ポケモンアーカイブ   作:BREAKERZ

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サオリと戦うアズサ。しかしその結果は?


失った『友情』 果たすべき『責任』

ーサオリsideー

 

サオリはアズサの言葉を遮るように、アズサの身体に『アリウス製アサルトライフル』の銃弾を浴びせる。

 

「ーーーー弱いな、白洲アズサ。その弱さはお前を縛り付けているんだ」

 

サオリは、アズサのバックからある物を奪い取った。

 

「そう、こんな状況でも離そうとしないその人形のように」

 

「!!」

 

「始めてお友達がくれたプレゼント、か?」

 

ソレは、ヒフミがプレゼントしてくれた『ペロロ様のぬいぐるみ』である。

 

「虚しいな」

 

ーーーーダァン! ダァン! ダァンダァンダァンダァンダァンダァンダァンダァン!!

 

「虚しい、虚しい、虚しい、虚しい、虚しい、虚しい、虚しい、虚しい、虚しい、虚しい、虚しい、虚しい」

 

ーーーーダァンダァンダァンダァンダァンダァンダァンダァンダァンダァンダァン!!

 

ーーーーカチャ・・・・ガチャン!

 

ーーーーダァンダァンダァンダァンダァンダァンダァンダァンダァンダァンダァンダァンダァンダァン!!

 

「虚しい、虚しい、虚しい、虚しい、虚しい、虚しい、虚しい、虚しい、虚しい、虚しい、虚しい、虚しい、虚しい、虚しい」

 

ーーーーダァンダァンダァンダァンダァンダァンダァンダァンダァンダァンダァンダァンダァンダァンダァンダァンダァンダァンダァンダァン!!

 

「虚しい、虚しい、虚しい、虚しい、虚しい、虚しい、虚しい、虚しい、虚しい、虚しい、虚しい、虚しい、虚しい、虚しい、虚しい、虚しい、虚しい、虚しい」

 

「ぐっ、あぁぁっ!?」

 

『・・・・・・・・』

 

そして『虚しい』と同じ言葉を何度も呟きながら、アズサに何度も銃弾を撃ち込み、弾が無くなればリロードし、また何度も何度も『虚しい』と呟きながら、何度も何度も銃弾をアズサへ撃ち込む。まるで、『呪い』のように。アズサにソレを叩き込もうとしているかのように。

そしてその後ろ姿を見ながら、ヘルガー(色違い)は何とも悲痛な顔を浮かべていた。

 

「虚しいな、アズサ。『友情』か・・・・ならばその無駄で虚しいものから壊してやろう。たしかヒフミ、だったか?」

 

一通り気持ちを晴らせたサオリは、マスクに隠れていない目元に激しい怒りをギラギラとさせながら、ヒフミを『壊す』とアズサを脅そうとする。

 

「(フルフル)」

 

「・・・・姫」

 

が、そこに、グレンアルマ(色違い)とソウブレイズ(色違い)を後ろに控えさせたアツコが到着し、『コレ以上は駄目』と首を横に振る。

 

「・・・・心配しなくても、手加減はしてる。コイツの事なら、よく分かってーーーー」

 

「っ」

 

アツコに気を取られた一瞬の隙をついて、アズサはボロボロの身体を押して立ち上がり逃げ出した。

 

「アズサ、また逃げるのか!」

 

サオリはまたアズサを追いかけようとしたその瞬間、

 

ーーーードオオオオォォォォォォォォンン!!

 

再びブービートラップが発動して爆発と爆煙でサオリに追跡を振り切った。

 

「・・・・・・・・」

 

「・・・・相変わらず逃げ足の速い」

 

『ガル』

 

爆煙が晴れるとアズサの姿も気配も無くなっており、ヘルガー(色違い)が臭いで追跡できると言った。

 

「構わん、どうせアイツはまたやって来る」

 

「・・・・?」

 

「なにせ、この大事な『友情の証』とやらを落としていってしまったからな」

 

しかし、サオリはアズサはまた来るから追い掛ける必要はないと言った。その理由はアズサが大切に抱えていた『インテリペロロ様のぬいぐるみ』を置いて行ったからであり、彼女はアズサが必ずコレを取り返しにくると思っているのである。

 

「・・・・・・・・」

 

「アイツは必ず、コイツを取り戻しに来るだろう」

 

「(スッ、ススッ・・・・)」

 

「・・・・闇の中で光を見つけたむしポケモンは、もうそれ無しでは生きられない。こんなつまらない物が、アズサの心を支える『光‹希望›』なんだろう」

 

