ポケモンアーカイブ   作:BREAKERZ

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失われない絆 小さな正義の背中

ーミカsideー

 

ーーーーガチャンっ・・・・。

 

「・・・・・・・・」

 

突然、自分が入っている監獄の扉が開かれるが、ミカがソチラに目を向けると、刑務官が手招きしていた。

 

「ミカさん、コチラへ」

 

「・・・・ふうん?」

 

しかし、ミカのその目は・・・・冷めきっていた。

 

 

 

 

 

 

ーセイアsideー

 

そしてセイアは、『夢の世界』で他の場所の状況を見ていると、未だに雨の中で蹲っているアズサに話し掛ける。

 

「アズサ・・・・君はこの後どうするつもりだい? 君の覚悟によって、多くの人々が救われた。しかし『戒律』は弱まったが、『ユスティナ聖徒会』は依然として存在する。〈ゲヘナ〉の風紀委員長ヒナは何処かへと消えてしまい、ハナコは逮捕されようとしている。そして、ミカは釈放されつつある」

 

あまりにも状況が悪い展開に向かっている事をセイアは話す。

 

「やはりコレが『結末』だ。結局全ては無意味で、あまりにも虚しい夢のような物語・・・・」

 

ここまでの展開を見て、セイアは結局全ては無意味であったと結論づけようとしていた。

が、

 

「・・・・まだだ」

 

「アズサ・・・・?」

 

 

 

ーアズサsideー

 

アズサは、不思議な光景を見た。真っ白い空間で、蹲っている自分に、『〈アリウス分校〉にいた頃のかつての自分に』、『今の自分』が呼び掛けていた。

 

「(まだ挫折している場合じゃない、アズサ。動いて、考えて。挫折して悲しんでいる暇があったら、今からでも方法を探して、どうにか・・・・)」

 

自分に自問自答していたアズサが、不意に顔を上げた。

 

「次の計画・・・・次は・・・・」

 

アズサはまだ悲しんで蹲っているべきではないと立ち上がる。

 

「止まっていられない、動かないと・・・・何か方法を・・・・」

 

そして、ボロボロの身体を押して、アズサはゆっくりとだが、確かに歩みだした。

 

「『ユスティナ聖徒会』が消えてない・・・・サオリも、アツコも無事・・・・ソレは・・・・いや、でも・・・・行かないと・・・・何としてでも、サオリを・・・・でないと・・・・」

 

ーーーーまだ状況は終わっていない、何とかしないと。

 

「(ズサッ・・・・)ぁっ・・・・!」

 

とアズサが歩を進めようとするが、歩き出した足のつま先が地面に引っ掛かり倒れそうになり、アズサが目を瞑ろうとした。

しかし、その時。

 

ーーーーガシッ。

 

何かが支えとなって、アズサの身体を抱き留めた。

 

「!!?・・・・まさか、そんな・・・・この、感触は・・・・!」

 

このスベスベとした肌触りの良い感触、間違いない、否、間違う筈がない。顔を上げて目を開いたアズサの目に映ったのは・・・・。

 

『クォォォォ・・・・!』

 

「ハク、リュー・・・・!!」

 

そう。行方不明となっていたハクリューであった。別の個体等ではない。自分を見つめるこの眼差し、タマゴから生まれたばかりのミニリュウの頃から育て、今日までずっと一緒に過ごしてきた、掛け替えのないポケモン、自分のハクリューであると、アズサは確信した。

 

「ハクリュー・・・・何故、今まで、何処に・・・・!」

 

色々言いたい事があった。言わなければならない事があった。

ーーーーここにいては駄目だ。

ーーーー私から離れるんだ。

ーーーーヒフミの元に行くんだ。

ーーーーヒフミの手持ちポケモンとして幸せになるんだ。

別れの言葉を紡ごうとしているのに、喉から口に出かかっているのに、アズサはハクリューを拒絶できなかった。ハクリューの身体は自分と同じ様にボロボロだった。アズサを探して、ずっと駆けずり回ってくれていたのが、その身体を見てすぐに理解してしまったのだ。

 

「・・・・ハクリュー・・・・私はコレから、『人殺し』をする・・・・」

 

『・・・・・・・・』

 

しかし、ソレでもハクリューをこの場から離れさせようと言葉を紡ぐ。

 

「もう、ヒフミ達の元へも、戻れない、戻るべきではない・・・・ハクリュー、だがお前は違う。『こんな場所』から離れて、ヒフミの元へーーーー」

 

『クォォォォ!!』

 

アズサが言い終わる前に、ハクリューのその身体をアズサに巻き付けた。

 

