ー先生sideー
ある日、『シャーレ』で仕事をしていた先生に『ヴェリタス』からの連絡が届く。
先生の目の前には、『ヴェリタス』の『小鈎ハレ』。『音瀬コタマ』。『小塗マキ』が映像通信をしてきた。
“急にどうしたの?”
《ーーーー先生聞いて! 『世紀の大発見』があって!! ソレがスッゴくてさ・・・・!! キヴォトス史に残るような歴史的な発見かも知れないの!!》
“・・・・歴史的な発見?”
マキが興奮気味に『世紀の大発見』があったと告げ、先生は首を傾げる。
《マキ、幾ら何でもソレは大袈裟・・・・》
《ハレの言う通りです。『変わったもの』を発見したのは事実ですが・・・》
そんなマキにハレとコタマは呆れたように呟くと、コタマが改めて説明した。
《普段、〈ミレニアム〉で見つかるものの大半がガラクタですから、統計的にコレもそうである可能性が高いです》
《もう〜! 皆ちょっとくらいロマンを持った方がいいんじゃない? 色んな人に聞いても見たことないって言ってたし》
《まあ、そうだね・・・・》
《マキの言い分にも一理ありますが・・・・》
“一体何を見つけたの?”
少しだけ納得を示すハレとコタマを見て、先生は『ヴェリタス』が発見したものについて問うてみた。
《うーん・・・・ちょっと言葉だと説明し辛い》
《マキの言う通り、今まで見た事が無いような物体で・・・・》
ハレとコタマも、どう説明すれば良いのか分からず難しげに眉根を寄せている。
《私達では判断が難しい為、先生に直接お話し願おうかと》
《そう言う訳何だけど・・・・先生、時間大丈夫?》
“大丈夫だよ”
《じゃあ、『ヴェリタス』の部室で待ってるね》
慎重な性格をしたハレとコタマの様子から、何か起こるかも知れないと思い、先生は『ヴェリタス』に行く事を決めた。
《やったー! 先生が来るならパーティーしよう!》
《はい。ピザを注文するとしましょう》
《いや、大袈裟過ぎ・・・・》
マキとコタマが騒ぎ出しハレが呆れるのを見てから、先生は通信を終えると、ピカチュウを肩に乗せ、ルカリオとイーブイ(色違い)、マグマラシとベイリーフとアリゲイツの『2代目御三家』をモンスターボールに納め、『シャーレ』の防衛をバシャーモとジュカインとラグラージの『3代目御三家』に任せ、ミライドンに乗って『ヴェリタス』のある〈ミレニアムサイエンスクール〉へと向かった。
◇
『ミレニアム自治区』に到着し、ミライドンをボールに戻してから〈ミレニアムサイエンスクール〉の校舎に入り、『ヴェリタス』の部室の前に到着した。
「ーーーーあっ! アリス、先生とピカチュウを発見しました!」
『ーーーーデデン!』
『ピカチュウ!』
“アリス、デデンネ・・・・ソレに”
アリスとデデンネと会ったと思ったら、モモイ達『ゲーム開発部』が全員現れた。インドアのユズが出てくるなんて珍しく思える。
「・・・・あれ?」
『マイ?』
「こ、こんにちは・・・・」
『デンチュラ』
「やっほー先生!」
『プラプラ〜』
“やほ”
『ピカ』
肩にマイナンを乗せたミドリが先生がいる事に首を傾げ、デンチュラの後ろにいるユズ、頭にプラスルを乗せたモモイが先生に挨拶した。
「・・・・どうして先生達がここに‹『ヴェリタス』›に?」
“『ヴェリタス』に呼ばれてね・・・・『ゲーム開発部』も?”
