ー先生sideー
“調月、リオ・・・・? 君が、〈ミレニアム〉の生徒会長・・・・?”
「はい・・・・〈ミレニアム〉の生徒会長です」
『マイィ・・・・』
「・・・・か、会長が、何で、こ、ここに・・・・」
『デンチュ』
「・・・・・・・・・・・・」
『デデン・・・・』
先生は『ゲーム開発部』の部室に突然やって来たリオとパートナーであろうゴチルゼル(色違い)を見てそう言うと、ミドリとマイナンが肯定し、ユズは怯えてしまい、デンチュラが支えた。
しかしアリスはリオを見据え、デデンネは心配そうにアリスを見つめる。
「ええ。私は〈ミレニアムサイエンススクール〉の中枢ーーーー『セミナー』を率いる者。そして、『千年難題』の解決を望み、星を追う者」
リオは改めて自己紹介を始めた。
「本来なら『シャーレの先生』とは、正式に挨拶を交わす席を設けたかったのだけれどーーーー今日は別の用事があるから、また次の機会に・・・・」
“『真実』とは、一体?”
「そうーーーー『真実』。貴方達は数日前の『事件』で1つの考えに到達したのではなくて? 今まで友人だと思っていた彼女が見せたーーーー『異なる姿』。そして、同時に生じた『破壊と混乱』。そしてーーーー貴方達はこう思ったのでは?」
先生が『真実』について聞くと、リオは数日前のアリスの暴走の事を話しながら、コツコツとゆっくり近づく。
「『今まで友人だと思っていたものは、そうではないのかもしれない』ーーーーと。そうでしょう? シャーレの先生」
「・・・・!!」
“リオ、一体何をーーーー”
リオはアリスの暴走を見て、先生や『ゲーム開発部』は何かに気づいた筈であると言い出し、アリスはビクッと身体を震わせ、目に涙を浮かべる。
先生が問い返そうとするが、リオは話を続ける。
「単刀直入に言えばーーーー貴方の後ろにいるその少女・・・・」
リオは視線を一瞬アリスに向ける。
「ーーーー少女の外見を備えた『ソレ』は普通の生徒ではないわ。貴方達がアリスと名付けたソレはーーーー」
そして、一拍置いてから声を発する。
「ーーーー未知から侵略してくる『不可解な軍隊‹Divi:Sion›』の『指揮官』であり、『名もなき神』を信仰する『無名の司祭』が崇拝した『オーパーツ』でありーーーー古き民が残した遺産ーーーーその名も・・・・」
ーーーー『名もなき神々の王女AL-1S』
“名もなき・・・・?”
《神・・・・?》
リオの発した言葉に、先生だけでなく、懐のマスターボールに収まったミュウツーですら訝しそうに眉根を寄せる。
「アリスは・・・・」
そして、ソレまで黙っていたアリスがリオに向けて口を開く。
「アリスには・・・・理解できません・・・・」
「そうですよ! 何を言っているんですか!? 一方的に脳内の独自設定を話さないでください! よく、お姉ちゃんがそうやって話してきたから分かるんです。勝手にアリスに設定を付与しないで」
『マイマイ!』
「ミ、ミドリ・・・・」
『デンチュラ・・・・』
リオの放った訳の分からない言葉でアリスを傷付けていると感じ、怒ったミドリとマイナンが、アリスを庇うようにリオの言葉を否定するが、ユズとデンチュラが抑えるように声を発する。
「ーーーーごめんなさい。私の配慮が足りなかったわね。もっと理解しやすいよう、貴方達の好きな『ゲーム』に例えましょう」
リオは自分の配慮不足を詫びてから、簡潔に、そして残酷な言葉を口にする。
「つまり、『アリス』。貴女はーーーーこの世界を滅ぼす為に生まれた『魔王』なのよ」
「・・・・!!」
“アリスが・・・・『魔王』?”
