ポケモンアーカイブ   作:BREAKERZ

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憎しみの正体 立ち上がれ友の為に

ソレは、『ティーパーティー』はまだ桐藤ナギサと聖園ミカ、そして百合園セイアの3人で運営していた頃。

3人の『ホスト』達は誰の目も耳もない〈トリニティ総合学園〉にある監獄の1室で秘密の会議をしていた。

 

「ミカさん、そろそろ聞かせていただけませんか? 『〈アリウス〉と和解する』・・・・ソコにある『意図』を」

 

「え? 『意図』?」

 

「どういった『政治的な利益』があるのか・・・・と、ナギサは聞いているんだよ」

 

険しい顔付きをしたナギサは、ミカが突然アリウスと和解すると言い出した『意図』を聞こうとし、セイアもミカの『本心』を聞こうとしているようである。

 

「別に政治的な利益っていうか・・・・だって元々は、同じ〈トリニティ〉でしょ。直接自治区に行ってさ、『仲良くしよ?』って言ってみようよ! ほら、皆でお茶会でも開いてさ!」

 

「「・・・・・・・・」」

 

ミカはただ、『同じ〈トリニティ〉だから仲良くしよう』と、〈アリウス〉との『和解』を意見するが、ナギサとセイアは突拍子のない話に呆れたように額に手を置いた。

 

「・・・・え、何この空気。私何か変な事言った? 良いと思わない? あーあ、私が『ホスト』だったらすぐにでも動いたのに」

 

「ミカさん、アナタは本当に・・・・まあソレは一先ず良いとして。アチラが応じるかは分からないでしょう。自治区の場所も判明していない事ですし」

 

「それにミカ、君はもしソレが達成できたとしてどうするつもりだい? 〈アリウス〉を吸収してより強大になった〈トリニティ〉・・・・何か大きな戦いを起こそうとでも?」

 

「んー、まあどうするも何も無かったけど・・・・ソレも良いかもね? そういう声も沢山あるし。ソレにそうなったら、〈ゲヘナ〉をどうにかできちゃうかも知れないし?」

 

ミカは自分がホストだったらすぐに動くと言うが、ナギサは〈アリウス〉との『和解』は難しい上に、セイアはその後〈ゲヘナ〉と戦うつもりなのかと聞くと、ミカはそのつもりがあるようであった。

 

「・・・・・・・・」

 

「・・・・なぁに、セイアちゃん。そのお顔は」

 

セイアの責めるような視線に、ミカは目を細めて睨み返した。

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

「君は自分勝手だ。あんまり何も考えていない上に衝動的で、欲張りで、時に自傷的な・・・・そんな君の事が、私は好きでは無かったかも知れない」

 

『夢の世界』で当時の事を思い返し、黄昏たように呟くセイア。

そして、別の場面、セイアが襲撃される時のミカの場面を見ていた。

 

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

「・・・・セイアちゃんはここにいる。静かに、病院にでも送ってくれれば・・・・。そう言う事だから、よろしくね」

 

「・・・・コレについては、『スクワッド』に任せます」

 

「・・・・『スクワッド』?」

 

「はい、ご存じでしょう?」

 

ミカは〈アリウス〉の生徒と密かに会話をしていた。ミカは病院送り程度にして欲しかったようだが、〈アリウス〉は『スクワッド』の事を話すと静かに去り、置いていかれたミカは立ち尽くしていた。

 

 

 

 

 

そしてーーーー。

 

「(セイアちゃんが、死んだ・・・・?・・・・何で? どうして? 何がどうなって、え、何でそんなことに・・・・? どうして? バカなの? だって、私は・・・・あれ、私・・・・私、どうしてセイアちゃんを襲撃してって指示したんだっけ・・・・? セイアちゃんがいなくなったら、私・・・・)」

 

セイアが死んだと聞かされたミカは何故こんな事になってしまったのか、自問自答を繰り返していた。

 

「(・・・・・・・・ああ、そうだ。私は、ホストになろうとして・・・・そう、〈ゲヘナ〉の事が嫌いだったから。嫌いなものは嫌いだったから。ナギちゃんも『条約』とか、何か変な事をしようとしてるし。何でそんな事するんだろ。相変わらずおバカさんなんだから。〈ゲヘナ〉との『平和条約』だなんて、絶対。絶対に許せない)」

 

〈ゲヘナ〉が嫌い、そんな個人的な理由で、『平和条約』をやろうとするナギサに怒りを向ける。

 

