワンコとワシボンに指示を飛ばす。
「イワンコ、【がんせきふうじ】!」
「ワシボン、【つばさでうつ】!」
『ワォーン!』
『ワァシー!』
イワンコが岩石を生み出して、ワルビル達の動きを止めると、ワシボンが翼で攻撃した。
『ガァァァァ!!』
ワルビル達がゴロゴロと倒れる。
「ちっ! 流石にウザったいな! スナヘビ達! 【すなあらし】だ!」
『シャー!』
ヘルメット団のリーダーらしき不良が指示すると、スナヘビ達が校庭を包み込む程の砂嵐を引き起こした。
「うわっ! 視界が砂まみれ!?」
『ワシボ!?』
セリカとワシボンが、周りをキョロキョロと見回すが、砂が目に入りそうになり、薄目になってしまう。
と、ソコでーーーー。
『ガァー!』
ーーーーダダダダダダ!!
「うわっ!?」
『ワシッ!?』
砂嵐の中からワルビルと弾丸が飛んできて、セリカとワシボンは慌てて回避する。
「ん、視界が悪い・・・・!」
『ワゥン・・・・!』
シロコとイワンコもまた、砂嵐により動きが取りづらくなり、更にワルビルや銃弾による奇襲でますます動きが取りづらくなっていた。
そしてノノミとサイドン、二人の側にいたホシノは。
『ガァー!』
『サイ! ドォン!』
ーーーーダダダダダダ!
「おっと」
「そぉれ!」
ワルビルの奇襲をサイドンが受け止め、そのまま地面に叩きつけ、銃弾はホシノの盾で防ぎ、ノノミがミニガンで反撃する。
「う~ん、これはちょっと面倒だね〜」
「シロコちゃんとセリカちゃん達とも連携が取りづらくなりましたね」
ーアヤネsideー
アヤネのドローンも砂嵐によって映像が見えず、辛うじてインカムから、皆の声と銃撃戦の音を聞き取れる程度であった。
「先生!」
“不味いね、流れがヘルメット団に来ている”
「でも、どうしてワルビルやヘルメット団は攻撃が?」
“ワルビルは暗闇の中でも獲物を狙えるし、砂漠のポケモンだから砂嵐の中でも皆の居場所を把握できるんだ。それに、ヘルメット団はヘルメットを被っているから、皆よりも砂嵐の影響を受けにくいんだろうね”
「っ、成る程・・・・! でも、どうすれば・・・・!」
“・・・・・・・・”
『ピッカ!』
ピカチュウが肩に乗り、先生に『行こう!』と言わんばかりに笑みを浮かべると、先生もコクリと頷いた。
“私に考えがある。任せて!”
「あっ、先生!」
先生はアヤネの静止を聞かず、そのまま駆け出していった。
ー先生sideー
“ーーーー皆!”
《先生?》
正門に出た先生が、インカムで通信を送る。
“これから私の指示に従って欲しい”
《えぇっ!? この状況で!?》
《この砂嵐をどうにかできるんですか?》
“砂嵐の原因はスナヘビ達だ。あの四匹を倒せば砂嵐は収まる。そこまでのルートを案内する。私を信じて欲しい!”
《『・・・・・・・・』》
シロコ達は黙ってしまう。いきなりこの状況をどうにかできると、今日初めて会った大人の人に言われて、簡単に信じる方が難しい。
しかし。
《ん~、まぁ他にアイデアもないし、やってみようか》
《はい。分かりました☆》
《・・・・先輩達がそう言うなら》
《ん。先生、どうすれば良い?》
“うん。ありがとう皆。先ずはーーーー”
全員からの承諾を得て、先生は隣に立つ『仲間』に目をやると、確信を込めて指示を出す。
ーヘルメット団sideー
「な、何が起こってんだぁ!?」
ヘルメット団のボスが、狼狽の声を張り上げた。ほんの一分前まで優勢だったのは自分達だった。この〈アビドス〉に来る直前に、何故かボロボロ状態で気を失っていたポケモン達を見つけ、自分達の戦力にしようと乱獲し、比較的にまだ戦闘可能なワルビル達とスナヘビ達を投入した。
最初こそ有利に進んでいたのに、〈アビドス〉の方が反撃に出た。こちらの場所が分かっているように銃を撃ち、奇襲を見抜いているようにワルビル達を撃退するポケモン達。最初はマグレと高を括っていたが、マグレではない。確実にこちらの居場所を把握して攻撃している。
その証拠に、スナヘビ達が全滅し、砂嵐が止んでしまい、完全に視界が開けてしまっていた。
「・・・・・・・・」
アビドス勢は銃口をこちらに向けている。
が、まだワルビル達は健在だ。反撃をーーーーと、思ったが、ワルビル達がある一点の方向を見て、顔を青ざめていた。
「???」
ヘルメット団がその視線の先を見ると、アビドス校舎の正面玄関に立つ大人の男と、その両隣に立つピカチュウと、ルカリオを見ているようだった。
ー先生sideー
《先生凄いです! ルカリオの波導による探知で不良達やワルビル達の動きを検知し、さらにスナヘビ達の居場所も見つけるなんて!》
“凄いのは私じゃなくて、居場所を的確に見つけてくれたルカリオだよアヤネ”
アヤネからの通信にそう先生は返すと、ワルビル達とカタカタヘルメット団を見据えて口を開く。
“・・・・さて、これ以上は無駄な戦闘をしたいなら、私のポケモン達もーーーー参加するけど?”