『デデンネ!』
リオは『ゲーム』に例えて再びアリスの正体を言い出す。アリスは自分が『魔王』と言われて、さらに大きなショックを受けてしまった。
デデンネは「嘘だ!」と言わんばかりに、アリスを庇うように両手を広げてリオの言葉を否定する。
「またそんな設定を・・・・どうしてそんな事を言うんですか!? 一体、何を企んでいるんですか!?」
「企んでなどいないわ。ーーーー寧ろ、逆に聞きたいのだけど・・・・貴方達は、直接見たのではなくて? 『不可解な軍隊‹Divi:Sion›』とアリスが接触した事で何が起きたのかを」
“『不可解な軍隊‹Divi:sion›』・・・・”
怒るミドリにリオが諭すように言うと、先生の脳裏に目玉ロボット達の姿が過った。アレに接触した事によって、アリスが暴走をしたのだから。
“あの・・・・ロボットの事・・・・?”
「ーーーーその通り。本来、あんな事になる予定ではなかったのだけれど・・・・完全にコチラのミスよ。『C&C』と『AMAS』を通じて、全部追跡したと思っていたのに、まさか監視網を搔い潜った個体がいたなんて。それは完全に私の不手際による物。謝罪をここに」
「えっ? 謝罪? 会長が!? えっ・・・・?」
しかし、あの事件自体は偶然に起きてしまったことらしく、その件に対してリオは謝罪をする。その姿を見たミドリは先ほどまで怒っていたにも関わらず困惑してしまった。
“(『C&C』が追跡・・・・だからネルもあのロボットの事を知っていて、アカネ達も真面目になっていたのか・・・・)”
「ーーーーでも」
“でも?”
「そのお陰で、私の仮説は証明された。貴方達が接触したソレは『廃墟』から溢れ出した『災禍』。〈ミレニアム〉にーーーーひいては、〈キヴォトス〉全土に終焉を齎す『悪夢』。そしてーーーーアリスの存在が『廃墟』からヤツ等を呼び寄せているという事が証明された。今回は、運よく壊れかけの個体と接触するに留まってけれど・・・・次はこんなものでは済まないでしょうね」
“・・・・・・”
だが、リオはあの事件のお陰でアリスが『キヴォトスを滅ぼす魔王』であると証明された事を告げる。
そして先生の脳裏に、アリスが『Divi:Sion』と共に〈キヴォトス〉を滅ぼす姿を想像してしまった。
「この脅威を解決する方法は『1つ』だけよ、アリス」
「解決、する方法・・・・?」
「そう。ーーーーアリス、『貴方が消える事』。この世界に貴方は存在してはいけない」
最後に、リオは泣きそうなアリスに、アリスが消えれば問題が解決すると言い放ち、更に『存在してはいけない』とまで、アリスに告げるのであった。
「・・・・そ・・・・んな・・・・。アリスは・・・・ただ・・・・『勇者』に・・・・。デデンネや『皆』と一緒に・・・・ゲームを・・・・。クエストを、したかった・・・・それだけなのに・・・・」
「いいえ、それは叶わないわ。私はゲームに詳しくないけれど・・・・辞書的な知識ならあるの。だから、貴方に質問するわね。貴方は己を勇者と呼んでいるけれど・・・・『勇者』とは、友人に剣を向ける存在かしら? 寧ろ、貴方のやった事は『悪役魔王』ではなくて?」
「・・・・!」
アリスは心がボロボロになりながら、嗚咽交じりに言葉を紡ぐが、リオはそんなアリスに更なる追及をするのだった。
『デデデデ!!!』
『ーーーー』
ーーーーバリバリバリバリバリバリバリバリ!!