「は、ハクリュー!? 何を!?」

 

『クォォォォ・・・・!!』

 

戸惑うアズサにハクリューは目に涙を浮かべながらアズサに頬ずる。その行動で、アズサはハクリューの言いたい事が分かった気がした。

ーーーーアズサの傍にいる。

ーーーー絶対にアズサから離れない。

ーーーー何があってもアズサを独りにさせない。

ーーーーアズサと一緒なら待っているのが地獄でも行く。

そんな想いが、ハクリューから伝わってきた。

 

「ハクリュー・・・・!!」

 

思わずアズサの目に涙が流れ、その涙がハクリューの身体に零れ落ちたーーーーその時。

 

ーーーーピカァァァァァァァァ!!

 

『クォォォォォォォォ!!』

 

ハクリューの身体が光り輝いた・・・・。

 

 

 

 

 

ーセイアsideー

 

「アズサ・・・・君はまだ戦うつもりかい? そのポケモンと共に抗うつもりかい? 全てが虚しいと知っていて、ソレでも君は・・・・」

 

『夢の世界』でアズサの姿を見ていたセイアは目を見開く。

 

「全てを失った筈、どうしてそんなに・・・・」

 

 

 

 

ーコハルsideー

 

その頃、『正義実現委員会』の教室では。

 

「向こうの方で暴力沙汰が! 誰か止めてきて!」

 

「第5校舎にて事件が発生! どうしますか!?」

 

「う、うぅ・・・・わ、私は・・・・」

 

『シスターフッド』と同じく『正義実現委員会』も、委員長のツルギと副委員長であるハスミが重症で動けない中、マトモに機能していない状態である。

一応呼ばれてやって来たコハルとヘラクロスは、慌ただしくしている皆を見つめながら、突っ立っているだけで気まずい思いをしていた。

 

「あれ? アナタ・・・・今は『補習授業部』じゃなかったっけ、どうしてここにいるの? まだ復帰しちゃいけないんじゃなかった?」

 

「そ、ソレは、えっと・・・・」

 

「まあ今はそんな場合じゃないか。やる事ないなら、監獄の方にでも行ってもらえる? 何か変な集まりが出て来そうとか言ってたし・・・・」

 

「わ、私は・・・・っ!」

 

『ヘラクロ・・・・』

 

コハルの存在に気づいた『正義実現委員会』のメンバーの1人が、コハルがここにいる事に疑問に思いつつ、監獄に行くよう指示をする。

コハルは何か言おうとするが、元々コミュ障な所があって応えられず、結局ヘラクロスと共に監獄へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

ーサオリsideー

 

「さ、サオリさん・・・・」

 

『ガラガラ・・・・』

 

「リーダー・・・・」

 

『バナー・・・・』

 

一方の『アリウススクワッド』は、漸くヒヨリが目を覚まし、先に行ったアツコにサオリと合流して次の作戦に向けて動こうとする。しかし、サオリは重傷を負っているのを見て心配するが、当のサオリはアズサに対する敵対心が更に深くなり、マスクを付け直したがその眼光に戦慄していた。

 

「今すぐ、トリニティへの攻撃を・・・・!」

 

「その前に、やらなきゃいけない事がある」

 

「ひ、姫ちゃんが怪我をして、『ユスティナ聖徒会』の顕現に問題が生じてますし・・・・」

 

「・・・・あの古聖堂に戻って、『戒律』を更新しないと」

 

「・・・・・・・・分かった、古聖堂へ向かうとしよう」

 

今すぐ〈トリニティ〉・・・・と言うよりも、本音はアズサへの攻撃を始めようとするサオリだが、ヒヨリとミサキはそれを制止し、アツコが傷ついた為に『戒律』に問題が生じてしまったから古聖堂へ戻る事を伝え、サオリ自身も何とか怒りを抑えたようだ。

 

「すぐに出発だ」

 

「・・・・・・・・」

 

「行くぞ!」

 

サオリは『アリウススクワッド』を率いて、急いで古聖堂へと向かう。それについていく彼女達はサオリの様子を心配そうに見つめていた。

 

『・・・・・・・・』

 

ヘルガー(色違い)もボロボロの身体を押しながら、サオリについていく。

 

 

 

 

 

 

ーミカsideー

 

そしてミカが収監されている監獄の中に、『ティーパーティー』の傘下、恐らく主戦派である『パデル分派』の生徒達が次々とやって来た。

 

「ミカ様、コチラへ」

 

「ミカ様、手持ちのポケモン達も連れてきました」

 

『カヌチャ・・・・』

 

