ーハナコsideー
「先生と先生のポケモン達の容体は!?」
「現在は『救護騎士団』の部屋に! 団員の情報によると出血多量ですが、応急処置はキチンとなされているとの事です。他、ピカチュウは弾が貫通した傷も塞がってますが出血多量で意識不明。ルカリオとニンフィア、いえイーブイ、ワカシャモにヌマクローにジュプトル、ソレと・・・・ミライドン、でしたか、その6匹は回復システムで治療中・・・・」
「ご無事なんですね・・・・!?」
『シスターフッド』の部屋で指示を出していたハナコの元に、先生と先生の手持ちポケモン達が〈ゲヘナ〉の『救急医学部』の救急車によって搬送された報告を受け、一応無事なのが分かり、少しだけホッと安堵して胸を撫で下ろした。
「は、はい。幸い命に別状はなさそうなのですが、意識を取り戻せてないと・・・・」
「意識が・・・・先生・・・・」
が、まだまだ予断は許されない状態のようだ。すると、『シスターフッド』の分析官が、『通功の古聖堂』で起こった事を報告した。
「分析結果が出ました! 古聖堂に向けて放たれていたのは、『ラムジェットエンジン』のものではありません!」
「!!」
「『ラムジェット』ではない・・・・となると〈ゲヘナ〉は、そんな有り得ないレベルの技術をどうやって手に入れたんですか?」
『通功の古聖堂』に放たれた巡洋ミサイルは、『別の技術』も用いられて造られたと言う事。そんなの、この〈キヴォトス〉で最も技術力に優れた〈ミレニアム〉でも造られていないのだ。ハナコと『シスターフッド』の行政官が眉根を寄せていると、他の分析官が声を上げる。
「発射位置についても現在確認中・・・・!」
「〈ゲヘナ〉のどの連中ですか、場所さえわかれば・・・・!」
「い、いえ、ソレが・・・・」
他の行政官が〈ゲヘナ〉の誰が巡洋ミサイルを放ったのか聞くと、分析官が言い淀みながら一拍置いて報告する。
「詳しい場所は特定できませんが・・・・発射地点は『トリニティ自治区の内部』です!」
「・・・・!!」
その報告に、ハナコは肩を震わせる。
「カメラの映像が復旧しました、古聖堂が爆発された時のものです! 現在古聖堂で〈ゲヘナ〉と暴走したポケモン達と交戦中の、シスター達の報告と一致します!!ーーーー映像、再生します!」
そして分析官が、爆発された時の『通功の古聖堂』の状況の映像を映した。
ーーーー弾丸が飛び交い、小さな爆発が起き、正気を失い荒れ狂うポケモン達。そして、幽霊のように動くシスター達が闊歩する、『R』が充満した燃え盛る街。
正に目を覆いたくなるような・・・・地獄絵図の光景であった。
「コレは・・・・先生や皆さんが戦っていたのは、まさか・・・・?」
「あ、アレは・・・・」
「・・・・『ユスティナ聖徒会』です」
しかしそんな中、ハナコはその幽霊のようなシスター達を見て、マリーの問いかけに答えた。
「え、えっ・・・・?」
「・・・・・・・・」
「は、ハナコさん・・・・」
「・・・・・・・・」
まさか、かつての『シスターフッド』の前身である『ユスティナ聖徒会』が、現代に蘇ったのだ。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・『ユスティナ聖徒会』、『エデン条約』、あの襲撃・・・・『アリウススクワッド』、『第1回公会議』、『古聖堂』、『発射地点とタイミング』・・・・」
そしてハナコは、コレまでの情報を頭の中で整理していく。
「『カタコンベ』、『アミューズメントパークの怪談』、『アリウス自治区の位置』・・・・『戒律の守護者』・・・・『エデン条約』・・・・『エデン』・・・・」
そうして、今までの情報をその聡明な頭脳で分析、整理していく。
「は、ハナコさん・・・・!? 大丈夫ですか!?」
「・・・・・・・・『仮定』に過ぎません」
長くダンマリしているハナコが心配になり、マリーが声をかけると、ハナコはある程度構築できた肩柄を『仮定』として口にする。
「数十にも渡る飛躍を前提としていますが、しかし、万が一コレが本当なら・・・・コレを『解決できる方法』は、存在しない・・・・?」
「・・・・え?」