「(・・・・セイアちゃん。未来が見えるとかなんとか言ってたのに、どうして自分の事も守れなかったの? ネイティオ達は何をしていたの? それくらい見えてたんでしょ? そもそもあんなに身体も弱いのに『ティーパーティー』に入って、いつもいつも私に『しっかり考えたまえ』って小言ばっかりで・・・・この間だって、あんな目で私の事を・・・・だから、だから・・・・)」

 

徐々にソレは、セイアにも責任転嫁として向けるようになりそして・・・・。

 

「(こうしている為に、そして〈ゲヘナ〉を一掃する為に、これ位の犠牲は仕方のない事だった。そうだった、はずなのに・・・・)」

 

こんなつもりじゃなかったと、後悔した。

 

 

 

 

 

 

ーミカsideー

 

そして、ミカは自分のコレまでの行いの数々を思い返し・・・・。

 

「わ、私は・・・・」

 

その瞳から、大粒の涙を流していた。

 

「・・・・ゴメン、セイアちゃん・・・・。どうして、こうなったのかな・・・・ゴメン・・・・ゴメンね・・・・こんなにバカで、ゴメン・・・・」

 

“ミカ・・・・”

 

「先生・・・・私、セイアちゃんに会いたい・・・・ナギちゃんにも、もう1度会いたい・・・・こんな私じゃ、もうダメかもしれないけど・・・・」

 

ミカは今まで自分がやってしまった事を後悔し、もう1度セイアとナギサに会いたいと先生に懇願した。

 

『デカヌ、チャン・・・・』

 

『イエッ、サン・・・・』

 

『ブルルルル・・・・』

 

ワカシャモに支えられたデカヌチャン。ヌマクローに支えられたイエッサン(♀)。ルカリオとジュプトルに支えられたアローラギャロップが、ミカの元に集まり、その涙を手で拭ってあげたり、頬ずりして慰めようとしていた。

 

「ゴメンね、皆・・・・こんな私に・・・・付き合わせちゃって、本当に・・・・ゴメンね・・・・!」

 

『『『・・・・・・・・』』』

 

泣きながら謝るミカの身体を、デカヌチャンはハンマーを手放し、イエッサン(♀)と共に優しく力強く抱き締めた。

 

 

 

 

ーセイアsideー

 

「ミカ、君は・・・・そうか、『理由』を求めていたのか・・・・嫌いである事に何かシッカリしたものが必要なのではと、どこかで合理化しようと・・・・そうして間違いが合わさって…相変わらず、馬鹿な事を・・・・」

 

ミカの様子を『夢の世界』で見ていたセイアは漸くミカの心情に気付き、馬鹿な事をしたと嘆いた。

 

“・・・・私は君の事を、分かったつもりでいた。きっとまだコレだけじゃない・・・・君の抱えていたものを、幼気な感情を、考えていた事を、その状況を・・・・ソレらを知ろうとする努力を、私は怠っていた」

 

内心で、「人の事を言えないな・・・・」と自嘲する。

 

「・・・・そうか。私はまだ、君の事をあまりにも知らない・・・・そして、気が付いた時には君も私と同じ様に。『間違った物語』の真ん中に置いてかれていたのか」

 

セイアは自分もミカの事を知ろうとしていなかった事に気付いた。間違っていたのはミカだけではなく、自分もであったと気付いた。

 

「『殺人』、『死』、『裏切り』、『抗争』・・・・君の様な少女が身を置くには、あまりにも『残酷な話』だった。本来であれば許されるべき我儘が、君を・・・・」

 

そんな『残酷な世界』に行くには、ミカはあまりにも幼く、清らかで、純粋だった。

 

“・・・・ミカ。君も、ずっと・・・・」

 

「苦しんでいた」と言う言葉を喉から出そうになったが、セイアは呑み込んだ。

 

「・・・・兎に角私は、君を許そう。そして私もまた、君に許しを乞わなくてはならないのかも知れない。私達はもう1度お互いに伝えあって、ソレで・・・・もしかしたらその先は・・・・」

 

そしてセイアはミカを許すと言い、自分もミカに許しを乞おうと考えた。

 

 

 

 

 

 

ー先生sideー

 

先生は泣きじゃくるミカの頭に手を乗せて、優しく撫でた。

 

“・・・・任せて、ミカ”

 

ソレだけ言うと先生は、ミカをデカヌチャン達に任せ、泣き止んだコハル、ピカチュウ達やヘラクロスを連れて、他の場所へと向かった。

 

 

 

 

 

 