「うん! マキが面白い物見つけたらしくて!」
「・・・・もしかしたら、何かインスピレーションを貰えるんじゃないかと思って」
「貴重なイベントが発生するかも知れないので、今日はユズとデンチュラもいます!」
「はい・・・・い、良いアイデアに繋がるなら・・・・でも、こ、ここまで来るのは・・・・ちょっと・・・・凄く、大変だったけど・・・・」
『チュララ・・・・』
『新作ゲーム』の開発は未だに難航しているようで、『ヴェリタス』が発見したものを見てヒントにならないかと『ゲーム開発部』がやって来たようだが、外に出るのが苦手なユズは顔を青ざめさせてしまうも、デンチュラが「頑張れ」と言いたげにユズを見上げ、後ろに回って背中を支える。
「後ちょっとだよ、ユズ!」
『プラァ!』
「うん、頑張ろう」
『マァイ〜』
「ユズが倒れない様、アリスがシッカリ支えます!」
『デデン!』
「デンチュラ・・・・み、皆、ありがとう・・・・」
パートナーと仲間達に支えられながら、ユズは1歩ずつ床を踏み締め進んでいく。
“ーーーーじゃあ、入ろうか?”
ーーーーコンコンコン・・・・。
「ーーーーはーい! どうぞー!」
『ヴェリタス』の部室に辿り着き、先生はドアをノックすると、ドアの向こうからマキの声が響き、先生がドアを開けた。
部室の中は相も変わらず薄暗い部屋に幾つものモニターとPCが置かれて部屋であった。
「やっほー! お邪魔します!」
『プラスル!』
「途中で合流したパーティーメンバー、先生達も一緒です!」
『デデン!』
モモイとプラスル、アリスとデデンネが元気良く挨拶し、ミドリとマイナンとユズとデンチュラも入ると、肩にパチリスを乗せ、傍らにポリゴンを控えさせたハレ、ドーブルとポリゴンを側に置いたマキ、ストリンダー・ローとポリゴンを控えさせたコタマ、『ヴェリタス』一同が出迎える。
「ちょうど間に合ったみたいだね」
「やっほ〜! 久しぶりだね」
「(ペコリ)」
“やっほ〜”
『ピカ〜』
「それで、ハレ先輩。『例のブツ』って?」
「ああ、ソレなら・・・・コレ」
モモイから発見したものを先生達や『ゲーム開発部』に見せた。
ーーーーソコにあったのは、マルマイン位の大きさをした丸型の、まるで眼球のような機械に、その機体を支えるように昆虫のような4本の足のような部品に、眼球から触手のようなコードが幾つも付いた、何とも言えない不気味なロボットであった。
良く見ると、『ヴェリタス』の部室のアチコチに同じ型のロボットが5体も置かれていた。
“コレは・・・・何処にあったの?”
『ピィカァ〜・・・・』
あまりに不気味なロボットを不審に思って先生が聞き、ピカチュウが頬にピリピリっと、電流を迸らせていた。
「全ては、『ミレニアム学区』の郊外で発見されたものです」
「コレで全部じゃなくて、少なくとも後20体はあったよ!」
“何だか外見が・・・・”
「何か、下手なゴーストタイプのポケモンよりアレな見た目してるよね」
「まぁ、ロボットっぽくあるけど・・・・」
先生の問いにコタマとマキが答え、ロボットの不気味さにマキも同意するように言うと、ハレも何とも言えないコメントを言う。
「でもちょっと変だよね? 〈ミレニアム〉で作ったドローンの中に、こんな形状のは無かったし」
「かなり個性的な見た目です」
「うーん、個性的と言うか・・・・なんか・・・・」
“(奇怪な感じと言うか・・・・)”
『ヴェリタス』も、このロボットの不気味な見た目に難色を示し、先生とピカチュウも訝しげに見据えていた。
すると、今まで黙っていた『ゲーム開発部』も口を開いた。
「び、ビックリしたー! 何か想像してのと全然違うんだけど!」
『プラ!』
モモイと頭に乗せたプラスルが目玉ロボットに恐る恐ると近づく。
「コメディー映画だと思って見てたら急にホラーになったみたいな・・・・! 何これ!!」
『プラスル!』
「コレって、本当に〈ミレニアム〉で作られたロボット・・・・なのかな?」
『チュラ・・・・』
「ハレ先輩、コレって今どんな状態何ですか? 頑張ったら起動させる事って出来たり・・・・」
『マイマイ?』
モモイとプラスルを皮切りに、ユズとデンチュラ、ミドリとマイナンも目玉ロボットを見て呟く。
「・・・・・・・・・・・・」
『デデン?』
ただ1人、アリスだけは目玉ロボットを黙って見据え、デデンネはそんなアリスに小首を傾げて見ていた。
「私達の方でも一通り調べて見たんだけど」
「結構綺麗だったから、起動できないかな〜って思ったんだけどね。でも、結局何も見つけられなかったんだ」
“と言うと・・・・?”
