ー先生sideー
アリスがリオと共に去ってから数分後、トキとゼラオラ、『AMAS』がその場から立ち去り、途方に暮れていた『ゲーム開発部』と先生達は、ネルに連れられる形で『ミレニアムタワー』のオペレーションルームに行くと、アカネにアスナにカリンの『C&C』メンバー、そしてハレ達『ヴェリタス』が集まっていた。
そして、先生がコレまでの事を全員に説明すると、全員の顔が曇った。皆アリスの事を可愛がっていたから、こんな結果になった事が辛いのだろう。
「・・・・結局、会長がアリスを連れて行ったんだね」
『パチ・・・・』
「ねぇ・・・・コレって結構ヤバいんじゃない・・・・?」
『ドブル』
「はい、非常事態です」
『リンダ』
「では、リオ会長が部長以外を呼び出さなかったのは・・・・」
「恐らく、最初からリーダーが裏切ると想定していたのだろう」
「ヒドい! アリスちゃんを連れてった上にリーダーやエレキブルの事もイジメるなんて!」
『ゴロロ』
『ガウ』
『ハピナ』
『ヴェリタス』は事の重大さを理解して眉根を寄せ、『C&C』はリオのやり方に静かに憤りを感じていた。普段滅多な事では怒らないアスナですさえも。
「・・・・・・・・はあ」
『エレキブル・・・・』
「部長・・・・?」
“ネル・・・・? まだどこか痛む? エレキブルはできるだけ回復させたけど、やっぱりポケモンセンターに・・・・”
「眼の前でアイツが連れていかれるのを・・・・アタシは、ただ見てる事しかできなかった・・・・エレキブルに至っては倒されて気を失ってたんだ・・・・情けねぇよ・・・・」
『ブル・・・・!』
気落ちしているのか、ため息をついたネルを、アカネと先生は心配する。ネルはアリスが連れ去られるときに、トキに腕を固められ動けなかった事を今でも気にしていた。
エレキブルも、相手が『幻級のポケモン』であるゼラオラとは言え、簡単に倒された事を気に病んでいた。
「ソレは・・・・」
「リーダー、気に病む必要は無い。正面から戦ったわけじゃないんだろう?」
「そうだよ! あんなの無効たよ! 無効!」
「・・・・お前らは、任務が失敗してもそんな言い訳をするのか?」
「「「!?」」」
「ソレは・・・・」
珍しく落ち込んでいるネルをアカネ達は慰めようとするが、ネルは厳しい言葉を言い放つ。負けん気も強く、負けず嫌い、そして何よりプライドの高いネルは任務失敗の言い訳をしない。だからこそ、自分自身の不甲斐なさを悔やんでいるのだ。
「アタシ達を物ともしないでアリスを連れて行ったアイツら・・・・『ゼラオラ』なんて『幻級のポケモン』をパートナーにしていたアイツは、自分の事を『コールサインゼロフォー』って言ってた。『トキ』っつったっけ?ーーーーアカネ、知ってるか?」
「・・・・そうですね。存在は、知っておりました。『コールサインゼロフォー』。『C&C』所属でありながらリオ会長専属のメンバー。いわば、リオ会長のボディーガード・・・・。ですが、私も実際に対面したのは初めてです・・・・まさかゼラオラを所持していたのも驚きてしたが・・・・会長が彼女を使ってこのような事をしてくるとは・・・・」
ネルはトキやゼラオラについて、副部長兼参謀役であるアカネに彼女達の事を尋ねると、アカネはトキの事を情報としては知っていたようだが、直接の面識はなく、手持ちポケモンについてやその他の事はあまりよく知らないようだ。
「ソレに、奇襲とは言え部長やエレキブルを制圧するだなんて・・・・」
「・・・・ゼラオラの強さはヤツ自身の能力だろうが、アイツ、トキってのは何か変なモン使ってやがった」