「このままでは・・・・〈トリニティ〉と〈ゲヘナ〉は文字通り、“〈キヴォトス〉の地図から消えてしまいます”」
ハナコは、2つの自治区の消滅を口にし、
「・・・・かつて『第1回公会議』の後、〈アリウス〉がそうなったように」
ソレが、〈アリウス分校〉の末路を辿る事である事も・・・・。
ー先生sideー
そして、先生とミュウツーは、『夢の世界』にてセイアと対面していた。
「・・・・ハナコは賢い。盤面に落ちている情報だけでも、確かに彼女なら『真実』の直ぐ傍まで至れるだろう。今こうして繰り広げられている状況、その原因、そして自分にはコレを防ぐ方法が無いと言う事まで。全てを理解しただろうね」
どうやら『現実の世界』にいるハナコは、今の状況をある程度の事を理解したようだが、ソレを打開する所には至っていないようだ。
「漸く好きになれた〈トリニティ総合学園〉・・・・その終わりを為す術もなく見守るしかないというのは、ハナコにとって残酷な話だ」
ハナコの心情を慮ってか、セイアは悲しそうに目を伏せている。
「・・・・・・・・そしてソコに至ろうとしているのは、1人では無いみたいだね。まあ此処での『1人ではない』と言うのは、決して『希望』のある話を意味しないのだが。アズサを探して奔走していたヒフミ・・・・彼女もまた、同じ様な結論に到達しつつあるようだ」
“ヒフミが・・・・?”
「1通のメッセージ。座標と時間、そしてポケモンを用いた隠語。そんなメッセージを送ってくる相手が誰なのか、ソレに気が付かない彼女ではない」
ーヒフミsideー
既に日は沈み夜の世界となり、アズサを探していたヒフミに1通のメッセージが届き、アズサからのメッセージであると見抜いたヒフミは、その情報で思い当たる場所、『トリニティの大橋』に向かい、到着した。
「アズサちゃん・・・・? アズサちゃん、私です。どこにいるんですか・・・・? アズサちゃん・・・・答えてください、アズサちゃん・・・・!」
必死に大橋を見回りしながらアズサの名を叫ぶヒフミの耳に、カツカツ、と足音が聞こえ、ソチラに目を向けた。
「アズサ、ちゃん・・・・?」
「・・・・ヒフミ」
するとヒフミの前方からフード付きコートで姿を隠しているが、フードを脱いだその顔は、白州アズサその人であった。
「アズサちゃん、今までどこに・・・・学園は今、大騒ぎで・・・・」
「・・・・うん、知ってる」
「アズサちゃん・・・・?」
今の状況が大変な事になっている事を告げようとするヒフミだが、アズサは既に知っている様子で言葉を紡ぐ。
「その、ハクリューちゃんは?」
「・・・・ミサイルが爆発して、爆風で吹き飛ばされてから気を失って、目を覚ました時には何処にもいなかった・・・・恐らく、『R』で暴走して、何処かに行ってしまったんだと思う」
「そんな・・・・! 直ぐに探しに行かないと!」
アズサと共に行方不明となったハクリューを探そうと言うが、アズサは首を横に振った。
「・・・・今はハクリューの事よりも、コレを、誰かが止めなくちゃいけない」
「それは、どういう・・・・どうしてそんな顔で・・・・」
アズサは冷たい態度を取りつつ、この惨劇の元凶である『アリウススクワッド』を止める決意をヒフミへ伝えるが、その顔はとても辛そうであった。
「アズサちゃん・・・・」
いつもと様子が違うアズサに、ヒフミは数歩歩み寄るが・・・・。
「ーーーー来ないで!!」
アズサは拒絶の声を張り上げた。
「・・・・!!」
「・・・・・・・・」
拒絶されたショックとアズサの剣幕に、ヒフミはその場に立ち尽くしてしまった。
そしてアズサ自身も、さらに辛そうな顔をする。
「・・・・ありがとう、ヒフミ。でもここまでだ。ここから先は来ちゃいけない。ハクリューと離れ離れになったのは丁度良かった。ここから先は、『私の居場所』。ヒフミみたいな善良な人や、ハクリューのような良いポケモンは、これ以上来ちゃいけないんだ」
「あ、アズサちゃん・・・・? 何の、何のお話ですか・・・・? 私じゃ、何がダメなんですか・・・・?」
「・・・・・・・・『平凡』で優しいヒフミには、似合わない話だよ」
自分を思って歩み寄ろうとするヒフミに、アズサはお礼を言うが、もう此処までだと断じた。