「調べた結果、電源ボタンはおろか接続ポートすら見つかりませんでした」
「それ以前に、表面に継ぎ目すらない」
どうにか解析しようとしたのだが、あまりに自分達の技術とは違うそのロボットに『ヴェリタス』は困り果てているようだ。
「開ける事ができないから、起動しない理由はハードなのかソフトなのかーーーーそもそも、本当に故障なのかさえも分からなくて・・・・」
と、ハレが推察を述べているその時、アリスがコッソリと目玉ロボットに近づくが、先生は『ヴェリタス』の話を聞き、モモイ達も耳を傾けており、デデンネ意外は気づいていなかった。
ーアリスsideー
「ーーーーだから先生を呼んだんだ」
「一応危険物だった場合を考慮して、シャーレに協力してもらおうと思いまして」
「そう言う意味だと、『ゲーム開発部』を呼んだのはちょっと違う気がするけどね」
「あははっ。まあ、ついでって事で。こう言うのは皆で見た方が面白いし?」
『ヴェリタス』の話を聞かず、アリスは目玉ロボットに近づく。
「・・・・・・・・・・・・」
『デデン?』
1言も発さず、目玉ロボットをジッと見据えるアリスに、デデンネが「どうしたの?」と問い掛けるが、アリスはただ目玉ロボットを見据え動かなかった。
ー先生sideー
「どう、先生? 何か分かったりする?」
『プラ?』
“・・・・うーん、分からないかも”
『ピカッ・・・・!』
モモイの言葉にそう返答すると、ピカチュウがガクッとなる。
「やっぱダメかぁ。先生ならもしかしたら・・・・って思ったんだけど。『部長』に聞くしかないかなぁ・・・・確か、『オカルト』とかそう言うのが好きだったし」
「『オカルト』かぁ・・・・」
「もしくは『副部長』とか? 『副部長』なら情報とか見つけてくれそうなのになぁ〜!」
「今ここにいない人の事を話しても仕方ないですよ」
「ここにいないって言うか、『部長』はそもそも全然来てないし」
“『部長』って、『ヒマリ』って名前だったけ? 『副部長』”
「ああ、『副部長』は3年の『各務チヒロ』。『色違いのポリゴン2』と『ジバコイル』をパートナーにしているんだ」
「・・・・あ」
「どしたの? 何かあった?」
先生が『ヴェリタス』と話をしていると、ずっと黙っていたアリスが声を発し、モモイが聞くと口を開く。
「アリス・・・・アリス・・・・見た事あります」
「アリスちゃん・・・・?」
「・・・・コレ、は・・・・」
アリスが目玉ロボットを知っているような事を発し、フラフラとした足取りで目玉ロボットに触れたその瞬間、
ーーーーブゥゥン・・・・ピピピピ・・・・ピコンッ。
目玉ロボットの中央部が光り、更に眼球の周りのラインにも光出し、目玉ロボットが起動した。
「え!? 何!? 電源入った!?」
『プラプラ!?』
「えっ!?」
『バチッ!?』
「え? 何々!?」
『ドブル!?』
ーーーーピロロロロロロロ・・・・。
「この音・・・・お姉ちゃん、ゲーム機の音出てるよ?」
「え? あ、本当だ。今まで起動しなかったのに・・・・どうしてだろ」
アリスの手によって目玉ロボットが動き出した事に一同は驚き、そして何故かモモイの持ってきたゲーム機、以前『Divi:Sion System‹ディビジョンシステム›』のデータを移した時に使ってから起動しなくなったゲーム機が突然起動し、モモイとミドリは不思議そうな顔をする。
「ま、待って・・・・アリスちゃんの様子が・・・・おかしい」
「アリス・・・・?」
目玉ロボットの起動に全員が驚く中、アリスの異変に気付いたのはユズであった。
「・・・・・・・・」
『デデン? デデン!』
アリスは目を閉じて、黙ってしまっていた。デデンネがアリスの頭を叩いたり、髪を引っ張ったりしながらアリスに呼び掛けるが、アリスは少しも反応を示さなかった。
ーアリスsideー
«私の・・・・»
“アリス?”