“・・・・リオがくれた『武装』だと言ってたね”
ネルを制圧したトキの話を聞き、アカネはゴクリと喉を鳴らして呟く。だがネルは、トキのあの戦闘力は『武装』の事を話して歯噛みしつつ、先生に問い掛けた。
「なあ、先生。あのチビはどうして・・・・『ヘイローを壊す』なんて話をされたのに、リオについて行ったんだ? 言葉の意味を理解して、納得した上でついて行っているのか? なぁ・・・・ゲームがちょっとできる程度のチビに、なんでリオはあんな事を言ったんだ? アタシだけが理解できてないのか?なぁ、教えてくれよ・・・・一体これは何なんだ?」
「ネル先輩・・・・」
ネルはアリスの正体の事をリオから知らされていなかったようで、何故アリスが大人しく連れていかれたのか疑問に思い、やや不機嫌そうに眉根を寄せつつ先生に詰める。そんな姿をアリスがいなくなって泣きじゃくるデデンネを慰めながら、ミドリは見つめていた。
“取り敢えず・・・・状況を整理しよう”
先生も色々な事が起こって少し理解が追いつかないから、一旦ネル達への説明を兼ねた状況整理を始める。
先生はアリスの暴走や、リオが話したアリスの正体が、あの目玉ロボット『不可解な軍隊‹Divi:Sion›』の『指揮官』であり、『名もなき神』と言う存在を信仰する『無名の司祭』と呼ばれる者達が創った『オーパーツ』であり、『名もなき神々の王女AL-1S』と呼ばれる存在であった事、リオはそんなアリスを〈キヴォトス〉を滅ぼす『魔王』である事を告げ、そしてリオによってアリスが拉致され、アリスの『ヘイロー』を破壊しようとしているのをこの場にいる全員に話した。
「先生、アリスちゃんは・・・・・会長の言う通り、本当に・・・・『魔王』なんでしょうか?」
“ミドリ・・・・”
「私・・・・私、には・・・・良く・・・・分からない・・・・アリスちゃんの気持ちを、ちゃんと聞いて、お話したいよ・・・・。アリスちゃんは、そんなんじゃないって・・・・。『魔王』なんかじゃないって・・・・会長を、説得したい・・・・。私、は・・・・私達、は・・・・」
“ユズ・・・・”
「先生、私達はどうすればいいかな?」
ミドリとユズは、勿論マイナンとデンチュラとデデンネも、未だにアリスが〈キヴォトス〉を滅ぼす『魔王』と言う事に納得しておらず、先生にアリスは本当に『魔王』なのかと問いかける。
そして、ハレだけでなく、ここに集まった全員が先生の指示を待っていた。
“・・・・・・・・”
先生が皆から指示を仰がれ、どうするべきか考えていると、タタタッとコチラに向かって走ってくる軽快な足音が響いてくるとーーーー。
「ーーーーモモイ&プラスル・・・・・・・・降臨!」
『プラァーッ!!』
何とーーーー頭にプラスルを乗せたモモイが現れた。
「お姉ちゃん!?」
『マイ!?』
『モモイ!? プラスル!?』
突現れたの2人を見て、一同は驚きの声をあげた。
“モモイ・・・・! プラスル・・・・! 身体は大丈夫!? 傷は!?”
『ピカァっ!?』
「身体なら大丈夫! ぐっすり寝たから体力も全快! そう・・・・今の私達は、棚からポーションを手に入れ、次のステージの推奨レベル以上にレベルを上げ終えた戦士・・・・! 怖い物なんて何もない、超強化女子生徒状態と無敵状態ポケモンだよ!」
『プラスル!』
復活した2人を見てまず、先生は身体の心配をするが、モモイとプラスルは元気いっぱいに答えてポージングをし、もう大丈夫であるとアピールした。
「お姉ちゃん・・・・お姉ちゃん・・・・アリスちゃん・・・・アリスちゃんが!」
『マイナン!』
ーーーーガシッ!!