アリスに近付こうとするリオに、デデンネが最大出力の【でんきショック】を放つが、ゴチルゼルが【リフレクター】で防いだ。
「アリスちゃん! 聞かなくていい! 生徒会長が変わり者だとは聞いていたけど・・・・・こんな人だとは思わなかった・・・・!」
『マイマイ!!(バリバリ!!)』
『デンチュ・・・・!』
「せ・・・・先生・・・・!」
リオの言葉にとうとうデデンネは堪忍袋の緒が切れ、リオに向かって威嚇をする。ミドリもキレたようで、リオに失望したと同時に怒りに震える。マイナンもデンチュラも怒ったようで、放電と雷付きの糸を伸ばした。
“・・・・リオ、やめて”
『ピカチュウ・・・・』
「やめる? 何を? 『事実』から目を背けるのは思いやりではないわ、先生。それは単なる『現実逃避』に過ぎないーーーー負うべき責任の放棄は、極めて非合理的な行動よ」
“『合理』、『非合理』の問題じゃないよ・・・・”
ユズに縋るように先生に目を向けると、先生とピカチュウもアリスへの口撃を止めて欲しいと言うが、リオは何故先生が自分が止めようとするのかが分かっていない様子であった。
「それじゃあ、アリスは・・・・アリスは・・・・どうすればいいんですか・・・・?」
「さっきも言った通りーーーー全ての元凶はアリス、貴方がここにいるから起きている。ならば、後は簡単でしょう? 『爆弾』はーーーー安全な場所で解体すれば良いだけだもの」
「爆弾を・・・・解体・・・・?」
「ああ・・・・分かりづらかったかしら? 」
アリスもまた、どうすれば良いのか聞くと、リオはアリスを『爆弾』に例えて『解体』すると言い出す。やはりリオの会話はみんなにはよく分かりづらいのか、リオは『結論』を言い放つ。
「つまりーーーー貴方のヘイローを破壊すれば解決する、という事よ」
『アリスのヘイローを破壊する』ーーーーソレはつまり、『アリスを殺す』、と言い放ったのであった。
『!?!?』
リオのその残酷な言葉に、その場にいたリオとゴチルゼル以外は驚愕し、まるで時が止まったかのような静寂が僅かに流れた。
しかしリオはそんな周りの空気に構わず言葉を続ける。
「ああでも・・・・貴方のソレは本当に『ヘイロー』なのかしら? 『生徒』ではない貴方が、どうして『ヘイロー』を持っているのか・・・・理由は分からないけれどーーーーただの機械である貴方が『ヘイロー』を持っているのは・・・・そう、狂気に包まれたあの『AI』と同じ。ええ・・・・尚更、貴方を放って置けない」
“ーーーーリオ。それ以上の言葉は、許せないよ”
『ピカチュウ(ジジジジ・・・・・)』
ーーーーポンッ×6
『カルゥォ(ゴキッゴキッ・・・・)』
『ブィィィィ・・・・!(ギロッ)』
『グマグマァ・・・・!(ボボボボ・・・・)』
『ベイベイ・・・・!(ビシッビシッ)』
『ゲイツ・・・・!(ギラリ)』
『アギャァ・・・・!(ペロリ)』
「・・・・・私の言動が不愉快ならば、謝罪するわ。昔から私の事が嫌いな人間は多かったもの。ーーーーソレは私に問題があるという事でしょうから。でも、理解されなくても構わないわ。私は、皆を守りたいだけ」
リオの容赦のない発言に遂に先生やピカチュウ、そしてボールから飛び出したルカリオ達も怒りを露わにしてリオを威嚇する。リオは自分の言動を謝罪しつつも、考えを曲げるつもりは無いようであり、部室の扉を一瞥する。
「さあ、貴方の出番よーーーー美甘ネル」
「・・・・・・・・」
『・・・・・・・・』
「・・・・!」
『デデ!?』
すると、外に待機していたネルとエレキブルが入ってきて、アリスとデデンネが目を見開く。
「ネル・・・・先輩・・・・」
『マイ・・・・』
「・・・・・・・・」
『・・・・・・・・』
“ネル・・・・?”