«私の大切な・・・・»
瞑目したアリスの頭に、『何か』の言葉が聞こえてくる。先生が呼び掛けているが、アリスはソレに反応せず、ボソッと呟いた。
「・・・・・・・・起動開始」
「・・・・アリス?」
ーーーーブゥゥゥゥン・・・・。
アリスが呟いた瞬間、他の4体の目玉ロボットも起動し、計5体の目玉ロボットがアリスに集まってくる。
「わわっ! 何で急に動くの!? コタマ先輩、何かした!?」
「マキ、違います。私は何も・・・・」
「・・・・気を付けて! 何か様子がおかしい!」
突然動き出した目玉ロボット達がアリスに集まっていくのを見て、『ヴェリタス』の生徒達は恐怖を感じめていた。
«私の大切な・・・・よ»
ー先生sideー
“一体、これは・・・・”
先生が驚くと、アリスが目をソッと開いたが、その目はいつもの色ではなくマゼンタ色に不気味に光っていた。
「・・・・コードネーム『AL-1S』起動完了」
ーーーーガチャ! ガチャ! ガチャ!!
「『プロトコルATRAHASIS』を実行します」
“・・・・!”
ーーーーズドォォォォォォォォンンッッ!!!!
アリスが『プロトコルATRAHASIS』とやらを実行すると言うと、従えたロボットを先生達に向かって仕向けてきた。
“ルカリオ! イーブイ! マグマラシ! ベイリーフ! アリゲイツ!”
ーーーーポンッ×5
『カァルォ!』
『ブィィッ!』
『マグマァ!』
『ベイベイ!』
『リゲイッ!』
咄嗟に先生がルカリオ達を出すと、ルカリオが【はっけい】を、イーブイ(色違い)が【スピードスター】を、マグマラシが【かえんぐるま】を、ベイリーフが【マジカルリーフ】を、アリゲイツが【かみくだく】で5体の目玉ロボット達を蹴散らしたその瞬間ーーーー。
「・・・・・・・・・・・・」
『デデン! デデン!!』
アリスが『レールガン・光の剣:スーパーノヴァ』のエネルギーを充填させて先生達に向けて構えており、デデンネが必死に止めるように訴えるが、アリスが気にもとめずに、『光の剣:スーパーノヴァ』のボタンを押した。
ーーーーバシュゥゥゥゥゥゥゥゥンンッ!!
“ーーーーミュウツー!!”
《はい!!!》
ボタンが押された瞬間、先生はミュウツーに指示を出し、ミュウツーが『マスターボール』の中から念動力のバリアをアリス以外の全員に、ソレも最大出力で貼った瞬間・・・・凄まじい光が『ヴェリタス』の部室を呑み込んだ。
ーーーードガァアアアアアアアアアアアアンンッッ!!!!
『ヴェリタス』の部室が吹き飛び、煙が周りを包みこんでいた。
「ーーーーゲホッゲホッ・・・・」
『バチバチ!』
『ゴーン』
「い、一体何が起きてるの!?」
『ドブル!』
『ゴーン』
「突然眠っていたロボットが起動・・・・。そして爆発が・・・・アレは、明確な攻撃です」
『リンダ・・・・』
『ゴーン』
「攻撃命令を出してたのは・・・・」
瓦礫から出てきたハレ達『ヴェリタス』が、何が起こったかを分析していると、ハレが攻撃をした張本人を見据えるーーーーアリスである。
「・・・・有機体の生存反応を確認。失敗を確認しました」
“アリス・・・・!”