「うわっ!!? 何々!? ミドリがアンチコメを読んだ翌日の『1日限定甘えん坊モード』になってるんだけど!? 何で!?」
『プラァ!?』
モモイとプラスルが目を覚まして元気になって安堵したのか、ミドリはデデンネをユズに預け、モモイに抱き付き、マイナンも兄弟分のプラスルに抱き付いた。事情を知らない2人はこの状況に困惑している。
「モモイ、アリスちゃんが・・・・」
そんなモモイを見て、ユズはモモイ達が気を失っている間に起こった事を説明した。
〜モモイ&プラスルに説明中〜
「ーーーーこのおバカさんが!!」
『プラスルー!!(バリバリバリバリ!!)』
話を聞いてモモイから怒声が、プラスルからは怒りの放電が放たれた。
「お、お姉ちゃん?」
『マ、マイナン?』
「モモイ・・・・?」
『デンチュラ・・・・?』
『・・・・デデン?』
2人の様子に『ゲーム開発部』のメンバーは面喰らうが、そんな事お構い無しにモモイとプラスルが口を開く。
「正直難しい事は良く分かんないけど・・・・! 皆の話を聞いてたら胸がギュッとしちゃって・・・・あんまり言葉が纏まらないんたけとさ・・・・でも1つだけ確かな事はあるよ!」
「・・・・確かな事?」
「私達がこの事態に納得できてないって事!! 正直、アリスが『魔王』だろうがなんだろうが、そんな事どうでも良いの! 私はアリスとこのままお別れなんて嫌だよ! アリスの最後の言葉、別れの挨拶でも何でも無いじゃない! マトモなエンディングですらない! 最悪だよ!」
『プラスル!!』
そしてモモイは自分の考えを真っすぐに皆に伝えーーーー。
「だから私はアリスを連れ戻したい! 連れ戻しに行くよ! 皆はどうなの!?」
ここに集めっている皆にアリスを連れ戻したくはないのかと問いかけた。
「お姉ちゃん・・・・」
『マイナ・・・・』
「モモイ・・・・」
『デンチュ・・・・』
モモイの言葉に、絶望に染まっていた『ゲーム開発部』の目に光が宿る。『便利屋68』のアルのように、いざという時に仲間達を鼓舞する事ができるモモイにも、『リーダーの素質』があるように先生には見えた。
『・・・・デデン・・・・デデンネ!!』
モモイの言葉に、誰よりも同意するように声を張り上げたのは、アリスのパートナーであるデデンネであった。デデンネは涙に濡れていた目を拭い、アリスを取り戻す気持ちを全身で表していた。
「・・・・うん、そうだね」
そしてソレは、『ヴェリタス』も同じであった。
「ーーーーおい、チビ」
「わっ!? な、何・・・・ネル先輩?」
ネルに話し掛けられ、モモイはギョッとした顔になるが、ネルは一拍置いてから・・・・。
「アンターーーー中々、良い事言うじゃねぇか!」
「う、うん・・・・?」
モモイの発破を賞賛し、モモイも戸惑いがちに頷く。
「アンタの言う通りだ。ゴチャゴチャ考える必要はねぇ。殴られたら殴り返せば良い。奪われたモンがあんなら、取り戻せば良い。単純明快だ」
ネルもどうやら迷いを振り切ったようで、ニッと笑みを浮かべて『C&C』のメンバーに話し掛ける。
「なぁ、お前達はどうだ? アカネ。ゴローニャ。アスナ。ハピナス。カリン。レントラー」
「ふふ・・・・言葉にする必要がありますか?」
『ゴロニャ』
「ソレが部長の決定なら」
『ガゥ』
「ついていくよ〜♪」
『ハピナ〜☆』
アカネとアローラゴローニャも、カリンとレントラーも、アスナとハピナスも力強く頷き、モモイは先生に笑顔で向き直る。
「・・・・先生、お願い! 私達に力を貸して!」
“モモイ・・・・皆・・・・”
先生は生徒達の見渡してから、ピカチュウ達の方を向く。
“ピカチュウ。ルカリオ。イーブイ。マグマラシ。ベイリーフ。アリゲイツ。ミライドン”
『(コクン!)』
“(ーーーーそして、ミュウツー)”
《了解》
ピカチュウ達やマスターボールの中のミュウツーも頷くのを見て、先生は生徒達に向き直る。
“ーーーー分かった。一緒にアリスを連れ戻す方法を考えようか”
そして決意を新たに、『ゲーム開発部』と『ヴェリタス』と『C&C』による『アリス奪還クエスト』が発動した。