『イエッサン・・・・』

 

『ブルルルル・・・・』

 

モンスターボールに収められて押収されていたデカヌチャンとイエッサン(♀)とアローラギャロップが出てくる。3匹共、先生のピカチュウとルカリオとイーブイ(色違い)とのダメージが回復されていないようであった。

しかし、3匹は状況が今一呑み込めず困惑気味である。

 

「ミカ様!!」

 

「お待たせしました、もう自由です!」

 

「ふーん・・・・成る程ね? うん、大体状況は分かったよ。つまり・・・・皆、私のファンって処かな? やー、ありがとね、デカヌチャン達を連れてきてくれて。デカヌチャン、イエッサン、ギャロップ、こっち来て! 君達にはお礼にサインでもしてあげよっか?」

 

『『『・・・・・・・・』』』

 

3匹は困惑しつつも、ミカの元に集まった。

 

「い、いえそうではなく。ご覧になったかと思いますが、現在〈トリニティ〉はーーーー」

 

「うん、大体分かってる。で、ここの皆は何? まさかとは思うけど、〈ゲヘナ〉に宣戦布告しようとか考えてたり?」

 

「はい、その通りです! 今こそ〈ゲヘナ〉の奴等を消し去るチャンスかと!」

 

「あなた様が望んでいた通り、〈ゲヘナ〉との全面抗争を・・・・!」

そんなミカの様子に少し困惑しつつも、『パデル分派』の生徒達は〈ゲヘナ〉に宣戦布告をし、全面戦争を始めるようミカに迫る。

 

「さあ、今すぐトリニティ全域に戦闘命令を!」

 

「・・・・あはっ。皆記憶力良いね。うん、私は〈ゲヘナ〉が大っ嫌いだよ」

 

が、ミカはそんな『パテル分派』に向かって笑い声を上げる。

 

「・・・・それで? だから何? どうしてそんな、“『命令』を欲しがって来た訳”?」

 

「・・・・はい?」

 

「他の派閥を抑えたんでしょ? 実際の所、『宣戦布告』なんて手続きもう要らないじゃん。『今すぐに〈ゲヘナ〉に殴りかかれば良い』のに、自分達の代わりに怒って『命令してくれ』って・・・・何それ、面白い事するね?」

 

「み、ミカ様!? 何を・・・・!」

 

「あははっ、気に障ったらごめん」

 

『パテル分派』はミカを旗印にして、他の〈トリニティ〉の生徒達を扇動させ、〈ゲヘナ〉と戦争しようとしているのだ。そして、もし失敗したとしても、その時はミカに全ての『責任』を押し付けてようとしていると言う思惑もある。

ミカは自分が利用されようとしているのを察しており、『パデル分派』の生徒達に暴言を発する。

『パテル分派』はミカの態度が予想外だったようで困惑の表情を浮かべた。

 

「うん、私は〈ゲヘナ〉が大嫌いだよ。機会があれば、どうにかしてやりたいと思う位にはね。でもさ、今の私はあんまりそういう『気分』じゃないんだよね。だから悪いんだけど、帰ってもらえるかな? 折角久しぶりにデカヌチャン達も来たから皆でゲームとかしたいし♪」

 

「き、『気分』・・・・?」

 

「今がどれだけ重大なタイミングなのか、分かっていらっしゃるのですか。それを、たかが『気分』の問題で・・・・」

 

「・・・・『たかが』? 何言ってるの、ソレが1番大事な事でしょ? 私は『私の気分とか気持ちの問題』で、〈ゲヘナ〉が嫌いなの。その事の何が悪いのさ。別に、その裏に隠れた『理由とか目的』なんて無いんだよ? こんな状況で宣戦布告なんて、別に要らないって分かってるよね? なのに自分たちの代わりに憎んでくれだなんて、変なこと言って・・・・」

 

ミカが〈ゲヘナ〉を嫌ってるのは『歴史』とか『因縁』とかではなく、単なる『気分の問題』であると『パテル分派』に打ち明けた。

 

「もう帰ってくれないかな? 今はそういう気分じゃないし、そろそろ面倒になってきちゃうから」

 

「・・・・何だと?」

 

ミカの発言に、『パテル分派』の生徒達はワナワナと身体が震えだし、中にはモンスターボールに手をかける者もいた。

 

「お耳掃除でもしてあげようか? 『命令されなきゃ憎む事もできないの』、って言ってるの。勝手に〈ゲヘナに行って勝手に向こうにいるとっても強〜い風紀委員長さんと手持ちポケモン達に痛めつけられてくれば?」

 

「この、言わせておけば・・・・っ!」

 

ーーーーバコンッ!!