「あ、アリスちゃん!?」
爆風でデデンネが吹き飛んでしまったアリスは、ソレを気に留めず、まるで初めて会ったばかりの頃、否、ソレよりも更に機械的に無感情な態度で、『光の剣:スーパーノヴァ』を構えた。
「・・・・プロトコルを再実行します。武装のリロード開始」
ーーーーガシャン! ギュィィィィン・・・・!
「また・・・・レールガンの充電を始めました!」
アリスは先生達と『ゲーム開発部』と『ヴェリタス』に再び攻撃の準備を開始する。ソレを察知した先生は、ピカチュウ達と他の生徒達やポケモン達が一斉に動き、必死でアリスを止めようとする。
「アリスちゃん!! ごめん!!! ポリゴン【でんきショック】!!! ドーブル【スケッチ】で【でんきショック】!!!」
『ゴーン!!』
『ドブル!ーーーードォブゥウウウウ!!』
最初に仕掛けたマキがポリゴンに【でんきショック】をアリスに向けて放たせ、更に相手の技をコピーするドーブルの【スケッチ】で同じ【でんきショック】を使ってアリスに向けて放つ。
ーーーーバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリ!!
「ーーーー妨害を確認、充電失敗」
「よし! 止まった!」
「・・・・妨害要素を排除します」
「・・・・え?」
アリスはレールガンの充電を止めたマキ達を標的に絞り、140キロはある『光の剣:スーパーノヴァ』を振り被る。
「マキ、危ない!!」
『パチ!』
『ゴン!』
ーーーードン!
「ーーーー!!」
『ブル!?』
『ゴン!』
ハレとパチリスと、ハレのポリゴンが、マキとドーブルとマキのポリゴンを突き飛ばし、アリスのレールガンが空を切った。
「マキ!! ハレ!!」
「ーーーープロトコルを再実行、充電を再び開始します」
ーーーーギュイィィィィン!
コタマ達がマキ達とハレ達に駆け寄ると、アリスは再びレールガンの充電を再び開始する。
「あ、ああ・・・・」
『デンチュラ!』
「い、一体何・・・・アリスちゃん! ねえ、アリスちゃん!」
『マイナー!!』
“くっ! アリス・・・・!”
『ピカ!』
『カルゥ・・・・』
『ブイブ!』
『マグマ!』
『ベイベ!』
『アリゲ!』
ユズ達とミドリ達、先生達が呼びかけるが、アリスは何の反応もせず、レールガンにエネルギーを充填しつつ、コチラにゆっくりと近づく。
“(一体・・・・どうすれば・・・・!)”
アリスを傷付けたくないからか、先生もピカチュウ達も動けずにいた。しかし、アリスは無情にボタンに置いた指に力を込めーーーー。
「発ーーーー」
「ーーーーおい、チビ。ソコまでだ」
と、その時、絶対絶命の危機とも言える状況で、聞き覚えのある声が響き、アリスの背後から、アリスよりも小柄な影が現れた。
「・・・・!!」
ーーーードン!!
その影、ネルがアリスに当身を当てて気絶させた。
「ーーーー大人しく寝てろ」
“ネル!!”
『!!』
と、ネルの登場に先生達が喜ぶと、ルカリオ達に倒された筈の目玉ロボット達が何処からともなく現れた。
「“コイツら、ここにもいやがったのか”・・・・」
“? ネル、このロボット達を知ってるの?”
ネルの目玉ロボット達の事を知っているような口振りに、先生が問い掛けると、ネルは面倒臭そうに後頭部を掻いた。
「はぁ・・・・先生、その事は後で話す。先ずは、片付けるか。おい、行くぞ」
「はーい! 部長!」
『ハピナ!』
「支援する」
『ガォ』
「ええ、後方はお任せ下さい」
『ゴロ』
ネルが後ろに目を向けると『C&C』のメンバーが、珍しく真面目な顔で武器を構え、各々のパートナーを出していた。
「先生、コイツを頼む」
“! デデンネ・・・・!”