「アズサちゃん、私は・・・・!」
「『人殺し』」
「・・・・!」
「・・・・『人殺し』になった私は、もう友達ではいられないだろう?」
ソレでも諦めようとしないで歩み寄ろうとするヒフミに、アズサは『人殺し』という言葉を出して制止させる。その〈キヴォトス〉でも忌むべき言葉を聞いて、ヒフミはたじろいでしまった。
「あ、アズサちゃん・・・・? だって、だってアズサちゃんはそんな・・・・」
「私のせいだ。私のせいでハクリューが、皆が傷ついて・・・・先生が、撃たれた。『正義実現委員会』、『ティーパーティー』、『シスターフッド』、ソレに〈ゲヘナ〉の人達も・・・・セイアが昏睡状態になったのも、学園がここまで破壊されたのも・・・・全部、私のせいだ」
自分が〈トリニティ〉に来たばかりに、この惨劇を生んでしまったと、アズサは慚愧に堪えないと言った様子で声にする。
「ヒフミ、ソレにハナコとコハル。ガルーラにジュペッタにヘラクロス・・・・そしてハクリュー。このままじゃ皆まで危険になる」
「そ、ソレは、アズサちゃんのせいではありません・・・・ソレは・・・・」
ヒフミはアズサを引き留めようとするが、アズサは自分のせいでこんな事態になり、このままでは『補習授業部』の皆まで危険に晒される事を恐れ、ヒフミから離れようと言い出した。
「だ、大丈夫です。せ、先生は・・・・先生達もきっと、すぐに目が覚めるはず、ですし・・・・ですから・・・・!」
「ヒフミ」
ヒフミは今にも泣き出してしまいそうな顔になりながらも、必死にアズサを引き留める。
「そんな『ハッピーエンド』は・・・・この世界には無いんだ」
「・・・・・・・・」
しかしアズサは、『ハッピーエンド』は存在しないとヒフミに言った。
「今から私はサオリの『ヘイロー』を『壊しに』行く。ソレ以外に、この事態を止める方法はない」
「ま、待ってください、方法・・・・方法なら、きっと・・・・!」
サオリの『ヘイロー』を破壊し、サオリを『殺す』しか、この事態を止められないと宣言するアズサに、ヒフミは考え直すように言うが、アズサはガスマスクを被り、顔を隠した。
「私はこれから、人を殺す。ソレが当たり前の『場所』で、ソレが『当たり前』だと教わり、ソレが当たり前みたいに動けるように訓練された存在・・・・それが、本当の私。こんな私が、ヒフミと同じ世界になんていられない」
「アズサ、ちゃん・・・・?」
『人殺し』が『当たり前』となった世界で生きていた言うアズサ、そして、そんな自分はヒフミと同じ世界にはいられないと断言した。
そして、ゆっくりとヒフミから後退していく。
「・・・・ヒフミ。私を友達だと思ってくれてありがとう。
『アズサちゃん』って呼んでくれてありがとう。
ミニリュウを育てるのを手伝ってくれて、ありがとう。
可愛いぬいぐるみをくれて、ありがとう。
海に連れていってくれてありがとう。
楽しい思い出をくれてありがとう。
可愛いものが、綺麗なものが、知らないものがあるって教えてくれてありがとう。
『補習授業部』での毎日・・・あんなに素敵な日々を過ごして、沢山の事が学べて良かった」
アズサはヒフミと出会ってから今日までの沢山の礼を伝える。アズサにとって、ヒフミ達と過ごした日々は、どんな宝石よりも輝いている、かけがえのない思い出だったのである。
そして最後に、ガスマスクを外し、満面の笑顔を向ける。
「学ぶ事は本当に楽しい事だった・・・コレまでの時間は、死んでも忘れない。少しでも、『補習授業部』の生徒でいられて良かった・・・・。もしハクリューを見つけたら、伝えて欲しい。パートナーにはなれなかったけど、私にとって生涯掛け替えのないポケモンは、ハクリューだけだ。ありがとう。ヒフミと一緒に、幸せになって欲しい・・・・ヒフミ、最後のお願いだ。ハクリューの事を、よろしく頼む」
アズサは残されるハクリューにお礼と、ヒフミに託すと告げ、その場を立ち去る。
「ありがとう、ヒフミ。さよなら」
そして最後に振り返り、『ありがとう』と『さよなら』を伝えた。
「アズサちゃん・・・・。ダメです、待って、待って下さい・・・・きっと、他に方法が・・・・せ、先生が、皆が・・・・」