「・・・・・・・・」

 

「アイツはコレを諦められない、絶対に戻ってくる」

 

サオリはアズサの持っていた『ぬいぐるみ』が、アズサの『光』であり『希望』であると称し、そしてその『希望』を取り戻す為にアズサは必ず戻ってくると確信していた。

 

「その時にまた捕まえて、改めてこの世界の『真実』を教えてやる」

 

「・・・・・・・・」

 

「そう、無理矢理にでも・・・・」

 

サオリは『ぬいぐるみ』を取り戻しに来るアズサを捕らえ、再教育をすると言った。

 

ーーーーピッ・・・・ピッ・・・・ピッ・・・・。

 

「ん・・・・?」

 

が、唐突にアズサが置いて行った『ぬいぐるみ』から怪しげな電子音が聞こえ始めた。

 

「何だ、中に・・・・」

 

気になったサオリはアサルトナイフで『ぬいぐるみ』を腹を引き裂いて中身を見るとソコにはーーーー。

 

「・・・・っ!! 『コレ』はセイア襲撃の時に渡した・・・・!」

 

そうソレはーーーー『ヘイローを破壊する爆弾』であった。

 

「逃げろ、姫っ!!!」

 

「・・・・っ!」

 

ーーーードカアアアアアアアアァァァァァァァァン!!!

 

それを見た瞬間、サオリは全身の血が冷え、アツコに逃げるよう叫ぶが、アツコは逃げ遅れ、その爆発に巻き込まれてしまった。

 

 

 

 

ーアズサsideー

 

ーーーーザァァァァァァァァァァァァ・・・・。

 

「・・・・・・・・」

 

いつの間にか雨が降り出した〈トリニティ自治区〉の路地裏にあるゴミ捨て場に逃げ延びたアズサ。

 

「・・・・・・・・・・・・・・」

 

ボロボロの身体を雨に濡らしながら、アズサは両膝を抱えて座り込んで、大粒の涙を流した。

 

「・・・・うっ・・・・。うっ、ううっ・・・・。ごめん、ヒフミ・・・・ごめん・・・・。私は・・・・もうこれで、2度と・・・・うっ、ううっ・・・・」

 

ヒフミからの『プレゼント』を、『友情の証』を、『絆の証』を、自分にとって大切な『光‹希望›』を失ってしまった。

 

「ごめん、ごめん、皆・・・・うっ、うぅぅっ・・・・! ああぁっ・・・・!!!」

 

アズサはヒフミの、大切な仲間達の元へはもう戻れないと、雨の中で1人泣いていた・・・・。

 

 

 

 

 

 

ー先生sideー

 

そして、『夢の世界』で『現実』の状況を見ていた先生とミュウツー、そしてセイアは。

 

「・・・・・・・・コレが全ての、『無意味な足掻きの終着点』・・・・私はアズサに警告していた。何度も何度も、このような結末になるだろうと言う事を。それでもアズサは、『希望』を抱いてしまった。淡い『希望』を」

 

“・・・・・・・・”

 

『・・・・・・・・』

 

セイアの口ぶりから、彼女はこの『夢の世界』で、自分の持つ能力、『未来予知』で何度も見てきたのだろう。アズサの行く末を。そしてアズサに警告したが、結局はこの結末となってしまった。

 

「・・・・だから言っただろう? コレが『物語の結末』。何もかもが虚しく、全てが『破局へと至るエンディング』。ここから先を見た所で、無意味な苦痛が連なっていくだけだ」

 

セイアは、始めて先生にミュウツーと『夢の世界』で言った事を口にする。

 

「コレはつまるところ各位が追い詰められ、結局誰かが誰かを殺める物語。誰かが、人殺しにならざるを得ない話。不快で、不愉快で、忌まわしく、眉を顰めたくなるお話だ。悲しくて、苦しくて、憂鬱になるような。それでいて、ただただ後味だけが苦い話・・・・そうは思わないかい? しかし紛れもなく、真実の物語でもある・・・・コレが、この物語の正体だ」

 

この物語の結末は悲惨で無意味で後味の悪いものであり、これは変える事のできないものであるとセイアに先生は告げた。

 

「・・・・君は以前、五つ目の古則に対してこう言っていたね『ただ楽園があると信じるしかない』、と。然して、信じた結果がコレだ。元より不可能な事だったのだよ。『エデン条約』、お互いに『憎み合うのはもうやめよう』という『約束』。そんな事、できる筈が無いのに・・・・その上、条約の名前に『エデン』と来た。ここで楽園の名前だなんて、相変わらず『連邦生徒会長』の不愉快な冗談は皮肉にも程がある。下手をすれば悪意すら感じてしまいそうな程だ」