『!!』
〈ミレニアムサイエンススクール〉最強戦力のネルとエレキブルの登場で、全員の顔が青ざめる。ネルとエレキブルは黙って部屋に入り、そのまま目を閉じる。その態度は明らかに不服そうである事を先生は気付いた。
「・・・・・・」
「あまり悪く思わないでやってね。元々、『C&C』は『セミナー』・・・・正確には私直属のエージェントなの。ソコに私的な感情はないわ。私の命令に粛々と従うだけ。『C&C』のリーダーのネル相手では、いくら先生でも『ゲーム開発部』だけでは抵抗できないでしょう? 例え外部に助けを求めたとしてもーーーー』
ーーーーパチンッ。
ーーーーウィィィィン・・・・。
「この周囲はすでにAMASで掌握しているわ。救援が間に合う事はない」
リオは更に『AMAS』まで配置し、徹底的にコチラの逃げ道を塞いできた。
「さあ、仕事の時間よ。ネル、エレキブル、アリスを回収してくれるかしら?」
「・・・・・・・・」
『・・・・・・・・』
「ネル先輩・・・・」
『デデン・・・・』
リオがネル達にアリスを回収するように命令し、アリスは仲が良かったと思っていた先輩達が敵に回り、また涙を浮かべる。
が・・・・。
「・・・・ふっ」
『・・・・ブル』
「ふっ・・・・?」
ネルとエレキブルが薄目を開けてお互いを見てから不敵に笑う。リオが首を僅かに傾げるとーーー。
「くっそ、やってられっかよ!」
ーーーーダダダダダダダダ!!
ーーーーバコンッ!!
そして、ネルは『SMG・ツイン・ドラゴン』を向けて発砲し、エレキブルが【かみなりパンチ】で『AMAS』を破壊した。
「ネル・・・・一体何のつもり?」
“ネル・・・・! エレキブル・・・・!”
「・・・・ネル先輩?」
『・・・・デデン?』
「今までだって依頼内容を気に入った事はあんま無かったけどよぉ。同じ学園の生徒をーーーーソレも、何も分かってねぇヤツを誘拐しろってか?ーーーーんな依頼やってられっかよ。もう、テメェに付き合う義理はねぇよーーーーリオ!」
「ネル・・・・ここで裏切るつもり?」
「裏切る? ハッ! アタシもエレキブルもギャラドスも『アイツ』も、テメェの指示が気に入らねぇだけだ」
『エレキブル!』
ーーーークンクン・・・・。
ネルの言葉にエレキブルは頷き、懐の2つのボールも動いて肯定を示す。
「そう、そういうことなのね・・・・。ネル、貴方はいつもそう。気分次第で命令違反をするその姿ーーーーいつ爆発するかわからない癇癪玉のような側面があなたの長所であり・・・・一番厄介だった」
ネルとエレキブルはリオの依頼内容が気に入らないと言って、リオに銃と拳を向ける。
「・・・・だから、この状況だって、全て想定していたのだけれど。最初から『C&C』全員ではなく、貴方だけを呼び出しておいて正解だった」
「あぁ? んだって?」
がしかし、リオもネルの性格を把握していたようで、このような事態が起こるだろうと想定し、対策を立てていたようだ。
「『トキ』ーーーー貴方の出番よ」
と、リオが呟いた瞬間、ネルとエレキブルの背後から黒い影が2つ、突如として現れる。
“ーーーーネル、危ない!”
「ーーーーあぁ?」
ーーーードゴォオオオオオオオオンン!!
ーーーードガァアアアアアアアアンン!!
そして、爆発と雷光が部室を覆った。
「誰だテメェらは!?」
『レキブル!』
が、流石はネルとエレキブルと言うべきか、あまりダメージを受けていないようであり、その人影が姿を現す。
「はじめまして、先輩。ーーーーそして、先生。『C&C』所属、『コールサインゼロフォー』とパートナーの『ゼラオラ』。ご挨拶申し上げます」
「え・・・・『5番目』・・・・?」
“『C&C』・・・・?”