 

ミカの発言で頭に血が昇った『パデル分派』の1人、ミカの顔を殴ろうとした。

 

『カヌチャン!』

 

ーーーーバキッ!

 

「ああああっ!!」

 

が、デカヌチャンが巨大ハンマーでその拳を受け止めると、その重厚な見た目に反さない防御力で、逆に『パデル分派』の生徒の握り拳が赤くなる。

 

『イエッサン!!』

 

『ブルルルル!!』

 

デカヌチャンに続いて、イエッサン(♀)とアローラギャロップもミカを守ろうと立ち塞がる。

 

「皆・・・・ふふっ、本当に馬鹿だね、こんなトレーナーの為に」

 

自分の行動のせいで虜囚にされてしまった手持ちポケモン達なのに、ソレでも自分を守る為に戦おうとする皆に、思わず小さく笑った。

しかし、ソレが逆に『パテル分派』の怒りの火に油、否、ガソリンをぶち撒けてしまう形になった。

 

「世間知らずのお嬢様が! 態々牢屋から出してあげようっていうのに、調子に乗って・・・・!ーーーー『ニダンギル』!」

 

ーーーーポンッ!

 

『パデル分派』はモンスターボールを放りなげて開かれるとソコに現れたのは、鞘に収まった2つの双剣、その双剣に紫色の目と手のようなものがある『とうけんポケモン・ニダンギル』であった。

 

『『ギル』』

 

「ニダンギル! あのお嬢様のナイト気取りの蛮族と、目障りなメイドと喧しい馬を始末しろ!!」

 

他の『パテル分派』もニダンギルを出し、ニダンギルは2つの双剣が動き出す。

 

「あははっ、ニダンギルかぁ。進化したら、『王様になる才能を持つ人』を見抜くけど、操っちゃう『ギルガルド』になるんだよねぇ。アナタ達じゃ、文字通り『傀儡』になるのがオチだねぇ」

 

「このぉ!! ニダンギル! 【サイコカッター】!!」

 

「【シャドークロー】!!」

 

『パテル分派』は更にニダンギル達が念動力の刃と影の刃を刀身に纏うと、デカヌチャン達を攻撃する。

 

『イエッサーン!!』

 

イエッサン(♀)が【サイコキネシス】のシールドを張るが、

 

『サッ、ン・・・・!』

 

先生のポケモン達とのダメージが抜けきれていない為か、イエッサン(♀)の身体がガクッと崩れ落ち、シールドも消滅する。

 

『ーーーーデカヌチャンッ!』

 

『ーーーーヒヒィィィィン!』

 

が、同じくダメージが残っているデカヌチャンとアローラギャロップがシールドが消えると同時に飛び出し、【ぶんまわす】と【マジカルシャイン】で攻撃をする。

 

『ニダンギル! 【てっていこうせん】!』

 

『ーーーーギィィィィルゥゥゥゥッ!!』

 

が、ニダンギルはお互いを交差すると、全身のエネルギーを収束してメタルシルバーの光線をデカヌチャンとアローラギャロップに浴びせた。

 

『カヌチャァァァァァァァァ!!』

 

『ヒヒィィィィィィィィィッ!!』

 

ソレを受けた2体は吹き飛び、監獄の鉄格子に叩きつけられた。

 

「イエッサン・・・・デカヌチャン・・・・ギャロップ」

 

『『ーーーーニダン、ギル・・・・』』

 

ミカが呆然と倒れた手持ちポケモン達を見ると、『パデル分派』のニダンギル達も疲弊したように床に降りてしまった。

【てっていこうせん】は『はがねタイプ最強の技』と称されるが、使用するとポケモンの体力も半分も消耗してしまうと言う弱点がある。

 

ーーーードカッ!

 

そして、 手持ちポケモン達が戦闘不能になったのをいい事に、『パテル分派』の1人がミカを殴り飛ばした。

 

「あー、もう・・・・」

 

ーーーーダダダダダダダダ!!

 

ーーーーバァン! バァン!

 

「・・・・痛いなあ」

 

1人がミカを殴り出したのを機に、その場にいる他のメンバーもミカを包囲して銃弾を撃ち込むまで至っていた。

しかしミカは反撃も抵抗もしようとせず、黙って受けており、床に倒れ込む。

 

「自分の立場を理解しろ! もう『ティーパーティー』から解任直前の身で!」

 

ーーーーバキッ! ズガッ!

 

「態々来てあげたと言うのに、ソレを・・・・!」

 

ーーーードカッ! バキッ! ズガッ! ベキッ! ドンドンッ! ズガァンッ!!