ヒフミはその場に立ち尽くし、涙を流しながら去り行くアズサの背中に向けて手を伸ばすが、その手は届かなかった。
「だって・・・・だって、まだ・・・・『次は皆で一緒に海に行こう』って、約束したじゃないですか・・・・・まだ一緒に、ペロロ様の冒険アニメだって、見れてないじゃないですか・・・・い、行かないでください・・・・アズサちゃん・・・・ダメです、行かないで・・・・待ってくださいアズサちゃん・・・・」
声を振り絞りながら呼びかけるが、アズサの背中は闇に消えて行く。
「アズサちゃんっ!!!!」
ヒフミは声を張り上げるが、アズサの姿は完全に暗闇の中に消えてしまった。ショックのあまり地べたに座り込み、嗚咽を漏らす事しか、できなかった・・・・。
ーーーーポンッ!
『・・・・・・・・・・・・』
『・・・・・・・・カルゥ・・・・』
リュックの中のモンスターボールから出てきた母ガルーラは、辛そうな顔でヒフミを見下ろし、子ガルーラは母ガルーラのお腹の袋から出て、ヒフミの傍に寄り添う事しかできなかった。
ー???sideー
『・・・・・・・・』
ソレがいたのは、『通功の古聖堂』近くにあるビルの近く。
巡洋ミサイルの爆風で崩れたビルの瓦礫に生き埋めにされ、気を失っていたソレは漸く目を覚まし、瓦礫の隙間から這い出てきた。
『・・・・クゥゥゥゥ〜・・・・!』
自分の『大切な子』の姿が見当たらず、空を見上げ涙を流して泣き声を上げた。
ーサオリsideー
ーーーーゴゥン! ゴゥン! ゴゥン!
『ウォォォォォォォォンーーーー』
『トリニティ自治区』の〈トリニティ〉に続く回廊。
その暗闇の中で、『ソレ』が目を覚まし、地獄の底から響く様な咆哮を張り上げた。
◇
そしてここは、『トリニティ自治区』にある廃ビル、『アリウススクワッド』の拠点の1つ。
「か、確認しました・・・・『アレ』が、例の・・・・」
「『戦術兵器』か・・・ただの『化け物』だな」
『マエストロ』と言う人形のような人物が持ってきた『戦術兵器』とやらが咆哮をあげる中、『アリウススクワッド』はアレを『兵器』と呼ぶにはあまりにおぞましい姿を見て、『化け物』と断じた。
「(スッ、ススッ・・・・)」
「『太古の教義』を元に作られた、『失敗作』・・・・? あの人形、失敗したって事?」
「(フルフル・・・・)」
アツコが手話で説明し、ミサキが『失敗作』だと問うと、アツコは首を横に振って再び手話で話す。
「(スッ、ススッ、スーッ、ススッ・・・・)」
「『難しい事はよく分からないけど・・・・失敗作ではありつつも、“戦術兵器”であることに違いは無い』? なら良いけど・・・・そろそろバレる頃合いじゃないの? 『ユスティナ聖徒会』にせよ、この『戦略兵器』にせよ、ソレから私達の次の『目標』にせよ」
アツコは『戦術兵器』の正体を知っているようで、ソレを失敗作だと手話で語るが、能力は十分だと言って、彼女達を少しでも安心させようとしていた。
そしてミサキは〈トリニティ〉の誰かが自分達〈アリウス分校〉の思惑に気付き始めると危惧するが・・・・。
「・・・・どのみち、もう手遅れだ。待機中の部隊に連絡を。ーーーーこれより、〈トリニティ〉への進撃を開始する」
サオリはもう手遅れだと言ってのけ、〈トリニティ〉への進撃を宣言すると、自治区の各地から、『ユスティナ聖徒会』が湧き出してきた。
「よし、では命令を・・・・」
『ルガ』
「・・・・・・・・」
そしてサオリが『ユスティナ聖徒会』に命令を下そうとした瞬間、ソレを止めて視線を険しくし、ヘルガー(色違い)と共に周囲に視線を送る。
「リーダー?」
「ど、どうかされましたか?」
「・・・・私達がここを空けていたのは、どれ位だ?」
「3時間くらい、ですかね・・・・」
「・・・・・・・・」
サオリは自分達がこの拠点を留守にした時間を聞くとヒヨリが答えた。すると、サオリとヘルガー(色違い)は、更に警戒心を高める。
「・・・・『アイツ』がいる」
「『アイツ』?」
ミサキとヒヨリが首を傾げると、アツコが手話で話した。
「(スッ、ススッ・・・・)」
「あ、アズサちゃん、ですか?」
ーーーードォォォォォォォォン!!!