「そ、ソレに『ゼラオラ』って・・・・『幻級のポケモン』、だよね? 『役員』でもないのに、所持しているなんて・・・・」
端麗な顔つきに亜麻色の髪をアップし、青い綺麗な瞳をして、オーソドックスなロングスカートで腰に青い大きなリボンを着けたメイド服を着用した『トキ』と呼ばれた少女が、『ケースレスアサルトライフルG11K3・シークレットタイム』を持っていた。
そしてその隣には、2足歩行の猫のような姿をし、体色は黄色をベースに稲妻のような黒い模様が入っており、背中からは一昔前の武人キャラのような極端に細長い一本結びのような毛が伸びている『幻級のポケモン』、『じんらいポケモン・ゼラオラ』であった。因みに、首元には『C&C』所属のポケモンの証である蝶ネクタイが巻かれていた。
「背後から奇襲たぁ、舐めた真似してくれるじゃねぇか。ーーーー覚悟はできてんだろうなぁ!?」
『エレキーーーーブルゥッ!!(バリバリバリバリ!!)』
ネルが『ツイン・ドラゴン』の銃口を向け、エレキブルも両拳を叩き合わせて放電する。
“ネル、エレキブル、待って・・・・!”
先生が制止するが、ネルとエレキブルは『AMAS』を次々と粉砕していく。
たった2人、そして相手は数十体の戦闘ロボである筈なのに、まるで物の数ではないと言わんばかりに撃破した。
「んなザコで足止めになる理由ねぇだろうがよ!」
『エレキブル!』
「・・・・ーーーー流石ネルにエレキブル。『AMAS』程度では、貴方達を止められないと言う訳ね」
ネルとエレキブルの戦闘力を素直に賞賛するリオは一瞬目を逸らす。
「こんな事はしたくなかったけれどーーーー」
そして、ボソッとトキに向けて呟く。
「・・・・トキ」
「イエス、マム」
「『武装』の使用を許可します」
「承知しました」
トキはリオの言葉に頷くと、ゼラオラを連れてネルとエレキブルに1歩近づく。
「ーーーー準備完了。『モード2』に移行します」
「はぁ? 何をゴチャゴチャとーーーー」
ネルが訝しげに眉根を寄せると、トキの着ているロングスカートのオーソドックスのメイド服が、スレンダーな肢体にノースリーブとミニスカートの動きやすさを重視した軽装のメイド服へと変わった。
「あれ? 服が・・・・」
“・・・・『姿』が変わった?”
「・・・・!」
『・・・・ゼラ!』
トキはジグザグに走りながらネルに接近し、ゼラオラは【でんこうせっか】で高速移動しながらエレキブルに近づく。
「ソッチか!?」
ーーーーダンダンダンダンダンダン!!
ーーーーダダダダダダダダ!!
『ブルッ!!』
ーーーーバシュゥゥゥゥン!!
ネルの銃弾が飛び交い、ゼラオラの攻撃をエレキブルが【かみなりパンチ】で応戦したが、トキは薄暗い廊下を縦横無尽に動いて回避し、ゼラオラは身体が一瞬バチバチッと放電すると、凄まじい加速でエレキブルの拳を回避した。
「・・・・・・・・」
「逃すか・・・・!」
ーーーーダンダンッ、ダンダンッ!
「チッ、クソ・・・・当たんねぇ・・・・」
『(バキッ!)ブルッ!? エレキブルゥッ!!』
ネルはトキの素早い動きに翻弄され銃弾が当たらず、エレキブルもまた、ゼラオラの雷速のスピードに攻撃が当たらず、逆にゼラオラからの攻撃を受けてしまっていた。
「ふ、二人共・・・・あ、あっという間に消えちゃった・・・・」
『マイナン〜・・・・!!』
全く姿が捉えられないトキとゼラオラに、ミドリとマイナンも目を瞬かせる。
「テメェ、一体何処に・・・・」
「ーーーーネル先輩、エレキブル、後ろ・・・・!」
と、ソコでユズがネルとエレキブルの背後に、トキとゼラオラが立っていた事を叫んだ。
「・・・・何?」
『ブル!?』
ーーーーダンダンダンダンダンダンッ!!
ーーーードゴォォォォォォォォォンッ!!