先ず最初にやって来たのは、『パデル分派』に拘束されていた生徒達がいる『ティーパーティー』の教室にやって来た。どうやらここにいた『パデル分派』もいち早く逃げたようだ。

 

「せ、先生だ・・・・」

 

「先生・・・・」

 

「先生・・・・!?」

 

『ティーパーティー』や『シスターフッド』の行政官。『正義実現委員会』と部員が、先生がこんなに早く回復したのに驚くのと安堵が混ざった表情を浮かべる。

 

“皆、待たせてゴメン”

 

「先生・・・・」

 

「先生・・・・!」

 

「・・・・っ」

 

その中で、ハナコとマリーが前に出てくると、コハルが皆のポケモンが入ったモンスターボールを持って近づいてきた。

 

“ここにいてくれて、待っててくれてありがとう。ここから先は私に任せて”

 

先生は自分を待っていてくれた彼女達にお礼を言うと、後は自分に任せてと宣言した。

 

 

 

 

 

 

 

 

次に先生は、ハスミ達が寝ている病室に向かった。

 

「・・・・・・・・先生。ここは・・・・一体何が・・・・」

 

“ハスミ、良かった・・・・”

 

「・・・・はい。危うい所でしたが・・・・っ! ネギガナイト達は?」

 

“安心して、もう回復を終えてソコにボールが置いてあるよ”

 

先生が目を向けると、ハスミが漸く目を覚まし、先生は安堵し、ハスミは手持ちポケモンの事を心配すると、先生がベッドの隣の小さなテーブルに置いてあるモンスターボールを指した。

 

「そうですか・・・・ツルギや他の皆は・・・・」

 

「・・・・・・・・」

 

そして先生は、隣で寝ているツルギの方に目を向けた。

 

「・・・・・・・・?」

 

すると、目を覚ましたツルギと先生の目が合った。

 

ーーーードサァ。

 

「ーーーーぎゃああああぁぁぁぁっ!?」

 

するとツルギはベッドから盛大に転げ落ち、元気よく奇声を張り上げた。

 

「せ、せせせ先生!? ど、どうしてコチラに・・・・!?////////」

 

顔を真っ赤にしたツルギが、しおらしい態度でそう言った。

 

「あ、ツルギさん! もう動けるんですか!? 流石は『正義実現委員会』の委員長さんですね!」

 

ハナエが目を見開いて驚く。

 

 

 

 

 

 

取り敢えず、ハスミとツルギが無事なのを確認した先生は、次に助けてくれたセナとゾロアークに会いに〈ゲヘナ学園〉へと赴いた。

 

「・・・・ご無事で何よりです、先生」

 

『ゾロア』

 

“セナやゾロアークのお陰だよ”

 

「いえ、『大人』の治療は始めてでしたが、どうにかなって何よりです」

 

「先生・・・・」

 

『ブンネ』

 

すると、横になっていたチナツがパートナーのタブンネ(色違い)に支えられながら先生の元にやって来た。

 

「チナツ、まだ動いてはダメです。横になってなさい、先輩命令です」

 

「私、今は『風紀委員会』所属ですが・・・・」

 

「今から『救急医学部』に戻って来ても良いのですよ? 質の良い死た・・・・いえ、負傷者達に好きなだけ触れますし」

 

「いえ、私は別に・・・・丁重にお断りしておきますね」

 

チナツは元『救急医学部』だった為かセナと面識があり、セナは戻って来ても良いと言うがチナツは断った。

 

「ーーーー先生・・・・」

 

すると、チナツと同じくベッドで横になっていたアコが、マニューラとソーナンスに支えられながら立ち上がり、先生に話しかけてきた。

 

「アコちゃんまだ動いちゃ、ぐっ・・・・!」

 

イオリとヘルガーも身体に包帯を巻いている。どうやら『ユスティナ聖徒会』との戦闘で負傷していたようだ。

 

“アコ達もイオリとヘルガーも、怪我は兎も角無事で良かった・・・・”

 

「委員長がいなくなってしまい・・・・部屋にも居らず、連絡もつかなくて・・・・ただ、ドンカラスのヤミカラス達は自治区の見回りを続けていますから、多分何処かにいる事は間違いないのですが・・・・ヤミカラス達に聞いても知らぬ存ぜぬの態度で・・・・先生、委員長を・・・・」

 

“うん、任せて”

 

「・・・・はい、よろしくお願いします」

 

『ソーナンス!』

 

アコが先生に頼み事をするだなんて余程ヒナの状況が悪いと言う事である。先生は頷くとアコも小さく頭を下げ、ソーナンスもいつもの見切りをした。

 