 

「・・・・・・・・」

 

倒れたミカを包囲し、口汚く罵倒をし、殴る蹴る踏む等と言った暴行を行い、痛々しい音が監獄へと響く。

 

『イエ・・・・サン・・・・』

 

『ヌチャ・・・・』

 

『フー・・・・』

 

それでもミカは一度も反撃をしようとせず、『パデル分派』の暴力を受け入れている。 デカヌチャン達は動きたくても、最早身体が『ひんし状態』であり、悔しそうに涙を流すしか無かった。デカヌチャン達が『誰か助けて』、と呟いたその瞬間、

 

 

 

ーーーーバンッ!!

 

「ーーーーな、何してんのっ!?」

 

『ーーーーヘラクロス!』

 

何と、その場に現れたのは『正義実現委員会』のメンバーから、監獄へ向かうよう言われたコハルとヘラクロスであった。2人はミカが『パテル分派』からリンチにされているのを見て、思わず止めに入ったのだ。

 

「ーーーーな、なんだお前は!」

 

「い、いじめはダメっ! どうして、こんなに大勢で寄ってたかって・・・・!」

 

コハルとヘラクロスは倒れたミカの元に行き、両手を広げてミカを守るように『パテル分派』の前に立つ。

 

「こ、こんなの、私が許さないんだからっ!!」

 

『ヘラクロス!!』

 

「・・・・!」

 

顔を上げたミカの目に、僅かに震えながらも自分を守ろうとするコハルの背中と、真っ直ぐな瞳をした横顔が映った。

 

 

 

 

 

 

ーミュウツーsideー

 

「・・・・・・・・ッッ!!」

 

『ミレニアム自治区』にある『岩壁エリア』の最奥の滝壺。

『トリニティ自治区』の上空で『何者』かの奇襲を受けてしまいここまで吹き飛ばされて落下し、水面にプカプカと浮いて気を失っていたミュウツーがカッと目を覚ました。

 

ーーーードバァァァァァァァァァンン・・・・サァァァァ・・・・。

 

その際に力を放出した瞬間、滝壺の水どころか滝の瀑布すらも上空に吹き飛ばし、みずタイプポケモン達が水が無くなった水底でビチビチと藻掻いているが、吹き飛んでいた水が雨となって落ちていき、滝の水と共に再び滝壺の水が増していく。

 

『ーーーーふんっ!!』

 

宙に浮いたミュウツーはバリアを張って降り注ぐ水から身を守り力を込めると、【じこさいせい】で自分の身体のダメージを全て回復させていく。

 

『・・・・さて、行きますか』

 

ミュウツーは上空へ飛ぶと、『シャーレ』に向かって飛んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

ー先生sideー

 

そしてここは〈トリニティ総合学園〉の『救護騎士団』の病室にて。

 

“・・・・・・・・!”

 

病室に設られた時計の秒針の音を聞き、遂に先生の意識が回復した。

そして先生は傷と疲労で重くなった身体を動かす。

 

「せ、先生!? 目が覚めたんですね・・・・!!」

 

「まだ動いちゃダメです! 先生、どこに行くつもりなんですか・・・・!?」

 

『『ピィピィ!』』

 

しかし、どこかに向かおうとする先生をセリナとハナエ、2人の手持ちのピィ達は必死に止めようとするが、先生は構わず動き、自分の『相棒』と『仲間達』を探しに病室を出ていく。

そして脳裏に、『夢の世界』にいるセイアの声が聴こえた。

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

【・・・・先生、君はあくまで立ち向かうつもりかい? 生徒達が他の何でもなく・・・・・・・・ただ、生徒達である為に?】

 

【“そうあるべきだって、私は信じてるから”】

 

『夢の世界』で『現実』のどうしょうもなさを伝えるセイアは先生に、生徒達の為にソレでも立ち向かうのかと問う。それに先生は何の迷いもない声で、そうあるべきだと応えた。

 

【・・・・だが、先生。君の前に立ちふさがるのは『憎悪と不信』。長きに渡って久遠に近い集積を経た、それらの具現だ】

 

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

 

“ーーーーじゃあまずは、それと相対してくるよ”

 

「「???」」

 

『『???』』

 

病室を出て、ポケモン達の回復ルームに着いた先生がそう呟くと、セリナとハナエ、そしてピィ達は首を傾げる。

 

 

 

 

 

 

そして先生は、『回復マシン』に入っている6つのモンスターボールに話し掛ける。

 

“ルカリオ。イーブイ。ワカシャモ。ヌマクロー。ジュプトル。ミライドン”