「ーーーーぐあっ!!?」
『ーーーー!!!?』
ネルが弾丸を食らい床に倒れ、エレキブルも背中から拳を叩き込まれたように背面から胸元まで一直線に身体が一瞬伸びて、宙を数秒浮いてから、床に倒れて完全に気を失った。
そして2人の後ろには、涼しい顔をしたトキとゼラオラが立っていた。
“ネルとエレキブルがあっという間に・・・・”
『ピカチュウ・・・・!』
「気づいたら・・・・突然、現れて・・・・」
『マイ〜・・・・』
「あ、あうぅ・・・・」
『デン・・・・』
〈ミレニアムサイエンススクール〉最強戦力であるネルとエレキブルの敗北に、先生達や『ゲーム開発部』は信じられないと言わんばかりに目を見開いた。
そしトキは倒れたネルの上に乗って腕を締め上げる。
「クソッ! 離せ!? ぶっ壊されてぇのか!?」
「そうやって暴れたら、曲がってはいけない方向に腕が曲がりますよ、先輩。皆さんも下手に動かないでくださいね。無駄な抵抗はお勧めしません」
“ーーーー皆”
『!』
『ーーーーゼオラ』
『!!?』
ネルはトキの手から逃れようとジタバタと藻掻くが、トキはネルが力を込めにくい体位にして腕を極め、先生のルカリオ達が助けに向かおうにも、その目前にゼラオラが一瞬で回り込んだ。
「・・・・うっ!」
「・・・・!」
更には『AMAS』の増援も現れて、ミドリ達も先生達も動けないでいた。
“ソレは、一体・・・・”
「私の作った『特殊武装』よ。ーーーーこんな所で出すつもりはなかったのだけれど。さあ、『AMAS』。アリスを回収しなさい」
ーーーーブロロロロ・・・・。
「!」
『デデンネ!!』
ーーーーバキッ!
『デデっ!!』
「デデンネ・・・・!!」
ネルとエレキブルを無力化させたリオは、再び『AMAS』を使ってアリスを取り囲もうとする。デデンネが立ち向かおうとするが、すぐに叩きのめされてしまい、アリスは更に涙を浮かべしまった。
「!!」
「ちょ、ちょっと待っ・・・・!」
『マイマイ!』
『デンチュラ!』
それを察知したミドリとユズ、マイナンとデンチュラはアリスの前に立ち、彼女を守ろうと庇う。
「下手に動かないほうがいい。無関係な子を傷つけたくない」
「「!!」」
リオの登場で、『ゲーム開発部』は萎縮されてしまった。
“やめて、リオ”
『ピカピカ!』
そして、先生とピカチュウがリオの前に立ち塞がる。
「ーーーーソレは私のセリフよ。私も『対立』などしたくないわ。先生、貴方と敵対する気も、憎まれる気もない。寧ろ、貴方に聞きたい位」
リオは先生と対立する気はないと告げ、更に先生に質問をする。
「こう言った事態に於いて、シャーレの先生、『大人』である貴方が真っ先に動くべきではなくて?」
“・・・・ソレは、とう言う?”
「『子供』より感情に支配されず、冷静に状況を判断できるーーーーそう言った『大人』である貴方が動くべきだったのでは?」
『大人』である先生が、〈キヴォトス〉を守る為に『汚れ役』をやるべきではないのかと、リオは先生に尋ねた。
そして先生はーーーー。
“生徒を傷つけるなんて・・・・”
「ーーーーいつまでそんな寝言を吐き続けるつもりなの!」
“・・・・!!”