『ピカ・・・・(バチッ!)』
『カルォ・・・・(ゴキッ、ゴキッ)』
『(ビクッっ!!)』
ピカチュウとルカリオが前に出て小さく放電と拳の関節を鳴らしながら、ニヤリと笑みを浮かべると、顔が青ざめていたワルビル達は、さらに全身が青ざめそしてーーーー。
『グ・・・・グワァァァァァァァァァ!!!』
『ちょ、ふぎゃっ!!?』
なんと、ワルビル達はイトマルを散らすように逃げ出し、その際トレーナーであるヘルメット団を踏みつけたりしながら土煙を上げて逃げ出した。
「お、おい!(ジャコッ)えっ・・・・?」
ヘルメット団のリーダーが逃げたワルビル達に声を上げるが、シロコがヘルメットの後頭部に銃口を当てた。
「ん、これで終わり」
「あ・・・・あの、降参ーーーー」
ーーーーダダダダダダダダダダダダダダダダッ!!
降参しようとする前に、シロコの銃が火を噴いた。
「やな感じーッ!!」
ヘルメット団のリーダーの悲鳴が、アビドスの空に響き渡った。
◇
結局リーダーが気を失い、他の団員もリーダーを担いで逃げ出してしまって、戦闘はアビドスの勝利に終わった。
そして、『対策委員会・教室』に戻った一同をアヤネが出迎える。
「いやぁ〜まさか勝っちゃうなんてね。ヘルメット団もワルビルやスナヘビと、ちょっと頭を使った作戦まで立てて、かなりの覚悟で仕掛けたみたいだったけど」
「まさか勝っちゃうなんて、じゃありませんよホシノ先輩・・・・勝たないと学校が不良のアジトになっちゃうじゃないですか・・・・」
呑気なホシノに、アヤネが肩を落としてそう言うと、シロコは先生の事を評価する。
「先生の指揮とルカリオの波導の探知が良かったね。私達だけじゃ勝てなかった」
そして、目をキランとさせた。
「これが大人の力・・・・凄い資源と装備とポケモン、さらに戦闘指揮まで。大人って凄い」
「今まで寂しかったんだねシロコちゃん。パパが帰ってきてくれたお陰で、ママはぐっすり眠れまちゅ」
ホシノがそんなシロコを見ながら、寝ているヤドキングに寄りかかりながら寝ろうとする。
が、
「いやいや、変な冗談はやめて! 先生困っちゃうじゃん! それに委員長はその辺でしょっちゅう寝てるでしょ!」
「そうそう。可哀想ですよ」
「あはは・・・・それでは先生、ホシノ先輩の事を紹介しますね。私達は『アビドス対策委員会』、書紀とオペレーターは私で、委員長はーーーーホシノ先輩、お願いします」
セリカがツッコミ、ノノミが朗らかに笑うと、アヤネが苦笑しつつ、自分達の事を言い、最後に唯一自己紹介していないホシノにそう言った。
「いやぁ〜よろしく、先生ー。三年生の『小鳥遊ホシノ』だよー。パートナーは『ヤドキング』ねー」
『ヤ〜ド〜・・・・』
「私のパートナーの『サイドン』です☆」
ホシノと寝ていたがヤドキング、ノノミがモンスターボールに入れたサイドンを紹介した。
「ご覧になった通り、我が校は現在危機に晒されています・・・・。その為『シャーレ』に支援を要請し、先生がいらした事で、その危機を乗り越える事ができました。先生がいなかったら、さっきの人達に学校を乗っ取られてしまっていたかめ知れませんし、感謝してもしきれません」
“うん。役に立てて良かったよ。所で、『対策委員会』って何?”