「ひっ、ひいいいいぃぃぃぃっ!?」
「ブービートラップ、いつの間に・・・・!?」
アツコはサオリが警戒しているのがアズサである事を伝えると同時に、突然廃ビルの廊下が爆発した。
「あ、こっ、こっちにも!?」
ーーーードカァァァァァァァァァァァァン!!
「・・・・!!」
「動くなっ!!」
「・・・・っ!」
「!!」
「・・・・・・・・」
ヒヨリがブービートラップを避けようと動くが、今度は別のブービートラップが起動した。
他のメンバーはポケモン達を出して逃げようとしたが、サオリは大声を上げてその場から動かないよう指示した。
「この狙いは私達の動揺だ。私達の隙を突く為のもの。相変わらず、そういう手法だけは上手い。しかし逆に冷静に対処すれば・・・・」
ーーーードォォォォォォォォォォォォン!!
彼女達の中で、アズサの師匠筋に当たるサオリはアズサの意図を理解しているようで、その手腕を流石と評価するが、またもやブービートラップの爆発。
「いえこの感じ、恐らくまだ周囲にもありますよ!? 早く出ないと・・・・!」
「ヒヨリ!」
ーーーーバァァァァン!!
「くっ・・・・!」
「く、苦しいですね、痛いですね・・・・どうして人生は、こんなに・・・・」
しかし、狼狽えたヒヨリは動いてしまいブービートラップに引っかかってしまい、その爆風にミサキも巻き込まれ、ヒヨリは嘆きながら、バタンッ、と倒れた。
「「「・・・・・・・・」」」
「明らかにヒヨリから狙った。狙撃手‹スナイパー›から処理したって事は・・・・」
「・・・・接近戦に持ち込む気か?」
ブービートラップに引っ掛かって倒れたヒヨリを見ながらも、ミサキとサオリはアズサの次の行動を予測する。
ミサキの武器はロケットランチャー。近距離戦闘なったらほぼ役に立たない、アツコも格闘戦術は得意ではない。となると次に狙うのはサオリと言う事。
と、考えていると上から、ガチャっ、と言う音が聞こえた。
「!!」
「上っ、手榴弾!」
ーーーードカァァァァァァァァン!!
すると、手榴弾が炸裂し、天井の1部が崩れてしまい、爆発の黒煙と瓦礫の埃で視界が悪くなると、その中で目立つ銀色の長髪をした小柄な影をサオリは捉えた。
「白洲アズサっ!!」
サオリはその姿を見た瞬間、激情に駆られた。
「逃がすか!! 追えヘルガー!!」
『ルガァァァァ!!』
「リーダー。追いかけたら、それこそ思う壺・・・・」
ミサキが制止しようとするが、ソレでも止まらず、サオリはヘルガー(色違い)と共にアズサを追った。
ーミサキsideー
「・・・・まあ、仕方ないか。姫、ヒヨリの状態は?」
「(スッ、ススッ、スーッ・・・・)」
「そっか・・・・」
勝手行動をしたリーダーにやれやれと肩を落としたミサキがヒヨリの介抱をしていたアツコに目を向けると、アツコは手話で『気絶しているだけ』と伝えた。
「(ススッ、スッ・・・・)」
「・・・・長期戦になる? まあ、アズサが本気になったら確かに・・・・でも、確か今アズサはレンタルポケモンを無期限で使用禁止されてるし、ヘルガーがリーダーに付いているから大丈夫だろうけど・・・・」
アツコは、サオリとアズサの実力から長引くと予測し、ミサキもアズサの実力を知っているから頷きつつも、ポケモンと共にいるのと、いないのとでの戦力差は歴然と思い、問題無いと思った。
ーーーーダンッダンッダンッダンッダンッ!!