ネルの手には、気を失っているアリスのデデンネが乗せられており、先生に手渡した。
「ここに来る途中、瓦礫の上で倒れてるのを見つけてな。先生、頼むわ」
“うん”
「さてーーーー片付けるぞ、エレキブル!!」
ーーーーポンッ!
『ブルッ!!』
先生にアリスのデデンネを託したネルもパートナーのエレキブルを出した。
ソコからは、〈ミレニアムサイエンスクール〉の『少数精鋭部隊』、『C&C』による圧倒的な掃討戦。まさに『お掃除』と呼べる程のものであった。
◇
「ーーーーコレで終わり!」
『ハピ♪』
「作戦終了」
『ガォ』
「お疲れ様でした」
『ゴローニャ』
目玉ロボット達を全て殲滅した『C&C』はいつもの雰囲気に戻り、ネルが先生に顔を向ける。
「・・・・コレで良いか? 先生」
『エレキブル』
“ネル、エレキブル、皆! ありがとう!”
「んで、何があったんだ? スゲェ音がしたから来てみたら、『ヴェリタス』の部室がボロボロじゃねぇか。ソレに、チビのあの姿は一体・・・・」
“ゴメン、ちょっと待ってね・・・・皆大丈夫!?”
ネルも状況を見て思わず行動していたようで、詳しく先生に聞こうとしたが、先生の方はその前に『ゲーム開発部』と『ヴェリタス』の皆の方が気掛かりなのである。
「うっ・・・・な、何とか・・・・」
「うぅぅぅ・・・・腰、思いっきり地面にぶつけたぁああ・・・・」
「軽口が言えるのだから、取り敢えず無事ですね」
“ソレなら良かった・・・・”
『ヴェリタス』は全員無事のようである。
がしかしーーーー。
「先生・・・・! 先生!」
すると、ミドリが涙を浮かべた顔で先生に駆け寄った。何事かと思い、先生が目を向けると、ユズが青ざめた顔をしていた。
「あ、ああ、モ、モモイ、プラスル・・・・」
“ミドリ、ユズ・・・・どうしたの・・・・?”
「お姉ちゃんが・・・・プラスルも・・・・!」
“!!”
「・・・・・・・・」
先生達とネルが目を向けると、頭から血を流したモモイとプラスルが、瓦礫に埋まっている姿があった。
◇
2日後。『シャーレ』の医務室にて、負傷したモモイとプラスルがベッドで寝かされていた。いつもは騒がしい2人が静かなせいか、その場は更に静かに、そして重い空気が充満していた。
“モモイ・・・・プラスル・・・・”
先生が呼び掛けるが、2人は全く反応を示してくれなかった。
モモイとプラスルはアリスの謎の暴走により、1番アリスの近くにいた為、バリアが一瞬遅れ、レールガンの砲撃による衝撃波で吹き飛び、意識を失った。
急いで医務室に連れてきて治療を行っても、2日が経過しても、2人の意識はまだ戻らないーーーー。
“(アリス・・・・)”
モモイ達の面倒をマグマラシとベイリーフとアリゲイツに任せ、自室に戻ってソファーに深く座る先生の脳裏に、あの時の記憶が鮮明に蘇る。
アリスの暴走と同時に動き始めた正体不明の目玉ロボットは、あっという間に『ヴェリタス』の部室を破壊してしまった。
ネル達『C&C』のお陰で事態は一応とは言え落ち着いたが・・・・。
“(あのアリスの姿は一体・・・・)”
あのおかしくなったアリスの姿を見たハレはーーーー。
【アリスのあの行動は、あのロボットと『接触』したのが原因だと思われる・・・・】
と。あの目玉ロボットが何か関係しているように話した。
そしてミドリはーーーー。
【アリスちゃんの雰囲気が変わったあの時、お姉ちゃんの『ゲーム機』が起動したんです・・・・】
と、泣きながら話してくれた。
“モモイの『ゲーム機』は・・・・確か『廃墟』から・・・・”
そうあの日、『ディビジョンシステム』を保存する際につかった『ゲーム機』であると思い至った。
“『廃墟』・・・・『コンピューター』・・・・そして・・・・『Divi:Sion System』・・・・”
先生は、以前『ゲーム開発部』の皆と切り抜けたあの『G.Bible』を巡っての騒動。あの騒動でずっと感じていた、『何者かの手の平の上で踊らされているかのような違和感』の『正体』が、徐々に浮き彫りなって来ているかのような感覚があった。
“(まさか、あの日から始まっていたのかな? アリスの暴走が起こった事も、あのロボットがその引き金になった事も、全ては私達がアリスを見つけた時から始まっていた? しかし、アリスとあのロボットの関係性は一体・・・・? 急に起動したモモイの『ゲーム機』が何か関係しているのか・・・・? 『廃墟』にあった〈Key〉と言うフォルダも、何か関係があるのだろうか?)”