◇
アリスを取り戻す事に決まった一同は作戦の計画を練るべく、先ずはリオの後輩である『セミナー』のユウカとノア、そして『エンジニア部』にも連絡し、作戦会議を開いていた。『セミナー』の2人は映像通信での参加である。
《会長が、アリスを・・・・?》
“うん・・・・ソレで、ユウカ達ならリオの居場所を知ってるかなと思って”
《最近、何か裏で進めている気配はありましたけど・・・・。そんなコトになってしまっていたんですね・・・・。少し、ショックです》
《会長・・・・一体何を企んでいるのかしら》
後ろにパートナーのサーナイトとエルレイドを控えさせたユウカとノアは、リオがアリスを連れ去った事に驚きを隠せないでいた。生徒会長であるリオの事を尊敬していただけに2人のショックも大きいのだろう。
《アリスをーーーー誘拐してーーーーその上『ヘイロー』を破壊・・・・?・・・・意味が分からないわよ!》
《普段から突飛な行動をされる方ではありましたが・・・・》
《ノア! コレはそう言う次元の話じゃないわ! 何を考えてるか分からないけど、アリスを・・・・生徒を誘拐するなんて・・・・幾ら会長だとしても・・・・やって良い事と悪い事があるのよ!》
《サーサー・・・・》
「・・・・仮にも自分の先輩なのに、容赦無いね」
「でしょ? ま、そう言うとこがユウカらしいよね!」
実の妹のように可愛がっているアリスを誘拐され、更には『ヘイロー』を破壊されると聞き怒り心頭のユウカを見てハレは引くが、モモイはカラカラと笑った。サーナイトはユウカを宥めようとしていた。
《あら、うふふ♪ 信頼されてるんですね、ユウカちゃん》
《・・・・ん? どう言う事?》
“・・・・ユウカ、ノア、お願い。リオがアリスを何処へ連れて行ったのか、調べて欲しいんだ”
《分かりました。『セミナー』内部の情報を確認してみます。リオ会長の痕跡が残っていると思いますので。ーーーー任せて下さい! 全力を挙げて協力します!》
そして、『セミナー』の2人との通信を終えて数分後。
《ーーーーリオ会長がアリスを連れて行った先が分かりました! 先生のお話を聞いて、まさかと思ったのですが・・・・》
ユウカは一拍置いてから報告をする。
《ーーーーまさか本当に『セミナー』の予算を横領していたなんて・・・・》
《本当にショックです・・・・そんな事される方だったなんて》
“えっと、どう言う事?”
今一話が見えない先生が聞き返すと、ユウカとノアが言い辛そうに口を開く。
《その・・・・『セミナー』のデータベースから、削除されたーーーー意図的に隠蔽されたような痕跡があるデータを調べた所・・・・》
《予算の一部に不透明な流れを発見。ソレを追跡する事に成功しました》
《そうやって追っていった先が此処です・・・・今、画面に映します!》
ユウカ達が空中に画面を表示させて映したしたのはーーーー高いビルが所狭しと並べられ、そのビルの隙間に線路やハイウェイが網のように広がり、中心部には一際高いタワーが聳え立つ、ちょっとした近未来の都市であった。
“コレは・・・・都市?”
《データベース上から消去された資料を復元した所ーーーーとある都市のデータを見つけたんです。コードネーム『エリドゥ‹Eridu›』。リオ会長が秘密裏に建設していた・・・・『終焉に備える為の要塞都市』だそうです》
“要塞都市『エリドゥ』・・・・”
《一体・・・・いつの間にこんな規模の都市を・・・・お金の流れを隠す事だって難しかったでしょうに・・・・》
「あ・・・・もしかして・・・・先日の『コユキさん』の1件と関係があるのでは・・・・?」
と、『セミナー』の予算を横領してとんでもない都市を作ったリオに呆れていると、アカネが『黒崎コユキ』が起こした珍事の事を思い返してそう言った。
《あっ! コーユーキーっ!!》
ユウカも思い至ったようで、『反省部屋』で暇を持て余した自堕落に生活しているであろう後輩に怒りの咆哮を上げた。
が、今はコユキを締め上げるのは後回しにしてもらう。
“ーーーーどうして都市を作ったんだろう?”