 

セイアは先生の『五つ目の古則』に対する考えを、彼の目の前で起こった惨劇を見せて、『連邦生徒会長』と共に批判する。

そして周りの景色が一瞬、調印式目前の『通功の古聖堂』の前で睨み合っていた〈ゲヘナ〉と〈トリニティ〉の生徒達の姿が映し出された。

 

「この『プロセス』を経て、確認できたものはあるだろう。ソレは不信から降り積もった、〈ゲヘナ〉と〈トリニティ〉の互いへの『恨み』。そしてアリウス〉達が持つ『恨み』。それらを通じてこの条約は、歪な形で完成されてしまった。何よりも皮肉な事に、どこにも存在しない、証明すらできない・・・・その『楽園』の名前を携えて」

 

3つの学校による『恨みの連鎖』が、『エデン条約』を歪ませてしまった事を先生に教えるセイア

 

「まさに、『楽園』から追放された私達にふさわしい『結末』かもしれないね」

 

“・・・・分かったよ、セイア”

 

「?」

 

“・・・・君も、その後はどうなったのか見ていないんだね?”

 

「・・・・?」

 

ここまでセイアの話を黙って聞いていた先生が、漸くセイアに話かける。先生は未来が見えるセイアにこの先を見たのかと問いかけると、セイアは小さく首を傾げつつも返した。

 

「・・・・見る必要が、あるのかい? 悲しいエンディングの後、そこに続くエピローグを見た所で悲哀が増すだけ。苦しみが連なるだけだ。・・・・それで、何が『分かった』と言うんだい?」

 

セイアが困惑した理由は、これ以上先を見た所で『絶望』が続くと思っており、『この先‹未来›』を見る必要は無いと判断した。そして、今度は先生が言った『分かった』の理由を問い返した。

 

“・・・・この後のお話を確認するのは、怖かったよね”

 

「何を・・・・」

 

“だから夢の中に隠れて起きられず、ずっと彷徨ってたんだね”

 

「わ、私は・・・・先生・・・・君は一体、何を・・・・?」

 

先生はセイアがここから先の『未来』を見ないのは、彼女がこの先を見るのを恐れているからだと答える。さらには彼女が未だ目覚めないのも、ソレが原因の1つであると言ってセイアをさらに困惑させた。

 

“セイアと会えて良かった。少し待ってて。私は、私達はやらなきゃいけない事があるから、戻らないと”

 

「戻る・・・・?」

 

“そうだよ。ーーーー行こうか、ミュウツー”

 

『ーーーーやれやれ、漸くですか。無駄に長い話にそろそろウンザリしていた所ですよ』

 

先生が目を向けてそう言うと、ミュウツーは待ちくたびれたと言わんばかりに身体を伸ばしてから、カクっカクっと首を左右に振り肩を鳴らした。

 

「待ちたまえ。私と違って、先生の身体はまだ治ってすらいない。そして何より、君が起きたからと言って何も変わるわけではない。これは私の未来予知で判明している・・・・いや、『7つの古則』から既に導かれていた、この世界の真実だ・・・・!」

 

そして先生は傷が治っていないにも関わらず、セイアに夢から戻ると言い始め、ミュウツーも止めるどころか一緒に出ると言った。それを聞いたセイアは、この残酷な結末を変えられる筈はないと、先生に訴えるが先生は冷静に応える。

 

“実の所、楽園の証明にはそこまで興味は無くって。と言うよりも、私にとって『7つの古則』みたいな『言葉遊び』は、『優先事項』じゃないんだ”

 

「・・・・『7つの古則』を、否定するつもりかい? 『楽園の存否』は、全ての人達にとっての『宿題』だろう? ソレの存在を証明できなければ、何も・・・・」

 

先生が『7つの古則』に興味が無いと言う言い分に、ソレを重要視するセイアには信じられなかった。

 

「・・・・先生。君は未だに、楽園を信じているのかい? 証明すらできないまま、ただ盲目的に信じていると?」

 

セイアは『楽園』を信じている先生を訝しそうに見る。

 

「『楽園に辿り着きし者の真実を、証明することはできるのか』・・・・つまりこれは『楽園証明』の話ではなく、ただソレを信じられるかという話だとでも・・・・?」

 

“・・・・ごめんね、今は生徒達を助けにいかなきゃ”