考えれば考える程、どツボに嵌ってしまうような感覚がある。
“モモイの『ゲーム機』を確認して見たものの・・・・”
電源すら入らなかった。まるで元からそうであったかのように。まるで、『中身』自体が空っぽになってしまったかのように。実際、『ヴェリタス』のポリゴン達が『ゲーム機』の中に入って調べてみたが、何も見つけられなかったようだ。
“・・・・・・・・・・・・”
結局何も見つけられず、推測だけが渦巻く時間が過ぎて行った。
ーーーーロトロトロトロト、ロトロトロトロト・・・・。
先生のスマホロトムが鳴り出し、先生が電話に出るとミドリの声が響いた。
《先生・・・・アリスちゃんが・・・・》
◇
ミドリからの連絡を受けてすぐに、ピカチュウ達と2代目御三家を連れてミライドンに乗り込み、『ゲーム開発部』の部室に到着した先生は、部室の前で途方に暮れているミドリとマイナン、ユズとデデンネ、そしてユズの手に収まっているデデンネを見つけた。
「あ・・・・先生・・・・」
“アリスはどうしたの?”
「その・・・・アリスちゃんは・・・・まだ」
「部室から、出てきません」
“そっか・・・・”
「何度も呼び掛けて見ましたけど・・・・どうにも・・・・」
ネルに気絶させられたアリスが目を覚ますと正気に戻っており、暴れていた事の記憶が無く、自分がモモイを傷つけてしまった事を知ると、部室の中に引き篭もってしまったのだ。
・・・・パートナーのデデンネすらも置いて。
「こ、こんな時・・・・どうすれば良いのか、分からなくて・・・・ううっ」
ミドリとユズが泣きそうな程に悲痛の顔となってしまう。マイナンとデンチュラが慰めているが、このままではどうにもならない。
“大丈夫”
「・・・・先生」
「・・・・・・・・!」
“大丈夫。ここは私に任せて”
先生はそう言うと、ユズからデデンネを渡される。
“・・・・ふう。アリス、ちょっと入っていいかな?”
先生が問うが、アリスからの返答が無く。
“入るよ”
部室のドアを開けると、ピカチュウとデデンネだけを連れて部室の中へと入った。
部室は明かりも点けず、カーテンは閉め切った真っ暗な空間だったが、ピカチュウが少し放電して灯りとなると、部屋の隅で体育座りで蹲っているアリスの姿があった。
『デデン!』
デデンネがアリスを確認すると、先生の手から離れようとするが、先生は「待って」と言わんげに優しく握ってデデンネを止めた。
“ーーーーアリス”
先生の言葉を聞いて、アリスはビクッと身体を震わせた。
“・・・・大丈夫?”
な訳ないと分かっていても、先生は他にアリスへの言葉が思い浮かばず、取り敢えず言ってみた。
「・・・・・・・・・・・・」
漸く顔を上げたアリスのその貌は、涙で目を腫らし、クシャクシャになった顔であった。
“ご飯も食べないでずっと篭もってるって聞いたよ”
「せ、先生・・・・」
“デデンネも寂しがってるよ? 皆も心配してるよ、行こう・・・・?”
『デデン! デデン!』
デデンネがアリスの側に行きたそうにしているが、アリスは首を横に振って顔を俯かせる。
「アリスには、できません」
“・・・・どうしてかな?”