《リオ会長は、ご自身がやると決めた事に関しては絶対に迷いません。合理的な判断をーーーー時には重大な決断が必要な場面でも何ら迷う事はなく、目標達成の為であれば、ブルドーザーみたいに強引に進めてしまう。そうして危険を排除し、〈キヴォトス〉の終焉を防ぐべく奔走した結果出来たのが・・・・あの要塞都市、『エリドゥ』なのでしょう》
《アリスは、『エリドゥ』の中心部にあるタワーに連れて行かれた可能性が高いわ》
『目的の為なら手段は選ばない性格』。ある意味〈トリニティ総合学院〉のナギサや〈ゲヘナ学園〉のマコトと似たり寄ったりであると先生は思いつつも、ノアとお話し合っている間に、何とか冷静に戻ったユウカもアリスの居所を話した。
「ソコに・・・・アリスが・・・・」
《『エリドゥ』の座標をお伝えしますね》
《立場上、私達がお手伝いできるのはここまでですが・・・・》
〈ミレニアムサイエンススクール〉の生徒会『セミナー』の役員であるユウカとノアが、生徒会長であるリオと対立する訳にはいかないので、コレ以上の手伝えないと言う。
《お願いします・・・・リオ会長を止めて、アリスを連れ帰って下さい!》
“うん、任せて”
実妹のように可愛がっているアリスと、尊敬している先輩の事を切実にたのむユウカとノアに、先生は頷いて通信を切り、『エリドゥ』のデータとにらめっこしている『エンジニア部』の意見を聞く。
“ソレでウタハ、どうかな?”
「ーーーー『エリドゥ』の座標は確認できたけど、問題は『潜入方法』だね。会長ならきっと、空にも地下にも、そして『エスパータイプのポケモン』にも備えて、対侵入者用の防衛システムを構築しているだろうし、ポリゴン達やロトム達の侵入にも対策を練っているだろうし。何の準備もなく接近したら・・・・『エリドゥ』が何故『要塞都市』と呼ばれているのか、身を以って知る事になるだろうね」
『白石ウタハ』は『エンジニア部』の部長らしく、俯瞰的な視点とリオの性格を想定して、『エリドゥ』の守りが鉄壁であると推察する。
「じゃ、じゃあどうすれば良いの!?」
「近づく事も難しいなんて・・・・」
『『!!』』
「ーーーーソレはあくまで、『普通に接近した場合』の話だよ」
頭を抱える才羽姉妹とプラスルとマイナンに、ウタハは冷静に説明する。
「・・・・私達『エンジニア部』は『別のルート』を知ってるんだ」
“『別のルート』・・・・?”
「都市開発の『人手』だけだったら、リオ会長のドローンで事足りるだろうけど・・・・『資材』となると話は変わってくる。無から有は作れないからね」
「『ミレニアム自治区』の郊外には、護送用の無人列車が沢山ある・・・・」
と、ソコでウタハの話を『エンジニア部』の『猫塚ヒビキ』が解説し、ウタハが改めて説明する。
「都市建設の『資材』を〈ミレニアム〉から運んでいたと仮定するのなら、その路線のどれかが『エリドゥ』と繫がっている『可能性』が高い」
「じゃあ、『路線』さえ分かれば・・・・!」
「ああ。『エリドゥ』に行けるよ」
「で、でも、線路はいっぱいありますよね・・・・? 一体どうやって探せば良いんですか!?」
ウタハの言葉にモモイが喜びそうになるが、ミドリが『エリドゥ』に張り巡らせられている線路を見てそう聞いた。
「ああ。なので、その辺りを『エンジニア部』がサポートしようじゃないか」
“ウタハ、私達はリオと戦う事になるよ。ソレなのに・・・・”
「どうして協力するのかって?ーーーー決まっているさ。リオ会長は、勝手に『エンジニア部最大の発明品』を奪っていったからね」
「『最大の発明品』・・・・?」
「アリスの『スーパーノヴァ』・・・・」
先生達は、最悪〈ミレニアムサイエンススクール〉の代表であるリオと戦う事になり、ソレに協力すれば『エンジニア部』にもお咎めが来る事を危惧し、ウタハ達が何故協力するのかを聞くと、ウタハが『最大の発明品』をリオに奪われたと言い、才羽姉妹は、アリスの武器である『光の剣:スーパーノヴァ』の事を思い出した。