先生の言葉を、リオは初めて声を張り上げて否定する。
「ーーーー勘違いしないでちょうだい、先生」
一拍置いて冷静になってから、リオは改めてアリスに目を向ける。
「『アレ』は生命体ではないのーーーー貴方が背負うべき『生徒』ではない。もし、そう感じているのであれば、ソレは『エライザ効果』に過ぎない。『アレ』はこの世界を終焉へと至らせる恐るべき『兵器』」
ーーーー『エライザ効果』。コンピューターやAIが単純な返答をしただけで「感情がある」「自分と分かりあっている」と無意識に思い込んでしまう心理現象である。
「アリス‹アレ›と〈キヴォトス〉の全生徒を秤にかけろと問われたら、『答え』は明白でしょう?・・・・ソレでもなお、貴方が動かないなら。アリスの『ヘイロー』は私の手で破壊する。『準備』は既に整っているわ」
そう言って、リオがアリスに近づこうとするが、デデンネは勿論、ミドリとマイナンも両手を広げてアリスを守ろうとしていた。
「・・・・・・・・・・・・」
「違う・・・・違うよ! アリスちゃんは『兵器』なんかじゃない! アリスちゃんは・・・・『勇者』だよ! だってーーーー」
ミドリは怯えつつも必死に言葉を大きく張り上げる。
「アリスちゃんは、『光の剣』を・・・・勇者の証しである『スーパーノヴァ』を持っているもの!」
「『光の剣』・・・・『エンジニア部』が作った『おもちゃ』の? そう・・・・貴方達がそう言うのなら・・・・そうね」
リオは持っていたタブレットを操作した。
その時ーーーー。
ーーーーボシュゥゥゥゥッ・・・・!
“『スーパーノヴァ』の電源が・・・・消えた?”
「・・・・!」
アリスの『スーパーノヴァ』から全ての機能が停止したような音が鳴り響き、レールガンはまるで置物のようになってしまった。
ーアリスsideー
「コレで良いかしら? 光の剣はもうないわ。コレで証明は終わり?」
「アリスの、剣が・・・・ゆうしゃの、あかしが・・・・あ、う・・・・うぅ・・・・」
『デデン、ネ・・・・!』
とうとうアリスは泣き崩れ、ボロボロのデデンネがアリスに抱き着く。
「デデンネ・・・・」
デデンネに目をやってから、
「ユズ・・・・デンチュラ・・・・ミドリ・・・・マイナン・・・・」
『ゲーム開発部』の仲間達を見やり、
「くそっ! 離せ! おい、エレキブル! いつまで気絶してやがる! チビ! お前もジッとしてないで、反撃しろよ!」
『・・・・・・・・』
トキに拘束されたネルと、気を失っているエレキブル。アリスの元に行きたくても、ゼラオラに阻まれ動けないルカリオとイーブイ(色違い)と2代目御三家。
「ネル先輩・・・・エレキブル・・・・ルカリオ・・・・イーブイ・・・・マグマラシ・・・・ベイリーフ・・・・・アリゲイツ・・・・」
そして最後に、先生とピカチュウに目を向ける。
「先生・・・・ピカチュウ・・・・」
“・・・・アリス”
『ピカァ・・・・』
先生とピカチュウは、何とかこの場をどうにかしようと思案を巡らせているが、具体案が見い出せないでいるようである。
「・・・・!!」
アリスの脳裏に、未だに目を覚まさないモモイとプラスルの姿が過ってしまった。
「・・・・モモイ・・・・プラスル」
皆が傷付いていく、皆が苦しんでいく、ソレもコレも全てはーーーー。
「ぜんぶ・・・・アリスが、いるから・・・・? アリスが『魔王』だから・・・・おきた、ことですか?」
「・・・・・・・・・・・・」
アリスの言葉にリオは答えない。ソレが『答え』だといわんばかりに。
「アリスが・・・・ここにいたら・・・・同じ事が・・・・」
自分がここにいれば、皆がまた苦しみ傷付く。そんな事耐えられない。
「・・・・・・・・・・・・」
『デデン・・・・?』
「・・・・・・・・アリスが・・・・・・・・アリスが『勇者』じゃないから・・・・」
アリスはデデンネをソッと両手で持ち上げて、自分と離れさせてから立ち上がる。
「・・・・・・・・そう、ですね」
ー先生sideー
今にも泣き出しそうな顔をしながら、アリス顔を上げた。
“アリス・・・・?”