「そうですよね。ご説明致します。『対策委員会』とは・・・・このアビドスを蘇らせる為の有志が集まった部活なんです」
「うんうん! 全校生徒で構成される、校内唯一の部活なんです! 全校生徒と言っても、私達五人と五匹だけなんですけどね」
「他の生徒は転校したり、退学したりで町を出ていった。学校がこの有り様だから、学園都市の住人もほとんど居なくなって、カタカタヘルメット団のような三流のチンピラに学校を襲われる始末なの」
アヤネとノノミが説明し、シロコも参加するが、言いながら眉根を寄せる。
「現状、私達だけじゃ学校を守り切るのは難しい。在校生として恥ずかしい限りだけど・・・・」
「もし『シャーレ』からの支援が無かったら・・・・今度こそ万事休すって処でしたね」
シロコとアヤネの話を聞き、ホシノとノノミが場を明るくさせようと声を上げる。
「だねー。補給品め底を尽いてたし、流石に覚悟したね。中々良いタイミングで現れてくれたよ、先生」
「うんうん! もうヘルメット団なんてへっちゃらですね。大人の力って凄いです☆」
「かと言って、攻撃を止めるような奴らじゃないけど」
「あー、確かに。しつこいもんね、アイツら」
シロコの言葉に、セリカが同意し、アヤネも苦虫を噛み潰したような顔をする。
「こんな消耗戦を、いつまで続けなければならないのでしょうか・・・・。ヘルメット団や野生ポケモン達以外にも『問題』を抱えているのに・・・・」
そして、ホシノが声を上げる。
「そう言う訳で、ちょっと計画を練って見たんだー」
「えっ!? ホシノ先輩が!?」
「嘘っ・・・・!?」
一年生コンビが目を見開いて驚く。
「いやぁ〜その反応はいくら私でも、ちょーっと傷付いちゃうかな〜。おじさんだって、たまにはちゃんとするのさー」
「・・・・で、どんな計画?」
「ヘルメット団は、数日もすればまた攻撃してくる筈。ここんとこずっとそう言うサイクルが続いてるからねー。だから、このタイミングでこっちから仕掛けて、奴らの前線基地を攻撃しちゃおっかなって。奴らも今一番消耗してるし」
「い、今ですか?」
ホシノの計画に、アヤネが目を丸くした。
「そう。今なら先生いるし、補給とか面倒な事も解決できるし」
「成る程。ヘルメット団の前線基地はここから三十km位だし、今から出発しよう」
「良いと思います。あちらも、今から反撃されるなんて、夢にも思ってないでしょうし」
「そ、それはそうですが・・・・先生はいかがですか?」
シロコとノノミは同意を示すが、アヤネは不安そうな顔を浮かべて先生を見る。
“・・・・向こうのワルビルやスナヘビ達も、さっきの戦闘で倒れているし、戦力も士気もこっちが上だからね。今の内にしばらく動けなくしよう”
「よっしゃ。先生のお墨付きも貰った事だし、この勢いでいっちょやっちゃいますかー」
「善は急げ、って事だね」
「はい~それでは、しゅっぱーつ!」
そして、先生とアビドス対策委員会はオペレーターのアヤネとビブラーバと、寝ているヤドキングを置いて、カタカタヘルメット団の前線基地に行き、壊滅させたのであった。
ホシノ:ヤドキング 『ピンク』・『のんびり屋』・『実力を隠している』と言う共通点から。
シロコ:イワンコ(色違い) 砂狼ですから、シロコはイワンコを。色違いの方かシロコに合うと思いました。
ノノミ:サイドン 『パワータイプ』・『頑丈』でサイドンにしました。
セリカ:ワシボン 一番どのポケモンが良いか悩みましたが、アイドル衣装を見て、このポケモンだ! と、閃きました。
アヤネ:ビブラーバ 同じくアイドル衣装を見て閃きました。