「ご明察。うちのデータ実測を邪魔するなんて、ソレは越権行為に他ならないよ。事実上、『エンジニア部』に向けた『宣戦布告』って訳さ。コレは『エンジニア部』の『部長』として、到底看破する事は出来なくてね・・・・」
「ウタハ先輩の恥ずかしがり屋・・・・」
『ハラバ』
回りくどい言い回しをするウタハに、ヒビキとハラバリーがニヤリと笑いながらボソッと呟いた。
「え、えっと、一体どう言う話、なの?」
『プラ?』
「ええ! 私が説明しましょう! ウタハ先輩の理論の流れは次の通りです!」
首を傾げるモモイに、説明好きのコトリが前に出て解説する。
「『友達を助けに行きたいけど、ソレを口にするのはちょっと恥ずかしい・・・・そうだ、いっそ物を奪われた事を口実にしてしまおう・・・・!』」
『パモット!』
「ちょっと、コトリ」
「うっ、ううっ!?」
「しーっ」
「(コクリコクリ!!)」
「・・・・良し、コレで秘密は守られた」
ウタハは即座にコクリの背後に回り、片手でコクリの口を塞ぐともう片方の手の人差し指を立てて、「余計な事は言わないでくれ」と言わんげにジェスチャーすると、コトリも頷いて見せ、ウタハは秘密を守れたと思いホッと(慎ましい)胸を撫で下ろした。
“ゴメン・・・・何一つ守られてないと思うけど”
『ピカチュウ・・・・』
「・・・・守られたんだよ」
“え、う、うん・・・・”
『ピカ・・・・』
「コホン・・・・と言う訳で、私達『エンジニア部』も手伝うよ」
『ロト』
「うん」
『ハラ』
「エヘン! お任せ下さい!」
『モット!』
取り敢えず、『エンジニア部』も協力してくれるようである。
◇
そうして、アリスの居場所『エリドゥ』と、ソコまで向かう手段も見つかったと思われたがーーーー。
“・・・・次は、アリスをどうやって連れ戻すかだね”
「ええ。『要塞都市』と呼ぶくらいですから・・・・リオ会長には万全の備えがあるのでしょう」
「都市のセキュリティは勿論、防御システムもかなりのレベルだと思うよ」
「ソレに・・・・『要塞都市』をどうにかしても、まだ問題が残ってる」
“そうだね・・・・『要塞都市』はオマケに過ぎない”
「話を聞く限り、リオ会長の護衛をしているメイドとその手持ちポケモンが1番の障害ですね」
アカネとウタハ、ハレが『要塞都市エリドゥ』の厄介性を説くが、ソレ以上にコタマの言う通り、ネルとエレキブルを降したあのトキとゼラオラが最大の難関である。
「・・・・・・・・・・・・」
『ブル・・・・!』
「トキさんとゼラオラ・・・・でしたよね?」
『マイ』
ネルとエレキブルが静かに聞き、ミドリが分かる限りの情報を口にする。
「あの時の・・・・彼女の動き・・・・まるで・・・・」
「うんーーーーまるで『チートプレイヤー』・・・・みたいだったね」
ミドリの意見に、ユズも引き締めた顔でそう応えた。
すると今度は、ネルが口を開いた。
「・・・・アタシらに必要なのは『作戦』だな」
『・・・・・・・・・・・・・・・・』
“ネルが『作戦』って・・・・言った!?”
いつも回りくどい『作戦』なんて必要無しに大暴れするネルの口から、「作戦が必要だ」と聞かされ、全員を驚かせた。
「ね、ネル先輩。大丈夫? 熱とかない?」
「もしかして、大怪我をした反動で・・・・?」
「あぁ? 何の話だ?」
「・・・・『任務モード』の部長だ」
「そうそう! 『仕事モード』になった部長はと~っても真面目なんだから!」
「ふふっ、実はそうなんです」
「な、成る程・・・・!」
ネルの突然の言葉に、才羽姉妹が具合が悪くなったのではと心配し、ネルがそんな一同を眉根を寄せて訝しそうな顔になると、他の『C&C』がフォローした。
「うーん、ネル先輩・・・・どういう意味か聞いても良いかな?