 

ーーーーポンッ×6

 

『ーーーーカルオォ!』

 

『ーーーーブイィッ!』

 

『ーーーーシャモッ!』

 

『ーーーーマクゥッ!』

 

『ーーーージュルゥッ!』

 

『ーーーーアギャァアッ!』

 

先生の呼び掛けに応え、全回復したルカリオ達がボールから飛び出してきた。

ソレを見てから先生は、回復システムの隣のベッドで眠りながら、輸血をされている『相棒』に声をかける。

 

“ーーーーピカチュウ”

 

『(・・・・カッ)ーーーーピカチュウ!』

 

先生が話し掛けると、固く閉ざされていたピカチュウの目がカッと開かれ、ピカチュウは腕に巻き付いていた輸血器具を外すと、力強く声を上げた。

 

“・・・・皆”

 

『ーーーー!!!』

 

先生が声を掛けると、ポケモン達は先生を中心に集まり、イーブイ(色違い)は先生の肩に乗り、頬ずりやペロペロと舐める。ワカシャモとヌマクローは抱き着き、ルカリオとジュプトルは笑みを浮かべながら薄く涙も浮かべ、ミライドンはイーブイ(色違い)の反対側の頬を舐める。

そして・・・・。

 

『ピカピピ・・・・』

 

“ピカチュウ・・・・”

 

イーブイ(色違い)とミライドン、ワカシャモとヌマクローもソッと離れると、ピカチュウがゆっくりと先生に近づき、先生も腰を落として手を差し伸べると、ピカチュウはその腕を伝って先生の肩に乗る。

 

“・・・・・・・・”

 

先生がピカチュウの脇腹に視線を向ける。ニンフィア(色違い)の【いやしのはどう】を受けて傷跡は塞がり、産毛も生えてきている。時が経てば傷跡は目立たなくなるだろう。

 

“・・・・ありがとう。ピカチュウ”

 

『ピカ♪』

 

先生が笑みを浮かべて頭を撫でると、ピカチュウはその1言に多くの気持ちが込められている事を察し、笑顔で撫でられた。

すると、先生の脳裏に『テレパシー』が過り、先生は後ろにいたセリナとハナエに向けて声を発する。

 

“・・・・セリナ。ハナエ。悪いけど少し部屋を出てくれないかな?”

 

「えぇっ?」

 

「な、なんでですかぁ!?」

 

『カル』

 

『ジュプ』

 

セリナとハナエが反論するが、ルカリオとジュプトルが片手にピィを持って2人の背中を押し、回復ルームから追い出した。

 

「「ーーーー先生!」」

 

『ーーーーアギャァ♪(ペロン!)』

 

「「うひゃぁっ!?」」

 

『『ピィ!?』』

 

扉を開ける2人の目をミライドンがペロンと舐め、2人は後ろにステーン、と倒れピィ達が介抱し、扉はまた閉じた。

ミライドンが見張りをしてくれているのを確認した先生が上を向くと、部屋の窓をすり抜けて、『アタッシュケース』と先生の着替えを持ってきたミュウツーが現れたのであった。

 

“ありがとうミュウツー。着替えまで持ってきてくれて”

 

『『シャーレ』に残っているマグマラシとベイリーフとアリゲイツにも、先生の無事を伝えておきました。ベイリーフの説得には少し骨は折れましたけどね。さて、大人たるもの、身嗜みはシッカリと整えませんとね。身体も洗いましょう。イーブイ。ヌマクロー』

 

『ブイ!』

 

『マク!』

 

ミュウツーは近くのテーブルの置かれていた『超進化ライト』でイーブイ(色違い)をシャワーズ(色違い)に変え、先生が服を脱いで全裸になると、ミュウツーが【サイコキネシス】で先生を浮かせ、シャワーズ(色違い)とヌマクローが弱めの【みずでっぽう】で先生の身体の汚れを全て洗い。弾けた水はミュウツーが全て浮かせ、【テレポート】で何処かに飛ばし、タオルを持ったルカリオが先生の身体を丁寧に拭き、ジュプトルがその葉の刃で先生の髭や無駄に伸びた髪の毛を切り落とし、落ちた毛などはミュウツーが再び浮かせワカシャモが軽く火を吐いて燃やし尽くした。

そして先生が衣服を着て、ピカチュウがネクタイを巻いてあげると、シャワーズ(色違い)がチュッ♡と先生の頬にキスをした。

そして先生は、『シッテムの箱』のアロナに話し掛ける。

 

“(アロナ・・・・)”

 