 

「・・・・ミュウツー。君は先生の言葉を信じるのかい?」

 

セイアは先生と共にいるミュウツーに、『人間の身勝手な業によって生み出された生命』であるミュウツーに問いかけた。

 

『・・・・そもそも、何を以て『楽園』と言うものを証明するのですか? 私から言わせれば、『楽園』と言うのはーーーー“人の数だけある存在”、と思っています』

 

「・・・・“人の数だけ”・・・・?」

 

『『お金がいっぱいあれば他に何もいらないと言う人間』もいれば、『お金が無くても愛があれば幸せと言う人間』もいる。『働かずに怠けていられるのが楽園と言う人間』もいれば、『自分の好きな事を好きなだけできるのが楽園と言う人間』もいる。・・・・『楽園』と言うものは、『人の願いの数だけ存在するモノ』なのです。ソレを証明しようとする事こそ、『机上の空論』と言うものでは?』

 

「・・・・・・・・」

 

ミュウツーの言葉にセイアは黙ってしまった。少し話したがセイアは頭の良い子である。故にミュウツーの言葉を聞いて、自分が重要視している『7つの古則』が根底から崩れたような気がしたのかも知れない。

 

“・・・・ゴメンねセイア。私もミュウツーも、多分セイアが求める『答え』は、まだ出せないかも知れない。だけど、『楽園』が存在するかどうか分からないなら、私達は、『楽園』の存在を信じるしかないと思うんだ”

 

先生自身、『楽園』がどんなものなのか想像できないようで、自分達は信じるしかできないと言った。

 

“この話はーーーーまた後でね、セイア”

 

そう言って、先生とミュウツーはその場を去ろうとした。

 

「・・・・待ちたまえ先生。もう1つ、聞いておきたい事がある」

 

『現実』に戻ろうとする先生とミュウツーのその背中に向けて、セイアが問いかける。

 

「ただ信じた所で、何も変わりはしない。信じた所で、ソコには何の意味も無いだろう・・・・!?」

 

セイアの言葉に、先生は思わず・・・・ハナコの事を思い出して口にする。

 

“『水着じゃなくて下着だと思えば、ソレは下着だから』”

 

「・・・・は?」

 

『ーーーーフッ・・・・!』

 

いつもハナコがコハルを言いくるめる時に使う謎理屈を持ち出すとセイアは・・・・恐らくナギサやミカ、ハナコですら見た事が無い程に、目を点にし、薄っすらと頬を赤く染め、間の抜けた声を漏らした。

そしてソレを聞いたミュウツーも、思わず吹いてしまう。

 

「・・・・え、下着? い、一体何を・・・・水着、下着・・・・? それはどこの古則の、いやそんなのは聞いた事が・・・・////」

 

流石のセイアも先生の言っている意味が解らず『こんらん』していた。

 

『では先生、参りましょう』

 

“うん。・・・・と、そうだミュウツー。頼みがあるんだ”

 

『こんらん状態』になったセイアを尻目に、先生はミュウツーに幾つか『頼み事』をすると、ミュウツーはコクリと頷き、先生は両手で頭を抱えて未だ『こんらん状態』になっているセイアに話し掛けた。

 

“ーーーー待ってて、セイア”

 

そしえ先生はミュウツーを連れて、『現実の世界』に戻っていった。

 

 

 

 

 

ーセイアsideー

 

「・・・・行ったか」

 

先生とミュウツーを見送るセイア。

 

「君は、この先の『エピローグ』へと向かうんだね」

 

コレから続く苦難の道を、何の躊躇いもなく生徒の為に動く事ができる先生が、ソレを尊重し、共に歩む事に迷いの無いミュウツーが、セイアは羨望に近い感情を抱いてしまう。

 

【・・・・この後のお話を確認するのは、怖かったよね。だから夢の中に隠れて起きられず、ずっと彷徨ってたんだね】

 

「私は・・・・私は・・・・」

 

先程の先生の言葉を思い出す。 自分は怖かったのだ。コレから起こる悲しみを、苦しみを、憎しみを、悲劇を、ソレらを見るのが、哀しくて恐かったのだ。

 

「・・・・・・・・ふぅ・・・・」

 

一頻りに物思いに耽っていたセイアは、1度小さく溜め息を溢した。

 

「・・・・確かに、そうだったのかも知れないな。この先の話・・・・例え怖くても、私は最後まで確認しなければいけない」

 

自分は思っていた以上に怖がりだった事を理解し、思わず自嘲してしまうセイア。

 