」
「無事『要塞都市』に着いたとしても、だ。ソコがリオの領域である以上、アタシらの動きは丸見えだ。誰が何を言おうが、アイツは『ビッグシスター』だからよ」
“どういう意味・・・・?”
「単純な話だよ。アレコレ浅知恵こねくり回す暇があるんだったら、初っ端から突っ込んだ方がいいって事だ」
ハレが聞くと、此処にいる中で1番リオの事を知っているネルがそう言い出した。
「ですが部長、ソレこそリオ会長の思う壺では・・・・」
「だから『作戦』が必要つってんだよ。ーーーー正確には『陽動作戦』か」
ソレはソレはにこやかな笑みを浮かべて。
“『陽動作戦』・・・・?”
「このゲームの『勝利条件』は単純明快だ。『アタシらがやられる前に、あのチビ‹アリス›を救い出す』。アタシら『C&C』が正面から突っ込んで騒ぎを起こしてやる。そうしたら、リオは勿論トキにゼラオラ、アイツらめアタシらの相手をせざるを得ないだろ? その間にお前達がチビを救え。どうだ? 簡単な話だろ?」
「アリスを救ったら・・・・」
「私達の勝利・・・・!」
「でもネル先輩、大丈夫ですか? 相手はあの『チートプレイヤー』と『幻級のポケモン』だし・・・・」
ユズとミドリが『勝利条件』の事を口にするが、モモイはネルを1度負かした相手に勝てるのか不安そうに言う。
「あ? アタシらを誰だと思ってやがる。アイツらには1杯食わされたからな。次会ったらやり返してやるって決めてたんだよ。後はソレを実行するだけだ」
『エレキブル・・・・!』
『笑うという行為は本来攻撃的なものであり獣が牙を剥く行為が原点である』、と言うとある漫画の説明を正確に表すように、ネルとエレキブルはニヤリと笑みを浮かべた。
「分かった。従おう」
『ガゥ』
「うんうん! 私達に任せて♪」
『ハピナ♪』
「ふふっ、精一杯頑張りますね」
『ゴロニャ』
他の『C&C』のメンバーもやる気に満ちているように頷いて見せた。
「(・・・・確かに、あの時と違って『C&C』が全員いるのなら・・・・突破できる可能性は高い・・・・)」
ユズもコレなら行けるのではないかと考えて、アカネが口を開いた。
「ーーーーソレではコレで決まりですね。正面は部長と一緒に私達『C&C』が担当致します」
「後方から潜入するのはその他、『ゲーム開発部』と私達『エンジニア部』・・・・そして先生かな?」
「私達『ヴェリタス』は遠隔で支援するね」
「防衛システムのハッキングは私達に任せて!」
「ポリゴン達もやる気になっています。完璧にやり遂げて見せます」
ウタハ達『エンジニア部』と『ゲーム開発部』と先生達は潜入。ハレ達『ヴェリタス』は後方支援に決まった。
「良し、じゃあコレで行こっか!」
“うん”
「目標は『要塞都市エリドゥ』の中央タワー! アリスが連れて行かれた場所! 勝手に家出したアリスを! 私達の手で連れ戻すんだよ!」
“それじゃあ、コレよりーーーー”
モモイのマトメを聞いてから先生は、『C&C』。『ヴェリタス』。『エンジニア部』。そしてアリスを欠いた『ゲーム開発部』を見ると、全身が力強く頷いて見せる。
『デデン!』
そして、恐らくこの中で1番アリスを助け出そうとしているのであろうデデンネが、先生の頭の上に乗ると、先生は声を発する。
“ーーーー作戦開始!”