 

 

 

 

 

その後先生は、ハナコとコハルからヒフミが見つかったと連絡を受け、ミライドンを急がせて『トリニティ自治区』に戻ると、ガルーラに背中を擦られながら立っているヒフミを見つけた。

 

「先生・・・・」

 

“ヒフミ・・・・”

 

「先生、アズサちゃんが・・・・」

 

「・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・」

 

今にも泣きそうなヒフミの肩に、ハナコとコハルが手を置いた。

 

「アズサちゃんが1人で戦っています・・・・まだ、1人でずっと・・・・」

 

“・・・・うん”

 

予想通り、アズサは1人でこの事態を止めようと奮闘しており、ハクリューは未だ行方不明との事だ。

 

「『居場所』が違うんだ、って・・・・ソレで私、何も分からなく・・・・こんな大変な事になってしまって・・・・もう、私みたいな『普通の学生』にできる事なんて・・・・」

 

『・・・・・・・・』

 

「「・・・・・・・・」」

 

ガルーラ達とハナコとコハルは、ヒフミの『普通の学生』宣言に、少し目が半眼になってしまう。

 

「どうすれば、アズサちゃんを・・・・だって、私は・・・・」

 

『〜〜〜〜! ガルラァー!!』

 

ーーーーゴンンッ!!

 

「あいたぁっ!!? な、何するのぉガルーラ・・・・!」

 

『ガガルルガルガーラ! ガルル、ガルガルルルーラガルガ!?』

 

我慢していたようなガルーラが、ヒフミの脳天にゲンコツを振り下ろすと、腰を落としたヒフミが涙目になってガルーラを見上げると、ガルーラは腰に手を当て、「いつまでウジウジしてんだい! ヒフミ、アンタはアズサをこのままにしていいと思ってんのかい!?」と言いたげに声を上げた。

 

「で、でも・・・・」

 

「・・・・・・・・」

 

「そうだよ! 放って置く訳にはいかないでしょ!?」

 

『ヘラクロス!』

 

ヒフミとハナコが懊悩しているようだが、コハルとヘラクロスはガルーラに同意した。

 

「コハルちゃん・・・・」

 

「立ち位置なんて関係無い! わ、私は知ってる・・・・! 1人でいる事とか、置いてかれる事とか、ソレが凄く悲しいって! だから、アズサを1人にさせられない・・・・!」

 

「・・・・はい。そう言うのは、寂しいですから」

 

勉強ができないから置いていかれたコハルと、優秀過ぎる故に1人になってしまったハナコだからこそ、今のアズサが感じている『悲しさ』と『寂しさ』を理解しているのだ。

 

“ーーーーここまでずっと、ヒフミが引っ張って来てくれた”

 

「・・・・?」

 

“皆の頑張りは勿論だけど、ヒフミが此処まで頑張ってくれたから。例え『平凡』でも、自分達の目指すものを諦めなかったから”

 

「私は頑張った。でもそのお陰で、アンタが沢山の面倒な事とか、『部長』として色んな事をしてくれたのも・・・・そのお陰で頑張れたのも、ちゃんと知ってる」

 

「そうですよ。ヒフミちゃんが諦めずにいてくれたから、私は今もこうしてここにいられるんです」

 

「コハルちゃん、ハナコちゃん・・・・」

 

先生とコハルとハナコは知っている。『補習授業部』の『部長』として、ヒフミが皆を頑張って纏めて、無事に『退学』の危機を乗り越える事ができた事を。

 

“だから大丈夫。どうしても分からない時は、私もいるから。今はダメだとしても。一緒に悩んで、相談して、解決しよう”

 

「・・・・・・・・はい、ありがとうございます。私も学びました。諦めません、いつまでも悩みません」

 

ヒフミは涙目になった目を拭い取り、顔を上げて立ち上がった。

 

「私は、私にできる事を・・・・!」

 

『ガルラ!』

 

『カルッ』

 

「ありがとうガルーラ。いつも元気付けてくれて。でも、もうちょっと穏やかなやり方でやってほしいんですが」

 

『ガッガッガッガッ!!』

 

母ガルーラはヒフミの訴えを豪快に笑い飛ばした。コレはヒフミが落ち込む度にゲンコツが下ろされるようで、思わず苦笑してしまう。

そしてヒフミは皆に自分の想いを伝える。

 

「・・・・アズサちゃんを助けに行きます」

 