「・・・・リーダーの銃声。追いついたかな」
ーーーードォォォォォォォォン!!
「・・・・・・・・」
「コレ以上時間を無駄遣いする訳にもいかない、か・・・・仕方ない。私たちも行こう、姫。と、その前にブーバーン」
「・・・・・・・・」
ーーーーポンッ×2
『バーン!』
『ガラガラ!』
あまり時間を費やす訳にもいかないので、サオリを追う事にしたミサキはブーバーンを、アツコがヒヨリの懐のモンスターボールを取り出して放り投げると、ブーバーンとアローラガラガラが出てくる。
「ブーバーン、ヒヨリのガンケースを持ってあげて。ガラガラは気絶したヒヨリを担いであげて。行くよ」
『ブバッ』
『ガラ〜・・・・』
ミサキの指示に従い、ブーバーンはヒヨリの『NTWー20 アイデンティティ』の入った大きなガンケースを担ぎ、アローラガラガラは気絶したヒヨリに溜め息を溢しながら手に持っていた骨棍棒を口に咥え、ヒヨリの身体をおぶって、ミサキ達と共にサオリを追った。
ーアズサsideー
「そっちか!!」
『ルガァァァァ!!』
ーーーーズダダダダ!!
ーーーーゴォォォォ!!
サオリとヘルガー(色違い)が逃げるアズサに向かって銃弾と【かえんほうしゃ】を放つが、アズサには避けられた。
「判断は悪く無いな、アズサ! お前では正面から私に勝てない! そうやって逃げて・・・・」
ーーーーズドォォォォォォォォォン!!
「私の隙を狙うしかないだろうっ!!」
真正面で師匠筋に当たるサオリに勝てないと分かっているアズサは、自分の得意とするゲリラ戦を展開していく。
「はぁっ、はぁっ・・・・角を曲がって、次・・・・!」
『ーーーーヘルガァー!!』
「! ヘルガー!」
『ガルルルル・・・・!!』
サオリから逃げて通路を縦横無尽に逃げ回っていたアズサだが、サオリのヘルガー(色違い)が、壁を走ってアズサの前に着地すると、アズサはその場で立ち止まり、ヘルガーは今にも飛び掛かりそうに牙を剥き出しにして唸り声を上げた。
そしてーーーー。
「・・・・・・・・」
「っ!?」
ーーーーダダダダダダダダ!!
「・・・・っ!」
「・・・・・・・・」
「アツコ・・・・」
何と、アズサが曲がろうとしていた角からアツコが現れ、一瞬身体が硬直したアズサに、アツコは自分の銃『スコーピオンEV03・スコルピウス』の弾丸をアズサに浴びせ、アツコに数歩後退させた。
「(スッ、ススッ・・・・)」
「・・・・断る」
アツコがアズサに手話で投降を呼びかけるが、アズサは拒否すると同時に、ボタンのスイッチをカチッ、と押すと、
「!」
『ルガ!』
ーーーードカアアアアァァァァン!!!