「コレは私の『義務』、か・・・・仕方あるまい」

 

そしてセイアは、この物語を最後まで見届ける事が自分の『義務』であると決断する。

 

「憂鬱で、悲しくて、苦しくて・・・・例え、最後まで後味の苦い話であったとしても・・・・私もこの目で、最後まで見届けるとしよう」

 

例えどのような『結末』が待ち受けていようとも・・・・、と、セイアはボソリと呟き、『夢の世界』から『現実の世界』にいる1人の少女に呼び掛けたーーーー。

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーザァァァァァァァァァァァァァァァァ・・・・。

 

《アズサ・・・・》

 

降りしきる雨の中、〈トリニティ〉の路地裏にあるゴミ捨て場で蹲っているアズサにセイアは呼び掛けた。

 

《その判断にどれだけ苦しんだのだろうね・・・・君が本当に、命のように大事にしていたプレゼント。ソレを、『殺人の道具』として使うとは・・・・》

 

『夢の世界』でずっと様子を見ていたセイアは、『大切な宝物』を『殺人道具』に使ってしまい塞ぎ込んでしまったアズサの気持ちを慮る。

 

“元々は、私の『ヘイローを破壊するために用意された爆弾』・・・・あの時使わなかったソレを、このタイミングで・・・・”

 

 

 

 

 

 

 

 

『へルガル・・・・』

 

「っ! ヘルガー?・・・・姫、姫っ!!!!」

 

《・・・・・・・・しかしサオリは無事だ。咄嗟にヘルガーが庇って多少の怪我は負ったが、ヘイローは壊れていない》

 

アズサが残した『インテリペロロ様のぬいぐるみ』に仕込まれた『ヘイローを破壊する爆弾』が爆発する寸前、ヘルガー(色違い)が、マスクが吹き飛び素顔を顕にしたサオリに覆いかぶさるように庇っていた。

しかし、その視線は、グレンアルマ(色違い)とソウブレイズ(色違い)に庇われながら共に倒れているのアツコの姿を捉えた。

 

「退けヘルガー!!!!」

 

ーーーーべキッ!

 

『ギャンッ!』

 

倒れているアツコを見て、サオリはヘルガー(色違い)を邪魔だと言いたげに殴り飛ばすと、爆発のダメージでヨロヨロだったヘルガー(色違い)が地面に倒れる。

 

《だが、彼女と一緒にいたアツコも、グレンアルマとソウブレイズが守ったようだ》

 

「お前達も退け!」

 

ーーーーバキッ! ドガッ!

 

『グッ!』

 

『ソウッ!』

 

特性【もらいび】により、アツコが受ける爆炎を代わりに受けたが、衝撃波により諸共に倒れていたグレンアルマ(色違い)とソウブレイズ(色違い)を蹴り飛ばすと、アツコを抱き上げる。

 

「姫!! ダメだ、アツコっ! しっかりしろ!!」

 

《『アツコ』、あの『姫』という子は・・・・サオリにとって、大事な人なのだろうね。ソレこそ、パートナーのポケモンや彼女のポケモン達を蔑ろにする程に・・・・》

 

 

 

 

 

ーマエストロsideー

 

「・・・・『ロイヤルブラッド』の力が弱まった。コレは、生命に異変が・・・・?」

 

〈トリニティ〉にある『通功の古聖堂・跡地』の地下通路にて、マエストロは『ロイヤルブラッド』の少女に異変が起こった事を推察した。

 

「・・・・ふむ。『実験』に支障が出るだろうか・・・・しかしまだ・・・・」

 

顎に当たる部分に手を添えてブツブツと呟くマエストロ。

 

「・・・・・・・・嗚呼、そうか。『彼女』が既に『備え』を用意していた、と・・・・成る程、貴重な『ロイヤルブラッド』故か。まあ良い、少々時間は掛かるだろうが・・・・仮にも『同志』だ。コレくらいの事はな。ーーーーさて、やっていくとしよう」

 

マエストロは己の作業に戻った。

 

 

 

 

 

 

 

ーサオリsideー

 

「・・・・っ」

 

「姫、無事か!?」

 

「(コクリ)」

 

「ああ、良かった。姫・・・・」

 

グレンアルマ(色違い)とソウブレイズ(色違い)が盾になってくれたお陰で、息を吹き返すアツコ。

ソレを見てサオリは珍しく安堵の表情を浮かべた。が、直ぐに身体をフルフルと震わせる。・・・・怒りで。

 