《ご”め”ん”な”ざ”い”先生! アロナは、アロナは役立たずでずぅぅぅぅっ!!》

 

アロナが顔を涙と鼻水でグシャグシャにしながら謝罪した。

 

“(大丈夫。私はこうして無事だから。終わった事を後悔するのは良いけど。もう切り替えて、コレから挽回する事を頑張ろう)”

 

《ーーーーはい! 分かりました! 今の〈トリニティ〉と〈ゲヘナ〉の現状は把握していますが、〈ゲヘナ〉は兎も角、〈トリニティ〉で『パデル分派』の叛乱が起ころうとしています!》

 

“(分かった。詳細の説明を)”

 

《はい!》

 

アロナが集めた情報全てに目を走らせ・・・・。

 

“ーーーーさぁ、行こう!”

 

『(コクン!)』

 

先生はピカチュウを除いた手持ち達をボールに戻し、回復ルームから出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

ーコハルsideー

 

「・・・・・・・・」

 

「どきなさい、今の状況が分からないの!?」

 

「緊急の事態なのよ!?」

 

「で、でも、私は・・・・!」

 

緊急事態と言うが、要は『パテル分派』によるミカへのリンチなのである。ソレを邪魔されて彼女達は苛立ち、今度はコハルに詰め寄る。だがコハルはそんな状況に怖がりつつも、決して退こうとしなかった。

 

「どけっ!!」

 

「・・・・い、嫌っ! わ、私はバカだから、何がどうなってるのか全然分からないけど・・・・でも、コレは違う! こんなの絶対にダメ!!」

 

『ヘラクロス!』

 

コミュ障でそんなに頭が良くないコハルだが、たった1人の無抵抗の人間を攻撃するやり方を間違っていると言い、敢然と立ち向かう。そしてヘラクロスも、そんなパートナーを守るように『パテル分派』の前に立つ。

 

ーーーーガチャっ。

 

「聞かないやつだ、ソレなら・・・・」

 

ーーーーポンッ!

 

『ブルルルル!!』

 

『パデル分派』はとうとう銃まで取り出し、更にはグランブルまで出してきて、コハルは身体をビクッとさせ、ヘラクロスは【こらえる】の体勢でコハルを守ろうとする。

 

「ま、待って。この子、何処かで・・・・」

 

「よく見ると、何だか見覚えが・・・・」

 

と、『パデル分派』の何人かがコハルの顔を見て何かを思い出したかのように呟いたその時、

 

ーーーーヒュン・・・・ドガガガガガガガガ!!

 

ーーーーガシャァァァァァァァァァンン!!

 

『ブルァアアアアアアアアアアアアッ!!?』

 

『きゃぁぁぁぁっ!?』

 

「え? え??」

 

『ヘラクロ??』

 

突如、部屋に入ってきた『複数の影』がグランブル達を薙ぎ倒し、『パデル分派』がコハルに向けていた銃を全て破壊してみせた。

 

『ーーーーカルッ!』

 

『ダース!』

 

『シャモ!』

 

『マックーッ!』

 

『ジュプ!』

 

「る、ルカリオ? サンダース? ワカシャモ? ヌマクロー? ジュプトル?」

 

『ヘラクロ!』

 

何とソコに現れたのはルカリオとサンダース(色違い)と、ワカシャモにヌマクローにジュプトルの御三家達であった。

全員、コハルとヘラクロスを一瞥して笑みを浮かべてから、冷徹な目で『パテル分派』の生徒達を見据えていた。

 

「る、ルカリオに、色違いのサンダース、ソレに御三家って・・・・まさか・・・・!!」

 

『パテル分派』のリーダーらしき生徒が顔を青ざめたその時、後ろから静かな声が全員の耳にハッキリと聴こえた。

 

“ーーーーコハルは『補習授業部』の、『私の生徒だよ』“

 

『ピカチュウ!』

 

そこに現れたのは、『シャーレの先生』とピカチュウであった。

 

「せ、先生っ!?」

 

『ヘラクロース!!』

 

「・・・・・・・・」

 

『カヌチャ・・・・』

 

『サンッ・・・・』

 

『ブルルルル・・・・』

 

コハルとミカは頬を紅くし、ヘラクロスは両手を上げて喜びを現し、傷だらけのデカヌチャン達は心底安心したような笑みを浮かべた。

 

『・・・・・・・・!!』

 

だが、彼女達とは真逆に、『パテル分派』の生徒達は更に顔が青ざめ、小刻みに身体を震わせ、薄っすらと脂汗まで流す生徒までいた。

 

「『シャーレ』の・・・・!?」

 

「そんな、意識不明の重体だった筈・・・・?」

 

「せ、先生が、どうしてここに・・・・」

 

“『パデル分派』の皆。コレは一体何事なのかな?”