“・・・・ヒフミは、いつもそうだったもんね。私も同じ様に、ヒフミを手伝うよ”

 

「ーーーーでは、皆で行きましょう」

 

「ーーーーう、うん! 友達を、助けないと・・・・!」

 

「アズサちゃんに会って、今度こそ・・・・」

 

と、ソコでヒフミが言葉の続きを口にしなかった。ソレは、アズサに会って伝えなければならないからだ。

 

「・・・・言いたい事は、伝えないとですね?」

 

「・・・・はい。しっかり、伝えないといけません。『同じ世界』にいられないだなんて、私は・・・・」

 

「ヒフミ・・・・?」

 

“『友達』でも、言わないと伝わらないからね”

 

「・・・・はい! 今度こそ、ハッキリ言ってみせます・・・・!」

 

「そうですね。私も、ちゃんとすぐ側にいます」

 

「えっと・・・・と、兎に角行くんでしょ? じゃあほら、早く!」

 

“待って皆。コレから『アリウススクワッド』と戦うかも知れないからーーーー皆には、『コレ』を渡しておくね”

 

先生はミュウツーに届けてもらった『アタッシュケースの中身』を、皆に見せた。

 

「えっ?」

 

「まぁ」

 

「嘘!? コレって!」

 

“(コクリ)”

 

ソレを見たヒフミ達は目を見開き、先生は頷いた。

 

 

 

 

ーセイアsideー

 

「皆を集めて、話して・・・・そして繋がって、理解する。〈トリニティ〉と〈ゲヘナ〉の生徒達が、徐々に・・・・」

 

『夢の世界』で見ていたセイアは、長年犬猿の仲であった〈トリニティ〉と〈ゲヘナ〉が、いつの間にか纏まっていく状況を見ていた。

 

「〈アリウス〉の『憎しみ』がこもった『ユスティナ聖徒会』が、〈トリニティ〉と〈ゲヘナ〉に進軍して来ている今。誰かに助けを求めて、求め合って・・・・そうして少しずつ、寄り添おうとしている」

 

そしてセイアは、『彼女』の状況に目を向ける。

 

「ーーーーそんな中、『アリウススクワッド』を防ごうとするアズサ『達』は・・・・・・・・『古聖堂』」

 

アズサは今、其処に向かっていた。

 

「『楽園』の名前が掲揚されながら、今は『廃墟』となったあの場所へ。アズサ、『アリウススクワッド』。そして先生もまた、ソコへと向かう・・・・」

 

 

 

 

ーサオリsideー

 

雨が降りしきる『古聖堂』に、『アリウススクワッド』は集結していた。

 

「・・・・・・・・」

 

『・・・・・・・・』

 

ミサキとブーバーン。

 

「・・・・・・・・」

 

『・・・・・・・・』

 

ヒヨリとアローラガラガラ。

 

『・・・・・・・・』

 

「アズサ・・・・」

 

ヘルガー(色違い)が見据える中、サオリが凄まじい怒気を孕んだ瞳でその少女、白州アズサを見据えていた。

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

アズサはボロボロの姿をしていたが、その眼には未だに力強い光が宿っており、その眼を見るサオリの目つきは、更に険しくなっていく。

 

「よくも、よくも姫を・・・・! 絶対に許さない・・・・!」

 

「私は、サオリを止めて見せる。刺し違えてでも」

 

「お前にそんな事ができるか!! 私達の『怒り』に、『憎しみ』に、『恨み』に! 耐えられると思うのか!!」

 

「・・・・私は、『人殺し』になる。しかし・・・・1人じゃない!!」

 

ーーーーヒュゥゥゥゥ・・・・ドシィィィィンン!!

 

アズサがそう言った瞬間、雨雲の空から大きな影がアズサの隣に現れた。

太いく胴体にガッシリとした四肢が生え直立歩行をし、背中からは皮膜の小さな羽も生えており、西洋のドラゴンをずんぐりむっくりの体型にし、山吹色の体色に、頭には触角を携え、クリンとしたつぶらな瞳をしているファンシーなドラゴンの見た目をしたポケモンはーーーー。

 

「! 『カイリュー』だと!?」

 

『クォオオオオオオオオオオオオ!!』

 

そう。ソレは『ドラゴンポケモン・カイリュー』であった。

アズサが手持ちポケモンとしてハクリューを所持している事は知っていたが、まさかこんな短期間でカイリューに進化するだなんて思いもよらず、サオリは眼を見開いた。

カイリューのような『ドラゴンタイプポケモン』を、『最終進化させた個体』を所持するトレーナーは、『ドラゴンタイプ』を主体に扱う〈山海経高級中学校〉でも極一部、ソレこそ『上層部クラス』でもなければ進化を止める『かわらずのいし』を所持する事を義務付けられている。