「・・・・許せない。アズサ・・・・よくも姫にこんな怪我を・・・・」

 

アズサに対する異常な敵対心と執着心が、憎悪へと変貌していき、

 

「絶対に許さないぞ、アズサ!!」

 

サオリの怒りの咆哮を響いた。

 

『・・・・・・・・・・・・』

 

『『・・・・・・・・・・・・』』

 

そんなサオリの姿を見て、ヘルガー(色違い)は悲しそうな顔をし、グレンアルマ(色違い)とソウブレイズ(色違い)は、同情の視線を向けた。

 

 

 

 

 

 

ーセイアsideー

 

そして『夢の世界』にて、サオリ達の様子を見ていたセイアが、アズサに呼び掛ける。

 

「アツコは死んでない・・・・あの『爆弾』、確かに私だったら間違いなく『ヘイロー』が『壊れていた』だろうね。直撃していないサオリでさえ、あのダメージだ。ポケモン達に守られていても、壊されなかったあのアツコと言う子の『ヘイロー』は・・・・『誰か』によって守られているようだね」

 

セイアは再び瞑目して、コレからの展開を『予知』してみる。

 

「・・・・しかし『アリウススクワッドの計画』には、大きな『支障』が生じつつある。〈トリニティ〉襲撃はまだ出来ておらず、アツコの負傷によって『ユスティナ聖徒会』の力も弱まっている。古聖堂での戦闘は落ち着きつつある事に加え・・・・〈トリニティ〉と〈ゲヘナ〉の両学園は膠着状態、そして負傷者の搬送も始まりつつある」

 

古聖堂で『ユスティナ聖徒会』と交戦していたツルギ達が、『正義実現委員会』のメンバーに発見されていた。

 

「・・・・アズサ。コレで君の『絶望』が、少しでも和らぐなら良いのだけれど・・・・」

 

 

 

ーセナsideー

 

「ーーーー負傷者を発見! 搬送します!」

 

『マッス!』

 

「ーーーー『タチフサグマ』! コチラに担架を!」

 

『『グマグマ!』』

 

「ーーーー向こうです、まだ負傷者が何名か!」

 

『グマ!!』

 

破壊された『通功の古聖堂』の周辺で、〈ゲヘナ学園〉の『救急医学部』のセナが、他のメンバーを指揮して負傷者達の救助に奔走していた。そして、『救急医学部』のメンバー達が連れているのは、手足がスラリと伸びた二足歩行のクズリの獣人の様な体型をした、真っ赤で目つき悪く舌も伸びて凶悪そうな風貌だが、懸命に救急活動をしている『ていしポケモン タチフサグマ』であった。

 

「ーーーー隊長! 湖に落ちた万魔殿‹パンデモニウム・ソサエティー›の議員達を救出しました! マコト議長も含まれていたとの事です! 後、マコト議長は頭がアフロになり、何故か丹花イブキさんの手持ちポケモンであるグレッグルが【48の〇人技 No.3】を炸裂された後、【地獄車】をマコトはにかけて半〇しにされているとの事です!」

 

「・・・・流石は議長、いつも通り運が良いですね。湖に落ちた事も幸運・・・・まぁ、イブキさんのグレッグルから何故か【お仕置き】を受けているのは分かりませんが、幸運の議長の事ですから『死体』にはならないでしょう」

 

・・・・セナは知らないが、今回の惨劇にほぼ加担していたマコトには、イブキのグレッグルが盛大に【お仕置き】をしているのだ。

しかし幸運・・・・と言うよりも悪運の強いマコトなら心配は無いと判断した。

 

「ーーーー各地の救助を続けて下さい。基本的に全員、強制的に『集中治療室』へ」

 

『はいっ!』

 

「『風紀委員会』の方は?」

 

「現在、行政官のアコさんが取り纏めているとの事。委員長は情報によると、重傷で意識不明。アブソル、ゴロンダは治療を終えて委員長に付きっきりで、ドンカラスは手下のヤミカラスを総動員して自治区を飛び回らせているとの事です」

 

「・・・・風紀委員長・・・・この条約を1番望んでいたであろう彼女が・・・・」

 

〈ゲヘナ学園〉で誰よりも『エデン条約』の締結に尽力していたゲヘナ風紀委員長‹ヒナ›が意識不明の状態になってしまった事に、セナは残念そうに溜め息を溢した。

 

「・・・・部長?」

 

「・・・・いえ、何でもありません。引き続き負傷者の救出を行って下さい」

 