 

「そ、ソレはえっと、その・・・・!!」

 

“一応言っておくけど、今私のポケモン達は少々気が立っていてね。あまりオイタが過ぎるとこの子達も抑えが効かなくなるよ?”

 

『ピカチュウ?(ビリリリ・・・・)』

 

『(ゴキッ! ゴキッ! ゴキッ! ゴキッ!)』

 

『(バチバチバチバチバチバチバチ!!)』

 

『(ーーーージャキンッ!!)』

 

『(バフンッ! バフンッ! バフンッ! バフンッ!)』

 

『(ーーーーチャキ・・・・)』

 

先生の言葉に応じるように、ピカチュウは頬に電流が流れ、ルカリオは拳を盛大に鳴らし、サンダース(色違い)は体毛を更に尖らせ電流を迸らせ、ワカシャモは両手の爪を鋭く見せ、ヌマクローは両手を交差させ、ジュプトルが両手の刃を静かに構える。

 

“ーーーー『クーデターごっこ』はここまでだよ。自分のポケモン達を連れて帰ってくれないかな? お願いだから、暴力は止めて欲しい”

 

「ヒィッ・・・・!」

 

「・・・・・・・・」

 

「か、帰ろう。あの先生やポケモン達の表情、絶対にマズイって・・・・」

 

「ああ、行こう・・・・」

 

そして『パテル分派』に先生は暴力を止めるよう言いながら、更に目を細くして『パテル分派』の行いを『ごっこ遊び』と断じるが、彼女達は反論せず、逆にヤバいと思ったのか、ニダンギル達とグランブル達をボールに戻して、そそくさと立ち去って行った。

 

「せ、先生・・・・先生・・・・」

 

“コハル、カッコ良かったよ。流石は『正義実現委員会』のエリート”

 

『ピカチュウ!』

 

『ーーーー!!』

 

「先生・・・・!」

 

『パテル分派』が全員が立ち去ったのを確認すると、コハルはゆっくりと先生に近づき、安心したのか抱き着いて泣きじゃくる。

先生とピカチュウ達はコハルの勇気を称賛した。あんなに大勢の人間達が弾圧している空間に、コハルとヘラクロスは自分達だけ立ち向かった。ミカの為に『正しい行い』をしたその姿は正に、『正義の姿を実現させてみせた』と言っても良い。

ーーーーきっとそんなコハルだからこそ、ハスミやツルギが期待を寄せているのだろうと今更ながら先生達は理解した。

 

「・・・・・・・・」

 

そんな彼らの様子をミカは何処か羨ましそうに見ていた。

 

「・・・・先生・・・・」

 

“ミカ、大丈夫? デカヌチャン達はすぐに治療するから”

 

先生がミカの方を向いてからルカリオとワカシャモとヌマクローに、『げんきのかたまり』 を渡し、3匹はデカヌチャン達の治療に向かった。

 

「えっと・・・・うん、ありがとう。何て言うか、久しぶり・・・・だね?」

 

“そうだね。ミカ・・・・”

 

先生がミカの事を心配するように言うと、いきなり現れて心配されたミカも戸惑う。

 

“ミカは、どうしてさっき・・・・”

 

「え、あー、ソレは・・・・」

 

先生は、何故『パデル分派』の『クーデター』にミカが参加を拒絶したのかが解らず、思わず聞いてしまった。

〈ゲヘナ〉が大っ嫌いなミカにとっては、正に『千載一遇』で『渡りに船』と言って良い位のチャンスであった筈なのに、ミカはソレを拒絶したのだ。

だが、ミカ自身もどう説明すれば良いのか分からない様子であった。

 

「・・・・何でだろ。絶好のチャンスだし、今立ち上がればって分かってはいるんだけど・・・・今でも嫌い、何だけど・・・・どうしてだろ・・・・私にも、よく分かんないな・・・・あれ、ちょ、ちょっと待って・・・・私・・・・」

 

するとミカは、自分の心境をどう説明すれば良いのか分からず、その瞳から涙が溢れ始めたのであった。

 

 

 

 

ーセイアsideー

 

「ミカ・・・・その『憎しみ』は・・・・君が先陣に立っていた、その『憎悪』は、君はどうして・・・・」

 

『夢の世界』でミカの様子を見ていたセイアは、唐突に泣き始めたミカに戸惑いつつも、かつてまだ3人だった頃にミカが話していた事を思い返していた。

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