『おーっ!!』
『ーーーー!!』
その声に応じて、全員とポケモン達が声を上げる。
今ここに、アリスを取り戻す為に4つのチームと『シャーレの先生』による、『最大のクエスト』が始まった。
ーヒマリsideー
そして、ここは『要塞都市エリドゥ』の内部にある『中央隔離施設』。
「リオ・・・・アナタがやっている事は忌むべき事です。直視に耐えられません」
《・・・・ヒマリ。貴女はいつも悪し様に私の事を罵るわね。陰気だとか浄化槽に浮かぶ腐った水だとか・・・・》
「・・・・・・・・」
その施設に捕らえられているヒマリが、映像通信でリオに抗議し、リオが日頃から悪し様に罵られた事に文句を言うが、ヒマリはたおやかな笑みを浮かべて黙秘した。
先日、パートナーのメタグロス(色違い)と共にトキとゼラオラに撃墜されたヒマリはそのまま、この『隔離施設』に閉じ込められていたのだ。
勿論、メタグロス(色違い)はモンスターボールに入れられ、『ブースター』や『隠し玉』の入ったボール共々、鎖で雁字搦めにされて別の部屋に保管されている。
《・・・・まあ、良いわ。そんな風に私を非難する事ができるのは、この〈ミレニアム〉でーーーーいえ、この〈キヴォトス〉上で、ヒマリ・・・・貴女くらいでしょうね。そんな貴女だからこそ、私が今から『しようとしている事』を理解してくれるのではないかと、期待していたわ》
「『アリスのヘイローを破壊する』行為を、ですか?」
《・・・・・・・・》
ヒマリが自分の理解者になってくれると期待していたリオが残念そうに呟くが、ヒマリはリオがやろうとしている事ーーーー『人殺し』の事を遠回しに指摘した。
「アナタは自分のする行為を、〈ミレニアム〉ーーーーひいては〈キヴォトス〉を守る為の・・・・そう言った類の行為だと信じているのでしょうけれど。ーーーー結局の所、少女を誘拐して都市に監禁し、『ヘイロー』を破壊しようとしているだけじゃないですか」
《その言葉は間違っていないわーーーーでも、いえ、そうね・・・・アナタはそう考えているから、私の事が理解できず・・・・許容もできないのでしょうね》
「ええ。私はアナタに賛同しません。そしてーーーー『シャーレの先生』も黙ってはいないでしょう」
《そうね。先生がアリスを『回収』しにくる確率は99.9999%以上・・・・ソレに、『C&C』と言う〈ミレニアム〉最高峰の戦力も向こうの手に渡っている。ーーーー全く、誰1人私の事を理解してくれないのね。・・・・ただの1人でさえも》
「リオ・・・・アナタはソレを理解していると言うのに、こんな・・・・」
リオが何処か寂しげに目を伏せてそう言うが、ヒマリはこんなやり方をするリオに苦言を言おうとした。
《ーーーーソレでも構わないわ。ヒマリ、貴女はこの前言っていたわね。私が『セーフハウス』を作っているじゃないかって。・・・・より正鵠を得るのであれば、この『エリドゥ』は『至る未来』に起こる『脅威』を防ぎ、迎撃する為に建てた『要塞』・・・・》
「リオ、アナタは相変わらず・・・・」
ソレでも、自分のやり方を曲げようとしないリオに、ヒマリは呆れてしまいそうになる。
ーリオsideー
しかし、『中央タワー』の最上階にいるリオは『要塞都市エリドゥ』を見下ろしながら呟く。
「理解されなくても、この世が私を『悪』と規定しても構わないーーーー私は、私が正しいと信じる道を進むだけよ」
リオは己の決意を表明する。
「起こりうる全ての変数を考慮し、計算しても・・・・私が目標を達成する確率は99%以上。備えは十全。後は実行するだけ・・・・」
と、ソコでトキから映像通信が送られてきた。
《ーーーーリオ様、『エリドゥ』の監視から報告が》
「・・・・分かったわ。結局、データが示した通りになるのね。では・・・・後はよろしく」
《イエス、マム》
トキはリオの言葉に頷いてから通信を切り、リオは再びヒマリに目を向ける。
「全てが終わったら・・・・ヒマリ、貴女も・・・・そして『シャーレの先生』、貴方も・・・・きっと・・・・」
ーーーーリオを軽蔑する。
リオはその先の言葉を発せず、瞑目して口を閉ざした・・・・。
ーアリスsideー
「・・・・・・・・・・・・」
そして、外の状況が知らないアリスは、別室で蹲り、コレからの自分の『運命』を、必死に受け入れようとしていた・・・・。