そう指示を出したセナが空を見上げると、暗雲が広がっているのを確認した。

 

「・・・・雨が降るかも知れませんね。急ぎましょうゾロアーク」

 

『ゾロア』

 

セナとゾロアークも、救助活動に戻った。

 

 

 

 

 

 

ーハナコsideー

 

「『正義実現委員会』のツルギ委員長が重症!ハスミ副委員長の方は重体との事! 」

 

「サクラコ様も重体です! 『救護騎士団』の救護室は現在満床との事で、古聖堂の寝室の方へ移送中!」

 

「あ、ああ・・・・サクラコ様・・・・」

 

『フパ』

 

『クレ』

 

「・・・・ナギサさんは?」

 

「彼女については、まだ捜索中との事!」

 

「・・・・・・・・」

 

漸く〈トリニティ〉の重役達が発見され、マリーはサクラコが重体と聞いて目に涙を浮かべ、フーパがハンカチで優しく拭い、コレクレーも慰めるように声を掛ける。ハナコはナギサの行方をシスターに聞くが、彼女だけはまだ見つかっていない。

 

「・・・・っ! 1部の過激派が、〈ゲヘナ〉に宣戦布告するとの情報が!!」

 

「はいっ!?」

 

「ダメです、今ここでそんな事をしては・・・・!」

 

ナギサの行方を訝しそうに眉根を寄せていたハナコに、『シスターフッド』の行政官の1人が最悪の情報を伝えられ、マリーは目を見開き、ハナコはマズイと思った。

〈トリニティ〉と〈ゲヘナ〉の上層部が揃って機能しない今の状況で、両校の間で戦争が起こってしまう。そうなれば両校がこの〈キヴォトス〉から消滅する程の泥沼化するのは目に見えている。ハナコは過激派を抑えるように指示を出すが、

 

ーーーードォォォォォォォォォォンン・・・・!

 

「『正義実現委員会』が、大聖堂に進入を試みているとの情報あり! これを阻もうとするシスター達と、中央ホールで衝突が発生しました!」

 

「なっ・・・・!?」

 

遠くで爆発音が響くと、『正義実現委員会』と『シスターフッド』が衝突し始めてしまったようだ。

 

「混乱があちこちで・・・・。早く戦闘を中止させて、救助の方に専念しないと・・・・!」

 

何とか内輪揉めを止めるように指示するが、ソレでも状況が変わらない事は、ハナコ自身が理解していた。

 

「(変数が多すぎる上にこの状況、私は一体どうすれば・・・・セイアちゃん・・・・先生・・・・)」

 

 

 

 

 

 

ーアコsideー

 

「委員長達がいなくなった!?」

 

「は、はい・・・・先程までコチラに横になり、アブソル達も付き添っていたのですが・・・・」

 

『救急医学部』の救護室で治療を受けていた筈のヒナとアブソル達が姿を消した事を聞き、アコは風紀委員会の医務官に問い詰めていた。

 

「直ぐに探して下さい! あの怪我で一体どちらへ・・・・!」

 

「は、はいっ!」

 

アコの怒声交じりの指示を受けて、医務官は急いで救護室を出ていった。

 

「・・・・委員長・・・・」

 

 

 

 

ーセイアsideー

 

《・・・・風紀委員長は、姿を消したようだね。コレまで頑張り続けてきた彼女の心は、どうなってしまったのか・・・・》

 

『夢の世界』で状況を見ているセイアは、傍観者のように呟く。

 

 

 

 

ー〈トリニティ〉sideー

 

過激派である『ティーパーティー』傘下の幹部達は、ナギサが行方不明なのをいい事に、『ティーパーティー』の教室を我が物顔で居座り、〈ゲヘナ〉への宣戦布告の準備をしていた。

 

「宣戦布告の文章は出来ましたか!?」

 

「はい、大丈夫です!」

 

「良し、ではすぐにでも・・・・!」

 

宣戦布告を始めようとする幹部達だが、突然教室のドアが開かれると。

 

「ーーーー待って下さい!」

 

浦和ハナコとジュペッタが入ってきた。

 

「なっ、浦和ハナコさん・・・・? どうしてここに!?」

 

「宣戦布告は校則上、ホスト無しでは宣言できない筈です!」

 

「・・・・・・・・」

 

「あの映像をご覧になったでしょう!? 相手は〈ゲヘナ〉ではありません! アレはきっと、〈アリウス〉が操っている『別の何か』です! 『トリニティ自治区』内の各地にある遺跡、そしてその地下に繋がっている共同墓地‹カタコンベ›を通ってーーーー」