『ドラゴンタイプ』は最終進化すると、攻撃力だけでなく凶暴性も高くなる個体も多くおり、もし力不足のトレーナーが最終進化をさせてしまい、そのポケモンの制御ができなければ周囲に甚大な被害を出してしまうからだ。中にはカイリューのような比較的に大人しい個体もいるが、ソレでも『ドラゴンタイプの最終進化』を所持するには、その生徒が所属する学園からの『許可』が必要となるのだ。

しかもソレがまさか、アズサの手持ちポケモンとなっているとは。

 

「・・・・まさか、お前が手持ちポケモンを最終進化させるとはな」

 

「ハクリューは、私を探し続けてくれた。身体もボロボロになりながらも、そして何があっても、私に付いていくと言ってくれた。もう、戻れないのを覚悟で!」

 

「そうか。そのポケモンがお前に『絆』等という『無意味なもの』を教えた『希望の1つ』、か。良いだろう。ならば諸共に潰してくれる・・・・!」

 

サオリがそう言うと、『ユスティナ聖徒会』と、アンノーン、シンボラー、オーベムの『ミメシス』が集まってきた。

 

「ーーーーアズサぁっ!!」

 

「ーーーーサオリぃっ!!」

 

『ーーーークォォォォ!!』

 

『ーーーーヘルガーッ!!』

 

サオリとアズサが駆け出し、カイリューが羽を広げて翔び、ヘルガー(色違い)が牙を剥いて飛び掛かった・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー先生sideー

 

時間は少し遡り、先生がアコからヒナの事を頼まれ、ヒナを探そうとした時、1匹のヤミカラスが現れ案内されると、〈ゲヘナ学園〉の学生寮に到着し、ある部屋に案内され、ヤミカラスが部屋の扉をカツンカツン、と、まるでモールス信号のように突っついた。

 

ーーーーガチャ・・・・。

 

『・・・・ゴロ』

 

“ゴロンダ・・・・!?”

 

『ピカ?』

 

扉を開いて現れたのは、ヒナの手持ち『四獣』の1体であるゴロンダであった。

ゴロンダは案内役のヤミカラスにご苦労と労いながら、『手製のポフィン』が入った袋を手渡し、ヤミカラスは敬礼して飛び去ると、先生とピカチュウはゴロンダに手招きされて部屋に入った。ゴロンダが進化前のヤンチャムのイラスト入りのエプロンを掛けているが、ソレよりも左腕と右足がギプスが着けられ、エプロンの後ろ姿は包帯で身体を何枚にも巻かれ、残された右腕に松葉杖を使い、何とも痛々しい姿を晒していた。

 

“ありがとう、ゴロンダ”

 

『ピカチュウ』

 

先生は知っている。ゴロンダはあの大混乱の際、ヒナを先生の元へ行かせる為に、〈アリウス〉を相手に孤軍奮闘していた事を。

 

“ゴロ、ゴロンダ”

 

ゴロンダは後ろにいる先生とピカチュウに目をやり、「気にすんな、コレが俺の仕事だ」と言わんばかりにニヒルに笑った。

そしてゴロンダに案内され、部屋に入るとソコには、ベッドに蹲っているヒナと、そのヒナを囲うように横になるアブソルも身体や頭に包帯を巻いていた。そして窓際では、ヤミカラス達からの報告を聞いて頷き、指示を飛ばしているドンカラスの姿があった。

 

『ゴロロゴロ』

 

ゴロンダはソッと先生に、「ヒナを頼む」と小さく呟き、先生は小さく頷くと、蹲っていたヒナが顔を上げ、先生の存在に気が付いた。

 

「っ、先生・・・・無事だった、のね・・・・良かった・・・・」

 

“うん・・・・”

 

「どうやってここを・・・・? まあ先生には、今更か・・・・」

 

“ヒナ・・・・”

 

ヒナはいつもの凛々しい制服姿ではなく、寝間着で綺麗に整えられていたフワフワとした純白の長髪は無造作にボサボサで、表情と曇っており、憔悴しきっているのが見て取れた。

 

「私は・・・・もう・・・・ごめん、先生・・・・私には、もう無理。私はもうダメ・・・・だから・・・・ガッカリさせて、悪いのだけど・・・・今は、帰ってほしい・・・・私はもう、引退したと思ってもらって・・・・」