「アリスは・・・・アリスの・・・・せいで・・・・アリスの・・・・せいで・・・・モモイが怪我をしました・・・・」
“アリス・・・・”
「全部アリスが・・・・やった事です」
アリスは暴走してモモイを傷つけてしまった事を知らされ、ショックを受けてしまって周りの皆との関わりを絶とうとしているようだ。
「どうして、こうなってるのか・・・・アリスにも・・・・分かりません。あの時・・・・『何か』が・・・・まるで・・・・まるでアリスの知らない『セーブデータ』が、アリスの中にあるかのような・・・・」
“(・・・・あ)”
アリスの話を聞いて、先生はユズとデンチュラを連れて、再び『ゲーム開発部』の皆で『廃墟』に行った時の事を思い返した。
【アリスの記憶にはありませんが・・・・まるで『セーブデータ』を持っているみたいです。この身体が、反応しています。例えるなら、そう、チュートリアルや説明が無くても進められるような・・・・或いはまるで、何度もプレイした事のあるゲームを遊んでいるかのような・・・・」
あの時、アリスに導かれる形で『Division Systems』と〈Key〉を知った。モモイの『ゲーム機』もあの時に使われていた。
「アリスの身体が、反応しました。動きました。あの時、アリスが何をしたのか・・・・何も、思い出せませんが・・・。それでも1つ、確かなのは・・・・アリスが・・・・アリスが・・・・」
アリス自身は暴走していた時に意識と記憶は無かったようで、身体が勝手に動いたと認識しているようだ。
『デデン!』
「アリスが、モモイを、プラスルを・・・・!」
“アリス、落ち着いて・・・・!”
『ピカチュウ!』
デデンネが先生の手から逃れ、蹲るアリスの足から顔に近づき、心配そうな顔でアリスを呼び、アリスは自分がモモイと
「先生、アリスは・・・・一体どうすれば・・・・!」
モモイを傷つけてしまった事に、耐えられなくなったアリスが大声で泣き叫ぶ。ソレをデデンネと先生とピカチュウが宥めていた。
と、その時ーーーー。
「ーーーーそう、貴方が怪我をさせた。ーーーーそれは逃れられない『真実』」
何者かが部室の外から無遠慮にアリスにそう告げた。
“誰・・・・!?”
『ピカッ!?』
ーーーーガチャっ!
「先生!」
『マイマイ!』
「か、会長が・・・・!」
『デンチュラ!』
先生とピカチュウが部室の扉に目を向けると、外で待っていたミドリとマイナン、ユズとデンチュラが怯えながら入って来ると、震える指でドアから入ってくる生徒を指差した。
「ああ、やはりーーーー危惧していた通りになってしまったようね」
『・・・・・・・・』
ソコに現れたのは、170センチはある長身と膝裏にまで届く長く美しい髪と黒のスーツ、雪のように真っ白い肌と白いタートルネックを着用し黒いストッキングで包まれたスラリと長い美脚。スーツ越しからでも十分に理解できる大きな胸と女性として理想的な抜群プロポーションで、顔つきは怜悧な雰囲気がある女子生徒であった。
更にその後ろから、全身が黒く長いティアードスカートのような黒い円錐台が積み重なった独特なゴシック風なドレスをした姿。頭の左右には巻き毛のような円形の器官が扇状になってツインテールとなった『てんたいポケモン・ゴチルゼル』であった。
“『会長』・・・・?”
「ーーーー貴方が、噂の『シャーレの先生』?・・・・先生との記録的な出会いがこうなってしまったのは極めて残念だわ。私の名前は『調月リオ』」
先生の前に現れたのは、以前からユウカやノアから名前だけは知らせてもらっていた〈ミレニアムサイエンスクール〉の生徒会『セミナー』のトップである『調月リオ』であった。
そしてリオは、先生達や『ゲーム開発部』、特にアリスに目を向けて声を発する。
「貴方ーーーーそして、彼女達に・・・・『真実』を教えに来たの」
ソレはまるで、『冒険の終わり』を無慈悲に伝えるかのように。
リオのパートナーポケモンの1体はゴチルゼルにしました。色的にもリオと合うと思ったので。