 

過激派が早まった真似をしないように、ハナコが必死に声を張り上げ説得するが、彼女達はハナコの言葉に耳を傾けていなかった。

 

「・・・・捕まえて下さい。『グランブル』」

 

『グワーッ!』

 

幹部が命令すると、厳しい強面の顔の発達した下顎には、はみ出すように突き出た特徴的な2本のキバをし、首の襟巻は黒い首輪のようになり、耳は大きなフード状の形状をした薄紫色の犬のようなポケモン『ようせいポケモン・グランブル』がハナコの周りを囲もうとしようとする。

 

「っ!?」

 

『ジュペ!』

 

しかし、ジュペッタがハナコを連れて【ゴーストダイブ】で逃れると、離れた地点でハナコと共に現れた。

すると今度は、過激派の面々が銃をハナコ達に向ける。

 

「・・・・ここまでやりますか・・・・!」

 

「浦和ハナコさん・・・・こんな事になってしまい残念です」

 

「何を・・・・!」

 

「映像なら確かに確認しました。あの正体不明の集団、『ユスティナ聖徒会』。アレが『シスターフッド』と関係ある事位は把握しています。だからこうして動こうとしているのです。『探偵ごっこ』はお終いです、ハナコさん」

 

「・・・・!」

 

ソレを聞いてハナコは確信した。この人達は〈ゲヘナ〉の仕業ではないのを承知の上で、〈ゲヘナ〉と戦争を起こそうとしているのだと。

 

「巡航ミサイルの発射位置についても確認しました。『シスターフッド』の管理下にある、『聖堂の遺跡』でしたね。〈アリウス〉がその下にある共同墓地‹カタコンベ›を通じて、勝手に私達の自治区に侵入した・・・・確かに『そう言う可能性』もあるでしょう」

 

と、ソコで幹部は一拍置いてから口を開く。

 

「ですがそもそも、“〈アリウス〉と『シスターフッド』が最初から手を組んでいたと言う線は”」

 

「・・・・っ! そんな事は・・・・!」

 

「アソコまで徹底的な秘密主義集団です。ソレくらいは出来ても不思議ではありません。私達『パデル分派』はこの危険な事態に対し、迅速に対応する事に決めました」

 

「ソレはつまり、まさか・・・・」

 

『シスターフッド』が〈アリウス分校〉の手を組んでいると言う彼女達に、ハナコは更に『嫌な予感』を感じ取った。そして、幹部は・・・・『パデル分派』は得意げに頷いてから口を開く。

 

「はい。私達は決定に反対、或いは判断を留保した『フィリウス分派』並びに『サンクトゥス分派』については、既に身柄を拘束しています」

 

「『クーデター』ですか・・・・!」

 

「いえ、違います。何せそもそも、まだれっきとした『ティーパーティー』が1名いらっしゃいますから」

 

「・・・・!?」

 

ソレを聞いて、ハナコは1人の『ティーパーティー』のホストが浮かんだ。

〈ゲヘナ〉を嫌悪し、ナギサとセイアが居らず、この状況で『パデル分派』が自分達の『クーデター』を正当化させるのに丁度いい人物、ソレはーーーー。

 

「『パデル分派』の首長にして、『ティーパーティー』のメンバーであるミカ様。あのお方を解放し、本来のお望み通り〈ゲヘナ〉との全面戦争を始めるのです」

 

「・・・・!!!」

 

想定以上の最悪の展開に、ハナコとジュペッタは戦慄した。ソレと同時に、ここで彼女達を止めなければと考え、ジュペッタに指示を出そうとした。

が・・・・。

 

ーーーーカチャ・・・・。

 

「余計な事をしない方が良いですよハナコさん? 可愛い後輩が傷だらけになりますよ?」

 

「は、ハナコさん・・・・!」

 

「! マリーちゃん・・・・!」

 

教室の扉が開かれ、『パデル分派』に拘束されたマリーや他の生徒達がいた。マリーのコレクレーもフーパもモンスターボールに入れられ、更にボールに鎖が巻かれて開かれないようにされていた。

 

「さて、どうするか分かりますよね? 浦和ハナコさん?」

 

「・・・・・・・・」

 

『ジュッペタ・・・・!』

 

ジュペッタが『パデル分派』に向けて「クソったれ・・・・!」と毒づき、ハナコはジュペッタをボールに戻して両手を上げて降参を示した。




ゲヘナはある程度大人しくしているが、陰険陰湿なトリニティが暴走する。
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