「・・・・!?」
再びブービートラップを起動し、爆発するが、寸前でヘルガー(色違い)がアツコを下がらせ、爆煙に紛れてアズサは再び逃げ回るのであった。
「アズサっ!!」
「待って、リーダー。このままじゃキリがない。『ユスティナ聖徒会』を呼んだら?」
苛立っているサオリはアズサを必死に追おうとするが、ミサキが止めて、『ユスティナ聖徒会』を使おうと提案した。
が・・・・
「・・・・・・・・」
「(フルフル)」
サオリが黙り、アツコが首を横に振った。
「『聖徒会』は、〈トリニティ〉と〈ゲヘナ〉の紛争にしか介入しない・・・・ソレにアズサは、〈トリニティ〉の生徒ではないと解釈される可能性もある」
「・・・・ふうん、結構面倒な構造だね」
「(コクコク)」
「それどころか、アズサが『アリウススクワッド』だと解釈されたら・・・・」
「・・・・まあ、『戒律』も結局は解釈次第って事だね。確かに元々そうやって手に入れた力だし、制約やら『ペナルティ』があるのも当然かもしれない」
『ユスティナ聖徒会』を使いたくても、アズサがまだ〈アリウス分校〉扱いされれば、『戒律』が崩れる可能性がある故に、使えないとサオリは言い、ミサキも本当に面倒だと思いながら同意する。
「ああ。だからこそ、こうするしかない。アイツの戦い方、考え方・・・・ソレらは全て基本的に、私が教えたものだ。私じゃないと倒せない。追うぞヘルガー」
『ガル』
アズサに戦闘技術を叩き込んだのはサオリであるため、彼女は自分でしかアズサを倒せないと考え、先んじてアズサを追いかけるサオリとヘルガー(色違い)。
ーアツコsideー
「・・・・じゃあ私とブーバーンとガラガラは反対の方から、姫は他の道からよろしく」
「・・・・・・・・」
ソレを見送った3人(ヒヨリは気絶中)とブーバーンとアローラガラガラは、サオリの後を追う為にそれぞれ別の道から追いかけようとした。
その瞬間、
ーーーーゴゴゴゴゴゴゴ・・・・!
「何これ、地震・・・・? いや、まさか・・・・このフロア、全体に・・・・?」
ーーーーゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・!!
「くっ、いつの間にこんな・・・・!」
『ブー!』
『ガラ!』
「(・・・・・・・・スッ)」
ーーーードカアアアアァァァァン!!!
しかし、唐突に地響きが聞こえ、ミサキは動揺し、ブーバーンがその体格で3人(ヒヨリ気絶中)とアローラガラガラを守ろうと両手を広げて覆うとするが、アツコは冷静に落ちてくる瓦礫に向かって両手を上げたその時、服の袖から2つの炎の塊が飛び出した。
ーーーードドォォォォン!!
ーーーーズバァァァァン!!
何と、アツコの袖から飛び出した『2つの炎』が、迫り来る瓦礫を破壊し、斬り裂いた。
そして、瓦礫はアツコ達の周りだけ綺麗に避けており、アツコ達には瓦礫によって舞い上がった埃位しか付かない。
『2つの炎』はアツコの前に降り立つと、その形がポケモンの形となった。
「(スッ、ススッ、ススッ)」
「助かったよーーーー『グレンアルマ』。『ソウブレイズ』」
『グレ』
『ブレ』
アツコの手話をミサキが通訳すると、2匹のポケモンはコクリと頷いた。
赤い体色の身体を黄色い甲冑で包み、頭から赤い炎をユラユラと揺れ、両肩付近に常に浮遊している巨大な肩アーマーが特徴的な剣闘士の姿を持つ人型のポケモン『ひのけんしポケモン・グレンアルマ』。
黒い体色の身体に青紫色の甲冑に身を包み、頭から青紫色の炎が揺れており、両腕が炎とゴーストのエネルギーで構成された剣になっているのが特徴的な黒騎士の姿を持つ人型のポケモン『ひのけんしポケモン・ソウブレイズ』。
しかし、グレンアルマの瞳の色が水色の炎で、ソウブレイズの瞳は黄色い炎となっている、コレは、本来赤い瞳のグレンアルマと紫色の瞳であるソウブレイズと異なる『色違いポケモン』であった。
『『・・・・・・・・』』
ソウブレイズ(色違い)はアツコの右側に立ち、グレンアルマ(色違い)はアツコの左側に立つと、片膝を付いて頭を垂れた。まるで姫に忠誠と敬愛を示す騎士のように。
「・・・・・・・・」
そしてアツコも、その場にソッと腰を下ろし、自分の手持ちポケモンである騎士達の頬を優しく撫でた。
しかし、周りを瓦礫に囲まれ、下手に退かそうとしたりするとまた崩れてしまいそうであった。
「・・・・慎重に動かさないとね」
「ーーーーアズサああああぁぁぁぁっ!!!」
ーーーードガァアアアアアアアアンン!!!