 

“・・・・ヒナ。違うよ。私はここに、ヒナ達にお礼を言いに来たんだ”

 

「お、お礼・・・・? どうして・・・・」

 

ヒナは『エデン条約』が失敗してしまい、完全に塞ぎ込んでしまって、先生ですらも拒否しようとしていた。しかしそんなヒナに対し、先生はお礼を言いに来たと言ってヒナは首を傾げる。

 

「先生を助けたことについてなら、気にしなくて良い・・・・。ソレは当然私がやるべき事で、ソレにあの時私は・・・・」

 

“ううん。いつも頑張ってくれてありがとうって。もう頑張り過ぎなくても良いって、早く言ってあげたかった”

 

「・・・・!」

 

“ヒナは、ずっと頑張ってたから”

 

「・・・・・・・・」

 

ヒナはあの混乱に中で先生を助けたのは当然だと言うが、先生さお礼を言いたかったのはその事ではなく、いつも〈ゲヘナ〉の為に、先生の為にに頑張っている事のお礼お、もう頑張り過ぎなくて良いと言おうとしていた。

 

“それを言いたかった。だから休んでて、後は私達が何とかする”

 

『ピカチュウ』

 

先生とピカチュウは、後の事は自分達でどうにかすると言った。

 

「ま、待って、何とかって・・・・でも、私は・・・・私・・・・」

 

少し動揺したヒナは絞り出すように声を発する。

 

「・・・・私は・・・・“小鳥遊ホシノみたいには、なれない”・・・・」

 

“・・・・ホシノ?”

 

「私はあの、〈アビドス〉の副会長みたいな・・・・『強い人』じゃない・・・・」

 

何故か〈アビドス〉ホシノの名を口にした。以前の『アビドス対策委員会』と『ゲヘナ風紀委員会』の遭遇戦で、ヒナはホシノの事を知っている風だった事を思い出した。

 

「『アビドスの生徒会長』・・・・その遺体を発見したのは、小鳥遊ホシノだった。スゴく、物凄く大切な人だった筈なのに・・・・」

 

“そう・・・・なんだね”

 

「アレだけの苦しみを味わっておきながら、彼女はまだ〈アビドス〉で戦ってる・・・・私には、そんな事できない・・・・」

 

“・・・・・・・・”

 

「私は、そこまで強くなれない・・・・あの瞬間私は、もう・・・・」

 

ホシノは『アビドスの生徒会長』の遺体の第一発見者だったらしく、そんな苦しい思いをしたにも関わらず、ホシノは今でも〈アビドス〉を守る為に戦っているのである。

ヒナはそんなホシノのように、苦しい思いをしても戦う強さが、自分には無いと言う。

 

“ヒナ・・・・”

 

「ーーーー私だって頑張った!!」

 

“うん・・・・”

 

「いつも頑張って、どうにかしようとして・・・・分かってもらえなくても、それでも・・・・」

 

そしてヒナは先生の前で始めて感情を爆発させた。それを先生はただ静かに頷きながら聞き、ピカチュウやボールに収まっているルカリオ達も、ヒナの頬に流れる涙を静かに舐めているアブソルや、座ってヒナの気持ちを聞いているゴロンダや、窓際にいながらもヒナの言葉に耳を傾けているドンカラスもだ。

 

「けど私は、大事な所で・・・・先生は、ズルい・・・・私はこの瞬間もう、ダメで・・・・なのに、そんな事を言って・・・・」

 

そう言うと、ヒナは上目遣いに先生を睨んだ。

 

「私だって、小鳥遊ホシノや『補習授業部』みたいに・・・・先生に構ってほしかった、褒められたかった!!」

 

“・・・・・・・・”

 

「・・・・あっ」

 

『『『(グッ!!)』』』

 

ヒナは先生をズルいと感じ、先生に構って欲しかったと本音の気持ちを打ち明け、アブソルとゴロンダとドンカラスは、何故か小さくガッツポーズを取った。

 

「ご、ごめん・・・・今のは、その・・・・」

 

“ーーーーヒナ、本当にごめん!”

 

「!?」

 

失言だったと謝罪しようとするが、先生はその場でヒナに土下座した。

 

“ヒナも今度、補習授業しよう! ソレで成績が良かったらもちろん、沢山、イヤ目一杯褒めるから!”

 

「・・・・え、いや私、成績は元々良いし・・・・だいたい満点だけど・・・・」

 

“それとも『水着パーティ』する!? すぐにでも準備するよ!”