「はい・・・・アリス、全て理解しました。・・・・・・・・アリスが消えるとします」
アリスは、自分に待ち構えている結末を受け入れたかのように声を発した。
『デデン!!』
「ダメ! アリスちゃん!」
『マイナン!!』
「アリ、ス・・・・ちゃん・・・・」
『デンチュラ!』
「なっ・・・・チビ、てめぇ・・・・!」
『!!』
ソレを見たデデンネ、ミドリにマイナン、ユズにデンチュラ、ネルにルカリオにイーブイ(色違い)、そして2代目御三家が必死にアリスを止めようとするが、アリスはただ俯いているばかりであった。
“ーーーーその必要はないよ、アリス”
『ピカチュウ』
「いいえ、大丈夫です。アリスは・・・・先生に怪我させたくないです。アリスは・・・・ミドリもマイナンも、ユズめデンチュラも、ネル先輩もエレキブルも、ルカリオ達にも、他の皆も・・・・デデンネにも・・・・怪我、させたくないです。・・・・モモイが、アリスのせいで怪我した時・・・・胸がとても痛かったです。どうして・・・・何でこんな事になってしまったのか、アリスには良く分かりません」
俯いていたアリスが、目を上げる。
「でも、それでも・・・・その話を、聞いて・・・・やっと理解しました。全ては・・・・アリスのせいで起きたと言う事を・・・・アリスがこのままずっといたら・・・・いつか・・・・皆が怪我してしまう」
“リオの言葉を鵜呑みにしなくていい。ちゃんと話し合おう、アリス”
『ピカッ!』
「先生、心配しなくても大丈夫です」
先生とピカチュウが説得するが、アリスは心配ないと言う。しかし、その目には涙が浮かんでいた。
「大丈夫です。アリスは『生命体』ではないのですから。アリスは、〈ミレニアム〉の生徒ではないから。いなくなっても、大丈夫です。アリスは・・・・『勇者』、ではないから・・・・アリスは・・・・だい・・・・じょうぶです」
『デデデッッ!!』
が、デデンネは走り出して、アリスの足にしがみついた。行かせないと言いたげに。
「デデンネ・・・・」
“アリス。君は私の『大事な生徒』だ。そして、デデンネにとってアリスは、『大切なパートナー』なんだよ”
「・・・・・・・・」
「・・・・ゴチルゼル」
『ゼル』
泣きそうなるのを必死に堪えるアリス。リオは後ろに控えていたゴチルゼルに一声かけると、ゴチルゼルは【ねんりき】でデデンネをアリスから引き剥がす。
『デデ!? デデン!!』
宙に浮かされたデデンネは、必死に身体を動かしアリスの元に行こうと手足をバタつかせるが、全く進んでいなかった。
アリスはそんなデデンネや先生達や皆に向けて、精一杯の笑顔を見せた。・・・・涙を流して。
「デデンネ、アリスの事を『パートナー』だと思ってくれて、本当にありがとうございました。先生、今までありがとうございました。皆、アリスと一緒に冒険してくれて、ありがとうございました。アリスは・・・・今まで本当に幸せ・・・・でした」
アリスは最後にそう言い残し、リオとゴチルゼルと共に、部室を出ようとした。
「ソレではーーーー失礼するわ。もしもーーーー先生が、私の行動や言動に傷ついたのであれば・・・・全てが終わった後、改めて謝罪をさせてちょうだい。では、またーーーー」
『(ペコリ)』
リオも、あくまでも事務的な言葉を使い、ゴチルゼルを連れて行ってしまうのであった。
そして、リオとゴチルゼル、アリスが完全にその場を去るまで、『AMAS』に制圧された先生達は、指一本動かす事もできず、そうして、ただただ無力感に打ちひしがれる全員の前からーーーーアリスは、姿を消した・・・・。
『デデェエエエエエエエエンンッッ!!』
ただ一匹、アリスのデデンネの悲痛な叫び声だけが、『ゲーム開発部』の部室に虚しく響くのであった・・・・。
はい。トキの手持ちポケモンの1体は、幻級のポケモン、ゼラオラでした。他にもいますから、こうご期待。