ーーーーバゴォオオオオオオオオンン!!!
「・・・・やれやれ」
グレンアルマ(色違い)の【サイコキネシス】で瓦礫を静かに退かし、遠くで聞こえるサオリの怒号と戦闘音が聞こえ、ミサキはサオリのアズサに対する強い敵対心と執着心に半ば呆れながら溜め息を溢した。
ーアズサsideー
ーーーーダァアアアアアアアアンン!!!
ーーーーダダダダダダダダダッッ!!!
ーーーードガッ!
そして、数分にも渡る攻防の末・・・・。
ーーーーカチャ・・・・。
「ーーーーチェックメイトだ、アズサ」
ガスマスクが外れ、傷だらけの泥だらけになって横に倒れたアズサは起き上がろうとしたが、眼前にサオリのアサルトライフルの銃口が突きつけられた。
「・・・・くっ」
「・・・・お前にしては良くやった。ソレでも無駄だ。お前の『考え方』、『思考』、ソレらは最初から全てお見通し・・・・最初から無駄な抵抗だったんだよ」
『ベルガル』
アズサもサオリの行動パターンを読んでいたが、サオリの方が1枚上手であった。ヘルガー(色違い)が傍らに座り、いつでもアズサに噛みつけるように身構えていた。
「いつから・・・・?」
「?」
「いつから〈アリウス〉は、巡航ミサイルや『R』なんて物を・・・・? ソレにいつの間に、あんな不思議な力を操れるようになったんだ・・・・?」
〈アリウス分校〉に巡航ミサイルや『R』なんて代物を手に入れられる『資金』も『伝手』もなかった。ソレなのにサオリ達はソレを手に入れ、あの惨劇を生み出し、不思議な力で『ユスティナ聖徒会』をも支配下に置いた。
せめてもの抵抗にアズサはサオリに問い掛ける。
「・・・・『ヘイローを壊す爆弾』も」
「・・・・・・・・アズサ、どうしてお前が勝てないのか分かるか?ーーーー弱いからだ」
「・・・・・・・・」
アズサの問い掛けを、サオリは答えず、アズサは『弱い』と断じた。
「何が人を『人殺し』にすると思う?ーーーーソレは『殺意』の有無」
そして、『人』を『人殺し』にする為には『殺意』と言い、更に言葉を紡ぐ。
「そう言う事なんだよ、アズサ。『意志』さえあれば、『道具』も『ポケモン』も関係無い。重要なのはただソコに込められた『意志』だけだ。ミサイルを含め、それ以外の『手段』や何やら、ポケモンですら、私達の『恨み』を証明する『道具』でしかない・・・・ソレ以上でも、ソレ以下でも無いのさ」
「サオリ・・・・」
『・・・・・・・・』
ポケモン達を、自分達の憎しみを示す為の『道具』であると告げるサオリ。一瞬、ヘルガー(色違い)を一瞥すると、何処か辛そうな顔をしたヘルガー(色違い)を見てから、アズサはサオリの目を真っ直ぐに見据えて口を開く。
「もう1度聞く、『いつから』だ?」
「・・・・!?」
アズサの言葉に、サオリは始めて動揺を見せた。
「その『恨み』、ポケモンですら『道具』と言う考え、私はあの時ただ彼処で『習った』だけだ・・・・その恨みは、一体誰のーーーー」
アズサは、サオリが先程から話している『殺意』や『意志』や『恨み』は、ポケモンを『道具』と考える思考は、〈アリウス分校〉で『習ったもの』であると問うた。しかしーーーー。
「虚しい」
ーーーーパァン!!
サオリは短く、そして冷淡にそう言うと、銃声が響いた。
アツコの手持ちポケモンは『ほのおタイプ』でお姫様わ守る騎士のような立場からグレンアルマとソウブレイズにしました。しかも、瞳の色だけですが『色違いポケモン』です。
そして、お別れしてしまったアズサに、ヒフミはコレからどうするのか?