 

『『『(ギュピーン!)』』』

 

「えっと、それも別に・・・・」

 

補習授業をしようと先生は言うが、ヒナは元々成績超優秀な為に必要無いと言うと、先生は『水着パーティー』をしようとするが、あまり乗り気で無いようだが、何故かアブソル達は目を光らせ、アブソルはコッソリとヒナから離れ、ドンカラスもコッソリと窓際から離れ、ゴロンダもコッソリと離れて本棚から数冊の本を取り出す。

 

「・・・・はぁ。ふふっ・・・・」

 

だが、ヒナは少し安心したのか、漸く、イヤ、先生は始めてヒナの『笑顔』を見た。

 

「・・・・所で先生、実は私に『頼みたい事』があるんじゃない?」

 

“でも、ヒナは引退したって考えると・・・・”

 

「・・・・それは言ってみただけ。少し、皆に甘えてみたかっただけ」

 

そしてヒナは、先生が自分に頼み事があるのではと尋ねるが、先生はヒナが引退すると言ったので『頼み事』をするのに気が引けるようである。

その事にヒナはただ、皆に甘えるために言っただけだと答えるのであった。

 

“・・・・所でヒナ、『水着パーティー』の事だけど”

 

「先生。ソレは遠慮したいんだけど?」

 

“でもアブソル達は乗り気だよ?”

 

「・・・・・・・・え??」

 

ヒナがいつの間にかいなくなっている『家族』を探して自室を見回すと、部屋の隅でアブソルとゴロンダとドンカラスが最新版のファッション誌の水着のページを開き、議論を繰り広げていた。

 

『ゴロゴロゴロゴロンダ!!』

 

『ソル! ソルルソル!』

 

『ガァ〜・・・・ガァガァ!!』

 

『『アブソル!/ゴロロロ!』』

 

通訳すると、「ーーーーヒナにはこの可愛い系の水着が似合っている!」、「ーーーーいや! ヒナには清楚系の水着だ!」、「ーーーー分かってないね〜・・・・ヒナはこっちのセクシー系で攻めるべきだよ!!」、「「そんなほぼ紐の水着は攻めすぎだろうが!」」と言わんばかりに議論が白熱していた。

 

“ね?”

 

「・・・・・・・・・・・・ハァ」

 

まさか自分の水着でこんなにアブソル達が熱く議論している事に、ヒナは弱冠頭痛を堪えるように頭を抑える。

 

「皆。私は『水着パーティー』には出ないわよ」

 

『『『!!!???!??』』』

 

「いや、そんなこの世の終わりみたいな貌しても出ないから」

 

ヒナの1言に、アブソル達は顔面崩壊レベルに崩れた。

そんなアブソル達に、ヒナはやれやれと肩をすくめながら近づき、アブソルに抱き着いた。

 

「ーーーーありがとうアブソル。いつも支えてくれて」

 

『ソルっ♪』

 

アブソルは前足でヒナを抱き締めて笑みを浮かべると、次にヒナはゴロンダを抱き締める。

 

「ーーーーありがとうゴロンダ。傷だらけになってまで守ってくれて」

 

『ゴロン♪』

 

ゴロンダは身体に力を込めると、手足のギプスが弾け砕き、ヒナの身体を抱き締め返した。

そして次はドンカラスに抱き着き、ドンカラスは両の羽を広げてヒナを包み込む。

 

「ーーーーありがとうドンカラス。私が立ち直るって信じて情報を集めてくれて」

 

『ガァガァ♪』

 

そしてドンカラスから離れたヒナは、ハイパーボールに収まっている『4人目の家族』に話しかける。

 

「ーーーーありがとうルギア。先生を守る為に力を貸してくれて」

 

ーーーークン、クン・・・・。

 

ヒナの言葉に応えるように、ハイパーボールが揺れ動いた。

ソレからヒナは浴室に赴き、先生は『かいふくのくすり』を使い、アブソルとゴロンダは完全回復して包帯を脱ぎ、ゴロンダが先生にサンドイッチの材料を出すと先生は頷きサンドイッチを作った。

少しして浴室から出て準備を万全に整えたヒナに、先生がサンドイッチを渡すと、ヒナはお腹が小さく鳴り、先生のサンドイッチを味わいながは食べた。

 

「ーーーー行こう、先生」

 

そして、サンドイッチを食べ終えた時、ソコにいたのは先生が良く知る・・・・『ゲヘナ風紀委員会委員長』であった。




次回、青春と絆が輝く。
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